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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『京都寺町三条のホームズ7 ~贋作師と声なき依頼~』望月 麻衣 




『京都寺町三条のホームズ』シリーズ本編7巻目。
高校三年生、受験も意識しだした葵。ホームズこと清貴との距離を不器用にもゆっくりと縮めていく日々を送っていた。
そんなある日、贋作師の円生が、二人の前に再び現れる。清貴に「白磁の香合」の鑑定を依頼した円生は、清貴の「本物だ」という言葉を否定して去ってゆく。
それからしばらくして円生は、学校帰りの葵の前に姿を現し——。

ガイドブックの後は本編を。
表紙のお着物でおめかし姿の葵ちゃんがきれいです、素敵すぎます!おめかし葵ちゃんの隣でふふんと得意そうな清貴君のスーツ姿も決まっています(笑)。背景のお庭の緑も美しくて染み入るよう。

ガイドブックの感想に書いたように、私はエブリスタ版で、書籍版の先のエピソードにあたる部分も読んでおりまして。
今回のサブタイトルとあらすじで、「ああ、やっぱりこの展開がくるのか……。」と、覚悟を決めていました。
覚悟を決めたつもりではいたけれど、後半部分を実際に読んでいくとやっぱり辛くて、胸を抉られました。
今までのラブラブ幸せモードから一気に暗転しますからね……。
救いはこの巻一冊でとりあえずの決着がついたことです。あああ、本当に良かった!!葵ちゃんやっぱり最高のヒロインです。
ネット版に比べて書籍版は、文章やエピソードがしっかり練られていて、一冊の本としてとことん満足のできる仕様になっているのが、素晴らしいと思いました。
前半パートのふたりのラブラブエピソードも好きです~♪

というわけで、以降はネタばれふくみの感想を。


『プロローグ』
清貴とオーナーの美術品買い付けや上田さんと組んでのお仕事、ゴージャスだなあ、こういう世界もあるのだなあ~と興味深く読みました。
ミュシャのリトグラフとエーデルワイスのブレスレットウォッチに清貴君が込めた、葵ちゃんへの愛のメッセージに、きゅんときました。再会の優しいキスの場面も良かったです。初々しくもお互いをこんなに大切に想い愛し合っているふたりに、心が洗われる思いです……。
葵ちゃんが変な風に誤解してしまった家頭家のおうち事情もなんというかすごい。
店長の抜け加減にいい感じに和みました(笑)。

『その心は』
エブリスタ版でも好きだったエピソード。加筆部分が効いていて嬉しかったです。
お茶会に備えてはじまった葵ちゃんのお着物生活と、そんな葵ちゃんの所作の変化に戸惑うホームズさんのふたりの図がたいへん美味しいお話です(笑)。
美恵子さんのお店を実際にのぞき見られたのも嬉しかったり。
書籍版のホームズさんの「いちゃいちゃ」は初々しいなあ……(笑)。でも「おいで」って、確かにとても力のある言葉だな。
お茶会の前に訪れた高桐院の場所の描写がとても素敵でした。細川忠興とガラシヤ夫妻のエピソードをかみしめてふたり佇んでいる場面が、なんというかとても印象的で。このふたりの愛情も、きっとどれだけ年月が経っても変わらないんだろうな、とそんな感じでそっと余韻が残るというか。
和菓子屋さんの松風もおいしそうです。(私も実は松風をいただいたことがない……。)
斎藤家のお茶室選びは、このお家の人たちを前とは別な角度で見ることができて、一人一人を人間として身近に感じて好きになれた感じがしたのが、良かったなと思いました。左京さんもあれはあれで得難い才能なんだよな。
千利休と秀吉のエピソードの解釈も興味深かった。

『砂上の楼閣』
子守りホームズさんの図はちょっと笑えましたが、円生の再訪、葵への接触、そして……。
葵ちゃんに冷たいことばをぶつけても当の本人には清貴君の真意は分かってしまっていて、それでも本当にどうしようもない清貴君と葵ちゃん。辛すぎる……。手をつなぎキスをするにもいっぱいいっぱいの初々しい葵ちゃんの口から出てきた台詞にもびっくりしつつ。

『言葉という呪』
店長が葵ちゃんに差し伸べる手が優しくて、ふたりの未来に確かにつながっていて、読んでいて胸があつくなりました。店長の穏やかな懐深さに救われました。カンニングペーパーに和む。
言葉って本当に力があり怖いものなんだな。
それにしても書籍版ではこの時期の葵ちゃん思いっきり受験生じゃないですか……そっちの方向でも読んでいてひやひやしました。
甘い飲み物は優しい思い出を連れてくる、とブラックコーヒーを飲む葵ちゃんが切ない。

『望月のころ』
円生と清貴君、そして葵ちゃん、三人の間での決着。
しずかにぴりぴりしたはりつめた空気の中でのお話でした。
これまで目的不明、正体不明で恐ろしいとしか思えなかった円生の過去の背景が、明かされてゆき。
どうして贋作を作り続けてきたのか、出家したのか、清貴をライバル視するようになったのか……。パズルのピースがはまっていくごとに、胸が苦しくなりました。
円生のメッセージを清貴君がきちんと受け止めて彼のための奔走し、そして円生の苦しい心を葵ちゃんが一生懸命解きほぐし、あの結末を迎えられて、良かったな。
というか、葵ちゃんの精神面での成長が著しい。ひとりで円生の心情をたどりああいう方向に導いた葵ちゃんに、鳥肌が立つくらいでした。
そしてなんといっても葵ちゃんの「清貴君、おいで」ですよね。もうほんっとうによかったですよね!!(涙)
第一話のホームズさん側から発せられた「おいで」と書籍版では対応していて、よりお話の流れが納得のいくものとして補強されていたというか、とても良かったです。読んでいて目頭が熱くなりました。

