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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『緋色の聖女に接吻を~白き翼の悪魔~』葵木 あんね 




舞台は退廃の進む聖都ラミーニャ。
死の間際に、悪魔・バルキネスと契約することで生き延びた少女・アリーチェ。
彼女は育ての親の復讐のため、史上初の女教皇となることを誓い、司祭枢機卿として教皇候補に上りつめる。
アリーチェが契約したバルキネス、彼の正体は神の怒りをかい地上に堕とされた元天使だった。
彼が天界に戻るためには、聖なる刻印「神の接吻」を持つ人間を探さねばならないのだが——。

あきさんの表紙イラストの麗しさとあらすじに惹かれて手に取った、ルルル文庫の一冊。
復讐のため枢機卿にのぼりつめた十八歳の少女と、彼女と契約した元天使の悪魔のふたりが繰り広げる、野望と恋のファンタジーロマン。

いかにもな退廃的、影のある設定から、はじめは私、もうちょっと重たいお話を想像していました。
ちょうどこのお話を読みはじめたタイミングが、現実世界で悲しく沈んでいたときで、「しまった、こんな暗そうなお話今読みはじめるんじゃなかった、もっと元気があるときに読まなければ」と、思ったのですが。
でも読み進めていると、読みやすく心地の良い文章で、物語の世界にもするすると抵抗なく入ってゆけて。
そして読んでいるうち、悲しい境遇であがくアリーチェの心に自然に寄り添えて、予想外にたっぷりあった優しい少女小説ロマンス成分にも癒されて。
ラストも後味よく、読み終えるころには私の心もふわりと浄化されたかのような、いくぶんすっきりとした気持ちになれたのでした。

主役ふたりがいかにも悪役な設定の割に、なんだかんだ人が良くて純情で、重たくなりすぎないでいるところが良かった。
最初の場面から、外では存分に陰謀策略をめぐらせ悪役面している一方、バルキネスには年相応の少女の素顔も見せるアリーチェ。
つんつん勝気で少女らしく潔癖なアリーチェと、アリーチェには過保護で甘い保護者のようなバルキネスの会話が微笑ましい。
ロマンス成分も多めで楽しめました。メレンゲ菓子が甘いこと。
(あきさんの挿絵の色っぽさに比較して特にアリーチェの方が甘い気持ちにほぼ無自覚なので、あくまで初々しく微笑ましい雰囲気に留まっているところが、またいい感じ)
アリーチェの重たい復讐の誓い、ぎらぎらした野心の裏の気持ちも、事情を読んでいくごとに、十分理解できるもので。
まさに聖女のようであったドナのエピソードは辛い。
そして彼女の実の親のエピソードが、そうつながるのか、という思いでした。
彼女を娘と知らぬ相手の仕打ちにうちひしがれたアリーチェに、バルキネスが辛抱強く付き合い目を開かせた場面が、印象的でした。

アリーチェが親との確執を乗り越え、民のためにもてる権力も知恵も度胸もすべて使ってなりふり構わず戦う、特に後半部分の姿が、びしっと決まっていてとても素敵でした。
賢く強く心優しい少女の成長物語の王道パターンともいえる。私こういうのやっぱり大好き。
神に絶望し復讐を誓っていた少女が、その戦いの過程で、信仰への自分なりの答えを自然に見出してゆく様も、共感できるものでした。
(そして彼女が利用しようとしていた清廉潔白なメネスタ枢機卿の、信仰と人となりのエピソードが、割と容赦なくえぐい。この辺は変にふわっと甘くごまかさず書ききっているのも、宗教に関わるひとの物語として読み応えあって、好感持てました)

そんな彼女を献身的に支え助け共に戦う元天使の美しき悪魔バルキネス、彼自身の物語も劣らず魅力的。
(変装が自由自在でなんか楽しい)
ひとりの少女への、悪魔の一途で献身的な愛情が、シンプルに胸を打ちました。
バルキネスの弟天使・シュザエルの登場もありつつ、アリーチェの危機も共に乗り越えつつ、想いが通じ合って良かった。挿絵の場面が美しかったです。「接吻」というタイトルながらにくちづけの場面があまく印象的。
アリーチェの戦いが終わってからのふたりの関係の行く末も、思わずほろりと涙ぐんでしまう、良いものでした。
アリーチェのその後の生涯のエピソードも、ふたりらしくて心温もる。

ロマンス成分はふわりと優しめながら、世界観はとてもしっかりしたお話。
あきさんの美しく艶のある絵とお互いよく引き立て合っていて、こういう少女小説は読んでいて幸せです。
アリーチェの勝気で可憐な美少女っぷりが本当によく出ていて目の保養でした。バルキネスの悪魔なんだけれど人の良さを消し切れていない、境目ぎりぎりの黒い美貌と色気も、あきさんの画力にかかればさすがとしか言いようがありません。うっとり。

私好みの少女小説でとても良かったです。
作者さんの別作品もまた今度読んでみようかな。


昨日記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ルルル文庫

タグ: 葵木あんね 

『プリンセスハーツ』シリーズ 高殿 円 




十八歳でアジェンセン公国の大公となったルシードは、かつて人質として子ども時代を過ごしたパルメニア王国から、初恋の美しい王女メリルローズを妃に迎えることに。
しかしパルメニアがよこしたのは、メリルローズそっくりの身代わりの少女だった。
ある事情からルシードは、ジルを大公妃として仮面夫婦生活をはじめるのだが——。


先週ふと読みだして巻数を重ねるごとに面白すぎてやめられなくなり、ついに1週間弱で全11巻読み切ってしまった、『プリンセスハーツ』シリーズでした。
ブログの更新が滞っていたのは、このシリーズをひたすら読んで読んで読みまくって時間がなかったからです。失礼いたしました。
(実は何年か前にも1巻目だけ読んで、そのときは正直いまいちはまれなくてそのまま積み本化していたのですが、今読んだらするりとはまれて楽しめたので、ああ、処分しなくて良かったです!)

