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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『金星特急 外伝』嬉野 君 




フランス外人部隊の砦に潜入した白鎖の夏草と、瞳の中に虚無を抱える若き中隊長ルイの出会い。
金星の残した不思議な力を回収すべく世界を旅する砂鉄とユースタス。純国普と戦いながら言語の研究を続ける王女と研究者たち、それを護衛する月氏。そして金星との娘を日本で育てる錆丸。
シリーズで語られなかった物語、彼らの旅の後日談を描いた珠玉の番外編集。

いつの間にかブログが、このシリーズの感想で埋め尽くされてました(汗)。
(たぶん)この外伝の感想で最後です!
この記事も、シリーズ未読の方はネタばれ注意ですので、ひとつよろしくお願いいたします。

リアルタイムには叶わなかったけれど、桜の季節に読めて良かった。
最初に読み終えた時点では、桜の花はまだ盛りを少し過ぎたくらいで、電車の窓から外をのぞくだけで、物語の余韻にうっとりひたることができました。
過酷な旅路の果てのラストの再会が、夢のように美しくて幸せで、読んでいて涙があふれました。
いちばん気になっていた砂鉄とユースタス含め、それぞれの後日談、番外編。どのお話もとてもとても良かったです。

『恋人の妹』
アルベルトの過去編に登場したハハリ博士の孫娘エミリーと、ヴィットリア王女、ハハリ・ジュニア達言語学者チームと、彼らを護衛する月氏達。
エミリー再登場嬉しかったです。エミリーとヴィットリア王女のやりとりもとても好き。王女殿下、大人になったなあ……。アルベルト殿下と似ている部分もあり、異なる部分もあり。
危険と隣り合わせの古代遺跡での調査、彼らの学者馬鹿っぷりが並大抵ではなく月氏達ですら手を焼かされていて、うーん、素敵です(笑)。
殿下の手紙のたった一言が、なんて愛おしいんだろう。
一途な人だったんだな、殿下……。
白の一鎖二鎖コンビの、「名前だけは牧歌的な……」には笑いました。私も最初は思ってました。

『Lobo & Blanca』
扉絵でロングコートを着込み、雪の森で寄り添いあうふたりが、まさに一幅の絵のよう。
砂鉄とユースタスが、今ふたりで寄り添い行動を共にしていると知ることができて、心の底から安堵しましたし、寄り添いあうふたりのラブラブさが随所から伝わってきて、私もたまらなく幸せな気分に満たされました。
ユースタスの銀魚をすっかり手慣れた様子で操る砂鉄に度肝を抜かれました(笑)。
対人交渉や不思議の力を用いた戦い方など、お互い補いあい、すべてがすでにしっくり馴染んでいて一対の風情で、ああ、いいなあ。
そしてやっぱり食欲魔人なユースタスに和みました。「あの村の食堂の鹿肉シチューを食べれば、絶対に元気になれると思うのだが」って完全にユースタス基準ですけれど、こんな優しくてちょっと天然な彼女が大好きです。

ユースタスの両親に砂鉄が会いに行くお話。
直接的な言葉はなくとも、行動と両親への台詞のすべてから、砂鉄のユースタスとの将来への意志が伝わってきて、もう。
お母さまの方はともかく、お父上の方は、少なくとも今は、娘の幸せを心から願っているようで、良かったな。
ユースタスの穏やかな笑顔に泣き崩れる伯爵の姿にこみ上げるものがありました。
そしてアルゼンチンの荒野にて。
「私より先に死なないでくれ」というユースタスの台詞が心に焼き付きました。あまりに愛情薄い人生を送ってきた彼女のお願いが重い。それを正面からきっちり受け止められる砂鉄の強さがまたいい。
砂鉄もユースタスも、お互いに出会って、本当に変わったんだなあ。と、しみじみ幸福感をかみしめる。
髪のやりとりもとても好きです。

狼王ロボとブランカのイメージが、砂鉄とユースタスに非常に効果的に重ね合わされていて、砂鉄はもちろん普通の女性のようなふわふわした甘さを持たない凛としたユースタスの姿は、確かに純白のうつくしい野生の生き物のようである。

『骨噛みの酒』
雷鳥様と無名のミニエピソード。
やっぱり格好いいです雷鳥様!
錆丸ですらつかめない、現在のふたりの関係の実際のところが気になります。

『砂の男』
夏草と三月の出会い。
三月が、人でなしなんだけれど、反面純粋で優しいところも心に持ち合わせているというのか、この不安定さに惹きつけられる。
夏草と三月が出会えたことも良かったし、ふたりが錆丸と出会えて、「家族」になることができて、本当の本当に良かった。

