Admin   *   New entry   *   Up load   *   All archives

ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『BabelII 剣の王と崩れゆく言葉』古宮 九時 




元の世界へ帰る方法をもとめてついにたどり着いた、魔法大国ファルサス。
しかし、国王・ラルスは非情にも、雫に剣を向ける。世界を害する「異物」として——。
ラルスと戦う決意をし、果てに瀕死の重傷を負う雫。
一方雫と引き離されたエリクは、過去を追憶する。この国でかつて自らが関わった高貴な少女のことを。
「死者蘇生」の禁呪による事件で国中に暗雲漂う中、雫とエリク、ふたりの運命は分岐点を迎える——。


大好きな大好きなMemoriaeシリーズの一作品『Babel』、続編ですよ!二巻目ですよ!(興奮)
いやほんとうに、嬉しさの極みです。
特典がつくという事前情報を得て、アニメイトに早速寄って購入してまいりました。

表紙イラストの雫がとても可愛らしいです。一巻目のときと比べて若干おとめちっく。お花に囲まれているからかな。
そして頁を開いたカラー口絵のファルサス兄妹のうるわしのお姿!
ラルスもレティも事前に私が想像していたのとちょっと違う方向性のイラストだったのですが、でもこれを見てしまうと「これこそ正統派!」と私の中でしっくり馴染みました。そうだよね、ラルスは二十七歳でしたね……。
レティはどこから見ても非の打ちどころのない美人さんですねえ。流れる黒髪もすてき。
ファルサス王家に脈々と受け継がれてきている美貌に、本文を読む前からしみじみしてました(笑)。


一応以下はネタばれまじりの感想ということで。


そう、今回のお話は、舞台は一巻分まるまるファルサス。
しかもお話の最初から「例の二人組」が登場してきた!ちょっと興奮せずにいられますでしょうか!
この二人が『Babel』書籍版にどこまでどう絡んでくるかが、何より私が気になっていたことで(笑)、じっくりじっくり読ませていただきました。
リースヒェンと雫とメアの女の子のやりとりが微笑ましかったです。
ほよほよ頼りなさげで世間知らずでも、さすがリースヒェンは強い。オスカーは文句なしに格好いい!
ファルサスの昔語りの魔女の伝説にテンション上がったり。
このあたりはリースヒェンとオスカーのエピソードが追加されていたり他のエピソードが消えていたりで、けっこう手が加えられていましたね。
鮪の書き取りのエピソードお気に入りだったので、これが残っていたのは嬉しかったです。鮪がなんなのかも知らないのにつくりの意味を真摯に考察し漢字の書き取りをするエリクという図が面白いんですよね~。

謎の二人組(私的には謎じゃないけど)と別れてファルサスにやってきてからは、雫とエリクは引き離されてしまい、このコンビの学術的突っ込み満載のとぼけたやりとりとほどよい距離感が好きな私には、ちょっと寂しかった。
そしてラルスはそういえば確かに、初登場時はこんなに感じ悪かったですね(笑)。
まあファルサス兄妹は、ネット版より若干マイルドになっていた気もしましたが。ラルスいいおにいさんでした。
しかし雫はいきなり窮地におとされますよね。そこからの覚悟と行動が、これはもう雫にしかできないと思う。魔法も何も使えない普通の娘であるからこそ彼女の精神のありようが響きます。姉妹のやりとりの追憶にもぐっときました。
最終的には最悪のピンチは切り抜け、王様と雫の容赦ない戦いの日々がスタート。
ラルスは全然雫を信用していないしぴりぴりしているはずなのに、雫の精神のしなやかさとかあと人参とか人参とかで、そこまで重たくなくちょっとコミカルにさえ読めるのでした。
「私と人参を同列に語らないでください」には思いっきり吹き出してしまいました。

一方のエリクが触れるのは、自らの過去。
カティリアーナのエピソード、いきなりファルサスの暗部が容赦なく引き出されていきますね……。
禁呪がらみの大騒動の果てに、ラルスによって暴かれたカティリアーナの真実は、衝撃的でした。ずっしり。
それでも不器用で寂しげで純粋にエリクに懐いていたカティリアーナの姿も、また本当だったんですよね。
エリクが雫に語った「本当のこと」の顛末に、心が泣き笑いのような、ちょっと優しい気持ちになれたのでした。お花のイメージが響きます。