『エピローグ』
葵ちゃん無事に大学合格できて本当によかった!
そして「蔵」でのアルバイト生活も無事に復活してホームズさんとの仲も元に戻って本当の本当に良かったです。
円生の贈り物の中国の風景画とそこに嫉妬する清貴、そんな彼に葵ちゃんがかけた言葉がまた良かったです。
秋人さんの憶測までは行ってないにしろ、着実にこのふたりの距離感は縮んだ気がします。
柳原先生の弟子として現れた円生、小松さんが持ち込んできた新たな依頼、次の物語へのつながりもぽつぽつ残るラスト。
(ところで好江さんとオーナーのふたりは、あれからどうなったかな?こちらもちょっと気になる。)

あとがきを読んで何よりうれしかったのは、このシリーズ、葵ちゃんの大学生編も読めるんですね!!
やったー!嬉しすぎる~!!(ごろごろごろ)
大学生になった葵ちゃんと院を修了した清貴君ではまたお互いの関係性が微妙に違うものになるでしょうし、いったいどんなストーリー展開をしていくのか、今から読めるのが楽しみで待ちきれないです(笑)。やっぱりいちばん気になるのはふたりの仲の進展……。

作中で右近さんたちにきれいになったと言われている葵ちゃんだけど、ホームズさんみたいな彼氏に、こんな風に常に宝物のように大切に扱われ慈しまれていたら、それはもう、色々な意味で素敵な女性に成長していくこと間違いないでしょう。と、読んでいてひとり嬉しくうなずいていました(笑)。ホームズさんの側にいて自発的に学び糧にして成長していける子でもあるし。
失恋も、彼女をより成長させたのだなと思います。結果的に。
大学生になってこれからどんどんきれいになって魅力を増してゆく葵ちゃんに、内心気が気でないホームズさんという未来が、今から目に見えるようです……。やっぱりどんな手を使っても女子大に行かせればよかったって後悔していそう(笑)。

……そんな好き勝手な空想を繰り広げつつ(笑)、本当に今回も面白かったです♪な一冊でした。
やっぱりすでに今から続きが読みたくてそわそわしています。

前も書いたかもしれませんが、このシリーズはエブリスタ版(ネット版。文庫の最後の方にアドレス等載っています)でも読むことができまして、主に清貴君と葵ちゃんの関係性において完全な別物、パラレルワールド。お好きな方はこっちも読まれると楽しいですよ♪
書籍版に馴染んでいるとひっくり返るくらい甘々ラブラブで、若干人を選びそうですが、お好きな方はぜひぜひ。
エピソードの順番も前後したりゆるやかにつながったりしていてそういうのを読んでいて発見できるのも二重に美味しいです。

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 望月麻衣 

『京都寺町三条のホームズ6.5 ~ホームズと歩く京都~』望月 麻衣 




『京都寺町三条のホームズ』公式ガイドブック。
葵のお誕生日パーティーの夜を描いた書きおろし中編『バースデーの夜に』収録。

発売をもうほんとに楽しみに楽しみに待ちわびていた『京都寺町三条のホームズ』シリーズ、6.5巻&7巻、同時発売!!
2冊同時に入手できるなんて嬉しさもひとしおです♪

まずはこちらの公式ガイドブックの方から読みはじめてみました。
6.5巻というだけあり、順番としては、7巻目よりもこちらの方から読んでいった方が良さそうです。

表紙の清水寺と桜と清貴君と葵ちゃんの振り返り姿がとても決まっている!と最初からニコニコしながら読みはじめる。
『蔵』のモデルのような骨董品店、寺町三条のご近所さんのお店、吉田山荘のカフェ、祇園のチョコレートのカフェ、カラー口絵の充実っぷりに嬉しくなりつつ。
ええと、結論から言いますと、期待以上の充実した中身に、大満足のガイドブックでした。
どのコーナーも一工夫がこらされていて読み物として面白く、シリーズのファンにとっては心にくい演出ばかり。

順番に感想メモ的につらつらと。

イラスト付き登場人物紹介、秋人さんと円生がそれぞれ違うタイプの美男子でびっくり!格好いい~!!
オーナーの渋い雰囲気も格好良かったです。あと好江さんお綺麗!お若い!
欲を言えば呉服屋の美人姉妹の香織さん佐織さんのふたりのイラストも拝みたかったかな。
あと地図が何枚もついていて、このシリーズを読むたびに京都の普通のガイドブックを借りてきては地図や各種寺院の紹介と突き合わせていた私的には、何とも嬉しくありがたい。

書きおろし中編。葵ちゃんのお誕生日パーティー。
書籍版を6巻目まで読んだ後にエブリスタ版も最後まで読み切った私的には、清貴君の初々しさがちょっと懐かしくも新鮮でした(笑)。(エブリスタ版は本当にもうびっくりするほど甘々なので……。)
葵ちゃんがプレゼントされたワンピースがどんな感じか気になっていたので描写があって嬉しかったです。ホームズさんの目利きっぷりがすごい。
お誕生日パーティーは、ろうそくを吹き消した後の暗闇で、一瞬葵ちゃんに額を合わせてお祝いの言葉をささやいた清貴君の場面が、ロマンティックでとてもきゅんときました。
あと葵ちゃんが焼いたマフィンと聞くや秋人さんから俊足で奪い返した姿としれっと不敵な決め台詞がなんというかもうすごい破壊力ですね!
こと葵ちゃんのことに関しては人格が変わるホームズさんが、読んでいて面白くときめいて仕方ありません(笑)。
蔵関係のメンバー総出演でにぎやかなのも良かったです。
葵ちゃんとホームズさんがお付き合いを始めたのを、オーナーや店長はじめ清貴君に近しい人たちが心から喜び祝福しているのが伝わってくるのが、いいですね。葵ちゃんほんとうにいいこですもん。気持ちはわかる(笑)。
モナ・リザの薀蓄話が披露されるのも家頭家、清貴君らしいです。私自身も興味深く面白く読みました。

