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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『身代わり伯爵と終幕の続き』清家 未森 




『身代わり伯爵』シリーズ完結後の短編集。
大公夫婦の第三子誕生の一幕の表題作の他、シアランの変人女官たちと若手騎士たちの集団見合い話、第五師団長ジャックのようやくの(笑)ロマンス話、そしてリヒャルトとフレッドの出会い話も収録、充実の一冊。


待望の『身代わり伯爵』シリーズの短編集!!
待ってました、いつか読めると信じていました。本当の本当にうれしいです。
それにしても、シリーズ完結巻の自分の感想を今読み返してみたのですが、発売が2015年秋だったとは。ちょっと愕然。
時が経つのは早いものです……。
今回の短編集の最後の『終幕の続き』を読んでいると、完結巻のその直前のエピソードを読んでいたのがほんとうにもうつい昨日のことだったような気さえして、自分がどんなにこのシリーズに心かたむけミレーユとリヒャルトのふたりとその周囲の皆を愛しているのか、しみじみ実感してしまいました。

今回の短編集は主に「シアラン編」とのこと。リヒャルトとフレッドの出会い編以外、舞台はシアランがメイン。
時間軸はミレーユとリヒャルトが結婚してから、もしくはその直前あたりがメイン。
ずっと気になっていたあのひとやあのひとのエピソードが読めてたいへん満足。
私のひそかなお気に入りキャラ・アンジェリカの出番が多めでほくほくしました(笑)。
なによりどのお話を読んでいても、ミレーユとリヒャルトが仲睦まじく幸せそうで、周囲の人々もドタバタ走り回りつつも平和で幸せそうで、読んでいる私も自然とニコニコ幸せになってくる。最高に素敵な短編集でした。
表紙の皆の勢ぞろいイラストを、最後まで読んだ後に改めて眺めていると、また感慨深いものがあります。


ではでは各話ネタばれ込みの感想を~。


『身代わり伯爵と深い森の追憶』
国を追われてアルテマリスにやってきたばかりの少年時代のリヒャルト、そしてリヒャルトとフレッドの出会い、ふたりが親友同士という関係に至るまでのエピソード。
そういえばこの時期のリヒャルト、フレッドたちのお話ってこれまで読んだことがなかったですね。気が付かなかった。
つんつん刺々しい雰囲気をまとっているリヒャルトが新鮮でした。しかしこの年齢でこんなにシビアな境遇に置かれては無理もない……。読んでいて痛々しくなりました。
リヒャルトの過去の通り名(?)「ブリギッタの野獣」でしたっけ、あの由来にようやく納得。壮絶……。
我が道を行く天真爛漫なフレッドは相変わらずで、でもそんなフレッドも複雑な境遇で生きてきていて、そんなフレッドとリヒャルトが、出会ってここで友情を結ぶことができて、良かったな。としみじみ思いました。
でなければリヒャルトとミレーユの出会いもありえなかったわけで。
あとエド様のリヒャルトへの真面目な心遣いが読んでいてしみいりました。
ジュリア様と子どもたちへの愛が行き過ぎてて変な方向に行っちゃう以外は、エド様って立場も宮廷の常識もすごくわきまえていて身分にふさわしい教養も備わっていて、その上で人に対して優しくあれる、素敵な王弟殿下だったのだなあ。と改めて実感しました。
ひょうひょうとしたおじいちゃんラドフォード卿も懐かしい。
時間が現在に戻り、神官長に大人げなくやきもちやいてるリヒャルトがおかしくてみんなが幸せでほっこりしました。

『身代わり伯爵と兄妹喧嘩』
ルドウィックとロジオンとアンジェリカ、「若君第一!」の忠誠心と有能さ以外は性格も特技も趣味もてんでばらばらソラリーヤ三兄妹、なんかこのバラバラ加減がいつも面白すぎて大好きです(笑)。
正直ミレーユを軽んじているルドウィックは読んでいて若干いらっときますが、そんな発言があるたび、アンジェリカが口で負けじと兄の弱点をぐさぐさついていくし、ロジオンもなんか物理的に怖いし(笑)、ミレーユ大好きな下のふたりがすかさず戦ってくれるので、嬉しいことです。
確かにこの三兄妹が、まだ生まれてもいないお世継ぎの世話役をめぐって延々とケンカしている光景が、まさにシアランの平和の象徴ですよねえ。読んでいて和みました。

