FC2ブログ

Admin   *   New entry   *   Up load   *   All archives

ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『京都寺町三条のホームズ12 祇園探偵の事件手帖』望月 麻衣 




『京都寺町三条のホームズ』シリーズ第十二弾。
夏休みも終わった九月、今度は「小松探偵事務所」で修業をはじめる清貴。そして清貴に弟子入り(?)することになった円生。
清貴、円生、小松の三人は、祇園の舞妓のストーカー疑惑に幽霊騒動、そして「自分を殺した人物を知りたいのです」という男の奇妙な依頼を受けることになる——。


『京都寺町三条のホームズ』さんの待望の最新作でした。
ついに本物の探偵になったホームズさん!!予想はしていたけれどはまりすぎです(笑)。
表紙イラストの少し暗い時間の祇園の町並み、三人のそこはかとなく緊張感が漂ってくる立ち位置、読み終えてまた改めて見返してみるとこの巻のイメージぴったりで、相変わらずさすがです。
カラー口絵の清貴君と円生のイラスト、笑顔が全くないふたりながら、スマートさと色香がばしばし漂ってきて、ほーっ、格好いいです。(特に円生には不本意でしょうが)相棒、という感じ。
いや、それ以上に破壊力があったのは、その裏の舞妓さん。
まさかのあの子でした。美少女っぷりと色香がすごすぎる。さすが。
(確かに葵ちゃんの可愛らしさは、舞妓さんとはちょっとカラーが違う気がしますね……)

いやあ、半ば予想はしていましたが、探偵役のホームズさん、小松さんの事務所でも大活躍!!
京都の横のつながりを最大限に活用しているのがさすがです。こればっかりは確かに清貴君の財産です。
でも確かに、それも祖父からのつながりを保つ努力を怠らず、な彼ならではなんですけれどね。とらやのお土産の用意がそつがなさすぎてさすが。あの吉乃さんのところにまでとらやを持っていくとは。
(というか、とらやって東京のお店?京都のお店?いまいち謎だったのですが、おかげでようやく理解できました)
とはいえ円生とは案の定仲良しとはいいがたく、特に円生が常に突っかかっていて、空気は正直あまりよくない。
出会いの頃に比べればこれでもだいぶ軟化しているのも分かるのですが、とにかく、小松さんが気の毒でした。それにつきます(苦笑)。
拝み屋さんシリーズとのコラボも一瞬あったりして、ファン的には二重に楽しめました。
確かに同じ祇園が舞台なのに、作品が違うと雰囲気が違いますねえ。
資産家の人達のちょっとドロドロした人間模様、いかにもドラマのサスペンス劇場みたいな雰囲気も、このホームズさんシリーズっぽいです。
「祇園探偵」というネーミングもまたよくはまっています。

葵ちゃんの出番がどうしても少なくて、正直それが読んでいて寂しかったのですが、第一話の最後の大型犬のようなホームズさんが私の気持ちをすべて代弁してくれたので、まあ、私も満たされてしまいました(笑)。
本当に葵ちゃんのことだけには別人のように大人げなく余裕をなくすホームズさん、相変わらずでした。
むしろますます凄みをましていて、正直ちょっと怖いよ(苦笑)。
円生という存在が、ホームズさんにとっても特別なライバルだということかな。

では各章ごとに感想メモを。
『プロローグ』
葵ちゃんの出番が少ないので、貴重なお留守番葵ちゃんプロローグでした。
その三人がそろってまっさきに小松さんを心配しているのが、さすが、分かってる!!
確かに距離感の近さはこれまでとは段違いで嬉しいですよね。

『第一章 最初の出会い』
ほんとうにもう、小松さんがかわいそう(苦笑)。
事件はなかなかドロドロとしていましたが、ほの香さんもも香さんたちは、麗しく可愛らしかったです。やっぱり女の子がいるとお話が華やぎます……。ちょっと『京洛の森のアリス』の彼女たちを思い出してしまいました。
三つの事件がそうつながるか、と思いました。
夕花さんがすっごく苦しんだんだろうなとやり切れなかったです。
写真のやりとり、清貴君は葵ちゃんに真意がきちんと伝わって、彼女ならと思ってはいただろうけど、嬉しかっただろうな。(最終的には円生もちゃんと分かってくれて良かったと思います)
利休君も相変わらず清兄一筋で……あの格好も清貴君のためならそんなに嫌がってないっぽいのが徹底してる。
そして葵ちゃんに抱きついた後の清貴君の切り替えのギャップがすごすぎて、吹き出してしまった。

