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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『浅草鬼嫁日記五 あやかし夫婦は眷属たちに愛を歌う。』友麻 碧 




前世で鬼の姫「茨木童子」だった女子高生茨木真紀は、かつての夫で「酒呑童子」だった天酒馨、「鵺」だった夜鳥由理彦と、次第に身の回りに集まってきたかつての眷属たちと共に、人として、愉快でまずまず平穏な日常を送っている。
京都の地で千年前から過去を今一度見つめ直した真紀と馨は、今までとは少し距離感が変わってきていて。恒例行事のバレンタインのチョコの準備にも思うところがある真紀だが——。


『浅草鬼嫁日記』の新刊~!!今回も楽しみにしていました!!
今回の表紙イラストも素敵です。
桜が美しく咲く浅草の街を、笑顔でたわむれる真紀ちゃんと馨君、眷属たち。
真紀ちゃんとおもちちゃんが最高に可愛らしい!
(多分)イラストでは初登場の熊ちゃんが、けっこう今どきのお姉様というスタイルで格好良く素敵!虎ちゃんはわりとイメージ通りで彼も素敵!
そして皆を後ろから見守るスイの大人びたおだやかな表情が、物語をラストまで読んだ後に見返すと、しみじみ染み入ります。
(さらに遠くから見守る不機嫌そうな凛音君も、なんだかんだ真紀ちゃんへの愛情が伝わってくるよう)

今回はシリアスモードだった三巻、四巻目に比べて、いつもの皆の基本のほほんとした日常パートがメインになった、箸休め的な巻だったでしょうか。
タイトル通り、真紀ちゃんと馨君と、眷属の皆さん方の昔から揺るがない絆が、前面にぐっと押し出されていました。
千年たっても酒呑童子と茨木童子のふたりに忠誠と愛情を注ぎ続け、人として生まれ変わった二人の幸せを心から願う、一途で強く頼もしいあやかし達に、しみじみ心が温かくなりました。
そんな彼らに対する真紀ちゃんと馨君の想いも素敵です。ぐっときてしまいます。皆の頼れるお姉様で女王様な真紀ちゃんが最高に格好良すぎる。初期に比べて酒呑童子であった自分を自然体にすっと受け入れている馨君の姿もいい。

そんなふたりですが、今世ではとりあえず、ぴちぴちの十代の高校生でもあって。
バレンタインデー関連で、改めて、お付き合いをはじめましょう。という流れに、このふたりだからこそ、きゅんとときめいてしまいました。
照れ屋な馨君の方から言い出したというのがまた微笑ましくときめきますね!
チョコブラウニーといい、ファミレスでのメニューの選択といい、ふたりともお互いの好みを当たり前のように知り尽くしていて、ふたりの今世でも積み重ねてきた絆を感じます。
真紀ちゃんが普通の男の子に告白された!ということで、馨君はかなり動揺したんだろうな。
(そして今までは確かに馨君がそれとなく真紀ちゃんの身辺に目を光らせていたんだろうというのも、納得。絶対そうだ)
真紀ちゃんに普通の女の子のお友達ができて楽しそうにしているのも、読んでいて嬉しいなーと思います。

本文中にもあったように、今までは真紀ちゃんがあえて横暴に鬼嫁っぽく振舞って馨君の尽くし体質を押えていたのでしょう。
それが今まで通りの振る舞いがいまいちできなくなってしまったという真紀ちゃんが、なんだかとても可愛らしいなと思ってしまいました。今までの振る舞いにも茨木童子の千年越しの愛情をひしひしと感じてぐっときますが。

由理彦君が今までと立場がガラッと変わって、なんだか性格もちょっと変わっていて、面白かった(笑)。
叶先生のところでこき使われていて大変そうだけれど、なんだかんだ式神たちにも可愛がられているようで、とりあえず、よかった、かな。スマホのメッセージに個性を感じて笑ってしまいました。
私としては葛の葉さんがお気に入り。ミクズの肉親だったとは!
ああでも、若葉ちゃん達も、くもりなく元気で暮らしているといいなあ。

スイとミカのでこぼこ兄弟眷属コンビもだいぶ馴染んできましたねえ。
ふたりとも相変わらず揺るぎなく茨木童子様一筋でまったく隠そうともしないのが、微笑ましくて愛おしいです。
スイの仕事は相変わらず多岐に及んでいました。あの薬の正確性にはびっくり……。
人魚のエピソードは切なかった。そしてこれは確かに真紀ちゃん達とあやかし達の生きる年月の違いを考えてしまう。ミカ君泣ける……。
熊ちゃんと虎ちゃんの、酒呑童子とのまさに気の置けない「お頭」と「子分」な関係も、やっぱり好きだなと思います。
熊ちゃん視点の裏エピソードが今回かなりお気に入りでした。彼らの静かな本気の戦いにふるえました。やっぱり分かっていた馨君とのやりとりも。
まんがを描くことで、彼らはかつての狭間の国を、いま一度、共同で作り上げているのだなあ。それもしみじみすごいことだ。

