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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『京都寺町三条のホームズ』3巻~6巻 望月 麻衣 




京都寺町三条商店街の骨董品店『蔵』の店主の孫、家頭清貴こと「ホームズさん」と、アルバイトの女子高生・真城葵のふたりが、骨董品や家頭家関係のあれこれに関わり巻き込まれな日常を描いたミステリータッチの物語。


実は私、この二週間くらい、ずーっとこの『京都寺町三条のホームズ』シリーズ読んでました。
いえ、読みこむごとに面白くてやめられなくなって。
はじめはほのぼののんびりペースで読んでいけるタイプの物語として読みはじめたつもりだったのですが。嬉しい誤算です。
京都ネタも骨董品ネタも相変わらず絶妙で読んでいて楽しいですし、なによりホームズさんこと清貴君と葵ちゃんのじれじれ年の差カップルのふたりがもう!可愛すぎて、読んでいて終始転がってました。
読んでいて顔のにまにまがとまらなくて電車の中でずっと不審者でした。
くっつきそうでくっつかないお互い遠慮し合っているもだもだも美味しかったし、5巻目~6巻目あたりの大盛り上がりも、たまらない!心の中で終始きゃーきゃー言いながら読んでました。
清貴君格好いいし王子様だし葵ちゃんはいい子だし可愛いし!
頭脳明晰爽やかな和風イケメン好男子の表の顔も、腹黒でいけずで変人な裏の顔も全部合わせて清貴君で、彼の表裏の顔をすべてごく普通に受け入れて彼の側で笑っている葵ちゃんがもう、本当にいい!
あくまで普通の女子高生なんだけど、真直ぐな目を持ち心優しく謙虚で度胸のある葵ちゃんは、読めば読むほど得難いヒロインです。

なんというか、葵ちゃんのことを本当に宝物のように大切にして守りいつくしむ清貴君の姿に、読んでいるこちらも幸せになれる、そんなお話。
読んでいて顔がほてりぽかぽかしていて、外が雪で寒くても部屋の中で充実した読書のひと時を過ごせました。

京都の各名所が各巻ごとにいくつも散りばめられていて、描写が程よく魅力的で、読んでいて京都に行きたくてたまらない。
お寺や神社の解説が初心者にも分かりやすくとてもいい。あとカフェやスイーツも色々出てきてみんなおいしそうです。
家頭家は清貴君の祖父の誠司さんが『国選鑑定人』、父の武史さんが小説家で色々普通じゃないおうちで、ゴージャスなパーティやお宝めぐりや上流階級の世界ものぞきみることができたり、そういうのも読んでいてとっても楽しい。
家頭家のメンバーは清貴君含め相当な曲者ぞろいで、でも懐深いよいひとたちばかりで、破天荒でも良い家族だなあとしみじみしたり。
清貴君のライバル的な贋作師・円生との対決は空気がびりびりしていて、読んでいてはらはら。

以下、各巻の感想を簡単に、ネタバレ込みでメモしておきましょう。
3巻目
歌舞伎役者さんのお話や、ホームズさんの元カノ和泉さんの婚約者の「アリバイ崩し」や、なかなかドロドロした大人の濃い事情が書かれていましたが、綺麗な恋ばかりじゃなくても、読み終えて嫌な味は残らない。(というか、ホームズさんと葵ちゃんのほのぼのモードでだいぶ中和されている)
喜助さんの女癖の悪さは最低だと思いましたが、でもほんとうに、この道のひとは恋を糧に成長するというホームズさんの言に納得するラストでした。麗さんとお似合いだと思うので上手くいくといいな。「僕かて、我慢しているのに」にはきゅんきゅんしましたね!ようやくそれっぽい雰囲気が!
一度歌舞伎を観に行ってみたいな。お弁当を食べたい(笑)。
ホームズさん葵ちゃんのお宅訪問の回も微笑ましく楽しかったです。バイカルのアップルパイとふたばの豆餅食べたいです~。葵ちゃんのお部屋にあがっているホームズさんにどきどき。
あと店長の亡き奥さんへの想いと上田さんの秘めた想いにぐっときました。
大晦日の買い出しとお寺めぐりがとても楽しそうでした。秋人さんったらせっかくのデートに割り込んで……なんだかんだ三人で楽しそうでしたけれどね。



4巻目
ふたりの微妙な関係は相変わらずですが距離は確実に縮んできています。
ホームズさんのさりげないアプローチをことごとくスルーしてしまう葵ちゃんの気持ちも分かるので、もどかしい。
ホームズさんは「美意識」の人だから、私なんかは選ばないだろう、という葵ちゃんの心が、ホームズさんのことをとても理解していて、だからこそ一層もどかしいんですよー。くー。
序章のご近所お着物デートからして微笑ましくてたまらなかったです。普段老成しているのに自分の恋には純な孫息子を見守るオーナーと店長の視点がツボ。
あと、ふたりでデートしていた祇園のカフェが可愛らしくて素敵すぎる。
『ビスクドールの涙』や好江さんのお話で、オーナーの過去への印象ががらりと変わりました。オーナーと椿さんの別れの経緯がとても切なく辛かった。
バレンタインの夜会のお話は、ホームズさんが巻き込まれてしまったミステリーを華麗に解き明かす!の巻。愛憎渦巻きなかなかヘビーでしたが、彼女が最後には前を向いて進んでいけたようで、良かったです。
『後継者の条件』利休君初登場。葵ちゃんに意地悪なのは読んでいてあまりいい気持しませんでしたが、でも意地悪してしまう利休君の立場もまあ、分かる。そして葵ちゃんには毒気を抜かれますよね。
ホームズさんのお弟子としての葵ちゃんの見せ場があったのがとても良かった。葵ちゃん格好いいよ!
右近さんも悪人ではなく女子高生の葵ちゃんに冷たかったのもちゃんと理由があり。それは確かに切ない。
葵ちゃんの武器(?)は手作りクッキーなのですね。貰ったホームズさんの心境を考えるとまたたまらないです。美味しい。




