FC2ブログ

Admin   *   New entry   *   Up load   *   All archives

ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『アトリと五人の王』菅野 雪虫 




東琴(トゴン)の姫・アトリは継母に疎まれ、まともな教育も受けられず内気に育つ。
厄介払いとして幼くして送られた嫁ぎ先は、枯れ果てた小国・柚記(ユシロ)に暮らす、病を得た王のもと。
その地でアトリは夫になった月王の教えを受け人々と接し、貧しい暮らしの中でも、知識と常識、そして愛情を手に入れる。
やがて王は亡くなり、祖国へ戻ることになるのだが……。


菅野雪虫さんの新作ファンタジー小説。
若くして五人もの王に嫁ぐという数奇な運命をたどった、アトリという王女様のものがたりです。
菅野雪虫さん作品ということと、あらすじに心惹かれて手に取ってみました。

とても素敵なお話でした。
何も与えられず育ったアトリが、最初の嫁ぎ先で知識と愛情を得て、出戻っても新しい嫁ぎ先に行っても、そのときの境遇で常に学び知識を得て成長し、賢く勇敢で心優しい女性に成長していきます。
アトリの生き様が読んでいて真っすぐでしなやかで、なんだか私も心に元気をもらえるような。
五人の旦那様方とのエピソードもみんな、何がしか心に染み入るものがある。
少し少女小説風味がプラスされた児童文学という感じです。読みやすい。
異国の香りがする和風ファンタジー世界観も素敵です。国の名前の響きが良いですねえ。
国と民のあり方など堅苦しくなくさらりと書かれていて、ちょっと考えさせられます。


以下、ネタばれ含みの感想語りです。


「第一章 月の王」
優しくて物静かで病がちで、賢者のような月の王。
彼がアトリに、その後の人生で何より大切なものを、最初に授けてくれました。辛抱強く、愛情を込めて。
とても貧しい暮らしだったけれど、いかに尊いことか。
従者のエンジの賑やかさが楽しいけれど、月王の病は良くなくて、すぐに悲しい結末を迎えてしまいました。
お付きの娘のサヤの選択が何とも切なくて悲しくて、それでも月王とふたり、幸せだったのだと信じたい。

「第二章 少年王」
東琴の王宮に戻ってきて継母に意地悪言われても、もうアトリは何もできない娘じゃない。
妹姫のカティンとも仲良くなれました。この母親に育てられてこんな風に姉を慕うことができる、カティンの素直さと公正な目線が素敵です。少なくとも与えられた愛情は本物だったんじゃないかな。
父王も、無関心良くないんだけれどなあ。でもようやく少し分かりあえたかな。それに王様としてはまずまず立派に治めていらっしゃるし。王妃様の言葉をうのみにしてたからか……いや、やっぱりそれも良くない。
エンジとロルモというふたりの頼れる従者も得て、アトリはだんだん故国でも充実した日々を送れるようになっていきます。
聡明で気さくな西鼓(サイコ)の少年王・トナムと出会い、彼と気が合ったアトリは請われて彼の三人目の妃として嫁ぐことに。
三人の可愛いお妃様が仲良くお茶会していたりして和む。
トナムと机を並べていくらでも学ぶことができて、アトリの毎日も充実。
平和で豊かな日々が続くと思いきや、けれど、この国にも闇はあったのでした。
あっけなく去っていった平穏な日々。
受難の日々もアトリはひたすらじっと耐え抜きます。

「第三章 盗賊王」
新王ザオは粗野で無茶な面はあるけれど、何だかんだ頭は良いし自由闊達で人望もある。
最初のアトリへの仕打ちはひどかったけれど、カティンともエンジとロルモとも再会できて、良かった!
カティンはたくましく成長したなあ。まさか作家さんになるとは。しかも彼女の作品本当に面白そうで読んでみたい。
(五十巻も出ているという天女と皇子の悲恋もの『華星天女』シリーズも気になる……。)

「第四章 真の王」
しかしザオもまたあっけなくクーデターで散ってしまった。
新しい王様は、かつて陰謀で追放されていた、トナムの兄のイムでした。大分どろどろしてきました……。
また王様の思惑で妃の座にとどまり続けるアトリ。
アトリとの出会いは血しぶきまじりで全然良くはなくて、ずっと冷徹で食えない人物だと思っていたイムですが。
イムと共に襲撃され目を悪くしたアトリへ、イムがしだいに心を許していき、アトリに不器用すぎる愛情を捧げるようになっていく様が、なんだかもう、泣けました。アトリは目が見えないので彼の愛情が半分も伝わっていないのが、また。
花の香りのお茶と、夜のお誘いがアトリに全然伝わっていなかった場面が、印象的でした。