自分ができうる上限を飛び越えるほど、努力し思考し学ぶのをやめない雫がやっぱり本当に好きだし、パートナー兼保護者としてのエリクのポジションも、やっぱりとてもいいなとしみじみ思いました。たとえ離れていても。
お姫さま抱っこは地味にときめきました。ロマンス色は皆無でも、お互いにとってお互いが大切である気持ちが前巻に比べてぐっと増してきていて良かった。
人が好くあまり報われていないハーヴも登場してきて嬉しい。イラストがなんか可愛いくて和みます。
兄への突っ込みと魔法に関わるあれこれで多忙なレウティシアも好き。雫のお菓子は美味しいんですよね~。
あと雫の使い魔になったメアも可愛らしくて癒されまくりです。雫がもし元の世界へ帰れるとすればついていきたいという健気なメアにぐっときてしまいました。

アイテア祝祭は、私の中ではどちらかというと『Unnamed Memory』なんですけれど、楽しそうで好きな場面でした。
雫の作る鈴カステラがおいしそうでした。
大陸分割神話は、そういえばこのあたりが初出でしたか。

禁呪事件がひとまず解決した後、ラルスとレティが雫たちに語った最重要機密。
雫が見続ける謎の夢の正体。
このざらざら気持ち悪い部分が!たまらない!(←現段階では上手く説明できないけれど!)
こんなに決然と自分の足で立ち思考して行動する雫にこんな宿命が課されているのは、やりきれない気分になるのです。

そして言語障害の子どもとのやりとりの食い違いから芽生えたささやかな違和感、そこからエリクが暴いた、言語に関する根源的な食い違い。物語の大どんでん返し。
一度読了済でもぞくぞくします。こんな壮大にして緻密なつくりの物語をお書きになれるなんて、作者さんの頭の中は一体どうなっているんだろう。
エリクの淡々と冷静な分析と雫への混じり気ない気遣いがものすごく救いです。
王様に歯向かってまでまったく臆せず雫を人間だと断じ守るエリクがほんとに格好良すぎる……。

やっぱり初登場時は人でなしだった(笑)お姫さまと従者が表に出てきたところで、二巻目終了でした。

三巻目も待っています!出ますよね?ね!
むしろもうMemoriaeシリーズすべてを書籍版で読みたいです……。


この一週間くらいの間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪


(追記以下はシリーズ全作品ネタバレレベルの私のつぶやき感想メモです。こっそり収納しておきます。)

-- 続きを読む --

カテゴリ: ファンタジー(西洋風)

タグ: 古宮九時 

『Babel 異世界禁呪と緑の少女』古宮 九時 




ごく平凡な文系女子大生・水瀬雫は、夏休みに突然異世界に飛ばされた。
砂漠で行き倒れていた雫は人に救われ、魔法文字を研究する魔法士の青年・エリクに出会う。雫は彼に元の世界の言語を教える代わりに、帰る方法を求めて共に旅に出ることに。
その大陸は二つの奇病——子供の言語障害と謎の長雨による疾患で混迷を極めていて——。


祝・『Babel』書籍化!!!


まずはこれにつきます。
大好きな大好きな藤村由紀さん(古宮九時さん)のMemoriaeシリーズを、書籍のかたちで読むことができる日が来るなんて、感激です。
サイト様(no-seen flower
このシリーズの中でいちばん書籍化が馴染むのは『Babel』だろうなとは、前々から思ってはいましたが。いやはやめでたいです。
明日コミケに行って、同じMemoriaeシリーズ内の別作品同人誌を入手する前に、できればブログで感想というか宣伝を書いておきたかった!

