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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『ちどり亭にようこそ~今朝もどこかでサンドイッチを~』十三 湊 




総一郎との結婚に伴い「ちどり亭」を畳まなければならなくなった花柚だが、アルバイトの彗太が店を継ぎたいと申し出たことによって、猶予期間として二年間店を続けられることに。
しかしそのためには期間限定の店のオーナーを見つけなければならない。
店を継ぐ心構えで、改めて修行をはじめた彗太だが、上手くいかないことも多くて——。


『ちどり亭にようこそ』シリーズ第三弾。
京都の仕出しお弁当屋さんが舞台の日常のものがたり。
シリーズ前二作がとても好みですっかりファンになってしまっていたので、三巻目が出るとのこと、たいへん楽しみにしていました!

ていねいに作られる家庭料理の延長線上にあるおいしそうなお弁当、京都の伝統あるお家の人々の風雅な暮らしぶり、人が好いキャラクター達の掛け合い、すべてが調和して読み心地の良い世界を構築していて、ああ、やっぱりいいなあ。
ふくふくとした幸福感に読んでいていっぱいにつつまれました。
無邪気で可愛らしくお料理熱心な現代京都のお嬢様花柚さんと、バイトの今風大学生彗太君のふたりが何といってもやっぱり好きです!

前回の自分の感想を読み返していて、そういえば私、花柚さんに影響されて花柄の割烹着を買ったんでしたっけ、思い出しました(笑)。割烹着便利であれから大活躍しています。

『今朝もどこかでサンドイッチを』のサブタイトルの意味が、じんわり胸に来るラストでした。
いつかは来るかなー?と思っていた展開でしたけどね。どっきりしました。
あと今回はなんといっても美津彦さん大活躍の回でもありました。だいぶ彼を見直したかも。

まずは彗太君のきんぴらに物申した梶原さんのエピソード。
お客さんからの厳しい指摘に落ち込みスランプに陥っている彗太君を励ます花柚さんのやり方が、花柚さんらしい柔らかで信頼のこもっているもので、読んでいて心に響きました。
栗やさつまいものぽくぽく系はお肉料理によく合うって分かる!
彗太君の頑張る姿を見ていたらほうれん草を食べたくなってきたので、次の日のお弁当のおかずにほうれん草を入れました。今の季節のほうれん草は甘くて肉厚で美味しい。
そして花柚さんのところで働くようになってから人の悪口を言わなくなったという下りが好きです。

海老フライと新キャラ大学生・康介君のエピソード。
配膳司、またひとつ新しい職業名を知りました。改めて京都は奥深い。
康介君の勘違いはとんでもなかったですが、でも言われてみれば、お弁当を作る相手って限定されているよなあ。とも。
野乃香ちゃんと康介くんの仲が悪いんだか良いんだかの勢いのいいやりとりが面白かった!!
わいわい集まっていると学生さん達みんな楽しそうで青春でいいなあ~(にこにこ)。
父親を尊敬し愛する息子の姿が印象的でした。
海老フライおいしそうですねえ~しば漬けを使ったピンクのタルタルソースにもなにげに心惹かれました。

野菜嫌いのお父さんのエピソード。
ふわふわもちもちのつくねの秘密はそういうことだったのか!花柚さんが明かした亡きお母様の手間暇と愛情に心打たれました。(そしてすかさずの奥様へのフォローがさすが。)
花柚さんの「実は栄養のことって、「よくわからない」っていうのが正確なところなの」当たりの台詞が、心に残りました。
私も昔身体の不調のため必死にご飯の内容を制限していたころより、あまり囚われず好きなものを食べることにしたと同時に毎日の行動パターンを変えてからの方が、体調が良くなったことがあるからな……。
それはともかくこのお話の、野菜嫌いの人のために花柚さんが工夫をこらしたお弁当が魅力的です。
ウインナーを蒸し炒めして、ほうれん草ペーストをを卵に混ぜて巻いて焼いて、三色玉子焼きにするの、今回一番心惹かれました。これいつか作ってみよう!
ごぼうブラウニーも気になるなあ。
あと永谷氏のお母さまがなかなか予想外の方向に強烈でした。苦労されてますね……。
永谷氏の「禁句」を必死になって守り通す花柚さんが格好いい(笑)。

