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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『これは経費で落ちません!~経理部の森若さん~4』青木 祐子 




経理部の新入社員・麻吹美華の率直すぎる態度と言葉遣いに、平穏な会社員生活を送りたい沙名子は、気苦労が絶えない。
私生活では太陽と付き合い始めたものの、初めての恋愛にペースを乱され戸惑い気味。
そんな彼女はある日、社員同士の不倫の現場を偶然目撃してしまい——。


『これは経費で落ちません!』シリーズ第四弾。楽しみに待っていました♪
前巻ラストで登場した新入社員さんのことと沙名子さん自身の恋愛のことが特に気になっていました。

ああ、やっぱりこのシリーズ面白いです~!!大好き。
というか、沙名子さんのシステマティックな有能っぷりと内心の本音と容赦ないつっこみが今回も冴えわたっていて、読んでいて面白すぎ。すかっとします。
あと会社員生活での人間関係(特に女性社員間の)のややこしさ難しさと、それでも何とか日常として今日も回っていて、なかにいれば結構居心地よく楽しいことだってちゃんとあったりする、この独特の空気が、読んでいてわかるわかる!!と共感でいっぱいです。
森若さん本当に格好いいな~憧れです。
恋愛方向ではまるで不慣れで、太陽にペースを乱されいらっとしつつも実際はちゃんと彼に恋しているのが端々から伺えて、陰で努力したり悩んだり、そういう可愛らしいところもまた、彼女の魅力です。たまらない。

さて今回は、経理の仕事的には特に大事件はなかったものの、社内で色々なものが大きく動いて、そしてこの一巻だけでは解決できていない案件がいくつか。
沙名子さん自身も以前のスタイルから大きく揺らいでいるような気がしました。

まず心配だった中途採用社員の美華さん。
ほ、本当に大丈夫だろうか……と最初の人間関係の案の定の摩擦を読んでいて心配していましたが、実際のところは仕事もできるし悪い人ではないし、経理部の皆とは何とか上手くやっていけるようにまでなっていて、良かったな。
彼女との上手い仕事のやり方を把握した経理部の面々が偉いと思いました。
特に真夕ちゃんと美華さんが関係を修復できたのは、ほっとしました。
美華さんのお人柄は、なんというか、めんどくさいというか、損だなあ。
仕事ができないいいひとより仕事ができる性格に問題があるひとの方がいいというのはちょっとわが身に突き刺さりました(汗)。
敵の敵は味方とかやだよーとか思うけれどでも分かる……そういうこともある。
最初の方の由香利さんの「しんかんせん」には和みました。確かにこういうやりとりで大分気持ちが軽くなるものです。わかります!
最後の方で美華さんと沙名子さん、実はけっこういいコンビになるのかも?とか思ってしまった。それぞれの得意分野をいかして?
シナモンスティックは衝撃的でした。確かにお菓子に見えなくはないけれど。

そして太陽とのお付き合い編。
バレンタインの手作りチョコ、やる気なさげと思いきや、作るとなったら事前に下準備をきっちりして自分が納得いくものを渡す沙名子さんが相変わらずらしすぎる……そしてそんなに一生懸命な沙名子さんが非常に可愛い。
オーブンレンジを持っていないってなんか沙名子さんらしい。
太陽に近づいてくる意味深な後輩にどうなることかと思いましたが、私が思っていたより沙名子さんは太陽のことを好きだったようでした。あの連絡先を握りつぶした場面にはにやり。
相変わらず明るく若干チャラい太陽で、沙名子さん本当に彼でいいのか……?と未だに若干思っている私ですが(失礼)、沙名子さんのスタイルをちゃんと受け入れてありのままの彼女をかわいいと思っているところは、やっぱりいいなと思います。なかなかできないと思う。
ふたりの距離が目に見えて一段階縮まって、口調がくだけてきたのにちょっとドキドキしてしまいます。
それにしてもあの後輩さんを鎌本さんにまるっと託した太陽の行動もなかなかすごい……。え、え、そんなのありなんだ。
「きれいなもの、おいしいものが大好きで、猫が好きで、ときどき変なことで悩み~」って、沙名子さんのこと、良く理解しているじゃないですか、太陽さん。115頁のこのあたり、ちょっと感動してしまいました。

石鹸マイスター留田さんのエピソードは想像してしまったほどの不穏さはなく、ちょっとほっとしたところに、隠し爆弾の存在が!
うわあ、そうきますか!!これは確かに沙名子さん的には衝撃すぎる。
このすぐ次のエピソードのタイトルが『本命は落ちません、義理なら落ちます』だったのに、色々深読みして妄想してしまった。(勇太郎さんにとっての本命とは??)
あと有本アリナさんの件、まだ終わってなかったのか……うう、あまり気分が良いお話じゃないなー。まさかチョコレートの件からここまで分かってしまうとは。

エピローグの真夕ちゃん視点のひとこまは、毎回和みます。
最中の出所がさりげに意味深すぎる。この暗喩の使い方(?)が青木先生らしくて好きです。
太陽に彼女ができたというのは当たっていますが、真夕ちゃんが沙名子さんの恋人に気づくのは、いつになるかなあ。
天天コーポレーション、ひとまず今日も平和でなによりです。

