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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『京洛の森のアリス』望月 麻衣 




幼いころに両親を亡くして、引き取り先の叔母の家でも身の置き所のないありす。
かつて両親と暮らしていた京都で舞妓修行に出ることを決意し、迎えの車に乗ったありすだが、老紳士に連れてこられた「京都」はどこか「不思議」な場所だった――。
人間の言葉を話す、カエルのハチスとウサギのナツメと共に、ありすは舞の修行に明け暮れつつ、京洛の森の謎に触れてゆく。


望月麻衣さんの新作のおはなし。
これまでの作者さんの作品とは少し雰囲気の違う、おとぎばなし風味ファンタジーな一冊でした。
とはいえありすが足を踏み入れた「京洛の森」は京都の別世界バージョンという感じで、現実世界の京都ネタも読んでいてちゃんと楽しめるのが、作者さんの作品らしいです。
現代の京都要素にプラスして、昔の京都を思わせる設定もそこかしこにあったりして、日本史ネタ的にも楽しめました。

薄幸の少女が異世界に招き寄せられ、自分自身の力で頑張って、周囲の協力を得つつ成長して自らの居場所を作り上げていく、私の大好きな王道パターンのストーリー。
なによりヒロインのありすが、頑張り屋で健気でどんなときでも人へのやさしさを忘れない、実に私好みの女の子で、とっても楽しめました♪
「京洛の森」というオリジナルの作品世界がかなり独特のルールのもと成り立っているのですが、作品世界の説明に読んでいて引っかかることがほとんどなく、すらすらとても読みやすいファンタジー作品だったように思います。
ひねりはききつつシンプルで王道なストーリー、魅力的で力のあるキャラクター。文庫本としてはあっさりしたページ数に過不足なく収まっていて手に取りやすく読みやすい、ぐいぐい引っ張られ楽しんで読みすすめることができる。作者さんの持ち味がよく出ていて素敵だなと思いました。
……なんというか、「ありす」という名の読書好きの少女が、ウサギとカエルをお供に、異世界に冒険の旅に出る!!というシンプルなあらすじが、メルヘンでファンタジックでとっても良いのです。乙女の夢です(笑)。

本当にありすの身の上はつらくて(長いおさげ髪の由来がやりきれない)そして京洛の森にやってきてすぐのころは努力が空回りしていて、読んでいて胸が痛かったのですが、ナツメやハチスたち、紅葉屋の師匠や橘たち、いいひとたちに囲まれ支えられていて、読んでいて次第次第に心があたたかくなりました。
京洛の森のシステムは、おとぎばなしの楽園のようでもあり、めちゃくちゃシビアで怖い世界のようでもあり。
上手く波に乗れるとすいすい良い方向へゆけるけれど、一つ間違えれば落とし穴にはまってしまいそうというか。
ありすの中に心から好きなものがちゃんと存在していて、それをたつきに次第にこの世界で認められ人を笑顔にしてゆけるようになって、本当によかったな~と心がしみじみ満たされました。
読書好き人間なもので、そのたつきが「本」であったところも、やはりうれしく思うのですよ。
紅葉や橘や牡丹さんみたいに舞を生業にしている女性たちの姿も素敵でした。彼女たちにもまたそれぞれの事情が裏にあるんだろうな。

おとぎばなしといえばやはり王道は、格好いい王子様に見初められて恋に落ちる、という。
王大使殿下の巡業にはしゃぎ憧れをつのらせるお嬢さんたちとか、現実の京都とファンタジー世界のほどよくロマンティックで堅苦しすぎないアレンジ具合がお見事です。
それにしてもありすの初恋の君はいったい何をしているんだ???と若干憤りを覚えつつ読んでいたのですが、そういうことかーーー!!!まったく気づきませんでした。名前も言われてみればこそで。
というか、もう結婚のことは確定で周囲も了承済なんですね。そうですよね、幼い日にしっかり約束してましたもんね(笑)。特殊なおうちの事情があるとはいえ、さりげなく外堀をすでに全部埋めている彼がちょっとかわいいです。
妹の菖蒲姫もお妃さまも従者のひとたちも気に入りました。

地図屋の亮平さんのエピソードも印象的でした。彼の手助けはとりわけ頼もしかった。奥さんのエピソードも印象的で、最後の彼女の助けにほろりと。バーベキューおいしそうでした。
あとありすの叔母さん一家についてもその後の便りがあってよかったです。

ところで庭春樹さんの表紙イラストが淡く繊細でにじみでるようなパステルカラーでとってもきれいでかわいらしくて、おとぎ話風味のファンタジー世界にとにかくぴったりで、表紙にぴんときたひとは読んでとにかく間違いない、と言い切れるのがいいですね(笑)。

