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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『京洛の森のアリス』望月 麻衣 




幼いころに両親を亡くして、引き取り先の叔母の家でも身の置き所のないありす。
かつて両親と暮らしていた京都で舞妓修行に出ることを決意し、迎えの車に乗ったありすだが、老紳士に連れてこられた「京都」はどこか「不思議」な場所だった――。
人間の言葉を話す、カエルのハチスとウサギのナツメと共に、ありすは舞の修行に明け暮れつつ、京洛の森の謎に触れてゆく。


望月麻衣さんの新作のおはなし。
これまでの作者さんの作品とは少し雰囲気の違う、おとぎばなし風味ファンタジーな一冊でした。
とはいえありすが足を踏み入れた「京洛の森」は京都の別世界バージョンという感じで、現実世界の京都ネタも読んでいてちゃんと楽しめるのが、作者さんの作品らしいです。
現代の京都要素にプラスして、昔の京都を思わせる設定もそこかしこにあったりして、日本史ネタ的にも楽しめました。

薄幸の少女が異世界に招き寄せられ、自分自身の力で頑張って、周囲の協力を得つつ成長して自らの居場所を作り上げていく、私の大好きな王道パターンのストーリー。
なによりヒロインのありすが、頑張り屋で健気でどんなときでも人へのやさしさを忘れない、実に私好みの女の子で、とっても楽しめました♪
「京洛の森」というオリジナルの作品世界がかなり独特のルールのもと成り立っているのですが、作品世界の説明に読んでいて引っかかることがほとんどなく、すらすらとても読みやすいファンタジー作品だったように思います。
ひねりはききつつシンプルで王道なストーリー、魅力的で力のあるキャラクター。文庫本としてはあっさりしたページ数に過不足なく収まっていて手に取りやすく読みやすい、ぐいぐい引っ張られ楽しんで読みすすめることができる。作者さんの持ち味がよく出ていて素敵だなと思いました。
……なんというか、「ありす」という名の読書好きの少女が、ウサギとカエルをお供に、異世界に冒険の旅に出る!!というシンプルなあらすじが、メルヘンでファンタジックでとっても良いのです。乙女の夢です(笑)。

本当にありすの身の上はつらくて(長いおさげ髪の由来がやりきれない)そして京洛の森にやってきてすぐのころは努力が空回りしていて、読んでいて胸が痛かったのですが、ナツメやハチスたち、紅葉屋の師匠や橘たち、いいひとたちに囲まれ支えられていて、読んでいて次第次第に心があたたかくなりました。
京洛の森のシステムは、おとぎばなしの楽園のようでもあり、めちゃくちゃシビアで怖い世界のようでもあり。
上手く波に乗れるとすいすい良い方向へゆけるけれど、一つ間違えれば落とし穴にはまってしまいそうというか。
ありすの中に心から好きなものがちゃんと存在していて、それをたつきに次第にこの世界で認められ人を笑顔にしてゆけるようになって、本当によかったな~と心がしみじみ満たされました。
読書好き人間なもので、そのたつきが「本」であったところも、やはりうれしく思うのですよ。
紅葉や橘や牡丹さんみたいに舞を生業にしている女性たちの姿も素敵でした。彼女たちにもまたそれぞれの事情が裏にあるんだろうな。

おとぎばなしといえばやはり王道は、格好いい王子様に見初められて恋に落ちる、という。
王大使殿下の巡業にはしゃぎ憧れをつのらせるお嬢さんたちとか、現実の京都とファンタジー世界のほどよくロマンティックで堅苦しすぎないアレンジ具合がお見事です。
それにしてもありすの初恋の君はいったい何をしているんだ???と若干憤りを覚えつつ読んでいたのですが、そういうことかーーー!!!まったく気づきませんでした。名前も言われてみればこそで。
というか、もう結婚のことは確定で周囲も了承済なんですね。そうですよね、幼い日にしっかり約束してましたもんね(笑)。特殊なおうちの事情があるとはいえ、さりげなく外堀をすでに全部埋めている彼がちょっとかわいいです。
妹の菖蒲姫もお妃さまも従者のひとたちも気に入りました。

