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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『フライディと私』シリーズ  

先週あたりから私がずうっと読んできたオンライン小説の感想メモ。

フライディと私
ページのPさん作。
サイト→P Is for Page 

無人島に漂着した十六歳の少女の「私」が出会った「フライディ」と名乗る男性、素性を明かさぬままのサバイバル生活。
その後日談から人間関係が少しずつ広がってゆき紡がれる、架空の国を舞台としたラブコメ連作集。
一応まだ未完なのかな。
基本的に主役が入れ替わってゆく連作短編集で、各お話は数ページぐらいにまとまっていて、少しずつ読んでいくにはぴったり。
それでも途中からもう止まらなくて結局最後までノンストップで読んでいたんですけどね(笑)。

どこか古き良き英米少女小説を彷彿とさせる雰囲気のお話。
『あしながおじさん』とか、赤毛のアンシリーズの『虹の谷のアン』『アンの娘リラ』当たりの雰囲気に似ている。
そして、読んでいてこんなに素直に明るく楽しい気持ちになれるお話って、そうそうないと思います。しみじみとした幸福感でいっぱいに満たされる。
年の差もの&身分差もの大好きな私には、いっそうたまらない。

目次の名前を見ていてはじめは主人公がくるくるいれかわっていくお話かと思っていたのですが、メインカップルは最初から最後まで同じ二人。ロビンとフライディ。
登場人物が増えても最初のこのカップルが断然大好きな私だったので、嬉しかったです。
恋人であると同時に「バディ」(相棒)でもある二人のやり取りの、可愛らしく微笑ましく、そして二人の信頼関係の素敵なこと!
なかでもちょっと生意気でプライドが高くて素直で優しくて、年下のヒロインちゃんの魅力に、読んでいる私もとりつかれてしまった。
(実家の職業がパン屋と言うのも個人的ポイントでした)
いつもふざけたムードメーカーで頭も良くハンサムで女性に人気のあるフライディが彼女にベタ惚れめろめろなのも、すごくよくわかる。
フライディ視点の最初のお話のラストで「明日はテニスの試合だから」とあっさり帰ってしまった彼女に、彼が盛大に肩透かしをくらっている姿がなんだかおかしくて笑ってしまった。
フライディの性格が全然違う四兄弟のそれぞれの恋模様もそれぞれお気に入りです。
心に決めた女性にひたすら一途に愛を捧げ続け待ち続ける姿は四人とも共通していて、確かに兄弟なんだな~と感心したり(笑)。

お隣の国に留学し大学生となった彼女のキャンパスライフも、素敵なお友達に恵まれてとても楽しそうでお気に入り。
ローズもフェイスもフィレンザも皆いい子だな~!
恋人は大好きなものの学生生活は静かに過ごしたいヒロインと、隙あらばいちゃいちゃしたい彼との温度差がまたおかしみあります。
少しずつ大人になってゆく彼女との関係の進展もていねいに描かれていて読んでいてとってもときめきました。

このお話は(主に名前)どこまでネタばれ感想を書いていいものか悩む……。あまり多くは語りませんが、古き良き王道少女小説がお好きな方には、一押しです♪
格好いい王子様やうるわしのお姫様も盛りだくさんです。皆それぞれ曲者かもしれませんが(笑)。

そういえば瞳や髪の色の描写がまるでないのも気づいてみれば面白かったです。
サイトの方のアンケートの回答も楽しく読ませていただきました。

ちなみにこのお話を読みはじめたきっかけは、Twitterのタイムラインで見かけて読んでみた短編『ヴァイオラ』。
ヴァイオラとカンファーの信頼に満ちた関係とやり取りも良いし、彼らの書物整理&修理という仕事ぶりがまたていねいに描かれていてそういうのが好きな私にはまたたまらなかったです。
弟君も今回の件は反省しつつ幸せになってほしいですね。

ロビンの実家のパンが美味しそうで食べてみたい。
「ウーマン・フライディ」作のベルベットケーキも!

