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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『アトリと五人の王』菅野 雪虫 




東琴(トゴン)の姫・アトリは継母に疎まれ、まともな教育も受けられず内気に育つ。
厄介払いとして幼くして送られた嫁ぎ先は、枯れ果てた小国・柚記(ユシロ)に暮らす、病を得た王のもと。
その地でアトリは夫になった月王の教えを受け人々と接し、貧しい暮らしの中でも、知識と常識、そして愛情を手に入れる。
やがて王は亡くなり、祖国へ戻ることになるのだが……。


菅野雪虫さんの新作ファンタジー小説。
若くして五人もの王に嫁ぐという数奇な運命をたどった、アトリという王女様のものがたりです。
菅野雪虫さん作品ということと、あらすじに心惹かれて手に取ってみました。

とても素敵なお話でした。
何も与えられず育ったアトリが、最初の嫁ぎ先で知識と愛情を得て、出戻っても新しい嫁ぎ先に行っても、そのときの境遇で常に学び知識を得て成長し、賢く勇敢で心優しい女性に成長していきます。
アトリの生き様が読んでいて真っすぐでしなやかで、なんだか私も心に元気をもらえるような。
五人の旦那様方とのエピソードもみんな、何がしか心に染み入るものがある。
少し少女小説風味がプラスされた児童文学という感じです。読みやすい。
異国の香りがする和風ファンタジー世界観も素敵です。国の名前の響きが良いですねえ。
国と民のあり方など堅苦しくなくさらりと書かれていて、ちょっと考えさせられます。


以下、ネタばれ含みの感想語りです。


「第一章 月の王」
優しくて物静かで病がちで、賢者のような月の王。
彼がアトリに、その後の人生で何より大切なものを、最初に授けてくれました。辛抱強く、愛情を込めて。
とても貧しい暮らしだったけれど、いかに尊いことか。
従者のエンジの賑やかさが楽しいけれど、月王の病は良くなくて、すぐに悲しい結末を迎えてしまいました。
お付きの娘のサヤの選択が何とも切なくて悲しくて、それでも月王とふたり、幸せだったのだと信じたい。

「第二章 少年王」
東琴の王宮に戻ってきて継母に意地悪言われても、もうアトリは何もできない娘じゃない。
妹姫のカティンとも仲良くなれました。この母親に育てられてこんな風に姉を慕うことができる、カティンの素直さと公正な目線が素敵です。少なくとも与えられた愛情は本物だったんじゃないかな。
父王も、無関心良くないんだけれどなあ。でもようやく少し分かりあえたかな。それに王様としてはまずまず立派に治めていらっしゃるし。王妃様の言葉をうのみにしてたからか……いや、やっぱりそれも良くない。
エンジとロルモというふたりの頼れる従者も得て、アトリはだんだん故国でも充実した日々を送れるようになっていきます。
聡明で気さくな西鼓(サイコ)の少年王・トナムと出会い、彼と気が合ったアトリは請われて彼の三人目の妃として嫁ぐことに。
三人の可愛いお妃様が仲良くお茶会していたりして和む。
トナムと机を並べていくらでも学ぶことができて、アトリの毎日も充実。
平和で豊かな日々が続くと思いきや、けれど、この国にも闇はあったのでした。
あっけなく去っていった平穏な日々。
受難の日々もアトリはひたすらじっと耐え抜きます。

「第三章 盗賊王」
新王ザオは粗野で無茶な面はあるけれど、何だかんだ頭は良いし自由闊達で人望もある。
最初のアトリへの仕打ちはひどかったけれど、カティンともエンジとロルモとも再会できて、良かった!
カティンはたくましく成長したなあ。まさか作家さんになるとは。しかも彼女の作品本当に面白そうで読んでみたい。
(五十巻も出ているという天女と皇子の悲恋もの『華星天女』シリーズも気になる……。)

「第四章 真の王」
しかしザオもまたあっけなくクーデターで散ってしまった。
新しい王様は、かつて陰謀で追放されていた、トナムの兄のイムでした。大分どろどろしてきました……。
また王様の思惑で妃の座にとどまり続けるアトリ。
アトリとの出会いは血しぶきまじりで全然良くはなくて、ずっと冷徹で食えない人物だと思っていたイムですが。
イムと共に襲撃され目を悪くしたアトリへ、イムがしだいに心を許していき、アトリに不器用すぎる愛情を捧げるようになっていく様が、なんだかもう、泣けました。アトリは目が見えないので彼の愛情が半分も伝わっていないのが、また。
花の香りのお茶と、夜のお誘いがアトリに全然伝わっていなかった場面が、印象的でした。