宮中陰謀劇あり、ロマンスあり、涙と笑いあり、とても力がある作品で、堪能しました。とっても楽しかったですー!!!
感想は全巻まとめてダイジェストになってしまいますが。できればじっくり色々書きたかったけれど、一気読みしすぎてなんかまだ濃密で複雑な世界観とか把握しきれてなくて、感覚で読んで書いている状態です。

まず主役カップルがとても良かったです。シリーズが進むごとにどんどん好きになってゆきました。
ルシードは初恋の王女メリルローズを一途に想い続け、ジルはジルで己の目的のためにルシードのそばにいて。
情のない仮面夫婦からスタートしたふたりが、いくつもの難局を共に乗り切るうちに、いつしかお互い自身が唯一無二の相手になり、「仮面夫婦」ではなくなってゆく様が、非常にときめくものでした。

ルシードははじめはジルに冷たく正直あんまり感じがよくないヒーローでしたが、三巻目くらいから成長のきざしを見せはじめ、ジルを守るためにまっすぐに優しさと強さを見せるところが、とても良かった。トーナメントに出場した理由にちょっと惚れ込んでしまいました。
まさに王となるべく生まれてきた、ルシードのかがやきがまぶしくて。
武のルシードを影から支えるのが、ジル(メリルローズ)のさえわたる知略。
娼館育ちの娘が己の頭脳のみを頼みに、諸国の並み居る政敵と常にぎりぎりのところで戦い、華麗な逆転技で抑え込んで勝利に導く手腕が、格好良すぎました。読んでてはらはらどきどき苦しいくらい。
とても不器用で変わり者で周囲に誤解されまくりのジルでしたが、だんだんかわいらしさや魅力が表に出てきて、女官たちにもジル親衛隊ができたりするまでに(笑)。家族思いで情の深く賢く謙虚なクールビューティー・ジルが、私も大好き!
恋愛の語彙はヘンテコにすぎるのもジルらしくて面白かった。本人は真剣なんですけれどねえ。
お互い、他に想う相手がいるのだという前提で接しているので、ややこしくすれ違う様は読んでいてとてももどかしかったのですが。(でもこのもどかしさが美味しいのです……少女小説たまらない。)
ふたりの気持ちがついに通じ合った夜の場面がもう本当に素敵で大好きです。
あんなに長年思い続けてきたメリルローズのこととは別に、ジルにシンプルな想いを告げたルシードの男気が、好もしかった。
両親に愛されず親殺しの業を背負うルシードと、花街で母と姉妹たちとの幸せな記憶を持ち生き別れた姉妹を探し出すのを悲願とするジルが、まさに「家族」として心を寄り添わせてゆく様が、なんというか尊くてとても好きでした。

脇役陣もとても魅力的。
まずはなんといっても一巻目からのルシードとジルの協力者でルシードの側近マシアス。
彼も最初は時計マニアの変な人……でしたが、ルシードとジルのややこしい関係を理解しそばで常にサポートし見守り続けてくれていた、得難いひとでした。一度は離れてしまい、彼の壮絶な過去に絶句して、それでも帰ってきてくれて、本当に良かったです。
彼がルシードのそばにいると安心感が全然違ったのでした!
草原の竜騎士四人組も、忠誠心あつい頼れる戦士ながらにあまりに個性的すぎて、印象深いのはそこ(笑)。特に壺と帽子……。
ジルの女官リュリュカとココも大好き。妃殿下命でときに暴走するリュリュカがめちゃくちゃ可愛らしくて、ヒロインに忠実な侍女キャラクターが大好物の私にはとても美味しかったです。短編集の彼女の恋の予感にはきゅんとしました。
そんなリュリュカに冷静に突っ込みを入れる後輩女官ココのコンビも楽しい。格好良く頼りがいのあるココも大好き。
あとは、オズマニアのオース王子も陰湿で小賢しくてジルの邪魔ばっかりしていましたが、嫌いにはなりきれなかった(笑)。ケイカとの恋模様でいくらかのことはチャラになりました。
数奇な運命で結ばれたナンセ公爵夫妻、サラミスとケイカの微笑ましい夫婦仲もとても好きでした!ジルとのお茶会場面に和みました。女の子の友人は得難いものです。
ヴィスタンシアのハクラン王と猫様のことや、ジルの母親クラレンシースの過去や、ルシードのトーナメントの相棒ホーリーヒース、ルシード信者のソロモンやジルの幼馴染の画家ロレアンや、どのエピソードも魅力的でみんなよかった!
ルシードの幽閉されていた弟リドリス、最後の最後まで本心が読めずに底知れないキャラでしたが、うん、嫌いじゃなかった。
最後の最後まで底知れない……といえば本物のメリルローズもでしたが、彼女のつんとした愛情も、泣きました。
ルシードとジルが想いを変質させていった向こう側で、メリルローズとロレアンのふたりの想いにも変化があったようで、今となってはそれが私の中では救いだったのかな。実はただただ初恋をずっと大切に抱いていたメリルローズが切なかった。
エクラムとグリフォンのややこしいおじさまたちの企ては、正直、巻き込まれた人たちがちょっと気の毒じゃないですかね(苦笑)。あんまり全貌を理解しきれていないので何も申しませんが。