大和さんの気になる裏事情、大黒先輩との七福神めぐり、平和な日常の中に少しずつ染み出てきている不穏な空気。
とりあえず大和さんの疲れっぷりがちょっと気になる。
真紀ちゃんの苦境に颯爽と現れ遠回しに真紀ちゃんを救っていった凛音君、やっぱり今でも真紀ちゃん愛してますよね?
ううう、やっぱり凛音君の真意も気になります。きっと悪い子じゃないんだよな……。

バレンタインデーではじまったので、ホワイトデーでしめる。いかにも人の世っぽくていい。
九龍球っていかにもスイのイメージぴったりな中華系の手が込んだスイーツですね、素敵……!!!
あ、今回も浅草美味しいもの巡りが堪能できて、楽しかったです。ほっくり蜜の染みた大学芋食べたいな~。

そして最後はスイこと水連視点の語り。
三巻目でスイこそが茨姫を鬼にした元凶だとさらりと描かれていてさらりと衝撃的でしたが、今ではすっかり茨姫に忠実でむしろお父さんのような愛情を注ぎ続けているスイ。改めてぐっときてしまいました。
かつてのスイをこてんぱんにぶちのめした茨姫の台詞が格好いいな!そして確かにスイのあやかしとしてのあり方や頭脳はその後ずいぶん皆の助けになったんだろうな。
今回スイはかなりのピンチに置かれていますが、どうなるのでしょう……。
そしてまさかの木羅々ちゃん初登場。よ、読めないキャラだ……。茨姫の四眷属であったからには頼もしいあやかしなのだろうと期待しています。

今回の敵「狩人」?は、厄介そうですね。というか、ミクズが陰で暗躍しているの?なんて懲りない女狐なんでしょう!!
あと気になるのが真紀ちゃんの「出会い」と馨君の無自覚だという「嘘」ですかねえ。
色々気になります。続編は少し間が空きそうですが、早く読みたいですー!!

コミカライズも一巻目を読んでみました。
初期の鬼嫁な真紀ちゃんがなんだか新鮮です。そして大旦那様の出番が何気に多くてほくほくしてしまいました(笑)。
真紀ちゃんも一度、葵ちゃんの手料理を食べる機会を持つとよいと思います。
彼女たちは実際に会えば意気投合しそう。美味しい料理を食べるのも作るのも好き同士ですしね。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 友麻碧 

『わが家は祇園の拝み屋さん8 祭りの夜と青い春の秘めごと』望月 麻衣 




澪人が作った対策チームの頑張りによって平和が戻ってきた京都。
ついに澪人と付き合い始めた小春だが、彼の態度はなぜかそっけなく目も合わせてくれない。
彼の態度に不安を覚えながらも、小春はチームのみんなで祇園祭を楽しもうと準備するのだが——。


『わが家は祇園の拝み屋さん』シリーズ第八弾。
新章スタートとのことで。
表紙イラスト、本を手に顔を少し隠す小春ちゃんの表情と仕草がかわいらしくて、ときめいてしかたありません。
どことなく愁いを秘めた澪人さんの表情も、素敵です。

前世の事、京都に迫る危機の事にひと段落がつき、ファンタジー要素は控えめ。物語はささやかな日常に戻ってきた感じ。
ただ小春と澪人をはじめ、チームのメンバー達それぞれの人間関係の変化もあり、ロマンスももちろんあり、とても楽しく読めました♪
このシリーズはいつもながらに比較的薄めの文庫本一冊に、すらすら馴染みやすい文章で楽しみどころがぎゅっとつまっていて、満足感が高いのです。
澪人さん達のはんなり京都弁もこのシリーズ独自の魅力。