色々なエピソードを読んでいて、人に誰でも、良いところもちょっとダメなところもひとしく持っているんだよなと、当たり前のことを思ったりしました。沙名子さんも含めて。
それをお互い認め合って仕事して、やっぱりみんな同じなんですよね。みんながんばってる。

マリナさんはまあいいとして、あの不倫の一件が未解決なのは気になります。
続きが読めるのを楽しみにしています!
そして青木先生のブログを読ませていただいていて、いつかヴィクロテのエピソードが読める時を、いつまでも楽しみに待っています。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 青木祐子 

『わが家は祇園の拝み屋さん8 祭りの夜と青い春の秘めごと』望月 麻衣 




澪人が作った対策チームの頑張りによって平和が戻ってきた京都。
ついに澪人と付き合い始めた小春だが、彼の態度はなぜかそっけなく目も合わせてくれない。
彼の態度に不安を覚えながらも、小春はチームのみんなで祇園祭を楽しもうと準備するのだが——。


『わが家は祇園の拝み屋さん』シリーズ第八弾。
新章スタートとのことで。
表紙イラスト、本を手に顔を少し隠す小春ちゃんの表情と仕草がかわいらしくて、ときめいてしかたありません。
どことなく愁いを秘めた澪人さんの表情も、素敵です。

前世の事、京都に迫る危機の事にひと段落がつき、ファンタジー要素は控えめ。物語はささやかな日常に戻ってきた感じ。
ただ小春と澪人をはじめ、チームのメンバー達それぞれの人間関係の変化もあり、ロマンスももちろんあり、とても楽しく読めました♪
このシリーズはいつもながらに比較的薄めの文庫本一冊に、すらすら馴染みやすい文章で楽しみどころがぎゅっとつまっていて、満足感が高いのです。
澪人さん達のはんなり京都弁もこのシリーズ独自の魅力。

なんといってもお付き合いをはじめたての小春ちゃんと澪人さんのことがいちばん気になっていたのですが。
確かに澪人さん、そっけない……。おーい……。
それは確かに、戸惑いとかあるのも推測できるけれども、こんなに小春ちゃんがそっけない態度に悩み傷ついているのに、いっこうに態度を改善させない澪人さん、読んでいて正直もどかしくてしかたなく、だんだん腹もたってきました(苦笑)。
とにかくもう、ひとり不安に悩みまくる小春ちゃんが、読んでいてかわいそうすぎて。身を引くところまで思い詰めてしまうなんて!
……最後の祇園祭のときにようやく本音を言ってくれて、安心しましたけれどね。
確かにまあ、澪人さんと小春ちゃんならではの悩みですよねそれは。しかたない。納得。好きでたまらない相手に自分の本心を奥深くまで見抜かれるかもというのは、確かに怖い。
それでも覚悟を決めて、自分の過去や本心を語る澪人さんの場面にきゅんときました。
彼が動物に対して持っている特殊能力の秘密も明らかに。最後に母に戻った狐さんのエピソード、素敵でした。
なにより素敵だったのははじめてのキスの場面でした。
作中で語られた、特殊能力持ちの人間にとってはなによりも特別で大変な行為だというキスシーン、ふたりとも相性よく幸せ感がよく伝わってきて、読んでいる私もじわーっと幸せでした。良かったねえ。
そして最後の最後に出てきたコウメちゃん、グッドタイミングすぎます。まあ今のところはこのあたりがふたりにとって、妥当ですよね(笑)。
いやあ、それにしても、あのはんなりやわらかで色気のある京都弁で切々と愛を語る澪人さん、本人があくまで真面目で真剣なだけに、破壊力がすごい。読んでいるこちらがちょっと恥ずかしい(笑)。

そんな小春ちゃん達の側でぎこちなさを感じてそれぞれ心配するチームのメンバー達も、皆もうこのシリーズのキャラとしてしっくり馴染んでいて私も愛着がわいていて、読んでいていとおしくてなりませんでした。
朔也君と澪人さん、なんか一見正反対に思えるのだけれど、案外着実に友情を育みつつあるようで、うん、良いですね。彼らならではの悩みを共有できるのっていいですね。澪人さんの麗しの君な外見の裏にある「くそまじめ」さを朔也君がちゃんと認めて尊敬して心配している感じが伝わってくるのがいい。
賢くてしっかり者で情にあつい愛衣ちゃんも、可愛いもの大好きな自分を段々認められるようになってきた由里子先輩も、それぞれ大好きです。
由里子先輩と朔也君は、前巻くらいからかな、姉弟みたいな関係かな~。お似合いだな~。とひそかに胸の内で思っていました。
ふたり相性よさそうなので、ロマンスに発展しても、素敵だな。
由里子先輩の意外にちょっと抜けているところを朔也君がさりげなくフォローしているところとか、読んでいてほっこりします。
あと今回新たにちょっと気になったのは、愛衣ちゃんと和人さんでしょうか!
このふたりはまだちょっと未知数ですが、年の割にしっかりしていてファザコンっぽい愛衣ちゃんには(笑)、和人さんみたいな人はお似合いかもなあと思います。