『天使』
すみません、正直一読目では誰のお話か、最後まで読んでも気づかなかったのですが。
残酷な環境なのに生々しさはなく、少年と少女のおとぎ話みたいな可愛らしく優しい出会いの物語。

『花の海で』

読み終えた心地を文章にすると、素晴らしかった本への愛は二倍に、つまらなかった本への不満は二分の一になる。
——マリアさんの何気ない場面での言葉に序盤から惚れました。
この一文が決めてで私は、このシリーズの感想を、一巻一巻すべて書き残すことにしたんですよね。

まずは金星のもと集められた女の子達の再会。皆元気そうでとても嬉しい。特にヤスミンが結婚を決めたエピソードがお気に入りでした。バドルさんの影を確認できたのも良かった。
砂鉄とユースタスと彗星の三人のことで、彗星の立場でものごとを見てくれる女の子たちが、この世の中に確かにいてくれている、というのが、なんというか救いになっていてとてもいいなあと思いました。
私もどうしてもユースタスの全面的味方視点なので、よけいにね。クリスティーナの態度は嬉しかった。
錆丸がすっかりいい男、父親になっていて、感慨深いったらないです。桜ちゃん可愛い。いい名前だな、桜ちゃん。
夏草と三月と伊織との兄弟の誓いも良かった。
日本の図書館に通う夏草がしっくり馴染みすぎていてやっぱりそんな夏草が大好きでした(笑)。錆丸の先生でい続けている関係も嬉しい。三月の姪っ子可愛がりっぷりもいい。
そして最後を締めくくるのがやはり砂鉄とユースタスなのも、かくあるべきという感じがして、良かったです。
ユースタスの騎士の誓いが相変わらず様になっていてユースタスらしくてとてもいい!砂鉄のそっけなさもふたりでワンセットだと思えば……(笑)。
お花見弁当が、本編一巻目で錆丸が持参していたお弁当の場面を彷彿とさせて、何もかもが行き着くべきところに行きついたのだなあと、色々な気持ちがこみ上げてくるラストでした。
コートにもぐりこんで甘えるユースタスが本当に可愛らしい。

あと、画集も!



大きなサイズでのイラストがどれも美しい。カラーイラストも多数でこれまた美しくて目の保養でした。
私はやはり、二巻目の背中合わせのイラストと、第4話のタイトルページがお気に入りで。
ユースタスのほんのり女性の空気をまとい完璧な貴公子でもある、境目の美しさがたまらなく好きです。
ヴィットリア王女のカラーも嬉しい。
書きおろしの短編は、夏草とユースタスのにわか探偵コンビがとにかく可愛らしくてほのぼの和みました。
さりげなく砂鉄とユースタスのラブラブな雰囲気が描写されているのも美味しい。
相変わらず食べ物のことばっかりなユースタスが可愛い(笑)。確かに砂鉄は苦労しているんでしょうね……。
欲を言えば、ユースタスのドレス姿をイラストで拝みたかったです。


この物語に出会えて良かった。幸せでした。
私がこのシリーズを読みはじめてからお声をかけていただき、感想、作品への愛をを共有していただいたネット上の皆さまにも、大感謝!!


きのうそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: その他少女小説レーベルの本

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『金星特急 7』嬉野 君 




「金星、君に会いたい」
生放送で全世界に呼びかけ、金星特急をグラナダへ呼び戻した錆丸。
スペイン内戦は止まるものの、一行は敵の追跡をかわしながら列車の到着を待たねばならなくなる。
グラナダを出れば次は終着駅、この世に戻ることはない。覚悟を決め残された時間を生き抜こうとする花婿候補たちと、彼らを助けたい錆丸。彼らの旅の終わりに待つものとは。
そして錆丸と金星の、世紀の大恋愛の行方は。

※シリーズ未読の方はネタばれ注意です!


完結、してしまいました。
読み切った!この濃密な物語を無謀にも一気読みしてしまって(だって途中でどうしてもやめられなかったんですもの)、しばらく放心状態でした。
色々な感情がせめぎあって、読了から二週間くらい経ってもまだ消化しきれてないのですが。