イラストの雫とエリクが、私の中のイメージにびっくりするほどすんなり馴染んで、嬉しい。
派手すぎないやわらかな質感のイラストが素敵です。特にエリクの淡々とした端正なたたずまいが……。雫の異世界バージョンの平民の(ですよね?)服装もすごく可愛らしいし、彼女の凪いだ、それでいて何かを探し求めるような瞳が彼女らしいと思い気にいりました。
カラー口絵から連続しての「歴史に残らぬ少女と魔法士の旅路が、今始まる。」という、サイトにもあった導入の文章がまた格好良くて、もう満足感いっぱい、おなかいっぱい(笑)。

本編を読んでいって、ああ、やっぱりこのお話私大好きだ!と、あらためて叫びたくなりました。
Webでの初読時は、今から思うと「『Unnamed Memory』の後の時代のお話」という意識で読んでいたので、今回こういう独立したひとつの物語、というかたちで読んでいると、『Babel』独自の面白さをしみじみ実感できました。
じっくりじんわり時間をかけて、読了。

雫とエリクの学術的(?)少々ずれた会話と、保護者のようなパートナーのような独特の距離感が、やっぱり大好きです。
華のある姉と妹に挟まれ、自分を見いだせずにいた雫の胸の内に自然に共感し、彼女が突然放り込まれた異世界で、他人の助けを借りつつ、彼女のやり方でひたすらに頑張って頑張って頑張りぬく姿が、まぶしく愛おしい。
研究者肌で淡々とクールだけれど、誠実で頼もしく人の好いエリクも大好き!
書籍版だと、雫の普通の女の子としての内面の屈折の描写がやや前面に出てきていたのかなという印象。
あと指輪のエピソードってたぶんこんな書かれ方していなかった気がするので(あれ、覚えてないだけ?)ちょっとどきどきしました!
なんというか、読んでいて、心がほんわりあたたかく優しくなるふたりなのです。

メアもやっぱりかわいいな~。お妃様のエピソードはせつない。
ターキスはなんかこうもっと殺伐としていた気がしなくもないけれど、人懐っこさが私は好きでした。
物語のこんなに初期段階でこんなにえぐい危機に直面していたんだっけと、改めて青ざめました。(だってティナーシャの時代から皆を苦しめていた代物じゃないですか……。)雫もエリクもメアもひとまず無事で本当に良かったです。
雫のスキルは、方向感覚の鋭さと、あとお料理ですね。
料理スキルは絶対今後必要ですよ。
異世界で見知らぬ食材にかこまれてる中でアップルパイを作れるなんて本物です。
そうか、お勉強で頭を使うと脳に糖分がほしいというやつか……だから『Babel』のふたりはしばしば雫の手作りおやつを食べているんだな。

「大幅な加筆修正」が今後どう効いてくるのか、気になって仕方がないです。
個人的に何より気になるのは『UM』つながりが書籍版ではどこまで描かれるのか。魔女の描写も例のドラゴンもすこーし出てきたし、まったく書かれないということもなさそうで、そうなってくると色々気になって気になってしかたないのでした。
続きめちゃくちゃ読みたいです。本当に続編出て!出てください!天に祈ります。
この感じだと、書籍版だとシリーズ全四巻くらいでしょうかね。

天に祈るだけではなく、この一巻目の売れ行き次第で続編がどうなるかも決まるとも聞きましたので、このブログに書いてどこまで効果があるのか謎ですが、宣伝させてくださいませ。
こちらの『Babel』、『はなのみ亭』的、この夏休みの推薦図書です。
ファンタジー好きさんには一押し!いわゆるライトノベルをあまり読まない方でも読みやすいと思います。表紙イラストの雰囲気が違和感なければまず大丈夫かと。
派手さはあまりないですが、非常に緻密なつくりの世界観の美しいファンタジーです。文章もすらすら読みやすい。
タイトルから分かる通りに「ことば」にまつわるファンタジーで、そういうのがお好きな方には特におすすめ。
真面目で努力家の女の子が頑張るいつもの私の好みポイントもばっちり。
図書館好き、書物好きさんにもおススメ。
異世界に行って生命の危機に何度も瀕しても、なお大学図書館で借りていた重たい本を最後まで持ち歩いていた雫は、特殊な力がなかろうが十分すごいです。これだけですでに雫はただものではない。ちなみにエリクも雫と出会った時点では図書館勤めの青年です。
あと雫が出会った「不思議な本」も物語のキーポイントですので。このざらざらした違和感!