最後の謎がどんどん解けてゆく流れでの、ルシードとジルの出生の秘密に呆然となりました。
おおらかで皆に好かれる大公様ルシードに常にどことなくまとわりついていた影の正体は、これだったのか。哀れでした。
そしてそこから立ち上がり周囲の助けも得て、戦いの流れをとめることなく走り抜けたルシードが、やはり生まれながらの王者だったのでしょう。ほうっと見守っている感じでした。
ジルの己の出生、ひいては世界の謎を訪ねてゆく旅路も、はらはらどきどきでした。ジルの出生は物語の中で二転三転しましたが、めぐりめぐって玉座に直接つながっていたとは、なんかもう理解の範疇を超えました(苦笑)。メレドニカ様って結局どういう方でしたっけ。
そしてついに玉座を得て、結ばれた二人の幸せと近いうちに訪れる別離の悲しみに、胸がいっぱいになりました。ジルの涙に私も涙ぐみました。
……そこからのラストの展開があまりにジルらしくて、本気でずっこけましたが(笑)。ハッピーエンドで良かった!あとがきのひとことに大笑い。

精霊や神や信仰が色濃い物語の世界観もたいへん魅力的でした。アジェンセンの賭博祭りの雰囲気も素敵だったなあ。
どうもこの物語は時代を異にする物語がいくつも存在しているようで、読んでみたいです!

挿絵、私明咲トウルさんの挿絵は好きなものといまいち好みに合わないかな……と2パターンあるのですが、このシリーズの挿絵は華がある雰囲気に合っていてとても良かったと思います。
ラストの全員大集合のイラストが皆幸せそうでいいなあ。個人的には、ついに三姉妹仲良し挿絵が拝めて(本編じゃないけど)とても満足。
『君は運命の人だから』のいかにも少女小説!な甘く可愛らしい表紙が、ながめていて幸せになってくるお気に入りです。

完結後、短編集ってないの?ないの?やっぱりないのか……。と、思わず色々情報を調べてしまいました。残念。
リュリュカとマシアスのその後とか、ナンセ公爵夫妻のその後とか、キキとハクラン王とか、主役カップルのその後とか(いくらハッピーエンドでもあれはその後が気になります……)、皆読みたかったんですけれどねえ。

最終巻



一巻目を読み返してから最終巻のことを思うと、ルシードとジルの関係性があまりに変わっていて、まぶしい。
少女小説って素晴らしい!と改めてしみじみ感じ入りました。


ここ一週間強?くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ルルル文庫

タグ: 高殿円 

『隠れ姫いろがたり 雪の下』深山 くのえ 




皇女でありながら幼い日にさらわれ、十二年後に見つけ出され都に戻ってきたものの、馴染めず孤独だった純子(いとこ)。
そんな純子に教育係としてかかわるようになった兵部卿の宮・理登(あやなり)だけは純子を理解し、やがてふたりは愛し合うように。
しかし純子の生母である弘徽殿女御は、純子を右大臣家の息子に嫁がせようとしているようで。
それを聞いた理登は、ある覚悟をかためる。

深山くのえさん&あきさんの平安ものロマンス『隠れ姫いろがたり』シリーズ、二巻目にして完結巻でした。
完結ですか……正直に言うと、惜しい。
できれば色々なエピソードをもっと丁寧にじっくりゆっくりたどって堪能したかったです。せめてあと一巻分くらいは!
深山さんとあきさんペアならば、間違いなく素晴らしい物語になったんだろうけれどなあ。

ともあれ今回も安定の仕上がりの深山さん少女小説。あきさんの挿絵。
期待通りにとっても楽しめました。幸せいっぱいです。
表紙の寄り添いあうふたりの信頼と愛情あふれる表情としぐさにときめきます。
今の季節にぴったりのお召し物の色使いも素敵!

冒頭、手習いの先生と生徒という関係上でのやりとりから、ふっと恋人同士のそれへと空気が変わる瞬間に、早くも心臓をきゅっとつかまれました。
理登さんのささやく「いと」が、不意打ちにとても甘く響くのです。

純子さんと理登さんの、それぞれの美質はそのままに、お互いをまっすぐに信じ守りいたわり合う関係がまさに少女小説の王道と言う感じで、ときめきました。とても素敵でした。
愛想や表立った甘さは足りないものの、純子さんのためなら手段を問わず戦い、年下の恋人を包み込むように愛する理登さんがとても格好良くて、淡々と冷静沈着そうなイメージとのギャップみたいなものにきゅんとします。
本人が言うところの「恋をする覚悟」を、特に純子さんを宮中から救い出しかくまう場面ではひしひしと感じて、素敵です。
激情を持ちつつもそれを表にはおさえて大人なふるまいをつらぬく……格好いいなあ。
なんというか、平安時代の身分が高いヒーローって少女小説では動かしにくいんだろうなと、想像で。
(ん?でも『源氏物語』の若紫の光源氏の行動とか思うと、そうでもないのかしら)

