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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『本好きの下剋上』第一部~第二部 香月 美夜 




本がとにかく大好きで大好きな女子大生が、大学図書館への就職目前に死んでしまって、異世界に転生。
そこでは彼女は下町で暮らしている病弱な幼女で、周囲には本なんて一冊もない。
しかし彼女はそんな状況からなんとか本を作りだそうと、材料集めから一からはじめて試行錯誤を重ねて紙を作り文字を覚え……周囲を巻き込み突っ走っていくおはなし。


とても人気作なWeb小説発の超大作ファンタジー小説。
実は一巻目を何年も前に買ってずっと積み本にしていたのですが、一巻目を読み切ったら、うん、面白くって。
二巻目を読んだら、また一層、面白くって。
三巻目を読んだら、さらに幾重にも、面白さが増してきて。泣いて。
……第一部完結した時点から途中でやめられなくなってきて、一冊一冊がかなりのぶ厚みのあるシリーズを、現時点で第二部まで計七冊ですか、ほぼ一気読みしてしまいました。
先週ブログ書いていなかったのは、このシリーズの続きをひたすら読んでいたからです。
しかし第二部まで読み終えて、そろそろネタばれ含みの感想メモをちょっと書き残しておきたくなってきたので、ようやくブログまでやってきた次第です。

なんだろう、やっぱりヒロインのマインの、本に対する情熱がすごすぎて。
周囲に未知の技術を振りまき大騒動を巻き起こしていく姿にひやひやしつつも、突っ走っていくその姿が、読んでいて何とも痛快で面白いです。
ほんっとうになんにもないところ、どころか周囲は誰も本自体を知らないところから、材料を探し道具を作って一から本を手作りしていく、その過程のひとつひとつの描写がていねいで難しすぎずすっと読みやすいのが、とても良いですね。
私も本好き図書館好き人間なので、ひとつひとつのステップに共感できるし、とってもワクワクして楽しいです。

マインはとにかく本狂いですが、このお話の面白さは本以外、衣食住の描写もまた、非常に充実していて読み応えがあるところにもあると思います。
異世界で実践、日本の家庭科!
魔法まじりの異世界の材料で試行錯誤して、下町のつましい暮らしの中から前世の知識を活用して生み出していくマインの創作物、これまたしだいに家族の手を離れて周囲に大騒動を巻き起こしつつ広まっていくのが、たのしい~!!
私はやっぱり美味しいものを食べるのも作るのも好きで興味があるので、食に関する部分が特に楽しいです。
蒸したお芋にバターやカトル・カール、天然酵母のパンやピザ、マイン流スープ、フルーツ洋酒漬けとクリームのクレープ、全部おいしそうだけれど、今まででいちばん気になるのはやはり、一巻目で登場した冬の不思議植物・パルゥのしぼりかすで工夫して作ったおやつ・パルゥケーキでした。
おからのケーキ?いもくりかぼちゃのほくほく甘い感じ?少しチーズケーキっぽさもある??……けして再現できないお菓子だけになんとも魅力的です。
マインのお姉ちゃんのトゥーリやお母さんがお裁縫のプロなのもあり、洋服やお洒落の描写も結構力が入っていて楽しい。女三人が楽し気にお洒落に工夫し手仕事をしている姿ってなんかいいですね。お父さんが持ちあげられて木を加工して娘に喜んでもらってデレデレしているのも微笑ましい。
住宅事情や下町、商人、神殿、貴族、それぞれの風俗やものの考え方等もきっちり書き分けられているのも面白いです。確かに衛生事情は現代日本から転生してきている身には辛いというのはよくわかる。
貴族が関わってくるにつれて語られてくる神話もギリシア神話や日本の神話っぽい部分もあり、面白いな。

