FC2ブログ

Admin   *   New entry   *   Up load   *   All archives

ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『かくりよの宿飯九 あやかしお宿のお弁当をあなたに。』友麻 碧 




『かくりよの宿飯』シリーズ第九弾。
黄金童子様に導かれて北西・文門の地でようやく大旦那様と再会を果たした葵。
大旦那様は拍子抜けするほど普段通りの様子で、つかの間の穏やかな日々をすごすふたり。
「お弁当と引き換えに、真実を、一つずつ教えよう——」大旦那様の提案により、大旦那様の過去、祖父との関係、そしてかつて自分を救ってくれたあやかしの正体等、葵は真実を手にしてゆく——。


『かくりよの宿飯』シリーズ最新刊。
サブタイトルがシリーズの核心をついてきていて発売前から色々内容が気になるところでした。
そして今回の表紙!なんというか、ここ最近の「大旦那様を探せ」的な、キャラがにぎやかに勢ぞろいな表紙と、全然違う!
どこからどうみても完全な、大旦那様と葵ちゃんのツーショット!微笑み合って幸せそうなふたり。
しかもさりげなくペアルック……とかどきどきときめきながら、ふたりが穏やかに幸せそうに寄り添っている姿が、とても貴重なものに思えて、あまり茶化したら悪いな、という気持ちになるといいますか、じーんと浸ってしまいました。

さて今回のお話、大旦那様の正体から史郎おじいちゃんと大旦那様の馴れ初めから、葵ちゃんと大旦那様の過去にいったい何があったのかまで、これまでのシリーズの根幹をなしていた謎の数々が、葵のお弁当と引き換えに、どんどん明らかになってゆく一冊でした。
怒涛の大旦那様ターンです。
すっごく読み応えがあって、すっごく面白かったです~!!!
とにかく最初から最後まで大旦那様と葵ちゃんがラブラブで仲睦まじくて、今までシリーズを読んでいて、大旦那様派として若干物足りなく思っていた部分が、すっかり満たされてしまいました。しあわせ。

さて今回の感想はネタばれ含みということで、続きは追記に収納いたします。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

-- 続きを読む --

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 友麻碧 

『腐男子先生!!!!! 2』瀧 ことは 




女子高生腐女子の朱葉と、イケメン生物教師ながら裏の顔は腐男子かつ朱葉の信者・桐生。
なんだかんだいいつつ秘密のオタク活動にいそしむふたり。
朱葉の熱心な後輩フォロワーが現れたり、新学期で二人の関係も変化したり、変わり者の同級生が絡んできたり、なかなか平穏にはいかないふたりの明日は一体——。


この夏のはじめくらいに読みはじめて、見事にすっころんではまりこんだ『腐男子先生!!!!!』、書籍版の二巻目が、発売されました~!!
おめでたいです~!!素晴らしい!!!
一巻目の発売から結構間が空いている感じなので、この二巻目が今になって発売されるのって、昨今の出版状態を鑑みてかなりすごいことなのではと思います。良きかな良きかな。

二巻目の部分、Web版(『腐男子先生!!!!!』を最後まで読んでいる私にはほとんど既読の内容ではあるのですが、全然問題ないですね!
何度読んでもたのしいですこのお話。紙媒体でもう一度ストーリーを追えるのしあわせすぎる。

結城あみのさんの可愛くて格好良くてイメージぴったりのイラストがふんだんに挿入されている、贅沢仕様です。
キャラのちまっとミニサイズのイラストが、特に私、好きなのですよね。
巫女姿の朱葉ちゃんとキング、バレンタインイラストを描く朱葉ちゃん、……諸々、美味しすぎる。
あと先生の格好いい姿がばーん!!とアップされているイラストもやっぱり素敵です。いちばんはカラー表紙ですかね、出張りすぎですよね先生。(というか、一巻目に引き続き表紙にヒロインがいないよ……タイトル的には正しいのでしょうが。笑)