そうそう、和人さんと澪人さんの兄弟関係も、今回やっぱりいいなあと思いました。
和人さんの澪人さんへの愛情にちょっとほろっときました。
小春ちゃんが澪人さんに前世の親子関係のことを打ち明けた場面も、付き合いたての初々しいカップルにはなんだかあべこべな会話でしたが、でもしっくり馴染んでいて彼の感謝の気持ちがひしひしと伝わってきて、また胸がいっぱいになりました。
キャベツの千切りが不得意な末っ子澪人さんのエピソードにほのぼのしました。
(そしてその後しれっとスライサーを取り出した小春ちゃん達女性陣ににくすりと。笑)

ミステリー研究会の瞳ちゃんのおうちのおじいさんとおばあさんの会話にしんみりしました。(あのお話で隠れていた小春ちゃんのこと「斎王」と呼び共によろしくお願いされる場面が好きでした)
あと、吉乃さんと弥生さんの昔語りも良かったですねえ~。
松子さんを救った吉乃さんのきっぱりした態度と台詞に読んでいる私も救われる思いでした。
その後の宗次朗さんの台詞も重ねて、そうですよね、完璧な人間なんて人間じゃないですよね。未熟なところを持っててもいいんですよね。うんうん。
吉乃さんだって完全な人間ではなく現に親子関係ではいざこざもあったりしましたしね。そして傍らにいる弥生さんの存在もやはり尊い。

あとこのお話で特に印象だったのは、祇園祭の描写。
『寺町三条のホームズ』シリーズの一巻目のいちばん盛り上がるところでしたものね。やっぱり思い出して重ね合わせてしまいます。(それにしても清貴君の方は付き合いはじめのあたりも少なくとも外面は本当にそつがなかったですよね……と今回澪人さんとやっぱりちょっと比べてしまいました。澪人さんの不器用さがいとおしいです。いや、清貴君の器用さも好きなのですが)
吉乃さんのひまわりの浴衣を身に着ける小春ちゃん、小春ちゃんらしいです。ふふふ。
(あのお着換えの場面の事件、ラストまで読んでから読み返すととてもたのしい……吉乃さんも慌てたでしょうねえ)
やっぱり祇園祭、一度この目で見物してみたいなと改めて思いました。
焼きそばやたこ焼きやアメリカンドッグ、さくら庵でのプチ縁日も、楽しそうだしおいしそうでした!

和菓子の描写が今回ちょっと少なめだったかな?夏色団子の涼し気な見た目とさわやかな美味しさが伝わってきて、この蒸し暑い夜に、私もいただいてみたいです。

それにしても気になるのがラストの宗次朗さんの衝撃発言。
宗次朗さんと吉乃さんのいつものやりとりがなくなって、いつも店ででんとかまえて揺るぎなかった宗次朗さんがいなくなるのは、ちょっと気掛かり……。どう転がってゆくのか。
続きがとても気になります。

最後の掌編、私は既読のものでしたが、文庫にこうしてきちんとおさめられたのは、嬉しいです!!

7月に出るらしいホームズさんの新刊も併せてとても楽しみにしています。


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 望月麻衣 

『蘇我の娘の古事記』周防 柳 




大化の改新~壬申の乱の時代。
蘇我氏の元国史の編纂にも携わってきた渡来人の船恵尺の家には、物語を愛する盲目の美しい娘コダマがいた。
彼女と兄のヤマドリは、動乱の時代の波にさらわれ巻き込まれつつも、父や周囲の人々に見守られ成長し絆を育んでゆく——。


『古事記』がいかに形作られ現代まで受け継がれてきたのかを辿る物語。
陰謀はびこる飛鳥時代の宮中を舞台に、作者さんがみずみずしく豊かな物語を広げてゆかれています。

古代史好きで、『古事記』にも親しみがある私としては、ものすごく面白かったです!!
このタイトルにぴんときたひとは、読んで損はないと思います。
コダマというひとりの娘が物語のメインで、彼女の出生の秘密、成長や恋のお話もとても素敵で、わくわくどきどきしました。
コダマとヤマドリの兄妹ふたりの絆と愛情が美しく真摯で泣ける。
そんな子供たちを秘密を抱えて見守る恵尺お父さんもまた良いのです。

この時代の出来事を、蘇我氏サイド、あるいは天智天皇&大友皇子サイドで見ることは私はあまりなかったので、新鮮でした。
この時代を生き抜くのって本当にサバイバルだな。
個人の感情だけで動いて、結果一族全体を危機にさらしてしまったらもう取り返しのつかない。そう考えると怖い……。
優しく穏やかな恵尺の苦労がしのばれました。

一方国史編纂に並々ならぬ情熱をかけて一生の業とする恵尺さん。
大化の改新時に、そうか、蝦夷はそういうことだったのか……とか思いました。
神さまの時代から伝説の大王の時代から各豪族たちの由来から、ある程度創作の物語を編むように作り上げてゆく様が、なんとも興味深く面白かったです。蘇我氏の成り立ちエピソードにそんな裏があったのかもとか想像するとたのしい。
さらに娘のコダマは、歴史の中の人々が、どんな風な性格でどんな風に生きて恋をしていたのか、隙間を埋めるような物語を愛し、興味深い昔語りを聞いては記憶してゆきます。
各章の合間合間に挿入される、古事記の中の各エピソードの元になっていると思われる昔語りも、親しみやすい語りで、語り手の主観も入っていたりして、なんだか新鮮!