地図屋の亮平さんのエピソードも印象的でした。彼の手助けはとりわけ頼もしかった。奥さんのエピソードも印象的で、最後の彼女の助けにほろりと。バーベキューおいしそうでした。
あとありすの叔母さん一家についてもその後の便りがあってよかったです。

ところで庭春樹さんの表紙イラストが淡く繊細でにじみでるようなパステルカラーでとってもきれいでかわいらしくて、おとぎ話風味のファンタジー世界にとにかくぴったりで、表紙にぴんときたひとは読んでとにかく間違いない、と言い切れるのがいいですね(笑)。

不思議要素込みの和ものが好きな方、少女の異世界トリップものが好きな方、あとそんなにファンタジー得意じゃない……という方にも、おすすめできそうな一冊。
あと安定の京都に行きたくなる作品でした。


この一週間くらいのそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 望月麻衣 

『わが家は祇園の拝み屋さん7 つながる想いと蛍火の誓い』望月 麻衣 




京都の護りの結界の補強に向けて、準備合宿をすることになった小春と澪人達チーム五人。
その夜異形のものに遭遇してしまい、澪人の力で事なきを得たものの、早く結界を張り直さないと京都に「魔」が入り込んでしまう。
一度目の「補強」の成功に続けて計画を進めていく中で、小春、そして澪人の兄の和人の側に影の気配が——。


『わが家は祇園の拝み屋さん』シリーズ第七弾。
表紙イラストのふたりの良い表情と雰囲気まさにその通りの、これまでの伏線がすべて、すっときれいに収まった巻になりました。
ああ、よかった。小春ちゃんと澪人くん、本当に良かった~!!!
読後感がとても幸せで思わず涙ぐんでしまいました。
雪が凍り付く寒い夜に、心があたたかくほこほこぬくもってきて、何といえばいいのかしら、まるで祇園の吉乃さん達のおうちの団欒の席に私も実際に混ぜてもらっているような。

改めて友風子さんの表紙イラストは毎回秀逸で、特に澪人さんのうるわしさ、色気のある格好良さ、それでいて凛ときりりとした雰囲気、涼やかな目、もはや友風子さんのイラスト抜きには成立しえない(私の中で)。
墨染の着物が本当に映えていらっしゃる。あざとくて素敵です(笑)。
あと小春ちゃんの幸せそうな笑顔の横顔がたまらないです!
蛍の淡い光も夏の夜の闇も、お話の雰囲気にとてもあっていて、優しくて可愛らしくてあたたかな雰囲気で、すてきですね。

あと、帯の「私を救ってくれた大好きな京都を守りたい——」というフレーズが、心に染み入りました。


ではネタバレ感想ご注意を~。(そして今回はあとがきネタバレ注意だそうです。)


サブタイトルの「つながる想い」、前世に「引きずられる」のではなく「受け継いでいく」というスタイルを主役ふたりが選択していて、ああ、ふたりらしいな、素敵だなと思いました。
無理のない自然な感じで登場人物がつねに前向きで未来を信じているところが、私がこのシリーズを好きな理由の一つ。
とはいえ、良く考えてみると、小春も澪人も、最初の頃と今の姿は、本当に変わったな~。とも思います。
前巻でようやく素直に生きようと腹をくくった澪人の雰囲気はぐっとやわらかく自然体になったし、小春ちゃんも本当に凛としたというか成長して素敵な女の子になりましたね。
前世を自分の中で受け入れて、そのうえで今をちゃんと頑張って生きている感じが伝わってきて、うん。

