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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『アンと青春』坂木 司 




『和菓子のアン』の続編。
デパートの和菓子屋『みつ屋』でアルバイトしているアンちゃんこと杏子さん。
美人で頼りがいのある椿店長、乙女な好青年立花さん、元ヤン人妻大学生の桜井さん、個性豊かなメンバーと一緒に、今日も店頭に立ち、和菓子をめぐる謎を解いてゆく——。

デパ地下の和菓子屋さんを舞台に、アルバイトの女の子ががんばる和菓子メインの日常ミステリー、嬉しい続編!
続きが読みたいなあとずーっと思っていたのでとっても嬉しいです。

それでもハードカバーで買うべきか、実のところちょっと迷っていたのですが。
表紙のお餅菓子が、それはまあ、素晴らしく美味しそうで。この半透明でぷるんとしているお餅の質感と、なんともいえないきれいでやわらかな餡の色、梅の花のアクセントもすべてがさりげなく美味しさを主張してきて、ねえ。
あとは『アンと青春』というタイトルが、本家(?)アン・シリーズの第二作目タイトル『アンの青春』とばっちり重なっていて、『和菓子のアン』も『アン・シリーズ』も大好きな私は、やっぱり手に取って読まずにはいられなかったのでした。

カバー裏の本体や見返しの紙や色遣いがまた斬新で和菓子のイメージぴったりで、心にくい演出にうなってしまいましたよ。

坂木さんのお仕事青春もの小説、しかも女の子が主人公のお話が、私はやっぱり大好きだなあ!!と改めて認識しました。
色々思い悩みつつも頑張るアンちゃんの姿に、読んでいる私もたいへん元気づけられて、ああ、私も明日もお仕事頑張らないとなあ、と前向きな元気を分けてもらえました。すごく良かった。
帯のコピーの「果てしない未来と、果てしない不安。甘いお菓子が、必要だ。」というのもとてもうなずいてしまうメッセージ。
今回出てきた和菓子(ときどき洋菓子)も、どれもこれも美味しそうで付随しているエピソードも素敵で、読んでいるだけでも甘さいろどり質感を想像しては、うっとり幸せに浸れたりして。(でもやっぱり実際にも食べてみたいんですけれど。)
みつ屋さんのレギュラーメンバーさんたちも相変わらず面白くて頼れるいい方ばかりで、ときに壁にぶつかったりちょっと気まずくなったりしつつも(お仕事やってたらそういうのあるの当たり前ですもんね)、わいわいにぎやかにお仕事に誇りを持ち働いている様が、読んでいていいなあ、素敵だなあとしみじみ思いました。
美味しいものを本当に美味しそうに楽しそうに食べるアンちゃんが、やっぱりいっとう愛おしいです。
デパ地下お仕事裏事情をのぞけるワクワク感も健在です!

『空の春告鳥』
『和菓子のアンソロジー』にて既読のお話からスタート。
うんうん、お菓子の催事も楽しいし、駅弁の催事も楽しいんですよねえ。
「飴細工の鳥」のイメージが二転三転してふむむ、とわが身にもつまされるような気持ちになったところで、乙女ふたりの中華街の食べ歩き、美味しそう!飲茶もミルクティーもカフェのクレープも最高にセンスがいいです。乙女の味覚に鎖国は存在しないのです。

『女子の節句』
まずは、アンちゃんと友人たちの京都女子旅行が、とっても楽しそうで良かったです!いいないいな~。
アンちゃんの性格、美質をよく理解してくれてて話を聞いてくれたり適切なアドバイスをくれたりする友人の存在に、私はなんだかとてもほっとしてしまったのでした。ふだんアンちゃんの近くに同級のお友達っていないから、ね。普通の女の子としてのアンちゃんの姿を見られてほっとした、といえばいいのかしら。
ちょっと買うのにステップが必要なお店の上生菓子も、やっぱりパフェも、乙女はみんな大好物なのです!作者さんはよーく分かっていらっしゃる。
柚子シャーベットと和三盆のアイスクリームにあたたかな塩キャラメルソースをかけた冬パフェなんてきたら、寒い夜でもいただかずにはいられないのですよ。
アンちゃんが語るお姑さんのお菓子のお話は、ソフトに黒いものを感じて、でも悪と言い切ってしまうにはためらいがあり、もやもや。でも最後の友人達の意見に出てきたけど、お嫁さんだって実はけっこう強いんじゃないかな。そう思いたいな。あと桜井さんと椿店長それぞれの女の意見にも救われた感が。
蓬莱山って不思議なつくりのお菓子があるものだなあ~と以前思った記憶がありますが、こういう場面のお菓子だったのですね。