そしてそして、このお話でなんといってもいいのが、マインとその家族の家族愛!!そしてマインの近所の同い年の少年・ルッツとの息ぴったりの相棒関係!!!
第三巻でマインを守るため、貴族相手に身体を張ったお父さんとお母さんの愛情と覚悟の強さに、胸をがつーんと打たれて泣けてきてしまった。
最初は突然できた新しい家族を受け入れられなかったマインが、徐々に両親と姉をかけがえのない大切な存在としていく様が、自然な感じで描かれていて。本狂いではあるものの家族への愛情はまったく別で大切な順位を間違えないマインの姿が、いい。
家族の他に、大工の末息子ながら旅商人に憧れを持っていたルッツは、マインの最大の理解者であり、本作りの相棒であり、すべてを分かち合えるお互いが最大の味方。よくここまでマインの突飛な行動に辛抱強く付き合えるなルッツ……特に最初は感心するしかありませんでした。あれか、多分最初の内はパルウケーキでの餌付けですね(笑)。
びっくりするほど虚弱なマインの完璧なペースメーカーをしているところもすごい!自分の商人への夢を諦めずに、マインに助けられてついに実行に移して現在進行形で頑張っている姿もとてもいいです。彼の成長っぷりを見守るのは、ときに滅茶苦茶なマインのストーリーの中で癒しといいますか、とても微笑ましく良いものです。

商魂たくましい若手商人ベンノさん、片腕マルクさん、コリンナさんとオットーさん夫婦、ギルド長の孫娘フリーダ、色々魅力的な脇キャラがいっぱいいっぱいいまして、みんな好きだ~!!!特にマインに振り回され続けながら彼女の保護のため裏で幾重にも手を回してきていたベンノさんには恐れ入るしかありません。でも彼も苦労しながらもなかなか楽しそうなのですよね。ふふふ。

読んでいて、もし本がなかったら、家族を失ってしまったら、ときどき自分自身になぞらえて考えずにはいられない。
あまりに緻密に異世界での生活のありようが描かれているので。ね。初期のマインのちょっと周囲を考えてないところも、私自身実際こうなったらマインみたいになるような気がするし、責められないよなあ。
むしろ寝込んでばかりの家族の役立たずポジションから、ちょっとずつ前向きになり工夫を凝らして家族に認められ着実にこの世界で生きることをはじめたマインの姿は、とても尊い。

では追記以下に、ちょっとだけネタばれ含みの語りをさせてくださいませ。
第二部 神殿の巫女見習いの四巻目までで。


ここ二週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪


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カテゴリ: ファンタジー(西洋風)

タグ: 香月美夜 

『Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王』古宮 九時 




長い時を生きて絶大な力を誇り、異端視される存在である魔女。
世界で五人いる魔女の中でも最強である「青き月の魔女」ティナーシャの塔に挑戦者としてやってきたのは、大国ファルサスの王太子の青年オスカー。
彼が「達成者」としてティナーシャに願ったのは、「沈黙の魔女」に自身が幼いころかけられた、とある呪いを解くことで――。


数年前にWeb版を読み始めてはまりにはまって、Web版何度も読み返してサイト様の番外編、掌編、関連作ほぼすべて読み込んで、ネタバレ設定集Wikiも読み込んで、シリーズの同人誌読みたさに生まれて初めてコミティアやコミケに突撃することになった、大好きで大好きな物語が、ついに書籍化ですよ!!!
わああ、なんかもう言葉にならないです。
おめでとうございます!!!

すでにこのブログでもこの『Unnamed Memory』はじめいわゆる『Memoriae』シリーズの感想は何度も何度も語り続けており、いい加減くどいというかしつこいかな……と若干弱気なのですが、でもでも、ほんの少しでも新しい読者様の目に触れることを願って。あと単に私が語りたくて!今回も感想メモ記事を書くことにいたします。

美貌の魔女と大国の王子様と臣下達、伝説とバトルとロマンスに満ち満ちた異世界ファンタジー。
一昔前のファンタジーあり長編少女小説とかがカテゴリとして一番あてはまるのではないかと個人的には思っています。
緻密に張り巡らされた伏線も魅力的なキャラクターもノンストップでかけぬけてゆくストーリー本筋も、とにかく!最高です!!