『掌編 拝み屋さんと鑑定士』
澪人くんにまで嫉妬する必要はないと思うけれど……でもまあ気持ちは分かるかな。
『拝み屋さん』シリーズって、語り手が斎宮のゆかりの少女小春ちゃんだからか、清らかで楚々としたイメージがどっちかというとあるんですが、確かに世間一般的な「拝み屋さん」のイメージってつきもの落としとかドロドロ系かも……そういえばあまり考えたことなかったなあ。

『第二章 矜持の証』
葵ちゃんと秋人さんとお出かけする、箸休め的なエピソード。
私も平安神宮って行ったことないんですよね。ホームズさんの解説に、京都の歴史に思いをはせて、じんときてしまいました。
香織ちゃんも元気そうで良かったです。彼女には本当に幸せになってほしい。

『第三章 パンドラの箱』
「二人のナミカワ」のとても丁寧で詳細な解説に、私も気になってきました。図書館でまた調べてみよう。
パンドラの箱ということで、このお話もまた結構ドロドロでしたが、思っていたよりソフトな結末で良かったです。
確かにすごすぎる宝物を目にしてしまったら、心を強く持っていないと負けちゃいそう。
ぎりぎりグレーゾーンにいながらしゃんと踏みとどまっている敦子さんが素敵だなと思いました。息子さんにも救いはあった。
ロマネ・コンティの薀蓄から確実に相手を追い詰めていくホームズさんがすごかったです。
ホームズさんと円生のふたりといるとどうしてもかすんでしまう小松さんですが、本来彼の情報収集能力はホームズさんも一目置いているんですよね。
小松さんはどうかその人の良さを保ったまま、地味だけどいい仕事をする探偵でいてほしいな。

『掌編 不思議な時間』
ホームズさんとどちらがすぐれているか、競う必要なんてない、と「二人のナミカワ」エピソードを通じて気づいた円生、一皮むけたかな。
それにしてもホームズさんに恋する葵ちゃんの反応が可愛くて、普段のもうだいぶ大人びた雰囲気からのギャップがたまらない……!これは確かに撃ち抜かれてしまいます。
葵ちゃんに海外への同行を断られて落ち込んでいるホームズさんも気の毒かつ可愛かったです。でも確かに葵ちゃんの気持ちももっともです。恋人同士であり、師匠と弟子であるふたりですからねえ。
好江さんが一緒ならば、ホームズさんも認めるしかないよね。

『エピローグ』
ここにきて再登場のイーリンさん。
そ、そういえば、あの雨宮史郎さんという男が不気味に存在したままでした。
今後の展開がまるで読めないですねえ。一体どうなっちゃうんでしょう!!

『掌編 想い出の地で』
今回店長の出番もほぼなかったので、嬉しいエピソードでした。店長が登場すると話がほんわか和むのでいいなあ。

円生視点も多くてだいぶ人となりも分かってきて、ちょっと可愛くすら思えてきた巻でした。
でもやっぱりもう少し葵ちゃんの出番があると嬉しかったかな!(笑)
それにしても葵ちゃんは鑑定士としても女性としても成長著しいなと、随所で感じました。
あの世界規模の招待にお声がかかるなんて、すごくない?え、めっちゃすごいよ??
彼女のニューヨークでの今後の活躍も、読みたいです~!!!
清貴君の家頭邸改装計画とかも気になりますが。葵ちゃん次第かしら。

ブログで感想を書き切れていませんが、『わが家は祇園の拝み屋さん』シリーズも『京洛の森のアリス』シリーズも引き続き楽しく読ませていただいています!!
他シリーズを読む際にも嬉しい、今回ついていた京都の詳細な地図でした。


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 望月麻衣 

『京都寺町三条のホームズ11 あの頃の想いと優しい夏休み』望月 麻衣 




『京都寺町三条のホームズ』シリーズ第十一弾。
大丸京都店での修行を終えて次の修行までの短い夏休みを「蔵」で過ごす清貴と、大学二年生になった葵。
ふたりの元に、清貴の高校時代の先輩が尋ねてくる。共に向かったのは、紅葉で有名な永観堂で。
その他、円生の生い立ちと清貴への複雑な感情、香織の恋の行方など、これまでのシリーズの魅力が多方面から楽しめる一冊。