『男子のセック』
章タイトルが対になっていてなんだかおもしろい。
今度のセックは、洋菓子のセック。粉と油脂と砂糖の配合が絶妙の、バターが焦げるまでしっかり焼かれたアクセントの強いお菓子。うわあ、みつ屋の和菓子とは全く別方向から攻めてくるこういう洋菓子もたまらないですねえ。食べたいよー!
ここにきて『春告鳥』の店員さんをしていた柏木さんが再登場とは思いがけないつながり。
そしてアンちゃんに思いがけない暗雲が。
私自身も考えなくちゃいけないのに目をそらしていることを、しっかり考えてぐるぐる悩んでいるアンちゃん、そして柏木さん。
上から目線でなんて失礼ですが、悩むことばかりでも、やっぱりアンちゃんのお仕事にどこまでも真摯な姿勢が、私は読んでいて気持ちがいい。
立花さんのわだかまり、どうしちゃったんだろうと思いましたが、アヒルとか、そういうことか。このひともまた仕事に関して真摯で私はもう憧れるしかない。
ちょっと人間関係が辛かった時もあり、そんなとき桜井さんのガッツがなんか救いでした(笑)。頼もしい!
アンちゃんたちが食べていたホットサンドが何気に美味しそうで食べたくなりました。確かに食べにくそうですけれど(笑)。美味しくいただこうとするとどうしても見苦しくなっちゃうんですよね。柏木さんがその点うらやましい。

『甘いお荷物』
デパ地下でジュースを買おうとした女の子とお母さん。
うん、これもまた難しい問題ですよね……。読んでいてうなってしまいました。表面的に見るとあれかもしれないけれど、このお母さんは実は、気遣いのひとなのだなあ。
アンちゃんと立花さん、柏木さん、そして師匠が顔をそろえて、また少し人間関係がぎくしゃくと。
ううう、個人的にはアンちゃんが辛い立場に立たされるのが嫌なので、前のお話との連続もあり、若干立花さんに怒りが……。
甘酒、久しぶりに飲みたくなってきました。インスタントじゃないやつを。
そして梅本家の朝ごはんもおいしそうですねえ。

『秋の道行き』
ちょっと重ための読み口のお話が続いて、こちらは秋の晴れた空のように明るく澄んだ読み心地のお話で良かったです。
立花さんがアンちゃんに贈ったお菓子の謎解きに加え、アンちゃん自身の悩みにも、一区切りが。
『秋の道行き』も『はじまりのかがやき』も、描写が魅力的で素敵すぎる。
福島県の五色沼や金沢の美術館や、美しい色彩が和菓子のイメージに次々と重ね合わされていく展開も、みやびな感じでとても楽しかったです。
師匠とアンちゃんの会話場面も良かった。金沢にはとても素敵なお菓子があるのですね。
そして立花さん、アンちゃんが駅に迎えに来てくれて、嬉しかっただろうな。ふふふ。
桜井さんへの贈り物もあり、心がまあるく収まったところで。ラストの「甘酒屋の荷」の意味。
『男子のセック』あたりから、なんとなくそうなのかなあ?と思っていた雰囲気に、一気に色が付いた感じで、師匠の言葉も重ね合わせてきゅん、ときて、落ちてしまいました(笑)。
やっぱり、やっぱり、そういうことなんですよね。ね?
不意打ちの糖分投入(お菓子のではない)に、ときめきがとまらないラストでした。
思えば元祖『アンの青春』も、あの時点での糖分は、これくらいだった気がして、さらににまにま。
(あっちのお話もアンのお仕事奮闘記、友人たちとの語らいがメインで、恋愛に関しては、アンはまだ自覚していなかったよね。)
乙女な立花さんのこと、どうなるのかとも思いますが、よくよく考えてみるとギルバートもたいがいロマンティックな男性だったのではないかと……。