なんといってもお付き合いをはじめたての小春ちゃんと澪人さんのことがいちばん気になっていたのですが。
確かに澪人さん、そっけない……。おーい……。
それは確かに、戸惑いとかあるのも推測できるけれども、こんなに小春ちゃんがそっけない態度に悩み傷ついているのに、いっこうに態度を改善させない澪人さん、読んでいて正直もどかしくてしかたなく、だんだん腹もたってきました(苦笑)。
とにかくもう、ひとり不安に悩みまくる小春ちゃんが、読んでいてかわいそうすぎて。身を引くところまで思い詰めてしまうなんて!
……最後の祇園祭のときにようやく本音を言ってくれて、安心しましたけれどね。
確かにまあ、澪人さんと小春ちゃんならではの悩みですよねそれは。しかたない。納得。好きでたまらない相手に自分の本心を奥深くまで見抜かれるかもというのは、確かに怖い。
それでも覚悟を決めて、自分の過去や本心を語る澪人さんの場面にきゅんときました。
彼が動物に対して持っている特殊能力の秘密も明らかに。最後に母に戻った狐さんのエピソード、素敵でした。
なにより素敵だったのははじめてのキスの場面でした。
作中で語られた、特殊能力持ちの人間にとってはなによりも特別で大変な行為だというキスシーン、ふたりとも相性よく幸せ感がよく伝わってきて、読んでいる私もじわーっと幸せでした。良かったねえ。
そして最後の最後に出てきたコウメちゃん、グッドタイミングすぎます。まあ今のところはこのあたりがふたりにとって、妥当ですよね(笑)。
いやあ、それにしても、あのはんなりやわらかで色気のある京都弁で切々と愛を語る澪人さん、本人があくまで真面目で真剣なだけに、破壊力がすごい。読んでいるこちらがちょっと恥ずかしい(笑)。

そんな小春ちゃん達の側でぎこちなさを感じてそれぞれ心配するチームのメンバー達も、皆もうこのシリーズのキャラとしてしっくり馴染んでいて私も愛着がわいていて、読んでいていとおしくてなりませんでした。
朔也君と澪人さん、なんか一見正反対に思えるのだけれど、案外着実に友情を育みつつあるようで、うん、良いですね。彼らならではの悩みを共有できるのっていいですね。澪人さんの麗しの君な外見の裏にある「くそまじめ」さを朔也君がちゃんと認めて尊敬して心配している感じが伝わってくるのがいい。
賢くてしっかり者で情にあつい愛衣ちゃんも、可愛いもの大好きな自分を段々認められるようになってきた由里子先輩も、それぞれ大好きです。
由里子先輩と朔也君は、前巻くらいからかな、姉弟みたいな関係かな~。お似合いだな~。とひそかに胸の内で思っていました。
ふたり相性よさそうなので、ロマンスに発展しても、素敵だな。
由里子先輩の意外にちょっと抜けているところを朔也君がさりげなくフォローしているところとか、読んでいてほっこりします。
あと今回新たにちょっと気になったのは、愛衣ちゃんと和人さんでしょうか!
このふたりはまだちょっと未知数ですが、年の割にしっかりしていてファザコンっぽい愛衣ちゃんには(笑)、和人さんみたいな人はお似合いかもなあと思います。

そうそう、和人さんと澪人さんの兄弟関係も、今回やっぱりいいなあと思いました。
和人さんの澪人さんへの愛情にちょっとほろっときました。
小春ちゃんが澪人さんに前世の親子関係のことを打ち明けた場面も、付き合いたての初々しいカップルにはなんだかあべこべな会話でしたが、でもしっくり馴染んでいて彼の感謝の気持ちがひしひしと伝わってきて、また胸がいっぱいになりました。
キャベツの千切りが不得意な末っ子澪人さんのエピソードにほのぼのしました。
(そしてその後しれっとスライサーを取り出した小春ちゃん達女性陣ににくすりと。笑)

ミステリー研究会の瞳ちゃんのおうちのおじいさんとおばあさんの会話にしんみりしました。(あのお話で隠れていた小春ちゃんのこと「斎王」と呼び共によろしくお願いされる場面が好きでした)
あと、吉乃さんと弥生さんの昔語りも良かったですねえ~。
松子さんを救った吉乃さんのきっぱりした態度と台詞に読んでいる私も救われる思いでした。
その後の宗次朗さんの台詞も重ねて、そうですよね、完璧な人間なんて人間じゃないですよね。未熟なところを持っててもいいんですよね。うんうん。
吉乃さんだって完全な人間ではなく現に親子関係ではいざこざもあったりしましたしね。そして傍らにいる弥生さんの存在もやはり尊い。

あとこのお話で特に印象だったのは、祇園祭の描写。
『寺町三条のホームズ』シリーズの一巻目のいちばん盛り上がるところでしたものね。やっぱり思い出して重ね合わせてしまいます。(それにしても清貴君の方は付き合いはじめのあたりも少なくとも外面は本当にそつがなかったですよね……と今回澪人さんとやっぱりちょっと比べてしまいました。澪人さんの不器用さがいとおしいです。いや、清貴君の器用さも好きなのですが)
吉乃さんのひまわりの浴衣を身に着ける小春ちゃん、小春ちゃんらしいです。ふふふ。
(あのお着換えの場面の事件、ラストまで読んでから読み返すととてもたのしい……吉乃さんも慌てたでしょうねえ)
やっぱり祇園祭、一度この目で見物してみたいなと改めて思いました。
焼きそばやたこ焼きやアメリカンドッグ、さくら庵でのプチ縁日も、楽しそうだしおいしそうでした!