そしてサンドイッチのお話。
花柚さんがしゅっと美しくこしらえるフルーツサンドの描写がとても素敵……!!ご飯の時間に食べるフルーツサンドが罪の味というのは、分かります。
思いがけないところから思いがけない人が登場してきたな、と。
結局のところ公篤さんも麻里依さんもいいひとでお似合いのふたりで、たまごサンドを通して花柚さんが麻里依さんの人となりを悟って認める、という流れが、良かったです。
北山の植物園、たまたま私自身が先日出かけたばかりで雰囲気を具体的に思い浮かべられたのが、良かった。
花柚さんの周りに美津彦さんや総一郎さん、そして彗太君たちがいて、良かったな。と思いました。
琵琶を奏でる花柚さんの姿が印象的でもありました。
公篤さんの抱える屈折もなんか分からないではないなと思いました。総一郎さんと花柚さんがいま幸せだからまあそれ以上思わずにすんでいるといいますか。
公篤さんの彗太君への贈り物もずっしりくる。
大切な人に、美味しいものを食べて、幸せであってほしい。
そんな願いを込めて日々お弁当をこしらえる花柚さんの仕事ってとっても素敵だし、そこまでいかずとも日々お弁当を作る幸せを改めて肯定された気がして、しみじみ幸福感にひたれるラストでした。

最後は美津彦さん視点の番外編。
彗太君視点以外から物語を眺めるのははじめてなので新鮮でした。
ぐうたらニート気質だけど研究者としては(多分)優秀で、気遣いもできるしなんだかんだ人が好く世話焼きな美津彦さん、だいぶ見直しました(笑)。
莢子さんと美津彦さんのさばさばした腐れ縁的な関係がなかなか良いです。
莢子さんのお母さんも悪い人では全然なく娘想いのいいひとなんだろうけれど、かみ合わなさがちょっと切ない。
花柚さんは料理に関しては本当に頼りになるなー!!
あと松園さんもやっぱり素敵なおじさまだな、とか。
花柚さんのお見合い連敗の一因はそこだったのか!とか。
分かりづらく花柚さんと総一郎さんの仲を後押ししている美津彦さん、とか。
おばあさまへの想いとか。

十三夜に十五夜に、和洋のお月見に集う人々の場面も、印象的でした。
子どもを親が思う心、受け継がれてゆくもの、しあわせでありますように、すこやかでありますように、そんな愛情と祈りの情が心に印象的に残るお話の数々だったように思います。

花柚さんと総一郎さんのふたりは結婚間近で相変わらずラブラブみたいでなによりですし、彗太君と菜月ちゃんも、上手くいってほしいな~。(口絵イラストの笑顔のふたりと見守る花柚さんが素敵)
続きもぜひ読みたいです。ぜひとも!!


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 日常のお話

タグ: 十三湊 

『ちどり亭にようこそ~京都の小さなお弁当屋さん~』十三 湊 




京都は姉小路通沿いにこじんまりと建つ、仕出し弁当屋「ちどり亭」。
店主の花柚(はなゆ)は若く美しい女性だが、なぜか毎週お見合いをしている。
いつも残念な結果に終わるのを「お見合いがライフワークなの」と答える、お茶目な人でもある。
そんな彼女が食べる人のため心をこめて丁寧に作るお弁当は、人を笑顔に幸せにするもので——。

京都を舞台に、小さな仕出しお弁当屋「ちどり亭」をめぐる人々が織りなす日常の物語。
店主は花柚さんといって、由緒ある旧家の年若いお嬢様、無邪気なかわいらしいひとで、お料理への情熱は人一倍。
物語の語り手は、ちどり亭の学生アルバイト・彗太君。お店の前で行き倒れていたのを拾われたのがきっかけで花柚さんに料理を習いはじめアルバイトとして雇われ、ふたりでお店を回している。今風の学生さんのノリながら人が好く素直で勉強熱心、ちょっと不憫体質(苦笑)。
このふたりのキャラがまずとてもいい。

作品設定やあらすじのイメージそのままおっとりはんなり優しい物語で、食生活をメインに人の生活の営みも丁寧に書かれていて、読んでいてとても心地がよくて、じんわりと癒されました。
ていねいに作られるお弁当も美味しそうで、一品一品きっちり手間と心がこもっていてそれでいてあくまで家庭料理の延長線という感じで背伸びした感じもなく、なにより花柚さんと彗太くんが料理を作っている姿がいきいきと楽しそうで、これまた癒される。読んでいて元気をもらえます。

なんというか、つまり、とってもとってもお気に入りの作品でした!!!
ヒロインの花柚さん、「花柚」さんと書いて「はなゆ」さんと呼ぶ名前からして、可愛すぎる~!まさに現代京都のお嬢様、お見合いマスターと自分で言ってたり自分のお弁当を毎朝私って天才!と自画自賛していたり、それだけに料理への情熱は並々ならぬものがあったり、割烹着にお着物姿も口調も、すべてが可愛らしくて、すっかりファンになってしまいました。
花柚さんの影響で、ちょうど作業用エプロンを買おうとしていてうっかり割烹着を買ってしまったのは私です。使いでよくて気にいっています。
彗太君とのかけあいもテンポよく楽しいしふたりで協力し合って店を回している姿もいい。