この流れでいくと、さらに三作目以降も、読めることを期待して良いのでしょうか。
読めるのだとしたら、とてもとても嬉しい。
今度も『アンの愛情』がモチーフになってくるのかしら。

さて、美味しいあんこのお菓子を(も)いただくために、明日からも、がんばりましょうかね!


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 坂木司 

『ホテルジューシー』坂木 司 

ホテルジューシー (角川文庫)ホテルジューシー (角川文庫)
(2010/09/25)
坂木 司

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大家族の長女に生まれたしっかりもの娘・浩美ことヒロちゃん。
大学二年の夏にやってきた那覇の安宿・ホテルジューシーでヒロちゃんは、昼夜二重人格のオーナー(代理)や人は良いけれどアバウトな双子の老ハウスキーパーなど、規格外の職場仲間たち、さらに訳ありのお客さんたちに、とにかく常識外の行動を起こされては翻弄され続ける。
それでもなんだかんだで親切な皆に囲まれ、ホテルの料理人・比嘉さんのおいしい沖縄料理をお腹いっぱい食べつつ、ヒロちゃんの夏は過ぎてゆく。


先月読んだ『シンデレラ・ティース』(感想→こちら)がとても良かったので、姉妹版だというこの『ホテルジューシー』も、近いうちにぜひ読みたいなと思っていました。ようやく読めました!
冒頭から、あちらのヒロイン・サキちゃんがやっぱり出てきてちょっと嬉しくなりつつ、自然なつながりで、今度はヒロちゃんの物語の世界に飛び込んでいけました。
本当に、同じ時期に親友同士が違う場所でアルバイトに精を出すお話になってるんですねえ、これ。つくりが面白いなあ。

実際にこちらを読みはじめてみると、そうはいっても、『シンデレラ・ティース』とはまた全然違う雰囲気のお話で。
あちらの方は、都会の冷房がきいた清潔にととのえられた場所での物語、でしたが、『ホテルジューシー』は、なんといえばいいのか、とにかく南国、真夏の沖縄、そのまんま。
夏の沖縄の空気や熱を濃密に肌で感じて、読んでいてちょっとくらくらしました。
馴染みのない文化や人づきあいや、ときどきカルチャーショックで読んでいてヒロちゃんと一緒に圧倒されつつも、物語はけして破綻はしていない。
訳ありの人の心をそっと優しく解きほぐす、日常の謎的ほのぼのお仕事ミステリーは、やっぱり健在でした。とても良かった!
(そうはいってもこの『ホテルジューシー』は、沖縄の影の部分といえばいいのか、そういうのも割とくっきり出ていて、ヒロちゃんが時おり感じる苦さも印象的だったな。)

あとはなんといっても、さりげなくも次々と登場する沖縄料理の数々が、読んでいて本当に美味しそうで……いやあ、たまらないです。(ごくり)

ヒロインのヒロちゃんは、世話焼きで真面目で、とてもまっすぐな女の子。おっとりお嬢さんなサキちゃんとは別の意味で、今どき珍しい女の子だなあと思いました(笑)。
なんというか、生きていくのが大変そうだなあ……ととてもこんな真面目な生き方をできそうにない私は思ってしまいましたが、こんな彼女でも、ホテルジューシーのスタイルにいつの間にか馴染んで心地よくなっていく様が、読んでいて良かったです。
この変化は、彼女にとって、必要なものだったんじゃないかと。