純子さんの方もたゆみない努力の成果で、今では書も音楽も高貴な姫君のたしなみのようなものを着実に身に着けつつあって。
真面目でけなげで頑張り屋のヒロイン大好きです。いや、最初から大好きでしたけど!(笑)
市井育ちでお転婆なんだけど、お転婆過ぎずに健気で奥ゆかしい部分もある娘で、私はそのさじ加減が好み。
母の弘徽殿の女御の仕打ちは、事の真相を読んでも正直なんだかなあという感じでしたが。
それでも高倉や花野や玉絵たち、純子の心根を理解し味方でいてくれる女性陣がきっちりいてくれて、純子の日常はにぎやかで楽しそうで、読んでいて安心できました。
塗籠に閉じ込められるなんてまた王道パターン!(←褒めてます)しかし黙って閉じ込められるままに終わらず、結局は自分の足で逃げ出す純子さんが、とても純子さんらしくて良かったです。ここでお裁縫の腕を使うというのが良いです。
理登さんが身動きできなかったあと一歩のところを、少女の純子さんがちゃんと自分の足で動いて、残りの距離を縮めて飛び込んでいく、このふたりのあり方が、そうか、私は好きなのですねえ。(←今書いていてはじめて気づいた)
純子さんの方も変に照れずにまっすぐに理登さんに甘え素直な言葉を吐くので、微笑ましくて。
そうだ、理登さんの名前よびのおかげで、ようやく「純子さん」を「いとこさん」と自然に読めるようになりました(笑)。

理登さんと直輔さんの友情も良かった。
直輔さん関連のエピソードはできればもう少し読みたかったです。特に最後の番外編に出てきた彼の北の方が気になる。
高倉も含めて、そういう人間関係だったのね。
あと下級女官の花野ちゃん、登場人物紹介イラストに可愛らしく登場している割に実際の出番はそんなにはなくて、お気に入りの娘だったのでもっとエピソードほしかったなあ。彼女だけは純子の女房という立場ではないから、仕方ないんでしょうけれど。
今回の作品は二巻でさっくり完結しているからか、いつもの深山さん作品らしい脇役たちのほんのりロマンスエピソードがほとんどないのがちょっと寂しい……。
前の斎院様も、素敵な女性だと思ったのですが、見せ場が少なくて惜しい。
でも純子さんの兄宮とかは、正直、直接登場せぬままで、良かったかなあと思いました(苦笑)。

純子さんがさらわれた昔の事件の真相エピソードも、ちょっと駆け足だったかなあ。
弘徽殿の女御の心情がほとんど語られないままで、彼女の生い立ちや夫や息子への気持ちやもう少し何か踏み込んでいたならば、彼女の行動、少しでも理解できたのかなあとか思ってしまいました。
母にあんなに冷たく否定されるのは純子さんにはあまりに辛い。理登さんが純子さんの心の支えとなっていて、本当に良かったです。
そして確かに、この勢力図では東宮様は哀れだな……。東宮様、今後も息災でいてほしい。

後日談の幸せそうな家族の姿に満足。お幸せに。
「見たこともない他人の妻など、どうでもいい」なんて旦那さんの台詞にちょっと笑えました。でも確かにそうかもね!
旦那さん似のお嬢さんのお顔もちょっと拝みたかったです。

思えば平安ものといっても、ヒロイン、ヒーロー共に宮様という身分なお話は今まで読んだ覚えがなく、深山さん作品のこういうちょっと珍しい工夫のある設定は好きだなあ。
桜嵐恋絵巻の宮様と白菊をちょっと思い出してしまいました。ふたりあれからどうなったのかしら。
そして相変わらず平安の貴族の生活や衣食住やひとつひとつの描写がていねいに描かれていて不自然なところもなく、安心してロマンスにうっとりひたれるところも、とても好きなのでした。
また深山さんの平安もの読みたくなってきました。

あきさんの挿絵も言うに及ばず素晴らしいの一言です。
141頁の仲睦まじげなふたりの表情が特にお気に入り。

少女小説っていいなあ、平安時代のお姫さまものも本当にいいなあ、としみじみひたれる、幸せな読書のひとときでした。


この一週間くらいのそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ルルル文庫

タグ: 深山くのえ 

『隠れ姫いろがたり 紅紅葉』深山 くのえ 




帝の第一皇女にあたる純子(いとこ)は、三歳のとき何者かにさらわれ、老夫婦にひきとられ庶民として育てられた。
十二年後に素性が判明して都に戻されたものの、庶民の娘として育った純子に宮中の人間は冷たかった。
母女御の実家に移された純子のもとにある日やってきたのが、先々帝の皇子である青年・兵部卿宮・理登(あやなり)。
書や楽器の名人であり純子の教育係としてやってきた理登と純子は、身近に接するうちに少しずつ、心を通わせていく——。


深山くのえさん&あきさんコンビの新作少女小説。今回は平安時代が舞台。
『浪漫邸へようこそ』が早めに完結してしまいちょっと寂しかったのもあり、新刊情報は嬉しかったです。
深山さんは『桜嵐恋絵巻』で平安ものイメージは前々からあったのですが、あきさんの描かれる平安ものってどんなかしらと予測がつかなくて、実はけっこうどきどきしていました。

実際に読んでみて、いやあ、まったく期待を裏切らない安定の深山さん少女小説!あきさんの完成度高い挿絵!
今回も十二分に堪能しました。相変わらず私好みで素晴らしかったです。
年の差カップルもの(八歳)としても何気に美味しい。

今回のヒロイン・純子さん(名前をつい、すみこさん、と読んでしまう……苦笑)は、身分は帝の第一皇女とこの上なく高貴なお姫様ですが、幼いころさらわれてずっと庶民として育ち働いてきた女の子。
素性が知れて都に呼び戻されるのですが、当然、深窓のお姫様らしく振舞えるはずもなく、価値観や考え方も全然違う。
心ない陰口やさげすみの視線に内心傷つきつつも、それでも彼女は反発することもなく、新しい環境に身を置くため、真面目に必死にしきたりや読み書きを身に着けるため頑張ります。
お姫さまにふさわしくなるよう頑張る一方で、持ち前のまっすぐな心の持ちよう、好意や優しさを飾りなく相手に伝えようとする姿勢、そういう美質は、損なわれることなく。
ふたつの姿勢はときに矛盾するのでよけいやり辛そうなのですが、そういう不器用で健気な姿がまるごと、愛おしくてならないヒロインです。