「食べものをみんな人任せにしていてはいけない」
「栄養も大切だけど、それよりも大事なのは、自分で自分の生活をオーガナイズすることよ」
この花柚さんのシンプルな教えが、読んでいるとじわじわと効いてきます。
読んでいると、心がすっと整う感じがして、自分自身のお弁当生活のはげみにもなるし、とてもとても良かった。
日々のお弁当作りがなんだか毎日楽しみになってきて、結果(自分比)美味しいお弁当をお昼に食べられるし、いいことづくめ(笑)。

花柚さんと彗太君、それぞれのロマンスのエピソードもちゃーんとあるのも、私好みで心憎い。
彗太君の片想いのお相手菜月ちゃん、彼女もまた程良く今どきの大学生で読んでいくごとにとってもいいこで、菜月ちゃんの失恋は分かってはいたけれど切なかった。(このあたりでお弁当ストーカーしていた彗太君がなにげにすごかった……。でも確かにお弁当にこんな工夫を常にできちゃう彼女は、手強すぎる、かも。)
菜月ちゃんに彗太君が作るオムライスがね、食べる人への真心がこもっていて、とてもいい。卵に酢を入れるのか、覚えておこう。
その後花柚さんに共にお弟子としてお料理を習う関係になったふたりのすがたには良い感じでほのぼのしました。彗太君いいこだな……不憫だけど……。

一方の花柚さんのロマンスのお相手は、破談になったかつての婚約者。
どんなに口では何気なく装い否定していても、相手が店に来ると、ふわふわ舞い上がっているのを隠せていない花柚さんが、可愛くってもう!
やっぱり名家のあととり総一郎さんのえらっそうだけれど実は真面目でていねいなお人柄、はっきり口にはしないけれど実はこの人もまた花柚さんひとすじでベタ惚れなんじゃないの?と疑惑がだんだん確信に変わっていくところとか、最高にときめくんですけれど!(笑)

ちどり亭のパラサイト(現代の貴族?)美津彦さんも、ぐうたらだけど気遣いもできるなんだかんだいいひとだし、花柚さんのお料理の師匠もぴっと背筋が伸びた格好のいい人だったし、脇役キャラもそれぞれ魅力的で、ひとつひとつのエピソードもていねいでよく練られていてどれも印象深かったし、春の素材をメインに用いたお弁当もそれぞれとってもおいしそう!
私も花柚さんのお弟子さんになりたい……せめて彼女の「お弁当練習帖」ノートをのぞいてみたい。
だしまき卵を上手に作れるようになるの、憧れます。


あまりに良かったので、二巻目もさっそく読みました。
宝物のように、大切に大切に、少しずつ読んでゆきました。



今度は夏の物語。
「人間は、何かを生産せんならん。料理でも、日記でも」とか「きれいなものは食べても太らない」とか、読んでいくとちゃんと理由があってやはり名言。どんな食べ物でもバランスよくが大事って当たり前のように思えるけれど大事だな。
彗太君と菜月ちゃんたちの後輩・小川野乃香ちゃん、彗太君の前ではじめて素を出した彼女はなかなか強烈でした……。
彗太君と花柚さんの協力で、いい方向に向かっていって、良かったな。
彼女の登場で、彗太君と菜月ちゃんも上手い具合にまとまって、何より。野乃香ちゃんがちょっと不憫だけど。茗荷の甘酢漬けの色は確かにとても綺麗ですよねえ。
黒岩さんとメイちゃんの親子もいいキャラしていました。
それにしても彗太君はアルバイトさんとしてお弟子として花柚さんに鍛えられて、成長したなあ。としみじみしました。

かと思えば、花柚さん達カップルに途中から暗雲がたちこめはらはらしましたが、お店のことかー。これは確かに難しい。
花柚さんと彗太君がふたりで店を回している姿がやっぱり好きだったもので、最終的にふたりがああいう選択をしてくれて、心から良かったなあと思いました。
やっぱりえらっそうでしかめつらしいものの、実はやっぱり花柚さんにべた惚れな総一郎さんにいつでもときめいて仕方がないです。
桃を贈り続ける総一郎さんに文句を言いつついただく花柚さん、はたから見ていてもどかしい。
だいぶ浮世離れしている大人カップルですが、彼らなりにしっかりラブラブしている姿にきゅんきゅんです。意図せずふたりの場面を邪魔してしまう彗太君が不憫だ……。
胡麻すり胡麻豆腐作りに、持ちよりおにぎりお弁当、あと彗太君の冷やし中華にマヨネーズも何気に印象的でした。
私も名古屋に来て友人が当たり前に冷やし中華にマヨネーズをかけていたのがカルチャーショックだったな……。

みんなみんな笑顔で幸せになれる二冊でした。
お弁当作りしている、もしくはお弁当作りこれからしてみようかな、とか言う人には特におすすめ。
これで完結しているのかしら。続きがもしあるならぜひ読んでみたいのですが。

カテゴリ: 日常のお話

タグ: 十三湊