『身代わり伯爵ともうひとつの手記』
ロジオン……もう何も言うまい。日誌を読み動揺しまくっているリヒャルトがまたおかしかった。
それにしてもロジオンとアンジェリカの「連絡日誌」をリヒャルトが日々確認しているとは、なんか本当にこの人たち色々面白いな。うん。(いや、ちゃんとした理由があることも分かりますけれど。)

『令嬢たちのお見合い大作戦』
ドタバタコメディ。
ミレーユの友人兼女官見習い娘達の個性的、風変わりな部分がそれはもういかんなく発揮されていて、みんな生き生きキラキラしてましたよ!(笑)
そして確かにアレックス達が言っていた通り、彼女たちの個性を良いと言ってくれる人と結ばれるのが、やっぱりいちばんだよな~。うんうん。そういう風に彼女たちを評価してくれている騎士たちもちゃんといるのだという事実も、やはり嬉しかった。
ラウール先輩とオルテンシア嬢とか、たしかにちょっとお似合いな気がする……。どうでしょう。
そしてルドウィックとシーカ様のあれこれは、なかなか読み応えありました。確かにこの二人、そういう理屈を当てはめてみると、かなりお似合いだな。ルドウィックの良いところって確かに妻が家庭に大人しくこもってなくても絶対文句言わないところだよな、納得。最終的にはうまくまとまったようで良かったよかった。
それにしてもロジオンとアンジェリカの兄妹はいつかちゃんと結婚相手を見つけられるのかしら……。
私的にはアンジェリカのお相手は、今シアランにいるひとではないと思っているので(笑)、ああーすごく気掛かり。

『身代わり伯爵と忘れじの恋の約束』
ついに来ました、ジャック団長の甘酸っぱい恋のエピソード(笑)。
完結巻のイゼルスの爆弾発言に思いっきり動揺させられたものですが(汗)、こういう事情だったのですね。許嫁に逃げられたというのも、こういうことか。これは確かに本人たちのせいではないよな……。
ルナリアの健気で一途な恋心に涙が出てきました。仕方がないとは思うものの気づかないジャックがもどかしすぎました!!
今回もイゼルスがどこまでもいい仕事をしている。イゼルス自身にいつかいいお相手は現れるのか……。未だにイゼルスにお似合いのお相手の女性を少しも上手く想像できない。
そしてラストの大公夫妻の会話がとても幸せで和みました。二人すっかり夫婦の距離感。

『身代わり伯爵と終幕の続き』
表題作、完結巻の最終章の続きのエピソード。
扉絵のミレーユの明るくつつみこむような笑顔がすっかり母親のものになっていて、子どもたちもお母さん大好きー!!なのがよく伝わってきて、すごくすごくステキ。
リヒトとルクスとリヒャルトの微笑ましい会話に和み、その後のミレーユとリヒャルトのやりとりがとてもこの二人らしくて、やはりほっこり心が温かくなりました。
ミレーユのことを心配しすぎなリヒャルトと、そんなリヒャルトのことをちゃんとわかっていて彼のことを気遣うミレーユの二人の姿に、なんてお似合いの夫婦なんだろう、と上手く言えないのですがもうたまらない気持ちになりました。
リヒャルトには、もう絶対に、ミレーユがいないと、駄目ですね。ミレーユの明るい笑顔と持ち前の元気さ、優しさ、包容力が、普段どんなに大公リヒャルトを支えているのか、こんなみじかいエピソードひとつでとてもよく伝わってきます。
この巻の最初の少年時代のリヒャルトの孤独と絶望、暗い気持ちを思うと、なおさら今の幸せに、こみあげてくるものがあります。
リヒャルトの唐突な愛の告白にもときめきました(笑)。相変わらず人前でも自重していないみたいですね。