『京都寺町三条のホームズ』シリーズの新作を新年早々読むことができて、うれしいです。ふふふ。
アニメとか各種コラボ企画とか楽しそうと思いつつ乗り切れておらず、どんどん人気作になっていく勢いになんだか自分から遠い存在になったようでほんの少し寂しいような、そんな気持ちも正直あるのですが。
でもでも原作小説版、やっぱり大好きですので!!
それに作品全体が盛り上がっているのは、はたからそっと眺めているだけでも楽しいですし。
そういうエンターテイメント性というか、お祭りめいた雰囲気が、嫌味にならずにばっちりはまる作品だと思うのです。
あれかな、清貴君の京都を背負った究極のおもてなし精神かしら(笑)。

そんな自分でも整理のついていない思いもあるのですが、それはさておき。
今回のお話は、シリーズの本筋はいったん小休止といいますか、まさに「夏休み」。
修行の合間にのんびりお休みを楽しむホームズさんと葵ちゃん、そして今までのシリーズの流れからすくい上げられてきた、各視点からのエピソード集。といったところでした。
はらはらどきどきサスペンス的な展開はひかえめで、サブタイトル通り、終始のんびり優しい雰囲気で読むことができました。
ラブラブの清貴君と葵ちゃんのふたりの姿に、読み終えて幸せ~な気分にひたれました。

円生の過去とか、清貴君と葵ちゃんが出会った場面の清貴君視点からの振り返りとか、シリーズファン的には嬉しい読みどころがいくつもあったのですが、個人的に特に印象的だったのは、やはり香織ちゃんの恋の決着でした。
カラー口絵のふたりにどういう展開になるのかけっこう心配していました。そっか。まあやっぱり、そうだよね~。(ため息)

ではでは、追記以下に、ネタばれあり各話感想を書いてゆきますね。


そしてここ二週間弱の間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

-- 続きを読む --

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 望月麻衣 

『京都寺町三条のホームズ10 見習い鑑定士の決意と旅立ち』望月 麻衣 




『京都寺町三条のホームズ』第十弾。
葵の二十歳の誕生日の記念に、ゴールデンウィークに旅行にいくことになった清貴たちふたり。
しかし旅を楽しんでいるのもつかの間、かつて大原の宗教施設での事件に関わっていた雨宮史郎が、ふたりの前に姿を現す。
彼の手には、盗難にあい海外のオークションに出品されていた、清貴たちの旧知の画家の作品である掛け軸が——。


『京都寺町三条のホームズ』待望の新刊です!!
最近はアニメ化もついにはじまり各種イベントも目白押しで、ますます盛り上がり人気シリーズになってきた感じ。
もともとお祭り騒ぎとかわいわいにぎやかさとも親和性が高いおはなしだと思うので、なんだか私も楽しくなってきます♪
加えてコミカライズ二巻目も同時発売。ますます気分も盛り上がります。

今回のお話は、Web版でもばっちり読ませていただいていた、葵ちゃんのお誕生日祝い・清貴君と葵ちゃんふたりの豪華列車旅行編♪
待ってました~!!!の展開です!!
というか、書籍版でこのお話が読めるとは、実は思っていなかった(笑)。(基本甘々なWeb版の中でもトップレベルで甘いお話だったので……私は大好きなのですが!)
書籍版では、さすがにというか、Web版ほどの甘さはありませんでしたが、葵ちゃんが二十歳と年齢が進んでいる分、彼女も大人になっており、ふたりの精神面での結びつきがしっかり丁寧に描かれていて、Web版とはまた違った品がある落ち着いた雰囲気で読み応えもあり、これまたとても良かったなと思いました。
それに書籍版の展開でも十分甘いですし(笑)。私は大満足です。
最初に「恋愛色が強くなる」と説明書きがあるのも、心構えとワクワク感を持ってお話を読み進められるので、親切で良かったなあと思いました。サービスが行き届いてるのも相変わらずこのシリーズらしいです。
くわえて前回のお話で例の円生の不穏な前振りがあったので、清貴君と葵ちゃんの今後は大丈夫なのか???と、はらはらどきどき要素もあり。結局最後まで安心して読めなかったです。書籍版ならではの良きスパイスでした(笑)。

というわけで、メインが旅行編な分、京都ネタはちょっとひかえめ。
といいつつ清貴君の修業エピソードも一話分しっかり入っているし京都お留守番組のミニエピソードもあったりするので、いつも通り京都に憧れを募らせつつ楽しむこともできました。
私の贔屓キャラの香織ちゃんの秘密の恋にも、ひとつの答えが。