カテゴリ: オンライン小説

タグ: ページのP 

最近のオンライン小説読みの記録(2017年冬~早春編) 

この冬くらいからのオンライン小説読了簡易感想メモです。

うちには騎士がおりまして』皐月さん
塾の事務員として働く優には、とある秘密がある。
毎週金曜日の夜。優の部屋にやってくるのは、異世界の騎士。名をシズレー。
彼とたわいない話をする仲になった優。そんなある日、彼が遠征に行くのだと言い出し——。

連載中。
一風変わった異世界トリップもの。職を持つ大人同士の地に足の着いたロマンスが好感度高い。
塾の事務員として理不尽なことにも耐えて頑張って働く優さんに必死にエールを送りつつ、想い合っているのにすれ違う恋人たちの姿にやきもきしつつ、異世界で優さんが事務員スキルを武器に頑張っている姿に小気味よい気分になりつつ(笑)。
殿下に振り回されつつも向こう側の世界で正統に評価され生き生きと頑張っている優さんの姿が好きだな。
とことんすれ違っている優さんとシズレーさんが不憫すぎるので、なんとか色々上手くいきますように!!更新のたびにお祈りしています(笑)。はやくふたりでたわいない楽しい語りあいのひとときを取り戻してほしいです。あわよくばその次のステージも期待したい。殿下のロマンス話(?)も気になります。

碧の独善』 花売りの少年

政略結婚で他国に婿入りした王子と、彼に仕える女騎士をめぐる、分かちがたい絆と罪と愛の物語。完結済。
シリアスモードな異世界ロマンスものファンタジー。
文章や世界観、各固有名詞の硬質で透明感のある美しさ、人の生きざまの激しさ、愛する心の強さ、狂おしさ、色々なものがせめぎ合っていて、サディアスの側に凛とたたずむアンジェリカが不憫で、とにかく幸せに、幸せになってほしい!!と、一気に読んでしまいました。
なかなかえぐい展開にもなりましたが、その中でも特に女性たちの強さが光っていたように思います。
アンジェリカがいちばん好きですが、クラリッサもすごい辛い思いして頑張って成長して大好きでしたし、複雑な立場で誇りかに戦うミシェーラも良かったですし、ニーナとノーマもだいすきです!
こちらの作品にとにかく惚れ込んでしまって冊子版も購入させていただきました。表紙の青が本当に美しくて感激です。
サイト様の別作品もまた読ませていただきたいです。

運命は時が連れてくる』 Tiny garden

失恋したばかりの女性が、アパートの隣に引っ越してきた美容師の男性とふとしたきっかけで知り合って……からはじまる現代ものロマンス。完結済。
お馴染みTiny garden様の新作シリーズ。完結済。
こちらのサイト様らしい、穏やかで優しくて読んでいて幸せになれるラブロマンスでした。
ベタといえばベタなお話ではありますが、そこがいいのです。
クロノくんの甘い微笑みと優しさにすっかりほだされてしまいました……。美容師さんという職業も似合っている。
都さんにクロノくん、名前の響きがきれいで素敵だなと思いました。プラネタリウムや星のエピソードとも上手く絡められていて。
癒されたいときに読むにはとてもいいです。

最近のTiny garden様のお話の中では、『ナインカウント』のバレンタイン&ホワイトデー番外編が、ときめき度満載で読んでいて幸せでとても良かったです……!!豆腐二十丁分の愛ですね!

赤い糸、白い羽』はなさん

ほんのちっぽけな特別な力を持つ「私」が、ある日地下鉄の車内で出会ったイケメンさんと、おかしな関わりを持つようになるお話。完結済。
はなさんの作品、やっぱりいいなあ(ほわわん)。
お人好しで不器用で世渡り下手な女性が報われるお話が、私は大好物です。
こちらの作者さんのこの作風のお話は、川原泉さん漫画の世界と似た空気を感じて、特に好き。
ワコさんと加納さんの飲物のチョイスのエピソードが和みます。
後日談のお友達視点のエピソードも、ほっこり心温まりました。おしあわせに!

月の花』はなさん

感情表現が苦手で口下手な高校二年生の鏡花と、陽気で顔もアイドル並に可愛くて、自分の気持ちと欲求にも素直な一つ年下の拓海、そんな二人の日常。完結済。
一話ごとに、主役二人、その家族や友人達、視点がひとりずつ移り変わっていくスタイルで描かれる、高校生カップルのロマンス。
幼馴染もの、年の差ロマンス、不器用で無愛想だけど心根の優しいお姉さんヒロイン、お姉ちゃん大好きでその彼氏を敵視している妹、ヒロインにべた惚れなヒーロー、個性的で気のいい友人達……。諸々、私好みの要素てんこ盛りの、素晴らしい作品でした。
月の花、という美しいタイトルの通り、わいわいにぎやかで楽し気な日常の中に、ひどく美しくて切ない純度の高いラブロマンスが描かれていて。読んでいて心打たれました。
鏡花ちゃんみたいなヒロインはやっぱりというべきか私の好みストライクで、彼女が感情表現下手なりに、拓海くんにちゃんと恋していて想いをあらわしているところが、もう本当に可愛らしくって!じたばたします。
拓海君のどこまでもあけっぴろげで積極的な愛情表現も楽しい。周囲に冷たく突っ込まれ続けてもめげないぶれない拓海君が大好き(笑)。
拓海君の友人ふたりがなんかいい味出していて好きでした。和葉ちゃんとか雪菜ちゃんとか鏡花ちゃんラブな女の子達も大好き。雪菜ちゃんの彼氏君もちゃんと報われるといいな……。