とてもとても満足な短編集でした。
シアラン編ということで、もし叶うのならば、次はアルテマリス編の短編集も、読みたいな。切実に。
フレッドとセシリア様の件がまずあるし、アンジェリカのこともあるし、ヴィルフリート様のことも気になるし。えーと、あとは誰だ。ロジオンの結婚もできれば見届けたい(笑)。


ここ二三日にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ビーンズ文庫

タグ: 清家未森 

『ドイツェン宮廷楽団譜 嘘つき婚約コンツェルト』永瀬 さらさ 




幼いころ出会った「聖夜の天使」との再会を夢見て、世界一のバイオリニストを目指す伯爵令嬢ミレア。
そんな彼女が出会ったのは、宮廷楽団のカリスマ指揮者にして公爵令息・傲岸不遜なアルベルト。
ミレアにさんざん駄目出しをするアルベルトだが、望まぬ婚約話に困っていたミレアに、「嘘の婚約」の共犯者となることを提案してきて——。

ビーンズ文庫の新作少女小説。
作者さんの『精霊歌士と夢見る野菜』シリーズが好きで、新作のあらすじが好みっぽく気になっていたところに、ネット上の評判の良さに後押しもされまして、さっそく読んでみました。
表紙イラスト、まさに「バイオリンの妖精」な可愛らしいおめかし姿のミレア、微妙なしかめっ面まで魅力的。ふたりの作中の関係がとても良く出ています。

うわー評判通りにすごく面白い少女小説でした!!これだから少女小説はやめられない。
音楽ものとしても頑張る女の子の成長ものとしてもじれじれラブコメとしても心温もる家族愛ものとしても、どの要素も完成度が高くて、たいへん楽しくときめきました。
なにより世界観がしっかりしていてきらきら華やかで、お話に勢いがある。ぐいぐい引きこまれました。
先週の日曜日に読んでいたのですが、週初めの憂鬱な気分が読んでいてだいぶ吹っ飛びました。

バイオリニストを目指す天真爛漫な伯爵令嬢のミレアと、宮廷楽団の不遜な指揮者で公爵令息のアルベルト、この年の差カップルの関係がとにかく良い!!読んでいてときめきごろごろがとまらなかったです。ふふふ。
手厳しく偉そうな言葉ばかり投げつけてくるアルベルトにミレアは反発を覚えずにいられないのですが、彼の助言はすべて的確なので逆らえず。きーっとなっているミレアとふふんとすまし顔のアルベルトという構図がベタで楽しい。
そんなにえらっそうで意地悪ばかりしているのに、実はミレアの見えないところでは彼女のためにとことん心を砕き大切にしているのが話の随所で見えてきて、なんというかとても美味しい。
「聖夜の天使」のエピソードも。なんだか『あしながおじさん』の構図みたいでちょっといじわるなおじさまに非常にときめきます。
偽物の婚約者となる提案もね。「守ってやるから」という言葉こそがアルベルトの本心なんですよね!
何よりアルベルト手製のはちみつとクリームたっぷりフレンチトーストと差し入れのサンドイッチに、彼の深い深い愛情を感じました。
読者視点ではなんとももどかしいすれ違いだったのですが、アルベルトにもミレアにも複雑で繊細な家庭の事情があって、簡単にすべてを明かせないのも仕方ない……もどかしい!

ラブコメ少女小説ながらにも、宮廷楽団の世界はしっかり作りこまれていて、飛び込んでいったミレアが厳しい指導にもまれ挫折も味わいつつも、仲間や先輩の支えも受けつつ立ち上がり、成長していく様がまた良かったです。
いくぶん不安定な天才肌のミレアを見守ってゆくのはハラハラドキドキ。マエストロ・ガーナーが全然一筋縄でいかないお師匠様なので、余計にどきどきさせられました。
個人的にアルベルトが指揮者をつとめる第一楽団のメンバーのノリが楽しくてつぼにはまりました。
ミレアとアルベルトをちょっとからかいながらも見守っていてくれて二人の危機には協力して頑張ってくれる皆の絆、いい!
(そして仲間の絆をミレアにも築き上げてほしいと差し入れの手作りサンドイッチを仲間と分けるよう指示するアルベルトの親心……!笑)
各音楽の描写がとても丁寧で読み応えがあり満足感いっぱいです。