あとがきに書いてあった、Web版とコミックス版と書籍版、全部違うのが、読者的には一番うれしいって、まさにその通りすぎる!!!
今回の書籍版も、Web版とほとんど同じお話かな~と楽しんで読んでいたら、最後の最後で、まさかの糖分増量があり、ときめきのあまり倒れそうでした。読者サービスがすごい。
あと信者なので、アニメイト版の特典ももちろん手に入れましたし、電子書籍版のショートストーリーを読むため電子書籍版も買っちゃいましたよね。後悔は全くしていないです。特に電子書籍版のショートストーリー、桐生先生視点のラブがあって最高でした。ごちそうさまでした。
コミックス版と書籍版の連動特典のオーディオドラマも聴きました。桐生先生の渋くて格好いいお声で繰り広げられる怒涛のオタクトークにあげはちゃんの絶妙の突っ込み、聞けば聞くほどイメージ通りで、これまた最高でした。

というか二巻目が発売されてからWeb版の番外編更新&限定特典ストーリー&その他諸々を読み返しループにはまって未だ抜け出せていません。
いろんな時間軸を行き来しているので混線しつつもやはり楽しくやめられない。


さて、まずは二巻目の感想をちょこちょこっと。

相変わらず毎回ラブになりそうでするっと抜けていく脱力感、でもとっても楽しく仲良さげなふたりのオタクライフ、そして思いがけないところから出てくるラブっぽい要素、そういうときにかぎってオチなし。
……この繰り返しが切れよくテンポよく書かれており、じわじわじわ~っとふたりの距離も縮んでいないようで縮んでいるような、このもどかしさとときめき感。
ちょっと外見はかわっているけれど、まさに王道学園少女小説ラブコメです。きゅんきゅんです。
残念なオタクだけどやっぱり格好よくあげはちゃんを大人の立場で守ってくれる先生いいひとだし、何より賢くてお人好しで優しい朱葉ちゃんが最高のヒロインすぎる。
実際読んでいて、心の中で私がつぶやく感想の半分以上が、あげはちゃんかわいい!!!ですから(笑)。
コミックス二巻のあとがきにあった、先生の残念な部分が朱葉ちゃんとのつきあいによって段々矯正されていく、というのが、正しいんだろうな、やっぱり。
先生の中の、朱葉ちゃんが誰より一番大切で守りたい存在、という気持ちが、読んでいてじわじわ伝わってくるのが、いいんですよねえ。これ。
(この辺は電子書籍版の特典を読んでからさらに味わい深くなりました)

二巻目のストーリーのお気に入りは、巫女さんのコスプレとコラボカフェのお話かな。
キングと秋尾さんは相変わらずインパクトすごすぎる……サクラティーラテ、確かに可愛い。私もきゅんときてしまいました。
コラボカフェのイラストの場面楽しそうでいいな。甘い場面が一旦台無しになったと思ったらまさかの糖分ましまし、いや~何度読んでも楽しいです。
キングの信者夏美ちゃんの場面も微笑ましいです。朱葉ちゃんのオタク友達夏美ちゃんもまた、本当にいいこです。
咲ちゃんと九堂さんの関係も、だいぶ変わっているけれど微笑ましくて良いですよね。
登校拒否している咲ちゃんの家庭訪問した先生と朱葉ちゃんのオタクトークがまさに天の岩戸みたいでちょっとおかしかった。
先生が担任となりふたりの接点も減ってしまい……というところに、ひょんなところからふたりの新しい居場所ができて、メンバーも増えているけれど、ますますふたりとも楽しそうなので、良いのです~。
朱葉ちゃんのピンチに即座にかけつける先生も格好いいのひとこと。
Twitterの使い方がすごすぎる。確かに先生の方がよっぽど怖いストーカーだよな……。
そして都築君、なかなかイメージ通りのチャラいイラスト姿(笑)。

そして最後のカラオケのお話、ぷらす、膝枕。
Web版の膝枕のお話も、もともとお気に入りだっただけに、たまらない!
これは書籍版の三巻目がどういう風に展開していくのか、早くも気になりすぎるー!!
え、出ますよね、もちろん??(笑)

『腐男子先生!!!!!』変わり種ながら、根本は先生と生徒の恋のお話なのですが、いわゆる禁断の、という影の雰囲気が不思議となくて、いつも明るくのびやかに楽し気なところが、このお話の魅力のひとつだとつくづく思うのでした。
先生も朱葉ちゃんも真面目で踏み越えるべきでないところはしっかりわきまえてるしね。そこが安心してラブコメに浸れるポイントかも。
秋尾さんのアドバイスも毎回力強いし。
彼女とのオタクライフを満喫しつつ、彼女の幸せを何より大事にしていて、彼女が卒業したら、という、先生の気の長い愛情が、なんだか、心にしみますね。(ちょっと二巻目部分より先の内容に踏み込んじゃってるかな)