舞台案内。
単なる紹介文の羅列ではなく、シリーズ既刊の各場面での清貴君視点が何か所も挿入されていて、これがまあ、楽しいしときめくしで、読んでいてにまにまして大変でした。清貴君視点って本文には基本ほとんど出てこないので貴重なのです。
二巻目のホームズさんの「牽制」ってそういうことだったのか。とようやく納得。
葵ちゃんはここで知らず清貴君を救っていたんだな。いやー、清貴君が葵ちゃんにかなわないのがなんか、分かる(笑)。
あと四巻目のカカオマーケット、葵ちゃんの悪気ない台詞にホームズさんが粉砕しているのがちょっとおかしく笑ってしまった……。でもそれは葵ちゃんは気づかないよ。分かりにくいよ。
特に三十三間堂に行ってみたくなりました。

特別掌編も楽しかったです。ふふふ。
私は『宮下香織の懸念』が特にお気に入り。ホームズさんの見た目に騙されてない(笑)賢くてしっかり者で友人思いの香織ちゃんやっぱり好きです。葵ちゃんのことに関してだけは人格が変わるホームズさんが(以下同文)。
『愛しき旋律』の父子の距離感も好きです。擦れている清貴君の女性観に少々ぎょっとしたり。
お弁当ネタのお話も好きだなあ。感激して神社に行くところが清貴君らしすぎて笑える。これはエブリスタ版のエピソードを読んでからの方が楽しめそうな気が。

四コマ漫画は、名字と名前をくっつけてひとりつっぷしているホームズさんと妄想の中身のネタが微笑ましく可愛らしすぎました……。利休君すら呆れ気味なのも笑える。

最後の質問コーナーも気になっていたところいくつかに回答が得られて最後まで満足度高い。
清貴君の想いにオーナーと店長がいつから気づいていたのか?とのふたりそれぞれの回答には、納得。それを受けての三巻目&四巻目のはじめだったのね。
清貴君の怖いものがオーナーなのはなるほどねえと思いましたが、葵ちゃんに嫌われるのが怖いというところが、彼の可愛いところですね(笑)。あんなに普段怖いものなしでスマートに生きている清貴君が……。恋は盲目としか。
あと秋人さんが「ホームズのライバルキャラにもならなかった」という下りで吹き出し、秋人さんが「俺もう幸せなんだけど?」と言い切るラストに爆笑でした。いやー、秋人さん相変わらず和みますねえ。

吉田山荘のカフェのケーキの写真がおいしそう。そしてふたばの豆餅と阿舎利餅も食べたい!店長行きつけの喫茶店もちょっと気になります。
それにしても、読んでいると本当に京都に行きたくなりました。そしてこのシリーズのゆかりの場所めぐりをしたくなる。
大満足の一冊でした♪

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 望月麻衣 

『京都寺町三条のホームズ』3巻~6巻 望月 麻衣 




京都寺町三条商店街の骨董品店『蔵』の店主の孫、家頭清貴こと「ホームズさん」と、アルバイトの女子高生・真城葵のふたりが、骨董品や家頭家関係のあれこれに関わり巻き込まれな日常を描いたミステリータッチの物語。


実は私、この二週間くらい、ずーっとこの『京都寺町三条のホームズ』シリーズ読んでました。
いえ、読みこむごとに面白くてやめられなくなって。
はじめはほのぼののんびりペースで読んでいけるタイプの物語として読みはじめたつもりだったのですが。嬉しい誤算です。
京都ネタも骨董品ネタも相変わらず絶妙で読んでいて楽しいですし、なによりホームズさんこと清貴君と葵ちゃんのじれじれ年の差カップルのふたりがもう!可愛すぎて、読んでいて終始転がってました。
読んでいて顔のにまにまがとまらなくて電車の中でずっと不審者でした。
くっつきそうでくっつかないお互い遠慮し合っているもだもだも美味しかったし、5巻目~6巻目あたりの大盛り上がりも、たまらない!心の中で終始きゃーきゃー言いながら読んでました。
清貴君格好いいし王子様だし葵ちゃんはいい子だし可愛いし!
頭脳明晰爽やかな和風イケメン好男子の表の顔も、腹黒でいけずで変人な裏の顔も全部合わせて清貴君で、彼の表裏の顔をすべてごく普通に受け入れて彼の側で笑っている葵ちゃんがもう、本当にいい!
あくまで普通の女子高生なんだけど、真直ぐな目を持ち心優しく謙虚で度胸のある葵ちゃんは、読めば読むほど得難いヒロインです。

なんというか、葵ちゃんのことを本当に宝物のように大切にして守りいつくしむ清貴君の姿に、読んでいるこちらも幸せになれる、そんなお話。
読んでいて顔がほてりぽかぽかしていて、外が雪で寒くても部屋の中で充実した読書のひと時を過ごせました。

京都の各名所が各巻ごとにいくつも散りばめられていて、描写が程よく魅力的で、読んでいて京都に行きたくてたまらない。
お寺や神社の解説が初心者にも分かりやすくとてもいい。あとカフェやスイーツも色々出てきてみんなおいしそうです。
家頭家は清貴君の祖父の誠司さんが『国選鑑定人』、父の武史さんが小説家で色々普通じゃないおうちで、ゴージャスなパーティやお宝めぐりや上流階級の世界ものぞきみることができたり、そういうのも読んでいてとっても楽しい。
家頭家のメンバーは清貴君含め相当な曲者ぞろいで、でも懐深いよいひとたちばかりで、破天荒でも良い家族だなあとしみじみしたり。
清貴君のライバル的な贋作師・円生との対決は空気がびりびりしていて、読んでいてはらはら。