ミレアの友人レベッカも冷静で的確な突っ込みが頼りになるとてもいいこで、彼女にもほんのりロマンスエピソードがありこちらもまた良かった。
アルベルトの悪友のフェリクス様、ミレア視点でながめている分には優しく頼もしいコンサートマスターの青年なのですが、なんか彼にも裏の顔がありそうですね。それを承知の上で彼を慕い追いかけてきたレベッカとのふたりの仲がまた非常に気になる。

ミレアは天真爛漫、気の強いじゃじゃ馬の女の子だけれど、根は優しく家族思いのとてもいいこで、彼女が世間の冷たい目に折れそうになっている姿は胸がぎゅっと締め付けられました。
シュルツ伯爵夫妻のミレアへの愛情は泣けました。パパとママの力関係がいつしか逆転している感じだったのがおかしかった。
ミレアの本当の親の方も、とことんろくでなしかと思っていたら、最後にそうくるかー!!
アルベルトの方のお父上も、本当に偉そうで権威主義者で人の話を聞かない嫌なおじさまかと思えば読んでいくごとに少しずつ別の面も見えてきて、えらっそうなところがアルベルトそっくりじゃないですか!と最終的には笑ってミレアの言葉に納得できるような。うん、良かったです。確かにアルベルトの母上のエピソードを聞けば息子の婚約に複雑な態度になるのも分かる。

ミレアがアルベルトにしごかれつつラスト辺りのエピソードで披露した演奏がとてもとても素敵で、二人の挿絵も相まってとても良かったです。アルベルトのひねくれてない愛の言葉に感動……!
音楽と恋心の表現が調和しているのが素晴らしいです。

エピローグまでいっても相変わらず素直じゃなくてえらっそうなのに不意打ちで甘すぎるアルベルトが、なんかもうクセになりますね(笑)。今からこんなのではミレアは苦労しそうです。

音楽と王道パターン少女小説がとても素敵に組み合わされていて雰囲気も良く出ていて、好きな方にはたまらないと思います。おススメ!!
ミレアとアルベルトの物語としてはきれいにまとまっていますが、続編があるのならぜひ読んでみたいです。
同世界で別の人主役の物語でもいいなあ。
というか、フェリクス様とレベッカの物語も読みたいです(笑)。


昨日記事に拍手くださった方、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ビーンズ文庫

タグ: 永瀬さらさ 

『一華後宮料理帖 第二品』三川 みり 




明来告知——新皇帝の傍らに立つ妃を選び取ることが、妃の序列を決定づける役割を持つ儀式。
和国出身の料理好きな皇女・理美と食学博士の朱西は儀式前の妃達の心を落ち着かせるよう、後宮で料理番の役割を命じられる。
それぞれ個性的で訳ありな四夫人を相手に奔走する理美。
彼女を支え導く朱西。五龍に会うという名目で理美の元を訪れる皇帝・祥飛。
そんな折、儀式で使用される大切な宝珠が、何者かによって盗まれてしまい——。


三川みりさんの中華風お料理もの少女小説、第二弾。
古代日本や中国っぽい設定がほどよくミックスされた世界観が一巻目の時点でたいへん好みだなあと思っていましたが、今回の二巻目では、各種設定が上手い具合に生かされ物語がぐっと面白くなってきていて、とても良かった。
四夫人たちの登場で女の子キャラが増えて、単純にそれだけでも華やいできて、いいですねいいですね。
後宮ものらしく、ロマンス色も増してきてときめきました。とはいえまだほんのり色づく程度なのですが。
食に関する仕事が好きで誇りを持っていてひたむきに頑張る理美と、優しく見守る朱西のキャラクターも、安定していてとても良い。そして案外いい人で朴念仁ながらに恋している皇帝陛下の株がいつの間にかけっこう上がっている……!