なにより清楚で凛とした黒髪美女のヒロインティナーシャが私もう好きすぎまして。
強いところも弱いところも知的で努力家でお人好しで押しに弱いところも、みんな好きだ~!!
ただひたすらに彼女の幸せを願ってどこまでも読んでいく感じです。
ヒーローのオスカーもいろいろな意味で最強です。数百年生きている魔女と互角にわたりあって挙句結婚を申し込むとは、並大抵ではない。
私がこの作品を読み始めたころは少女小説にいわゆる「ヘタレ」系ヒーローがわりと多かった気がするのですが、その点オスカーは全然です。ぐいぐい押して押して押しまくります。
かといって俺様系ヒーローともちょっと違うんだな~。いや、ある意味俺様で自信家なのですが(王子様ですし)。たゆまぬ努力に裏打ちされた実力を持っているからこその自信ですし、知性と相手の事情を受け入れる度量の広さ、バランス感覚、まっすぐな優しさを当たり前のように持ち合わせています。
とにかくこの最強カップルが私はいとおしくてなりません。
書籍一巻目の序章パートはやはり、出会ったばかりのふたりの結婚するしないの掛け合い漫才みたいなやりとりが、おもしろいんですよね~。なんか懐かしい。

初期のファルサスのお城の主要メンバーの面々も、懐かしい。そうそうみんな最初はこんな感じだった!
金髪のおっとり美人さん魔法士シルヴィアが私のお気に入りキャラで、ティナーシャの髪をととのえる描写ににんまりしました。
彼女やラザルやドアンたちも、欲を言えばイラストで見てみたかったなー!

書籍化に当たりいろんな箇所で少しずつ手が加えられているのかな。
塔の試練の具体的な描写が増えていたのが面白かったです。
とはいえあやふやだったところもいっぱいで、そういえばこんなに最初から悲惨な殺人事件が起こってたんだよな、とか。(しかも犯人の正体と動機に結構考えさせられる。そしてクムのオスカーがせっかく入ってきた精霊術士の力を~云々の懸念に吹き出してしまった)
ルクレツィアさんきっと悪気はないけどかなり悪趣味だよな、とか。
例のあの二人組は結構初期から暗躍していたんだな、とか。
気持ち、Web版よりも、ロマンス色が増している、かしら?(この時点での)
ティナーシャはもうあっさりさばさばですが、オスカーは結構じっとり嫉妬深かった。
あとティナーシャの一瞬の美しい微笑に凝縮されたいろいろなものが盛り上がる場面が私はやはりとても好き。

というか、今回の書籍化部分はまだまだ序章で、盛り上がってくるのはこれからですよね!!
ティナーシャの過去が明かされるところとそれを受けてのオスカーの決意が、私は一幕の中でも特にお気に入りの場面なので、次の巻の書籍化が今から楽しみで楽しみでなりません。

作者さんによると書籍化が決まっているのは本編の第一幕までらしいのですが、いやいやいや、死んじゃいますよそれ(本気で)。
もしかすると第一幕の締め方が変わるのかもしれませんが。でもでも、この巻の時点で、第二幕にならないと回収されない伏線がいくつも張られてるじゃないですか。どうなるんでしょう!!
売れ行き次第とのことでしたので、私ができうる範囲で応援させていただきたいです。
せめて本編すべて書籍で読みたいですので、よろしくお願いいたします。

(そしてシリーズ関連作である『Babel』の続きも書籍で読みたい~読みたいのです~!!
異世界に迷い込んだ文系女子大学生と研究者肌の魔法士の青年の「言葉」にまつわる旅の物語。『UM』は「記憶」の物語。
私個人的には『Babel』の方がいわゆるライトノベルという感じがします。『UM』は特に主役二人のロマンスメインで私が読んでいるため少女小説カテゴリ。比較的)
(あと『Babel』はシリーズ内で一番すっきりしたハッピーエンドだと思います。『UM』は、少なくとも本編終了後の番外編『変質の旅路』を読んでからじゃないかな)