以下、各巻の感想を簡単に、ネタバレ込みでメモしておきましょう。
3巻目
歌舞伎役者さんのお話や、ホームズさんの元カノ和泉さんの婚約者の「アリバイ崩し」や、なかなかドロドロした大人の濃い事情が書かれていましたが、綺麗な恋ばかりじゃなくても、読み終えて嫌な味は残らない。(というか、ホームズさんと葵ちゃんのほのぼのモードでだいぶ中和されている)
喜助さんの女癖の悪さは最低だと思いましたが、でもほんとうに、この道のひとは恋を糧に成長するというホームズさんの言に納得するラストでした。麗さんとお似合いだと思うので上手くいくといいな。「僕かて、我慢しているのに」にはきゅんきゅんしましたね!ようやくそれっぽい雰囲気が!
一度歌舞伎を観に行ってみたいな。お弁当を食べたい(笑)。
ホームズさん葵ちゃんのお宅訪問の回も微笑ましく楽しかったです。バイカルのアップルパイとふたばの豆餅食べたいです~。葵ちゃんのお部屋にあがっているホームズさんにどきどき。
あと店長の亡き奥さんへの想いと上田さんの秘めた想いにぐっときました。
大晦日の買い出しとお寺めぐりがとても楽しそうでした。秋人さんったらせっかくのデートに割り込んで……なんだかんだ三人で楽しそうでしたけれどね。



4巻目
ふたりの微妙な関係は相変わらずですが距離は確実に縮んできています。
ホームズさんのさりげないアプローチをことごとくスルーしてしまう葵ちゃんの気持ちも分かるので、もどかしい。
ホームズさんは「美意識」の人だから、私なんかは選ばないだろう、という葵ちゃんの心が、ホームズさんのことをとても理解していて、だからこそ一層もどかしいんですよー。くー。
序章のご近所お着物デートからして微笑ましくてたまらなかったです。普段老成しているのに自分の恋には純な孫息子を見守るオーナーと店長の視点がツボ。
あと、ふたりでデートしていた祇園のカフェが可愛らしくて素敵すぎる。
『ビスクドールの涙』や好江さんのお話で、オーナーの過去への印象ががらりと変わりました。オーナーと椿さんの別れの経緯がとても切なく辛かった。
バレンタインの夜会のお話は、ホームズさんが巻き込まれてしまったミステリーを華麗に解き明かす!の巻。愛憎渦巻きなかなかヘビーでしたが、彼女が最後には前を向いて進んでいけたようで、良かったです。
『後継者の条件』利休君初登場。葵ちゃんに意地悪なのは読んでいてあまりいい気持しませんでしたが、でも意地悪してしまう利休君の立場もまあ、分かる。そして葵ちゃんには毒気を抜かれますよね。
ホームズさんのお弟子としての葵ちゃんの見せ場があったのがとても良かった。葵ちゃん格好いいよ!
右近さんも悪人ではなく女子高生の葵ちゃんに冷たかったのもちゃんと理由があり。それは確かに切ない。
葵ちゃんの武器(?)は手作りクッキーなのですね。貰ったホームズさんの心境を考えるとまたたまらないです。美味しい。




5巻目
この巻も楽しみどころ満載でしたが、ラストの葵ちゃんと清貴君のやりとりにすべて持って行かれました……!ここぞというときの京都弁がもうやっぱりずるい!美味しすぎる!
序盤のみんなでわいわい城崎温泉への旅、各地の雰囲気もしっかり楽しめて良かったです。
香織ちゃんのお姉さんの沙織さんの恋のお相手は意外でしたが、お似合いだと思いました。「恋文」がゆかしくてとても素敵。
幸せになってもらいたいです。
香織ちゃんはこのシリーズの本筋に関わってくることはさほどないものの、葵ちゃんのしっかり者頼れる友人ポジションとしてとても得難い女の子です。若干ミーハーなところも可愛い。
シャーロキアンの会、私自身はシャーロック・ホームズの特別なファンという訳でもないのですが、ホームズ愛あふれる老若男女の集まりの雰囲気がとても楽しそうで憧れてしまいました。
サッカーのお話も、和歌をからめた年の差カップルの秘めた想いとすれ違いエピソードが切なくも素敵できゅんとしました。葵ちゃん情報をキャッチしたとたん店番を利休君に押し付けたホームズさんに吹き出してしまいました。ふたりがデートに行っていた小川珈琲のおばんざいランチがすっごくおいしそう。
そして円生との正面対決。生命の危機すら感じて真剣にはらはらしました。
「あの娘に伝えなあかんことがあんねん」にぐっときました。
そしてようやく想いが通じた!ようやく!(感激)
手をつないでからのホームズさんと葵ちゃんの初々しさが可愛らしすぎて、それを遠めに眺めつつの秋人さんと店長の会話もおかしくて。幸せいっぱい。




6巻目。
シリーズ初の長編、タイトル通りにサスペンス。
ゴージャス感も綺麗どころも探偵さんもドロドロもあり。このシリーズにこういういかにもなサスペンスは合いますね!
そして4巻目の冴えない探偵として登場していた小松さんが、ホームズさんへの依頼主&相棒役。思っていたより普通のいいひとで、娘と元奥さんへの思いにじんときました。
なによりとうとうお付き合いをはじめた清貴君と葵ちゃんのカップルが微笑ましく可愛すぎて、何度も転がってました。
きわどいことも言って考えている割には実際のやりとりは初々しすぎる清貴君が本当に可愛い。
オーナーにロリコンロリコン言われてムキになって反論している清貴君の場面が好きでした。家頭家のおじいちゃんとおとうさんと孫の関係ほんとに楽しい。
そして清貴君、あんなに初々しいのに、周囲への気遣いと態度にそつがなさすぎて、本人が大人の社会に身を置いているのもあり、すでになんか婚約者みたいです。
エピローグの元彼君への清貴君の接し方も、とても彼らしくていけず全開で葵ちゃんへの愛にあふれていて、きゅんきゅんでした。
本当に元彼君最低だな……ホームズさんが思いっきり見せつけてくれて溜飲が下がりました。
いや本当に、葵ちゃんの包容力と度胸は並々ならぬものがあるし、鑑定眼もすごいし、素晴らしい女性ですよ。
これから清貴君の愛情を一心に受けてどんどん素敵な女性になってゆきそうで、楽しみ。

この春に続巻&公式ファンブックが出るみたいで、わー待ちきれない!

