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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『ひみつの小説家の偽装結婚 恋の始まりは遺言状!?』仲村 つばき 




覆面小説家のセシリアは、自らを見捨てた没落貴族の親から逃れるため、後見人の騎士ヒースとかたちばかりの結婚をしていた。
だがそのヒースが亡くなり、小説の売れ行きも芳しくなく、切羽詰まった状況に立たされたセシリアは、ヒースの遺言状によって、彼の部下クラウスと「二度目の」かたちばかりの結婚をする流れに。
最初は喧嘩腰だったクラウスだが、実はセシリアを上回る読書家で、セシリアが男性名義で書いている小説のファンであることが分かり——。


仲村つばきさんがコバルト文庫の方から出された新作。
すみれ色とクリーム色がかった柔らかなタッチのきれいな表紙とあらすじに心ひかれて手に取ってみました。

実際に読んでみると、これぞコバルト文庫と言いたくなるような、しみじみと品のある、とても良い少女小説でした。
派手さはなく落ち着いたタッチでつづられる王道パターンの物語なのですが、ひとひねりがちゃんときいていて、読み終えるとあたたかくやさしいもので心満たされる。
ああ、何だか私、このお話を読むことができて、とても幸せだなあ。
それほどボリュームがある物語ではないということもあり、一昨日くらいに読み終え実はすでに二回読み返してしまいました。
ロマンス、家族愛、友情、そして本や読書への愛情。すべてが読んでいて胸を打ちました。

ヒロインのセシリアは、金策に失敗し夜逃げした両親に置いていかれ、どん底の暮らしをしていたところを、親子ほどにも年が違う騎士団長ヒースに拾われ、「結婚」という形で保護された貴族の女の子。
仮面夫婦ながらもおだやかな生活を送っていたところに、その夫と死別し……というところから物語がはじまります。

若い身空でギリギリのところで苦労してきたセシリア、それでも小説を書きたいという強い意志は捨てることなく持ち続け、あきらめずに努力をし続け女流作家の小説は売れぬと言われてもあきらめず男性名義で書き綴り、彼女のこの不屈の精神が、なんといっても格好いい。
少し我が強くて、ひたむきで凛として、自らを客観的に様々な角度で見据え、目的に対しまっすぐに進んでゆく。
彼女の精神は、クラウスが評する通りに、確かに彼女が書く「セオ」の小説に出てくる登場人物像に自然と重なります。
けして完璧という訳ではなく荒削りで、でもなんだかとても心惹きつけられる。
彼女の不器用に背を伸ばして頑張っている姿に、そっと手を差し伸べたくなる。

最悪の出会いをしたセシリアとクラウスが、最初はお互い利害が一致するということでかりそめの婚姻関係を結び。
そしてお互い本が好き、しかもクラウスは「セオ」の小説の大ファン、というところから徐々に距離を縮めていき……そんな一連の流れが、ごく自然なタッチで描かれていて、自らの小説を迷いなく絶賛されて身もだえるセシリアに微笑ましくなりつつ(笑)、王道ながらにとても良かったです。
ふたりとも本当に本が好きなんだな~というのが端々から伝わってくるのが、読書好きの私としてはまた嬉しくにまにまするポイントでした。
現実的な読み方をするセシリアに、比較的ロマンチストなクラウス。


クラウスにとって読書とは、箱庭だった。
本の頁をめくることは、美しく手入れされた庭を逍遥する行為に似ていた。
景色を楽しませてくれるが、どこへもつながることはない。
そのうち孤独をすっぽりとおおいくるんで、クラウスの意識を濃くて温かい霧のなかに閉じ込めてくれる。それで良かったのだ。
だが、マクウェル家の書斎に通うようになってから、クラウスは霧の中で彼女を捜すようになった。
クラウスの視線の先には、質素なドレスに身を包み、本のページをめくるセシリアがいた。
いつしかそれが心地よいと思うようになっていった。   (180-181頁)


クラウスというヒーローがまた、過去の戦争で親友を喪い心に傷を負って、他人を全く寄せ付けなくなってしまっていた孤高のひとで。彼が読書、とりわけ「セオ」の本の世界にのめり込むようになった気持ちが、これも私にはなんだかとてもわかる。
そんな彼が、実際にセシリアに接するうちに、徐々に心を許してゆくさまも、淡々とした態度ながらに彼の気持ちが透けて見えるようで、また良かったです。
不器用だけれど優しい人で、相手のプライドを傷つけずに如才なく仮面夫婦を演じそっと寄り添いあう、そこはセシリアに似ている。お似合いです。
パンを買ってベンチで読書し仲睦まじく寄り添っているふたりの場面が大好きです。(パンもおいしそう)