「第五章 影の王」
さらにまたクーデターが発生し、アトリは再度妃に。
なんということか、イムを倒したのは逃げおおせていた弟王のトナムだったのでした。
変わり果てていたトナムのすさんだ雰囲気が何ともやりきれない。ニアへの仕打ちも辛い。
彼がそこまですさんでしまった理由というのも辛かった。
イムもトナムも、かつては仲が良かったのだろうに……。なんというかなあ。
けれどもアトリはまた従者たちとカティンの助力を得て、自力で母国に援助を頼み、最終的にはトナムの心も少し、溶かします。
トナムの最後の最後の告白が、こんな場面でもきゅんときてしまいました。
ああ、本当は彼は、優しい心を喪ってはいなかったんだなあ。目頭が熱くなりました。
確かに共に学ぶアトリとトナムは本当にお似合いでしたもの。

「終章」
エンジと共に柚記に帰るアトリ。
彼女の帰る地はやはりここなのだなあ。
今まで苦楽を分かち合ってきたエンジやロルモ達と共に、その後はおおむね穏やかで満ち足りた人生を送れたようで、良かったです。
奇跡は起こらないかもしれないけれど、奇跡みたいなことは起こるんだよ。


『天山の巫女ソニン』シリーズに通ずるものがある、のびやかでみずみずしく心豊かになれるものがたりでした。
学ぶこと、常に学び続けること、誠実に生きることの大切さが、シンプルに心に響く。
糖分控えめの少女小説としても楽しめると思います。
夏の読書にいかがでしょうか!!


ここ二三日にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 菅野雪虫 

『かくりよの宿飯十 あやかしお宿に帰りましょう。』友麻 碧 




『かくりよの宿飯』シリーズ第十弾。
自ら捕らわれた大旦那様を救うため、天神屋の仲間たちと妖都へ向かう葵。
八葉夜行会で、雷獣の陰謀により、大旦那様を隠世の底へと封印する提案がなされる。
それを阻止しようと協力者を探して、葵と天神屋の面々は妖都中を駆けまわる——。


『かくりよの宿飯』、ついに、最終巻になりました。
絶体絶命の身の上の大旦那様はどうなる?ついに自覚した葵ちゃんの気持ちはどうなる?と、読む前からはらはら。

『あやかしお宿へ帰りましょう。』というサブタイトルと、天神屋のメンバー達が笑顔で勢ぞろいしている表紙イラストが、本編を読み終えてから改めて眺めていると、感無量です。
葵ちゃんも大旦那様も皆も、帰るべきところは、天神屋なのだな。

終わってしまったな……。
しみじみとこみあげてくるものがある、いいラストでした。
前巻に引き続き、今まで残っていたいくつかの伏線もきれいに回収されて、明るい未来へつながる余韻があって。
思えばもう何年もこの物語をリアルタイムで追ってこれて、私はとても幸せでした。
最後の最後でロマンスもきっちり盛られていて最高でした。
どっちかというとヒーローが葵ちゃんだったような気がしますが(笑)。
そしてもちろん最後まで美味しいものが盛りだくさんです。葵ちゃんが真心をこめて作った生どら焼きが食べたくてしかたがありません。

それでは追記以下に、ネタばれ込みの感想を収納しておきます~。
その前に、ここ二三日の間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪


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カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 友麻碧 

『天気の子』映画鑑賞の記録 

お盆の連休に見てきました。『天気の子』。
前作の『君の名は。』が私はとてもとても好きで、今回の『天気の子』のあらすじも心惹かれるものがあり、楽しみにしていました。
台風が接近中の今日この日に感想を書くのもタイミングがちょうどいい気がする(笑)。
本当は、7月の長かった梅雨期間中に観ていたらより臨場感があったのかもなと思いましたが。