5巻目
この巻も楽しみどころ満載でしたが、ラストの葵ちゃんと清貴君のやりとりにすべて持って行かれました……!ここぞというときの京都弁がもうやっぱりずるい!美味しすぎる!
序盤のみんなでわいわい城崎温泉への旅、各地の雰囲気もしっかり楽しめて良かったです。
香織ちゃんのお姉さんの沙織さんの恋のお相手は意外でしたが、お似合いだと思いました。「恋文」がゆかしくてとても素敵。
幸せになってもらいたいです。
香織ちゃんはこのシリーズの本筋に関わってくることはさほどないものの、葵ちゃんのしっかり者頼れる友人ポジションとしてとても得難い女の子です。若干ミーハーなところも可愛い。
シャーロキアンの会、私自身はシャーロック・ホームズの特別なファンという訳でもないのですが、ホームズ愛あふれる老若男女の集まりの雰囲気がとても楽しそうで憧れてしまいました。
サッカーのお話も、和歌をからめた年の差カップルの秘めた想いとすれ違いエピソードが切なくも素敵できゅんとしました。葵ちゃん情報をキャッチしたとたん店番を利休君に押し付けたホームズさんに吹き出してしまいました。ふたりがデートに行っていた小川珈琲のおばんざいランチがすっごくおいしそう。
そして円生との正面対決。生命の危機すら感じて真剣にはらはらしました。
「あの娘に伝えなあかんことがあんねん」にぐっときました。
そしてようやく想いが通じた!ようやく!(感激)
手をつないでからのホームズさんと葵ちゃんの初々しさが可愛らしすぎて、それを遠めに眺めつつの秋人さんと店長の会話もおかしくて。幸せいっぱい。




6巻目。
シリーズ初の長編、タイトル通りにサスペンス。
ゴージャス感も綺麗どころも探偵さんもドロドロもあり。このシリーズにこういういかにもなサスペンスは合いますね!
そして4巻目の冴えない探偵として登場していた小松さんが、ホームズさんへの依頼主&相棒役。思っていたより普通のいいひとで、娘と元奥さんへの思いにじんときました。
なによりとうとうお付き合いをはじめた清貴君と葵ちゃんのカップルが微笑ましく可愛すぎて、何度も転がってました。
きわどいことも言って考えている割には実際のやりとりは初々しすぎる清貴君が本当に可愛い。
オーナーにロリコンロリコン言われてムキになって反論している清貴君の場面が好きでした。家頭家のおじいちゃんとおとうさんと孫の関係ほんとに楽しい。
そして清貴君、あんなに初々しいのに、周囲への気遣いと態度にそつがなさすぎて、本人が大人の社会に身を置いているのもあり、すでになんか婚約者みたいです。
エピローグの元彼君への清貴君の接し方も、とても彼らしくていけず全開で葵ちゃんへの愛にあふれていて、きゅんきゅんでした。
本当に元彼君最低だな……ホームズさんが思いっきり見せつけてくれて溜飲が下がりました。
いや本当に、葵ちゃんの包容力と度胸は並々ならぬものがあるし、鑑定眼もすごいし、素晴らしい女性ですよ。
これから清貴君の愛情を一心に受けてどんどん素敵な女性になってゆきそうで、楽しみ。

この春に続巻&公式ファンブックが出るみたいで、わー待ちきれない!

そして、教えていただいたエブリスタ版のホームズさんシリーズ、今まさに途中まで読んでいるところです。
だいたい同じキャラで基本的に同じストーリーで進んでいくものの、主に清貴君と葵ちゃんの関係性において、全くの別物。パラレルワールドでした。
書籍版より大幅に糖分増量で、ときめき全開で楽しくて美味しすぎて、やっぱりきゃーきゃー言いながら読んでいるところです。
書籍版とのちょっとした違いを発見しつつ読んでゆくのもこれまた楽しい。撫子の着物のネタとか、書籍版では何気ない描写だった場面や台詞に意味があって、ときめき転がったり(笑)。あと葵のお宅訪問のときのお菓子も違った!(そこですか)
先に読み進めていくごとにストーリー展開も違いが大きくなってきていて、気になるところです。あの辛い展開が書籍版ではないと嬉しいな……とか。

新年早々はまりにはまってしまったシリーズでした。存分に感想語れて楽しかった!
私のブログを読んでくださっている少女小説読みさんのなかには、このお話気にいられる方きっといらっしゃると思います。
じれじれ年の差もの好きな方、京都和もの系好きな方など、おすすめですよ~♪


ここ二週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 望月麻衣 

『京都寺町三条のホームズ』1~2巻 望月 麻衣 







京都の寺町三条商店街にたたずむ骨董品店『蔵』。
女子高生・真城葵は、事情を抱えて訪れた店で、店主の孫の大学院生・家頭清貴と知り合う。
清貴は、物腰はやわらかいが恐ろしく勘が鋭く、骨董品を見る目も若くして絶対的な信頼を寄せられており、『寺町のホームズ』と呼び名がつくほど。
店でアルバイトをすることになった葵は、清貴と共に、骨董品にまつわる様々な依頼に関わってゆくことに——。


京都を舞台に、骨董品にまつわる謎と人間ドラマを紐解いてゆく、日常ミステリー仕立てのシリーズ。
もともとはネット小説出身のお話なのかな。
評判をちらちら目にして、ずっと気になっていたお話でした。