そして、教えていただいたエブリスタ版のホームズさんシリーズ、今まさに途中まで読んでいるところです。
だいたい同じキャラで基本的に同じストーリーで進んでいくものの、主に清貴君と葵ちゃんの関係性において、全くの別物。パラレルワールドでした。
書籍版より大幅に糖分増量で、ときめき全開で楽しくて美味しすぎて、やっぱりきゃーきゃー言いながら読んでいるところです。
書籍版とのちょっとした違いを発見しつつ読んでゆくのもこれまた楽しい。撫子の着物のネタとか、書籍版では何気ない描写だった場面や台詞に意味があって、ときめき転がったり(笑)。あと葵のお宅訪問のときのお菓子も違った!(そこですか)
先に読み進めていくごとにストーリー展開も違いが大きくなってきていて、気になるところです。あの辛い展開が書籍版ではないと嬉しいな……とか。

新年早々はまりにはまってしまったシリーズでした。存分に感想語れて楽しかった!
私のブログを読んでくださっている少女小説読みさんのなかには、このお話気にいられる方きっといらっしゃると思います。
じれじれ年の差もの好きな方、京都和もの系好きな方など、おすすめですよ~♪


ここ二週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 望月麻衣 

『京都寺町三条のホームズ』1~2巻 望月 麻衣 







京都の寺町三条商店街にたたずむ骨董品店『蔵』。
女子高生・真城葵は、事情を抱えて訪れた店で、店主の孫の大学院生・家頭清貴と知り合う。
清貴は、物腰はやわらかいが恐ろしく勘が鋭く、骨董品を見る目も若くして絶対的な信頼を寄せられており、『寺町のホームズ』と呼び名がつくほど。
店でアルバイトをすることになった葵は、清貴と共に、骨董品にまつわる様々な依頼に関わってゆくことに——。


京都を舞台に、骨董品にまつわる謎と人間ドラマを紐解いてゆく、日常ミステリー仕立てのシリーズ。
もともとはネット小説出身のお話なのかな。
評判をちらちら目にして、ずっと気になっていたお話でした。

いやあ、第一話と最終話のホームズさんの京都弁に、落ちてしまいました(笑)。これはずるい。

キャラミスというか、ライトミステリーというか、軽めのタッチのかわいらしいお話。
それでいて、骨董品ネタ、京都ネタの数々はほどよくわかりやすく丁寧に書かれていて、読んでいて楽しく、満足感高かったです。
骨董品をメインに据えたお話ってそういえばあまり読んだことがなかったなと。
ホームズさんが新人アルバイトかつお弟子の葵ちゃんに、分かりやすくかみくだき解説していくという基本スタイル。骨董品と一口に言っても古今東西さまざまなジャンルのものがあり、焼き物から西洋の絵画まで、その道の入門解説版みたいで興味深かったです。
あと京都の街、各名所の案内の描写も楽しいです!読んでいるととても京都に行きたくなりました。

そしてなにより主役のふたり、ホームズさんこと清貴氏と葵ちゃんのキャラが、いかにもな設定の割に読んでいて不思議なくらい嫌味がなくって、微妙な距離感のふたりの仲を自然に応援して読んでいけて、とても良かったです。
たぶん、葵ちゃんがごく普通の女子高生なのだけど、素直で謙虚で賢くて、恋に恋していない子なのがいいんだな……葵ちゃんめっちゃかわいいです。
対するホームズさんは、かなり特異な大学院生。
物腰穏やかで丁寧口調で立ち居振る舞いも洗練されていて気遣いもできて、葵ちゃんへのエスコートっぷりは完璧で、ときめき度抜群。まさに王子様です。
読んでいくごとに意地悪で「いけず」な部分、負けず嫌いだったり案外子どもっぽかったり色々な面も出てくるのですが、そんな裏の顔含めて魅力的。だっていけずでも基本はやっぱり優しいんですもん。ずるい!(笑)
ところどころで不意打ちに出てくる京都弁がたまらない。
もっとも彼が持つ鋭さは、真実を厳しく見据えて人の心を容赦なく暴いていき、恐れられる面もあるようですが、一緒にいる葵ちゃんはそんなホームズさんの本質をちゃんと理解していて自然体で接しているところがいいんですよね~。

ホームズさんも葵ちゃんも、それぞれの過去の恋の傷から、お互いに好意を持ったりときめいたりはしても、その先の「恋」の手前で立ち止まってしまっている、みたいな段階で。
(しかしこの落ち着きはらったホームズさんの学生時代の失恋エピソードは意外すぎました。彼女さん勿体ないなあ。)
なんかこのふたりの、微妙なためらいを含むじれじれな関係が、読んでいて美味しすぎます。
そして年の差カップルは王道かつ最高です。

いや、色々考えるけど、随所随所のホームズさんの行動、これ絶対葵ちゃんのことが好きじゃなければやらないよね?
葵ちゃんの彼氏と周囲に思われるのも、ホームズさんなら明らかに想定範囲内だよね?
……なんだかふたりのこの辺が本当に美味しくて、考えるだけでごろごろときめいています。

ホームズさんの豪放磊落な師匠のおじいさんとマイペースでおだやかな作家のおとうさん、家頭家の人々と周りの人々も、独特の癖があって読んでいて楽しい。
こんな老獪な大人たちに幼いころから振り回されその道の知識を教え込まれて育ったら、それは達観した浮世離れした青年に育つよなあ……。

一巻目でのお気に入りは『葵の頃に』と『祭りのあとに』。
『葵の頃に』
賀茂祭の斎王代をめぐる姉妹のお話。
現実的で謙虚な香織さんが好きでした。賀茂祭のことほとんど知らなかったので勉強になりました。
葵ちゃんにいいこのお友達ができて本当に良かった。ほっとしました。
ホテルオークラの生クリーム入りあんぱん食べてみたいです。じたばた。
『祭りのあとに』
葵ちゃんが過去の恋に決別するお話。
葵ちゃんの元彼と親友はちょっとどころじゃなくひどいな……百歩譲って早苗さんは同情の余地ある気がしたけど、去り際の彼氏の往生際の悪さが本当にありえない……。
葵ちゃんを救い出しに来てくれたホームズさん格好良すぎ。京都弁で葵ちゃんのために本当に怒ってくれてるところもすごくよかった。
祇園祭のことも本当に私知らないことばっかり。一生に一度は行ってみたいなと思いました。
ホームズさんが選んだという浴衣にもときめきました。