不思議要素込みの和ものが好きな方、少女の異世界トリップものが好きな方、あとそんなにファンタジー得意じゃない……という方にも、おすすめできそうな一冊。
あと安定の京都に行きたくなる作品でした。


この一週間くらいのそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 望月麻衣 

『かつくら vol.25 2018冬』 




かつくら』冬号、買ってきました。読みました。
冬らしいファンタジックできれいな表紙イラストです。

毎年冬の恒例『マイベストブック』特集~!!
今年も読み応えばっちりで満足です。じっくり時間をかけて読みこみました。
『蜜蜂と遠雷』『ときどき旅に出るカフェ』『きまぐれな夜食カフェ』『JKハルは異世界で娼婦になった』あたりが特に心惹かれました。
『おいしいベランダ』シリーズや『オークブリッジ邸の笑わない貴婦人』シリーズが取り上げられていて嬉しくなったり。
『和菓子のアン』や『ホテルジューシー』の続編、『桜風堂ものがたり』『コンビニたそがれ堂』の続編、うんうん、今年も楽しみな本がいっぱい出そうです♪そういえばTwitterで『ぬばたまおろち、しらたまおろち』の続編も出ると目にしたなあ……楽しみ。(この作品の読者投稿カラーイラストがとっても可愛い♪)

辻村深月さんの『かがみの孤城』インタビュー。



実はかつくらの特集に触発されたのもありまして、先週読んだところです。
しんどい境遇におかれた中学生たちが、奇妙な城に集められてとまどい距離感を間違えつつも次第にかけがえのない仲間となって困難に立ち向かってゆくものがたり。気弱で繊細な心の持ち主だったこころが少しずつ成長し強くなっていく様にもほろりときました。面白かったです~!!インタビュー記事をじっくり読み返すと色々な発見があってなお面白かった。
去年読んだ『スロウハイツの神様』すっごく良かったですし、今年は辻村深月さん作品をもっと色々読んでみようかな。

『異世界居酒屋のぶ』の蝉川夏哉さんインタビューも面白かったです。シリーズ一巻目を読んだところですが、続きもまた読んでゆきたい。
そして二巻目が去年から(あれ、一昨年から?汗)積み本になっている『レアリア』シリーズも、読まなければ……書きおろし短編小説なんてレアものが収録されていてびっくりしました。

ブックレビュー諸々では『崩れる脳を抱きしめて』『竜宮輝夜記 時めきたるは、月の竜王』『スノウラビット』あたりが特に気になりました。
『百貨の魔法』『紙の魔術師』のレビューにうんうんうなずいたり。

とても充実した気分で最後まで読み進め、次号予告ページを開き。
……あ、あれ。リニューアル準備中ときましたか。
次号はお休み……。
正直がくーっときましたが(そして数年前の休刊騒動がちらりと胸をよぎりましたが……)、次号をいつか読めるのを信じて、待っています!!
ほんと、かつくらは今でも、私の読書生活にとってかけがえのないパートナーですので。
信じています。
せめてはがきを今度こそ締め切りに間に合うように出しましょう。




そして私、秋号の記事を書きそびれていて痛恨の極み。
秋号、恩田陸さんのインタビューがとにかく充実していて読み応えがありました!!
前後して『常野物語』シリーズの『蒲公英草紙』をようやく読んだ私。
陽だまりのようにふんわりあたたかくて優しくて、その後胸がしめつけられるように切なくやるせなくなる、美しいお話でした。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださったみなさま方、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: かつくら(活字倶楽部)

タグ: かつくら 

『ちどり亭にようこそ~今朝もどこかでサンドイッチを~』十三 湊 




総一郎との結婚に伴い「ちどり亭」を畳まなければならなくなった花柚だが、アルバイトの彗太が店を継ぎたいと申し出たことによって、猶予期間として二年間店を続けられることに。
しかしそのためには期間限定の店のオーナーを見つけなければならない。
店を継ぐ心構えで、改めて修行をはじめた彗太だが、上手くいかないことも多くて——。


『ちどり亭にようこそ』シリーズ第三弾。
京都の仕出しお弁当屋さんが舞台の日常のものがたり。
シリーズ前二作がとても好みですっかりファンになってしまっていたので、三巻目が出るとのこと、たいへん楽しみにしていました!

ていねいに作られる家庭料理の延長線上にあるおいしそうなお弁当、京都の伝統あるお家の人々の風雅な暮らしぶり、人が好いキャラクター達の掛け合い、すべてが調和して読み心地の良い世界を構築していて、ああ、やっぱりいいなあ。
ふくふくとした幸福感に読んでいていっぱいにつつまれました。
無邪気で可愛らしくお料理熱心な現代京都のお嬢様花柚さんと、バイトの今風大学生彗太君のふたりが何といってもやっぱり好きです!