いやあ、第一話と最終話のホームズさんの京都弁に、落ちてしまいました(笑)。これはずるい。

キャラミスというか、ライトミステリーというか、軽めのタッチのかわいらしいお話。
それでいて、骨董品ネタ、京都ネタの数々はほどよくわかりやすく丁寧に書かれていて、読んでいて楽しく、満足感高かったです。
骨董品をメインに据えたお話ってそういえばあまり読んだことがなかったなと。
ホームズさんが新人アルバイトかつお弟子の葵ちゃんに、分かりやすくかみくだき解説していくという基本スタイル。骨董品と一口に言っても古今東西さまざまなジャンルのものがあり、焼き物から西洋の絵画まで、その道の入門解説版みたいで興味深かったです。
あと京都の街、各名所の案内の描写も楽しいです!読んでいるととても京都に行きたくなりました。

そしてなにより主役のふたり、ホームズさんこと清貴氏と葵ちゃんのキャラが、いかにもな設定の割に読んでいて不思議なくらい嫌味がなくって、微妙な距離感のふたりの仲を自然に応援して読んでいけて、とても良かったです。
たぶん、葵ちゃんがごく普通の女子高生なのだけど、素直で謙虚で賢くて、恋に恋していない子なのがいいんだな……葵ちゃんめっちゃかわいいです。
対するホームズさんは、かなり特異な大学院生。
物腰穏やかで丁寧口調で立ち居振る舞いも洗練されていて気遣いもできて、葵ちゃんへのエスコートっぷりは完璧で、ときめき度抜群。まさに王子様です。
読んでいくごとに意地悪で「いけず」な部分、負けず嫌いだったり案外子どもっぽかったり色々な面も出てくるのですが、そんな裏の顔含めて魅力的。だっていけずでも基本はやっぱり優しいんですもん。ずるい!(笑)
ところどころで不意打ちに出てくる京都弁がたまらない。
もっとも彼が持つ鋭さは、真実を厳しく見据えて人の心を容赦なく暴いていき、恐れられる面もあるようですが、一緒にいる葵ちゃんはそんなホームズさんの本質をちゃんと理解していて自然体で接しているところがいいんですよね~。

ホームズさんも葵ちゃんも、それぞれの過去の恋の傷から、お互いに好意を持ったりときめいたりはしても、その先の「恋」の手前で立ち止まってしまっている、みたいな段階で。
(しかしこの落ち着きはらったホームズさんの学生時代の失恋エピソードは意外すぎました。彼女さん勿体ないなあ。)
なんかこのふたりの、微妙なためらいを含むじれじれな関係が、読んでいて美味しすぎます。
そして年の差カップルは王道かつ最高です。

いや、色々考えるけど、随所随所のホームズさんの行動、これ絶対葵ちゃんのことが好きじゃなければやらないよね?
葵ちゃんの彼氏と周囲に思われるのも、ホームズさんなら明らかに想定範囲内だよね?
……なんだかふたりのこの辺が本当に美味しくて、考えるだけでごろごろときめいています。

ホームズさんの豪放磊落な師匠のおじいさんとマイペースでおだやかな作家のおとうさん、家頭家の人々と周りの人々も、独特の癖があって読んでいて楽しい。
こんな老獪な大人たちに幼いころから振り回されその道の知識を教え込まれて育ったら、それは達観した浮世離れした青年に育つよなあ……。

一巻目でのお気に入りは『葵の頃に』と『祭りのあとに』。
『葵の頃に』
賀茂祭の斎王代をめぐる姉妹のお話。
現実的で謙虚な香織さんが好きでした。賀茂祭のことほとんど知らなかったので勉強になりました。
葵ちゃんにいいこのお友達ができて本当に良かった。ほっとしました。
ホテルオークラの生クリーム入りあんぱん食べてみたいです。じたばた。
『祭りのあとに』
葵ちゃんが過去の恋に決別するお話。
葵ちゃんの元彼と親友はちょっとどころじゃなくひどいな……百歩譲って早苗さんは同情の余地ある気がしたけど、去り際の彼氏の往生際の悪さが本当にありえない……。
葵ちゃんを救い出しに来てくれたホームズさん格好良すぎ。京都弁で葵ちゃんのために本当に怒ってくれてるところもすごくよかった。
祇園祭のことも本当に私知らないことばっかり。一生に一度は行ってみたいなと思いました。
ホームズさんが選んだという浴衣にもときめきました。

二巻目ではちょっとチャラいけど根はいいひとな秋人さんと、ホームズさんの、仲がいいんだか悪いんだかのでこぼこなやりとりが面白かったです。
ホームズさんのライバル出現!回でもあり、手に汗を握りました。本気モードのホームズさん迫力あるなあ。
葵ちゃんがラストで言っていたように、ホームズさんを高みに導くための存在なのかもしれませんね。確かに。完全な悪役とも言い切れないあたりが複雑。
『ラス・メニーナスのような』
ベラスケスの絵画をめぐるお話。
ベラスケスって私自身ちょっと知っていてお気に入りで、この巻のエピソードも良かったです。
あじゃり餅食べたいです。(食べ物のことしか考えてない)
『迷いと悟りと』
ホームズさんのお弟子として真面目に勉強している葵ちゃんの見せ場があって良かったです。格好いい!
これから葵ちゃんはどんどんお弟子として成長していって、やがてはホームズさんの片腕になってゆくのかなあ。将来が楽しみです。
あと秋人さん視点での、ホームズさんと京男子ふたり珍道中(?)も面白かったです。
秋人さんが入ってくるとお話が良い感じに脱力して和みますねえ~。
和むといえば、悪質なお客さんがやってきたときに、ゆで卵の塩を持ってきた葵ちゃんに毒気をぬかれたホームズさんの場面も、あれも良かったです。ホームズさんって案外熱いですよね。葵ちゃんのホームズさんへの無意識の接し方がなかなか。
なにげにカフェ男子の一面も見せたホームズさんにもおおっとなりました。
お肉もお好きなんですね。
ホームズさんの煩悩の内容が気になる。

すっかりシリーズにはまってしまいました。続きが、ホームズさんと葵ちゃんのふたりの仲の進展が、気になって仕方がないです。
6巻目まで出ているようなので、読まなければ。楽しみ~。
和もの、京都もの、日常の謎もの、お好きな方にはおススメですよ。少女小説的な楽しみどころも美味しいですよ!