兄と妹の恋、確かに印象的なエピソードが多いなと思いました。
確かにいとしいひとを「妹(いも)」と呼びますものね。
サホビコとサホヒメときくと真っ先に氷室冴子さんの『銀の海 金の大地』を思い浮かべてしまう私です。兄と大王の間で苦悩するサホヒメがかなしい。
そしてそれはヤマドリとコダマの兄妹の関係にも重なってゆく。
気持ちを通じ合わせることができたふたりの場面の幸福感に眩暈がするほどでした。
コダマに忠実で頼もしい小熊がいい。

ただし時代はさらにひとつ大きくうねり、コダマを守るため近江朝廷に忠実に尽くすヤマドリの身にも、暗雲が。
天智天皇と大海人皇子の仲はどちらが善悪とかなんか言い切れないけれど、大海人皇子も本当に食えないお人ですね。大友皇子サイドからみると、確かに、ちょっとなんだかなと思ってしまう……。
生まれ落ちた環境が不幸だったとしかいえない大友皇子。絶望的な状況でも客観的にものごとを見られて淡々とたたずんでいる姿は好感が持てました。
最後のヤマドリと大友皇子の会話の場面が泣けました。この人生、妻のために生きなかったことはないのです。というヤマドリのブレのない愛情、格好いい……すごく切ないけれど……。
そういえばかつて中大兄皇子がヤマドリとコダマを見逃したのは、自身と間人皇女のことを重ね合わせたのかしらとか、ちょっと思ったりしました。
そうそう、皇極天皇が抱えていた秘密にも、うなりました。確かにそういうことなら中大兄皇子があの凶行に及んだのも、説得力があります。

里の方で恵尺が受けた制裁のむごたらしさに言葉を失いました。
白萩の恨みもまた十分すぎるほどわかるんだよな……辛いよう。
子供達と忠実な小熊、大野の尼、そして大兄、頼れる人達がコダマにはいて、そしていずれ物語が彼女を生かして、悲しい中でも救われる思いでした。
大兄(道昭)、ヤマドリとはまた違う頼れる愛情たっぷりのお兄ちゃんで、素敵なんですよね!天武天皇に一矢報いた(?)場面は痛快でした。

このお話、主人公達に惨たらしい仕打ちをする人間でも完全な悪人という書かれ方をしている人がほぼいなくて(中臣鎌足の女性関係の悲しさはなんだかちょっと印象的だった)、そういうところも良かったなと。
だからこそ人が人を欺き命を奪っていく展開が、よけいにやるせなくも思えるのですが。

『古事記』の挿入エピソード、私が好きなコノハナサクヤヒメやヤマトタケルノミコトのものもあって、嬉しかったです。
そうそう、コノハナサクヤヒメの旦那さんの大王は勝手すぎるんですよ!!でも自分に自信がなかった人なんだよな~。語り手がバッサリ斬りつつフォローもしていてなんだか面白かった。
ヤマトタケルノミコトは、私にとってのもう一つの彼の物語、荻原規子さんの『白鳥異伝』を読んで、ようやく救われる思いがします。
たくさん出てくる地名の由来や誰々の子孫やそういうのが、むき出しの悲劇性をいくらか薄めているような気は、しますね。個人の主観ですが。

素敵な一冊でした。
作者さんの他作品もまたチェックしてみよう。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 歴史もの

タグ: 周防柳 

『下鴨アンティーク アリスの宝箱』白川 紺子 




『下鴨アンティーク』シリーズ最終巻。短編集。
初夏の糺の森で不思議な紳士に出会う幸、香水瓶を返してと女性が訪ねてきてから彼女の幻影を見るようになった春野、額紫陽花のブローチが回想する最初の持ち主だったお嬢様。
野々宮の家族や近しい人々が語る、時代を越えて受け継がれるアンティークの品と、受け継がれる想いを描いた、六つの物語。


『下鴨アンティーク』シリーズ、前巻にてクライマックスを迎えていたのですが、今回が最終巻とのことで。
後日談的エピソードも含めた短編集となっていました。
『アリスと宝箱』のサブタイトルで、一巻目の『アリスと紫式部』からまたひとつつながりが回収されたみたいな、古くからの縁やつながりを受け継いでゆくこのシリーズらしくて素敵です。(ちなみに紫式部は前巻の『白鳥と紫式部』ですでに回収されている)

表紙、淡いピンクの地に作中に出てきた花々、子虎ちゃんが非常に可愛らしい。露をのせた鶯の落とし文も素敵です。

一話一話が極上のきらめきをやどす宝石のようで、一冊がまさに「宝箱」。
一気に読み進めるにはあまりにもったいなくて、読んではしばし手をとめてゆったり余韻に浸る……なんてことを繰り返しつつ、読了。(それでも続きが気になり最終的にはやはり一気読み)
素晴らしかったです。シリーズのファンの私的には最後の最後で最高のご褒美をいただけた気分でした。