一度は距離感を間違えまた大きくすれ違ったふたりですが、突然の別離、クラウスのけがと帰還、色々あって、結局はすべてがまるくおさまって、一連の流れがまたとても良かったです。
セシリアがクラウスの父に切々と訴えた彼への想い(理詰めで自らを客観視していてこんな場面なのにとてもセシリアらしい)を、実はクラウスは狸寝入りして全部聞いていた……という下りが、もう本当に泣き笑いですよ!!「ばか!」としか言えない(笑)。

で、こんな仮面夫婦だったので、甘い場面というのはほぼ皆無だったのですが、ラスト直前のふたりのやりとりのときめき感といったらもう、もう、言葉にならない!!
今までが抑えられていた分余計に、といいますか。ひかえめにいって最高でした。
クラウスの「それだけ本を読んでいて、口だって回るのだから、俺の言葉の意味を察するべきだ」というのが、セシリア向けの最高の殺し台詞でした。
あとセシリアの返答を聞いた後のため息。堅物で言葉少なな青年だからこその色気……。
ほんのり甘えるセシリアもいかにも若奥さんらしく可愛くてもだえます。それに照れてるクラウスも可愛い!

クラウスに出会い恋を知りすべてを糧にしたからこそ書けた新作、そしてセオの正体をようやく明かすラストも、完璧でした。最高でした。
このふたりへの、ヒースのちゃめっけたっぷりの愛情がお話全編にいっぱいに満ちていて、それを改めて再認識させられました。
図書館への夢が、クラウスとセシリアが語り合うことでどんどん具体性を増してゆき現実的になっていく場面も、ふたりこれからよきパートナーになれることをはっきり見渡せたと言いますか、しみじみ良かった。ヒースが結んだ縁が尊い。

クラウスの家族もなんだか読みこんでいくごとに好きでしたよ。
デューイお兄さんも軽いノリながらクラウスのことをちゃんと理解しセシリアへのフォローもナイスでしたし、おとうさんも上のお兄さんも、なんだかんだ弟君をちゃんと大切にしているし。
セシリアの両親も、親としては完全失格だけれど人として極悪人ではないし、まあ、今が幸せならばもうそれでいい。というスタンスで。

あとセシリアと男性名義の小説家仲間のフレデリカのふたりの、お互いを高め合う友情関係も、またとても良かったです。
ふたりのお茶会のお菓子がはなやかで最高に美味しそうです。
セシリアが迷い悩んでいるときフレデリカが差し伸べるアドバイスが、美味しいお菓子と共にいつも的確でうなってしまいました。
カートも最後の最後できりっと格好良かったな。
マルコ氏もあれでなかなか頼もしかったし。
誰より何より頼もしくてユーモアと包容力があって素晴らしかったのは、もちろんヒース氏でしたけれどね!!文句なく!!

セオの小説のタイトル通りに、灼熱の苦労の時代から、しんしんと孤独な冬、雪解け、そして明るく優しい春の世界へ。
そんな転調を感じるお話の流れでした。


なんだかお話の魅力をこんなにたくさん語ってきたのにまだ語り尽くせない!!というもどかしさ。
少女小説好きさんにはとてもおすすめです。ぜひぜひ、読んでみてくださいませ。

最後に、読んでいて私がなんといってもうらやましかったのが、読書好き夫婦が共有できる、夫婦で一度に十五冊くらい買っても収納場所に悩まなくても済むくらいの、お屋敷の立派な書斎(笑)。


カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 仲村つばき 

『犬恋花伝 青銀の花犬は誓約を恋う』瑚池 ことり 




人と犬の姿を持つ不思議な存在、花犬。その花犬を生涯の相棒として狩りをする花操師。
リンセイ族の花操師見習い・コトナは、かつて自ら育て共に生きてきた花犬ハルシとの辛い別れが原因で、現在の相棒セキとの関係がぎくしゃくしていた。
近く行われる花操師への昇格試験合格も危ぶまれる中、凶悪な花犬が出没し、花犬や花操師に大きな犠牲が出ているという話が広がりはじめ——。