和菓子の描写が今回ちょっと少なめだったかな?夏色団子の涼し気な見た目とさわやかな美味しさが伝わってきて、この蒸し暑い夜に、私もいただいてみたいです。

それにしても気になるのがラストの宗次朗さんの衝撃発言。
宗次朗さんと吉乃さんのいつものやりとりがなくなって、いつも店ででんとかまえて揺るぎなかった宗次朗さんがいなくなるのは、ちょっと気掛かり……。どう転がってゆくのか。
続きがとても気になります。

最後の掌編、私は既読のものでしたが、文庫にこうしてきちんとおさめられたのは、嬉しいです!!

7月に出るらしいホームズさんの新刊も併せてとても楽しみにしています。


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 望月麻衣 

『かくりよの宿飯八 あやかしお宿が町おこしします。』友麻 碧 




『かくりよの宿飯』シリーズ第八弾。
大旦那様を取り戻す協力を得るため、仲間たちと北の地へと向かう葵。
美しくも閉ざされた雪国で葵を待っていたのは、北の美味しい名産品の数々と、この地に嫁いでいた春日との再会。
そして葵は、天神屋に協力する見返りに、雪国復興のための観光名物料理をプロデュースしてほしいと持ち掛けられる——。


お話はますます盛り上がり核心に迫ってきた感のある、かくりよの宿飯シリーズ。
もう八巻目とはすごい。安定の面白さがあります。そして安定のおいしそうなごはん。
別シリーズ『浅草鬼嫁日記』と連動して思いがけないところからお互いの伏線が少しずつ紐解かれていく感じなのも、読み応えあってどきどきです。

表紙イラストが相変わらず皆勢揃いでにぎやかで楽しい。
仲睦まじい若夫婦の様子にときめきます。春日のくりっとしたおめめがかわいい~!
そしてかっぽう着姿の葵ちゃんの仕草もとても可愛らしい。彼女を見守る銀次さんのまなざしの優しいこと。
そして大旦那様……雪ダルマ?デザート??(笑)


例によってネタバレ交じりで感想をつらつら書き連ねていきます。


まずは私、お嫁入りしていった春日のその後がずっと気になっていたので、今回彼女の嫁ぎ先がメインになって、嬉しかったです!
若奥様になっても春日は変わらず人懐っこく相手によって態度を変えないちゃっかり目端のきく女の子で、当たり前のように葵ちゃん達の味方でいてくれていて、嬉しいなあ。うんうん。
最初のうちはキヨ様やお城の古参の人達とあまりうまくいっていない感じで心配だったのですが、葵ちゃんが作った二人の思い出のお菓子をひとつのきっかけにして、気持ちをちゃんと通じ合わせることができたようで、良かった~!!
幼馴染カップルのロマンスは大好物な私です。
キヨ様も優しさだけではない強さを特に今回の件で確実に身に着けつつあるようで、信頼できる人達も確かにいるようだし、まずは大丈夫かな。イタキさんが好きでした。ちょっと天神屋のサスケ君みたいな。
キヨ様と春日のかつての現世デート、500円を渡した人物の正体、絶対あの人ですね。五百円という半端な金額が絶妙にらしいというか……。そしてふたりともちまっと可愛い顔して当たり前に葵ちゃんよりずっと年上だという事実にううむとうなったり。

あと今回何気に頑張っていたのがお涼。そうか、雪女だから彼女のふるさとでもあるのか……。あまり明るくはない過去をさらっと語り全然湿っぽくないお涼が、なんか、らしい。それでも確かにふるさとなんですよね。
葵と春日とお涼の天神屋三人組の女子会っぽい雰囲気を久しぶりに味わえて、懐かしくも嬉しくなりました。
お涼と春日の先輩後輩の関係も変わってないのがいいですね。ほっとします。
そして男性陣の中でやっぱり今回何気に頑張っていたのは乱丸。特にキヨ様とは全然タイプの違う者同士だからこそ、キヨ様にいい影響を与えられたんじゃないかなと。
乱丸と銀次さんの嫌味交じりの応酬も今となっては微笑ましい。