そして書籍版がお気に召されたら、Web版を最後まで読んでみるのもありだと思いますし、サイト内の他作品を読んでみるのもありかと。
(個人的には『Unnamed Memory』を少女小説好きさんには何度もしつこくおススメしたい……一緒に好き語りしたい!エリクが語るいわゆる「魔女」の物語です。)

あ、あと、書店限定特典の小話が欲しいあまりに同じ本を二冊買ってしまいましたが、後悔はしていない。布教用にします。
そして『電撃マガジン』まで買ってしまいました。ちょっとせつなくほろ苦いお話で、キャラクターのラフスケッチや作者さんのインタビューも読めてやっぱり買ってよかったです。

参考→ 『Babel』Web版感想私の好きな美味しい物語4 雫のパンプティングまたはフレンチトースト


この一週間それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(西洋風)

タグ: 古宮九時  no-seenflower 

『青薔薇伯爵と男装の執事~発見された姫君、しかして結末は~』和泉 統子 




とある事情で青伯爵家当主におさまったアッシュ。しかし彼が伯爵家で過ごせる期間に終わりが近づいていた。
アッシュの事情を知らないアンは、今日も笑顔で男装執事業にいそしんでいて、彼女の存在はかけがえのないもので。
アッシュとアンの抱えるそれぞれの秘密、女王陛下が探し求める「青い薔薇」、すべての秘密が明らかになるとき、夢は叶う——。

『青薔薇伯爵と男装の執事』の新刊、完結巻でした。
前巻がとても私好みな素敵なお話だったので、続きを心待ちにしていました。嬉しいな!

表紙およびカラー口絵の雲屋ゆきおさんの単行本サイズのカラーイラストがそれはもう麗しくて、眼福ものです。
この表紙はなんかまあ、思い切りお話のネタバレなんじゃ……とか思わないでもなかったですが、まあ少女小説ですしね。それはそれ。ドレス姿のアンの妖精のような可憐な美しさにめろめろですので、やっぱりこのイラスト嬉しい。
青と白を基調とした上品な装丁も加え、前巻に引き続き、本編を読む前からもうすでに満足。うっとり幸せいっぱいです。

そんな本編も、すっごく面白かった!いったん波に乗ったらもうノンストップで最後まで読み切ってしまいました。
この一冊に、各方面の陰謀劇やアッシュとアン達の出生の秘密、心ときめくロマンスや貴族のおうちの複雑な家族のドラマ、友情や主従愛(老若含め)ぎゅぎゅっと詰まっていて、読み応えばっちり。
ラストはまさに!な大団円で、幸せ感いっぱい。
少女小説万歳!!!と、読み終えて思わず叫びたくなりました。いやー、良かったです。

アッシュとアンのちぐはぐな美貌主従コンビがそれはもう愛おしくて、お互いにじみ出る想いに心ときめき、それぞれが抱える秘密ゆえのすれ違いに胸がきゅっとして。
相変わらずあえて感じわるーくふるまい続けるアッシュですが(その理由、アッシュの生い立ちが辛かった……。)、その人柄の良さは屋敷の使用人たちにはもう隠しきれてなくて。
ローズベリー家のメンバー達もしっくり馴染んでひとつの家族になっていて、読んでいてとても微笑ましかった。
そしてアンの素性には何かあると思ってはいましたが、まさかこういうつながりだったとは!!思ってもみなかった。
重い事情を胸にひめつつ、お日様の明るい笑顔で使用人の仕事を心からたのしげにこなし、皆に愛されていたアンの姿を思うと、胸にじんとくるものがありました。
善意のかたまりの楽天家で苦労性でとびきり優秀で、絶世の美少女・アンがますます私好みのヒロインで、うわーアッシュもアンもふたりとも大好きだー!!(叫ぶ)
そして青い薔薇の秘密、タイトルの「発見された姫君」の正体も、二重のトラップでした。(私には。)

登場人物の人間関係やお家の関係が非常にややこしく複雑で、完璧に追うのはもう放棄して読んでいたのですが、巻末にネタバレあり人物相関図もきちんとありましたので、最終的にはきちんと理解できて良かったです。
なぜ巻末に……と思ったけれども、確かに思いきりネタバレなので本編終了後じゃないとだめですよね……。
イギリスを思わせる架空の異世界の対立し合う一族、国家の設定も、とても複雑でしたが魅力的でした。世界観が魅力的に描かれている少女小説は燃えますね!