あとは、『京都寺町三条のホームズ』シリーズのエブリスタ版を読んでいたり。『no-seen flower』様の小話を読んでいたり。
気になっているオンライン小説、他にもかなりあるので、ぼちぼち読んでいきたいところです。

カテゴリ: オンライン小説

最近のオンライン小説読みの記録(2016年夏編) 

最近PCのネット接続が不安定で、書く気はあってもなかなかブログを更新できずにもどかしい……。
Twitterとは違って、ブログはやっぱりスマートフォンでは書きづらいのです。

さてさて、最近読んでいたオンライン小説の感想メモ的記事です。

オランダ坂の洋館カフェ』江本マシメサさん
長崎はオランダ坂の小道を入り込んだ先にある洋館の喫茶店、cafe「小夜時雨」。
雨の降る夜、偶然迷い込んだ女子大生・日高乙女さんは、変わり者のオーナーと出会う。
完結済。

Twitterのフォロワーさんおススメ作品でした。
雨の日しか開店しない知る人ぞ知るカフェのお話。「小夜時雨」という名前の響きから好みです。
江本マシメサさんのお話は現代ものでもやっぱり面白い!
長崎のお菓子が読んでいて本当に美味しそうで街の描写もほどよく、長崎に旅行に行きたくなりました。
シースケーキというお菓子が特に美味しそう。かんざらしもパンドウスもみんなみんなおいしそうです。
特殊な営業形態のカフェで、マイペースな日高さんと無愛想気味オーナーの、ちょっとぎこちないけどほのぼの仲の良い雰囲気が和みます~。
ロマンスの加減も私好み。薄々オーナーの気持ちが透けて見えてくるのにときめきました。
栄養士を目指す日高さんの大学生活も読んでいて楽しそう。頼れる諒子ちゃん好きだなあ。
最後の最後ぐらいで(お菓子ではない)糖分も大いに増量されて、幸せな気分にひたれました。

江本マシメサさんといえば、私の大好きな『悪辣執事のなげやり人生』が書籍化されるそうで、今からすごく楽しみなのです~。


テューダーの薔薇My Library  椋木ゆいさん
薔薇戦争の時代のイギリス。
ヨーク家の娘エリザベスは、内乱に揺れるイングランドで王女として成長した。
父王の死後、叔父リチャードがエリザベスの弟を廃して王位についてしまう。
宮廷に招かれたエリザベスは、幽閉されている弟たちを救おうとするが……。
完結済。

こちらの作品、ずっと気になってて読みたかったのです。
ちょうど世界史ものを読みたい!波がやってきて、読みはじめてみました。
がっつり読み応えがある歴史もの小説で、一週間くらいかけて少しずつ読んでゆきました。
ヒロインのエリザベスの落ち着いた静かな語り口で進む、王宮の陰謀劇。シリアスモード。
まさに薔薇のようなお姫さま・才色兼備のエリザベスが弟たちのため、母や妹のため、亡き父のため、叔父夫婦のため、自らにできることを常に考え王宮で必死に頑張っている姿が印象的でした。なかなかうまく報われないのがせつない。
はじめは好印象なかったリチャードが、エリザベス視点でどんどん格好良く思えてきて、ちょっとドキドキしちゃいました。
アン王妃とエリザベスとセシリーと、女同士の語らいが好きだったかな。登場人物の心理描写が細やかで些細な行き違いや家族だからこその複雑な心理なども丁寧に書かれていてすごいです。
こんな何でもできるお姉さまを持ったセシリーはちょっと辛いかなとか私は思ったり。
私も一応歴史の授業で習った覚えのある薔薇戦争の時代の一区切りの場面も。
なんというか、エリザベスのその後の人生が、幸せなものになってほしいなあ。と願うばかり。
登場人物の心が移ろいまた荒波にもまれ強く成熟してゆく様がこれだけ丹念に書かれているので、なんか、この夫婦も年月を経れば、いずれは。と信じたいです。