カラー口絵の錆丸と金星、花のような笑顔で見つめ合う姿が最高に幸せそうで、ラストまで読み返してから改めて眺めていると、もう、本当にね……。

最後の金星特急に乗り込むまで。
自分の死を受け入れ行動する花婿候補たちの覚悟、それに関わる戦闘場面でそれぞれの想いを胸に命を懸ける人々の覚悟が尋常ではなく、死闘を繰り広げる中でも精神は凛としていて、読んでいて泣きたくなりました。
錆丸と三月、夏草と伊織お兄ちゃん、砂鉄と無名と黒曜が、印象に残りました。アルベルト以下言語学チームの戦いも。
そんな中でテレビに出てきたユースタスの母、混乱する彼女に砂鉄が差し出した品に、彼のユースタスへの想いの深さを感じてときめいてしかたがなかったです。
ユースタスの「ありがとう、私は、嬉しい」という二度目のお礼の言葉が、ユースタスらしくて私はとても好きです。
一方蜥蜴カメラでこのシーンを見せられ、とうとう砂鉄とユースタスの関係に気づいてしまった彗星。
確かに品が品ですし、えぐいなあ……。
挿絵のユースタスの横顔が、本当に恋する乙女のものでしたので。

ユースタス、再びのリオンの影にどうなるかと思いましたが、ひとりでさらりと決着をつけられた姿に、ほっとしてとても嬉しかった。
彼女の心を強くした砂鉄の存在に、改めてこみあげてくるものがありました。
ふらりと現れた雷鳥様も格好良かったです。

特急に乗り込む直前。
暁玲さんの身体をはっての訴え、彼女の決死の覚悟にただただ圧倒。
絶妙のタイミングでユースタスの前に現れた砂鉄にもときめきましたし。殿下の引導渡しもここまでくると殿下らしいとしかもう言葉が出ない。
何より錆丸をのせて全力疾走した三月の姿が鬼気迫るものがありました。
そのあとの夏草との会話も。
その後、三月が無事で、本当の本当に良かったですよ~!!
黒曜のことを聞いた無名の切なさほろ苦さにも泣きました。
バドルさんと射手座、イヴァンさんにも、涙が。

グラナダを経ってから、金星特急は急にこの世からふわりと浮き上がり、死と生の世界のはざまを走っているような雰囲気に。
皆の打ち明け話、とりわけようやくすべて明らかになった錆丸の生い立ち、金星との出会いと恋、別れのエピソードが胸にせまりました。明るく屈託のなかった彼がこんなに重たく辛い人生を歩んできていたとは。
そんな錆丸を抱きしめるユースタスの優しさも心に染み入る。
ユースタスと言えば、砂鉄のさりげない足の位置にひっそりときめきました。このふたりの関係性、最初から思い返すと本当に変わりましたね。しみじみ。
レジーさんの「青く澄み切った水の下で揺れる炎」ユースタスの秘密と恋心をうたう表現がさすがで美しいです。
その後の砂鉄とユースタスの急展開にはびっくりしましたけれどね!え、え、今、ここで??(動揺)
ふたりの幸せそうに微笑み合うイラストと交わす言葉の優しさに、胸がいっぱいになりました。
どんな場面でも食欲魔人でパンをもそもそ食べるユースタスが相変わらずで可愛い(笑)。

錆丸と金星の再会、金星の正体と運命、その恋の結末は、うーんごめんなさい、やっぱり言葉にはならないです。
英雄になりたかった男の子の願い。
神話の世界の作中劇をぼうっと眺めているような、物語をうけとめる私の心がいっぱいいっぱいでかえってそんな印象になったのかしら。

彗星と砂鉄の再会、ふたりを見つめるユースタス。
死を目前にして迷わずユースタスを選んだ砂鉄の姿を見せられてしまってはね……。
彗星の選択が辛い。彼女を救うために特急に乗ったはずの砂鉄の心を思うといっそう辛くてやりきれない。
もう彼女に関しては、兄への想いをおだやかな形で昇華させることはできないんじゃないかしらと、薄々感じてはいたのですけれど。
育ってきた環境の特殊さが、ここまで兄への想いを募らせてしまった一因なのかなあ、と。
マリアたちみたいに恋の悩みを相談したりアドバイスしあったりできる存在をもっと早く作れていれば、あるいは。とか思わずにはいられなかったです。
そしてそんな場面を見せられては、姿を消すのがユースタスだよなあ。そうだよね……・。
ようやくつかんだ幸せをこんなかたちで自ら手放したユースタスが辛い。この期に及んで誰も恨まず、心の中の愛だけを芯に生きていける彼女の姿が尊くて、せつない。

アルベルト殿下の最期も印象的でした。殿下は最後まで殿下でした。彼に関しては、これで本望だったのでしょう。
ユースタスの殿下への別れの騎士のあいさつが、ユースタスらしくて好きでした。

錆丸を迎えに行こうとするユースタス、そして砂鉄、彗星の花の場面に、涙腺が決壊しました。

ラスト、錆丸と桜、錆丸との両親の再会。それを見守る砂鉄とユースタス。
旅のはじまりの三人そろって再び、錆丸と金星の娘も加えて、の挿絵が、この物語の締めくくりにはやはりふさわしいもので、ほとほととこみあげてくるものがありました。