……と、ここまで感想を書いてきてやっぱりどうしてもネタバレありで語りたい!と気持ちを押えられなくなってきたので、以降中途半端に追記にたたみますね。
適当に順不同にひたすら好き語りを繰り返しているだけですので、あしからず!


-- 続きを読む --

カテゴリ: ファンタジー(西洋風)

タグ: 和泉統子 

『左遷も悪くない 5』霧島 まるは 




左遷された軍人ウリセスと、彼が赴任先で娶った妻レーア。
レーアがついに子どもを身ごもり、ウリセスの妹ジャンナ、レーアの家族に優秀な部下も交え、ウリセスの毎日は穏やかににぎやかにすぎていく。
しかしレーアが出産間近のタイミングで、左遷の原因となった軍上層部との軋轢がからむ問題に決着をつけるため、ウリセスは家を離れざるを得なくなる。
左遷先で築いた幸せを守るために、ウリセスは戦う。

霧島まるはさんの『左遷も悪くない』シリーズ、五巻目にして完結巻。
やわらかな光につつまれ微笑むレーアと子ども、家族を見下ろすウリセスの表紙イラストから、しみじみ感慨深いものがありました。

敵地に旅立ったウリセスと臨月のレーア。
離れ離れのふたりが同じ時期に、お互いの存在を支えに心強い味方にもかこまれ、それぞれ命をかけて戦っている姿に、読んでいて胸があつくなりました。とても良かった。
まるはさんのお話は、読んでいるとあかるいお日様と大地の土の香りがして、私も日のあたるところで日常をがんばって生きていかないといけないなあ。とまっすぐに励まされている感じがするのが大好きです。
今回このお話を読んでいて、特に私は励まされて、日々を乗り切れたので、感謝の気持ちをこめて。つたなくとも感想記事を書きにやってきました。

ウリセスとエルメーテの上司と部下コンビが、お互いの長所と短所を把握しつくしてもう完全に息ぴったりでぎりぎりのピンチをきりぬけ戦っていて、読んでいてすかっととても気持ち良かったです。
泥臭くはいつくばってふんばりウリセスに尽くすエルメーテ、いつの間にこんなにウリセス大好きになってたんだろう……(笑)。彼の知略戦も相変わらずさえわたってて格好いいな。そしてウリセスの軍人としての優秀さも読んでいてずーんと響くほど見せつけられました。
ウリセスの悪友三人組が、また独特のドスのきいた存在感。皆いい味出してて好きでした。ウリセスのお兄さんも。
ウリセスのため東奔西走して助けてくれたガストーネさんの言葉にしない想いが垣間見えるやりとりにはっとしつつ。ここでもそっと言葉にしないままがよいのでしょう。
エルメーテとお兄さんの顔合わせ、エルメーテ無事に帰れてよかった……(笑)。

レーアの方では、心強い家族や親しい人々が常にそばにいて見守り助けてくれていて、にぎやかな感じ。
夫のウリセスの不在は埋められなくても、寂しさをあまり感じないにぎやかな環境がよかったです。
何よりジャンナ、成長したなあ!料理の手際の見事さに舌を巻きました。
色鮮やかではっきりした味付けが想像できるメニューの数々、ちゃんとジャンナ自身を表す料理になっていることが、読んでいるだけで分かります。揚げ物の戦いにももうひるまず勝利してるし。フリッターおいしそう。
粗忽者だけど明るく元気いっぱいのフィオレ嬢の存在も良いな。
レーアのお産の場面。こちらも命懸けだったのだと、戦いのあとのレーアの姿に思いました。

ウリセスの出発直前にウリセスのあとをそそそ、とついて回るレーアも可愛らしかったし、ついにウリセスが役目を終えて帰ってきた後の、夫婦のやりとりの場面も、心がじんわりときました。ウリセスが一巻目のとんちんかんな感じとはもうすっかり変わっていて文句のつけようがない奥さん大事な旦那さんで、彼の姿に嬉しさが。
レーアの手紙をようやく読むことができたウリセスの心情の場面も、良かったな。