コバルト文庫の新人さんのお話。
タイトルもあらすじもあきさんの表紙イラストも素敵ですし、ネット上で親しくさせてもらっている皆さまにも何度か直接おススメいただいていて、これはいつか絶対読まなければ!と、タイミングをはかって寝かせておいていました(笑)。
美しい少女小説の世界に急に浸りたくなり、手に取って読了。

淡く優しい色使いの、美しいあきさんの表紙イラストの雰囲気そのままの、とっても素敵なものがたりでした。
なんでもっと早く読まなかったんだろう!いや、読むことができて良かった。
皆さまに教えていただいた通り、素晴らしく私好みの一冊でした(笑)。

文章はとても自然ですうっと染み心に溶け入るような読み心地、どこか児童文学に近い感じの、実直な作りの異世界ファンタジー。
こういう格調高い少女小説は、確かにコバルト文庫ならではの作品だなと思いました。
コバルト文庫で今でもこういうお話が読めるというのは、なんだかとても安心できることだなあと。

私が何より惹かれたのは、この完成された世界観。
花を食べて人と絆を結び狩りをする花犬、花犬のために花を育て知恵を編み出し共に暮らす歴史を長く重ねてきた人々の暮らしのありよう。
作者さんオリジナルの各種用語で詳細にていねいに語られる世界観が、読んでいて本当に素敵でうっとりしました。
とにかく各種専門用語も花犬が食べるものも人が丹精かけて育て手間をかけるのも、すべてが何種類ものたくさんの花。花。
そのボリュームに読んでいて圧倒されました。
むせ返るような花の香りにずっと浸っていたくなる。

コトナとセキとハルシ、この三人のそれぞれの関係がとても素敵だなあと思いました。
コトナとセキがお互いすれ違い傷つけあっている姿は読んでいて本当に痛々しく辛くなりましたが、最終的には分かり合えて、セキがコトナに素直に好意を示し協力できるようになって、本当に良かったー!!
セキのひねくれ具合がなかなかのものでしたが、彼がこれまでたどってきた経緯を思えば無理はない……。
ハルシのことを忘れられない、ハルシがもういないことがどうしても実感できない、というコトナの喪失感も、これまたよく分かるもので。でもそれゆえにセキと上手く関係を築けないのが、辛かった。
コトナに気づかれないところでひっそり靴を噛むセキが不憫で泣けてきました。

コトナはコミュニケーションも行動も訥々と不器用で、不器用にまっすぐ進むことしかできなくて。
キサラ族の下に直接飛び込んでいったときなぞ「大丈夫なんだろうか……」とひやひやものでしたが、そんな彼女だからこそ、手を差し伸べる人がいて、傷ついても最後にはセキの元にたどり着き心を開かせられたのだろうな。
そんな彼女のふところはとてもあたかくて花の良い香りがして。セキとハルシがコトナをいっぱいに慕っている風なのがとてもすき!
そしてコトナとセキが悟ったかつてのハルシの勇敢さに改めて胸がいっぱいになりました。

キサラ族の凶悪な花犬は、ヤシロさんの昔語りを聞きつつ、フロリスを夢中になって食べている姿は哀しく胸が締め付けられました。
ゆがみ、人の醜悪な一面も、美しい物語の中ながらに、容赦なく心抉られる。
セキがコトナの元にやってこられてよかったなあ、幸せだったなあと改めて思いました。

このお話、脇役キャラも魅力的でした。
コトナに嫌味ばかり言うシャリジと飄々とした花犬スールの主従コンビが、読みこむごとにどんどん好きになってゆきました。
主人をいいようにからかって面白がっているスールが面白いわ~。シャリジのねちねちしたコトナへの嫌味をその都度スールがまぜっかえすので読み心地が重たくなりすぎず、そういう意味でも相性ばっちりなふたり。
シャリジは多分、好きな子ほどいじめたくなる男の子、というあれですね。と私は勝手に解釈しています。
嫌味を言いつつもまめまめしく心を配りご飯を調達しピンチのときには後方支援にきてくれて、素直じゃないな~いいひとだな。
あと話に出てくるコトナのお兄さんリクも、周囲の風当たりの強さも多分軽くいなしているような、なんというか大物そうな雰囲気で、妹大好き!な感じが端々から伝わってきて、実際に登場していないけれど好きだな(笑)。
コトナの師・ヤダケ老も好きでした。
ヤダケ老と二花の昔話がまた切なくて切なくて。