大旦那様の秘密が終盤でかなり核心に迫ってきた感じで、銀次さんの意味深な台詞もあり、おおお、そういうことだったのか……。心の中で盛り上がりまくりました。
葵ちゃんの呪いというのは、やはり、史郎さん関係のものなのかしら。『浅草鬼嫁日記』を読んでいる限り相当やっかいそうな呪いですし、もしかして史郎さんは孫娘を救うために、大旦那様と契約したということなのかしら。分からないけれど。
確かに借金のかたにお嫁入り~という当初の設定をもはや誰も覚えていないんじゃないか、というほど天神屋の欠かせない一員にいつのまにかなっている葵ちゃんですが、借金を返してしまえば、解放されるという選択肢も現実味をおびてくるんですよねえ。
大旦那様の思惑が完全にはまだ読めなくてもどかしい!
次巻は大旦那様のパートみたいですし、ここら関係のもやもやが明らかになるかしら。早く読みたい。
葵ちゃんへの愛情は、なにもかもぼんやりとしかわからないなかでも、たしかにつたわってくるのに、じんときます。
ほとんど実際に登場していないながらにこの存在感、さすが、天神屋の大旦那様だけあるな~とも思うのでした。

一方大旦那様と葵ちゃんの距離感が近づいていく様を気持ちを隠して優しく見守る銀次さん……切ない!!
葵ちゃん救出に間違いなく重要な役目を担っていたのに常に身をわきまえて一歩引いている銀次さん、切なすぎる。
私は葵ちゃんにはやっぱり大旦那様と一緒になってほしい派なのですが、ですが!銀次さん自身の幸せは、どうにかならないかなあ。ううう。
身を挺して葵ちゃんを守り抜く彼の姿にこみ上げてくるものがあります。

さてこのお話のメインはなんといっても美味しい葵ちゃんのお料理。
かくりよではまだちょっと珍しいものもある食材がどれもこれもきらきら豪華でおいしそうで、がしっと心をつかまれてしまいました。特にチーズ推しがすごい。読んでいてチーズのかたまりを食べたくて食べたくて仕方なくなってきました……。
醤油が隠し味の和風チーズフォンデュも、あんこ重ねの和風ティラミスも、ツナカレーもアイス大福も油揚げ入りチーズドリアも、みんなおいしそうです。ううう。
チーズが受け入れられたのはまずはチーズケーキ、お菓子からだった、というのは、なんだかちょっと納得しました。
折尾屋の双子達再登場も嬉しかったです。相変わらずのゆるさと料理への情熱が好きだなあ。
雪ん子たちのたんぽ鍋の場面もほこほことても美味しそうでした。

今回ちょっと思いましたが、史郎お祖父ちゃんとはチーズフォンデュやあたたかな思い出を持っている葵ちゃんだけど、祖父が死んだ今では、現世への執着をもはやほとんど持っていないっぽいのが、彼女、悲しいことだなと。
天神屋にお嫁入りするにはむしろ別れに迷い苦しむものなどない方がいいのは確かなのですが、『浅草鬼嫁日記』や『鳥居の向こうは、知らない世界でした』などと読み比べたりしていると、なんだか、考えてしまうなあ。

そんなこんなで葵ちゃんと大旦那様の約束の物語!!次巻が読めるのをたいへん楽しみにしております!!


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 友麻碧 

『京洛の森のアリス』望月 麻衣 




幼いころに両親を亡くして、引き取り先の叔母の家でも身の置き所のないありす。
かつて両親と暮らしていた京都で舞妓修行に出ることを決意し、迎えの車に乗ったありすだが、老紳士に連れてこられた「京都」はどこか「不思議」な場所だった――。
人間の言葉を話す、カエルのハチスとウサギのナツメと共に、ありすは舞の修行に明け暮れつつ、京洛の森の謎に触れてゆく。


望月麻衣さんの新作のおはなし。
これまでの作者さんの作品とは少し雰囲気の違う、おとぎばなし風味ファンタジーな一冊でした。
とはいえありすが足を踏み入れた「京洛の森」は京都の別世界バージョンという感じで、現実世界の京都ネタも読んでいてちゃんと楽しめるのが、作者さんの作品らしいです。
現代の京都要素にプラスして、昔の京都を思わせる設定もそこかしこにあったりして、日本史ネタ的にも楽しめました。