読み終えた後、「ああ、いい少女小説読んだなあ」と、心からにっこり笑顔になれるような。今回はそういうお話でした。

四夫人たちが、読んでいくごとに四人とも事情持ちで、自分の真の望みを見失ったままそれでも妃として生きるしかないと思うままに四人いがみあっていたのを、理美が体当たりでぶつかっていってそれぞれの心をほぐしていった流れが、とても良かった。
四夫人たち一人ひとりの背景描写がていねいで、なんか四人とも嫌えないし辛い気持ちに共感して切なくなるんですよね……。

正直なところ、理美のお夜食がどんなに美味しく美容に良いとはいえ、後宮の女性関係を改善するのはちょっと難しいんじゃ……と思いつつ読んでいたのですが、いい感じに裏切られました。理美すごいや。気持ちのいい直球ターンでした。
決め手となったお菓子がとても美しく描写が魅力的で、読んでいるだけで心が清らかに高められてゆくような心地がしました。
理美のピンチに、四夫人たちがばらばらな個性と特技を生かし合い、四人一致団結してくれるとは。
なんかすごく痛快で、読んでいて拍手喝采でした。
こんな四人それぞれの資質を無理なくすんなり引き出した理美に拍手。

理美を見守り共に仕事に励む朱西が、理美に惹かれていく自身の心を自覚し、それでも決して結ばれないと自ら戒めている姿が、ときめきつつも切なかった。
理美の方も無自覚ながらに朱西の方に心がいっているようですし、お互い穏やかでのんびりした気性も合っているし、お似合いだと思うのですが。理美の身分的にはなあ……許されないんですよねえ。
困ったことに(?)、やはり無自覚に理美に惹かれている祥飛も理美の影響でどんどんいい感じに成長してきていて、こちらの株もどんどん上がってきてるんですよ!
暴君的に恐れられているのに、理美が(悪気なく)失礼な発言をしまくっても不問に処す姿は健気でさえある。
となると周りは当然、理美と祥飛をくっつけようとするし。
うーん、この三角関係がどんな風に収束していくのか、真剣に読めないです。
今回のラスト近くで、「四夫人たち」の他に「皇后」が存在していたのだと、はっきり明記されちゃったし。
うーんうーん……私は優しく頼もしい朱西派なのですが、皇帝陛下も好きなので、困っちゃいますねえ(笑)。

あとなにげに今回事務処理に色々奔走していた伯礼の株も、かなり上がりました。お疲れ様でした!
一巻目では得体のしれないお人でしたが、今回においては、理美にとって数少ない信頼できる味方になっていてくれて、心強かった。
徳妃様との過去はまた切なくて大人の身勝手さに憤りを覚えてしまいました。

凪かすみさんの甘く可愛らしいイラストがよく合っていて楽しめました。
四夫人それぞれの魅力が上手くあらわされていて、四人そろったイラストはとっても華やかです。

これは続きがますます楽しみなお話です。


昨日記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ビーンズ文庫

タグ: 三川みり 

『一華後宮料理帖』三川 みり 



和国の皇女で神に捧げる食事を作る「美味宮(うましのみや)」という職についていた理美は、大帝国崑国への貢物として後宮入りすることに。
慣れない場所で大切な故郷の味「香漬(かおりづけ)」の壺を怪しまれ奪われそうになっていたところ、食学博士の朱西に助けられる。
彼の優しさに触れた理美は再会を胸に、余所者に冷たい後宮内でなんとか暮らしていくのだが、ある日突然皇帝不敬罪で捕らえられてしまい——。

三川みりさんのビーンズ文庫新作。
読んでから間があいてしまいましたが、先日暑さ負けで疲れた夕食時、母のお味噌汁のだしがしみじみ染み渡る美味しさで。そしてこの小説のことがとっさに思い浮かんで、やっぱり感想書いときたい!とやってきました次第です。