二巻目ではちょっとチャラいけど根はいいひとな秋人さんと、ホームズさんの、仲がいいんだか悪いんだかのでこぼこなやりとりが面白かったです。
ホームズさんのライバル出現!回でもあり、手に汗を握りました。本気モードのホームズさん迫力あるなあ。
葵ちゃんがラストで言っていたように、ホームズさんを高みに導くための存在なのかもしれませんね。確かに。完全な悪役とも言い切れないあたりが複雑。
『ラス・メニーナスのような』
ベラスケスの絵画をめぐるお話。
ベラスケスって私自身ちょっと知っていてお気に入りで、この巻のエピソードも良かったです。
あじゃり餅食べたいです。(食べ物のことしか考えてない)
『迷いと悟りと』
ホームズさんのお弟子として真面目に勉強している葵ちゃんの見せ場があって良かったです。格好いい!
これから葵ちゃんはどんどんお弟子として成長していって、やがてはホームズさんの片腕になってゆくのかなあ。将来が楽しみです。
あと秋人さん視点での、ホームズさんと京男子ふたり珍道中(?)も面白かったです。
秋人さんが入ってくるとお話が良い感じに脱力して和みますねえ~。
和むといえば、悪質なお客さんがやってきたときに、ゆで卵の塩を持ってきた葵ちゃんに毒気をぬかれたホームズさんの場面も、あれも良かったです。ホームズさんって案外熱いですよね。葵ちゃんのホームズさんへの無意識の接し方がなかなか。
なにげにカフェ男子の一面も見せたホームズさんにもおおっとなりました。
お肉もお好きなんですね。
ホームズさんの煩悩の内容が気になる。

すっかりシリーズにはまってしまいました。続きが、ホームズさんと葵ちゃんのふたりの仲の進展が、気になって仕方がないです。
6巻目まで出ているようなので、読まなければ。楽しみ~。
和もの、京都もの、日常の謎もの、お好きな方にはおススメですよ。少女小説的な楽しみどころも美味しいですよ!

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 望月麻衣 

『花を追え 仕立屋・琥珀と着物の迷宮』春坂 咲月 




仙台の篠笛教室に通う女子高生・八重は、夏の夕暮れふとしたきっかけで、仕立屋の美青年・宝紀琥珀と出会う。
その後篠笛教室にやってきた琥珀と八重は、着物にまつわる様々な謎を共に読み解いてゆくことに。
ドロボウになる祝着、端切れのシュシュの呪い、そして幻の古裂「辻が花」。
やがて八重と琥珀の前には、ひとつながりの大きな謎が浮かび上がり——。


はじめて読みの作家さん。
絢爛豪華な着物の世界の謎を追いかけていく日常の謎仕立ての一冊でした。
華やかで美しい表紙イラストとあらすじが私好みで気になって購入し(なんといってもヴィクロテの影響で「仕立屋」というワードにいちいちすべて反応せずにいられない)、そのすぐあとでTwitterのフォロワーさんにおススメもいただき、これはぜひとも読まねばと手に取りました。

なんといってもお着物の薀蓄がとても充実していていちばんの読みどころ。
その辺に関してほぼ知識ゼロの私ではありますが、具体的にイメージできないまま読んでいても、十分楽しめました。
なにしろ琥珀さんが、ほんっとうに楽しそうに着物の薀蓄を八重さんに細やかに語り続けているので、その楽しさにつられてしまったというのもあると思いました。
実際の描写も言葉が一つ一つ美しくてみやびで、読んでいてうっとりしました。各種謂れや和歌の言葉遊びとかもさらりと織り込まれていて楽しい。

着物を着るとドロボウになるとはなんぞや?とか、微妙な仲の友人に贈った手作りシュシュが呪いの品なのでは?とか、着物の知識がないと全くちんぷんかんぷんな謎ばかりでしたが(そして微妙に不気味)、さらっと解き明かしてゆく琥珀さんすごい。
序盤からのひとつひとつのささやかな謎が、後々の展開の大きな謎にひとつひとつ伏線としてつながっていっていて、あとから読み返したときにおおお、と何度もびっくり。
琥珀さんは序盤から謎めいた雰囲気ばりばりでしたが、ヒロインのごく普通の女子高生八重の過去が、実は物語最大の謎そのものになっていて、八重を中心に老獪な大人たちがぐるぐる策略をめぐらしていて、どうなることやらどきどきでした。
特に三章『花の追憶』からはその一つの大きな謎に向けて物語がぐいっと勢いづき、舞台が全国各地に飛び時間軸も行ったり戻ったり、引きこまれて最後まで一気読みしてしまいました。
なるほど、『花を追え』というタイトルにふさわしいお話だったなあと、最後まで読み切っての感想。
幻の花の古裂を追っかけてゆくという構図がとてもロマンティック。

着物をめぐる大人たちの策略が不気味で若干ほの暗い雰囲気になりそうなものだったのですが、八重と琥珀さんの十歳年の差カップルのロマンスパートはとっても一途でひたむきで可愛らしくて(←琥珀さんが)、そっちにほとんど印象持って行かれました!
着物のことが大好きでかつ八重のこともとっても大好きな、そこそこいい年した琥珀さんが、なんというか微笑ましい~。
黙ってたたずんでいれば女性に熱い視線をかけられる端正な和風美青年で、超一流の仕立て屋かつ冴えわたる頭脳の持ち主。なんですけどねえ。着物と八重さんへの愛がとにかく重たくて……(苦笑)。
いつどこの場面でも八重さん以外の女性は眼中にも入っておらず笑顔でさりげなくアプローチをし続け、八重さんのためなら主義に反する夜なべも惜しまずサの字を引っ張って日本各地におっかけてゆく琥珀さん。わがままで自分勝手な天才肌の芸術家のイメージそのものといいますか。愛すべきお人です。
あと結び文とタフタの意味深な組み合わせ!絶妙に面倒くさい!(笑)