薄幸の少女が異世界に招き寄せられ、自分自身の力で頑張って、周囲の協力を得つつ成長して自らの居場所を作り上げていく、私の大好きな王道パターンのストーリー。
なによりヒロインのありすが、頑張り屋で健気でどんなときでも人へのやさしさを忘れない、実に私好みの女の子で、とっても楽しめました♪
「京洛の森」というオリジナルの作品世界がかなり独特のルールのもと成り立っているのですが、作品世界の説明に読んでいて引っかかることがほとんどなく、すらすらとても読みやすいファンタジー作品だったように思います。
ひねりはききつつシンプルで王道なストーリー、魅力的で力のあるキャラクター。文庫本としてはあっさりしたページ数に過不足なく収まっていて手に取りやすく読みやすい、ぐいぐい引っ張られ楽しんで読みすすめることができる。作者さんの持ち味がよく出ていて素敵だなと思いました。
……なんというか、「ありす」という名の読書好きの少女が、ウサギとカエルをお供に、異世界に冒険の旅に出る!!というシンプルなあらすじが、メルヘンでファンタジックでとっても良いのです。乙女の夢です(笑)。

本当にありすの身の上はつらくて(長いおさげ髪の由来がやりきれない)そして京洛の森にやってきてすぐのころは努力が空回りしていて、読んでいて胸が痛かったのですが、ナツメやハチスたち、紅葉屋の師匠や橘たち、いいひとたちに囲まれ支えられていて、読んでいて次第次第に心があたたかくなりました。
京洛の森のシステムは、おとぎばなしの楽園のようでもあり、めちゃくちゃシビアで怖い世界のようでもあり。
上手く波に乗れるとすいすい良い方向へゆけるけれど、一つ間違えれば落とし穴にはまってしまいそうというか。
ありすの中に心から好きなものがちゃんと存在していて、それをたつきに次第にこの世界で認められ人を笑顔にしてゆけるようになって、本当によかったな~と心がしみじみ満たされました。
読書好き人間なもので、そのたつきが「本」であったところも、やはりうれしく思うのですよ。
紅葉や橘や牡丹さんみたいに舞を生業にしている女性たちの姿も素敵でした。彼女たちにもまたそれぞれの事情が裏にあるんだろうな。

おとぎばなしといえばやはり王道は、格好いい王子様に見初められて恋に落ちる、という。
王大使殿下の巡業にはしゃぎ憧れをつのらせるお嬢さんたちとか、現実の京都とファンタジー世界のほどよくロマンティックで堅苦しすぎないアレンジ具合がお見事です。
それにしてもありすの初恋の君はいったい何をしているんだ???と若干憤りを覚えつつ読んでいたのですが、そういうことかーーー!!!まったく気づきませんでした。名前も言われてみればこそで。
というか、もう結婚のことは確定で周囲も了承済なんですね。そうですよね、幼い日にしっかり約束してましたもんね(笑)。特殊なおうちの事情があるとはいえ、さりげなく外堀をすでに全部埋めている彼がちょっとかわいいです。
妹の菖蒲姫もお妃さまも従者のひとたちも気に入りました。

地図屋の亮平さんのエピソードも印象的でした。彼の手助けはとりわけ頼もしかった。奥さんのエピソードも印象的で、最後の彼女の助けにほろりと。バーベキューおいしそうでした。
あとありすの叔母さん一家についてもその後の便りがあってよかったです。

ところで庭春樹さんの表紙イラストが淡く繊細でにじみでるようなパステルカラーでとってもきれいでかわいらしくて、おとぎ話風味のファンタジー世界にとにかくぴったりで、表紙にぴんときたひとは読んでとにかく間違いない、と言い切れるのがいいですね(笑)。

不思議要素込みの和ものが好きな方、少女の異世界トリップものが好きな方、あとそんなにファンタジー得意じゃない……という方にも、おすすめできそうな一冊。
あと安定の京都に行きたくなる作品でした。


この一週間くらいのそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 望月麻衣 

『わが家は祇園の拝み屋さん7 つながる想いと蛍火の誓い』望月 麻衣 




京都の護りの結界の補強に向けて、準備合宿をすることになった小春と澪人達チーム五人。
その夜異形のものに遭遇してしまい、澪人の力で事なきを得たものの、早く結界を張り直さないと京都に「魔」が入り込んでしまう。
一度目の「補強」の成功に続けて計画を進めていく中で、小春、そして澪人の兄の和人の側に影の気配が——。


『わが家は祇園の拝み屋さん』シリーズ第七弾。
表紙イラストのふたりの良い表情と雰囲気まさにその通りの、これまでの伏線がすべて、すっときれいに収まった巻になりました。
ああ、よかった。小春ちゃんと澪人くん、本当に良かった~!!!
読後感がとても幸せで思わず涙ぐんでしまいました。
雪が凍り付く寒い夜に、心があたたかくほこほこぬくもってきて、何といえばいいのかしら、まるで祇園の吉乃さん達のおうちの団欒の席に私も実際に混ぜてもらっているような。