恋に素直に生きることにした澪人くん、なんだか本当に雰囲気変わって可愛らしくて、照れたり相手の気持ちに不安に揺れている様に、いちいちきゅんきゅんときめいてしかたがなかったです(笑)。
それでも「くそ真面目」なのは彼の本質なので……そこがしっかりしているからこそ安心してときめくことができるというか。もっと積極的になってもいいのにな~とか思いつつ、これ以上だと読んでいるこちらが恥ずかしすぎる~とかも思う訳で、心の中で葛藤が(笑)。
そして澪人さんの雰囲気が自然体になったと同時に、彼の京都ことばがぐっと優しく柔らかく響くようになった気がして、読んでいて心地よかったです。雅ですねえ。基本が丁寧口調のホームズさんとはまた別のはんなり艶っぽい色気が。
小春ちゃんはなんというか、恋に関しては動じなくなったな。という印象。澪人視点が多めだったからかもしれませんが。
和人さんとのデートの顛末がラスト近くまで引っ張られていたのもあって。読者の私も澪人さん同様やきもきしてしまいました。
というか、和人さんとのデートで小春ちゃんの中では自分の気持ちにひとつの決着がついて、この時点では心が決まっていた、ということだったんだろうな。とラストまで読んでから改めて思いました。

結界補強対策チームの合宿、チームの五人のやりとり、わいわい楽しそうで良かったです!!
深刻な状況を「不謹慎」ととらえることなく、「ワクワク楽しい気持ち」を肯定的に、実際のパワーとしてとらえる澪人さん達のスタンスが、とてもいいなあと思いました。
そうか、こんなにシンプルでいいんだ。現実世界でもこんな風に考えていきたいな。
いかにも学生さん達の合宿というエピソードの数々がいい。
五人とも程度の差があれ特殊な立場の学生さん達で、気心や事情を打ち明け合ったうえで素直にみんな楽しんでいる様が、可愛らしく微笑ましくいいものです。特に澪人さん良かったよね……(おばさんのような視点)
そして可愛いものには即反応するクールビューティー由里子先輩が至る所で可愛らしくって、これまたきゅんきゅんときめいてしまいました。ちゃんとみんなのお姉さん役なのも頼もしい。(朔也君の姉ちゃんみたいと指摘されて少し嬉しそうにしている場面とか本当にもう可愛らしい……!)
朔也君のちょっとチャラいところも、もう彼の個性として私も自然に受け入れられるようになってきました。
でも今回、彼の以前の行いのある意味報いとも思える出来事があって、彼がそこに自分自身できちんと落とし前をつけていった展開、良かったです。(由里子先輩の補助が格好よかったです!!)
あと自分できちんと考えて、コウメちゃんに謝りたいと思う、心根のまっすぐさも、見直しました。
朔也君と八雲さんの仲良し姉弟も好きだな。小春ちゃん達の家のごはんに誘われたもののふたりですたこら逃げ出した場面が微笑ましくて笑えました。ふふっ、皆普通じゃないんだな(笑)。
愛衣ちゃんも、そんな普通でないメンバーの中で大健闘です。
特に小春に悪意が向けられた場面での彼女の友情の頼もしさといったらなかったです。彼女の賢さとまっすぐな正しさが好き。

五人チームでの結界の補強、和人さんの危機を救いに駆け付けた澪人と小春ちゃんの戦い、おもてだったストーリー的にもかなり盛り上がりました。皆本当に頑張った!おつかれさま!!
安倍晴明のこと実は私もあまり基本的なこと分かっていなかったので今回とても勉強になりました。やっぱりすごいひとだったんだな~。
和人さんと澪人さんの危機的な状況での兄弟思いあう心に目頭があつくなりました。
玉椿の知識を得て澪人の助けとなる小春の立場も、とても自然で良かったです。いざというときの度胸!やっぱり恋する乙女は強くなりますね。
というか、最後にすべてを持っていったのは、宗次朗さんと杏奈さんでしたけどね!!
宗次朗さんはもう持っているオーラからすべてが格好いいというか、別格というか。今回色々納得してしまった。

宗次朗さんといえばやはり今回もおいしそうなお菓子がいっぱいでわくわくしました。
飴細工のドームに入ったアイスクリームって想像するだけで魔法みたいなデザートですねえ。
そしてやはり私はシリーズの最初の方に出てきたミニあゆが気になる。ふわふわもちもちのあゆ、絶対美味しい。