人魚姫のつもりが自分が人魚だったというのは、うまい言い回しだったなと思いました。確かに琥珀さんが報われない。
というか、さらりと流されている感があるけれど、幼い日に八重さんが受けた仕打ちがひどすぎないですか……?犯人はもっときつくお灸をすえられるべきだと思うのですが。
このあたりは、コレクターの世界ってすごいなー怖いなーと思いました。
篠笛教室の銀さん、由依さんペアがお気に入りだったので、中盤の展開はこれまた辛かったのですが、からくりが分かってホッとしました。
最後の最後に登場した花の着物の豪華さは感動的でした。お父さんのことも救いがあって、良かった。
表紙イラストに帰ってきて、描かれていた花に改めて納得。

脇役キャラでは上にも挙げた由依さんが好きでした。八重と年の差を超えてお稽古仲間として友情を育んでいるところが好きでした。
八重の友人達も好きだったので、もっと出番があるとより良かったかなあ。基本的にヒロイン以外は年配の登場人物が多めの落ち着いたお話でした。
八重の母親と義理の父親のエピソードはもっと詳しく読みたかったかも。八重が陸朗さんに想いを寄せていた理由が個人的にちょっと弱く感じたのもあり。あと実の父親のエピソードも。
どこまでも琥珀に振り回され続ける祭文さん不憫でした。しっかりしたたかな商売人であることは感じましたが。彼のほんのりしたロマンスの気配はその後どうなったんだろう。というか年下の娘っ子って全然人のこと言えないじゃない(笑)。
あと篠笛もお気に入りアイテムだったので、篠笛がもう少し物語にしっかり絡んできてくれるとより良かったかな。

とか、若干突っ込みどころもありつつ、「仕立屋・琥珀と着物の迷宮」、というサブタイトルで、最終的にはまあそんな感じでいいのかもね、と色々納得。語られていない部分は迷宮の中にあるのでしょう。ということで。
総合的にとても楽しく読めた和風ミステリーでした。良かったです!

大学生になった八重は琥珀さんの着せ替え人形になる未来しか見えないけれど、高2にして大学生に間違われる大人びたしっかり者の八重なので、琥珀さんをびしびし操縦してうまい具合に仲良くやっていくのではないかと思っています。
でも琥珀さんはようやく八重を公然と恋人にできてすごい嬉しいだろうな……。やっぱり八重は苦労しそうだな。
とかなんとか、色々勝手な妄想が膨らんでしまいました。
(それにしても年の差カップル率が高いお話だったな……年の差ロマンス好きな私にはとても美味しかったです。)

お着物をめぐる和風日常の謎ものといえば、白川紺子さんの『下鴨アンティーク』シリーズも傑作なので、どちらかお気に召された方は、もう一方を読まれるのも良いのではないかと思います。
『下鴨アンティーク』もまた、高校生の女の子と大学の先生の年の差カップルのじれじれが美味しくときめくお話ですので。(そこですか)

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 春坂咲月 

『アンと青春』坂木 司 




『和菓子のアン』の続編。
デパートの和菓子屋『みつ屋』でアルバイトしているアンちゃんこと杏子さん。
美人で頼りがいのある椿店長、乙女な好青年立花さん、元ヤン人妻大学生の桜井さん、個性豊かなメンバーと一緒に、今日も店頭に立ち、和菓子をめぐる謎を解いてゆく——。

デパ地下の和菓子屋さんを舞台に、アルバイトの女の子ががんばる和菓子メインの日常ミステリー、嬉しい続編!
続きが読みたいなあとずーっと思っていたのでとっても嬉しいです。

それでもハードカバーで買うべきか、実のところちょっと迷っていたのですが。
表紙のお餅菓子が、それはまあ、素晴らしく美味しそうで。この半透明でぷるんとしているお餅の質感と、なんともいえないきれいでやわらかな餡の色、梅の花のアクセントもすべてがさりげなく美味しさを主張してきて、ねえ。
あとは『アンと青春』というタイトルが、本家(?)アン・シリーズの第二作目タイトル『アンの青春』とばっちり重なっていて、『和菓子のアン』も『アン・シリーズ』も大好きな私は、やっぱり手に取って読まずにはいられなかったのでした。

カバー裏の本体や見返しの紙や色遣いがまた斬新で和菓子のイメージぴったりで、心にくい演出にうなってしまいましたよ。

坂木さんのお仕事青春もの小説、しかも女の子が主人公のお話が、私はやっぱり大好きだなあ!!と改めて認識しました。
色々思い悩みつつも頑張るアンちゃんの姿に、読んでいる私もたいへん元気づけられて、ああ、私も明日もお仕事頑張らないとなあ、と前向きな元気を分けてもらえました。すごく良かった。
帯のコピーの「果てしない未来と、果てしない不安。甘いお菓子が、必要だ。」というのもとてもうなずいてしまうメッセージ。
今回出てきた和菓子(ときどき洋菓子)も、どれもこれも美味しそうで付随しているエピソードも素敵で、読んでいるだけでも甘さいろどり質感を想像しては、うっとり幸せに浸れたりして。(でもやっぱり実際にも食べてみたいんですけれど。)
みつ屋さんのレギュラーメンバーさんたちも相変わらず面白くて頼れるいい方ばかりで、ときに壁にぶつかったりちょっと気まずくなったりしつつも(お仕事やってたらそういうのあるの当たり前ですもんね)、わいわいにぎやかにお仕事に誇りを持ち働いている様が、読んでいていいなあ、素敵だなあとしみじみ思いました。
美味しいものを本当に美味しそうに楽しそうに食べるアンちゃんが、やっぱりいっとう愛おしいです。
デパ地下お仕事裏事情をのぞけるワクワク感も健在です!