あと書籍化にあたってイラストがついたのも素晴らしい。
私はやっぱり表紙のカラーイラストのふたりが一番好きです!!もういくらでも眺めていられる。
オスカーの夜明けの空の青い瞳が一番好きです。彼の不敵な微笑みも。寄り添うティナーシャのクールビューティーな表情も!
あとナークやファルサスのお城の雰囲気もイメージぴったりです。


なんかネタバレなしでどうやって書いたらいいのかよくわからず書いていたら誰に向けて書いているのかよくわからないいつもの私っぽい感想になってしまいましたが、とにかく未読の方は、興味を持たれましたら是非是非読んでみてくださいませ。
そして続きが気になったらぜひ本編を、一度Webで読んでみてください!!私のネタバレあり感想語りにつきあってください(笑)。
サイト様からでも小説家になろうさんからでも読めますよ~。
no-seen flower


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: Memoriae シリーズ

タグ: no-seenflower 

『京都寺町三条のホームズ11 あの頃の想いと優しい夏休み』望月 麻衣 




『京都寺町三条のホームズ』シリーズ第十一弾。
大丸京都店での修行を終えて次の修行までの短い夏休みを「蔵」で過ごす清貴と、大学二年生になった葵。
ふたりの元に、清貴の高校時代の先輩が尋ねてくる。共に向かったのは、紅葉で有名な永観堂で。
その他、円生の生い立ちと清貴への複雑な感情、香織の恋の行方など、これまでのシリーズの魅力が多方面から楽しめる一冊。


『京都寺町三条のホームズ』シリーズの新作を新年早々読むことができて、うれしいです。ふふふ。
アニメとか各種コラボ企画とか楽しそうと思いつつ乗り切れておらず、どんどん人気作になっていく勢いになんだか自分から遠い存在になったようでほんの少し寂しいような、そんな気持ちも正直あるのですが。
でもでも原作小説版、やっぱり大好きですので!!
それに作品全体が盛り上がっているのは、はたからそっと眺めているだけでも楽しいですし。
そういうエンターテイメント性というか、お祭りめいた雰囲気が、嫌味にならずにばっちりはまる作品だと思うのです。
あれかな、清貴君の京都を背負った究極のおもてなし精神かしら(笑)。

そんな自分でも整理のついていない思いもあるのですが、それはさておき。
今回のお話は、シリーズの本筋はいったん小休止といいますか、まさに「夏休み」。
修行の合間にのんびりお休みを楽しむホームズさんと葵ちゃん、そして今までのシリーズの流れからすくい上げられてきた、各視点からのエピソード集。といったところでした。
はらはらどきどきサスペンス的な展開はひかえめで、サブタイトル通り、終始のんびり優しい雰囲気で読むことができました。
ラブラブの清貴君と葵ちゃんのふたりの姿に、読み終えて幸せ~な気分にひたれました。

円生の過去とか、清貴君と葵ちゃんが出会った場面の清貴君視点からの振り返りとか、シリーズファン的には嬉しい読みどころがいくつもあったのですが、個人的に特に印象的だったのは、やはり香織ちゃんの恋の決着でした。
カラー口絵のふたりにどういう展開になるのかけっこう心配していました。そっか。まあやっぱり、そうだよね~。(ため息)

ではでは、追記以下に、ネタばれあり各話感想を書いてゆきますね。


そしてここ二週間弱の間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 望月麻衣 

『奇跡のような嘘をあなたと』感想&冬コミおでかけの記録 

去年の年末に行ってきたのです。
冬コミに。
夏コミにはこれまで二回行きましたが、冬は今回がはじめてでした。
去年の秋から色々やることいっぱいあったので、終わった後に自分にご褒美を……というのが大きかったかな。
年末寒波の不穏なニュースが流れる中出発です!
新幹線は雪のため案の定遅れていましたが、途中で雪の積もった美しい富士山も眺めつつ、東京に到着。