前回の自分の感想を読み返していて、そういえば私、花柚さんに影響されて花柄の割烹着を買ったんでしたっけ、思い出しました(笑)。割烹着便利であれから大活躍しています。

『今朝もどこかでサンドイッチを』のサブタイトルの意味が、じんわり胸に来るラストでした。
いつかは来るかなー?と思っていた展開でしたけどね。どっきりしました。
あと今回はなんといっても美津彦さん大活躍の回でもありました。だいぶ彼を見直したかも。

まずは彗太君のきんぴらに物申した梶原さんのエピソード。
お客さんからの厳しい指摘に落ち込みスランプに陥っている彗太君を励ます花柚さんのやり方が、花柚さんらしい柔らかで信頼のこもっているもので、読んでいて心に響きました。
栗やさつまいものぽくぽく系はお肉料理によく合うって分かる!
彗太君の頑張る姿を見ていたらほうれん草を食べたくなってきたので、次の日のお弁当のおかずにほうれん草を入れました。今の季節のほうれん草は甘くて肉厚で美味しい。
そして花柚さんのところで働くようになってから人の悪口を言わなくなったという下りが好きです。

海老フライと新キャラ大学生・康介君のエピソード。
配膳司、またひとつ新しい職業名を知りました。改めて京都は奥深い。
康介君の勘違いはとんでもなかったですが、でも言われてみれば、お弁当を作る相手って限定されているよなあ。とも。
野乃香ちゃんと康介くんの仲が悪いんだか良いんだかの勢いのいいやりとりが面白かった!!
わいわい集まっていると学生さん達みんな楽しそうで青春でいいなあ~(にこにこ)。
父親を尊敬し愛する息子の姿が印象的でした。
海老フライおいしそうですねえ~しば漬けを使ったピンクのタルタルソースにもなにげに心惹かれました。

野菜嫌いのお父さんのエピソード。
ふわふわもちもちのつくねの秘密はそういうことだったのか!花柚さんが明かした亡きお母様の手間暇と愛情に心打たれました。(そしてすかさずの奥様へのフォローがさすが。)
花柚さんの「実は栄養のことって、「よくわからない」っていうのが正確なところなの」当たりの台詞が、心に残りました。
私も昔身体の不調のため必死にご飯の内容を制限していたころより、あまり囚われず好きなものを食べることにしたと同時に毎日の行動パターンを変えてからの方が、体調が良くなったことがあるからな……。
それはともかくこのお話の、野菜嫌いの人のために花柚さんが工夫をこらしたお弁当が魅力的です。
ウインナーを蒸し炒めして、ほうれん草ペーストをを卵に混ぜて巻いて焼いて、三色玉子焼きにするの、今回一番心惹かれました。これいつか作ってみよう!
ごぼうブラウニーも気になるなあ。
あと永谷氏のお母さまがなかなか予想外の方向に強烈でした。苦労されてますね……。
永谷氏の「禁句」を必死になって守り通す花柚さんが格好いい(笑)。

そしてサンドイッチのお話。
花柚さんがしゅっと美しくこしらえるフルーツサンドの描写がとても素敵……!!ご飯の時間に食べるフルーツサンドが罪の味というのは、分かります。
思いがけないところから思いがけない人が登場してきたな、と。
結局のところ公篤さんも麻里依さんもいいひとでお似合いのふたりで、たまごサンドを通して花柚さんが麻里依さんの人となりを悟って認める、という流れが、良かったです。
北山の植物園、たまたま私自身が先日出かけたばかりで雰囲気を具体的に思い浮かべられたのが、良かった。
花柚さんの周りに美津彦さんや総一郎さん、そして彗太君たちがいて、良かったな。と思いました。
琵琶を奏でる花柚さんの姿が印象的でもありました。
公篤さんの抱える屈折もなんか分からないではないなと思いました。総一郎さんと花柚さんがいま幸せだからまあそれ以上思わずにすんでいるといいますか。
公篤さんの彗太君への贈り物もずっしりくる。
大切な人に、美味しいものを食べて、幸せであってほしい。
そんな願いを込めて日々お弁当をこしらえる花柚さんの仕事ってとっても素敵だし、そこまでいかずとも日々お弁当を作る幸せを改めて肯定された気がして、しみじみ幸福感にひたれるラストでした。