「第五章 影の王」
さらにまたクーデターが発生し、アトリは再度妃に。
なんということか、イムを倒したのは逃げおおせていた弟王のトナムだったのでした。
変わり果てていたトナムのすさんだ雰囲気が何ともやりきれない。ニアへの仕打ちも辛い。
彼がそこまですさんでしまった理由というのも辛かった。
イムもトナムも、かつては仲が良かったのだろうに……。なんというかなあ。
けれどもアトリはまた従者たちとカティンの助力を得て、自力で母国に援助を頼み、最終的にはトナムの心も少し、溶かします。
トナムの最後の最後の告白が、こんな場面でもきゅんときてしまいました。
ああ、本当は彼は、優しい心を喪ってはいなかったんだなあ。目頭が熱くなりました。
確かに共に学ぶアトリとトナムは本当にお似合いでしたもの。

「終章」
エンジと共に柚記に帰るアトリ。
彼女の帰る地はやはりここなのだなあ。
今まで苦楽を分かち合ってきたエンジやロルモ達と共に、その後はおおむね穏やかで満ち足りた人生を送れたようで、良かったです。
奇跡は起こらないかもしれないけれど、奇跡みたいなことは起こるんだよ。


『天山の巫女ソニン』シリーズに通ずるものがある、のびやかでみずみずしく心豊かになれるものがたりでした。
学ぶこと、常に学び続けること、誠実に生きることの大切さが、シンプルに心に響く。
糖分控えめの少女小説としても楽しめると思います。
夏の読書にいかがでしょうか!!


ここ二三日にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 菅野雪虫 

『かくりよの宿飯十 あやかしお宿に帰りましょう。』友麻 碧 




『かくりよの宿飯』シリーズ第十弾。
自ら捕らわれた大旦那様を救うため、天神屋の仲間たちと妖都へ向かう葵。
八葉夜行会で、雷獣の陰謀により、大旦那様を隠世の底へと封印する提案がなされる。
それを阻止しようと協力者を探して、葵と天神屋の面々は妖都中を駆けまわる——。


『かくりよの宿飯』、ついに、最終巻になりました。
絶体絶命の身の上の大旦那様はどうなる?ついに自覚した葵ちゃんの気持ちはどうなる?と、読む前からはらはら。

『あやかしお宿へ帰りましょう。』というサブタイトルと、天神屋のメンバー達が笑顔で勢ぞろいしている表紙イラストが、本編を読み終えてから改めて眺めていると、感無量です。
葵ちゃんも大旦那様も皆も、帰るべきところは、天神屋なのだな。

終わってしまったな……。
しみじみとこみあげてくるものがある、いいラストでした。
前巻に引き続き、今まで残っていたいくつかの伏線もきれいに回収されて、明るい未来へつながる余韻があって。
思えばもう何年もこの物語をリアルタイムで追ってこれて、私はとても幸せでした。
最後の最後でロマンスもきっちり盛られていて最高でした。
どっちかというとヒーローが葵ちゃんだったような気がしますが(笑)。
そしてもちろん最後まで美味しいものが盛りだくさんです。葵ちゃんが真心をこめて作った生どら焼きが食べたくてしかたがありません。

それでは追記以下に、ネタばれ込みの感想を収納しておきます~。
その前に、ここ二三日の間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪


-- 続きを読む --

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 友麻碧 

『天気の子』映画鑑賞の記録 

お盆の連休に見てきました。『天気の子』。
前作の『君の名は。』が私はとてもとても好きで、今回の『天気の子』のあらすじも心惹かれるものがあり、楽しみにしていました。
台風が接近中の今日この日に感想を書くのもタイミングがちょうどいい気がする(笑)。
本当は、7月の長かった梅雨期間中に観ていたらより臨場感があったのかもなと思いましたが。