対する理登さんは、堅物で無表情だけど、貴族の価値観を超えて、そんな純子さんの事情をひとつひとつ汲み取って誠実に接してくれる。単に甘く優しいのとは違う、精神の柔軟さとまっすぐさがとても良い。
純子さんへの接し方の安定感も心地よかった。そこは八歳の年の差か。
おだやかで知的でまじめな好青年、深山さんヒーローもやっぱり安定して大好き。
そんなふたりの勉強の時間、お互い少しずつ相手のことを知り心通わせていく様が、読んでいて本当に心ぬくもり良いものでした。

けれど、ふたりは一度、突然に引き離されてしまいます。
理登の優しさを心の支えにしていた純子さんの嘆きが痛々しかった。
と同時に、終始淡々と冷静にふるまっていた理登の方の落胆っぷりにも驚かされ胸をつかれました。
彼はここまで深く純子さんを心にすまわせるようになっていたのか、と。

が、理登さん、ここで予想外に大胆な行動に出てくれました。まさか彼みたいな堅物な人が、宮中の女人たちも巻き込みこんな大がかりな根回しをするとはびっくり。格好良かったです。
心通わぬ母と兄宮からようやく離れられた純子さんの元に、再びたどり着くことができた理登さん。
淡々とストレートな彼の愛のことばがものすごくときめきました。
「恋をする覚悟ができた」、なんて、なかなか言えない台詞です。なんかこれが理登さんのキャラのイメージによく合っているんですよ!格好いいんですよ!
素直で心から相手を信じる純子さんのかえしもとても良い。
ふたりの仲が思ったより早く進んだのにどきどきしました。いいですねえ。幸せ。
別れ際の理登さんの気配り、後朝の歌のことまであまりにこのふたりらしくって、ああ、生真面目同士のカップルって大好き(笑)。

ただ今恋が成就しても、どうも物事はそうすんなりまとまらなさそうで、先が気になりますね。
純子さんをさらった犯人のこと、何かにつけ純子さんに冷たい態度の母親の思惑もよくわからないし、宮中の勢力争いも不穏だし、理登さんの方の悪い噂も、本人は気にしてなくてもこれからどうかかわってくるのか。

純子さんのそばに常に頼れる味方でいてくれた老女房の高倉。彼女の存在は心の支えでした。格好良かったです。
(しかし高倉が直輔ともつながりがありそうとか単純な人間関係じゃないのがやや気がかり)
花野や彼女の上司の女官たち、純子さんが宮を移る際についてきてくれた女房たちと、純子さんを慕ってくれてる女性たちもしだいに増えてきて、仲良さげなやりとりにこちらも嬉しくなってきました。やっぱり深山さん作品はこうでなくては。

理登さんの方の友人の直輔さん。有能で変に飾ったりしないよいひとですね。
高倉への文のこともあったし、もしかしてそれ以外にもこのひと、麗景殿でふたりが出会えるように、意図的に会話で誘導したのかしら。とか勘ぐったり。食えない人です。
とてもよい友人さんだと思うのですが、お家の事情を考えると、完全に理登たちの味方でい続けてくれるとはかぎらない……のかもしれないなあ。なるべく辛い展開にはならないといいのですが。

そんなこんなで、続きが楽しみな少女小説シリーズがまたひとつできて、とても嬉しいです!!
純子さんが縫い物上手という設定がまだほんの少ししか生かされていない気がするので、次巻以降で期待しています。
理登さんは和歌も普通にさらりと詠めそうだし純子さんもお勉強頑張っているので、和歌関係のエピソードもあると、嬉しいな。後朝の歌の補足もちょっとほしい(笑)。
宮中の働く女官たちに光があたるお話って、そういえば『嘘つきは姫君のはじまり』もそうだったし、『かぎろひさやか』や最近読んだ『夢も定かに』や、わりと色々読めるんですね。お姫さまとはまた違った女性たちの姿は読んでいて楽しいです。
もちろん主役の純子さんがいちばん気になるのですが。

そうそう、あきさんが描かれる平安貴族の挿絵もまた素敵で良かったです。比較的やわらかくやさしいタッチの挿絵になっているなと感じました。
純子さんの愛らしさにやられてしまいました。理登の無表情美青年っぷりも良かった。花野ちゃんもかわいい。でもいちばんはまっていたのは華やかな貴公子っぷりを発揮していた直輔さんかも(笑)。
109頁のふたり向かい合う横顔の挿絵がいちばん好きです。


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ルルル文庫

タグ: 深山くのえ 

『浪漫邸へようこそ~花開く日~』深山 くのえ 

浪漫邸へようこそ ~花開く日~ (小学館ルルル文庫 み 1-25)浪漫邸へようこそ ~花開く日~ (小学館ルルル文庫 み 1-25)
(2015/04/24)
深山 くのえ

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『浪漫邸へようこそ』シリーズ第三弾、完結巻。
秘密の下宿屋「浪漫邸」をはじめた貧乏子爵家の娘・紗子は、下宿人のひとり・帝大生の伊織への恋心を自覚する。
想いを秘めつつも直接伝えられずにいた紗子と伊織だったが、下宿人の昔馴染みの男がある日浪漫邸に転がり込んできて問題を起こし、ふたりの仲にも動きが——。