古代日本っぽい国で、料理を司る神職についていた皇女がヒロイン。彼女が貢物として、古代中国っぽい大国の後宮入りをするところから、物語ははじまります。
一風変わった中華風ファンタジー少女小説。読み応えもあってたいへん面白かったです!
自らの仕事に誇りと覚悟を持ち、すべてを費やして頑張りぬく職人肌の女の子、やっぱり格好良く素敵です。
ふわふわした甘くきれいな世界だけではなく、底の方の泥臭い苦労もきっちり描かれているところが、三川さんらしい。
この作品世界も古代もの好きにはたまらない感じです。特に斎宮様とか出てくると、地元民的にはいっそう肩入れしてしまいます。

最初から、香漬の壺を持って後宮入り。
ビジュアル的に変わっています。凪かすみさんの可愛らしく美しい挿絵で違和感がないのがすごい。
周りは友好的とはいいがたい感じでしたが、基本マイペースで楽天家な理美は、彼女なりに順応し可愛いペットと一緒に暮らしはじめ、重たくなりすぎずにいいですね。
とはいえ、最初食べものの味が分からなくなっているのが、平気な顔をしていても理美の中ではしんどかったのねえ、と胸に来るものがありましたが。
そんな彼女も食に関わることには真摯で、まさに全身全霊命をかけて打ち込んでいて、すべてひっくるめてとても好ましいヒロインでした。
食を司る神職、というのが、巫女みたいになんとなく神秘的な雰囲気をまとわせていて、面白い。

そんな理美にほぼ唯一、最初から親身に対応してくれて、理美のピンチにも陰ひなたに味方をしてくれる朱西、彼の存在はとても心強くて良かったです。三川さんの少女小説にはなかなか珍しいタイプ(?)の正統派ヒーロー。
ともに食に情熱を捧げるふたりの会話は癒される~。理美の慣れぬ言葉遣いでときどきおかしな方向にいってしまうのはご愛敬。
皇帝陛下はじめ格好よく優秀なのだけど非常に殺伐とした男性陣の中では、朱西の存在は癒しでした。
癒しといえば珠ちゃんも。

こじれにこじれていた兄弟の関係を、窮地に追いやられていた理美が、こういうかたちで修復にまで持ってゆくとは、思っていなくて。ぎりぎりの状況下での、彼女の覚悟と努力が素晴らしい。
皇帝陛下もお兄さんも、かつての心を喪ってはいなくて、本当に良かった。
それでいて理美の目的は「おいしい」と、言ってほしかった、ただそれだけというのが、シンプルでとても強い想いで、挿絵の彼女の笑顔もあいまって、それまでの緊迫感から、ほうっと顔がほころぶ良い場面だったのでした。

堅魚(かつおぶし?)と海布(こんぶ?)が食物には見えない……というのは、確かに、料理に使う文化が全くないひとにとっては、その通りだよなあ、と。
(だからといってあんな物騒な展開になるのはあれですが)
和国でのやり方では一度は上手くいかなくて、もう一工夫……という理美の試行錯誤の過程も、読んでいて好きでした。
(しかし、今回料理としていちばんまずかったのは、朱西が皇帝陛下に作っている珍味系料理の数々なのではという気が……ちょっとあれは陛下が気の毒なような……。)

今後の展開的には、理美の恋のお相手は、朱西なのかしら、やっぱり。
けれども皇帝陛下も、あれでなかなか心が広いし将来名君になりそうな気配なので、三角関係?そもそも理美は後宮の女なわけですしね……。うーん、どうなるんでしょう。
今回は後宮の女同士のあれこれはメインではなかったけれど、理美の扱いがこういうことになったら、また色々ありそうじゃないですか。大丈夫かなあ。
あと直接の登場はなかったものの、理美の姉斎宮がかなりの存在感を放っていて、理美が語る彼女と姉との関係がとても好きで、ここのあたりももうちょっと読んでみたい。
そして珠ちゃんの今後はいったい。
これは続き、出ますよね?