前作と通ずるものも確かにあり、けれども全く別の、新しい魅力的なものがたりでした。
とにかく雨と青空と東京の街と、情景描写が美しくて生き生きとしていて、すごく好きです。
下町?の少々ごみごみした雑然としたところ、書類が積み重なっていたりチープな小物が飾ってあったり、そんなところも人の営みの一部であり、たまらなく貴重でいとおしいものに思えてくる。
途切れなく振り続ける雨、質感がしずくのひとつぶまで素晴らしくて美しいのだけれど、だんだん怖くなってくる。
こじんまりとした晴れの空との対比が見事。
ラストになると、灰色の雨の空も、少しイメージが変わってきたりして。

そして家出少年の帆高と「晴れ女」陽菜ちゃんの物語であり。
ふたりの若さにあふれた滅茶苦茶な冒険と友情と一途な愛情が、みていてハラハラしつつも、まぶしかったなあ!
帆高が東京で出会った須賀さんと夏美さんというふたりの大人の存在も、大きかったです。
やはりどちらかというと年齢的、立場的に、須賀さん達の方に心情としては共感できたな。
彼らの視点が混じることで何とも言えない切なさほろ苦さがプラスされ、ものがたりに厚みが増していると感じました。
そんなふたりの視点が、あとから小説版を読むことでより深く知ることができて、良かったです。



事前にネットで見ていたラストの賛否、私的にはすんなり「あり」だと思いました。
上手く言い表せないのですが、ものがたりの読み手として、こういう選択をした当事者がひとりでもいるのならば、救われる心地がします。


という訳で追記以下に、ネタばれ込みの感想メモを収納しておこうと思います。
映画版小説版のネタばれが混じっているのでご注意を!!

-- 続きを読む --

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 新海誠 

『蛇苺の魔女がやってきた ぬばたまおろち、しらたまおろち』白鷺 あおい 




『ぬばたまおろち、しらたまおろち』シリーズ第三弾。
生徒会主催の夏至祭も無事に終わったディアーヌ学院。
そんな中、学院に三船先生の妹だという妃早子さんが英国からやってくる。西洋の現代の魔女事情の話はなかなか興味深いが……。
そして気になる群馬県の五郎丸湖の「ゴッシー」の噂。綾乃と雪之丞は、二年前の首長竜のことを思いださずにはいられない。
生徒会長のマロさんに別荘に招待され、夏休みに五郎丸湖に向かう綾乃達を待ち受けていたのは……。


シリーズ三作目!またこの世界の物語を読むことができてうれしいなあ。
表紙イラストの婚約者ふたりの構図がとても良いです。ときめきます。夏服の制服の白さがまぶしい。
雪ちゃんのほんのり色気のある美形っぷりがたまらないですね。
綾乃ちゃんが彼氏よりも小麦色に日焼けした肌をしているのも、らしくて良いと思うのです。おさげもロマン。

三作目もときめきとワクワクの設定やキャラやストーリーがぎゅっとつまった、宝石箱のような一冊。
たまらないですね!!一気読みするのはなんだかもったいないくて、少しずつ少しずつ、大事に毎日読み進めていきました。
西洋の魔女事情もゴッシー騒動もディアーヌ学院の日常もみんな面白かったですが、やっぱりいちばんときめくのは主役カップルふたり(三人?)のロマンス。
前半パートの楽しい学院生活から、後半学院から離れたところで事件が発生して、そこから思いがけない事実がつながってきて一気にシリアスモードに。
この物語の根幹に関わってくるような衝撃の事実にどうなることかとはらはらどきどきでしたが、うん、良きラストでした。
あと妃早子さんに終始振り回されました。色々強烈なお人だな。


以下、ちょっとネタバレ含みで感想を語ってみます~。


いつのまにかすっかり生徒会のメンバーに組み込まれていた綾乃含め、夏至祭の準備~本番。
夏至祭なんていかにも魔女学校ですねえ。キーワードだけでときめきます。
きゅうりのごちそうを作って河童たちが喜んで食べているのが、いかにもディアーヌ学院らしい。
二巻目に登場した中等部のメンバー達も学院に馴染んでいて楽しそうなのがうかがえたのもよかったです。
変身のお試しを日曜日にふたりこっそりやってる綾乃と雪之丞、なんかもう婚約者としてしっくり馴染みすぎですねえ。ふふっ。
相変わらず雪之丞とアロウの微妙な対立関係が面白い。もうすっかりそういうものだと受け流している綾乃ちゃんも。
アロウのさわり心地の良さを綾乃が上等な着物でたとえているのが、奥ゆかしく初々しくなまめかしい……。
つがいってキーワードが強烈。