深山くのえさん&あきさんコンビの大正時代一つ屋根の下ラブロマンス『浪漫邸へようこそ』、新刊が出ました!そして完結でした!
正直三巻目でもう完結になるとは思っていなくって、新刊が読める喜びと同時に寂しい気持ちも大きかったのですが。でもやっぱり楽しみに待っていました。
表紙の紗子さんと伊織さんがぐっと親密なラブラブな雰囲気を醸し出していて読む前からどきどき。

はい。
終わってしまったのは確かにとても寂しく残念なのですが、それよりなにより、予想をはるか通り越した糖分高めな展開に、度肝をぬかれました。どきどき。
伊織さん格好いいし紗子さんけなげで可愛らしいし家族や使用人や下宿人の皆も全員いいひとだし頼りになるし、もう幸せいっぱいおなかいっぱい。とっても満たされました。
前巻まで穏やかで頼りがいのある好青年だけど身分の差から常に一歩引いた姿勢を崩さなかった伊織さんが、ひとつの事件をきっかけに開き直った……というか恋心を隠さず紗子さんに接するようになってからが、もう甘い甘い。
当たりは一見ソフトなのですがその実遠慮せずに押してくる伊織さんと、はにかみつつも素直に受け入れる紗子さんの甘々ラブラブな場面がたっぷりあって、あきさんの挿絵もラブラブな場面が多くて、頬がゆるんでしかたなかったです。
伊織さんがささやく愛の言葉のつつみこむような優しさと、微妙な強引さ、強気さ加減がたまらない。つぼにはまります。
甘々とはいえ、深山さんの少女小説文体とあきさんの挿絵はどちらもしっかり安定していて、雰囲気は崩れず奥ゆかしさも失われず美しくふんわり可愛らしいままで素晴らしい。

この一冊で、主役二人の恋の行方、伊織さんのおうちのこと、紗子さんきょうだいの父親のこと、すべてが解決しコンパクトにまとまっているのですが、もう少していねいにひとつひとつの事件を読みたかったな…とか思わないでもなかったのですが。
でもすべてがこの一巻におさまるほどスムーズに解決したのは、ひとえに、伊織さんの予想以上の文武両面にわたる優秀さのたまものだったんじゃ、と私は感じました。特に優秀な頭脳をつかっての波風立てぬ根回し解決の手段がお見事すぎます。さすがヒーロー。すべてが格好良すぎる。
伊織さんだけでなく、特に尚彦君の頑張りもまたかなり光ってました。尚彦君はできる子だと前々から私、思っていましたが、十一歳の少年が姉とおうちと(そしてきっと心にきめた少女のため)ここまでふんばったのはすごい。

ちょっと各話別に感想を!
『困った料理人』
画家志望の時雄さんの幼馴染・料理人見習いの四郎さんがトラブルをかかえて転がり込んできたお話。
なんだかとほほな人としか言えない四郎さんでしたが、結果的に、紗子さんと伊織さんが想いを確かめ合えるきっかけを作った人で。プティング作りの邪魔をしたのとチャラ……にはならないか。あれはちょっと(?)むっとしました。
紗子さんの親友の梨影さんがまた頼れる方で、事件も無事解決。まあ、四郎さんは悪人ではない。
紗子さんの方から、思い切って歩み寄って、ついに想いを通じ合わせた二人。とても満ち足りたロマンティックな場面でした。
その前の、紗子さんを後押しさせた、尚彦君の場面も良かった。りんへの想いを少年として、お家の長男として、きっぱり決意を込めて語る尚彦君格好よすぎます。
そして確かに、殿方と一緒にお菓子作りをしているとか、もうすでに新婚さん夫婦みたいなのですが……一緒にプティングやゼリーを作っているふたりがたいへん様になっていました。
それはゼリーも甘いでしょう!

『それぞれの事情』
伊織さんの元養子先のお家のあれこれ。
お義父さんが分かりやすい身勝手なひとで、冷静で頭が切れる伊織さんにひとつひとつやり込められていく様には胸がすく思いでした。
まさかここで紗子さんを直接前面に出してくるとは!伊織さんと尚彦君の策士っぷりが素敵でした。
カヨさんも、幸せになれそうで、良かったです。伊織さんのお義母さん、素敵な方だったんだな。
あと遠峰男爵が、意外と頼りになる方だったようで。(遠峰氏と言うと、なんだか勝手に悪人というイメージになってしまうのは、きっと『明治緋色奇譚』の影響。笑。)
そして栗はマロングラッセーにするんですかね!(第一巻より)またふたりでお菓子作りにいそしむ姿を勝手に想像してにまにま。

『求婚騒動』
一巻目でトラブルになったご令嬢が幸せな結婚をしたのを確認できて、何よりです。
梨影さんと紗子さんのおめかしの挿絵がかわいらしい!
また新たなトラブルが降ってきましたが。
単なる勝手なお坊ちゃまたちの集団かと思いきや、まあ三分の一くらい予想できてましたが、黒幕の存在が。
思っていたよりしょぼい黒幕でしたけどね……。父を思わせる名に愕然とする紗子さんと尚彦君に、冷静にひとつひとつ確認をとっていき正しい結論へ導いていった星先生がかなり格好良く好きな場面でした。
それにしても父上、想像の斜め上をいく登場の仕方をしましたね……喜劇じみてる。ぼそり。
そして今回もまた、伊織さんと尚彦君の迅速な行動が、事態の円満な解決を導いたのでしょう。本当にこのふたり格好いいな。下宿人の皆も頼りになるなあ。
木刀を持ちだしてる藤馬くんとあとからひとり木刀で素振りしていて皆をおびえさせていたらしい伊織さんにはちょっと笑ってしまいました。
あと鞠子ちゃんの挿絵が!黒目がちでちんまりしていて美少女!
ミツさんとしのさんも、うまくまとまったようで、何よりです。な、尚彦君、知恵が回るなあ……。一週間に一度の催促には笑ってしまいました。
そして確かに、結婚してしまえばしっかり者のしのさんのペースでした。
こういう人間のお父さんには、まあ確かに、役者は悪くはない職業選択だったのかもしれませんね。一年旅を続けて、今回もまた脱落せずについてったんですものね。