まとまりのない完結巻感想になってしまいましたが。
外伝で主要キャラのその後を読めて、自分の気持ちに落としどころをつけられたのが、良かったです。


ここ2、3日にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: その他少女小説レーベルの本

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『金星特急 6』嬉野 君 




アルベルトが聞き出した特急の目的地・グラナダにたどり着いた錆丸一行は、無事に砂鉄たちと合流を果たす。あとは金星特急の到着を待つばかり、根城にしたアルハンブラ宮殿で、錆丸たちはイェニチェリ達敵の追撃を避けつつ列車に乗る作戦を練る。
一方そのころ、兄の砂鉄に恋する彗星含む「許されない恋」をしている少女たちが、異界の金星の庭に集められていた。彼女たちは錆丸の蜥蜴ウェルの目を通して旅の一部始終を見せられており——。

※シリーズ未読の方はネタバレ注意です。


外の世界の凄惨さとうらはら、花と伝説に彩られた夢のように美しいアルハンブラ宮殿にて、皆がついに再会!!
変わらない絆と安心感、ちょっとずつ変わったあれこれが、読んでいてとても素敵だった6巻目でした。
金星の庭の女の子たちもストーリーにじわじわと関わりはじめた感じ。

錆丸の本来の年齢やすっかり青年のものになった挿絵の姿、どんどん強かになっていく精神に驚愕しつつも、もはやいちいち立ち止まっていられないほど物語が面白いのです。ノンストップで読破です~!

旅の最果ての地、という風情、グラナダのアルハンブラ宮殿の描写がとても素敵で憧れました。
花や果物や建物の仕掛けや、ひとつひとつが優美でうっとりため息もので、神話や伝説の世界に迷い込んだかのよう。
本物の王族のアルベルト兄妹や貴公子ユースタスがしっくり馴染んでいるのはもちろん、月氏の傭兵メンバーや錆丸たちも意外と雰囲気に溶け込んでいる感じなのが面白くもありました。だから要塞か。
この金星特急というお話がそもそもこの世とあの世の境に横たわっているような、神話世界のモチーフもありなお話で、重なり合うイメージがとても好きです。

さてヴィットリア王女がまさかこんな風にお話に関わってくるとはね。さすが殿下の妹(二度目)。
「殿下はでんか一人で十分」という錆丸の台詞に笑いました。
ヴィットリアが三月と夏草とひと悶着起こしたあとの錆丸の場の収集術がもう完璧で。あの三月をしょうがないおにーちゃん扱いしている錆丸すごい。
薔薇のお庭でのダンス、このときはあまり気に留めていなかったのですが、後々の展開を読んで、なんだか王女様も健気で切ないよう。
ふたりの仲良さげなダンスにショックを受ける金星と、寄り添ってなぐさめる女の子達も切なかった。

そして相変わらず自分の目の魔力に振り回され砂鉄とぎくしゃくしたままのユースタスの姿が辛い。
そんなユースタスの態度に真っ先に気づき砂鉄をたきつけにいった錆丸は、流石でした。アルベルト殿下本当に女子高生よりも恋話に目ざとい……。
ユースタスと錆丸のコンビは、錆丸が成長した今でもやっぱり、仲良し姉弟みたいで和みます~。
実戦訓練の後のご褒美のプリンは相変わらずで和みました。

砂鉄はね、無名との会話で「惚れている」とはっきり口に出した姿に、ときめきがとまらなかったです。
まさかあの砂鉄がこんなことを言い出すとは、一巻目の時点からは想像つかない……。
ユースタスが自分の顔を見ないのだけがよくない、それ以外はどうでもいい、とさらっと流してしまうおおざっぱさというかなんというか、砂鉄らしい愛情だなと思いました。
そのあとのユースタスと砂鉄のふたりの場面は、それはもう甘くて優しくて、ユースタスが抱えている苦しみもようやく少しは溶かされたようで、ユースタス、本当に良かったです。
幽霊騒ぎのオチはちょっと笑っちゃいました。ふたりの関係を誤解したままの夏草が気の毒だけど夏草らしくて可愛い……。

夏草と言えば、彼の活字中毒ネタがこんな伏線になっていたとは!読んでいてしびれました。
バベルの一族、世界語と純国普の犯した罪。この場の三人の語らいと覚悟がじんと胸に響きました。

雷鳥様と黒曜のふたり酒盛り。
ラストまで読み切ったあとに読み返すと、色々こみ上げてきます。雷鳥様の気持ちもなんか分かったような。

伊織お兄ちゃんと暁玲さんたち一行との再会も、嬉しかったです。
金星のことを分かっている味方って心強い。伊織さん、優男風情なのに月氏の面々にかこまれてもまるで色あせないのがすごい。
暁玲さんとユースタスの女子トークの場面もお気に入りでした。
射手座もお気に入りな女の子になってきました。夏草のネーミングセンスがさすがというかなんというか。