語り手が鹿乃ちゃんメインから離れて、作中でモチーフとなる素材も着物以外のアンティーク小物に。
謎を解きあかしていくやり方もそれぞれのお話の主人公でそれぞれ違いがあって、ちょっと新鮮で面白かったです。
鹿乃ちゃんの着物への対処はなんというか、まさしく、巫女だったんだなと。野々宮の由緒正しい巫女姫。
かなり昔の一族の人達のお話もあったりして、野々宮家の人々が、ますます私は大好きになってゆきます。

では各話ごとに少し感想を。
『鶯の落とし文』
「葉には血が通っている気がする」からはじまる、幸ちゃんが語る糺の森の緑のみずみずしく力強い描写に、最初からすっかりひきつけられてしまいました。
幸ちゃんと良鷹さんと鹿乃ちゃん、まだ少しぎこちないけれどひとつの「家族」として暮らしていて、自分専用のお箸のささやかな描写もなんだかじわっときて、ああ、良かったなと安心したのでした。
良鷹さんつくづく面倒見のいいひとだなあ。チーズ入りのオムライスがとってもとっても美味しそうでした。
幸ちゃん視点から眺める良鷹と鹿乃は、美しい兄妹なのだなと、改めて。
なんとなく鹿乃ちゃんのイメージは私の中では黒髪の少女だったので、栗色の髪に白い肌というのはちょっと意外だったかな~。でも確かにしっくり馴染む気もします。思えば以前読んだプチまんが版の鹿乃ちゃんは黒髪ではなかったな……。
新君と澪ちゃんという友人もできて、良かったなと思いました。いいこたちです。
「鶯の落とし文」名前が風流だなあと思いました。
良鷹さんが引き受けた案件を幸ちゃんがほぼ一人で解決して、「秘密」と答えて、良鷹もそれを受け止めるも特にそれ以上の説明は求めない、この二人独特の距離感が、好きだなと思いました。
幸ちゃんの心の中の宝石箱を大切にしてくれる人で良かった。

『青時雨の客人』
春野さんの物語。
謎に満ちていた春野さんのことが、ようやく少し分かってきたかなあというお話でした。
ときどき忘れているけれど、彼も普通の大学生なのだなと。
やっかいなものに取りつかれて災難な春野さんでしたが、菅谷君の助けがとても頼もしかったです。このふたりの友情いいなあ。
牡丹の姉妹のふたりそれぞれの気持ちが分かるだけに、なんだかとてもやるせない。
「青時雨」とは素敵な言葉だなと思いました。今度から使ってみよう。
最後のごちそうがからあげ一択なのは、男子学生っぽい!

『額の花』
額紫陽花のブローチが語り手の小さな物語。
ものが語り手のお話、『契約結婚はじめました。』にちょっと重ね合わせてしまいました。
芙二子さん、千鶴さん、鹿乃ちゃん、彼女たちの傍らにいる大切な男性たち。美しくいわくつきのブローチへのそれぞれの接し方があって、それぞれが素敵だなと思いました。慶介さんの美はいまひとつ解さずとも古の風習めいたことには詳しいところがいかにもらしくて微笑ましかった。
千枝子お嬢様のその後の物語も明らかになって、大団円、良かったです。

『白帝の匂い袋』
野々宮家に代々伝わる匂い袋から、また少し昔の世代の物語へ。
東京から事情持ちでお嫁にやってきた鈴さんと、当主の青年季秋さんが少しずつ距離感を縮めてゆく様が何とも初々しく微笑ましく、峰子お母さんも夏子さん夕子さん姉妹も皆いいひとで、素敵なお話でした。
鈴さんの実家に巣食う闇は辛かったですが。鈴さん本人も、鈴さんに意地悪と思えたお母さまも、これまでどんな辛い思いをされてきたのか……。最後まで分からなかった彼女の愛情にほろりときました。
愛想が悪くてちょっと冷たそうだけれど心根は優しくてセンスのいい季秋さんは、良鷹さんとどこか血のつながりを感じるというか。
明るくて屈託がない姉妹もいいな!峰子お母さまの笑顔も好きだ(笑)。
この時代の京都の街の様子も新鮮でした。汐子さんの時代のお話とはまたちょっと雰囲気が違う。

『一陽来復』
冬至の日に慧さんが出会った不思議のエピソード。
鹿乃ちゃんと慧さんがラブラブで、どうもごちそうさまでした!
「かわいいのはお前だよ」という慧さんの内心の台詞が甘い。
ひとつひとつのやりとりから推測するだにふたりは順調にラブラブみたいなので、虎の抱え帯を贈った良鷹お兄ちゃんの内心も分からないではないなと思うのでした……ふふふ。
そして確かに慧さんは鹿乃ちゃんには一生絶対に敵わないですね!