本編最終話の皆勢揃いのイラスト通り、にぎやかであたたかな人の輪にかこまれたウリセスとレーア夫妻、ああよかったねえ、としみじみ幸福感にひたれるラストでした。
ピエラさんとトビア兄さんの夫婦がやはりお気に入りな私。
フィオレさんも頑張りが認められたようで何よりです。

これであとはエルメーテがジャンナにプロポーズして、ふたりくっついてめでたしめでたし……。
じゃ、なかった!
や、やられた!!ジャンナは思っていた以上に強かでたたかう娘でした。さすがアロ家の娘だったのでした。
呆然自失状態のエルメーテの姿が見られるとは……。いやはや。
確かにここからさくっと立ち直ってのエルメーテとジャンナの駆け引きは、あんなにあっさりお見合い結婚で結ばれたウリセスには、理解できないだろうな~。
愛のかたちは色々ですね。(知ったように言う)

番外編のエルメーテの日記、かなりのボリュームがあって嬉しい。
エルメーテ、頑張った!そしてこれからも頑張って!と心の中でエールをおくりつつ、頁を閉じたのでした。

まるはさんのネットプリントサービスで読ませていただいた後日談も、微笑ましく幸福感が伝わってきて、ほっこり。
ジャンナの叔母さんスキルが高くてさすがです。

Web版の方の、書籍版と少し流れが異なるというストーリー、実はまだ読んでいないので、書籍版の余韻にひたっているうちに、こちらの方も読み切っちゃおうかしら。

カテゴリ: ファンタジー(西洋風)

タグ: 霧島まるは 

『道果ての向こうの光 奇跡を紡ぐ物語』秋月 アスカ 




馬車にひかれて死んだはずの町娘ユーナは、とある事情から聖女シェリアスティーナの身体に入り、一年の期限付きで王宮暮らしをすることに。
残虐なふるまいをしていたシェリアスティーナに向けられる周囲の態度は冷たかったけれど、ユーナのひたむきな頑張りは徐々に受け入れられ、あたたかな時間も過ごせるように。そして聖女の第一騎士アシュートに淡い恋心を抱くもひっそり封印するユーナ。
そして時が来て、ユーナはシェリアスティーナの身体から消えてしまう。
悲嘆にくれるアシュートだが、戻ってきたシェリアスティーナは、今度は自分がユーナを救うのだとアシュートに告げる——。
身代わり聖女と堅物騎士の王宮ファンタジーシリーズ、完結。


「やっと、君に会えた。」
帯のアシュートの台詞が、このシリーズの完結巻を何年も待ち続けた私自身の心のうちにも重なって、胸がいっぱいになりました。
ユーナもアシュートも、おかえりなさい!!!と声をかけてあげたい気持ち。


そんな訳で、『道果ての向こうの光』シリーズ、待望のシリーズ四巻目の完結巻。
もう半ば読むのをあきらめていたので、本当の本当に嬉しいです。
なかなか世知辛い世の中ですが、待ち続けていれば、こうして報われることだって、あるんだなあ。
まさにこの巻自体が「奇跡の物語」と思えてきます。

この巻を読むにあたって、ちょうどいい機会だから……と、実は未読だったWeb版の『道果ての向こうの光』も、先日ラストまで読んだところでした。
(→Libera 様)
しみじみと感動しました。
残酷で理不尽な運命を押し付けられたユーナが、それでもひたむきに前を向いて頑張り続けて、育ててきたあたたかなものが、周りの人たちの心にはいつしかしっかり息づいていて、今度は彼女を救うために、想いがひとつひとつ力になってゆく。という奇跡。
やはり私はこの物語が大好きだと改めて思いました。
Web版と書籍版、少しずつ違う部分もあったので、書籍版のラストはどうなるのか……どきどきでした。
今までWeb版未読だったのも、書籍版とは展開が違う、というのが、受け入れられるかどうか、不安だったというのが大きかったので。