とにかく今回は雪が心配だったのでさくっとまわって帰ることに。
会場は、夏よりは暑さがない分快適だった気がします。昼間しかいなかったので何とも言えませんが。
一番のお目当ての古宮先生の同人誌をまずは購入し、あと榎木洋子先生のサークルと村山早紀先生のファンサークルにも足をのばしてきました。
榎木先生は残念ながら席を外されていたようでしたが、後藤星先生とお話できて握手もできました。『雲上楼閣奇譚』と『なんて素敵にジャパネスク』後藤先生挿絵版(←私がはじめて読んだコバルト文庫)は生涯の宝物であり、感激の時間でした。
『影の王国』の番外編とか解説とか読めた!!!幸せすぎる。あとゆかりちゃん語り手のミズベ国の解説コーナーとか諸々とても良かった。私実は『龍と魔法使い』シリーズ未読なので、いつか本をそろえて読みたいものです。
村山先生の作品解説本も読んでいてすごく幸せでした~。世の中にこんな素敵なご本をこしらえている方がいらっしゃるとは。
Twitterの仲の良いフォロワーさんともお会いしてビックサイトを離脱し、ネットで見かけてずっと気になっていた美味しいふかふかパンケーキを外国みたいなお洒落なカフェでいただいて、大混雑の東京駅まで戻ってきて日帰りで帰ってきました。


それでは追記以下は、Unnamed Memory シリーズ同人誌新刊『奇跡のような嘘をあなたと』の感想メモになります。
サイト様のMemoriaeシリーズ全作品ネタバレなのでご注意くださいませ。

未読の皆さまには、今月発売される『Unnamed Memory』書籍版を、全力でオススメいたします♪
一昔前によくあったようなファンタジー長編少女小説がお好きな方、ちょうど村山先生の話題が出たので『はるかな空の東』がお好きな方に、特におすすめしたいなあ。私が今まで読んできた物語の中でいちばんティナーシャと近しいと感じたのは、はる空のトオヤ姫なのです。



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カテゴリ: Memoriae シリーズ

タグ: no-seenflower 

『後宮の烏 2』白川 紺子 




後宮で生きながら帝のお渡りのない特別な妃「烏妃」である寿雪は、先代の言いつけに背き、侍女をそばに置いてにぎやかな日常を送ることに戸惑いを覚える。
幽鬼を見るという異国出身の少年宦官、かつて仕えていた妃を弔ってほしいという老女、そしてある夜凄惨な事件を引き起こした妃と彼女の影にいた青年——。
寿雪も知らなかった烏漣娘娘、彼女が恐れる「梟」の真実が、紐解かれてゆく。


白川紺子さんの中華後宮ものファンタジー『後宮の烏』、第二弾。
一巻目の時点できれいにまとまっていて続きがでるかどうかはちょっと分からなかったので、続編の新刊のお知らせを見て「やったー!」と心の中で叫んでしまいました。
黒でまとめられた表紙イラスト、浮かび上がる白い光、たたずむ寿雪の髪に挿された牡丹の花が、特に美しい。

一巻目同様、夜と影の香りが漂う、静かな物語です。
初冬の長い夜に読むのにぴったり。
夜のお話ですが闇はけして濁ってはおらず、清らかであたたかで、読んでいるとやさしくくるみこまれるかのような。
さらさらと読みやすい、細部まで品よく上質な文章は相変わらず流石です。
ずっと読んで浸っていたくなる。
花や自然のものの描写、妃達の服装や装飾品、後宮の建物等、なにげないところを切り取った美しくて印象的な表現がたくさんあって、お気に入りの文章を見つけると心の中でずっと転がして味わってみたり。


この先一応ネタばれご注意くださいませ。


寿雪と高峻の二人の関係がやはりいちばん気になるところでしょうか。
いわゆる普通の関係の妃と皇帝ではないので、普通の後宮ものとはひと味違って面白いです。展開が読めない。
いやし難い孤独と心の傷を抱えた二人が「友」として少しのときを過ごしている様が、微笑ましく優しく、得難いものに思えます。
相変わらずつんつんしているけどお人好しで優しい少女で、甘いものであっけなくつられる寿雪が、可愛らしいこと。
高峻の本心はなかなか読めないのですが、寿雪を気にいって友としてあろうと誠実に努力しているのは、端々から伝わってきます。
そして何よりラスト。寿雪のやさしさをうけての彼の心の動きにこちらもほろほろっときました。
恋よりもっと切実に欲する存在なのかもしれないな、高峻にとっては。