前作と通ずるものも確かにあり、けれども全く別の、新しい魅力的なものがたりでした。
とにかく雨と青空と東京の街と、情景描写が美しくて生き生きとしていて、すごく好きです。
下町?の少々ごみごみした雑然としたところ、書類が積み重なっていたりチープな小物が飾ってあったり、そんなところも人の営みの一部であり、たまらなく貴重でいとおしいものに思えてくる。
途切れなく振り続ける雨、質感がしずくのひとつぶまで素晴らしくて美しいのだけれど、だんだん怖くなってくる。
こじんまりとした晴れの空との対比が見事。
ラストになると、灰色の雨の空も、少しイメージが変わってきたりして。

そして家出少年の帆高と「晴れ女」陽菜ちゃんの物語であり。
ふたりの若さにあふれた滅茶苦茶な冒険と友情と一途な愛情が、みていてハラハラしつつも、まぶしかったなあ!
帆高が東京で出会った須賀さんと夏美さんというふたりの大人の存在も、大きかったです。
やはりどちらかというと年齢的、立場的に、須賀さん達の方に心情としては共感できたな。
彼らの視点が混じることで何とも言えない切なさほろ苦さがプラスされ、ものがたりに厚みが増していると感じました。
そんなふたりの視点が、あとから小説版を読むことでより深く知ることができて、良かったです。



事前にネットで見ていたラストの賛否、私的にはすんなり「あり」だと思いました。
上手く言い表せないのですが、ものがたりの読み手として、こういう選択をした当事者がひとりでもいるのならば、救われる心地がします。


という訳で追記以下に、ネタばれ込みの感想メモを収納しておこうと思います。
映画版小説版のネタばれが混じっているのでご注意を!!

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カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 新海誠 

『魔女の遺骸』感想(Unnamed memory) 

今年の『Unnamed Memory』シリーズの夏コミの新刊『魔女の遺骸』、買ってきました&読みました!!
今回は実を言うと、夏コミ本番前に入手済でした。
通販の予約のタイミングを逃してうなっていたところ、古宮先生のツイートでもしやと思いちょっと調べた結果、最寄りの某店で直接買えてしまいました。すごいですさすが都会。連日死ぬほど猛暑日が続いているだけあります。
シックな赤の表紙に装丁も雰囲気ぴったりでとても素敵。

掌編に加えて、簡易年表、世界設定、人物紹介もついているという、ファンにはたいへん美味しい内容になっていました。
我慢できずに年表とかから先に読んじゃった。
サイト様の現在非公開になっている設定集Wikiが大好きだったもので、待ち望んでいたのです。


そんなわけで以下、Memoriaeシリーズすべてネタばれありの感想語りを追記に収納します。
この冊子自体は書籍版2巻目まで読了の方でもオッケーだと思いますが、私の感想語りはそこからずーっと先まで込のネタばれが少し混じっているので、念のためご注意を!
(でも皆さまいずれはこの先の先まで到達していただいて感想を分かち合いたいです。という願望)

そういえば三巻目のタイトルと書影がすでにネットでアップされていますね。
意味深なタイトルで、なんだかこれだけで泣けてくる……。

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カテゴリ: Memoriae シリーズ

タグ: no-seenflower 

最近のオンライン小説読みの記録(2019年春~夏編) 

暑ーい!
もはやそれしか言うことがない(汗)。
ぐたっとなっているときにも比較的読みやすいのが、スマートフォンでぽちぽち少しずつたどれるオンライン小説、ということで。
ここのところで読んだ作品の感想メモです。
なにしろPCに向かい合っている時間が暑くてたまらず、数日ちょこちょこ書き足していってひとつの記事にようやく仕立て上げました。
といっても寄せ集め記事ですが。

エリスの聖杯』常盤くじらさん
完結済。
たぐいまれなる美貌と由緒ある血筋の令嬢スカーレット・カスティエルは、婚約者の恋人への嫉妬に狂い暗殺を企て、民衆の前で処刑されてしまう。
それから十年、ぱっとしない子爵令嬢コニーは、婚約者の不貞を目撃してしまう。
味方もおらず追い詰められた舞踏会で、コニーに唯一救いを差しのべたのは、奇妙で高飛車な娘――。