『番外編 卒業したら』
一巻目の最後で非常にときめいた、待望の(笑)伊織視点の番外編!!すでに甘々でおなかいっぱいでしたが読みはじめてやったーと心の中で叫びました。
伊織さんの眼から見た婚約者の紗子さんのあまりの愛らしさに、読んでいる私も悶絶……。確かにね、縁談の申し込みがない方が間違っているよね。世間はまともですね。うんうん。ひとり納得している伊織さんが読んでいて笑えてきて仕方なかった……。
「卒業」って、伊織さんの方だと思い込んでいたので。サプライズ!
伊織さんのすっとばしたプロポーズも紗子さんの嬉しそうなお返事ももうすべてがふたりらしくて初々しく幸せでとろけそうでした。
浪漫邸のひとびとは、将来もしばらくは今のまま共同生活を営んでいくようで、そこにもとても幸せな気分になりました。

十二分に満足な完結巻だったのですが、欲を言うならば、下宿人たちそれぞれキャラが立ってて皆大好きなので、それぞれにスポットがあたったお話をもっと読みたかったなー、と……。
あと尚彦君とりんちゃんのその後とか。鞠子ちゃんと年上の王子様とか。
深山くのえさん恒例(?)、主要キャラの小話をつめこんだ短編集、出ないかなー!!


こんなに甘々な少女小説を読んだのはかなり久しぶりな気がしますが、堪能しました。
真面目で奥ゆかしいヒロインもヒーローも私好みであきさんの挿絵もうるわしく、今までの深山さん作品の中でも特に好みでした。長さもまあ適切だったんじゃないかな、と私は思います。
やっぱり少女小説っていいなあ~。
深山さん、次の作品も、期待しています。


ここ一週間それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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『浪漫邸へようこそ~初夏の嵐~ 』深山 くのえ 

浪漫邸へようこそ ~初夏の嵐~ (小学館ルルル文庫 み 1-24)浪漫邸へようこそ ~初夏の嵐~ (小学館ルルル文庫 み 1-24)
(2014/12/26)
深山 くのえ

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『浪漫邸へようこそ』シリーズ第2作目。
父親が失踪し、十六歳にして子爵家を背負うことになった紗子は、秘密の下宿屋「浪漫邸」をはじめることに。
集まった下宿人は個性的ながらに皆心優しい良い人ばかりで、弟妹、使用人も交えて、共同生活は上手く回っている。
そして紗子は下宿屋をはじめるそもそもの発端になった一人、伊織へのほのかな恋心を自覚する。
伊織の従弟の少年が突然傷だらけで転がり込んで来たり、下宿人の光也が美青年ゆえのトラブルに巻き込まれたり、次々事件が起きつつも、浪漫邸は今日もにぎやか——。

一巻目を読んでとても気に入った『浪漫邸へようこそ』、待望の二巻目です。
あきさん表紙の少女小説は、発売日前から、いつネット上に書影がアップされるのか、そわそわ確認する楽しみが……(笑)。
さわやかな好青年の伊織さんと優しいピンク色をまとった紗子さんのお似合いカップルが素敵です。美しいです。さすがです!!実物はやっぱりネットで見ているよりずっとずっと良いです。ふふふ。

お話の中身も、安定の深山さん少女小説&あきさん挿絵で、期待を裏切らない完成度。とても満足です。
紗子さんと伊織さんの初々しくゆるやかなロマンスをメインに、脇役キャラのドラマ(ロマンス含む)もあり。
皆いいひとで、ほのぼの仲良しで、かわいいなあ、もう!!読んでいて幸せ感いっぱいでした。しっとり落ち着いた品のある深山さんの文章で、疲れた心に染み入りました。
深山さんのお約束をはずさないキャラクターやストーリー展開は、これまでのどの作品でも私、好きなんですが、今回は特に上手くはまっていると思います。大正ロマンで和洋折衷な雰囲気もいいし、あきさんの挿絵との相乗効果もあるんだと思います。
あといちばん大事なところ、紗子さん清楚で健気で奥ゆかしくて可愛すぎる。伊織さんも硬派で穏やかで好もしい。年の差も良い!
どこまでも私好みの少女小説です。

今回のお話は、浪漫邸の日常にふりかかってきた、三つの嵐、事件をメインに。
『不機嫌な従兄弟』
伊織さんと光也さんの従弟にあたる少年・藤馬くん現る、の巻。
登場人物紹介とか挿絵の藤馬くんが思いっきり不機嫌な顔していて、その表情がいかにも思春期の少年で、ふふふ、微笑ましい。
読んでいくと少々不器用で愛想なしながらもまっすぐで心根優しい少年で、素直に好感持てました。誤解がとけてよかったです。
紗子をほんのり意識していて、やきもちやいてつっけんどんな態度とってしまったりとか、それも微笑ましかったです。
まあこの子の年齢じゃ、ライバルにもちょっとなりようがないですし……って、書いてから気づいたけれど、紗子さんからふたつ年下なだけでした。あら。まあこの年頃の二歳差は大きいか……というか、紗子さんが大人びているのかな。苦労してますね。
ここのあたりの紗子さんと伊織さんの、手が触れあってぱっとひっこめあったりとかのやりとりも、定番ながらに初々しくこそばゆい雰囲気がとても良くて、きゅんきゅんでした。
伊織さんをいそいそ待ちわびてる紗子さんも本当にかわいい。土曜日の午後の感覚ってなんか懐かしいなと思いました。
藤馬くん、個人的には、将来鞠子ちゃんとくっつくのもありだと思います。