『空の春告鳥』
『和菓子のアンソロジー』にて既読のお話からスタート。
うんうん、お菓子の催事も楽しいし、駅弁の催事も楽しいんですよねえ。
「飴細工の鳥」のイメージが二転三転してふむむ、とわが身にもつまされるような気持ちになったところで、乙女ふたりの中華街の食べ歩き、美味しそう!飲茶もミルクティーもカフェのクレープも最高にセンスがいいです。乙女の味覚に鎖国は存在しないのです。

『女子の節句』
まずは、アンちゃんと友人たちの京都女子旅行が、とっても楽しそうで良かったです!いいないいな~。
アンちゃんの性格、美質をよく理解してくれてて話を聞いてくれたり適切なアドバイスをくれたりする友人の存在に、私はなんだかとてもほっとしてしまったのでした。ふだんアンちゃんの近くに同級のお友達っていないから、ね。普通の女の子としてのアンちゃんの姿を見られてほっとした、といえばいいのかしら。
ちょっと買うのにステップが必要なお店の上生菓子も、やっぱりパフェも、乙女はみんな大好物なのです!作者さんはよーく分かっていらっしゃる。
柚子シャーベットと和三盆のアイスクリームにあたたかな塩キャラメルソースをかけた冬パフェなんてきたら、寒い夜でもいただかずにはいられないのですよ。
アンちゃんが語るお姑さんのお菓子のお話は、ソフトに黒いものを感じて、でも悪と言い切ってしまうにはためらいがあり、もやもや。でも最後の友人達の意見に出てきたけど、お嫁さんだって実はけっこう強いんじゃないかな。そう思いたいな。あと桜井さんと椿店長それぞれの女の意見にも救われた感が。
蓬莱山って不思議なつくりのお菓子があるものだなあ~と以前思った記憶がありますが、こういう場面のお菓子だったのですね。

『男子のセック』
章タイトルが対になっていてなんだかおもしろい。
今度のセックは、洋菓子のセック。粉と油脂と砂糖の配合が絶妙の、バターが焦げるまでしっかり焼かれたアクセントの強いお菓子。うわあ、みつ屋の和菓子とは全く別方向から攻めてくるこういう洋菓子もたまらないですねえ。食べたいよー!
ここにきて『春告鳥』の店員さんをしていた柏木さんが再登場とは思いがけないつながり。
そしてアンちゃんに思いがけない暗雲が。
私自身も考えなくちゃいけないのに目をそらしていることを、しっかり考えてぐるぐる悩んでいるアンちゃん、そして柏木さん。
上から目線でなんて失礼ですが、悩むことばかりでも、やっぱりアンちゃんのお仕事にどこまでも真摯な姿勢が、私は読んでいて気持ちがいい。
立花さんのわだかまり、どうしちゃったんだろうと思いましたが、アヒルとか、そういうことか。このひともまた仕事に関して真摯で私はもう憧れるしかない。
ちょっと人間関係が辛かった時もあり、そんなとき桜井さんのガッツがなんか救いでした(笑)。頼もしい!
アンちゃんたちが食べていたホットサンドが何気に美味しそうで食べたくなりました。確かに食べにくそうですけれど(笑)。美味しくいただこうとするとどうしても見苦しくなっちゃうんですよね。柏木さんがその点うらやましい。

『甘いお荷物』
デパ地下でジュースを買おうとした女の子とお母さん。
うん、これもまた難しい問題ですよね……。読んでいてうなってしまいました。表面的に見るとあれかもしれないけれど、このお母さんは実は、気遣いのひとなのだなあ。
アンちゃんと立花さん、柏木さん、そして師匠が顔をそろえて、また少し人間関係がぎくしゃくと。
ううう、個人的にはアンちゃんが辛い立場に立たされるのが嫌なので、前のお話との連続もあり、若干立花さんに怒りが……。
甘酒、久しぶりに飲みたくなってきました。インスタントじゃないやつを。
そして梅本家の朝ごはんもおいしそうですねえ。

『秋の道行き』
ちょっと重ための読み口のお話が続いて、こちらは秋の晴れた空のように明るく澄んだ読み心地のお話で良かったです。
立花さんがアンちゃんに贈ったお菓子の謎解きに加え、アンちゃん自身の悩みにも、一区切りが。
『秋の道行き』も『はじまりのかがやき』も、描写が魅力的で素敵すぎる。
福島県の五色沼や金沢の美術館や、美しい色彩が和菓子のイメージに次々と重ね合わされていく展開も、みやびな感じでとても楽しかったです。
師匠とアンちゃんの会話場面も良かった。金沢にはとても素敵なお菓子があるのですね。
そして立花さん、アンちゃんが駅に迎えに来てくれて、嬉しかっただろうな。ふふふ。
桜井さんへの贈り物もあり、心がまあるく収まったところで。ラストの「甘酒屋の荷」の意味。
『男子のセック』あたりから、なんとなくそうなのかなあ?と思っていた雰囲気に、一気に色が付いた感じで、師匠の言葉も重ね合わせてきゅん、ときて、落ちてしまいました(笑)。
やっぱり、やっぱり、そういうことなんですよね。ね?
不意打ちの糖分投入(お菓子のではない)に、ときめきがとまらないラストでした。
思えば元祖『アンの青春』も、あの時点での糖分は、これくらいだった気がして、さらににまにま。
(あっちのお話もアンのお仕事奮闘記、友人たちとの語らいがメインで、恋愛に関しては、アンはまだ自覚していなかったよね。)
乙女な立花さんのこと、どうなるのかとも思いますが、よくよく考えてみるとギルバートもたいがいロマンティックな男性だったのではないかと……。

この流れでいくと、さらに三作目以降も、読めることを期待して良いのでしょうか。
読めるのだとしたら、とてもとても嬉しい。
今度も『アンの愛情』がモチーフになってくるのかしら。

さて、美味しいあんこのお菓子を(も)いただくために、明日からも、がんばりましょうかね!


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 坂木司