タイトルに惹かれて読み始めてみました。
絵にかいたような悪役令嬢・スカーレット(の幽霊)と、彼女の復讐に付き合わされる羽目になった、さえない平凡な子爵令嬢コニーの、でこぼこコンビのやりとりが面白い。
いつしかふたりに芽生える友情にじーんときます。
いわゆるチート要素は皆無で、何の特別な力もない、ただただ「誠実」なコニー。自分のやりたいようにやるスカーレットに振り回され続けるうちに、彼女なりの芯を得て、たくましく成長してゆきます。
一少女の単なる復讐劇ではなくって、数十倍危険な香りのするどろどろ陰謀劇が、お話のメインです。
スカーレット側の事情もだんだん見えてくるうちに、なんか、いいこだな……最高に格好いいじゃん。ずるい。
スカーレットの真実が残酷で、あまりに残酷で、えぐられました。
スカーレットのパパの過去の回想に、パパ達の恋と友情の物語に、涙があふれてきました。リリーさんも芯が通っていて格好良かった。
そしてちゃんとロマンスもあります。朴念仁氏とコニーの素晴らしくじれじれなロマンス。年の差も身分差もあって美味しいです。
恋愛には疎すぎますが、厄介ごとに巻き込まれすぎなコニーをありとあらゆる場面で助けてくれる彼は、さすが、格好いいのです。ストイックで優しいところもデートの行き先のチョイスもマル。
コニーの友人知人達、コニーが今まで割に合わない思いをいっぱいしつつもなんだかんだ助けてきた人達が、彼女の危機に次々と手を差し伸べてゆく、終盤の怒涛の展開は、胸の奥が熱くなりました。
あの彼女とか彼とかまさか再登場するとは思わなかったよね。苦笑。
コニーの若干こなれてない突っ込み口調も、読み慣れてくるとなんか味の内です。
登場人物が多くて頭がちょっとこんがらがってきますが、各章ごとの登場人物紹介とあわせて読むと結構整理できて良いですよ。

リケジョの取扱説明書』山本風碧さん
完結済。
女子力ゼロの理系女子学生さくらさんと、故あって女性アレルギー持ち御曹司の島田さん。
故あって彼の会社でバイトとして働くことになったさくらさん達の、仕事と学業と就職活動、そして恋のお話。

これまた私好みの頑張る生真面目な女の子がヒロインの年の差オフィスラブコメ。
楽しかったです~!!きゅんきゅんしました!!
ふたりの出会いの合コンの場面がなんだかまずお気に入りでした。
コンプレックスを抱えてつたなく足掻いて頑張るさくらさんと、そんな彼女に次第に惹かれていく島田さん。
研究のこともお仕事のこともほどよいボリュームで描かれていて、読み応えありました。そこから次第に自分の道を見出していくヒロインの姿も素敵。
メシ友(?)から距離をじわじわつめていくふたりも楽しくて良かったです。豚骨ラーメンおいしそうだな。あとふきやのお好み焼きがすごく美味しそう。
さくらさんのおかあさんがなかなかの壁でしたが、でもなんか良い人だったな。最後格好良かったな。
さくらさんの友人二人もいいこだったし、最初は微妙だった上原さんもちゃんと仕事熱心な良い仲間でした。
さくらさん、良い名前だな。
幸せになってほしいです!!

メニューをどうぞ』汐邑雛さん
連載中。
これは書籍版から入ってじわじわと世界観にはまり、今Web版もじわじわ読み進めているところです。
不幸続きでどん底だった料理人の栞さんが、ひょんなことから異世界のリゾートホテルのシェフとして雇われ、異世界の未知の食材をふんだんに使って創意工夫が光るおいしいごはんを作っていくお話。
徹底的に異世界クッキング!がメインなのが楽しいです。少女小説寄り加減も私にはちょうどいい。
料理をしていればとにかく幸せな天性の料理人・栞さんが、無自覚に無敵で、格好いいです。
栞の最大の保護者にして理解者・プリン殿下ことマクシミリアン殿下のひんやりとした優秀さも光ってる。(主に栞の目に見えないところで)
栞さんとマクシミリアン殿下の関係が、うーん、恋愛ではないんだけれど何とは言い切れない濃い絆で結ばれていて、もどかしいのですが美味しいです。そのうち何とかならないのかな。前例(?)もあることですし……。
双子の弟子のディナンとリアがまた頑張り屋さんで可愛いです。
これは読んでいてとにかくプリンを食べたくなってきます。プリン(苦笑)。
『なんちゃってシンデレラ』シリーズとのほんのりしたリンクも美味しいです。世界構造そのものにも何かつながりがありそう。

今連載を追っている中で楽しいのは『魔導具師ダリヤはうつむかない』と『女王の化粧師』かな!!
更新を読むたび胸を熱くしています。
応援しています!!!