限定特典の感想とWeb版の後日談エピソードの感想もちょこちょこっと書きましたので、これは追記に収納いたします。
時間軸が色々入り乱れて好き勝手に語っているのでネタばれご注意を。




コミックス二巻目も楽しかったです~。
やっぱり『泣かないで、先生』のお話が好き。あげはちゃんの気遣いが初期から最高。


-- 続きを読む --

カテゴリ: その他少女小説レーベルの本

タグ: 瀧ことは 

『今日も魔女を憎めない 思惑だらけのロイヤルウェディング』時本 紗羽 




小国エスティードには、不老不死の恐ろしい魔女がいる。18歳の絶世の美少女の魔女の名はシエラ。
魔女に恐れをなした国王は、魔女を王子ゼロサムの妻とした。
魔女が王子を呪いで自分と同じ不老不死の身体にしたため、王子は国王となり月日を重ねても18歳の姿のまま。
国王の娘も成長し18歳になったある日、他国の第三王子がエスティードを訪ねてきて——。


コバルト文庫の新作読み切り。
美しく色っぽい表紙イラストと意味深すぎるあらすじと作品設定に惹かれて、手に取ってみました。
絶世の美少女姿の恐ろしい魔女と、魔女に呪われた王様、そして側室腹の王女様、同じ18歳の王室の三人を巡る、おとぎ話風味の少女小説ロマンス。

他の方も書かれている通り、確かにどんな感想を書いても、ネタバレになってしまう……!!
なかなか意外性に富んでいたというか、良き少女小説でした。
あとがきを読んで、作者さんが高校生の頃から温めてきたお話だと知り、納得しました。
なんというか、物語やキャラクターひとりひとりへの、作者さんの愛情を感じる。
少し荒削りなところや不完全なところも読んでいてぽつぽつあるように思うのですが、それもすべてふくめて、作品の魅力なのかなと思えました。

魔女と王様のロマンスは、とはいえ少女小説の王道だと思います。大好物です。
シエラとゼロのふたりのシチュエーションが、すっごく好きでした!!
真面目でがんばりやで愛情深い王女様ハイネも好きです。ハイネって名前の響きが良いと思うの。

コバルト文庫にしてはほんのり大人風味のロマンス。
「ほんのり」なので、いわゆるTL小説が苦手な人でもぎりぎり楽しめる、と思います。
なんだかそういうのも新鮮な感じで読みました。

という訳で、追記以下に、ネタバレ込みの感想を少々書き散らしていこうと思います。
このお話はみなさんおっしゃっているようにネタばれなしで読んだ方がきっと面白いので、未読の方はご注意を。

あ、あと作品設定が少し似ている『Unnamed Memory』という大長編オンライン小説があるのですが、お気に召した方はこちらもどうでしょう……!!
どちらかの作品がどちらかに比べてどうとか言うのでは全くなく、それぞれの重なる部分と違う部分を読み味わって、一層両作品への愛が深まるのでは、と私は勝手に思っています。
こちらは呪いを受けた王子様が、解呪を依頼するため、世界最強の魔女の元を訪ねるところからはじまるものがたりです。




-- 続きを読む --

カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 時本紗羽 

『京洛の森のアリスⅡ 自分探しの羅針盤』望月 麻衣 




『京洛の森』で本屋の店長として、新しい暮らしをはじめたありす。
しかしある日想い人の蓮が、突然老人の姿になってしまう。
戸惑うありすは彼を病院に連れてゆくのだが、その帰り道に、元いた世界から迷い込み老人になってしまった女性二人と出会い——。


『京洛の森のアリス』第二弾です!!
一巻目がとても好みなお話だったので、続きが読めて嬉しいです。
庭春樹さんのパステルカラーのファンタジックな表紙イラストがとても素敵で、読む前からワクワクドキドキ楽しくなってきちゃいます。
きれいなピンクのお花もお茶の準備をするナツメも本を読むハチスも、山羊さんも大きな猫さんも、読み終えて改めて眺めると物語のキーポイント。
お着物にふりふりのエプロンのありすもかわいらしい。