静かに残り少ない人生を受け入れ行動する花婿候補たち、戦火に巻き込まれんとする人々、そんな中で月氏達を出し抜いて派手な行動に出た錆丸に、これまたびっくり仰天。でも錆丸らしい選択だ。
めちゃくちゃ無謀なんでしょうけれど、メンバーの中で一人ひとり、誰がどこまで味方で敵なのか、冷静に見定めて情報の開示や行動を決めていく錆丸の成長っぷりとか、確かに協力してくれるバドルさんたちとか、大丈夫かしら、大丈夫かな、きっと大丈夫!とはらはらどきどきをおさめられないまま、次巻を読むんだ私!(そろそろ何を言っているのか分からなくなってきました。)

砂鉄とユースタスの幸せそうな姿にときめく一方で、ふたりの関係が進むほどに、砂鉄への想いに苦しみぬく彗星が、辛いね。
無名のプロポーズ作戦のエピソードはなかなか素敵でしたけれど。

番外編、まずはアルベルトの少年時代の初恋話。
口達者は相変わらずなものの、殿下にこんな純情な少年時代があったとは!(失礼)
そして確かに世間知らずさをプラスすると、ヴィットリアにそっくり。
博士の初登場シーンにはけっこう度肝を抜かれました。文化の違いだなあ。ほうっ。
はじめぎこちなかったエミリーとの距離を縮めていき共に研究にいそしむ姿がきらきらしていて、お祭りで若者たちの愛の言葉を収集する場面がとても好きでした。自分たち自身でストレートに愛を語らうより、このふたりの恋には、ふさわしい気がして。
初恋の終わりがまたやるせないです。エミリーの気持ちも分かるし、殿下の気持ちも切ない。

そしてユースタスが銀魚の力を得ることになったきっかけのお話。
アイルランドと妖精というと、なんとなく『伯爵と妖精』シリーズとか思い出してしまいます。
ユースタスのお家は、お兄さんまで、本当にろくでもないな……。
乳母のノラが本当にいいひとで、ユースタスへの混じり気ない素朴な優しさに、読んでいて泣けてきます。
ノラの用意した少女のドレスにおずおず袖を通すユースタスの場面がおもはゆくとても幸せでした。
ユースタスの食欲は、金星の力とは直接関係なかったんだな……とかどうでもいい(?)発見を。
じゃがいもパンケーキに羊のシチュー、大量のピクニックのごはんがとてもおいしそうでした。ココアは、ここで登場していたのか。


一昨日昨日と記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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『金星特急 5』嬉野 君 



※シリーズ未読の方はネタバレ注意です~。


夏草と三月を雇い金星特急を追う錆丸。しかしイスタンブールで戦闘集団イェニチェリに捕まり、純国語普及委員会に監禁されてしまう。
正しい世界語の普及を推進する団体である純国普が、錆丸を捕らえてまでなぜ金星の情報について知りたがるのか。疑問を覚えつつも脱走をはかる錆丸。
一方、特急内で毒に倒れた砂鉄は、なんとか一命を取り留める。しかしその直後、突然列車が花婿候補たちを放り出して走り去ってしまう——。


物語の核心部分もだいぶ見えてきて、錆丸の成長がますますまぶしくて、砂鉄とユースタスのふたりの微妙な関係も、すべてに目が離せない!いやあ、面白いです。
相変わらず何か一つ謎が明らかになればまた新たな謎を呼ぶ、物語を読む楽しさを存分に味わえます。

夏草と三月から引き離されて純国普に捕らえられた錆丸ですが、夏草からの教えを胸に、つねに自分で立ち位置を考え冷静に脱出を図る姿が、物理的にとても痛そうでしたが、目覚ましい彼の成長が頼もしくうれしくなりました。
彼が語る金星との出会い、恋に落ちたエピソードが、見つめ合うふたりの挿絵込みで花のように愛らしく美しくて胸がきゅうっとしました。
遊郭育ちで身に着けたスキルと不老不死スキルを最大限駆使して大芝居も打つ錆丸、そして錆丸を結局は見捨てることなく救出に来てくれた三月と夏草との再会!良かったです!(三月の別れ際の台詞にそんなあ。という感じだったので……。)
そして三人の砂の旅は続く。
色々物騒なじゃれあい(?)を経ての、「三兄弟」宣言は、とても良かったです。
三月の機嫌が直ったのを夏草が感じ胸をなでおろすチョコレートの場面が好き。
こんなに危ない人たちのやりとりなのに、和むのは不思議ですが。
錆丸の女装は板に入っていて楽しいな!