妃早子さん、きさくでにこやかで優秀なお人だけど性格に強烈なクセがあって、腹に絶対何か隠し持っているよね?でも根は悪い人じゃないのかな?
場面ごとに印象がくるくる変わって本当につかめないお人でした。翻弄されました。
最後の最後まで読むと、彼女の真意はあのプロローグからつながり実にシンプルなものだったのだな、とすとんと落ちたのですが。
現代の西洋の魔女事情の講義は面白かったですけどね~。あとチャーム作りの豆知識も面白かった。人気者になるの分かります。
綾乃と雪之丞を翻弄し続けてゆく彼女はもう、なんというか……一方的に情報を与えられてもその都度自分自身で検証してじっくり真実を模索していく綾乃が頼もしく、学院で学んで成長しているんだなと実感できました。
とばっちりで変身できなくなってしまった雪之丞、気の毒……ディアーヌの仲間たちのおおらかな友情がいいなあ。
ゴッシー騒動のあれこれが、まさか後々、綾乃自身の身の上にまでつながってくるなんて、思いもしなかった。
前半パートの堀口君の会話とか色々なものがよぎって、戦慄が走りました。綾乃のこれまでの立場が全部ひっくり返ってくるし、学院自体の姿勢まで、揺らいできて。
でもアロウ(雪之丞)のそんなの超越した彼女への愛情に救われたし、結局のところディアーヌ学院も三船先生達も、綾乃の事をきちんと尊重して思いやって対応してくれていたんだな、と最後に分かって、良かったな。
でもふたりで水の中戯れ泳ぐ場面はちょっと今までと雰囲気が違ってこれはまた素敵だなと思ってしまいました。
よくよく考えると一巻目のアロウと雪之丞のからくりを私は完全には理解できていない……改めて考えてみても理解しきれないので、考えるのを放棄してしまった(苦笑)。雰囲気をゆるく楽しませてもらってます。

それはともかく(?)五郎丸湖での避暑ライフ、大変なことばっかりでしたが楽しそうでした。
生徒会メンバー、マロさんと紅沙さんの仲がちょっと気になる。なかなか良い感じだと思います。紅沙さんの遠慮ないさばけた物言いが気持ちいい。お名前の由来もすてき。
ロシアサイドと北海道サイド、ミハイルさんとトンニさんもそれぞれいい味出していました。どっちも弁が立って強引なのに、それぞれの背後のおばばさま達のバトルにそれぞれ完全に負けてて、しまいにはふたりで通じ合ってしまってる姿が、おかしかった。
ミハイルさん相変わらずお八つ泥棒だけれどやっぱりなんだか憎めないんですよねえ。(でも妃早子さんに最初とっつかまえられていた場面、あれはまあ妃早子さんの言い分の方が正しいかなと正直……ディアーヌ学院の面々じゃなきゃミハイルさんの有能さは分からないしさ)
トンニさんはでもなんだかんだ爽やかな好青年で綾乃達を助けてくれたのも事実だし、私は結構好きでした。語り部としての姿もいいな。
あと読み応えがあったのは、ディアーヌ学院の魔女達による、ゴッシー空中飛行移動大作戦!!!
こういうのを読んでいると、やっぱりディアーヌ学院っていい学校だなと思います。先生も生徒を良く見守り教え導いているし、生徒たちは助け合いまとまって固い絆で結ばれているし。柔軟な思考回路や組織体制もいい。
マドレーヌやカヌレやショコラや、おいしそうだけれどお洒落で可愛らしい名前だな。親しみがわきました。
あと絵葉ちゃんの大地くんや風斗君への愛情も良かった。しょうがないいたずら坊主だと言っているけれど弟君の微妙なコンプレックスの事もちゃんと理解しているんですよねえ。

ラストのアロウにはじんわりきました。うんうん、良かった。
綾乃と雪之丞とアロウの三人の掛け合いが戻ってきて心の底からほっとしました。

そういえば雪くんのお父さんってそんな大物だったのか!!と今更びっくり仰天していました。
あとアリスちゃんがただでさえ存在感が薄い不遇の女の子だったのに、妃早子さんのおかげでますます気の毒な展開……彼女も幸せな生活を得てほしいな。