あと今巻では寿雪の周りに次第に彼女を慕う人が増えてゆき、にぎやかになってゆくのも、読みどころというか。
九九の朗らかさと素朴な優しさには心和むし、陰でそっとひかえて見守る紅翹も、宦官でまだ少し幼くて素直なイシハくんも文武頼もしい温螢も、読んでいるごとに愛着がわいてきました。
特に寿雪のひととなりにふれるにつれ彼女自身に心を捧げるようになってゆく温螢の変化は、読んでいてぐっときました。彼の生い立ち語りがまたせつなくてふるえる。

ただこれらの変化を決して手放しに喜んでいるだけでなく、先代の言いつけに背いている、と罪悪感や恐れを抱いている寿雪なので、こちらも事情が分からないものですからやはり不安もあります。
同時にこれまでの彼女の孤独な日々を改めて突きつけられ、胸がしめつけられる。
そんな閉ざされた日々にも確かにあった、麗嬢と桂子の愛情もまたじわりと伝わってくるので。たまらないですよねえ。
色々思いはするけれど、今のこのにぎやかで温かい環境を、悪いものだとは思いたくはないな、と。
寿雪自身の人柄が築き上げた輪なのですから。

それにしても梟とはなんぞやと思っていたら、ラスト近くになってたたみかけるように語られる烏漣娘娘の真実。
こんなにスケールの大きい神話の物語が底に隠されていたとは。読み応えありますねえ!!
確かに衝撃的でした。真実もですが、それを教えられて命を奪われなければならないという理不尽さにも。
あらゆる意味で得体のしれない梟に、寿雪のため、真っすぐに当たり前のように対峙した高峻に、ちょっと泣きたくなってしまいました。
衛青が相変わらず寿雪に当たりがきついのもまあ分からなくはないんですよね。
このふたりが距離を縮めるのは、ぎりぎりの綱渡りのようなもののような気もしますもの。

青燕
イシハのために必死に動く寿雪と、彼女の優しさをちゃあんとわかっている九九が、良かった。
少年宦官の燕のお話はまたほろ苦く哀しいお話でした。救いを得られてよかった。

月月紅(べにばら)は盛りを過ぎていたが、葉のあいだにぽつりぽつりと散る間際の花が見える。
褪せた花は、盛りのころのようなみずみずしい鮮やかさはないものの、うらぶれた艶があった。  (55頁)

花嬢のところを訪れた場面のこの描写が私とてもお気に入り。
やはり涼やかで凛とした花嬢はすてきなひとだなあ。
寿雪の笑顔にあっさり陥落したらしい燕夫人もなんだか微笑ましかった。高峻はお使いか!
燕子花の美しさも伝わってきました。良い。

水の聲
これまた苦くて切ないお話でした。
安氏も婉琳も、後宮に生きて死んだ女たちの苦しさが、ひたひたと伝わってきました。
夜明宮での皆のたわいない日常のやり取りに和みました。

仮面の男
少しグロテスクなお話というか。
温螢の生い立ちにも少し繋がりました。切ない。
寿雪が男を救った手際がとりわけ鮮烈で美しくて印象深かったです。
花嬢の祖父の宰相のことで高峻が抱えるものは、やはり、重いですよね……。花嬢自身がどう思っているかはまた別にして。
彼の心の苦しい部分をそっと気に掛ける寿雪の賢さと真心にじんときました。

想夫香
序盤の夜明宮を訪ねてきた女の場面から繋がるお話。
あああ、許されない恋心がひたひた伝わってきて、グロテスクな事件になってしまったものの、彼女の気持ちが切ない。
全てが終わってからの父親の語りも切なかった。
そして驚いたのは冬官の彼のことでした。
正直ひやりと背筋が寒くなりましたが、彼が麗嬢に寄せていたであろう想いを考えると、やはり責められない、か。
いい後任者を育てて残してくれているし、寿雪のこともまた大切に思っていたのではないかな、と信じたいです。
寿雪が高峻の手を温める場面が、好きです。