『山吹の面影』
締めは再び良鷹と真帆さん、幸ちゃんが主役の物語。
良鷹兄妹の両親が遺したものを辿ってゆく物語であり、ふさわしい物語だったなと思いました。
弥生さんの余計なことは一切口にしないところが確かにすごいと思いました。
良鷹さんの助手というか理解者として、いや友人としてか、ますますしっくり馴染んで違和感のない真帆さんもやはりすごい。
狐さんと消えた花嫁さんのエピソード、不思議でしたがオチはふんわり幸せな気持ちになれるもので、良鷹&真帆メインのお話のいつもの痛々しさはあまりなく、ほっとしました。
山吹の花畑で狐と語らう幸ちゃん、彼女を捜しにやってきた良鷹さん、印象的で素敵な場面でした。狐さんに鮭のおにぎりをわたす幸ちゃんがかわいい。
植物園でのお弁当がたまごサンドとローストビーフサンドなのもいかにも良鷹さんと真帆さんで、良いです。

読書メーターの他の方の感想を読ませていただいていると良鷹さんと幸ちゃんが将来くっつくのではいう方が多くて、確かにと私も今回ちょっと思ってしまった。しかし鹿乃ちゃんと慧さんもかなりの年の差カップルなのに良鷹さんたちだとさらに輪をかけて年の差ですよね……それはそれで美味しいですが(笑)。
けれどやっぱり私は真帆さんを推したいかなー。今くらいの友情メインのさっぱりした関係がふたりには合ってるような気がしないではないですけれど、でもでも!
欲を言えば良鷹さんがお嫁さんを迎えるまでシリーズを読みたかったな、とは思います。

ともあれ最後の最後までとても素晴らしい物語でした。すでに何度も読み返しては浸ってます。
急に蒸し暑くなった夜も、この本を読んでいると、糺の森の濃密な新緑や牡丹の亡霊のじっとりした空気や紫陽花の美しさの引き立て役であるような心地さえしました。
コバルト文庫のお姉さんオレンジ文庫の生み出した傑作だと私は個人的に思っています。

白川紺子さん作品連続刊行、来月は『契約結婚はじめました』の三作目ですね。
こちらも今からとっても楽しみです。


ここ二週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 白川紺子 

『後宮の烏』白川 紺子 




後宮の奥深くには、妃でありながら夜伽をすることのない、特別な妃が住んでいる。
「烏妃」と呼ばれる彼女は、不思議な術を使い、呪殺から失せもの探しまで、女たちの願いを引き受けてくれるという。
時の皇帝・高峻は、ある以来のために、烏妃の元を訪れる。
彼がまみえたのは、他に並び立つ者のないほど美しい少女であった——。


白川紺子さんのオレンジ文庫の新作。
作者さんとしては珍しい(はじめて?)、中華ものファンタジー小説でした。
Web連載も読んでいて好きだったので、書籍化されるのを楽しみにしていました。

まずはとにかく表紙イラストのうるわしさにうっとりため息。
けぶるまつげや結い上げられた髪や装身具、牡丹の花、黒い衣、細やかな描写のそこかしこに抑えられた色気を感じてたまらないです。
黒一色の衣に鮮やかな赤の牡丹が映えますねえ。まとうのがまだあどけなさの残る少女なので全体的に初々しい雰囲気でまとまっているのがまた素敵。
よくよくみてみると背後にヒーローの姿も浮き上がっています。端正なたたずまいです。

Webで読んでいた第一話からはじまる連作短編形式の物語。
この表紙イラストのイメージにたがわない、美しいお話。夜と影の香りがするお話でした。ひっそり静まり返った闇の中をはだしでひたひた歩き回って世界を愛でるような。「夜明宮」という名が良いですね。
独特の世界観や後宮の制度、お花や装身具や各種小物遣いや諸々の描写が細部までゆきとどいていて上品で美しい。うっとりです。
私は中華もの少女小説というと、まずは今野緒雪さんの『夢の宮』シリーズが昔から大好きなのですが、その流れをくむような美しく上品でミステリアスな雰囲気が、たまらない!!読んでいて嬉しくなってきちゃいました。

ヒロインの烏妃・寿雪は、先代ゆずりの古風な話し方をする、まだいとけない美少女。
その生い立ちゆえ他人に気を許すことができずにつんつんしているけれど、困った人が目の前にいれば結局は手を差し伸べずにいられない、お人好しな彼女です。
彼女の不思議の力の描写もお上手です。牡丹の花を媒介とするところが美しいです。
巫女姫のように力を使い女の苦しみを払ってゆく姿は、どこか『下鴨アンティーク』の鹿乃ちゃんに通ずるものもあるな、と。
そして甘いものにはめっぽう弱いところが可愛い。蓮の実の包子がおいしそう。

そんな彼女の元を訪れた、青年皇帝・高峻。
皇帝となる前皇太后に母や友を殺され辛酸をなめて過ごしてきた彼は、静かで端正なたたずまいの影に、また大きな孤独と傷を抱えていて。
寿雪と高峻は、孤独と傷をかかえた似た者同士で、そんな彼らが心通わせ少しずつ絆を育んでゆく様が、心がじわじわ温もるというか、良かったです。
皇太后への復讐を果たした高峻が寿雪を訪れて独白する場面が特に印象的でした。