一巻目同様、京洛の森の独特の仕組みやファンタジー世界観が、読んでいてたいへん楽しい。
現実世界の京都と重なりもありつつ、現実世界では難しいことが、魔法のようになんなくしゅっとできてしまったりすると、びっくりしちゃいます。値段を気にせず美味しい中華料理をお腹いっぱい食べている場面が楽しかった。(←食い意地が張っている私)
しかし、ある意味理想郷な「京洛の森」ですが、一歩間違えると、めちゃくちゃ怖い世界だな。というのも、改めて。
思えば『ふしぎの国のアリス』だって、そういうお話ですよね。(私は子供の頃アリスの物語が怖くて読み返せなかった)
「自分を偽らない」って、物語として読んでいるだけでも、簡単なようでとてもとても難しいことだと思います。
蓮のこと、そして春香さんと夏美さんのふたりのことでは、色々考えさせられてしまいました。
それでもひたむきに前向きにがんばるありすと蓮、見守るナツメ、彼らの姿に読んでいる私も元気になれるような、基本明るくてのびやかな空気につつまれた、すてきなおはなしでした。
想像の余地がある物語って楽しいですよね~。


以下若干ネタばれあり感想ですので、お気をつけて。


幼い日からの想いを通じ合わせた蓮、そしてふたりを見守りサポートしてくれるナツメとの、「ありす堂」での共同生活、スタート。
蓮とありすの初々しいカップルのやりとりに、読んでいてほのぼの微笑ましくなっていたのですが。
甘い雰囲気に浸りきる前に、連の身に、大事件が。
こんな一見わがままで自分の好きなように生きている感じの蓮でも、そういうことになっちゃうのか~。
いやいや、そうじゃないよな。ありすのことが大切で守りたくてずっとそばにいたかった彼だからこそ、歪みを抱えちゃったんだよな。
想いあってる男女が単純に一緒に暮らせない事態も起こりうるって、なんてシビアな世界なんだ。
と、ちょっと戦慄してしまった。
どっちも心から充足感を得られていれば何の問題もないけれど、あれ、でもどちらかが少しでも心に無理をかかえているとしたら、愛し合っていたとしても別の仕事を持って別に暮らした方が、本当は良いのか……?
……色々ぐるぐる考えてしまいました。

そしてもうひとつ、春香さんと夏美さん、ありす達との、出会いと関わりと。
見事に対照的な道を辿ってゆく二人に、これまた考えさせられました。
春香さん本当にお花屋さんが似合うなあと思いました。生き生きした彼女の姿が拝めて良かった。
夏美さんのスタイルも、京洛の森には合わなかったのだけど、物語として否定はされていなかったのも、良かったと思います。
菖蒲姫のヘルプに呼ばれていったときの夏美さんは、格好良くて有能で良き魔法使いでしたもの。
春香さんと夏美さんの友情、女同士の友情に多かれ少なかれこういうのってありますよねえ。
最終的にはふたりそれぞれ幸せな道を見出してその道に進めそうで、ふたりの友情も損なわれていなくて、良かったです。
ありすの立場からのアドバイスも、むずかしかった!!
彼女の側に大人の落ち着いたナツメさんがいてくれたのがいつでも心強かったなと今回思いました。

連の方も、ありす堂の仕事とは少し距離を置きながら、自分のやりたいことを見出していってくれました。
そっかあ、本を作る人か!!それはいい!!
マダムの物語に遠慮なしにばしばしダメ出しをしている場面がおかしかった。でも彼は物語への愛情もまっすぐにぶつけてゆくものだから、読んでいて気持ちがいいなあ。マダムがほだされる(?)のもわかる。
しかもありすの仕事にも関わりがあるのが、なんというか、読者的にはやっぱり嬉しいわけです。
これならふたりこれから、関わり合って側にいられるということにつながりそうですし。
第一王子としての役割にひとつの決別の答えを出したのも、良かったなと思いました。
柊君、できた弟さんだな……感心してしまいました。