玉椿姫と左近衛大将の前世の清算の場面、そこからつながるふたりの場面、繰り返しですが良かったです。
ストレートに想いを告げる姿にぐっときました。
あとようやく和人さんの前世での役割が明らかに。
そういうことか!そういうことだったのね!!納得。
現世の和人さん自身の想いを考えるとちょっと切ないのですが、なんだか泣き笑いのような幸せな気分で満ちてきたのでした。
そして小春ちゃんが賀茂兄弟に対してちょっと強くなったなと感じるようになったのも、自分の中で納得。お母さんはつよい。

皆の前で小春との交際を宣言した澪人さんやるな~と思いつつ(個人的にここがいちばん「あざとい」と思った)、バージョンアップした(?)コウメちゃんのもふもふ可愛らしさが、最後まで最高でした。
というかコウメちゃんがずっと大事に守っていた秘密にびっくり仰天。由里子先輩とのご縁はもしかしてここつながり?
若宮君コウメちゃん達サイドの意味深な会話もありつつ。

本当にすべてがきれいに収まってこれで完結といっても良いかと思うような七巻目でしたが、どうやら続きが読めるようで、わあ、嬉しい♪
またこのメンバーが元気で色々頑張っている姿を見守っていけるのを楽しみにしています。

書店応援特典のペーパーも『寺町三条のホームズ』とのコラボでお得感いっぱいで楽しかったです。
こちらのシリーズの新刊もとっても楽しみです~。


一昨日昨日と記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 望月麻衣 

『かくりよの宿飯七 あやかしお宿の勝負めし出します。』友麻 碧 




大旦那様の帰りを待つ天神屋に現れた雷獣。鬼神の大旦那はもう戻らない、この雷獣が新たな大旦那になるのだと、不吉な予言を残す——。
消えた大旦那様、天神屋最大の危機の中、銀次たち従業員たちは団結して動き出す。
葵も大旦那様を捜すため、妖都へ向かう宙船ツアーの屋台で料理を振舞うことになり——。


『浅草鬼嫁日記』と同時発売だった『かくりよの宿飯』七巻目でした。
こちらの方もストーリーが大きく動いて、大旦那様達の過去や「隠世」のそもそもの成り立ちも明かされ、そして糖分増量(微増?)で、読んでいてとっても盛り上がりました!楽しかったです!!
そして葵が次から次へとこしらえるごはんが相変わらず美味しそうで美味しそうで。
葵が作る料理の「力」というか「存在意義」というか、そういう立ち位置がしっかり確立した、そんな巻でもありました。

表紙イラスト、今回は白系男子ということで。
確かに白夜さん今回大活躍でいらっしゃった……あと砂楽博士の外見がなんだかちょっと頼りなく優し気で知的で好みです(笑)。
そして大旦那様は一体どこに?……探しまくりました。
葵の影にあたるところなのですかね。なんて影の薄い……不憫(苦笑)。
ほとんど実際に登場している場面がなくても、それでもきちんと存在感がある、大旦那様ってある意味やっぱりすごい。

読んでから間が空いてしまったのですが特においしそうだった食べ物のこととかやはり感想メモとして書き残しておきたい!

追記以下はネタバレ含み感想ということで。


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カテゴリ: ファンタジー(和風)

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『浅草鬼嫁日記 三~あやかし夫婦は、もう一度恋をする~』友麻 碧 




真紀と馨と由理の三人組の前に現れたのは、前世の宿敵・安倍晴明の生まれ変わり・叶冬夜。
三人がお互いに前世にまつわる重大な嘘を付いているという叶の言葉に、ぎくしゃくする真紀と馨。
お互い胸の内を伝えられないまま、京都へ修学旅行に向かう三人。
そこは前世で酒呑童子と茨木童子が出逢い共に過ごした宿縁の地であった——。