改めて友風子さんの表紙イラストは毎回秀逸で、特に澪人さんのうるわしさ、色気のある格好良さ、それでいて凛ときりりとした雰囲気、涼やかな目、もはや友風子さんのイラスト抜きには成立しえない(私の中で)。
墨染の着物が本当に映えていらっしゃる。あざとくて素敵です(笑)。
あと小春ちゃんの幸せそうな笑顔の横顔がたまらないです!
蛍の淡い光も夏の夜の闇も、お話の雰囲気にとてもあっていて、優しくて可愛らしくてあたたかな雰囲気で、すてきですね。

あと、帯の「私を救ってくれた大好きな京都を守りたい——」というフレーズが、心に染み入りました。


ではネタバレ感想ご注意を~。(そして今回はあとがきネタバレ注意だそうです。)


サブタイトルの「つながる想い」、前世に「引きずられる」のではなく「受け継いでいく」というスタイルを主役ふたりが選択していて、ああ、ふたりらしいな、素敵だなと思いました。
無理のない自然な感じで登場人物がつねに前向きで未来を信じているところが、私がこのシリーズを好きな理由の一つ。
とはいえ、良く考えてみると、小春も澪人も、最初の頃と今の姿は、本当に変わったな~。とも思います。
前巻でようやく素直に生きようと腹をくくった澪人の雰囲気はぐっとやわらかく自然体になったし、小春ちゃんも本当に凛としたというか成長して素敵な女の子になりましたね。
前世を自分の中で受け入れて、そのうえで今をちゃんと頑張って生きている感じが伝わってきて、うん。

恋に素直に生きることにした澪人くん、なんだか本当に雰囲気変わって可愛らしくて、照れたり相手の気持ちに不安に揺れている様に、いちいちきゅんきゅんときめいてしかたがなかったです(笑)。
それでも「くそ真面目」なのは彼の本質なので……そこがしっかりしているからこそ安心してときめくことができるというか。もっと積極的になってもいいのにな~とか思いつつ、これ以上だと読んでいるこちらが恥ずかしすぎる~とかも思う訳で、心の中で葛藤が(笑)。
そして澪人さんの雰囲気が自然体になったと同時に、彼の京都ことばがぐっと優しく柔らかく響くようになった気がして、読んでいて心地よかったです。雅ですねえ。基本が丁寧口調のホームズさんとはまた別のはんなり艶っぽい色気が。
小春ちゃんはなんというか、恋に関しては動じなくなったな。という印象。澪人視点が多めだったからかもしれませんが。
和人さんとのデートの顛末がラスト近くまで引っ張られていたのもあって。読者の私も澪人さん同様やきもきしてしまいました。
というか、和人さんとのデートで小春ちゃんの中では自分の気持ちにひとつの決着がついて、この時点では心が決まっていた、ということだったんだろうな。とラストまで読んでから改めて思いました。

結界補強対策チームの合宿、チームの五人のやりとり、わいわい楽しそうで良かったです!!
深刻な状況を「不謹慎」ととらえることなく、「ワクワク楽しい気持ち」を肯定的に、実際のパワーとしてとらえる澪人さん達のスタンスが、とてもいいなあと思いました。
そうか、こんなにシンプルでいいんだ。現実世界でもこんな風に考えていきたいな。
いかにも学生さん達の合宿というエピソードの数々がいい。
五人とも程度の差があれ特殊な立場の学生さん達で、気心や事情を打ち明け合ったうえで素直にみんな楽しんでいる様が、可愛らしく微笑ましくいいものです。特に澪人さん良かったよね……(おばさんのような視点)
そして可愛いものには即反応するクールビューティー由里子先輩が至る所で可愛らしくって、これまたきゅんきゅんときめいてしまいました。ちゃんとみんなのお姉さん役なのも頼もしい。(朔也君の姉ちゃんみたいと指摘されて少し嬉しそうにしている場面とか本当にもう可愛らしい……!)
朔也君のちょっとチャラいところも、もう彼の個性として私も自然に受け入れられるようになってきました。
でも今回、彼の以前の行いのある意味報いとも思える出来事があって、彼がそこに自分自身できちんと落とし前をつけていった展開、良かったです。(由里子先輩の補助が格好よかったです!!)
あと自分できちんと考えて、コウメちゃんに謝りたいと思う、心根のまっすぐさも、見直しました。
朔也君と八雲さんの仲良し姉弟も好きだな。小春ちゃん達の家のごはんに誘われたもののふたりですたこら逃げ出した場面が微笑ましくて笑えました。ふふっ、皆普通じゃないんだな(笑)。
愛衣ちゃんも、そんな普通でないメンバーの中で大健闘です。
特に小春に悪意が向けられた場面での彼女の友情の頼もしさといったらなかったです。彼女の賢さとまっすぐな正しさが好き。