やっぱりこの世界でも、ロマンス小説は女性に好まれるのね、とうんうん頷いて読んでいました。
京洛の森に本が届くシステムがやはり独特で、そういうことか~。面白いです。
私的には、『ジェイン・エア』とか『赤毛のアンシリーズ』とか『落窪物語』とかも推したいなあ。(勝手に考える)
『月の見えない夜に咲く花』も、素敵ですねえ。私も読んでみたくなりました。
そして確かに、どうして今までこの世界では、本屋さんが存在しなかったのだろう?
ふしぎ。
そしていつもおだやかにありすと連を守って側にいてくれるナツメのことも、じわじわとふしぎに思えてくるのです。
いつかもっと謎が解けてほどけてゆくといいな。

アカシア先生のバイオリンと過去の恋物語がまさかそうつながるとは!!
ロマンティックで、月夜にひとりぼっちで見ていた悲しい夢の続きから、ようやく目覚められたような。すてきでした。
現実は小説より優しかった。
マダムのツンデレっぷりが可愛らしく思えました。ふふふ。
あと紅葉さんや牡丹さんたちともちらりと再会できてうれしかったり。
亮平さんも、やっぱり蓮が悔しくなってしまうのも分かる、頼もしくて格好いい人です。男の子は特に憧れちゃうのかな。
お話に出てくるめぐみさんがやはり素敵でした。
あと、山羊さん二人組がかなり印象的でした。『狼と七ひきの子ヤギ』、改めて読むと確かに残酷ですよね……お気に召して良かった。

三巻目もきっと読めますよね??
望月麻衣さんのもうひとつの「京都」を舞台にしたものがたり、楽しませていただきました♪
できれば初々しいカップルにもう少し進展がほしいかも(笑)


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 望月麻衣 

『花だより みをつくし料理帖 特別巻』髙田 郁 




澪が大坂に戻ったのち、文政五年の春から翌年初午にかけての物語。
つる家の店主・種市と店の面々の様子が描かれた表題作、澪のかつての想い人・小野寺数馬とその奥方・乙緒の暮らしぶりが描かれた『涼風あり』含め、四編の番外編を収録。
シリーズ完結後の登場人物のその後の奮闘と幸せとを料理がつなぐ、待望の特別巻。


『みをつくし料理帖』シリーズ完結から四年後、今になってまさかの嬉しいシリーズ特別巻でした。
事前情報などまったくノーチェックでして、Twitterで情報が回ってきたときはびっくり仰天で、五度見ぐらいしてしまった。
シリーズが完結してからもう四年の年月が過ぎていたなんて。それにも驚かされてしまいました。

ということでほぼ四年ぶりにこのシリーズにふれるわけで、正直設定など色々あやふやになっている部分もあり大丈夫かしら……と思いつつも、お話が気になって仕方ないので、復習で既刊を読み返す暇も惜しく、読みはじめてみる。
……いざ読みはじめてみたら、そんなことちっとも気にならなかったです。
みをつくしの主要登場人物達、あのひとやあのひとたちに、久しぶりに再会できて、懐かしさやいとおしさに、読んでいて胸がいっぱいになりました。
ああ、みんながみんな現状くもりなく幸福というわけではなく、特に最後のお話の試練はしんどかったけれど、でもみんな元気で笑顔で生きていて、個性と人の良さと各自の持ち味はそのままで、大切な人と寄り添いあって生きていて、ほんとうによかった。
おかえりなさい!!!
ひとことでいえば、そんな気持ちに。
このシリーズのメインであるお料理ももちろんしっかり楽しめました。この時代の町の普段のお献立がまたたまらなくなつかしい。
贅沢な材料を使う訳でなくても、時間と手間をじっくりかけてていねいに作られるお料理の、美味しそうなこと。読んでいてふくふくと幸せな気分にひたれました。