『浅草鬼嫁日記』も三巻目。
同時発売の『かくりよの宿飯』シリーズの最新巻とふたつまとめて一気読みしちゃいました。贅沢。

いやあ、どちらの最新刊も、盛り上がりました!めちゃくちゃ面白かったです!!
二冊それぞれ、ストーリーも大きく動いて伏線が畳みかけるように明かされ読み応え抜群でしたし、糖分増量もたまらなかったです~もうもう、読んでいてときめきがとまらなかった。
そしてどちらもやっぱりごはんがおいしそうで、コミカルで親しみやすい日常パートも健在で心和む、安定の仕様になっていました。素晴らしい。

どちらから感想を書こうか悩みましたが、今回は特にこの『浅草鬼嫁日記』の盛り上がりっぷりがたまらなく私好みでつぼをばしばし押されましたので、色々書き散らしていこうかと思います。
特に今回、平安時代ネタ&京都ネタが盛りだくさんで、前世ネタも併せて大好物の私には、ことごとく美味しい展開でした。
文字通り、千年越しの夫婦の壮大なラブロマンス。
せつない、そしてあまりにいとおしい。
真紀ちゃんの嘘と孤独、そして馨君の彼女への想いに泣きました。

ここからはネタばれ込みの感想を、追記にたたみます。


この一週間それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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『ぬばたまおろち、しらたまおろち』白鷺 あおい 




両親を交通事故で失い山深い村の伯父の家に引き取られた綾乃。
十四歳になる彼女の秘密の親友は、白い大蛇のアロウ。
村祭りで舞い手をつとめた夜、サーカスから逃げたアナコンダに襲われた綾乃は、村に来ていた女性民俗学者の大原先生に救われる。
けがを負った綾乃は先生の母校であるディアーヌ学院に連れていかれてそのまま入学することに。
だがそこは、妖怪たちが魔女と一緒に魔法を学ぶ奇妙な学校で——。


はじめましての作者さんのお話。
荻原規子さんの『RDG』に近いとか色々ネット上で情報をみてこころひかれて早速手に取ってみました。

幼馴染の大蛇に外国風の魔女の学校に寄宿舎ものに少女の成長と冒険と友情、淡い恋、キラキラした設定がこれでもかとつめこまれた、宝箱のようなお話でした。
作者さんが心から楽しんで描かれたのが伝わってくるよう。
私も読んでいてものすごく楽しかった!!
少女小説好き、和風ファンタジー系が好きな人間にはとくにたまらない仕様となっていました。
表紙イラストの雰囲気が本の内容にとても良く合っているので、あらすじと表紙でぴんと来た方は、手に取って損はないかと。


以下、ぼかして書いたつもりですがやはり一部ネタバレ含み感想です。ご注意を。


お話の舞台は、まずは綾乃が伯父に引き取られ暮らしていた岡山の山奥の村、そして関東にあるディアーヌ学院、さらには時を超えた世界にまで。
明確に章立てされているわけではないのですが、お話の流れ自体はシンプルで辿りやすい。
(たぶん全体がうっすらとつながっているからこそヒーローの背景が生きるのではないでしょうか)

なにより主人公の綾乃と幼馴染の大蛇のアロウ(雨太郎)の関係が微笑ましい。
十四歳にして大蛇の婚約者になるなんて、なかなか心ときめく設定ではないでしょうか(笑)。大蛇の結婚式の約束が素敵。
そんななかで村祭りの舞い手、不穏な昔ばなしもありなにかはあるなと思っていましたが、案の定。
大原先生とアロウがとても格好良かった!