あと私、コトナがセキやハルシのご飯の花を用意していたり薬草を集めていたりする場面の描写が好きでした。
コトナが生き生きしている感じもあり、わくわくします!
コトナは適性的にはどちらかというと花育人なんだろうなあと思いつつ、かつてハルシを救い花操師への道が選択されたのも、またとてもコトナらしい。
それにそんなコトナだからこそハルシは成長できたのだし、セキは一人前に戦えるまでによみがえることができたのですし。
今後コトナは、セキやシャリジたちのサポートを得て、彼女らしい一人前の花操師へと、研鑽を重ねていくのだろうなと思いました。

あきさんのイラストは相変わらず美しくてとても満足。物語の世界観にもぴたりとはまっています。
特にラストのコトナたちの笑顔のイラストが最高でした。
コトナが身に着けている民族衣装風の服装もとても可愛らしくてお気に入りです。

タイトルから色々想像もしましたが、ロマンス色は限りなくゼロで、こういう少女小説も良いものです。
(あえてロマンスというなら私はシャリジに頑張ってほしいな……。)

作者さんのお話、ぜひともまた読んでみたいです。お待ちしております。


この一週間くらいの間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 瑚池ことり 

『若奥様、ときどき魔法使い。』白川 紺子 




魔女が玉座に座り、貴族は魔法使いであるオムニア王国。
優秀な魔法使いであるバイオレット伯爵レンの妻ローズは、たまにしか魔法が使えないおちこぼれ魔法使い。
おちこぼれでも貴族のつとめを果たそうと、他人に笑われても魔法を使うことをあきらめないローズ。
そんな彼女のもとにある日女王の使者が。
なんとローズこそが次代の「春荒れの魔女」だというのだが——。


白川紺子さんのコバルト文庫の新作。
最初の方だけ雑誌で既読でした。

貴族はみんな魔法使い、四季を司る魔女、しゃべる動物にぬいぐるみのくま、世界観がファンタジックでとても可愛らしいです。
きれいなお花やドレス、美味しいお菓子にパンにお茶会、少女小説趣味の小物遣いもばっちりで読んでいてとても楽しい。
さすが安定の白川紺子さんです。文章がいつもの通りにきめ細やかで品があり子供っぽくはない。
甘々で優しい王道少女小説ながら、雰囲気を崩さない絶妙の加減でひねりをきかせてあるストーリーも楽しめました。
白川紺子さんの最近のコバルト文庫の中ではこれがいちばん好きかもしれないです。
椎名咲月さんの美しく可愛らしい挿絵も良く合っています。

なによりローズとレンの若夫婦の仲睦まじさに、読んでいて癒されました。甘い~。しあわせだなあ。
魔女としては落ちこぼれだけど心優しく自分の芯をきちんと持っているローズと、若くして優秀な魔法使いで無表情で淡々としているけどローズを溺愛していていざというときは大胆なレンのふたり、どちらも好感を持って読んでいけました。
無表情で基本何を考えているかわからない一方、うれしいと、物理的に花を咲かせるレンが、本当に可愛らしくって!
ローズの笑顔にレンが花を咲かせて、その花を無言でひろってローズの髪に挿す、というお話の中で何度も出てくる一連の場面が、なんかとても好きです。

『バイオレット夫人と冬枯れの魔女』
落ちこぼれ魔法使いの若奥様ローズが「春荒れの魔女」だと宣告され、四季の魔女たちをめぐるいざこざに巻き込まれるお話。
女王様ウィンキッドは夏の魔女か!そして冬のユールと秋のサムヘイン、それぞれのお婆さんたちがキャラが立っていて仲がいいのか悪いのかなやり取りが面白い。巻き込まれるローズとレンたちは気の毒ですが……。
マルコの変身もですが、ローズを連れ去られてぶち切れたレンにも度肝を抜かれました。普段怒らない人を怒らせると怖い怖い。
随所随所でラブラブなバイオレット夫妻、動物に姿を変えての冒険、ローズの親友リナの頼れる手助け……わくわくどきどき。
ローズが魔法を上手く使えなくなった過去のトラウマを乗り越えて、春を呼ぶことに成功した一連の流れがとても良かったです。描写がやわらかくてあたたかくて美しいのです。
マルコ、そして他のぬいぐるみたちがローズに捧げる親愛の情に、ちょっと涙がにじみました。
ヒエムスとドゥロウェールの姉妹の過去のすれ違い、ふたりそれぞれが眠る場所を思えば、ふたりわかりあえたかなあ。だといいな。
なんだかんだ仲良くバイオレット家でお茶会している魔女四人のラストに和みました。やっぱり最強なのはラブラブ若夫婦でしたが。