最後は美津彦さん視点の番外編。
彗太君視点以外から物語を眺めるのははじめてなので新鮮でした。
ぐうたらニート気質だけど研究者としては(多分)優秀で、気遣いもできるしなんだかんだ人が好く世話焼きな美津彦さん、だいぶ見直しました(笑)。
莢子さんと美津彦さんのさばさばした腐れ縁的な関係がなかなか良いです。
莢子さんのお母さんも悪い人では全然なく娘想いのいいひとなんだろうけれど、かみ合わなさがちょっと切ない。
花柚さんは料理に関しては本当に頼りになるなー!!
あと松園さんもやっぱり素敵なおじさまだな、とか。
花柚さんのお見合い連敗の一因はそこだったのか!とか。
分かりづらく花柚さんと総一郎さんの仲を後押ししている美津彦さん、とか。
おばあさまへの想いとか。

十三夜に十五夜に、和洋のお月見に集う人々の場面も、印象的でした。
子どもを親が思う心、受け継がれてゆくもの、しあわせでありますように、すこやかでありますように、そんな愛情と祈りの情が心に印象的に残るお話の数々だったように思います。

花柚さんと総一郎さんのふたりは結婚間近で相変わらずラブラブみたいでなによりですし、彗太君と菜月ちゃんも、上手くいってほしいな~。(口絵イラストの笑顔のふたりと見守る花柚さんが素敵)
続きもぜひ読みたいです。ぜひとも!!


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 日常のお話

タグ: 十三湊 

『わが家は祇園の拝み屋さん7 つながる想いと蛍火の誓い』望月 麻衣 




京都の護りの結界の補強に向けて、準備合宿をすることになった小春と澪人達チーム五人。
その夜異形のものに遭遇してしまい、澪人の力で事なきを得たものの、早く結界を張り直さないと京都に「魔」が入り込んでしまう。
一度目の「補強」の成功に続けて計画を進めていく中で、小春、そして澪人の兄の和人の側に影の気配が——。


『わが家は祇園の拝み屋さん』シリーズ第七弾。
表紙イラストのふたりの良い表情と雰囲気まさにその通りの、これまでの伏線がすべて、すっときれいに収まった巻になりました。
ああ、よかった。小春ちゃんと澪人くん、本当に良かった~!!!
読後感がとても幸せで思わず涙ぐんでしまいました。
雪が凍り付く寒い夜に、心があたたかくほこほこぬくもってきて、何といえばいいのかしら、まるで祇園の吉乃さん達のおうちの団欒の席に私も実際に混ぜてもらっているような。

改めて友風子さんの表紙イラストは毎回秀逸で、特に澪人さんのうるわしさ、色気のある格好良さ、それでいて凛ときりりとした雰囲気、涼やかな目、もはや友風子さんのイラスト抜きには成立しえない(私の中で)。
墨染の着物が本当に映えていらっしゃる。あざとくて素敵です(笑)。
あと小春ちゃんの幸せそうな笑顔の横顔がたまらないです!
蛍の淡い光も夏の夜の闇も、お話の雰囲気にとてもあっていて、優しくて可愛らしくてあたたかな雰囲気で、すてきですね。

あと、帯の「私を救ってくれた大好きな京都を守りたい——」というフレーズが、心に染み入りました。


ではネタバレ感想ご注意を~。(そして今回はあとがきネタバレ注意だそうです。)


サブタイトルの「つながる想い」、前世に「引きずられる」のではなく「受け継いでいく」というスタイルを主役ふたりが選択していて、ああ、ふたりらしいな、素敵だなと思いました。
無理のない自然な感じで登場人物がつねに前向きで未来を信じているところが、私がこのシリーズを好きな理由の一つ。
とはいえ、良く考えてみると、小春も澪人も、最初の頃と今の姿は、本当に変わったな~。とも思います。
前巻でようやく素直に生きようと腹をくくった澪人の雰囲気はぐっとやわらかく自然体になったし、小春ちゃんも本当に凛としたというか成長して素敵な女の子になりましたね。
前世を自分の中で受け入れて、そのうえで今をちゃんと頑張って生きている感じが伝わってきて、うん。

恋に素直に生きることにした澪人くん、なんだか本当に雰囲気変わって可愛らしくて、照れたり相手の気持ちに不安に揺れている様に、いちいちきゅんきゅんときめいてしかたがなかったです(笑)。
それでも「くそ真面目」なのは彼の本質なので……そこがしっかりしているからこそ安心してときめくことができるというか。もっと積極的になってもいいのにな~とか思いつつ、これ以上だと読んでいるこちらが恥ずかしすぎる~とかも思う訳で、心の中で葛藤が(笑)。
そして澪人さんの雰囲気が自然体になったと同時に、彼の京都ことばがぐっと優しく柔らかく響くようになった気がして、読んでいて心地よかったです。雅ですねえ。基本が丁寧口調のホームズさんとはまた別のはんなり艶っぽい色気が。
小春ちゃんはなんというか、恋に関しては動じなくなったな。という印象。澪人視点が多めだったからかもしれませんが。
和人さんとのデートの顛末がラスト近くまで引っ張られていたのもあって。読者の私も澪人さん同様やきもきしてしまいました。
というか、和人さんとのデートで小春ちゃんの中では自分の気持ちにひとつの決着がついて、この時点では心が決まっていた、ということだったんだろうな。とラストまで読んでから改めて思いました。