『或る二枚目の女難』
一話に引き続きタイトルそのままだな……(笑)。光也さんのお話。
お客さんに惚れられ付きまとわれても、なんかもう慣れきってる感じでのほほんとお茶をすすっている光也さん、いやあ、マイペースだなあ……。
そしておしのさんとりんちゃんに、危機が。
光也さん、動いた!!そして言っちゃったよ!!いやあ、格好良かったです!!
おしのさんの粘着質な元旦那さんと恋に酔ってるご令嬢、両人をドン引きさせるまでの迫力を見せてくれるとは、思いませんでした。ははは……。
前巻の時点からなんとなくな雰囲気はありましたが、そっか、やっぱりね。みたいな感じでした。でも年回りもいいし、お似合いだと思います。
さりげなく外堀をどんどん埋めていってる光也さんが策士です。りんちゃんと紗子さんから埋められてしまったら、それはしのさん、逃げられないでしょう。わかってるな!
浮かれているときの笑顔は、ほんの少しうさんくさく見えるって、なんか、本性が見えてくるような(笑)。183頁のあきさんの挿絵の笑顔が秀逸。
紗子さんと伊織さんの写真館デートも、相変わらず初々しくもだもだしていて最高でした!
あとから読み返すと改めて、光也さんはすぐには気取られぬ絶妙な具合で策をめぐらすのが上手だなあ……(笑)。とっさに婚約者なんて、ね。
写真にうつった伊織さんの表情が緊張してかたくなってて照れてて、それがいつもに比べてだいぶ幼く見えて、ああそういえばこのひとも学生さんだった……改めて気づき、また微笑ましくなったのでした。紗子さんは安定のかわいらしさ。
しのさんもりんちゃんもお気に入りキャラなので、幸せになってくれそうで何よりです。
それにしても、りんちゃんは全然父親に似ずにいいこに育ってるなあ……(ほろり)。

『七月のつむじ風』
三話目にして待ってましたの紗子さん&伊織さんが話のメインといいますか。紗子さんのおばあさまとおばさまが急におしかけてくるお話。
紗子さん自身に降りかかってきた危機に、毅然と立ち上がって彼女を守るため戦う伊織さん。
スローペースで進んでいたふたりの仲が、ぐっと進展しました!盛り上がりましたよ~!!
それにしても、実の祖母と叔母とは思えない身勝手さと情のなさだな……いやはや。
わがままに振り回されつつもしっかり立ち向かう紗子さんも健気でよかったし、彼女をサポートする伊織さん、あと尚彦くんが、とっても頼もしくて格好良かったです。
絶妙のタイミングでワッフルを買ってきてくれたり、紗子さんの危機に事を荒立てない方向でうまい具合に機転をきかせてくれたり……。うん。ひとつひとつがあざとくないぎりぎりのところで、最高に頼れるヒーローです。
そしてラストの伊織さんの独白が、想いが溢れ出してきていて、読んでいてときめいて仕方がなかったです。こんな美味しいところで終わるのか!心憎いです。
しっかり者の紗子さんがしおれている姿は、特に涙は、ぐっときますよね。うん。
尚彦君の、姉さんは好きな人と結婚してもらいますから……云々の台詞も頼もしいです。
彼が言うからには、きっと何か策があるんですよね。信じていてもいいですよね?
ちょっとお豆腐のステーキが食べたくなりました。普通に美味しいですよね。豆腐ステーキ。読んでいると、むしろ豆腐ハンバーグかな?

光也さんとおしのさん効果なのか、尚彦君の頼もしい言葉もあるのか、一巻目の時点では難しい身分差の恋かなあ……と思えていた紗子さんと伊織さんカップルも、まあ、なんとかならなくもない気がしてきました。
伊織さんの頑張り次第かな。
一応おうちの跡取りは、尚彦君ですしね。
まあ、父親が何か新たな問題をおこさなければ!(笑)

今回積極的に前面には出てこなかった下宿人の皆さんも、それぞれあまり目立たないところでちゃんといい動きをしてくれていて、皆、前巻の時点より好きになれました。
最初の方の植木の剪定をしている龍三先生の場面が良かったな。
同居人たちの危機には当たり前に知恵を出し合ってそれぞれの得意分野で協力し合う姿が、いいですね。
皆仲がよくて、読んでいて和みます。
いつの間にか名前を略称で呼び合っているのも、微笑ましいです。

あきさんの挿絵がふんだんに入っていてそれもとても満足で、欲を言えば、りんちゃんと鞠子ちゃんの挿絵もほしかったです!可愛い女の子大好き。

ああ、素敵でした。感想も心のままに好き勝手に書きました。満足。
続きの巻も、期待しています♪
紗子さんと伊織さんにははやくくっついてほしい、紗子さんに幸せになってほしいけれど、あんまり早く終わってしまうのも、寂しいなあ……ずっと読んでいたい。
少なくとも、春夏ときて、秋と冬の二巻は、ぜひに。

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