それでは各話ごとに感想を。
『花だより 愛し浅利佃煮』
種市さんを主役に、シリーズ完結後のつる家で働く人達とその周辺の人々の姿を描いたお話。
このお話がいちばん明るく楽しいお話で、かつにぎやかでいちばん同窓会っぽかったです。
種市さんの澪ちゃんへの並々ならぬ愛情が心にしみいりました。
種市さんの心境を考えると気の毒だったのですが。気落ちしているひとがいればすぐに気づいて労わる周囲の皆が相変わらずでやっぱり心が温かくなりました。
個人的にはふきちゃんと健坊、太一君の成長がやっぱり印象的でうれしかったかな。
そしてりうさんがやっぱり最高でした。彼女のやることなすことが粋で、惚れ惚れしてしまいます。
まさかの種市さんとりうさん、坂村堂さんと清右衛門先生の、澪さんに会いに行こう!!の珍道中。
この時代の庶民の旅の雰囲気も味わえて楽しかったです。
そして種市さんの苦しみも溶けてひと息……というところで、オチにずっこけました。やっぱり気の毒。
種市さんの愛情が込められた浅蜊佃煮の握り飯が非常に美味しそうで、この本を読んでいる間私のお弁当にはかかさず浅蜊の時雨煮が入っていました。とさ。
清右衛門先生みたいな気が短いひねくれた男の人が実際に身近にいたら絶対私は苦手なのですが、でも先生やっぱり嫌いになれないんですよねえ。分かりづらい優しさがつぼにはまってしまいます。

『涼風あり その名は岡太夫』
小松原様こと小野寺数馬氏と、その妻乙緒さんの日常生活のひとこま。
ちょっぴり変わった性格で周囲に誤解されやすそうな乙緒さんですが、何とも言えない独特の味があるお人柄というか、私は読めば読むほど彼女が好きになっていきました。
無表情な母を全力で素直に慕う悠馬くんがまた可愛らしい。
なんというか、飄々としている数馬さんとは、お似合いの夫婦だなと思いました。
言葉足らずですれ違ってしまったけれど、お菓子で心を通わせられて、良かったです。
たしかに「岡太夫」ってややこしい成り立ちのお菓子だな……りつさんの愛情が余韻に残って良かった。
そして早帆さんは相変わらず早帆さんだなと思いました。彼女はむしろ変わらずにいてくれて良かったなと思ってしまった(笑)。
乙緒さんの辛い時に美味しいお菓子を送ってくれるおとうさんも、そのお菓子がちょっと気になる重光さんも、お武家のひともやっぱりみんないいひとだな。ほっとしてしまった。

『秋燕 明日の唐汁』
大坂に戻り生家の淡路橋高麗屋を再建した野江ちゃんのお話。
大坂の地で澪ちゃんと野江ちゃんが仲良く助け合って生きていて、読んでいる私もなんだかとっても幸せです。本当に良かった!!
野江ちゃんと又さんの出会いから始まる二人の絆のお話が、まさか今になって読めるとは。ぐっと胸に来ました。
又さんといえば寡黙だけど心優しい腕の確かな料理人というイメージが真っ先に出てくる私なので、なんだか、圧倒されました。彼が纏っていたそこはかとない凄みの空気にも納得がいったといいますか。
辛く苦しい過去と揺れる女ごころで苦しむ野江ちゃん、そして彼女のすべてを包み込む辰蔵さんの謙虚で大きな愛情に、打たれました。
おからの唐汁とは究極に素朴な料理に思えるけれど、あたたかくて優しい美味しさが伝わってくるようです。

『月の船を漕ぐ 病知らず』
ラストは澪と源斉先生のエピソード。
しかしこのお話が今回一番辛かった。やはり人生辛いことに終わりはなく次から次へとやってくるものだな……。
源斉先生と澪がひたすら真面目に誠実に努力しているからこその苦しみだと分かるので、一層辛い。
旦那さんがお医者様で奥さんがひとつの店の料理人というのは、たしかにものすごく大変だと思いました。
お互いの仕事を理解し尊重して暮らしているふたりがすごい。すごいけれど、たしかにしんどいときには一層しんどい……。
源斉先生にごはんを食べてもらえない澪の苦しみが本当につらかったけれど、お姑さんからもらったお味噌のレシピで、見失っていたものを見出した澪ちゃん、それからの彼女の頑張りと、そんな妻の姿を見てひとつの答えを見つけた源斉先生、良かったな。本当に良かったな。涙が出てきました。
お味噌を作る過程って具体的にあまり分かっていなかったので新鮮でした。思っていたより時間かからず作れるんだな。
そして東西のお味噌の違いで色々創意工夫をめぐらす姿こそ、澪ちゃんという感じがして、ふたりが元気になって、本当に良かった。
澪ちゃんと源斉先生のふたりの間に流れる空気は本当に穏やかで優しくて、そのまんまで夫婦になってるふたりが、ふたりらしくていいなと思ったのでした。
辛い時にお互い支え合い励まし合う澪ちゃんと野江ちゃんの友情も、また、しみじみ尊い。