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 望月麻衣 

『花を追え 仕立屋・琥珀と着物の迷宮』春坂 咲月 




仙台の篠笛教室に通う女子高生・八重は、夏の夕暮れふとしたきっかけで、仕立屋の美青年・宝紀琥珀と出会う。
その後篠笛教室にやってきた琥珀と八重は、着物にまつわる様々な謎を共に読み解いてゆくことに。
ドロボウになる祝着、端切れのシュシュの呪い、そして幻の古裂「辻が花」。
やがて八重と琥珀の前には、ひとつながりの大きな謎が浮かび上がり——。


はじめて読みの作家さん。
絢爛豪華な着物の世界の謎を追いかけていく日常の謎仕立ての一冊でした。
華やかで美しい表紙イラストとあらすじが私好みで気になって購入し(なんといってもヴィクロテの影響で「仕立屋」というワードにいちいちすべて反応せずにいられない)、そのすぐあとでTwitterのフォロワーさんにおススメもいただき、これはぜひとも読まねばと手に取りました。

なんといってもお着物の薀蓄がとても充実していていちばんの読みどころ。
その辺に関してほぼ知識ゼロの私ではありますが、具体的にイメージできないまま読んでいても、十分楽しめました。
なにしろ琥珀さんが、ほんっとうに楽しそうに着物の薀蓄を八重さんに細やかに語り続けているので、その楽しさにつられてしまったというのもあると思いました。
実際の描写も言葉が一つ一つ美しくてみやびで、読んでいてうっとりしました。各種謂れや和歌の言葉遊びとかもさらりと織り込まれていて楽しい。

着物を着るとドロボウになるとはなんぞや?とか、微妙な仲の友人に贈った手作りシュシュが呪いの品なのでは?とか、着物の知識がないと全くちんぷんかんぷんな謎ばかりでしたが(そして微妙に不気味)、さらっと解き明かしてゆく琥珀さんすごい。
序盤からのひとつひとつのささやかな謎が、後々の展開の大きな謎にひとつひとつ伏線としてつながっていっていて、あとから読み返したときにおおお、と何度もびっくり。
琥珀さんは序盤から謎めいた雰囲気ばりばりでしたが、ヒロインのごく普通の女子高生八重の過去が、実は物語最大の謎そのものになっていて、八重を中心に老獪な大人たちがぐるぐる策略をめぐらしていて、どうなることやらどきどきでした。
特に三章『花の追憶』からはその一つの大きな謎に向けて物語がぐいっと勢いづき、舞台が全国各地に飛び時間軸も行ったり戻ったり、引きこまれて最後まで一気読みしてしまいました。
なるほど、『花を追え』というタイトルにふさわしいお話だったなあと、最後まで読み切っての感想。
幻の花の古裂を追っかけてゆくという構図がとてもロマンティック。

着物をめぐる大人たちの策略が不気味で若干ほの暗い雰囲気になりそうなものだったのですが、八重と琥珀さんの十歳年の差カップルのロマンスパートはとっても一途でひたむきで可愛らしくて(←琥珀さんが)、そっちにほとんど印象持って行かれました!
着物のことが大好きでかつ八重のこともとっても大好きな、そこそこいい年した琥珀さんが、なんというか微笑ましい~。
黙ってたたずんでいれば女性に熱い視線をかけられる端正な和風美青年で、超一流の仕立て屋かつ冴えわたる頭脳の持ち主。なんですけどねえ。着物と八重さんへの愛がとにかく重たくて……(苦笑)。
いつどこの場面でも八重さん以外の女性は眼中にも入っておらず笑顔でさりげなくアプローチをし続け、八重さんのためなら主義に反する夜なべも惜しまずサの字を引っ張って日本各地におっかけてゆく琥珀さん。わがままで自分勝手な天才肌の芸術家のイメージそのものといいますか。愛すべきお人です。
あと結び文とタフタの意味深な組み合わせ!絶妙に面倒くさい!(笑)

人魚姫のつもりが自分が人魚だったというのは、うまい言い回しだったなと思いました。確かに琥珀さんが報われない。
というか、さらりと流されている感があるけれど、幼い日に八重さんが受けた仕打ちがひどすぎないですか……?犯人はもっときつくお灸をすえられるべきだと思うのですが。
このあたりは、コレクターの世界ってすごいなー怖いなーと思いました。
篠笛教室の銀さん、由依さんペアがお気に入りだったので、中盤の展開はこれまた辛かったのですが、からくりが分かってホッとしました。
最後の最後に登場した花の着物の豪華さは感動的でした。お父さんのことも救いがあって、良かった。
表紙イラストに帰ってきて、描かれていた花に改めて納得。

脇役キャラでは上にも挙げた由依さんが好きでした。八重と年の差を超えてお稽古仲間として友情を育んでいるところが好きでした。
八重の友人達も好きだったので、もっと出番があるとより良かったかなあ。基本的にヒロイン以外は年配の登場人物が多めの落ち着いたお話でした。
八重の母親と義理の父親のエピソードはもっと詳しく読みたかったかも。八重が陸朗さんに想いを寄せていた理由が個人的にちょっと弱く感じたのもあり。あと実の父親のエピソードも。
どこまでも琥珀に振り回され続ける祭文さん不憫でした。しっかりしたたかな商売人であることは感じましたが。彼のほんのりしたロマンスの気配はその後どうなったんだろう。というか年下の娘っ子って全然人のこと言えないじゃない(笑)。
あと篠笛もお気に入りアイテムだったので、篠笛がもう少し物語にしっかり絡んできてくれるとより良かったかな。

とか、若干突っ込みどころもありつつ、「仕立屋・琥珀と着物の迷宮」、というサブタイトルで、最終的にはまあそんな感じでいいのかもね、と色々納得。語られていない部分は迷宮の中にあるのでしょう。ということで。
総合的にとても楽しく読めた和風ミステリーでした。良かったです!