ホテルのゆるーい従業員の皆さんも、最初は度肝を抜かれましたが、なんだかんだで良い人たちですねえ。
お話のラスト、ヒロちゃんが皆とお別れをするシーンが、『シンデレラ・ティース』のラストの部分と重なるものがあって、しみじみ心ぬくもりました。比嘉さんが葛西さんっぽかった(笑)。
一番インパクトがあったのはやっぱりオーナー(代理)ですね。二重人格ってそんなまた……ギャップがすごいですよ。でも慣れるとまたこれも味というか何というか。
薬指の例のあの場面はいったいどういう意味だったんでしょう?(笑)

各話ごとに感想メモ&食べ物メモ(笑)。
『ホテルジューシー』
まず最初の松谷さんに、度肝を抜かれましたね!なんて突飛な。
山本さんの事情は、明かされてみると、しんみり切なかった。
サキちゃんへの例の電話は、こういう状況でかけたものだったとは。意外な感じでした。
美味しそうだった食べ物……サーターアンダギー(沖縄のドーナツ)。ホロホロジューシー(雑炊)。
ブリトー(やわらかいタコスのようなもの)。
サーターアンダギーはこの辺でもたまに売っているのをみかけてそのたびに美味しそうだと思いつつ、そういえば買ったことがない……(笑)。

『越境者』
ギャル二人組のユリとアヤ、最初の内は私もヒロちゃんと同じように反発を覚えてしまいました、が、事情が明かされてみると……なんて悲しい。アヤの壮絶な体験談とユリの友情に、思わず泣いてしまいました。
そしてヒロちゃんも、男前ー!(笑)
オーナー(代理)も迫力抜群でした。
美味しそうだった食べ物……チャンポン(ポーク野菜炒め、とんかつ、野菜いための卵とじの三段重ねどんぶり)。ちんびん(黒糖入りのクレープみたいなお菓子)。
美味しそうだけど、なんてボリューム満点な(笑)。

『等価交換』
夜のマーケットが面白いなと思いました。
田中さん……あーあ(苦笑)。
美味しそうだった食べ物……ポーク玉子(オムレツ風にまとめた卵にポークと呼ばれるハムのようなものを添えた料理)。
おにぎりにすると確かにとても美味しそう。

『嵐の中の旅人たち』
このお話はなんというか、色々な意味で印象に残りました。
矢田さん、困ったさんだなーと思いつつも、この結末は……辛い。
翌日の宿の様子が、あまりにそのままというか何事もなく平和で、なんともいえないなあ。とか。
オーナー(代理)が珍しく長い間格好良かった(笑)。
美味しそうだった食べ物……ソーミンチャンプルー(ゆでたそうめんを野菜や肉と共に油でいためた料理)。
台風の最中に非常食として食べるんですね。本当、臨場感がありそう。

『トモダチ・プライス』
ヤスエさんとヒデさんと、これまたなんともいえない味わいのお話でした。
夢の国と言う訳ではけしてないんだなあ。ヒデさんの闇が深くて少しぞっとしました。
餃子パーティーは楽しそうだったんですけどねえ。ヤスエさんのお弁当も本当に美味しそうだったし。
でも結局ヒロちゃんは、ヒロちゃんらしかったです。
食堂での他人の就職祝いの宴会に巻き込まれるヒロちゃんが、とても楽しそうで好きな場面でした。

『同じじゃない』
ヒロちゃんの感情の揺れに読んでいて同調して振り回されつつ。
久保田さんご夫妻はそういうことだったのですね。私も誤解してしまってました……。世間的には変わっていても、良いご夫婦だな。奥さんがなんだかかわいらしかった。
秋のファッション、私も度肝を抜かれました(笑)。
美味しそうだった食べ物……ドゥルワカシー(田芋と具材をゆでて出し汁で練り上げた料理)。
この本の中で、私が一番食べたい!と思ったのがこのドゥルワカシーでした。でも私ではちょっと真似できなさそう(苦笑)。

『微風』
ヒロちゃんもサキちゃんも、確実に成長したなあ!
しめくくりが例のフレッチャーさんで、思わず笑ってしまいました。
どうでも良いけれど、サキちゃんは結婚するの早そうだなと思いました(笑)。四谷さんなら確実にサキちゃんを大切にしてくれるでしょうから、安心して見守っていられますね!