薔薇戦争といえば私の中では、やまざき貴子さんの『マリー・ブランシュに伝えて』http://amzn.to/2cJIN9H
このお話を読んだ後に再読したら、世界が繋がった!わあ、感動!!
読むたびにぽろぽろ涙があふれるまんがです。マリーもナタリーもギルバートもジェロームもみんな好きなんですよー!(叫ぶ)

あとおなじみ『Tiny garden』様の10周年リクエスト企画の各お話も、少しずつ楽しみに読ませていただいていました。
同窓会のお話、ランチからディナーまで~&ビューティーアンドビーストのコラボ小説、みんな良かったです!
更新を見つけた朝は幸せ気分。
こちらのサイト様のお話が何年たっても大好きだなあと改めて思いました。


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: オンライン小説

『女王の化粧師』BARROCO 

この二週間くらい、どっぷりひたっていたオンライン小説の感想を書きにやってまいりました。

女王の化粧師』(BARROCO様)

数人の女王候補を立てて、誰がもっとも女王にふさわしいか選出するのが、小国デルリゲイリアのならわし。
選出に向けて貴族が駆け引きに躍起になる中、花街でひっそりと生きてきたダイの元に、一人の青年が訪れる。
それは女王候補の一人である少女・マリアージュの「化粧師」として、ダイを雇い入れたい、という前代未聞の申し出で。
玉座からもっとも遠い女王候補者であった少女と、彼女を支える化粧師の物語。

『時々山椒時々砂糖』『裏切りの帝国』等、数々の名作をこれまで楽しませていただいた千花鶏さまの、長編異世界ファンタジー小説です。
現在連載中。

『裏切りの帝国』と世界を同じくする物語で、おススメもいただいていて、ずうっと読みたい読みたい!と思っていた作品でした。
今まで読んでいなかったのは、連載中というのに多少ためらいがあったのと、サイト様にいくたびに、『裏切りの帝国』『時々山椒~』『さやけく~』等々、大好きな作品の再読をついうっかりはじめてのめりこんでしまい、なかなか新しい物語にまでたどりつけなかった、という、そんな理由が大きかった(笑)。
最近小説家になろうさんの方で転載をはじめられたのを機に、思い切って、読みはじめてみました!

やはりというべきかなんといいますか、めちゃくちゃ面白い~!!!
強くて格好良くて賢くて美人な女の人がいっぱい出てくるお話なんて好きになるにきまっているじゃありませんか。
タイトルが『女王』という時点で気づくべきでした。ああ、もっと早くに読みはじめていればよかった。

特に序幕の中盤、薄々そうじゃないかと思ってはいたダイの「正体」が明らかになるあたりから、想像以上に物語の展開が私好みになってきまして。
つくづく私、ここのサイト様の小説のロマンス描写の、色香の漂わせ方が好きすぎる……。純度の高いお砂糖をまぶしつけたかのような。がつんとくる甘さです。
(もっともこの時点では、あくまで恋愛未満の段階だったのですが。だからこその初々しさこそばゆさもまたたまらない……美味しい)
そして序幕の最後の断絶にやられました。なんで、なんでそうなるの!!(呆然)
続く一幕、二幕も、面白さは全く損なわれず、途中で読むのをやめることももはやできず、一気に最終更新分まで突っ走ってしまいました。
一週間ずっと寝不足気味でしたが後悔はしていません。

以下、微妙にネタバレ混じっているのでご注意を。
追記にたたんでおくことにします。

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カテゴリ: オンライン小説

タグ: BARROCO 

最近のオンライン小説読みの記録(2016年冬~春編) 

新年からまたちょこちょこと読んできたオンライン小説の感想メモ記事になります。

李枝に唄うた天虎の噺』梶つかささん
八華連邦の一、梅の紋の令嬢彩香と、蒐集癖がある彼女の父が屋敷に連れてきた「天虎」の青年ラウの出会いからはじまる、アジアンファンタジー。完結済。
作者さんの書かれる文章の雰囲気、言葉の使われ方が流れるように美しくて私はとても好きです。特に自然界のものの描写が好き。
寂しい箱入りお嬢様だった彩香が、ラウとの出会いで世界をまるで違う風に見ていき屋敷の外へ飛び出してゆく様が、生き生きと良かったです。
とげとげしい従者だった桐、命令とはいえやってたことはひどかったけれど、最後まで嫌いにはなれないキャラでした。
面倒見のいいしっかり者の娘さん・ユフェンも大好き。自分で自分の居場所を少しずつ作っていった彩香が良かったです。彼女がきちんと里に受け入れられて、良かった。
梶つかささん、短編もいくつか読ませていただきました。『陽黎宮の書庫係』がとても私好み!