澪と野江のふたりの人生を変えたかつての大坂の水害、病など、今のご時世特に全く他人事ではなくて、胸にせまってきました。
私ごときでは何のふさわしいことばも見つからずに情けなく歯がゆくてしかたないのですが、今回の新刊を読み、一層、平凡な日常がなんて尊いものなのか、感じ入らずにいられなかったです。
……なんというか、やっぱりうまいこと書けないのだけれど。

りうさんのラストの瓦版も、高田先生自ら描かれたという帯イラストも、最後までとっても素敵で、心が満ちたりました。
みをつくし料理帖シリーズファンの方は、ぜひぜひ今回の特別編も、手に取って読んでみてくださいませ。
おススメです!!


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 歴史もの

タグ: 高田郁 

『人魚と十六夜の魔法 ぬばたまおろち、しらたまおろち』白鷺 あおい 




ディアーヌ学院高等部に進級した綾乃達。
中等部には雪之丞の従妹や絵葉の弟、人間の女の子桜子も入学してきた。
そして新学期も少し過ぎたころ、ロシアの水妖ヴォダーくんが転校生としてやってくる。
ところがちょうどそのころから、寮に現れる不審者、部屋から消える皆のお八つなど、奇妙な出来事が起こりはじめ——。


和風学園ファンタジー『ぬばたまおろち、しらたまおろち』の続編です!
一巻目できれいにまとまっていたけれど、続きもぜひ読んでみたいなと思っていたので、びっくり&とても嬉しいです。

魅力的なキャラクターや各種設定やエピソードが二巻目もてんこもりで、読んでいてワクワクしてきてとっても楽しかったです♪
荻原規子さんとハリーポッター、古き良き学園寄宿舎もの少女小説、色々な要素が上手い具合に組み合わさっていて、にぎやかでキラキラした宝石箱の世界を開けたみたい。
一巻目に引き続きけっこうなボリュームがあるのですが、ストーリーはいい意味で軽やかに進んでゆくので、読みづらさはありません。基本のびやかで明るくて湿っぽくないのもいい。
あと一巻目の続きなので期待通りのロマンスパートもあり、そこもとても初々しく可愛らしくていい。ふふふ。
日本の古典的な妖怪たちに西洋風の魔女に吸血鬼に、今回はロシアの妖怪達も加わって、みんなが同じ学院で友情を育んでいる様も、良いものです。
小川未明の『赤い蝋燭と人魚』関連の伝承や人魚伝承も散りばめられて、ストーリーの大筋にしっかりからめられていて、作者さんのアレンジの仕方がとてもお上手。

表紙イラスト、絵葉ちゃんかな?すらっと背が高くて黒いドレスが良く似合っていて素敵!!新入生男子ふたり(多分)も可愛い。
そしてお着物を着て箒で空を飛ぶ魔女は改めて絵になりますねえ。

綾乃視点メインだった一巻目から転じて、綾乃達高等部メンバーのパート&桜子達中等部の新入生メンバーのパート、交互に視点が入れ替わって語られる、二重構造になっていました。
初々しく先輩達を手本に一生懸命頑張る新入生達の姿は微笑ましく可愛らしかったし、お馴染み高等部のみんなにも、また会えてとても嬉しい!!
最初のうちはどちらかというと綾乃達びいきで読んでいましたが、だんだん桜子ちゃん達にも愛着がわいてきました。
最初の新入生歓迎会の皆の「ダンス」の実演の迫力に私もすっかり魅せられてしまいました。そういえばディアーヌ学院はこういう学校でした。