まずは表紙イラストのふたりがラブラブで素敵……お互いのしぐさと表情に、相手への信頼と愛情が満ちていて、素敵です。
葵ちゃんのすっかり大学生な大人びた服装も良いものです。
そしてカラー口絵のふたりの距離感と雰囲気に……一層どきどき。ふたりの服装がラフなのにもどきどき。
葵ちゃんの長い髪と横顔がきれいで、それを見守る清貴君の表情が優しくて、はやくもよろめきました。
あと利休君の物憂げな美少年っぷりが絵にはまりすぎです。

では、続きの感想はネタばれ込みということで、追記に格納いたしますね。


この一週間くらいの間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

-- 続きを読む --

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 望月麻衣 

『京都寺町三条のホームズ9 恋と花と想いの裏側』望月 麻衣 




『京都寺町三条のホームズ』シリーズ第9弾。
一月になり大学にも慣れてきた葵だが、修行中の清貴とはなかなか会えない日々。
清貴の修行先・伏見の老舗酒造で起こった家宝の徳利紛失事件、そしてほぼ同時期に、香織が所属するフラワーアレンジメントサークルで葵が直面した先輩達の仲違い。
二つの出来事の裏には、それぞれ切ない想いが秘められていて——。


『京都寺町三条のホームズ』の新刊!!待ちわびていました。ようやく読めました。
今回は特に事前でネット版をごく一部しか読んでおらず大部分まっさらな状態で読むことになったので、内容に関するハラハラドキドキ感もひとしおでした。
(ただそのごく一部の既読分がここでそうくるかーー!!と読んでいて叫びそうになりました。かなり盛り上がりました。)


結論から申し上げますと、今回も最初から最後までめっちゃ楽しかったです!!
サブタイトルにもあるように、清貴君と葵ちゃんの主役カップル、そしてサブキャラたちのロマンスが随所にちりばめられていて、お花や和歌や骨董品や美しく雅な小道具も随所で光っていて、ときめき度満載でした。
今回はシリアスな事件ネタは控えめで、よりロマンス面に重きが置かれていたように感じました。
この歳になっても甘々少女小説を愛好している私としては、今回のこの盛り上がりようはたまらなかったです。ふふふ。

遠距離恋愛でも葵ちゃんと清貴君はちゃーんとラブラブで、読んでいて微笑ましく幸せでたまらなかったです。
なかなか会えない寂しさを募らせ葵ちゃんが見せた涙にぐっときました……。清貴君の「尊い」、私も分かる(笑)。
一方途中で円生がとんでもない爆弾を落としていきました……わあ、これは一体どういうストーリーにつながっていくのやら。
その後の秋人さん話で彼の屈託のない明るさと友情にだいぶ救われて楽しく読めました。


ではではさっそくここからネタバレ交じりの感想です~。
長くなってきたので追記にたたみますね。


その前に、コミックス版の書影も、ぺたり。



-- 続きを読む --

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 望月麻衣 

『古書カフェすみれ屋と本のソムリエ』里見 蘭 




古書カフェすみれ屋にて、オーナーのすみれが心を込めて作る絶品カフェごはんと共に供されるのは、古書担当の紙野君の差し出す本が紐解く五つのミステリー。
すみれ屋を慕って集まる人々と店員がつむぐビタースウィートな物語。


はじめて読む作家さんのお話。
読書メーターでふと目にとまり、心惹かれて手に取ってみました。

古書カフェすみれ屋は、オーナーすみれさんと古書店担当紙野君のふたりのお店。
かつての同僚であった三十代のふたりがパートナーとして営む、一風変わったスタイルのごはんカフェ兼古本屋さんです。
物語はカフェのオーナーで料理の作り手すみれさん視点で語られてゆきます。

好きです。
いやー、ものすごく好きです!!
すみれさんの作る異国の香りがする料理はどれもものすごく美味しそうで、紙野君の紹介する本もどれも興味深く、お客様が関わる日常の謎解きもしみじみ味わい深くて、読み進めるごとに物語に惚れ込んでいってしまいました。
すみれ屋さんの雰囲気があまりに居心地よくて、読み終えるのが勿体なくってちまちま少しずつ読み進めていました。