結界補強対策チームの合宿、チームの五人のやりとり、わいわい楽しそうで良かったです!!
深刻な状況を「不謹慎」ととらえることなく、「ワクワク楽しい気持ち」を肯定的に、実際のパワーとしてとらえる澪人さん達のスタンスが、とてもいいなあと思いました。
そうか、こんなにシンプルでいいんだ。現実世界でもこんな風に考えていきたいな。
いかにも学生さん達の合宿というエピソードの数々がいい。
五人とも程度の差があれ特殊な立場の学生さん達で、気心や事情を打ち明け合ったうえで素直にみんな楽しんでいる様が、可愛らしく微笑ましくいいものです。特に澪人さん良かったよね……(おばさんのような視点)
そして可愛いものには即反応するクールビューティー由里子先輩が至る所で可愛らしくって、これまたきゅんきゅんときめいてしまいました。ちゃんとみんなのお姉さん役なのも頼もしい。(朔也君の姉ちゃんみたいと指摘されて少し嬉しそうにしている場面とか本当にもう可愛らしい……!)
朔也君のちょっとチャラいところも、もう彼の個性として私も自然に受け入れられるようになってきました。
でも今回、彼の以前の行いのある意味報いとも思える出来事があって、彼がそこに自分自身できちんと落とし前をつけていった展開、良かったです。(由里子先輩の補助が格好よかったです!!)
あと自分できちんと考えて、コウメちゃんに謝りたいと思う、心根のまっすぐさも、見直しました。
朔也君と八雲さんの仲良し姉弟も好きだな。小春ちゃん達の家のごはんに誘われたもののふたりですたこら逃げ出した場面が微笑ましくて笑えました。ふふっ、皆普通じゃないんだな(笑)。
愛衣ちゃんも、そんな普通でないメンバーの中で大健闘です。
特に小春に悪意が向けられた場面での彼女の友情の頼もしさといったらなかったです。彼女の賢さとまっすぐな正しさが好き。

五人チームでの結界の補強、和人さんの危機を救いに駆け付けた澪人と小春ちゃんの戦い、おもてだったストーリー的にもかなり盛り上がりました。皆本当に頑張った!おつかれさま!!
安倍晴明のこと実は私もあまり基本的なこと分かっていなかったので今回とても勉強になりました。やっぱりすごいひとだったんだな~。
和人さんと澪人さんの危機的な状況での兄弟思いあう心に目頭があつくなりました。
玉椿の知識を得て澪人の助けとなる小春の立場も、とても自然で良かったです。いざというときの度胸!やっぱり恋する乙女は強くなりますね。
というか、最後にすべてを持っていったのは、宗次朗さんと杏奈さんでしたけどね!!
宗次朗さんはもう持っているオーラからすべてが格好いいというか、別格というか。今回色々納得してしまった。

宗次朗さんといえばやはり今回もおいしそうなお菓子がいっぱいでわくわくしました。
飴細工のドームに入ったアイスクリームって想像するだけで魔法みたいなデザートですねえ。
そしてやはり私はシリーズの最初の方に出てきたミニあゆが気になる。ふわふわもちもちのあゆ、絶対美味しい。

玉椿姫と左近衛大将の前世の清算の場面、そこからつながるふたりの場面、繰り返しですが良かったです。
ストレートに想いを告げる姿にぐっときました。
あとようやく和人さんの前世での役割が明らかに。
そういうことか!そういうことだったのね!!納得。
現世の和人さん自身の想いを考えるとちょっと切ないのですが、なんだか泣き笑いのような幸せな気分で満ちてきたのでした。
そして小春ちゃんが賀茂兄弟に対してちょっと強くなったなと感じるようになったのも、自分の中で納得。お母さんはつよい。

皆の前で小春との交際を宣言した澪人さんやるな~と思いつつ(個人的にここがいちばん「あざとい」と思った)、バージョンアップした(?)コウメちゃんのもふもふ可愛らしさが、最後まで最高でした。
というかコウメちゃんがずっと大事に守っていた秘密にびっくり仰天。由里子先輩とのご縁はもしかしてここつながり?
若宮君コウメちゃん達サイドの意味深な会話もありつつ。