三川みりさんらしい、がんばるヒロインの姿に読んでいる私の背筋もしゃんとして、がんばらないとね!と自然に思わせてくれる、よい少女小説でした。

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『身代わり伯爵の結婚行進曲Ⅵ 光と歩む終幕 下』清家 未森 




婚礼直前にさらわれたミレーユを追い、味方の協力の下、立場を押して極秘裏に彼女を救いにきたリヒャルト。
海でふたりはようやく再会するも、リヒャルトは海に消えて……??
下町のパン屋の娘とその兄の親友の騎士として出会ったふたりが恋に落ちて、大公とその妃として幸せになるまでの、波瀾万丈の物語、ついに完結。

『身代わり伯爵』シリーズ、完結巻でした。
今となっては、このブログを書きはじめた初期の時代からずっと新刊を追って読み続けていた、ほぼ唯一の少女小説シリーズでした。
ミレーユとリヒャルトが大好きで、周りのみんなも大好きで、毎回新刊が楽しみで楽しみで仕方なかった。
いつか終わりがくるのはもちろんわかってはいたけれど、叶うことなら、できる限り長く、シリーズを追いかけて楽しんでいたい。何年もそう思い続けてきました。
『身代わり伯爵の誓約』以降、ふたりが一応くっついてからもさらにシリーズの世界は広がっていき、伏線がひとつ回収されまたあたらしく張られを繰り返し、長く楽しめるようになって、どれだけ私が嬉しかったか。

気づけば大長編シリーズとなっていた物語にふさわしい、堂々とした大団円でした。
確かな「光」を感じられる「終幕」で、とても良かった。
胸がいっぱいで、感想など上手くまとめられそうにありません。こみあげてくる想いのままに、書き綴るのみ。
あらかじめ、ご了承を。

と言うわけで、以下はネタばれあり感想を、追記にたたみます!


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『箱入り王女の災難 魔術と騎士と黒猫の序曲』三川 みり 




「エーデルクライン王国の宝石」と称される王女フレデリカは、王の一人娘で唯一の王位継承者・天使のような美少女。
しかしフレデリカは十六歳のある日、落馬事故にあう。不幸にも命を落としてしまう——。
そのはずだったのだが、気づいたときフレデリカは、召使の少女・グレーテルの体に乗り移っていた。
王女の死で混乱と悲しみに包まれる中で、フレデリカは「地獄の番犬」と名高い騎士イザークの助けを借りて元の体に戻ろうとするのだが……。

三川みりさん&あきさんコンビの待望の新作少女小説!
美しく善良な王女さまに侍女の女の子との入れ替わり……あらすじに私好みの要素が色々入っていてこれはおもしろそう!しかもあきさんの描かれる美少女!絶対拝まねば!と読む前からとても楽しみにしていました。

素直で気弱で芯はつよい(ただ趣味はちょっと変)王女様が、召使の少女の体に入り込んでしまい……災難や周囲の癖だらけの人々に振り回されながら頑張る物語。
「だいたい死んでる王女の冒険」……あとがきにあったタイトル案、た、確かに(笑)。
人の生死、負の感情にがっつり関わるシリアス寄りのお話だったのですが、『シュガーアップル』に比べてなんだろう、わいわいにぎやかで軽く読めるお話、という感じがしました。ドタバタ劇といいますか。

一度読み終えたばかりのときよりも、読み終えてしばらくしてから心にじわじわ響いてくる、私にとってはそんなお話でした。
三川みりさん作品のひたむきに頑張る女の子は読んでいて本当に私の背筋まで伸びる思いです。
最近私何だかだらけてるなー。フレデリカのひたむきさに今一度触れてしゃきっとしないとなー。
なんて自分を叱咤するために、ちょっと時間があいてしまいましたが感想をこうして書いております。

ヒロインのフレデリカの身に降りかかった災難が本当に半端なく……それまでの豪奢だけど寂しい生活ともあいまって、とても不憫な印象を持つ娘でした。
人に言われるまま完璧な王女様を演じ続けてきたフレデリカ、足りない部分は確かにあるけど、そんなのフレデリカのせいじゃない!とか私は思いながら読んでましたが。16歳のこんな育てられ方をした少女にそれ以上求めるのは酷でしょう。
彼女がこんな状態になって、無力さを痛感しながらも、愚直なまでに頑張り善良さを貫き通す姿に、だんだん真の味方がついてゆく。という王道な過程が良かったです。