五人チームでの結界の補強、和人さんの危機を救いに駆け付けた澪人と小春ちゃんの戦い、おもてだったストーリー的にもかなり盛り上がりました。皆本当に頑張った!おつかれさま!!
安倍晴明のこと実は私もあまり基本的なこと分かっていなかったので今回とても勉強になりました。やっぱりすごいひとだったんだな~。
和人さんと澪人さんの危機的な状況での兄弟思いあう心に目頭があつくなりました。
玉椿の知識を得て澪人の助けとなる小春の立場も、とても自然で良かったです。いざというときの度胸!やっぱり恋する乙女は強くなりますね。
というか、最後にすべてを持っていったのは、宗次朗さんと杏奈さんでしたけどね!!
宗次朗さんはもう持っているオーラからすべてが格好いいというか、別格というか。今回色々納得してしまった。

宗次朗さんといえばやはり今回もおいしそうなお菓子がいっぱいでわくわくしました。
飴細工のドームに入ったアイスクリームって想像するだけで魔法みたいなデザートですねえ。
そしてやはり私はシリーズの最初の方に出てきたミニあゆが気になる。ふわふわもちもちのあゆ、絶対美味しい。

玉椿姫と左近衛大将の前世の清算の場面、そこからつながるふたりの場面、繰り返しですが良かったです。
ストレートに想いを告げる姿にぐっときました。
あとようやく和人さんの前世での役割が明らかに。
そういうことか!そういうことだったのね!!納得。
現世の和人さん自身の想いを考えるとちょっと切ないのですが、なんだか泣き笑いのような幸せな気分で満ちてきたのでした。
そして小春ちゃんが賀茂兄弟に対してちょっと強くなったなと感じるようになったのも、自分の中で納得。お母さんはつよい。

皆の前で小春との交際を宣言した澪人さんやるな~と思いつつ(個人的にここがいちばん「あざとい」と思った)、バージョンアップした(?)コウメちゃんのもふもふ可愛らしさが、最後まで最高でした。
というかコウメちゃんがずっと大事に守っていた秘密にびっくり仰天。由里子先輩とのご縁はもしかしてここつながり?
若宮君コウメちゃん達サイドの意味深な会話もありつつ。

本当にすべてがきれいに収まってこれで完結といっても良いかと思うような七巻目でしたが、どうやら続きが読めるようで、わあ、嬉しい♪
またこのメンバーが元気で色々頑張っている姿を見守っていけるのを楽しみにしています。

書店応援特典のペーパーも『寺町三条のホームズ』とのコラボでお得感いっぱいで楽しかったです。
こちらのシリーズの新刊もとっても楽しみです~。


一昨日昨日と記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 望月麻衣 

『かくりよの宿飯七 あやかしお宿の勝負めし出します。』友麻 碧 




大旦那様の帰りを待つ天神屋に現れた雷獣。鬼神の大旦那はもう戻らない、この雷獣が新たな大旦那になるのだと、不吉な予言を残す——。
消えた大旦那様、天神屋最大の危機の中、銀次たち従業員たちは団結して動き出す。
葵も大旦那様を捜すため、妖都へ向かう宙船ツアーの屋台で料理を振舞うことになり——。


『浅草鬼嫁日記』と同時発売だった『かくりよの宿飯』七巻目でした。
こちらの方もストーリーが大きく動いて、大旦那様達の過去や「隠世」のそもそもの成り立ちも明かされ、そして糖分増量(微増?)で、読んでいてとっても盛り上がりました!楽しかったです!!
そして葵が次から次へとこしらえるごはんが相変わらず美味しそうで美味しそうで。
葵が作る料理の「力」というか「存在意義」というか、そういう立ち位置がしっかり確立した、そんな巻でもありました。

表紙イラスト、今回は白系男子ということで。
確かに白夜さん今回大活躍でいらっしゃった……あと砂楽博士の外見がなんだかちょっと頼りなく優し気で知的で好みです(笑)。
そして大旦那様は一体どこに?……探しまくりました。
葵の影にあたるところなのですかね。なんて影の薄い……不憫(苦笑)。
ほとんど実際に登場している場面がなくても、それでもきちんと存在感がある、大旦那様ってある意味やっぱりすごい。

読んでから間が空いてしまったのですが特においしそうだった食べ物のこととかやはり感想メモとして書き残しておきたい!

追記以下はネタバレ含み感想ということで。


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カテゴリ: ファンタジー(和風)

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