心通わせても烏妃とは帝の夜伽をしない身分の妃で。ふたりの関係はあくまでそのまま。
物語は、華やかな後宮の影でひそやかに散った悲しい恋人たちの無念をいくつも癒しつつ、「烏妃」の秘密そのものまで、少しずつつながってゆきます。
なるほどねえ。そういう「禁忌」か。
思っていたよりも壮大な王朝の歴史物語を紐解くことになり、ほうっとため息がもれました。
なんというか、態度はつんけんしていても根は優しく、そして過去をけして恨まない寿雪だからこそ、真実がつまびらかにされても、どこか救いが残っているというか。
その真実を受けての高峻の誠実さもまた胸に響きました。
ふたりで見出したふたりの新しい関係、今の段階では、最大限に良いものだと思いました。
今まで寿雪に冷たかった衛青が寿雪を認めたっぽいのが良かった!(笑)

『翡翠の耳飾り』
郭晧に悪く取られたまま訂正しようとしない高峻に、寿雪がそっと助け舟を出した場面が、印象的で良かったなあ。高峻の不器用さに胸がきゅうっとしました。
班鶯女の件はどうしようもない辛い事件だったけれど、後宮に捨て身の覚悟で真実を調べに来た郭晧の誠実さに、救われる思いがしました。
九九が可愛らしくよいこで寿雪といいコンビだったので、彼女の侍女に迎えられて、嬉しかったです。

『花笛』
花嬢素敵な方ですねえ!名前も素敵。高峻の姉のような立ち位置の佳人で、寿雪にも良くしてくれていて。
過去の恋を未だ忘れずそっと抱いて微笑んでいる様も気高く胸が詰まりました。
花笛の場面、じんときました。
寿雪の親族とおぼしきあやしい人物も登場。

『雲雀公主』
「ひばりひめ」という章タイトルからして素敵です!!
忘れられて暮らしていた寂しい公主様とお友達になった侍女のお話。
彼女が命を落とした本当の理由が他人の悪意によるものではなかったとはいえ、切ない。
寿雪が九九との距離感を量りかねて一人悩んでいる様も印象的でした。九九みたいないいこが侍女にきてくれて、良かった。
不器用な寿雪ととっても器用な細工物を作る高峻のやりとりも微笑ましかったです。確かにどこまでも飛んでゆけそう。

『玻璃に祈る』
ラスボス?冰月でしたが、愛する人の未練をぬぐうと同時に救われていて、これは手遅れではなかったということかな。良かったです。
古の伝説交じりの物語になってきて、こういうの好きなので読んでいて楽しかった。
皇太后の呪詛を身体を張って止めていた彼らの存在に、読んでいて涙がこぼれました。
ふたりの無償の強い愛情がひたひたとせまってくるラストでした。

鳥の名前でそろえられたお妃の名前、とりあえず空いたままの寵姫の座、なんとなくそうなるのかも?という流れはありつつ、ふたりには今のままの関係でいてほしいな、という思いもあり。うむむ。
本当にあるかなしかのこの微糖さ加減がたまらないのです~!大好き。
これからどうなるのか分からないけれど、ふたりの幸せを、まずは第一に願いたいです。
どうなっても、彼と彼女と周囲の人達ならば、色々苦労はしても、最終的には大丈夫な気がします。
続きは読めるのかしら。もし読めたらうれしいなあ。

白川紺子さん、来月の『下鴨アンティーク』の最終巻も、再来月の『契約結婚はじめました』も、とっても楽しみにしています♪

カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 白川紺子 

『かくりよの宿飯八 あやかしお宿が町おこしします。』友麻 碧 




『かくりよの宿飯』シリーズ第八弾。
大旦那様を取り戻す協力を得るため、仲間たちと北の地へと向かう葵。
美しくも閉ざされた雪国で葵を待っていたのは、北の美味しい名産品の数々と、この地に嫁いでいた春日との再会。
そして葵は、天神屋に協力する見返りに、雪国復興のための観光名物料理をプロデュースしてほしいと持ち掛けられる——。


お話はますます盛り上がり核心に迫ってきた感のある、かくりよの宿飯シリーズ。
もう八巻目とはすごい。安定の面白さがあります。そして安定のおいしそうなごはん。
別シリーズ『浅草鬼嫁日記』と連動して思いがけないところからお互いの伏線が少しずつ紐解かれていく感じなのも、読み応えあってどきどきです。

表紙イラストが相変わらず皆勢揃いでにぎやかで楽しい。
仲睦まじい若夫婦の様子にときめきます。春日のくりっとしたおめめがかわいい~!
そしてかっぽう着姿の葵ちゃんの仕草もとても可愛らしい。彼女を見守る銀次さんのまなざしの優しいこと。
そして大旦那様……雪ダルマ?デザート??(笑)