綾乃がもうすっかり学院に馴染み皆の一員になっていて、雪之丞とも公認のカップル(というか公認のフィアンセ)になっていて、読んでいて嬉しくなってきました。
学院に普通に人間のクラスメイトがいるという設定をちょっと忘れかけていた私、綾乃は学院に、アロウこと雪之丞のフィアンセ枠で入ったんだったっけ??とか一瞬思ってしまった(笑)。まりんちゃんが当たり前みたいに紹介してるからさ……。
綾乃に対して過保護でちょっとぎこちないけど愛情が伝わってくる雪之丞、ふたりが本当に初々しく微笑ましくラブラブで、頬が緩みました。真面目さん同士なので、だいたいは一緒に勉強しているだけとか読書のお話とかなのもいい。学園の日常の中で一緒にピクニックに行ったりお茶しているのもいい。仲睦まじさが伝わってきます。
部屋にひとりのときに雪之丞が週二回来るって、十分多いと思ってしまった。ごちそうさまでした。
食いしん坊でさばけた絵葉ちゃんがやっぱり私のお気に入り。
柚月ちゃんや真奈ちゃんや堀口君や、ああ~皆元気そうでなによりです。読んでいるうちに色々思い出してきました。
報われてないようでときどき報われているような堀口君達のラブコメパートも楽しかった。
ある意味雪之丞と綾乃ちゃん達の関係性と似てるかも。妖魅との恋は人間とはまた違う悩みも喜びもあって、なんというかそういう関係性もすべて非常にときめきます。

一方人間の新入生桜子ちゃんがもうひとりの主人公といったところでしょうか。
桜子ちゃんと魔女だったおばあちゃんとの関係がとても好きで、お着物についていた彼女のことも込みで、すべてがわかったときにはほっこりじんわり心があたたかくなりました。
彼女も派手ではないけど大切なもののためにひとりで一生懸命頑張った、勇気と優しさを持つ素敵な女の子でした!
雪之丞のいとこのまりんちゃんも可愛い。種族は違えども普通に友情を育んでいる姿もやっぱりいい。
絵葉の弟大地くんと、狐の風斗くんの元気いっぱいやんちゃコンビも、好きでした。
人懐っこく自然体で誰とも仲良くなれる風斗くんは、またまた私のお気に入り。
「喜んで、ころこんで」という謎のフレーズが、でもなんだか言葉の響きがころころしていてかわいくて、風斗くんのイメージに合っていて、学院にいつのまにかなんとなく馴染んでいっているのが、私は好きだなと思いました。
のっぺらぼう姉弟のほんのりしたなまり(?)も私はけっこう好きです。
いちばん好きな独特の言葉は、「お八つ」なんですけどね、やっぱり!(笑)
こういうストーリー自体に関係のないちょっとした言葉の遊びみたいなのがときどき散りばめられているのも、またこのお話の雰囲気には合っています。

転校生ボダくんの人の良さや礼儀正しさ、人気者っぷりにほのぼのしました。
彼は何の秘密を抱えているのか……気になっていたのですが、彼のきょうだいへの愛情に、打たれました。
リューセンカの美少女っぷりがとてもよく伝わってきました。吸血鬼氏もなんだか切ない背景を持っていたので、最終的にああいうかたちにおさまって、良かったな。
人魚の伝説はどれもほの暗くかなしい気分になるものが多く確か未明の童話もそういうイメージだった……と思っていたので、ラストの流れの光が当たる感じが、なんか、尊いといいますか。とても良かった。
「荒海や 佐渡に横たふ 天の川」のまざまざとイメージできる美しくひらけてゆく景色が、私もとてもとても好きです。私も思いを共有できた気分。
お八つ泥棒の方は、そういうオチ!!なんだか憎めないおじさまだなあ。
絵葉ちゃんに人形焼を差し出させているって相当ですね。

それにしても雪之丞とアロウの関係を私は今一つ理解していなかった。
完全にイコールではないということね。むしろライバルなのか!!そういうことか!!
雪之丞の気持ちも分からないではないなと思いました。やっぱり綾乃はアロウをすこし、恋しがっていたから。
綾乃の危機には真っ先になりふり構わず駆け付けるところは特にアロウも雪之丞も一緒で、やっぱり頼もしく格好いい。
せっかくフィアンセなんだから、もうすこし関係性を進展させてもいいのにな。がんばれ雪ちゃん。
あと解呪呪文の歌、私自身も好きなので、ひっそりときめきました。ふたりらしい歌です。

雪之丞とアロウのことやマロさんのことや色々解決しきれていないし、みんな一人一人の活躍や物語をもっと読んでみたいし、また三巻目が出ることも、期待しています♪
大原先生とか雪之丞のおうちのひとびとをもうちょっと登場させてほしいかも。
でもいちばんはやっぱり、ふたりのロマンスを進展させてほしいなと思います。ふふふ。


今週の間それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 白鷺あおい