連作短編形式で、お客さんがそれぞれメインのミステリーは、やや大人風味というかビターなものもありますが、どのお話も後味にほのかな救いがあるのが、良かった。
あとすみれさんと紙野君のふたりの人柄が良いです。ふたりとも基本穏やかなのだけど芯に譲れないものを持って働いているのが格好いい。
そしてふたりの関係もとても良い。
最初は私、ふたりをそんな仲として読んでいなかったのですが(すみれさんが恋愛に縁遠い雰囲気だと当初思っていたのもあり)、なんというか、三十代の自立した大人同士だからこその距離感があって、その距離感あってこそのほんのりした糖分が、たまらなくときめきます。

紙野君はこの物語において空恐ろしいほど優秀な探偵役で、淡々とした性格でときどき強引なほどマイペースで、ちょっととっつきにくさを覚えてしまうようなひとなのですが、すみれさんの人柄と料理にはべた惚れで(そう明記してあるわけではないのですが端々から伝わってくる)、ときどきほんとうにさりげなーくアプローチをかけていて、でも全然通じてなくって。そのあたりがぐっと共感を呼ぶというか親しみやすさが出てきていて、うん、とても好きです。
すみれさんの方も、お名前のイメージにふさわしい、凛とした大人の女性の優しさを持つとても素敵な方です。
彼女の語り口でちょっとほろ苦い物語もどこかふんわり優しいイメージを添えているように思います。
何より美味しいものが大好きで美味しいものを作っているときが何より幸せなのが端々から伝わってきて、好もしいです。
過去の出来事もありちょっと恋愛には一歩引いているところがあるかなあ。うーん、がんばれ紙野君。

『恋人たちの贈り物』
すみれ屋開店して間もないころですみれさんも手探り状態かな。
恋人たちが結構危ういところまでいっていたのがハッピーエンドで心満たされる後味でした。美雪さんの切符の良さや懐深さに憧れる。
レモンメレンゲタルトとアップルタイザー、バターミルクフライドチキンが美味しそう!今の季節にはぴったりなお話でした。
紙野君のクリスマスプレゼント『パン屋のパンセ』という歌集が、以降の物語においてもぽつぽつ登場してきて、どの歌もとても味わい深くて良い感じ。

『ランチタイムに待ちぼうけ』
サンドイッチに並々ならぬこだわりをもつすみれさんがますます好きになったお話(笑)。
自家製コンビーフサンドイッチもフィリーズチーズステーキサンドイッチもおいしそうなこと!!
私自身はサンドイッチを食べるときあまりお肉系のものは食べないのですが、このお話に出てくるサンドイッチの魅力にはくらくらよろめいています。お肉をおいしそうにたっぷり食べる人って確かに見ていて気持ちいい。
『センチメンタルな旅・冬の旅』も池本氏のエピソードも、はじめのうちは読んでいて正直そんなに好みじゃなかったのですが、読むごとにじわじわ味が出てきたと言いますか、ラストでふっきれた彼の姿は、清々しく良かったです。

『百万円の本』
このお話がいちばんシリアスだったかなあ。
『パン屋のパンセ』の歌とすみれさんは本当に相性がいいな。さすが紙野君(笑)。
わずかにマヨネーズを混ぜたクリームチーズで作るきゅうりのうすぎりサンドイッチ・すみれさん風が、おいしそう!どのサンドイッチも惜しみなく手間がかかっていて私には手が出そうにないけれど、これならなんとかぎりぎり……真似できるかしら。
ピーチメルバもおいしそうだし、ピーナッツバターサンデーのあまじょっぱい感じがまたたまらなく美味しそう。確かにこれは男の子が好きそう。
夜のカフェタイムにゆっくり美味しいデザートを味わうって良いですね。
健太君と『にんじん』のエピソードは胸が痛かった。
ラストのオムレツサンドが光のイメージでやっぱりたまごサンドには明るい生命力があるなあ。(『下鴨アンティーク』の真帆さんのたまごサンドのように)

『火曜の夜と水曜の夜』
私もすみれさん同様すっかり騙されてました。気づかないですよ!
この物語に出てきた『料理歳時記』、実は私自身、数年前に某所で譲り受けて積み本にしていた本でした。
読了後に引っ張り出してきて読んでみたら、確かに名作でした。これはしみじみといい。なんで私今まで読んでなかったんだろう。
さておき、お客さんに触発されて恋愛トークをしているすみれさんと紙野君の距離感がときめいてしかたなかったです。
すみれさんに誤解されたと思うとそれまでの淡々と冷静な態度を途端に崩して慌てだす紙野君が微笑ましい。
淡々とした彼なりにすみれさんのディナーをじっくり味わって深く満足しているのが伝わってくるのもいい。
バニラスフレおいしそうだな~!!そしてクロワッサンの歌がお気に入り。