雷鳥様と無名組のお仕事。他のどの月氏にも真似できない無名の高学歴コネが格好良かったです。豪放磊落なボスと振り回される苦労性の部下コンビも読んでて面白い……。
博士とハハリ・ジュニアとアルベルトと「バベルの一族」、世界語の謎。パズルのピースがひとつひとつはまってきて、これだけでも読んでいて胸が熱くなります。アルベルトの切羽詰まった願いが響きます。

そして何より、ユースタスと砂鉄でした!!ようやくいい雰囲気だとはっきり言えるようになってきた!
氷砂糖の袋を手に閉じ込めて、うつむいて微笑んでお礼を言うユースタスが可愛らしくてもうどうしましょう、という感じです(笑)。
ていねいだけれど女言葉ではないユースタス独特の口調で、砂鉄に接するのが、澄み切った中にほんのりした色香が漂ってきて、美味しいです。
「うつむいて」というのがユースタスらしいんですよね。ふふふ。それでいて相手への好意が伝わってくるのがもうね。
ナッツ入りチョコレートとの交換(没収)のやりとりも美味しかったです。
砂鉄は、自覚したとたん狭量で独占欲の強さを見せるようになってきて、非常にときめきますね。アルベルトの嫌がらせもよいスパイスというか。
それでいて、「せめて、おびえられずに過ごせることを願おう」なんて殊勝さもあり、ユースタスの心もちゃんと思いやっているところがまた良い感じです。
髪に触れる場面も好き。ユースタスの女の子らしくほんのり照れている表情が可愛らしすぎます。

そんな中で、リオンの呪縛にまた囚われてしまったユースタスが、悲しすぎました。何なんでしょう一体。
アルベルト殿下の観察眼が頼もしいです。
教会でのユースタスの過去語りと砂鉄の今までにない優しさの場面もとても良かったのですが、砂鉄の優しさを信じられなくなってしまったユースタスがやはり悲しくてもどかしくてなりませんでした。
ユースタスの過去をようやくはっきりと辿れましたが、本当になんでこんなに、と憤りたくなってくる、大人の事情に翻弄され続けた幸薄い人生。
実母と実父の愛情の薄さもひどいけれど、継母の最後の言葉が本当に痛い。
こんな生い立ちで、こんなに美しく澄み切った心根を保ち成長したユースタスが、改めて愛おしくてならないです。
幸せになってほしい。

あとヴィットリア王女がまさかこんなかたちでストーリーに関わってくるとは思いませんでした。
ああ、殿下の妹だな~と(苦笑)。
ユースタスを窮地に追いやった原因のひとりでもある王女様でしたが、ユースタス大好きな私でも不思議と憎めない女の子でした。

殿下といえば最初に戻りますが、あの状況下でひたすら銀魚のスケッチにいそしむ学者魂、恐れ入ります……。
そして確かに、看病でくたびれてるところに砂鉄のあの攻撃では、傲岸不遜なアルベルト殿下でなくても腹が立ちそうです。
殿下ますますいい味出してきてます。いいひとと単純に言ってしまうにはためらいがありすぎますが、少なくとも確かにユースタスのことは純粋に気にいってらっしゃるのね。

今回の番外編は夏草、そして鎖様かな。
砂鉄が夏草をスカウトしてきて名付け親でもあったとは、意外でした。
鎖様の夏草への愛情(といっていいよね)に、ほろりとしました。チョコレートソースのアイスクリームおいしそうです。


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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『金星特急 4』嬉野 君 




※シリーズ未読の方はネタバレ注意です~。


心臓を貫かれながらも一命をとりとめた錆丸。しかし今度はマスコミにさらわれてしまう。
捜索にやってきた黒曜によって自由を取り戻すものの、金星特急に乗るのは間に合わない。静かに樹になるときをまつ錆丸だが——。
一方錆丸を残したまま発車した金星特急の中で、砂鉄はアルベルトの護衛に雇われ、ユースタスと共に旅を続けることに。


ピンチが去ってまた新たなピンチが続きます。
相変わらず息もつかせぬジェットコースター展開。ますます謎に彩られたストーリーは面白さを増してゆきます。
なんといってもこの巻の時点ですでに無自覚に惹かれあっている砂鉄とユースタスの関係が美味しすぎる。