『薔薇とすみれの結婚行進曲』
ローズとレンが逢瀬を経て恋をはぐくみ、結婚するまでのエピソード。
読んでいて胸がきゅっとする幸せなお話でした。やっぱり恋が成就するまでの物語があると盛り上がり度が違う気がします。
少女から大人になる過程で戸惑うローズの心情がていねいに書かれていてとても良かった。
ふたりが夜会で昼間とは違う相手の姿に心惹かれる様も。夜会で美しい魔法を披露する、この世界観ならではの演出がすてき。
父親に反対されて閉じ込められる中、コニーとマルコの後押しがうれしい。ローズがんばった!
レンの率直なプロポーズにびっくりし、でも彼らしいなと思いました。一週間か!
花が咲き乱れる様にこちらも幸せいっぱい気分になれました。
「ローズは、レンの喜びだ」、という言葉に、ぐっときました。
ローズの幼いころから冷たい仕打ちを繰り返してきたローズの父親は正直かけらも同情できないのですが、結局あれからどうなったんだろう。まあ別にどうでもいいんですが。(←思い入れがまったくない)

『曇りのち雨、ときどき恋わずらい』
ローズの腐れ縁の友人・リナが主役の物語。
高飛車で素直じゃなくってローズを容赦なくこきおろすけれど、曲がったことが嫌いで友人のためなら断固戦うリナが本当にいいこで読んでいくごとに好きで、彼女の恋のエピソードも読めて良かったです!
ブラガディーノ伯爵のうさんくさい伊達男な感じがけっこう嫌いではなかった(笑)。やってることは迷惑極まりないですが。
まさか一話目で出てきた猫がそういう役どころだったとは!
ラストはサムヘインが格好良くしめてくれました。一話目では三人の中でいちばんアクが少なくておとなしかったサムヘインが魅力的なエピソードに彩られなんかぐっと好きになりました。
リナとティオのすれ違い障害ありの恋も、うまくまとまって本当に良かったです。
盗まれた恋心の色がとてもきれいだったなと思いました。
ティオはレンの副官にふさわしい、公正で穏やかな性格のいいひとだな……。

読んでいて無性に焼きたてパンやお菓子を食べたくなってくるお話でした。
バターとジャムがじゅわっと溶け合うトーストに(いちごジャムもりんごジャムもおいしそう)、焼きたてで口の中ですぐになくなってしまう胡桃パン、いわしの油漬けでじっくり焼くチーズトースト、オレンジのはちみつの風味がくせになるはちみつチーズタルト、ピクニックの卵サンド、すみれの花の砂糖漬け。
お茶会したいです。またはバスケットに美味しいものをいっぱいつめてピクニックに行きたい。

ローズとレンのふたり素直で愛情表現にひねたところが少しもないところとか、私の中では『下鴨アンティーク』のふたりにちょっと重なる部分があったかなと。あのふたりの年の差をちょっと縮めて色々な制約をなくした感じ?(くまのイメージもかな)
あのふたりは案外くっついたらこれくらいさらっとナチュラルにラブラブになるような気がします。(私の願望交じりの想像)

これは、今回のお話で一話完結かな?
そういえば来月にも白川紺子さんのコバルト文庫が出るようで。銀灯師のお話ですね。こちらも楽しみ♪


ここ何日かにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 白川紺子 

『流血女神伝 喪の女王』全8巻 須賀 しのぶ 




カリエとエドは、囚われていたザカールから、イーダルを頼ってユリ・スカナ王国へ脱出。
全てをなげうって救出した息子を手放し、夫のバルアンからは命を狙われ、そして胎内にはリウジールの子を宿し。
一方ルトヴィアでは皇帝ドミトリアスを取り巻く情勢は急速に厳しいものになってゆき——。