『自由帳の三日月猫』
これまでのお客様も順に再登場してくる総集編といいますか。
お客様の後押しでようやくすみれさんも意識しだしたかしら。さてどうなる。
『猫語の教科書』って猫好きにはたまらない本ですね!そしてクロワという名づけも好き。
オムカレーのドリアも白アスパラもおいしそうです。
前話で若干ひっかかっていた馬場さんとその奥さんのこともフォローが入っていてほっとしました。

どうも現在二巻目も出ているようなので、ぜひとも読んでみたいです。
そして巻末の参考文献のお料理本リストにテンションがぐんと上がった私。図書館で探してきます!!
『パン屋のパンセ』の作中の歌が素敵で、これは手元に置いておきたいなあ。
その前に『料理歳時記』を最初から最後まですみずみ読みこんでみよう。

繰り返しますが、もう本当に私好みの本でした。まさかこんなにはまるとは(笑)。
色々な意味できもち大人風味の本なので若干人を選ぶかもしれませんが、美味しいものが出てくる本が好きな方にはおススメしたいなあ。
すみれさんのお料理を毎日食べられる紙野君が本気でうらやましいです。
ああ、すみれ屋さんが現実に存在していたらいいのにな~。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 里見蘭 

『スロウハイツの神様 上下』辻村 深月 







中高生に絶大な人気を誇る作家チヨダ・コーキの小説で「人が死んだ」——凄惨な事件から十年。
脚本家の赤羽環がオーナーであるアパート「スロウハイツ」では、環とコーキ、そしてその友人のクリエイターたちが共同生活を営んでいた。
夢を語り物語を作り世間に作品を認められるのを目指して、仲間と共に足掻き全力を尽くす日々。
そんな彼らの日常は、新しい入居者・加々美莉々亜の登場によって、大きな変化を迎える——。


ずっと気になっていて、もう結構な前から積み本になっていた小説でした。
先週の三連休に、ようやく手に取ってみました。

最初の方は頻繁に移り変わる語り手と登場人物たちの個性の強さに若干話に入っていきづらかったのですが、次第にぐいぐいひきこまれてゆきました。
特に下巻から。ひとつひとつの何気ない伏線が予想外の方向に収束していくたびにうなりつつ、お話にも勢いがついて飽きさせず。
何より今までのすべての伏線がつながり大きくひっくり返された最終章には、やられました!!
ああ、もう、そういうことだったのかー!!すごくすごく良かった。
確かに最後まで読むと、究極の純愛小説だったのだなあ、としみじみ納得がいきました。
ピュアな恋心と人を思う優しさとそれが報われる瞬間のよろこびと、色々な感情がこみあげてきて、じわじわと目頭が熱くなりました。

チヨダコーキの作品を読むことで辛い境遇から救われた少女と、今度はその彼女のメッセージで絶望的な状況から救われたコーキ。
昔から読書好きで、辛い時やっぱり本(それもいわゆるライトノベルの類)の力で何度も乗り切って生きてきた私としては、やはりこのシンプルなエピソードが胸を打つ、良いものでした。
(途中でややもやっとしたものの最後まで読むとカタルシスがすごい)

あと芸術家の卵の若者たちが「スロウハイツ」で仲良く共同生活を営んでいる空気も、とてもとても好きでした。(コーキと環のふたりはすでにプロデビューしている訳ですが)
オーナーの環が何と言っても我が強い性格の女性で他の皆も個性的で自分の中にゆずれぬ芯を持っていて、必死にあがいているがゆえに時にぶつかり合ったり色々なこともあるのですが、確かな友情と絆で結ばれた仲間たちであり、読み進めていくごとにメンバー一人一人に愛着がわいてきて、ラストまでくるともう皆いとしくてたまらなくなりました。
私は特に下巻部分の環とスーの対等な女性同士の友情がとても好きでした!!
その作風からはむしろ一番遠く思える、コーキの不器用だけれど人としてどこまでもピュアで誠実で優しい人柄にも、惹かれました。

あと作中のここぞと言う場面で何度も登場する「ハイツ・オブ・オズのチョコレートケーキ」が最高に美味しそうで、読んでいて憧れの気持ちがどんどん膨らんでゆきました。

今さら私が感想を新しく付け加えるのもおこがましい人気作品なのですが、ネタばれこみの感想メモを、追記に少しだけ。


-- 続きを読む --

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 辻村深月