例によってネタバレ交じりで感想をつらつら書き連ねていきます。


まずは私、お嫁入りしていった春日のその後がずっと気になっていたので、今回彼女の嫁ぎ先がメインになって、嬉しかったです!
若奥様になっても春日は変わらず人懐っこく相手によって態度を変えないちゃっかり目端のきく女の子で、当たり前のように葵ちゃん達の味方でいてくれていて、嬉しいなあ。うんうん。
最初のうちはキヨ様やお城の古参の人達とあまりうまくいっていない感じで心配だったのですが、葵ちゃんが作った二人の思い出のお菓子をひとつのきっかけにして、気持ちをちゃんと通じ合わせることができたようで、良かった~!!
幼馴染カップルのロマンスは大好物な私です。
キヨ様も優しさだけではない強さを特に今回の件で確実に身に着けつつあるようで、信頼できる人達も確かにいるようだし、まずは大丈夫かな。イタキさんが好きでした。ちょっと天神屋のサスケ君みたいな。
キヨ様と春日のかつての現世デート、500円を渡した人物の正体、絶対あの人ですね。五百円という半端な金額が絶妙にらしいというか……。そしてふたりともちまっと可愛い顔して当たり前に葵ちゃんよりずっと年上だという事実にううむとうなったり。

あと今回何気に頑張っていたのがお涼。そうか、雪女だから彼女のふるさとでもあるのか……。あまり明るくはない過去をさらっと語り全然湿っぽくないお涼が、なんか、らしい。それでも確かにふるさとなんですよね。
葵と春日とお涼の天神屋三人組の女子会っぽい雰囲気を久しぶりに味わえて、懐かしくも嬉しくなりました。
お涼と春日の先輩後輩の関係も変わってないのがいいですね。ほっとします。
そして男性陣の中でやっぱり今回何気に頑張っていたのは乱丸。特にキヨ様とは全然タイプの違う者同士だからこそ、キヨ様にいい影響を与えられたんじゃないかなと。
乱丸と銀次さんの嫌味交じりの応酬も今となっては微笑ましい。

大旦那様の秘密が終盤でかなり核心に迫ってきた感じで、銀次さんの意味深な台詞もあり、おおお、そういうことだったのか……。心の中で盛り上がりまくりました。
葵ちゃんの呪いというのは、やはり、史郎さん関係のものなのかしら。『浅草鬼嫁日記』を読んでいる限り相当やっかいそうな呪いですし、もしかして史郎さんは孫娘を救うために、大旦那様と契約したということなのかしら。分からないけれど。
確かに借金のかたにお嫁入り~という当初の設定をもはや誰も覚えていないんじゃないか、というほど天神屋の欠かせない一員にいつのまにかなっている葵ちゃんですが、借金を返してしまえば、解放されるという選択肢も現実味をおびてくるんですよねえ。
大旦那様の思惑が完全にはまだ読めなくてもどかしい!
次巻は大旦那様のパートみたいですし、ここら関係のもやもやが明らかになるかしら。早く読みたい。
葵ちゃんへの愛情は、なにもかもぼんやりとしかわからないなかでも、たしかにつたわってくるのに、じんときます。
ほとんど実際に登場していないながらにこの存在感、さすが、天神屋の大旦那様だけあるな~とも思うのでした。

一方大旦那様と葵ちゃんの距離感が近づいていく様を気持ちを隠して優しく見守る銀次さん……切ない!!
葵ちゃん救出に間違いなく重要な役目を担っていたのに常に身をわきまえて一歩引いている銀次さん、切なすぎる。
私は葵ちゃんにはやっぱり大旦那様と一緒になってほしい派なのですが、ですが!銀次さん自身の幸せは、どうにかならないかなあ。ううう。
身を挺して葵ちゃんを守り抜く彼の姿にこみ上げてくるものがあります。

さてこのお話のメインはなんといっても美味しい葵ちゃんのお料理。
かくりよではまだちょっと珍しいものもある食材がどれもこれもきらきら豪華でおいしそうで、がしっと心をつかまれてしまいました。特にチーズ推しがすごい。読んでいてチーズのかたまりを食べたくて食べたくて仕方なくなってきました……。
醤油が隠し味の和風チーズフォンデュも、あんこ重ねの和風ティラミスも、ツナカレーもアイス大福も油揚げ入りチーズドリアも、みんなおいしそうです。ううう。
チーズが受け入れられたのはまずはチーズケーキ、お菓子からだった、というのは、なんだかちょっと納得しました。
折尾屋の双子達再登場も嬉しかったです。相変わらずのゆるさと料理への情熱が好きだなあ。
雪ん子たちのたんぽ鍋の場面もほこほことても美味しそうでした。

今回ちょっと思いましたが、史郎お祖父ちゃんとはチーズフォンデュやあたたかな思い出を持っている葵ちゃんだけど、祖父が死んだ今では、現世への執着をもはやほとんど持っていないっぽいのが、彼女、悲しいことだなと。
天神屋にお嫁入りするにはむしろ別れに迷い苦しむものなどない方がいいのは確かなのですが、『浅草鬼嫁日記』や『鳥居の向こうは、知らない世界でした』などと読み比べたりしていると、なんだか、考えてしまうなあ。

そんなこんなで葵ちゃんと大旦那様の約束の物語!!次巻が読めるのをたいへん楽しみにしております!!


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 友麻碧