ああ、私も沖縄に行きたくなってきたなあ。
というか、沖縄料理を食べたいです(笑)。比嘉さんの手作りの。


姉妹版『シンデレラ・ティース』

シンデレラ・ティース (光文社文庫)シンデレラ・ティース (光文社文庫)
(2009/04/09)
坂木 司

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昨日それぞれの記事に拍手下さった方々、どうもありがとうございました♪
コメントもくださった皆さま、本当にありがとうございました!お返事少々お待ち下さい~。

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 坂木司 

『シンデレラ・ティース』坂木 司 

シンデレラ・ティース (光文社文庫)シンデレラ・ティース (光文社文庫)
(2009/04/09)
坂木 司

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咲子ことサキは幼いころのトラウマにより、歯医者が苦手。
ところが大学二年生の夏、咲子は母親の策略にひっかかり、よりにもよってその歯医者で受け付けのアルバイトをすることになってしまう。
けれどもクリニックのスタッフは個性豊かないい人ばかりで、日ごとに咲子はその場に馴染んでいく。
そんなクリニックに持ち込まれるのは、虫歯だけではなく、患者さんの心に隠された、大事な秘密も混じっていたり。
咲子とクリニックのスタッフたちは、そんな患者さんたちに心をこめて接して、協力して解決の手助けに頑張る日々。


『和菓子のアン』がとても素敵でお気に入りになった作家さん・坂木司さんの小説、二冊目を読んでみました。
過去の『活字倶楽部』の特集ページを読みかえしていて、特にこの『シンデレラ・ティース』が私好みっぽいんじゃないかな、と当たりをつけまして(笑)。
文庫版の表紙、歯磨きハムスターがとてもかわいらしくてきゅんきゅんしつつ(笑)、頁を開いて読みはじめました。

うん、これも『和菓子のアン』と同系統のお話と言っていいかな。
年若いお嬢さんが主人公の、日常ほのぼのお仕事系ミステリー。「王子様」とのほんのりロマンスもあり。とても良かったです!
すらすらと読みやすい文章で、未知の世界で知らない言葉が出てきても全然ひっかかりなく、咲子ちゃんと一緒に自然に知識を増やしつつ読めてしまいました。
読む前は、正直歯医者さんってそんなに興味ないかな(というか、私も正直あんまり良い思い出ないな)……とか思っていたのですが、いえいえ普通に面白かったです(笑)。
舞台が舞台だからか、すっきり清潔感のあるお話で、読んでいて独特の心地よさがありました。都会の夏のオアシス。
そしてこれも『和菓子のアン』と同じく、読んでいて不思議なくらいに毒を感じないです。嫌な人も出てくることは出てくるのですが、フォローがお上手で後に残らない。読み心地の良さが素晴らしいです。
それでいてきちんとミステリーになっているところが素敵!
ちょっとこんがらがってしまっている、悩みを抱えている人の心を優しく解きほぐしていく、こういう系統のミステリーは私、とても好きです。

和菓子屋さんのお話だった『和菓子のアン』ほどではさすがになかったですが、美味しそうな食べ物がさりげなくたくさん登場してきたのも、美味しいもの好きの私には嬉しいポイントでした。

「歯医者さん」、咲子ちゃんもはじめはとても怖がっていましたが(笑)、それは思っていたより大らかに受け入れられて。
「歯科治療恐怖症」なんて病気、あるんですねえ。へええ。全然知りませんでした。
そういうのを分かった上で、患者さんにとことん優しい治療を目指す、品川デンタルクリニックの方針が、とても好感が持てるものでした。
うらやましいなあ、こういう歯医者さんなら、私も進んで通うのにな(笑)。