そしてディアーヌ学院での新生活。
雪女やのっぺらぼうや人狼やあずきとぎ、妖魅(妖怪)達の子女が、フランス風の学院で箒に乗って空を飛び魔女の勉強をしているという和洋折衷ファンタジーとりどりの設定が、読んでいて斬新!とても面白くワクワクしました。
寄宿舎のルームメイトの絵葉ちゃんが食いしん坊で情にあつい良い子で彼女と綾乃の友情が好きだな~。
この学院にはこの学院なりにスクールカーストが存在し、異性関係や出自のことや色々ぎくしゃくもするのですが、はじめ異分子だった綾乃がしだいに学院に馴染んでゆき友達と楽しそうに学び楽しそうに過ごしている様も、また良かったです。
綾乃が箒で空を飛べるようになるまで、なかなかたいへんでした。みんなすごい技術持ってるんだな……。感心。
お茶会やパーティーのごはんや食堂の定食までごはんもおいしそうでした。「お八つ」という表現がなんだかレトロでディアーヌ学院の雰囲気に合っていてお気に入り。

そんな綾乃の学院生活で次第に大きな存在になっていくのが、大原先生のおうちの末の弟・雪之丞。
涼しい目をした読書好きの少年に私はとても弱い(笑)。彼と綾乃の距離がまた少しずつ縮まっていくごとに、アロウの存在を思うと複雑でどうなっちゃうんだろう……とどきどきしながら読んでました。
冬休みに大原家の家族たちと温泉で過ごす場面も好き。雪女のお姉さんたちとのぶっちゃけ女子トークが楽しかった(笑)。
(なにげに三重県の温泉だったのも親近感ましまし)
しかし綾乃と雪之丞の読書トークは良かったです。これも王道ですね!

ツチノコ騒動や恐怖の(笑)夜間遠足や下級生のケンカの仲裁やいろんなイベント目白押しで楽しんでいるうちに、綾乃の田舎への帰省、そして思ってもみなかったタイムスリップ。
箒に乗りたがるすけべな河童たちに和み華乃子さんの身の上にそういうことだったのか!と思ったり。
お初さんが有能で柔軟で合理的な思考の持ち主でとても格好良かったです!お菊さんも伝説で想像していたよりは明るくしっかりした女の人でした。あ、みどりさまもすてきでした。
なにより雪之丞の正体は、途中から薄々そうかなあ……と思っていたのがラスト直前に一気につながって、やっぱりそういうことか!そういうことならば良かったです!!彼の告白がシンプルで心がこもっていてよかった。

最後の最後でいろんなことが丸く収まって、後味も良かったです。
個人的に伯父さん夫婦とちゃんと話し合い納得の上今後を決められていたのがほっとしました。
『ぬばたまおろち、しらたまおろち』というタイトルも、ラストまで読むとしっくりなじみます。

いやあ、こういう楽しいお話が世の中に新しく出てくるなんて、読書を続けてみるものですねえ(笑)。
個人的にはとくに細部に至るまでオリジナルの設定をとにかく味わい尽くして楽しむタイプのお話でした。
王道パターンのお話ももちろん楽しかったですけどね!王道ばんざいです。

『ハリーポッター』や『RDG』を彷彿とさせる設定のお話で、でも面白いのが、綾乃ちゃんはハリーポッター実際に読んでいて学院生活のいたるところで実際になぞらえている、という描写がはっきりとあるところかなあ。
『カーリー』も読んでいる綾乃ならば、きっと荻原規子さん作品も読んでいるのではないかしら(勝手に想像)。
そしてアロウと言われると、ついつい『伯爵と妖精』シリーズを思い出してしまう私。このシリーズも実際遠からずじゃないかな、とか。

きれいにまとまっているお話ですが、これは続編とかあればぜひ読んでみたいです。
ディアーヌ学院高等部編とか。綾乃の友人達のその後やロマンス談もちょっと読んでみたい。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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『わが家は祇園の拝み屋さん6 花の知らせと小鈴の落雁』望月 麻衣 




高校2年生に進級した小春。
京都で不穏な事件が続発する中、事態を重く見た澪人は、小春や朔也達と対策チームを結成し、かつて京都にはりめぐらされた護りの結界を補修しようとする。
一方小春は胸にわだかまる「後悔」の理由を解き明かすため、自らの前世をすべて知ろうとするが——。


『拝み屋さん』シリーズも六巻目。
『ホームズ』シリーズ八巻目を読んで間もないうちにこちらのシリーズも新刊が読めるなんて、とても贅沢ですねえ。
作者さんは刊行ペースが安定してお早くて、読者としては嬉しいです。