それにしても今の後宮には、高峻本人を一途に恋い慕うお妃様が、出てこないですよねえ。
娘を後宮に送り込むのは親が決めることだし、まあそんなものなのかな。
この物語に直接的な後宮のどろどろ展開はあまり似合わない気もしますしね。
今後に期待したいですよね。いろいろ。

まだ梟のことなど解決していないし高峻が受けた傷も気がかりだし寿雪の今後も分からないし、これは続き、でますよね、きっと。
来年また楽しみに待っております。


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 白川紺子 

『ちどり亭にようこそ4 彗星の夜と幸福な日』十三 湊 




ちどり亭の店主・花柚と総一郎の結婚式まで、ついにあと数カ月。
そんなときになって、総一郎の祖母・咲子が突然ちどり亭を訪れる。
彼女はちどり亭を継ぐという彗太を試すような条件をつけてきて、それを受けて彗太は、一週間咲子のために弁当を作ることになる——。

『ちどり亭にようこそ』シリーズ第四弾にして完結巻。
もしかして前の巻で完結だったのかな?とか実はちょっと思っていたので、こうして四巻目が無事にでて読むことができて、とても嬉しく思います。

京都のちいさなお弁当屋さんを舞台につづられる、最後まで、幸福な日常のものがたりでした。
この作品世界の丁寧にきりりと暮らしを営む人たちの醸し出す雰囲気が、やはりとてもここちよい。じんわり癒されました。
季節の言葉の一つ一つも風流で響きも美しくて良きものです。
日本の伝統や年配者の知恵が随所に織り込まれる物語ですが、語り手が彗太君または花柚さんメインなので、読み手に取っては構えずにすんですんなり親しみやすいんですよね。
無邪気で育ちの良いお嬢様で若者たち(いや花柚さんも若者だけど)を家庭料理で優しく柔らかく導く花柚さんも、花柚さんの元で修業を重ねてまた着実に成長を遂げている彗太くんも、やっぱりとても好きだなあ!
姉弟のようなちどり亭のスタッフふたりに再び会えて嬉しいです。
ヒロインとヒーローのふたりそれぞれの恋愛の行方も読みどころ。
特に花柚さんと総一郎さんはすったもんだのあげくの結婚式直前。
ここまで、ようやく、辿り着いて……!!
と安心するにはまだ早く、この期に及んでまた横やりが入るところから、物語ははじまりました。

「冷や飯食い」と彗星の夜
本当に、花柚さんと総一郎さんの家族が店にやってきて、いいことがあったためしなんてないな……。いいところのおうちってすごいなとしみじみ。本当に苦労しますね。
その分受難を共に乗り越えて、このカップルの絆は一層深まっていっている、彗太君は成長していってる、ちどり亭はより素敵なお店になっていってる、とは思いますけどね。
冬のお弁当における冷たいご飯はやはり永遠の課題ですよね……!!私もお昼にレンジを使えなかった学生時代はお弁当の冷たいご飯がとても苦手だったので、良くわかります。あたたかスープ弁当のありがたみがつたわってきます。
私、夫の事嫌いなのよね!という咲子さんの爆弾発言には、花柚さんと彗太君共々あっけにとられましたが(苦笑)、なんだかんだ言ってこのふたりの間にも、確かな温かい情を感じたのも、確かです。
大根餅やおあげがじゅわっとした衣笠丼や鶏団子のほこほこお鍋がおいしそう。
彗太君の名前、私も前々から素敵だなと思っていたんですよね。
素敵なエピソードがまたひとつ追加。
いつの間にか進路が決まった形になっている彗太君に、菜月ちゃんが焦るのは、ちょっと分かる気が。
実際成長しましたよね彗太君。
咲子さんにも冷静に自分で意見を言って自分の意志でお弁当作りを決めていましたし。
あの総一郎さんも褒めていたし!