それぞれ個性的で優秀なスタッフの皆さんも、読み込んでいく毎に、愛すべき素敵なひとたちばかりで、ああ、皆大好きです!
男性陣の中では、私は院長先生がお気に入りかな。「院長ランチ」が美味しそうです。(そこなのね。笑)
優しくて美人さんでしっかり者の女性陣も、憧れてしまいます。
『和菓子のアン』と比べて、スタッフの人数が多めだった分ひとりひとりの描写がややあっさりだった気がして、欲を言うならもう少し踏み込んで、色々読みたかったな、とも。せっかく皆さん素敵なんですから(笑)。

あ、主人公の咲子ちゃんは、いかにも育ちのいいお嬢さん、といった風情。おっとり素直で真面目でがんばりやな女の子で、微笑ましく好感を持って読んでいけました。
やや流されやすいところが欠点かなあ、と思いつつ、アルバイトに頑張る日々の中、咲子ちゃんなりに努力して、どんどん成長していってくれました。仕事の面でも、人間としても。
相手に対していつもまっすぐ、謙虚に心をこめて向かい合う姿勢が、とても良いです。
知識が足りないところは未知のジャンルだろうと真面目に勉強する姿勢も素敵。私も見習いたいものです真剣に……。

そして忘れてはいけないのが、咲子ちゃんと、クリニックのスタッフのひとり・そしてこのお話の中での主な謎とき役・四谷さんとの、ほんのりロマンス。
これが読んでいて、とても微笑ましくきゅんきゅんしました。
「サキちゃん」と皆に呼ばれている中で、ひとりだけ「咲子さん」。ここからときめきました(笑)。
手先が器用で真面目ないいひとだけれど、無愛想で自分の心には不器用な四谷さん。咲子ちゃんへの彼なりの気遣いが、素敵でした。
心を動かされるとなんでも積みあげちゃうところとか、かわいいのです。ティッシュにアイスクリームに(笑)。
慣れてくると、職業柄普段粉まみれなところとかも、お茶目でかわいいじゃありませんか。
後半になって想いが通じ合った場面やその後とか好きです。読んでいて幸せ~。
たったひとりだけに見せてくれる、あの笑顔がいいなあ。

各話ごとに感想メモを。
『シンデレラ・ティース』
読み終えて、あら、本当に『シンデレラ』(笑)。
突然やってきたあの彼、私も最初は誤解していました……そういう事情だったのかあ。いいひとだなあ。ほろり。
咲子ちゃんの去り際に四谷さんがかけたひとことが、なんだかとても好き。
高津さんの最後の笑顔も印象的でした。

『ファントムVSファントム』
読んでいて若鮎(お菓子の)を食べたくなりました……そして四谷さん作・鮎の印象が素敵過ぎる(笑)。
パイナップルのシャーベットも美味しそうだなあ。
北本さんの事情、読んでいて分かる部分があって心が痛んだので、なんとか丸く収まって良かったです。

『オランダ人のお買い物』
ここはとにかく、咲子ちゃんの涙を見て、脱脂綿とガーゼを山のように積み上げた四谷さんが、かわいくっていいひとで、きゅんときました……!
そのあとのイケメン成瀬先生の憤りと、そんな成瀬先生をやり込めるクールな葛西さんのふたりも、おかしくて好きです(笑)。このふたりも案外良いカップルになるんじゃないかな、とぼんやり思ったり思わなかったり。
歌子さんの報復、迫力あっただろうな……いい気味です。
ケーキのたわいない謎ときも、良かったです。

『遊園地のお姫様』
知花ちゃん、おだやかならぬ登場の仕方をして咲子ちゃんを応援して読んでいた私としてはひやひやでしたが……彼女の抱えていた背景は予想以上にずっしりでした。なんというか、頭の中で想像するだけで、辛い。
そしてまさかのカップリングに、ええええー!!(笑)でも、上手くいくと良いですね!
それにしても「指」って、さりげなくもなんだかとても色っぽくて、読んでいてちょっぴり恥ずかしかったり……どきどきしました(笑)。