錆丸が金星特急に乗り遅れてしまい、さてどうなる……と思いきや、夏草と三月の白鎖コンビを雇って、金星特急を追っかけることに。意外な展開。
物静かな活字中毒の夏草に、女好き狂犬三月、全然違うけど超優秀な相棒コンビとの旅は、殺伐としつつも、やっぱりどこか楽しそう。この雰囲気嫌いじゃないです。イスタンブールの街、お祭りの描写もいい!
夏草のけして甘くはないけれどていねいな「先生」としての接し方が、良かったです。自分で考えるって大事だ。
どんどん心も身体も成長していく錆丸の姿がまぶしいです。はったりもきいている。
三月のスパルタ特訓も……うん、錆丸のためなんですよね。

一方で錆丸を失い、金星特急組三人は案の定ぎくしゃく……。
ユースタスを金星特急に乗りこませた雷鳥様の手腕がお見事すぎました。
そして砂鉄への痛烈なひとこともお気に入りでした。ははは。その通りです。
列車が発車し、意気消沈していたユースタスへの仕打ち。いつかこういうこともあるかもな……と思ってはいた展開が、辛かったです。誰も信じられない、いちばん信じたいはずの砂鉄も信じきれない、すわった目のユースタスが悲しかった。
そんなユースタスに、砂鉄が残した氷砂糖が、ね。ぐっときました。
そして犯人を知るや速攻、物騒な土産物を持ち帰ってきた砂鉄にびっくり仰天。このひと本当に無自覚なんだろうか。

とりあえずユースタスの危機が去ったと思えば、今度は砂鉄が毒に倒れる事態に。また絶体絶命のピンチ。
まずアルベルト殿下が、相変わらずえげつないんだけれど、信念のもとためらわずに命をかけて危うい行動に踏み切る姿に、だんだん心つかまされてきました。
なんといっても月長石を追い詰めて心を折ってゆく手腕がお見事すぎる。「この下民が」なんて、世界一殿下に似合う決め台詞だなー。ぞくぞくしてしまいました。伝統ある王族の血塗られた積み重ね怖い……。
そして残されたユースタスと砂鉄、お互いのために信じられないほど身体をはって救い合うふたりの姿がもう!たまらなかったです。ユースタスの涙顔が完全に恋する女の子で。
ついにおもてに出てきたユースタスの不思議な力、銀の魚の場面は、挿絵込みで神々しく美しくて、女神様もかくやという感じがしました。

それにしても、金星特急に鉄道オタクが乗り込んでるなんて、びっくりしました。
レジーさんもイヴァンさんの仲間たちも、これはこれで上手くいっているんだろうな。

黒曜の謎の暗躍があり、夏草と三月、錆丸にまたピンチが。
揺るぎない強さにぞくりとしました。

あとこの巻で嬉しかったのが、上海の暁玲さん再登場。
「金星をひっぱたいてやりたいのです」なんて花の微笑みがあいかわらず素敵で、惚れ惚れします。
錆丸のお兄ちゃん伊織さんも、色々な意味で只者ではない。
ミヤザキさんは、どの場面でも奥さんとよりを戻したい一心で行動しているのが、憎めない。

番外編『チョコレート』は、月氏三人の過去エピソード。
三月の過去の凄惨さよ……最後の最後で情けをちらりと見せた彼が救いでした。
無名さんは、とてもまっとうな育ち方をしたひとなんだな。と感じました。父親、そして砂鉄兄妹への気持ちはそれは複雑なものでしょうけれど。
砂鉄と彗星と母親との生活も読めて良かったです。幼い彗星と彼女を可愛がり守り抜く砂鉄の姿が良い。
砂鉄の父親も生前のエピソードをちらりとでも読みたかったな。
チョコレートは美味しいですね。

金星に集められている女の子たち。マリアの屈託のない親しみやすさが好きだな。



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『金星特急 3』嬉野 君 




錆丸たちの車両に、言語学者にしてロヴェレート国の王子・アルベルトが新たに加わった。
次の金星特急の停車地は、草原のど真ん中、砂鉄の属する傭兵集団・月氏の幕営地。
傭兵の入れ替わりの祭り「羊追い祭」の開催期に居合わせた花婿候補たちは、強制的に祭りに参加させられることに。
腕に覚えのある傭兵に挑戦し勝利しなければ、金星特急の出発には間に合わない。錆丸は窮地に陥る——。


「サファイアの騎士」ユースタスの制服姿がきりりと凛々しく格好いい3巻目。
アルベルト殿下初登場、月氏の皆さまも一気に初登場、そして謎の場所に世界各地から集められた女の子達も初登場。
少女小説らしく(?)女の子キャラも一気に増えて、華やぎました。男性キャラも色々豪華でますます華やぎました。
展開がシビアなのは変わりないのですが。
さすがこの砂鉄の属する傭兵集団。情け容赦がない。
とっつきやすそうな人たちもいるけれど、ぞくりとするところは本当に怖い。