『流血女神伝』最終章、『喪の女王』全8巻、読了。
先週の『暗き神の鎖』の感想を書いた時点でもう最後まで読み終えていましたが、ここまで感想を書く時間がなくて。
特に最後の6、7巻、8巻目くらいは、ほとんどすべての場所が読み応えありすぎて、何度も読み返しては浸り、を繰り返していました。

完結巻まで読み終えて、なんて素敵な物語だったのだろう。
もう単純に言葉で言い表せない充足感と感動に、ぼうっと身をゆだねることしかできませんでした。
シリーズの主要キャラクターひとりひとりを、心から、愛して笑って泣きました。

私、このシリーズを読みはじめる前に、主人公のカリエの人生については、実はうっすらネタばれを読んじゃっていたのですけれど。
『帝国の娘』で揺るぎない栄華を誇っていたルトヴィア帝国が、こんな結末を迎えるなんて、思っていなくて。
大好きな人たちの戦いと覚悟と誇りに、涙があふれて仕方がなかったです。
神と人の関わりの壮大な物語、あるいは骨太な歴史物語、いずれにしてもたいへん読みごたえがあって素晴らしかったです。


心のままに感想を書きつけるために、以下はネタばれありで、追記にたたみますね。

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カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 須賀しのぶ 

『流血女神伝 暗き神の鎖』前・中・後編 須賀 しのぶ 




バルアンの正妃になったカリエ。
親友のナイヤが身ごもったのを知り複雑な心境になるカリエは、バルアンに誘われて、聖なる山オラエン・ヤムに共に登ることに。
やがてヨギナの総督になったカリエ自身にも、待望の子供が。
しかしそれは再びの過酷な試練のはじまりでもあり——。


『流血女神伝』、実は現時点で、『暗き神の鎖』、『喪の女王』、最後まで読み切っちゃいました。
私の先週一週間はまさに『流血女神伝』に捧げられました。
後悔はしていない。
だって面白すぎて途中でやめられなかったんですもの……。
一日に一気に四冊くらい読んでたりしたので、濃密な物語で頭の中がいまだ飽和状態です。

何らかの形で吐き出さねばこの熱い想いに区切りがつけられないので、まずは『暗き神の鎖』ザカール編から、まとまりのない感想を書き残してゆきたいと思います。
ネタばれ注意でお願いします~。


まずは上巻。カリエとバルアンは新婚さんで、悲惨な事件も特に起こらず、楽しく読めた巻でした。
というか、カリエとバルアンがけっこう普通に夫婦をやっていることに、驚きました(笑)。
いや、ヨギナ総督とか、色々な意味で普通ではないんですけれどね。
ふたりでオラエン・ヤムに山登りする場面がなんか好き。妃と小姓の間くらいの立ち位置じゃないかしら、カリエは。山登りに誘うこともそうですが、バルアンがカリエのことを他の妃とは全然別の次元で必要として大事にしているのは、確かなのでしょう。
カリエも待望の子供を授かり、幸せそうでよいものでした。
今度はカリエの親衛隊長になってしまったエドにびっくりし、しかしエドの立ち位置はカリエにとって本当に頼りになるなあ。
カリエと侍女たちの「私とマヤルの愛の軌跡、その全てを語る会」が激しく気になる。

この巻でむしろつらかったのは、ルトヴィアのドミトリアスとグラーシカ、そしてジェシーヌ。
ああ、まさかドミトリアスが、こんな状態になるとはな……(ため息)。
身一つで心追い詰めロゴナにやってきたサラが、愛を得た途端に豹変してしまったのが、『帝国の娘』から読んできた身には、辛すぎました。
何よりグラーシカの立場が辛い。グラーシカをばしばし傷つけるサラが辛い。見ていられない!タウラがいてくれて良かったです。




中編。
カリエの身にひたひたと迫る、ザカールの長老・リウジールの影が怖すぎる。
あのラクリゼですら歯が立たないとは。
お話の前半パートは、辛いこともあれどもヨギナ総督として立派にふるまうカリエの姿がよいものでした。
コルドさんとバルアンのカリエへの姿勢は、正直なんだかなあという気はしましたが……。
あと、ミュカとイーダルの王子様ふたりの、かみ合ってないけどなんだかんだ仲良さげな雰囲気が、笑えてお気に入りでした。
無自覚にカリエを熱く見つめるミュカの純情さが泣ける。
半分面白がってそうだけど、イーダルの友への忠告もなかなか好きでした。