マカロニ屋の恋』SPICE5さん
マカロニ屋の青年の元に訪れる不思議な娘の正体と、ふたりの不器用な恋の物語。完結済。
どこかヨーロッパの民話のような、優しくてどこか懐かしくもの悲しい恋のお話。
マカロニ食べたくなってきました。バタあえマカロニ!娘さんを思って買ってきたクロワッサンにマフィン!食事の時間がとても魅力的でした。
不器用な青年と娘さんの恋は、やはりというかせつないものでしたが、読み終えた心地はふわりと優しくて素敵でした。

笛愛づる娘と音霊の神霊』道草家守さん
笛を愛する村娘・笹と、彼女が森で出会った神霊の不思議な少年の出会いからはじまる物語。完結済。
日本昔ばなしみたいな懐かしい雰囲気のただよう物語。
笛がただひたすらに好きで笛を作り吹いていれば幸せな笹、健気で優しくていじましくてとても好きなヒロイン。
そんな唯一の笛をうとんじられお嫁に出され理不尽な扱いをうける笹が、不憫で仕方なかった。
彼女の心のよすがだったのが、幼い日に出会った不思議な彼。
笹と詩野が長い間会えなくても、お互いをひたすら思い慕い続けた一途さ、人ならざるものをも恋に落とさせた笹の心根の美しさにうたれました。
笹と弟妹との後日談もあったかくて優しくてほろりと。
豆腐屋「紅葉」繁盛記』作者さんの和風あやかしファンタジー短編。お豆腐食べたい!豆腐どうなっつ!味噌田楽!豆腐屋さんの商売上手でちょっとチャラい雰囲気の若旦那と、ちんまり生真面目な尾花ちゃんのやりとりが可愛くてほのぼの~。ちょっと嫌な奴も出てきましたが正義は勝つ、すかっとする読後感。

クラリッサ・オルティスのささやかな願い』ナツさん
病気の父と妹ふたりを養うすべがなく困り果てていた、貧乏貴族令嬢・クラリッサ。彼女の前に現れたのは、成金貿易商の青年で——。
完結済。
生真面目で面倒見がよく苦労性の貴族の娘・クラリッサと、礼儀はなってないものの人は良い青年リュシアンが、不器用にぎこちなく距離を縮めていく様がとても可愛らしくて心癒されました。
クラリッサとシルヴィアとリリーの三人姉妹がお互い気遣いあって苦労を分かち合っている様が心を打ち、姉妹物が好きな私にはたまりませんでした。リリーのお茶は確かにとても不気味ですが……(笑)。
想いが通じ合った後にも一波乱ありクラリッサの気持ちを思うと心抉られましたが、ちゃんと収まって良かったよかった。
旦那様の奥様熱愛っぷりがすごくてごちそうさまでした。
そして最後の三姉妹への贈り物が明かされる場面にはほろっときました。
ロマンスも家族愛も友情も、短いお話の中にぎゅぎゅっとつまっていて、満足度高い物語でした。

そして彼女はいなくなった
そして彼はここにいる』実月アヤさん
貴族の婚約者ふたりの、すれ違いの物語。彼視点と彼女視点から。
リオンとエリアーデ、それぞれの立場からの恋心と気持ちが揺らぎゆく様がとてもていねいに書かれていて、切なくて切なくて。でもとても良いお話でした。
リオンの行動は特にエリアーデの友人視点から見るとひどいけれど、そういう深みにいってしまったリオンの不器用な真面目さを私はやはり嫌いにはなりきれない。

カクヨムさんも一応ユーザー登録しましたが、今のところの私は相変わらずなろうさんあたりをふらふらしていることが多いです。


ここ一週間の間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: オンライン小説

『説得』夕月 櫻 

去年の年末にたいへん私好みのオンライン小説を見つけましたので、これはぜひとも感想に残しておきたく。

説得夕月櫻さん

すでに婚期を逃した権大納言家の二の姫・結子(ゆうこ)。
派手好みの家族の影でひっそりと過ごす彼女の心の内には、八年前に散ってしまった忘れられない恋の思い出が。
そんな彼女の元に訪れた、思いがけない再会とは——。
ジェイン・オースティン作『説得』を平安時代に舞台を移して書かれている翻案ものなのだそうです。