本当にすべてがきれいに収まってこれで完結といっても良いかと思うような七巻目でしたが、どうやら続きが読めるようで、わあ、嬉しい♪
またこのメンバーが元気で色々頑張っている姿を見守っていけるのを楽しみにしています。

書店応援特典のペーパーも『寺町三条のホームズ』とのコラボでお得感いっぱいで楽しかったです。
こちらのシリーズの新刊もとっても楽しみです~。


一昨日昨日と記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 望月麻衣 

『まるまるの毬』西條 奈加 




親子三代で菓子を商う麹町の「南星屋」は、 売り切れご免の繁盛店。
武家の身分を捨て、職人となった治兵衛を主に、娘のお永と孫のお君が看板娘として切り盛りするこの店には、他人に言えない秘密があった——。


はじめて読む作家さんのお話。
江戸時代のお菓子屋さん一家のものがたりでした。
書店で文庫が平積みされていて、表紙のそぼくであたたかみのあるお菓子のイラストになんとも心惹かれて、ずっと心の隅っこで気になっていた作品でした。
しばらく間をあけて、読了。

読みはじめるまで私、タイトルを『まるまるの「まり」』と勘違いしていたのですが、『まるまるの「いが」』でした。
まるまるのまりみたいな、表紙のお菓子みたいな、まあるくてやわらかであたたかい物語が最後まで続くものと思って読みすすめていきますと、確かに途中で「いが」がありました。
やるせなくて心にしみて痛くて涙するような「いが」なのですが、それでもやっぱり「まるまるのいが」であり、まあるくてやさしい愛に満ちた物語。なんですよね。

派手さはないのですが、お互いを真摯に思いやる家族の愛情の物語、と私は読みました。とても良かった。
清々しくふくふくとした幸福感のたちのぼってくる読後感でした。
お菓子の描写もやはり派手ではないのですがどの場面でもしみじみと味わい深くて魅力的。
読み終えて何日か経るごとに、ひたひたと余韻が心の中にわきあがってきて、これはブログにも少しばかり感想を書き残してゆこうかと。

主人公はお菓子職人の治兵衛さん。年配の男性です。朴訥と職人肌で家族思いのすてきなおじいさま。
最初は少々とっつきにくいかとも思ったのですが、描かれ方が良い感じに人間味あふれているといいますか、迷ったり心の弱い部分も書かれていて、男親のむつかしい心情もあったり、自然と感情移入できました。
お菓子が大好きでお菓子作りしか見えていないところも共感できました(笑)。
治兵衛さんの抱えるものは思っていたよりあまりに大きくて、この秘密がじわじわと物語の流れを変えてゆくことに。

治兵衛さんの娘のお永さん、孫娘のお君ちゃん。
穏やかで父の仕事を幼いころからずっと愛し支えてきたお永さんの、内に抱えた想いのお話『まるまるの毬』、彼女の激しい想いに胸をはっとつかれました。お永さんと治兵衛さんの大人同士の父娘の不器用な思いやりの情がいい。
あと母親に比べると勝気でちょっとわがままなところもあるお君ちゃん、正直最初のうちはお母さんの方が私は好みだったのですが、いやいやごめんなさい。
自分自身の幸せを置いておいても、まず一身に祖父達家族の平穏な暮らしを守り抜くことを望み、迷いなく行動を貫いたお君ちゃん、めっちゃいいこや……泣きました。
この辛く理不尽な経験が、結果的に彼女をここまで大人にしてしまったと思うと、切ないものがあるのですが。
それでもラストのお君ちゃんの姿が、きりりと凛々しく自分一人の足で立っている感じで、何も失っていない、といえるのがまぶしくて、ああ、何とも言えないものがありました。
母や祖父が思っていたより、お君ちゃんは大人でお日様みたいな強さを持っていて、それは彼女が愛情をたくさん与えられまっすぐに育てられてきたからこそのものなんだろうな、と。

随所で一家三人を陰ひなたに支えているのが、治兵衛さんの弟の石海さん。
豪放磊落なお坊さんで、兄弟住む世界を違えてもずっと仲良く菓子を食べつつ支え合っている関係が、なんだかいいな~。と素直に思えました。
各話読んでいって、お侍さんのおうちにも色々あるんだな、と当たり前のようなことを思いました。
治兵衛さん達の実家の人達の常にすっと筋がたっているストイックさ、厳しいのだけど柔軟さも忘れてはいない、深い愛情を底にたたえたありようは、好き。
翠之介君のエピソードもね、微笑ましかったけれど、お家の事情がやるせなかったです。お父さんも辛いな……。
河路様の実直でおごらない好青年っぷり、常識をわきまえてそうなひとなのに年の差身分差を越えて率直に想いを告げる若々しさがまた何とも言えずに素敵でときめきました。
治兵衛さんを招いた折の屋敷の梅の描写が印象的でした。
ふうう。それでもやっぱり切ないなあ。
身分を越えて自由を得たように一見思える治兵衛さんだけれど、それでもしがらみからは逃れきれない姿が、他の何人もの登場人物の姿にも重なり、切ない。