綾乃が語ったタイトル『ぬばたまおろち、しらたまおろち』で物語がくるりんと。
私はてっきり物語はこれで完結かしらと思っていたのですが、読書メーターの皆さまの感想を読んでいると、そうでもない解釈もあるのかな。
私もできればまた続きを読みたいので、期待していようと思います。ふふふ。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 白鷺あおい 

『鳥居の向こうは、知らない世界でした。3~後宮の妖精と真夏の恋の夢~』友麻 碧 




『鳥居の向こうは、知らない世界でした。』シリーズ第三弾。
異界「千国」に迷い込み、薬師である零先生の弟子として生きる千歳は、ある日王宮から呼び出しを受ける。
第三王子・透李に嫁ぐ西国の王女のお茶係になるようにとの命令で、複雑な思いを抱きつつ異国からやってきた王女の世話をし体調を整え気遣う千歳。
そして街で流行する危険な「惚れ薬」が騒動をまきおこしてゆく。千歳も薬について調査を命ぜられ——。


『鳥居の向こうは、知らない世界でした。』の新刊だ~!!やったー、読めて嬉しい♪
『かくりよの宿飯』『浅草鬼嫁日記』に比べるとゆっくりペースの刊行で雰囲気もちょっと違いますが、私は個人的にはこのシリーズ大好きなので、続きを読むことができて、本当にうれしく幸せに思います。
特に今回はサブタイトルやあらすじが、ロマンティックな響きで恋の香りもして、そういう少女小説的な展開が大好きな私としては、一層楽しみにしていました。
帯の宣伝フレーズが「臆病で愛しい恋は、焼きたてのスコーンの香り。」で、スコーンとお茶が大好きな私としては、これはもう、心をがしっとつかまれました(笑)。

優しくてほどよくゆるやかで、親しみやすい異国情緒があって、ほのかに文学の香りが漂うこの作品世界の雰囲気は、改めて、独特だと思います。
読んでいるとじんわり心が癒される。
加えて大人しいけれど芯が強くて頑張り屋の美少女・千歳がますます私好みのヒロインですし、千歳を我が子のようにいつくしみ守る毒舌家の零先生との関係も素敵で、馴染みやすい中華風、和食っぽいのも程よくミックスされた薬膳料理も相変わらずとってもおいしそうで。
音楽や不思議なお花のモチーフも乙女心をくすぐります。
そこに、前々からなんとなくそうかな~?と思っていた千歳とトーリさんの恋愛めいたお話も進んできて、これはもう、私好みの構成要素しかない(笑)。

トーリさんのお妃候補が異国からやってきて複雑な思いを抱いたことで、自分の恋心に気づいた千歳ちゃん。
ジゼル王女は仲良くなってみると気位の高いお姫様だけど気立てのいい娘さんで、トーリさんもジゼル王女も大好きな千歳ちゃんは誰も憎むことができず二人の仲を頑張って応援するしかなく、自分の想いを自分の中だけに押し隠してしまう彼女の姿が、読んでいて胸がぎゅっとして切なかった。
あげく体調をあそこまで崩してしまって……。つらい。
そんな千歳ちゃんを気遣い美味しい料理を作って甘やかす零先生の情が心に染み入りました。香りのごちそうですね。
お花の天ぷらの種類のあてっことは心にくい。さすが零先生!桜ご飯はどんなに千歳の傷ついた心を癒したことでしょう。

一方で千華街に広まる不穏な惚れ薬。
千歳を妹弟子と呼んだ緋澄さん、今回結構嫌いじゃなかったです。
青火王子、そして初登場の左京さん。第二王子はこういう人だったのか!確かに彼は宰相キャラっぽいので納得してしまった(笑)。
お母さんの日記を手がかりに、フェアリーバイオレットの謎を突き止め解決策を見出し、そして土壇場で大切な人を救うことができた千歳ちゃん。
とにかく、彼女の土壇場での機転と勇気と真心に、心を打たれずにはいられませんでした。
最後にぽろりとこぼれた愛の告白にも泣いてしまった。
そして今回本当、緋澄さんも結構頑張ったよね。
シェイクスピアの悲劇エンドにならなかったのは緋澄さんのおかげなんですよね。
零先生とちょっと仲直りができたようで良かったです。千歳ちゃんのおかげですね!