そしてアフレイムがさらわれてしまい、またカリエは人生の転機、すべてを捨ててザカールに息子を取り返しにいくことに。
美しくて平和なヨギナの街は確かに、カリエを愛していましたので、辛い……。
ラクリゼとエドのふたりの揺るがない助力が非常に頼もしかったです。
カリエ達脱出後の、エドとサルベーンの仲悪そうなやりとりと扮装が、こんな状況下でも面白すぎました。
エドとソードの因縁の再会も、そうつなげるか!
まったく覚えていないエドが残酷だなあ……。ソードさんって常に不憫だな。

ヨギナの林檎パイが非常に美味しそうなのですが。



後編。
本格的にザカール編。
ザカール編自体は思っていたよりあっさり解決したなと思いましたが、でも読んでいて十二分に辛かった。
カリエに課された精神的責め苦が辛すぎたし、リウジールの育ちもラクリゼ以上に過酷なものだったようで、彼の性格のゆがみも本当、やりきれない。
ラクリゼとリウジールの両親の子供への執念じみた想いがひしひし伝わってきました。
最後の最後でラクリゼを救ったリウジールと、理知的なレイザンの姿に、少しは救われるものがありました。

そして、カリエ救出のため集い戦う人々の姿に、胸が熱くなりました。
(こんな状況下でもイーダル殿下ご指導のお芝居が面白すぎ……。淡々としたエドの覚悟がすごい)
というかとにかく、どんな異常な状況下でも、何の迷いもためらいもなくカリエを守り戦うのみなエドが、格好良すぎました。
カリエは頑張った。もう本当に頑張った。
神殿の崩壊でとっさに守ったひと、というのがね。色々見えてきますね。

しかしこの巻、読み終えて私がいちばんぐさりときたのは、ラスト、カリエとエドが逃亡したと告げられたときの、バルアンの絶望でした。
「赤き死の王」の伝説とヒカイの後悔に、読み終えて、なんだか涙があふれて止まらなかったです。
言っても詮無いことですが、そんなにカリエが大切だったのなら、彼女の手が離れてしまう前から、もっと、なにかさあ……。
カリエももう少し、バルアンに事情を説明できていたら……といっても、リウジールの子を宿してしまった彼女には、無理な相談だしな。子供を助けるためには、もうこれしかなかったんですよね。
せつない。
ともかくバルアンは、カリエというストッパーを、喪ってはいけなかったのね。
後宮でのナイヤが、カリエとの友情を未だ大事にしていて包容力のある素敵な女性に成長していて、とても救われる思いでした。

ルトヴィアのドーンとミュカ兄弟も、不穏な感じで。

神と人との関係が、重いさだめに縛られ惑い間違えつつも自分の足で運命を駆け抜けるヒロインの姿が、私の中で荻原規子さんの『空色勾玉』に、通ずるものがあったなというザカール編でした。
あと、最初から最後までリリアンが非常に格好良く頼もしかった。


ここ一週間強の間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 須賀しのぶ 

『流血女神伝 女神の花嫁』前・中・後編 須賀 しのぶ 




ザカリア女神のさだめにより、ザカールの長老家に生まれる子は代々男児であるはず。しかし999番目の子として生まれたラクリゼは、女であった。
「呪われた子」として父に愛されず性別を偽って育てられたラクリゼ。文武に優れあらゆる評判高い彼女は、うちに激しい苦しみを抱えていた。
そんな彼女が十二のとき、結界を破って外から少年がやってきた——。


『流血女神伝』シリーズ、本編の続きが非常に気になるのですが、まずは外伝から読むと良いと聞いて、はやる気持ちを押えて、読みはじめてみる。
(番外編の『天気晴朗なれど~』は、取り寄せ中ですぐに手元に届きそうにないので、保留)
本編であちこち暗躍していた、ザカールの謎めいた最強の戦士・ラクリゼとサルベーンの物語でした。
この『女神の花嫁』で、彼らの子ども時代からの因縁、ザカールという特殊な地のこと、一から読みこむことができて、だいぶ理解が深まりましたし、何より彼らふたりの独立した物語としても、たいへん読みごたえがあり面白かったです。