南星屋さんの各地の名物お菓子を日替わりで出してゆくというスタイルも、面白いです。
カスドースが現代に当てはめて考えてみても甘くてハイカラで贅沢の極みという感じで魅力的……。
兄弟の思い出の大鶉というお菓子の名前もいいなと思いました。
最後に治兵衛さんが必死に再現した「橘月」も、単なる希少品ではない手間と心遣いが丹念にかかったお菓子で、紐解いてゆくごとに治兵衛さん自身がかつて受け取っていた愛情もなんだかつたわってくるようで。

他の方の感想にもありましたが確かに『みをつくし料理帖』に少し重なるものがある。
お君ちゃんはちょっとお美緒さんみたい。境遇は違うのだけれど。
良いお話でした。
もし続きがあるなら読んでみたいなあ。
個人的には平戸のお菓子事情まで話を広げた続編をちょっと期待してしまいます。駄目でしょうか……。


この二週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 歴史もの

タグ: 西條奈加 

『左京区七夕通東入ル』『左京区恋月橋渡ル』瀧羽 麻子 






京都の文学部四回生の花ちゃんが、七夕の夜に理学部数学科のたっくんこと龍彦君と巡り合いそこからはじまるロマンスあり友情あり京都の学生さんたちの日常青春もの『左京区七夕通東入ル』。
その続編で、龍彦君の寮の友人山根君が雨の下鴨神社で巡り合った「姫」にはじめての恋をする『左京区恋月橋渡ル』。
(おそらく)舞台は京都大学、年季の入った男子寮に暮らす理系男子学生三人組シリーズ(?)。
どちらの作品も数年前に既読だったのですが、年末に読んだ安藤君のお話『左京区桃栗坂上ル』があんまり素敵で良かったので、懐かしさに駆られて、この前作二作品も再読しました。

いやあ、やっぱり瀧羽麻子さんのお話いいなあ~。
ふんわり柔らかでみずみずしいタッチで描かれる大学生たちの日常、恋、友情、研究、京都という街や文化や風習、すべてがすんなりまとまっていて。
とびきりキュートで素敵なお話です。
やはり主人公が違うとお話の雰囲気もがらりと変わるなあと新鮮な気持ちになる一方、時間軸や出来事や主役たちを取り巻く登場人物達は意外と重なりが多くて、読んでいると色々答え合わせしているみたいで、とても面白かったです。
あと出てくる京都の街の名所や年中行事、カフェや古着屋さんやレストランや、ひとつひとつがとっても魅力的!
お店の名前は明記されていないのですが、なんとなくここがモデルなのかな~と思えるカフェもいくつかあったりして、京都のガイドブック片手に徹底的に読み比べて、シリーズ三作も同時に広げて、めっちゃ散らかった状態で幸せな読書にひたっていました(笑)。

以下、とりとめのない再読感想メモを。(ネタバレあまり考えてないのでご注意を。でも三作品完全に独立したお話なので、多分どこから読んでも楽しめるし、知っているからこその楽しみもある、と私は勝手に思ってます。
どのお話もそれぞれの主役以外のストーリー、特にロマンスに関しては、肝心なところはふわっとぼかされているし)

まずは花ちゃん一人称の『七夕通東入ル』。
序盤の七夕とブルーベリー、花柄のワンピースのイメージが、とっても鮮やか。
いちばんふんわりフェミニンな可愛らしいお話。
お洒落で好奇心旺盛で多趣味で落ち着きがあまりない花ちゃんですが、真面目な勉強家だし(そりゃそうだ)男気があるしっかり者で、恋に落ちてしまった彼女の目から眺める世界のみずみずしく美しく魅力的なこと!
彼女の目から見るヤマネくんとアンドウくんはかなり奇天烈ですね。最初のうちは特に。
それでもちゃんと友情を育んでいてそれがちゃんと伝わってくるのが良い。安藤君のタコ焼きはやはりおいしそうです。
数学馬鹿で淡々としていて恋愛ごとには程遠い人生を送ってきたであろうたっくんが、花ちゃんのことをきちんと大切に想っているのが、物語が進むごとにじわりじわりと伝わってくるのが、なんとも心ときめきます。きゅんきゅんです。
ふたりで自転車を取り戻しに行く場面にブルーベリーのタルト、東京への旅行案を練っている場面がお気に入りかなあ。
たっくんさりげなく大胆発言しますよね……。というか龍彦君の引っ越し先は、そこだったのか!わすれてた!究極の人生の選択だった!(笑)
『活字倶楽部』の瀧羽先生のインタビューにもちらりと書いてあったように、花ちゃんは確かに、龍彦君をこちらがわの世界につなぎとめる、大切な存在なんだなあ、と。
あとアリサちゃんが花ちゃんの友人であったというのも忘れてました。そして恋のキューピッドでした。
花ちゃんのバイト先の古着屋さん・ソレイユとオーナーの陽子さんも何とも言えずに魅力的。おしゃれ。
剛くんは不憫でした。もっとももし彼らが実際にいたら私は剛くんタイプの男子には気後れしてしまって絶対に話しかけられないな……。
この三人卒業旅行(?)で高知に行っていたんだな。そういえば『桃栗坂上ル』にもさらーっと書いてありました。