ここ十日間くらいの間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: オンライン小説

『京都寺町三条のホームズ12 祇園探偵の事件手帖』望月 麻衣 




『京都寺町三条のホームズ』シリーズ第十二弾。
夏休みも終わった九月、今度は「小松探偵事務所」で修業をはじめる清貴。そして清貴に弟子入り(?)することになった円生。
清貴、円生、小松の三人は、祇園の舞妓のストーカー疑惑に幽霊騒動、そして「自分を殺した人物を知りたいのです」という男の奇妙な依頼を受けることになる——。


『京都寺町三条のホームズ』さんの待望の最新作でした。
ついに本物の探偵になったホームズさん!!予想はしていたけれどはまりすぎです(笑)。
表紙イラストの少し暗い時間の祇園の町並み、三人のそこはかとなく緊張感が漂ってくる立ち位置、読み終えてまた改めて見返してみるとこの巻のイメージぴったりで、相変わらずさすがです。
カラー口絵の清貴君と円生のイラスト、笑顔が全くないふたりながら、スマートさと色香がばしばし漂ってきて、ほーっ、格好いいです。(特に円生には不本意でしょうが)相棒、という感じ。
いや、それ以上に破壊力があったのは、その裏の舞妓さん。
まさかのあの子でした。美少女っぷりと色香がすごすぎる。さすが。
(確かに葵ちゃんの可愛らしさは、舞妓さんとはちょっとカラーが違う気がしますね……)

いやあ、半ば予想はしていましたが、探偵役のホームズさん、小松さんの事務所でも大活躍!!
京都の横のつながりを最大限に活用しているのがさすがです。こればっかりは確かに清貴君の財産です。
でも確かに、それも祖父からのつながりを保つ努力を怠らず、な彼ならではなんですけれどね。とらやのお土産の用意がそつがなさすぎてさすが。あの吉乃さんのところにまでとらやを持っていくとは。
(というか、とらやって東京のお店?京都のお店?いまいち謎だったのですが、おかげでようやく理解できました)
とはいえ円生とは案の定仲良しとはいいがたく、特に円生が常に突っかかっていて、空気は正直あまりよくない。
出会いの頃に比べればこれでもだいぶ軟化しているのも分かるのですが、とにかく、小松さんが気の毒でした。それにつきます(苦笑)。
拝み屋さんシリーズとのコラボも一瞬あったりして、ファン的には二重に楽しめました。
確かに同じ祇園が舞台なのに、作品が違うと雰囲気が違いますねえ。
資産家の人達のちょっとドロドロした人間模様、いかにもドラマのサスペンス劇場みたいな雰囲気も、このホームズさんシリーズっぽいです。
「祇園探偵」というネーミングもまたよくはまっています。

葵ちゃんの出番がどうしても少なくて、正直それが読んでいて寂しかったのですが、第一話の最後の大型犬のようなホームズさんが私の気持ちをすべて代弁してくれたので、まあ、私も満たされてしまいました(笑)。
本当に葵ちゃんのことだけには別人のように大人げなく余裕をなくすホームズさん、相変わらずでした。
むしろますます凄みをましていて、正直ちょっと怖いよ(苦笑)。
円生という存在が、ホームズさんにとっても特別なライバルだということかな。

では各章ごとに感想メモを。
『プロローグ』
葵ちゃんの出番が少ないので、貴重なお留守番葵ちゃんプロローグでした。
その三人がそろってまっさきに小松さんを心配しているのが、さすが、分かってる!!
確かに距離感の近さはこれまでとは段違いで嬉しいですよね。