そしてトーリさんと元気になった千歳ちゃんが想いを確かめ合い未来の約束をする場面、ストレートな言葉が格好良くてきゅんときてしまいました。トーリさんはさすが王子様だな。
その前の場面で、トーリさんの隣に立つ存在として青火王子が千歳ちゃんを認めたところも良かったですねえ。まさに千歳ちゃんの捨て身の行動を、ちゃんと見ててもらえてたわけだ。
実力主義者で分かりづらくも弟の幸せもちゃんと気遣っている彼の言葉にじんときました。
そして、確かにお母さんの事がずっと引っかかっていたトーリさんにとっては、とても大きな決意だったのだと思う。
ああ、何にしても本当に良かったです。
何かあったら即座に零先生が飛び出してきてトーリさんをがみがみやりそうだな(笑)。

ジゼル王女からの最後のお手紙にも、じーんときました。
緑の妖精のような、けれども強くて自分自身で輝いているお姫様。ふたりの間でしっかりと結ばれた友情が尊い。
『果てしない物語』がお話のモチーフとして上手くはまっていて素敵だなと思いました。

ジゼル王女のお国から持ち込まれてきたスコーンとアフタヌーンティー、非常に美味しそうでした。
そこに千国の芒果ジャムを添えてというのが心にくいですね。
小ぶりな肉まんじゅうやりんごの緑茶、ジゼル王女をいたわるメニューが千歳らしくてとても良かったです。おいしそう。
そしてお祭りのときに千歳が食べていた、杏仁茶にパイを浸して食べるお菓子?が、いかにも異国情緒漂い気になりました。おいしそうだな~いいないいな。
同じ零先生の弟子でもお茶にはあんまり興味がない緋澄さんと千歳の対比もちょっと面白かった。

正王妃の陰謀はまだ完全に解決してなさそうだし、千歳とトーリさんの今後も気になるし、また続きを読みたいです。
あ、青火王子のお妃も気になります。彼も奥さんには弱かったりするんだろうか。
千歳のお母さん千香さんの過去の物語も気になりますね。彼女の恋は切なく哀しいものばかりだったのであろうか。それだけではないと思いたい。

シェイクスピアの『真夏の夜の夢』のあらすじにもイメージぴったりな幻想譚、第三巻でした。
千歳の冒険と恋の物語は、私の心のオアシスでした。


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 友麻碧 

『かくりよの宿飯九 あやかしお宿のお弁当をあなたに。』友麻 碧 




『かくりよの宿飯』シリーズ第九弾。
黄金童子様に導かれて北西・文門の地でようやく大旦那様と再会を果たした葵。
大旦那様は拍子抜けするほど普段通りの様子で、つかの間の穏やかな日々をすごすふたり。
「お弁当と引き換えに、真実を、一つずつ教えよう——」大旦那様の提案により、大旦那様の過去、祖父との関係、そしてかつて自分を救ってくれたあやかしの正体等、葵は真実を手にしてゆく——。


『かくりよの宿飯』シリーズ最新刊。
サブタイトルがシリーズの核心をついてきていて発売前から色々内容が気になるところでした。
そして今回の表紙!なんというか、ここ最近の「大旦那様を探せ」的な、キャラがにぎやかに勢ぞろいな表紙と、全然違う!
どこからどうみても完全な、大旦那様と葵ちゃんのツーショット!微笑み合って幸せそうなふたり。
しかもさりげなくペアルック……とかどきどきときめきながら、ふたりが穏やかに幸せそうに寄り添っている姿が、とても貴重なものに思えて、あまり茶化したら悪いな、という気持ちになるといいますか、じーんと浸ってしまいました。

さて今回のお話、大旦那様の正体から史郎おじいちゃんと大旦那様の馴れ初めから、葵ちゃんと大旦那様の過去にいったい何があったのかまで、これまでのシリーズの根幹をなしていた謎の数々が、葵のお弁当と引き換えに、どんどん明らかになってゆく一冊でした。
怒涛の大旦那様ターンです。
すっごく読み応えがあって、すっごく面白かったです~!!!
とにかく最初から最後まで大旦那様と葵ちゃんがラブラブで仲睦まじくて、今までシリーズを読んでいて、大旦那様派として若干物足りなく思っていた部分が、すっかり満たされてしまいました。しあわせ。

さて今回の感想はネタばれ含みということで、続きは追記に収納いたします。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

-- 続きを読む --

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 友麻碧