次は山根君視点の『恋月橋渡ル』。
花火を手に深夜の鴨川をひとり駆けまわる姿は想像すると相当異様ですが(笑)、研究一筋奥手な男子学生山根君の、純情な初恋の物語。
花ちゃんのアドバイスを熟読し事前に頑張りすぎてから回ったりちょっと格好悪いこといっぱいしていたとしても、彼の一途さ一生懸命さ真心がひしひしと伝わってきて、なにより相手の「姫」こと美月さんも楽しんでいるのが伝わってきて、読んでいていいな~幸せ感にひたれました。
なんとなく端々から想像できる切ない終わり方でしたが、最後の最後の贈り物が、心憎いですね。
あと山根君視点なだけあって、理系学生さん達の日常、寮生活のリアルな暮らしぶり、安藤君をメインに寮生たちとの交流、そういうのが三作の中でいちばんメインに出てきていて、これも楽しかったです。
寺田君の腰の低さや異様なくらいのていねいな言葉遣いはそういうお家で育ったからこそだったのか、と納得したり。そして彼の進路の悩みも等身大で分かる。
川本君も初登場。鰐のモモちゃんも話のタネにちらっと出てきましたね。
あと安藤君の食い意地のはりっぷりがもう端々から伝わってくるのも、やっぱり食い意地のはった人間である私には共感できることが多々あって、これも楽しい!
もっとも璃子ちゃん視点からの安藤君の方が圧倒的に断然格好いいな。そりゃ当然か(笑)。
まあ確かに、特に果菜ちゃんみたいな女の子にとっては、安藤君みたいなお兄ちゃんはさえないオタクと評されてしまうのも、まあそういうものかな~と思いはしました。
のんびりやでどっしりした安藤君が、まさか半年後くらいに鰐と格闘することになろうとは、色々想像しつつ楽しいです。
そしてあの大文字焼きと七輪パーティーの日こそが、菅沼さんたちの馴れ初めの日だったんだろうか。読み返して気づいた。

読み返してみて、三作とも三人ともが、自転車(スクーター)の二人乗りをする場面があって、なんだか三シーンとも爽快で弾む気持ちが伝わってきて印象的で好きだな。
時間が進むごとに龍彦君と花ちゃんがしっくり馴染んだカップルになっていく様も良いですねえ。
『桃栗坂』のラストで、皆のその後が集大成のようにまとめられていたのが、読み返してみて改めて良かったです。
特に花ちゃんと龍彦君の未来がとてもふたりらしいなあと思い、良かった。

一気に三作を読むと、モデルになっている大学周辺の地理をガイドブックでこれでもかと読みこむので、一層にわか京都知識が深まりました(笑)。
やっぱり女の子らしいカフェと言えば花ちゃんが強いな~。涼真君がセレクトしたカフェと花ちゃんお気に入りのカフェは多分同じなのかな。花ちゃんと涼真君は話が合いそう。そして花ちゃんは璃子ちゃんを妹みたいにとても可愛がってそうだな。
研究や学問に対して皆それぞれ内面で考えて悩んでるんだな~と改めて思ったり。安藤君の方向転換は重みがあったな。
三作読んでどれも好きだけれどいちばんはやはり『左京区桃栗坂上ル』かなあ。幼馴染もの年の差ものが私好みストライクなのと、主人公達が美味しいもの大好きでたくさん食べるキャラなのが、いいんだな。改めて思いました。
私も食後にケーキもちゃんと食べよなと言ってくれるひとのおよめさんになりたい。(←言ってみただけです)
それにしても最初に読んだときは断然花ちゃんの歳と立場に近かったのが、今ではいちばん立場が近いのが川本君と璃子ちゃんの研究室の秘書の羽鳥さんになっていたというのが、改めて時の流れを感じてしみじみしました。これは前も書いたかな。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 日常のお話

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