『フレッチャーさんからの伝言』
年下の彼女になったばかりの咲子さんのこと、これ以上ないほどに真摯に想っている四谷さんが、とても格好良く素敵でした。
その想いをこれまた素直に真摯に受け止めてかえす咲子ちゃんも素敵。
フレッチャーさんのお話は、なんというか、明日から私も心がけてみようかな(笑)。


はい、読んだ後心地よく幸せになれる、素敵な日常ミステリーでした。
現代日本のオアシス(笑)・品川デンタルクリニックで、かわいらしいシンデレラは、優しい王子様に助けられつつ、自分自身でもしっかりがんばって働いていました♪
サキちゃんが、作中でしょっちゅう連絡を取り合っている友人「ヒロちゃん」、『ホテルジューシー』で彼女のお話も読めると言うことで、これも近いうちにぜひ読んでみたいです。

ホテルジューシー (角川文庫)ホテルジューシー (角川文庫)
(2010/09/25)
坂木 司

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ここ何日かの間にそれぞれの記事に拍手下さった方々、どうもありがとうございました♪
コメントも下さった方、ありがとうございます!お返事、少々お待ち下さいね~。

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 坂木司 

『和菓子のアン』坂木 司 

和菓子のアン和菓子のアン
(2010/04/20)
坂木 司

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梅本杏子は高校卒業後、デパ地下の和菓子屋『みつ屋』でアルバイトをはじめる。
プロフェッショナルだけど個性的な同僚たちと、歴史と遊び心に満ちた和菓子、それぞれの目的で和菓子を買いにやってくるお客さんたちに囲まれた、アンちゃんこと杏子の忙しくも充実した日々が始まる――。


はじめて読む作家さんのお話。
これは、結構前からずっと気になっていた本です。
あちこちで良い評価を聞いていましたし、何より食いしん坊で甘いものは特に大好きな私、和菓子が主役の青春ストーリーと聞けば、飛びつかずにいられません(笑)。

『和菓子のアン』というタイトルがまずかわいらしいし、表紙に並んでいるおまんじゅうがまたかわいいのです。
おまんじゅうはあんこみっしりで美味しそうですし、裏を見てみるときちんと『みつ屋』の印が(笑)。
よく見てみるとうっすら金箔が散らしてある?


実際に中身を読んでみると、うん、期待通りに、すごく楽しくて良いお話でした!
連作短編形式で五話それぞれ一区切りがついていて、ゆっくり読むのにも良さそうでしたが、面白かったので一気読みしてしまいました(笑)。
文章もすらすらと読みやすく親しみをもって読んでいけました。
ストーリーもキャラクターも、素直に好感が持てるものでほとんど毒を感じず、読んでいて最後まで気持ち良かったです。
キャラクターは思っていたよりずっと個性的でしたが(笑)。

アンちゃんこと杏子ちゃん、今どきの等身大の女の子と言ったら良いのかな、そして純情でとてもいいこ。
自分の容姿とかにコンプレックスを持ってる姿も共感できるもので、でも暗くなりすぎることはなくて。本人は基本的に、前向きに楽しそうに新しい仕事に馴染もうと真面目にがんばっていて、そういう雰囲気も良かったなあ。
こんな言い方すると本人には悪いかもしれないけれど、アンちゃんという名前通り、和菓子みたいな女の子なんですよね。
彼女を取り巻くひとの輪にほっこりと和んで、堅苦しさがなくて親しみやすくて、まっすぐですっと通るものがあって。あまり上手く表現できないのですが。

そんな杏子の仕事仲間になった『みつ屋』の面々、上にも書きましたが私が思っていたよりずっと個性的な人たちで、読んでいてびっくりし通しでした(笑)。
できる女性ながら中身は「オッサン」の店長・椿さんに、格好良い二十代男性なのに心は杏子以上に乙女チックな立花さん。
人畜無害そうな先輩アルバイトの桜井さんにも、秘められた過去が…(笑)。
彼らの裏の顔を知るたび内心動揺しつつも、馴染もうとがんばる常識人・杏子の姿が楽しかったです。
個性的とは言っても皆本当に良い人ばかりで、杏子のことをきちんと大切に扱っていて、そして和菓子への姿勢は超一流。
安心して笑いつつ読んでいくことができました。