大学生になった八重は琥珀さんの着せ替え人形になる未来しか見えないけれど、高2にして大学生に間違われる大人びたしっかり者の八重なので、琥珀さんをびしびし操縦してうまい具合に仲良くやっていくのではないかと思っています。
でも琥珀さんはようやく八重を公然と恋人にできてすごい嬉しいだろうな……。やっぱり八重は苦労しそうだな。
とかなんとか、色々勝手な妄想が膨らんでしまいました。
(それにしても年の差カップル率が高いお話だったな……年の差ロマンス好きな私にはとても美味しかったです。)

お着物をめぐる和風日常の謎ものといえば、白川紺子さんの『下鴨アンティーク』シリーズも傑作なので、どちらかお気に召された方は、もう一方を読まれるのも良いのではないかと思います。
『下鴨アンティーク』もまた、高校生の女の子と大学の先生の年の差カップルのじれじれが美味しくときめくお話ですので。(そこですか)

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 春坂咲月 

『アンと青春』坂木 司 




『和菓子のアン』の続編。
デパートの和菓子屋『みつ屋』でアルバイトしているアンちゃんこと杏子さん。
美人で頼りがいのある椿店長、乙女な好青年立花さん、元ヤン人妻大学生の桜井さん、個性豊かなメンバーと一緒に、今日も店頭に立ち、和菓子をめぐる謎を解いてゆく——。

デパ地下の和菓子屋さんを舞台に、アルバイトの女の子ががんばる和菓子メインの日常ミステリー、嬉しい続編!
続きが読みたいなあとずーっと思っていたのでとっても嬉しいです。

それでもハードカバーで買うべきか、実のところちょっと迷っていたのですが。
表紙のお餅菓子が、それはまあ、素晴らしく美味しそうで。この半透明でぷるんとしているお餅の質感と、なんともいえないきれいでやわらかな餡の色、梅の花のアクセントもすべてがさりげなく美味しさを主張してきて、ねえ。
あとは『アンと青春』というタイトルが、本家(?)アン・シリーズの第二作目タイトル『アンの青春』とばっちり重なっていて、『和菓子のアン』も『アン・シリーズ』も大好きな私は、やっぱり手に取って読まずにはいられなかったのでした。

カバー裏の本体や見返しの紙や色遣いがまた斬新で和菓子のイメージぴったりで、心にくい演出にうなってしまいましたよ。

坂木さんのお仕事青春もの小説、しかも女の子が主人公のお話が、私はやっぱり大好きだなあ!!と改めて認識しました。
色々思い悩みつつも頑張るアンちゃんの姿に、読んでいる私もたいへん元気づけられて、ああ、私も明日もお仕事頑張らないとなあ、と前向きな元気を分けてもらえました。すごく良かった。
帯のコピーの「果てしない未来と、果てしない不安。甘いお菓子が、必要だ。」というのもとてもうなずいてしまうメッセージ。
今回出てきた和菓子(ときどき洋菓子)も、どれもこれも美味しそうで付随しているエピソードも素敵で、読んでいるだけでも甘さいろどり質感を想像しては、うっとり幸せに浸れたりして。(でもやっぱり実際にも食べてみたいんですけれど。)
みつ屋さんのレギュラーメンバーさんたちも相変わらず面白くて頼れるいい方ばかりで、ときに壁にぶつかったりちょっと気まずくなったりしつつも(お仕事やってたらそういうのあるの当たり前ですもんね)、わいわいにぎやかにお仕事に誇りを持ち働いている様が、読んでいていいなあ、素敵だなあとしみじみ思いました。
美味しいものを本当に美味しそうに楽しそうに食べるアンちゃんが、やっぱりいっとう愛おしいです。
デパ地下お仕事裏事情をのぞけるワクワク感も健在です!

『空の春告鳥』
『和菓子のアンソロジー』にて既読のお話からスタート。
うんうん、お菓子の催事も楽しいし、駅弁の催事も楽しいんですよねえ。
「飴細工の鳥」のイメージが二転三転してふむむ、とわが身にもつまされるような気持ちになったところで、乙女ふたりの中華街の食べ歩き、美味しそう!飲茶もミルクティーもカフェのクレープも最高にセンスがいいです。乙女の味覚に鎖国は存在しないのです。

『女子の節句』
まずは、アンちゃんと友人たちの京都女子旅行が、とっても楽しそうで良かったです!いいないいな~。
アンちゃんの性格、美質をよく理解してくれてて話を聞いてくれたり適切なアドバイスをくれたりする友人の存在に、私はなんだかとてもほっとしてしまったのでした。ふだんアンちゃんの近くに同級のお友達っていないから、ね。普通の女の子としてのアンちゃんの姿を見られてほっとした、といえばいいのかしら。
ちょっと買うのにステップが必要なお店の上生菓子も、やっぱりパフェも、乙女はみんな大好物なのです!作者さんはよーく分かっていらっしゃる。
柚子シャーベットと和三盆のアイスクリームにあたたかな塩キャラメルソースをかけた冬パフェなんてきたら、寒い夜でもいただかずにはいられないのですよ。
アンちゃんが語るお姑さんのお菓子のお話は、ソフトに黒いものを感じて、でも悪と言い切ってしまうにはためらいがあり、もやもや。でも最後の友人達の意見に出てきたけど、お嫁さんだって実はけっこう強いんじゃないかな。そう思いたいな。あと桜井さんと椿店長それぞれの女の意見にも救われた感が。
蓬莱山って不思議なつくりのお菓子があるものだなあ~と以前思った記憶がありますが、こういう場面のお菓子だったのですね。