尋常でない学者魂で好奇心旺盛で口達者でひねくれ者のアルベルト殿下。また強烈なひとが登場したな……。
あの試験合格のために取った手段があまりにあっさり気負いがなくて、ひええーと肝が冷えました。
何事もなかったかのように月氏の人々の間をひょいひょいフィールドワークしていく彼、この巻の時点では正直、ざわざわ感を完全にはぬぐえなかった気がします。

アルベルトの登場で、ユースタスが金星特急に乗ることになった事情もうっすら見えてきました。
またなんて理不尽な乗車理由……。誰を恨むでもなく心から王女殿下の心配をするユースタスの心が、どこまでも優しくて美しくて泣きそうです。
ちらりと語られるユースタスの過去エピソードは、やはりどれも寂しい影があり、心が痛みました。
錆丸とユースタスの距離はすっかり縮んできて、姉と弟、ある場面では兄と妹のようなふたりのじゃれ合いは、読んでいて微笑ましかったです。
あ、もう書いちゃいましたが、ユースタスの性別の秘密もはっきりと明かされましたね。
雷鳥様格好いいな!あの砂鉄のなんとかかんとかの話をユースタスにいきなりふる雷鳥様、最高です(笑)。

そして砂鉄が金星特急に乗った理由も明らかに。そういうことか!
なんかこんな凶悪な顔して(笑)、妹思いのいいお兄ちゃんだったんだなあ、とイメージがだいぶがらっと変わりました。
黒曜との確執も、彗星への愛あってこそでしょうし。
このシリーズの登場人物の中では比較的、まともな家族愛に恵まれ育てられてきたひとだったんだなあ。
とはいえ彗星自身の恋の向かう先がね。これは辛い。目を覆いたくなります。

三月、夏草、無名、鎖様、射手座、月氏のメインキャラの皆さまと初顔合わせ。
月氏の名前制度が、確かに人の名前には奇妙なものかもしれないけれど、微妙なちぐはぐさ、無機質な響きがこの月氏集団らしくてみんな印象に残ります。天のものと地のものかあ。人の名前が私のつぼにぴったりはまる物語は得難いです。
三月がこの時点ではだいぶ普通の、ただの女好き軟派男に見えます……。夏草作の、遊牧民風の料理がおいしそう。
無名さんは、優秀で苦労性で報われないいいひと、という印象でした。
いちばん得体が知れなかったのは鎖様でした。可愛らしく情にあつく素敵な女性だったのですが。
あと雷鳥様に惚れてしまいました(笑)。女ったらしっぷりがすごいです。

錆丸の特異体質が判明する場面にもひやりと胸が冷えましたが、それ以上に、「砂鉄に謝れ!」と黒曜に叫び泣いた錆丸の姿が強烈で、心の底から相手にそう伝えたかった錆丸がもうとてもとても愛おしくて。
なんか、月氏の集団も悪いところじゃないなあ……と思いはじめたところで、また大ピンチ!!

同時に、まだ男性恐怖症を拭い去れないのに、なんとか砂鉄を慰めたくてチョコレートを渡そうとするユースタスがそれはもう健気で可愛らしくて……。この時点では雷鳥様のみ見抜いていたのかな。砂鉄とユースタスが微妙に惹かれあいはじめているのを。
この時点では、あそこのタイミングで殿下が入ってきて、ふたりにとってよかったな。
ユースタスの天然で世間知らずなところをさんざんからかわれている姿は、かわいそうだったけれど貴重な和み場面でした。
いや、和みと言えば、プリン!確かに、そこでプリンが出てきたら、砂鉄が怒りだすのも分からなくはない。

番外編はアルベルト視点の『白鳥はかなしからずや』。
実は私、若山牧水のこの歌、中学か高校の教科書で読んで以来心ひそかにお気に入りなものだったので、タイトルで目にした瞬間心ふるえてしまいました。
いろんな民族色あふれるこの物語で、ふと使われる日本語の古風な響きが素敵すぎて、ちょっとこれだけで惚れ込んでしまいます。
海の青にも、空の青にも~のくだりが、ユースタスの瞳の色にぴたりとはまって、どちら側にも染まりきれない、どこまでいっても孤独な貴公子ユースタスの立ち位置が、改めて哀れで切なくて、涙が。
この歌に、こんな素敵なお嬢様のイメージを私に与えてくれて、とても嬉しいです。
薄幸、心優しく健気、凛々しい系の美女という、最高に私好みのヒロイン像です。(孤独の果てに最終的には幸せを得られたという余韻がまたいい!
そしてあの挿絵の、錆丸にあやされてるユースタスとからかう砂鉄のふとした視線の交錯の場面が、少女小説的にとても美味しくてどきどきしました。


昨日記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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