ヒーローのイザークさんは怖い印象ばりばりでしたが、このお話の中ではむしろ一番の常識人でそっけないけど優しく頼れるお兄さんだった気がします。
最初王族貴族に悪意を抱いていたからよけいに印象が怖かったんだな……。
天真爛漫王子様に見えて実は……なユリウスも相当でしたが、このお話の中で一番食えないキャラは、一番無力な存在であるはずの台所番侍女の娘・グレーテルでした。
グレーテルはいったいどこまで知りえていてどこまで話の流れの糸をあやつっているんだろう……最後まで読んでちょっとぞくりとしました。底知れない闇をまといつかせているからこそ、最後の黒猫の語りがあんなに厳しくも心にあたたかく響いたのかもしれません。

イザークが取りあえず彼とグレーテルの故郷の村にフレデリカ(体はグレーテル)を連れ帰って、この村の人々がちょっと挙動不審なグレーテルに接するときのあたたかな愛情が、読んでいてなんだかとても素敵で、心和みました。
グレーテルの両親の娘への明るくおおらかな愛情が好きです。こんな家庭で育ち今もそんな両親が健在のグレーテルの過去にいったい何があったんだ……。
パン屋の主人とフレデリカとの会話場面も好きでした。鶏と少年のやりとりも。
グレーテルの小悪魔っぷりも輝いてました。ちょっとやりすぎじゃないかとも思いましたが、最後まで読むと、彼女もちゃんと考えてたんだな。

フレデリカとイザークとユリウスのなんだかとてもちぐはぐな三人が、それでもだんだん協力し合う姿勢がそろってきて、フレデリカとグレーテルの入れ違い修正のため無茶をごり押しして頑張っている後半展開も、良かったです。
フレデリカとイザークがようやく得た信頼のきずなが尊くじんわりと……。
ユリウスが明後日の方向に飛んでってしまわないかはらはらし通しでした(笑)。
ようやく元の姿に、と言う場面の、フレデリカの美しいドレス姿とぽかんとした表情のギャップがなんだかすてき(笑)。

あと私が好きだったのは、生き返ったフレデリカと両親の対面場面。
ようやく目に見える形で娘への愛情をしめしてくれた王妃様にちょっと私も泣きそうになりました。
ふだんからもうちょっと分かりやすく娘をかまってやっていればよかったのに……とも思いましたが(苦笑)。

グレーテルには色々思うところありましたが、確かに馬の事故の際に体をはって止めようとしてくれた彼女の行動にこそ、真実があるのでしょう。
グレーテルとイザークの過去に何があったのかも気になる。好きになってはいけない人ってどういうことだろう。
フレデリカとイザークのまだ恋と呼ぶには早すぎるあたたかなきずなも見守っていきたいけれど、グレーテルのことも、気になってしまいます。
とか気にしつつ、グレーテル本人は自分のことを心配されても鼻で笑ってそうな感じもしますが。

あきさんの挿絵がやはり期待以上の麗しさ。
正直ビジュアル的には素朴な黒髪美少女のグレーテルの方が好みな私(笑)。でも(本来の)フレデリカのゆるゆるロングヘアと華のある美少女っぷりもとても素敵!最後の黒猫さんとの会話シーンのフレデリカが特に好きです。ドレスもすてき。
イザークもユリウスもそれぞれの怖い魅力たっぷりの男前で良いですねえ。
ほんの少しあった甘い感じの場面の挿絵にはどきどきしました。

お話はまだ序章部分、これからが本番……という感じがするので、続きを楽しみに待ちたいと思います。

全然関係のないつぶやき
フレデリカ・アップフェルバウムに、ユリウス・グロスハイム、名前の響きでどうも、ユーハイムのバウムクーヘンを思い浮かべてしまい、お菓子が食べたくなって仕方なかったです……。グレーテルもあのお菓子の家のヘンゼルとグレーテルですし。笑。


ここのところそれぞれの記事に拍手くださっていた方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ビーンズ文庫

タグ: 三川みり