『男子のセック』
章タイトルが対になっていてなんだかおもしろい。
今度のセックは、洋菓子のセック。粉と油脂と砂糖の配合が絶妙の、バターが焦げるまでしっかり焼かれたアクセントの強いお菓子。うわあ、みつ屋の和菓子とは全く別方向から攻めてくるこういう洋菓子もたまらないですねえ。食べたいよー!
ここにきて『春告鳥』の店員さんをしていた柏木さんが再登場とは思いがけないつながり。
そしてアンちゃんに思いがけない暗雲が。
私自身も考えなくちゃいけないのに目をそらしていることを、しっかり考えてぐるぐる悩んでいるアンちゃん、そして柏木さん。
上から目線でなんて失礼ですが、悩むことばかりでも、やっぱりアンちゃんのお仕事にどこまでも真摯な姿勢が、私は読んでいて気持ちがいい。
立花さんのわだかまり、どうしちゃったんだろうと思いましたが、アヒルとか、そういうことか。このひともまた仕事に関して真摯で私はもう憧れるしかない。
ちょっと人間関係が辛かった時もあり、そんなとき桜井さんのガッツがなんか救いでした(笑)。頼もしい!
アンちゃんたちが食べていたホットサンドが何気に美味しそうで食べたくなりました。確かに食べにくそうですけれど(笑)。美味しくいただこうとするとどうしても見苦しくなっちゃうんですよね。柏木さんがその点うらやましい。

『甘いお荷物』
デパ地下でジュースを買おうとした女の子とお母さん。
うん、これもまた難しい問題ですよね……。読んでいてうなってしまいました。表面的に見るとあれかもしれないけれど、このお母さんは実は、気遣いのひとなのだなあ。
アンちゃんと立花さん、柏木さん、そして師匠が顔をそろえて、また少し人間関係がぎくしゃくと。
ううう、個人的にはアンちゃんが辛い立場に立たされるのが嫌なので、前のお話との連続もあり、若干立花さんに怒りが……。
甘酒、久しぶりに飲みたくなってきました。インスタントじゃないやつを。
そして梅本家の朝ごはんもおいしそうですねえ。

『秋の道行き』
ちょっと重ための読み口のお話が続いて、こちらは秋の晴れた空のように明るく澄んだ読み心地のお話で良かったです。
立花さんがアンちゃんに贈ったお菓子の謎解きに加え、アンちゃん自身の悩みにも、一区切りが。
『秋の道行き』も『はじまりのかがやき』も、描写が魅力的で素敵すぎる。
福島県の五色沼や金沢の美術館や、美しい色彩が和菓子のイメージに次々と重ね合わされていく展開も、みやびな感じでとても楽しかったです。
師匠とアンちゃんの会話場面も良かった。金沢にはとても素敵なお菓子があるのですね。
そして立花さん、アンちゃんが駅に迎えに来てくれて、嬉しかっただろうな。ふふふ。
桜井さんへの贈り物もあり、心がまあるく収まったところで。ラストの「甘酒屋の荷」の意味。
『男子のセック』あたりから、なんとなくそうなのかなあ?と思っていた雰囲気に、一気に色が付いた感じで、師匠の言葉も重ね合わせてきゅん、ときて、落ちてしまいました(笑)。
やっぱり、やっぱり、そういうことなんですよね。ね?
不意打ちの糖分投入(お菓子のではない)に、ときめきがとまらないラストでした。
思えば元祖『アンの青春』も、あの時点での糖分は、これくらいだった気がして、さらににまにま。
(あっちのお話もアンのお仕事奮闘記、友人たちとの語らいがメインで、恋愛に関しては、アンはまだ自覚していなかったよね。)
乙女な立花さんのこと、どうなるのかとも思いますが、よくよく考えてみるとギルバートもたいがいロマンティックな男性だったのではないかと……。

この流れでいくと、さらに三作目以降も、読めることを期待して良いのでしょうか。
読めるのだとしたら、とてもとても嬉しい。
今度も『アンの愛情』がモチーフになってくるのかしら。

さて、美味しいあんこのお菓子を(も)いただくために、明日からも、がんばりましょうかね!


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 坂木司 

『黒猫の回帰あるいは千夜航路』森 晶麿 




『黒猫』シリーズ第六弾。
パリで大規模な事故が発生したとのニュース、付き人は黒猫の安否を気遣う。
イタリアでふたりの距離は一度縮まったものの、黒猫との距離は、日常に戻れば遠くぎこちないものに。
後輩の戸影が持ち込んだ、ペルシア絨毯で失踪した教授の謎。人形作家と懐かしい人との再会。
美学にからめたふたりの謎解きが再びはじまる——。


『黒猫』シリーズの新刊!
文庫落ちを待たずに単行本を買って読んでいる、私にしてはかなり珍しいシリーズです。
だって待ちきれないんですもの。

幾千の夜を超えての、「回帰」。確かにタイトルの通りの物語であったと、ラストまで読んで感じました。

このシリーズ独特の、少しひんやりして美しくて知的な物語が、たまらないですね~。
一巻目にこれまた「帰ってきた」みたいに連作短編形式で、色々なお話の詰め合わせを楽しむことができたのが、良かったです。
美学講義の部分は相変わらず難しげなのですが、黒猫の語り方が上手なので、読んでいると私もなんとなくわかった気分になり、共に感嘆できるのが、良いですね(笑)。