古典的ラブコメ・ジェイン・オースティン作品の、平安ものアレンジ小説!そんな素敵な作品が、なろうさんに存在していたとは!
『説得』原作もちょうど去年に読了したばかり、これはもう読むしかないでしょう。

しみじみと落ち着いた美しい文章に、平安時代のていねいな時代描写に、原作を自然にたどり紡がれてゆく、男女のもどかしくときめく恋絵巻。
一応うっすら先のストーリー展開は頭にあるはずなのに、読みはじめたら先が気になって気になって。
途中でやめられなくなり一気読みしてしまったのでした。素晴らしき満足感。
ヒロインの結子さんに完全に感情移入してしまい、辛い別れの場面では私の胸もつぶれそうになり、雅嗣さんの一挙一動で心かき乱されて、うわあ、なにこの面白いお話!

しとやかで控えめで心優しい結子さんも、気取らず誠実な貴公子雅嗣さんも、ヒロインとヒーローがものすごく私好みストレート。
原作の『説得』よりも皮肉っぽさがひかえめな感じがして(でもそういう毒もちゃんと各所に残っているところがまた魅力)、純なふたりの八年越しのロマンスとして楽しめました。
桜の宴のふたりの出会いの場面の描写が夢のようにしっとり美しくて印象的で、特にお気に入りです。
奥ゆかしく距離を縮めていくふたりの姿の描写もとてもとても素敵。
雅嗣さんの飾り気ない実直な態度と、ひかえめな結子さんが彼の人柄に心許し深窓のお姫さまのたしなみをちょっと超えて距離を縮めていく。十代の娘と青年の、うれしはずかしな胸のときめきが、もう、たまらない!
だからこそ、一度のお別れの場面は本気で胸をえぐられましたとも。
原作でもキーパーソンである逸子さまの「説得」。良いお方なんです。結子の家族とは比べ物にならない良いお方なんですけれども!
雅嗣の身分のあれこれは、読んでいてちょっと『源氏物語』の夕霧を思い出しました。
雅嗣の方から見ても、結子さんの方から見ても、辛すぎる。

そして八年後の第二章。
新キャラも登場し、無邪気な若さで雅嗣を慕う若菜の君に心乱される結子さんでしたが。
すれ違い誤解を繰り返し、さんざん遠回りしながらも、もう一度ふたりの心が近づいていく様が、またていねいにつづられていて、もどかしいことこの上なかったのですが、とても読み応えありました。
一章目の時点ではまだ頼りなげだった茅野が、すっかり結子さんの腹心の頼もしい女房として活躍していて嬉しく思いました。
見目麗しく愛想よく結子さんに近づいてくる貴公子の存在にじっとりしつつも、最後は胸がすかっとしました。
あの恋文の場面がまた秀逸です。雪の再会に涙。

結子さんの家族のあの微妙な感じとか、お父上に近づいてくるあやしげな女とか、妹姫と結婚しなんだかんだうまくやってる旦那さんとその実家の良き人々とか、若菜の君の恋の顛末とか、原作にとても自然になぞらえられていて、読んでいてとっても楽しかったです。
なんだかんだいっても困ったさんでも家族には違いない、やれやれーな雰囲気が味なんですよね。
原作に忠実に、でもきちんとこの作品オリジナルの良さもきちんと感じられました。
上にも書きましたが、原作より若干マイルドで純情なロマンスになっていて、読んでいて気持ちよくときめくことができました。
結子さんもですが、雅嗣さん本当に一途で実直でたまらない……。
そういう人物設定がとても自然でよくよく考えられているんだなあと伝わってきます。

ふたりの恋を見守る結子さんの乳母や茅野、雅嗣さんの従者の康清、といった脇役サイドも良かったです!
康清さんや茅野にも、今後のロマンスを期待したいところ……(私が勝手に想像しているだけです)

平安時代の風俗の専門用語について、ていねいな注釈がつけられているのも素晴らしいです。
重ねの色目を具体的に想像できると雅な雰囲気が一層増してとても良いです。
和歌の使われ方もお上手です。くちなしの歌のやりとりとかどちらの視点からもていねいに書かれていて美味しい。

平安時代もの、ジェイン・オースティン作品、しっとり落ち着いたラブロマンス、なにかにピンと来た方には一押しの作品です。
作者さんの別作品もちょっと影のある素敵な平安ものロマンスで良かったです~。


カテゴリ: オンライン小説

タグ: 夕月櫻