私はうーん、椿店長が特にお気に入りのキャラかなあ。にこにこ優しい笑顔の女性ながら趣味嗜好とのギャップがすばらしいです。
でもやっぱりすべてひっくるめて最高にステキな大人の女性なのですよ。憧れちゃいます。
そして彼女の過去話の一片があきらかになると…うるっとしました…。
立花さんも、初登場時は杏子に同調してどうなることかと思いましたが、本性が出てくると…どうしましょう、反則的に可愛いじゃありませんか(笑)。彼の独特の魅力にはまりそうです。
格好良いところは普通にさらっと格好良いのもポイント高いな♪
そうそう、立花さんの師匠もこれまた個性的な…。この人も読み込むごとに好きでした。
おはぎのやりとりが格好良かったです。

私の期待通り、和菓子屋さんの和菓子についても本当に色々具体的に書かれていて、読んでいてすごく面白かったです。
季節の上生菓子とか、今まできちんと見たこともなかったけれど、こんなに季節感とか色々こまやかに考えて作られているんだなあ…。素敵です。ひとつひとつのお菓子がロマンですね!
「デパ地下」の和菓子屋さんならではのお菓子の売り方も、読んでいてへええ…と感心することの連続で面白かったです。
時間帯によって売れるお菓子が違うのかあ。言われてみれば納得。
デパ地下の裏事情をのぞけるなんて楽しい!わくわくしました(笑)。
『みつ屋』以外のお店の人たちとの交流も、こんな感じなんだなあ…とか想像して楽しかったです。

そして、和菓子をもとめてやってくるお客さんたちと店の人たちとのやりとりが、ミステリーになっているんですよね。私はあんまりミステリーと意識して読んでいなかったのですが、これもなかなか。
椿店長たちが和菓子の豊富な知識と推察力で、謎を鮮やかに解きほぐしていく姿、読んでいて気持ち良く楽しかったです。そしてそれぞれ明らかになったお客さんたちの想いに、しんみりしたり、ほっこりしたり。
七夕のお菓子と、杉山さまの『松風』のお話が、好きでした。
師匠が残していった謎にしっかり立ち向かっていった杏子も格好良かったな(笑)。半殺しは、ちょっと聞いたことがありましたそういえば。
あと、クリスマスの楠田さんも素敵でした。

ラストで喫茶店でスフレを一緒に食べている杏子と立花さん、結構良い雰囲気をかもし出していたような気がするので、ちょっと進展を期待しちゃいます(笑)。
杏子が立花さんの言葉に傷ついたのも、ほんの少しくらいは相手に好意があったから、と考えられなくもないと思うんですよね(笑)。(いやまあ、あんなこと言われたら誰からでも嫌ですけれどね。)

このお話、とにかくデパ地下へ行きたい!デパ地下の和菓子屋さんへ今すぐ行ってみたい!みたいに、読んでいるとうずうずしてきて、いてもたってもいられなくなってきました(笑)。
実は読み終えて二三日後に、地元のデパートのデパ地下をちょっとのぞきに行ってきました。
季節の上生菓子、きちんと美しくショーケースにありました。名前もかたちも一月らしくて風流できれい。
今の季節らしく、いちご大福を購入して美味しくいただきました。

うーん、洋菓子も良いけれど(あのスフレ美味しそうでしたねえ…笑。)、日本人なのだから、和菓子の魅力ももうちょっと知っていた方が良いよなあ、と読んでいてしみじみ思いました。
言われてみれば、真夏でも基本常温で保存できるとか、日本の気候にあっているからこそなんですね。
これからは自分の興味の範囲に、和菓子ももっとばしばし取り入れていくことにします(笑)。


昨日それぞれの記事に拍手下さった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 坂木司