ふんわりはんなり女の子らしい和風ファンタジーで、本のボリュームも薄めで、構えずに気楽に読めるのが、このシリーズの魅力のひとつだと個人的には思ってます。
とても読みやすいのですが中身は色々つまっていて読み足りないということもなく充実感ありますし。
今回は特に前世のエピソード&前世から現在にまでつながるロマンスのエピソードがだいぶ明らかになって、盛り上がりもあって、とても面白く読むことができました。
切なさとときめき感満載。
あと平安時代ネタも堅苦しくない程度に描写があって、京都の雅な描写や京都弁も品よく安定していて、こちらもまた楽しい。

友風子さんの表紙が毎回まずとても楽しみなのですが、今回は十二単。美しい……眼福です。
着物の色目と鈴と猫と合わさって素敵です。

さてようやくすべてが繋がった玉椿姫の前世エピソード。
左近衛少将と夫婦になってからの彼女の心の変化と二人の結末が、とても切なく苦かった。
これは確かにふたりとも辛い。ふたりが悪いという訳ではなく、もうめぐりあわせが上手くいかなかったのだとしか……。
特に玉椿姫の後悔が胸にじくじく迫ってきて辛かったです。
水晶をにごらせずに生きるって、ものすごく難しい、のだと思う。
そしてこんな状況でも、ふたりとも相手を恨まずに自分の中に後悔を抱え込んで苦しんでいるので、いじましい。(特に左近衛少将)
玉椿姫のお誕生日を祝えて良かった、というのが、現世での小春のお誕生日祝いの場面にも重なりあわさって、よけいにぐっときました。

同時に少将の前世の記憶もちの澪人さんの本心、小春の告白を拒絶した理由も、ようやく繋がりました。
そういう意味で身を引いていたのか……はたから見ているとじれったいったらないですが、辛い。
小春のお誕生日会や宗次朗さんとの会話とかでもうだいぶ澪人の本心は透けて見えてきてましたが(ふふふ、結局のところ彼もまだ成人したばかりの若者なんですよねえ。私から見ると微笑ましい)、なんといってもラスト近くの和人お兄さんの場面がとても良かった。
和人さんの弟への愛情に読んでいて涙ぐみました。
ようやく引き出された澪人さんのストレートな本音にぐっときつつ。
バイクの二人乗りのエピソードといい、賀茂家の三姉弟の仲の良さが私はしみじみお気に入りです。

ふたり以外に目を向けると、クールビューティー由里子さんが内にとても可愛らしい面を持ってらして、和みました。
コウメちゃんほんとうにかわいいですよね!
愛衣ちゃんと小春の友情もやはりいい。朔也くんがなんだかんだいってよき仲間に落ち着いたようでそこもほっとしました。(澪人さんの複雑な心境が……またうっかりときめいてしまった。笑)
京都に迫る危機の正体、確かにそういうこともあるんだろうな、と。
澪人さん結成のチーム、にわかごしらえと言えばそうかもしれないけれど、配役も理屈もきっちり考えられていてさすがだと思いました。

同時に進行していく小春と和人さんのデート。
物凄く気になるところで物語が終わってもだえました。はやく、続きを!!!

そうそう、杏奈さんあれから元気で活躍しているようで、ほっとしました。
宗次朗さんの愛情の形がとても格好いい。
吉乃さんと宗次朗さんの親子の遠慮ないやりとりもあいかわらず和みます~。

あいかわらず和菓子も影の主役を張っていると言っていいくらい、おいしそう。
やっぱりサブタイトルにもなっている小鈴の落雁がとても斬新でおいしそうです。
涙して水色のくずきりを食べる場面も印象的でした。
志津屋のカルネも小倉山荘のおせんべいも吉乃さんのすきやきも誕生日の抹茶ケーキもみんなおいしそう。


もうすぐ発売の望月麻衣さんの新作もとても楽しみです♪

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 望月麻衣