黒猫のかたわらに付き人がいる、それが日常として、物語が進んでいくかたちに戻ってきたのが、嬉しい。
一巻目のふたりから、遠回りし時間を経て、時に手が離れつつも並んで歩き続け、この関係にようやくたどりついたのだと思うと、言葉にあらわしがたい充足感。

博士研究員になった付き人の成長が、前巻よりもさらにいくつもの場面で実感できて、嬉しくなったり。
前巻においてたしかに縮まった黒猫と付き人の関係。もうお互い意識せずに気楽に付き合えていたころには戻れず、かえってぎこちなく遠ざかったような付き人の心の焦燥感が、読んでいてとてももどかしかったり。

『空とぶ絨毯』
アラビアン・ナイトなモチーフと、男の苦悩に寄り添う妻の愛情と、ペルシア絨毯の世界と、パリの事故のざわざわ感。
色々な要素が調和していて夜の大人のおとぎ話、純愛の物語で、とても私好みでした。
駆けずり回る付き人に奇跡のように届いた声。なんてずるいタイミング!(笑)
黒猫がこんなかたちでするりと以前の日常に戻ってくることになるとは思っていなかったので、とても嬉しかった。
唐草教授がいて、戸影君が付き人のかたわらで頑張っていて、キャンパスには学生や教職員や関わりのある人々がいて。
大学の日常の物語のかたちが、好き。
付き人はさらりと流しているけど、苺オ・レをスプーンでひとくち……甘い!

『独裁とイリュージョン』
ミナモさんとはまたお懐かしい(笑)。彼女の性格と口調で非常勤講師をやっているというのがなんかまたしっくりきます。
ミナモさんが黒猫になぞかけをして、そこからの黒猫の返し、ミナモさんの想いの向かう先、ミナモさんらしい愛の物語でした。
人形師の愛も、からくりが解ければ、純粋でシンプルなもので、ふたりお似合いだと感じました。最後のお互い気持ちを通じ合わせた場面に垣間見えたミナモさんの愛情深さがとても好きでした!
一瞬空気になってしまった戸影君が非常に哀れでした(笑)。でも付き人の近くにずっといたのは彼なんだよな。一緒に雑用している場面の気安いやりとりも好きでした。付き人のメガネはたしかにツボですね……。

『戯曲のない夜の表現技法』
女優の卵の娘と、彼女を見出した劇作家の紳士の物語。ふたりの関係性がとても素敵で切なくて良かったです。
何もかもがかけ離れていて重ならない(と、お互い思い込んでいる)ふたりが、少しずつ惹かれあいときに揺らいでいる様が、もう。
鞍坂氏が最後に残したものに涙。岸田さんもいい仕事してました。
キャンディ売りの娘というそれだけのシチュエーションがとてもはまっていて美味しい。

『笑いのセラピー』
黒猫の姉の冷花さんが語り手の異色作。
小学生の黒猫だ……!理屈っぽくて頭の回転が速すぎるのはやっぱりだけど、今より脇が甘くて姉には逆らえない彼が、非常に新鮮で楽しかったです。
笑いのセラピーと言うタイトルの割にはシビアな事件となりひやりとしましたが、それでも収まるべきところに収まったのは確かみたいで、良かったです。
冷花さん視点から見る付き人の人となりがとても素敵で、やっぱりこのふたり、客観的に見て恋愛に不器用すぎますね……そこが好きです。

『男と箱と最後の晩餐』
オイスタークリームソースのお肉がものすごく!おいしそうです。
そしてそっと幕を下ろした、幸福でせつない恋の物語。
黒猫が食べていたぶどうのパフェがまた美味しそうでした。
ドレスをめぐるやりとりで拗ねる付き人に「君が大人になったのさ」という黒猫の台詞にどきどき。

『涙のアルゴリズム』
新しい音楽の試みに隠された、冷静沈着な荒畑教授の愛情に、私もほろりときました。
弓月氏の態度も種を明かされてしまえば納得のいくもので。不器用な彼を包み込む愛情がまたよい。
おかあさまのことで不安に揺れる付き人、でも黒猫には上手く伝えられなくて。
そんな彼女に帰宅後黒猫が贈った愛情のひとときがとても素敵で心にしみいりました。
ラテスト教授。そうか。寂しくなりました……。
ここでもパフェとバニラアイスのあれこれが甘くてちょっとやられました。なぜ付き人はスルーしているんだ。

最終話~エピローグにかけての、黒猫と付き人のやりとり。
今までのすべてがこのやりとりに持っていかれたかのような読後感!
黒猫と付き人、ようやくここまで。鍵をわたすときの黒猫のまなざしにやられてしまいました。

愛するものと、死と別れと。時間と。
そんなモチーフが多く、黒猫と付き人の関係にもどこかで重なり合うものがあり、構成が心にくく、堪能しました。

そしてこの作品、作者さんと絵師さんによる、クイズ正解者への特典プレゼントがおこなわれていまして。
あまりの甘さと完成度の高いおまけに読んでいてひっくり返りそうになりました。悶絶です。
期限があるようですので、ご希望の方は早めにチェックされると良いと思います!
黒猫の回帰あるいは千夜航路』飼い主様向け特典クイズのお知らせ