ザカールの風習が、読む前に想像していた以上に異質なもので、こたえるものがありました。
本編では強く凛々しい大人の女性だったラクリゼが、辛い立場でもがき苦しんでいる様が、読んでいて哀れでした。
少年時代のサルベーンもまた、現在の姿とは全然違ってかわいげがあって(笑)。
ラクリゼの父親が、ラクリゼが思っているよりは妻と娘をきちんと愛していたことが、救いでした。
アルマとも、ちゃんと惹かれあって愛し合っていたはずなのに、なんて残酷な運命なんだろう。
ラクリゼを可愛がってくれていたミネアの最後は切なく辛かった。彼女が外で出会った大切な人の存在が。
ラクリゼの秘密を知らされてなお、彼女を慕うレイザンの行動が、泣けました。大巫女様も、けして愛がないわけではないんだよなあ。
この『流血女神伝』の世界は、子どもたちにつらく当たる親世代の人々の事情も徐々にきちんと書いていってくれるところが、私は好きだなあと思います。
きれいごとばっかりではないけれど、運命的に出会って心の距離を縮めてゆくラクリゼとサルベーン、良かったです。



中編。
最初の挿絵の場面から表紙のような関係になるまで一巻分。
カリエ同様、ラクリゼの人生もサルベーンの人生も、若くして波瀾万丈すぎます……。
最初の仲違いから三年間、特にサルベーンがこんなにえぐいことになるとは思わず、辛かった。
一方のラクリゼも、思わぬ挫折を得てから、人の家庭の優しさにはじめてふれて、生まれ変わる。
アデルカとその両親たちがラクリゼに与えた平和で優しい時間が、正直最初はちょっと戸惑ったのですが、じわじわと胸にくる。ラクリゼがこの場所を離れることになっても、それでもとても良かった。
変わり果てたサルベーンとラクリゼの再会から、ラクリゼが彼を暗闇から救い出す場面が、とても良かった。
ごく当たり前の夫婦生活をはじつかの間のひとときに終わってしまいましたが、涙が出るほど幸せで愛おしい時間でした。あのサルベーンがこんなにふつうに夫として父親としての感情を表にあらわしていたとは!
そして女神様の究極の選択。こんなのあまりに辛すぎる……。



後編。
こんなことになったら、確かにもうふたり、完全な幸せにはもどれないよなあ。
と、ふたりの気持ちがすれ違い離れていく様は、やるせない気分になりました。
サルベーンは、最初からラクリゼに女神を見ていたというのも、真実のひとつではあったんだろうなとは思いましたが。
ラクリゼとアリシアのきれいな感情とくらい感情ひっくるめた関係は、嫌いじゃなかった。なんだかんだラクリゼより大人の物事の見方をするアリシアが私は好きでした。ある意味彼女の生き方はザカールに近いような。
この物語のクライマックスは、カリエの祖国・ギウタ皇国の滅亡の場面。
エジュレナ皇妃とラクリゼの会話が印象的でした。
ルトヴィアでマルカーノス陛下が過去を追憶していたあたりのことが、ようやく、そういうことだったのかと。
エジュレナの気持ちも分かるけれど、確かにこれは、フリアナ様も辛いなと思いました。フリアナ様がアルを溺愛しカリエをあそこまで憎むのも、分からなくはないなあと。
過去はどうあれ確かに愛し合っていたギウタ皇帝夫妻の姿が、悲しくも美しかった。
サルベーンが最後にあそこまでした理由がよくわからない。難しい男のひとだなあ。つくづく。
エピローグを読んでいると、全く何も感じていないわけでもないでしょうに。
カリエを通して母と最後の会話をしたラクリゼの場面は胸がつまりました。
「女神の花嫁」なんて矛盾しているようなさだめは、何を意味しているんだろう。
そしてルカが最後まで格好良くていい男で涙しました。

アルマの人生を読んでいると、カリエの身の上に今後降りかかるであろう受難が、今から怖すぎる……。
ラクリゼはカリエの味方なのでしょうし、他にもカリエを守ってくれる人たちはいるけれども、でもなあ。そんな簡単なものじゃなさそうな気がするんですよね。

ちっちゃなカリエとエドも出てきましたし、ますます続きが気になる!

カテゴリ: コバルト文庫