『第一章 最初の出会い』
ほんとうにもう、小松さんがかわいそう(苦笑)。
事件はなかなかドロドロとしていましたが、ほの香さんもも香さんたちは、麗しく可愛らしかったです。やっぱり女の子がいるとお話が華やぎます……。ちょっと『京洛の森のアリス』の彼女たちを思い出してしまいました。
三つの事件がそうつながるか、と思いました。
夕花さんがすっごく苦しんだんだろうなとやり切れなかったです。
写真のやりとり、清貴君は葵ちゃんに真意がきちんと伝わって、彼女ならと思ってはいただろうけど、嬉しかっただろうな。(最終的には円生もちゃんと分かってくれて良かったと思います)
利休君も相変わらず清兄一筋で……あの格好も清貴君のためならそんなに嫌がってないっぽいのが徹底してる。
そして葵ちゃんに抱きついた後の清貴君の切り替えのギャップがすごすぎて、吹き出してしまった。

『掌編 拝み屋さんと鑑定士』
澪人くんにまで嫉妬する必要はないと思うけれど……でもまあ気持ちは分かるかな。
『拝み屋さん』シリーズって、語り手が斎宮のゆかりの少女小春ちゃんだからか、清らかで楚々としたイメージがどっちかというとあるんですが、確かに世間一般的な「拝み屋さん」のイメージってつきもの落としとかドロドロ系かも……そういえばあまり考えたことなかったなあ。

『第二章 矜持の証』
葵ちゃんと秋人さんとお出かけする、箸休め的なエピソード。
私も平安神宮って行ったことないんですよね。ホームズさんの解説に、京都の歴史に思いをはせて、じんときてしまいました。
香織ちゃんも元気そうで良かったです。彼女には本当に幸せになってほしい。

『第三章 パンドラの箱』
「二人のナミカワ」のとても丁寧で詳細な解説に、私も気になってきました。図書館でまた調べてみよう。
パンドラの箱ということで、このお話もまた結構ドロドロでしたが、思っていたよりソフトな結末で良かったです。
確かにすごすぎる宝物を目にしてしまったら、心を強く持っていないと負けちゃいそう。
ぎりぎりグレーゾーンにいながらしゃんと踏みとどまっている敦子さんが素敵だなと思いました。息子さんにも救いはあった。
ロマネ・コンティの薀蓄から確実に相手を追い詰めていくホームズさんがすごかったです。
ホームズさんと円生のふたりといるとどうしてもかすんでしまう小松さんですが、本来彼の情報収集能力はホームズさんも一目置いているんですよね。
小松さんはどうかその人の良さを保ったまま、地味だけどいい仕事をする探偵でいてほしいな。

『掌編 不思議な時間』
ホームズさんとどちらがすぐれているか、競う必要なんてない、と「二人のナミカワ」エピソードを通じて気づいた円生、一皮むけたかな。
それにしてもホームズさんに恋する葵ちゃんの反応が可愛くて、普段のもうだいぶ大人びた雰囲気からのギャップがたまらない……!これは確かに撃ち抜かれてしまいます。
葵ちゃんに海外への同行を断られて落ち込んでいるホームズさんも気の毒かつ可愛かったです。でも確かに葵ちゃんの気持ちももっともです。恋人同士であり、師匠と弟子であるふたりですからねえ。
好江さんが一緒ならば、ホームズさんも認めるしかないよね。

『エピローグ』
ここにきて再登場のイーリンさん。
そ、そういえば、あの雨宮史郎さんという男が不気味に存在したままでした。
今後の展開がまるで読めないですねえ。一体どうなっちゃうんでしょう!!

『掌編 想い出の地で』
今回店長の出番もほぼなかったので、嬉しいエピソードでした。店長が登場すると話がほんわか和むのでいいなあ。

円生視点も多くてだいぶ人となりも分かってきて、ちょっと可愛くすら思えてきた巻でした。
でもやっぱりもう少し葵ちゃんの出番があると嬉しかったかな!(笑)
それにしても葵ちゃんは鑑定士としても女性としても成長著しいなと、随所で感じました。
あの世界規模の招待にお声がかかるなんて、すごくない?え、めっちゃすごいよ??
彼女のニューヨークでの今後の活躍も、読みたいです~!!!
清貴君の家頭邸改装計画とかも気になりますが。葵ちゃん次第かしら。

ブログで感想を書き切れていませんが、『わが家は祇園の拝み屋さん』シリーズも『京洛の森のアリス』シリーズも引き続き楽しく読ませていただいています!!
他シリーズを読む際にも嬉しい、今回ついていた京都の詳細な地図でした。


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 望月麻衣