松風焼きと年の暮れ
台湾土産のパイナップルケーキに縁起物クッキー、学生さん達のふわふわパンケーキ研究会が、楽しそう&おいしそう。
私も幸福を呼ぶ……にあやかったお菓子を食べたくなってきました。あとパンケーキも食べたい。
野乃香ちゃんと康介君、つんけんしているけれど微笑ましいですねえ。ふふふ。
松園さんと安藤さんふたりの関係も微笑ましいというか、なんというか、最後まで読んでほっこりしました。
なんだかんだ世話焼きで年配者にも可愛がられている(?)美津彦さんも微笑ましい。
松風焼きの「うらさびし」と「うらがない」の解釈の違いも面白いなと思いました。

「よいお年を」
一年に交わす言葉の中で、いちばん美しい挨拶だと思った。
新しい年は、だれのもとにも訪れる。
あなたの新しい一年がよいものでありますように。
人の幸福を願っても、自分の何かが減るわけじゃないのだから、たくさんたくさん願えばいい。  (136頁)

季節柄もあって、ここの辺りの言葉が今回特に心に染み入りました。

脅迫状と味卵
今度は味がしみしみの味たまごを食べたい……!!
脅迫状は穏やかならなかったですが、幸いにして今回の犯人は、まあ可愛らしくてほっと胸をなでおろしました。
永谷氏の「弁当の中身が前もってわかったら、楽しみが減るじゃないか」が、こんな場面なのに可愛くてうっかりときめきました(笑)。美津彦さんへの人でなし発言も、花柚さんへの愛も同時に感じて、いっそうときめきました。
さて莉緒ちゃんあれから上手くいったのかしら。
五種類のおにぎりもチキンの梅しそ照り焼きも、おいしそうなお弁当だなあ。
花柚さんが莉緒ちゃんに親身になったのには、また理由がありまして……というのが番外編に続く。

サムシングパープルと幸福な日
ついに花柚さんと総一郎さんの結婚お披露目パーティー。
「サムシングパープル」とはあまり聞いたことがないなと思いましたが、なるほど、そういうことね。
彗太君のとっさの機転のブルーベリー餡のひとこまがとても良かった。彼の成長と花柚さんへの思いを改めて実感しました。
美津彦さん意外に(失礼)やるときはやるひとなんですよねえ。
麻里依さんの祝電も、良かった。
最後の場面の春の天丼弁当もものすごく美味しそうです。

番外編 十年後の弁当 ウィークエンドにいちごシロップ
『赤毛のアン』シリーズを彷彿とさせる甘くロマンティックなタイトルの番外編は、なんと総一郎さん視点のおはなしでした。
高校時代の彼の母親とのバトル生活が、彼も普通の男子高校生だったんだなと、微笑ましくなりつつ。
花柚さんのことはまあそんなに距離が近い訳ではなく、それでも彼女の人生に責任を感じてちゃんとデートをしてあげるあたりが、真面目な総一郎さんらしい。素敵だなと思いました。
お弁当本当に十年後で良かったですよね……!!神様に感謝しなくてはいけないレベルでこれで良かったのでしょう。
何より最後の花柚さんへのお手紙が、彼女への愛情がひしひしと伝わってきて、思わず目頭が熱くなりました。
本当は総一郎さんだって何度も手紙書き直してたんだなーと種明かしされると、余計になんというか、愛情を実感します。

これにて完結ということで、欲を言えば彗太君がちどり亭の店主になった未来のお話もちょっと読んでみたかったなとか、花柚さん達の子供も見てみたかったなとか、色々思いはしますが、きれいにまとまったシリーズでした。
私も一応毎日お弁当作りをしているわけで、すべてはとても無理ですが一寸取り入れてみたいアイデアが満載で、そういう意味でも良いシリーズでした。
美味しいものが好きな方、京都ものが好きな方、お弁当作りに興味がある方には、特におすすめなシリーズです。


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 日常のお話

タグ: 十三湊