この特典の話の感想もちょっと書かせていただいてもよいでしょうか……。
追記に反転文字で書かせていただきます。久しぶりに使ったな。

この甘い二人の断片集を読んで、本編を読み返してこそ、ふたりがふたり、帰ってきたんだなあ。
お互いが、お互いの帰る場所になったんだな。
と、しみじみ胸がいっぱいになったのでした。
あああ、なんか全然上手く書き表せない。
こんなに素敵でロマンティックな小説なのに。

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『黒猫の約束あるいは遡行未来』森 晶麿 

黒猫の約束あるいは遡行未来黒猫の約束あるいは遡行未来
(2014/09/25)
森 晶麿

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『黒猫』シリーズ本編第4弾。
フランス滞在中の黒猫は、ラテスト教授からの依頼で、イタリアの「遡行する塔」の調査に向かう。
一方、学会に出席するため渡英した付き人は、滞在先でなぜか突然映画への出演を打診される。
異国の地、離れ離れの状態で、ふたりの新しい物語がはじまる——。

『黒猫』シリーズの本編の続きが出ました!
本当は私、文庫化するまで買うのは見送ろうかなあ……と思っていたのですが、ネット上の皆さまの評判がとても良く気になって気になって、結局単行本で買ってしまったのでした。
丹地陽子さんの表紙イラストが相変わらず秀逸。
すれ違い歩く黒猫と付き人の構図が良いです。付き人の歩く姿勢はリズミカルで見ていて気持ちがいいなあ!鮮やかなレモン色もアクセント。

そして本編もやっぱりとても良かったです♪
静かで上品で少しひんやりしていて理屈っぽくて、読んでいると不思議と心安らぎます。(美学の講義部分は理解するのに頭使いますが……。)
遡行する塔と映画にまつわる謎もロマンティックでひやりとした狂気もはらんでいてすべてふくめて魅力的だったし、異国で偶然再会した黒猫と付き人のふたりの関係にも、進展が!
後半部分のふたりのやりとりにはきゅんきゅんし続けてました。

お話の語り手は、前半パートはラテスト教授の孫娘・マチルドが再び登場で、後半パートは付き人ちゃん。
黒猫とマチルドがイタリアの奇妙な塔に調査に乗り込むところからのスタートです。
相変わらずマチルドは黒猫好きだな……私は付き人派(?)なのでちょっとはらはら。身内思いの良い子なのに、ごめん、マチルド。
相変わらずパフェを愛好している黒猫の姿にくすりと。キャラメルジェラートパフェ?おいしそう……!
ヒヌマ邸の人々の様子はかなり不審な感じで。
そして衝撃の再会の場面。盛り上がります!

そしてその場面にいたるまで少し時間が戻って、付き人視点からの物語。
唐草教授とエドワード教授とのやりとりの中で、付き人の成長を感じました。目を見張るようです。
そして突然映画にスカウトされてしまった付き人の運命やいかに。トッレさんの思惑が分かるようで分からなくてどきどき。
ふたりの再会は、心ふるえました。

マチルドと付き人が直接顔を合わせて、どうなることやら……とちょっとはらはらしていたのですが、あれ、意外と気が合っている(笑)。ふたりで黒猫に挑戦して一緒にやり込められている感じで、ふたり共感めいたものも覚えているようで、なんだか良かったです。マチルドが本当に素直でよいこでした。
マチルド視点から、付き人の魅力がはじめて客観的な言葉で表されて、今までのストーリーを振り返って彼女の人物像にすごく納得できて気持ちが良かったです。

見ていて気持ちのいい人だった。大人しいし、少しおっとりしてもいるけれど、潮風のようなきりりとしたところがある。芯の強さと透明感。 (272頁)

再会したふたりの一夜は、すべてのやりとりが意味をはらんでいて濃密でした。
「タコは泳いでいる間はアボカドのことなんか知りもしないのに」云々のやりとりがおかしくて視点がこのふたりらしくてお気に入り。
戸影君のこと、さりげなく聞き出している黒猫と、まるで無自覚な付き人のかみ合わなさも、おかしかった。彼も彼で頑張ってるようです。それは黒猫もあせるでしょう。
そしてこれまでのシリーズ史上でもっとも糖度の高いやりとり。もどかしさとのバランスがまたこのふたりらしくて、くうっとうなってしまいました。しかし甘いです。最高です。
普段化粧っ気がない付き人だからこその口紅の使われ方がお上手でした。特に翌朝のやりとりが、たまらない。

またそんなそっけない別れ方を……と後ろ髪ひかれる帰り道で、まさかの再会もあり。
遡行する塔に主役としてかかわった人々のドラマは、そう簡単に白黒つけられないけれど、なんだかとても鮮やかなものが私の心の中に残りました。表紙のくっきりしたレモン色とドレスの赤。

そしてエピローグの再びマチルド視点、あああ、そういうことだったのかーー!!心の中で叫びました。
怪しさ全開だったマルタさんたちが、ふふふっと種明かしの茶目っ気ある笑顔を浮かべたような錯覚が。
そしてマチルドの目に映った、黒猫の想いの真実。
黒猫と付き人の約束を想うマチルドが健気でひりひりとせつなかったです。
マチルドにとっては、憧れ半分の恋だったのかもしれないけれど、それでも。

映画をみるときには、日常を置き去りにする、という感覚、よくわかるなあと思いました。
遡行して崩壊する塔、恋人同士のドラマも内包していて、ロマンティックでした。建築学なんて全然専門外ですが、分からないなりに感じるものもありました。

美学ミステリーというか、ほとんどラブロマンスとして楽しんでいる私。
学があり理屈っぽいふたりだからこそ、あれこれ考えすぎて結果遠回りし続けざるをえないのかなあ、とかちょっと考えたり。(『黒猫の薔薇~』の過去の恋人たちもそんな感じだった気がするので……いかん、がんばれ、黒猫!)


昨日記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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