実際読んでみると、物語の流れは大きくはそれでもほぼ同じ。読んでとても幸せな気分になったラストも同じで、ものすごくほっとしました。
この四巻目は、言ってみれば、ユーナ視点で最後まで進んだWeb版ではさらりと流れて語られなかった物語の裏側。
アシュート、そしてシェリアスティーナ側からの、ユーナをもう一度取り戻すまでの、ひたむきな頑張りの軌跡の物語、だったでしょうか。

がちがちに立場に縛られた堅物人間のアシュートが、愛する娘を取り戻すために、いったんすべてを投げ打って、見知らぬ田舎の町で勝手が違いとまどいつつもシンプルに頑張る姿は、胸を打つものがありました。
ユーナのご両親に親戚たち、彼女の血縁なだけあって人が良くあたたかな情を持つ、愛するものを守るためにはためらいなく身をはれる人たちで、読んでいて和みました。
こんなご両親に愛情を注がれ大切に育てられて、あのユーナだったんだなあ。と納得するものがありました。

そして戻ってきたシェリアスティーナの方も。
Web版では触れられた程度だったバルコニーでの長い告白、宣言。
ユーナにとってみれば気にせずにはいられないし辛くやるせない気持ちにもなるでしょうけれど、でも確かに、この道がいちばん彼女には良いんだろうなあ。と納得のゆくものでした。
シェリアスティーナとユーナの過去の友情、あの馬車の事故との因果関係、シェリアスティーナとユーナをつないだ存在のことも、すっきりと語られて、そういうことだったのね。と。
シェリアスティーナの本来の能力をユーナが彼女に思い出させて、今度はシェリアスティーナの方がその力を用いてユーナを救う、という流れが、とても好きだなあと思いました。
塔に走ったユーナが受け取ったティスカラの花の場面が、美しかった。
ユーナとシェリアスティーナの友情は、単純ではない運命も引き寄せてしまったのだけれど、でも、とても尊い。

元の町娘に戻ったユーナへの、アシュートのシンプルでひたむきな求婚の場面も、生真面目なふたりらしくてとても良かったです。
アシュート、いつの間にか吹っ切れてわりと熱い男になったな……(笑)。ジークも安心しているでしょう。
ただ彼の想いを受け入れるだけにとどまらず、実家の薬屋の仕事と関連する仕事を王宮でも頑張りだしたユーナが、とても彼女らしくて、それもいいなと思いました。
ナシャとミズレーさんとのなごやかなおしゃべりの時間も、イーニアスやネイサン、ジーク、ライナス、ロノ、それぞれとの仲も、それぞれのかたちで途切れていなくて、嬉しいな。
イーニアスがやっぱり報われなくて不憫なんですけどねえ……。彼にもいいひとがみつかるといいな。

Web版の方の感想も、この際なので。
ナシャの上司のカーリンさんが、なかなか好きなキャラでした。(書籍版にも登場してましたっけ……記憶違いならごめんなさい!)
カーリン自身の過去のしがらみから、ユーナと一度すれ違ってお互い辛い思いをして、そこから関係を修復した流れが、私、とても好きでした。
年若いナシャをたしなめつつカーリン、ナシャ、シェリアの三人で仲良くお話している図が好きでした。
あと、ユーナが演奏するクラヴィディア。ユーナとアシュートのふたりにとってはとても大事な一場面になっていて、この使われ方も、心憎いものがありました。

今回この本をこうして世に送り出してくださった作者さま以下すべての皆さまに、感謝です。
できればレガロシリーズ自体も復活してくださるととても嬉しいのですが……。

秋月アスカさん、小説家になろうさんの方の連載作品『異世界出戻り奮闘記』の方も、たいへん楽しみに読ませていただいてます。
そろそろ物語は終盤に近付いている感じで、ハルカとノエルの生真面目頑固者カップルの行方から、目が離せません!




『道果ての向こうの光』もなろうさん転載されて、読みやすくなりました。
(そしてこの感想を書いていたタイミングで番外編が!
ナシャと一緒の一日侍女体験、楽しそうでした。生真面目同士の初々しいカップル、いいなあ~。ごちそうさまでした。
ジークもミズレーさんも元気そうで楽しそうで何よりです。)

カテゴリ: ファンタジー(西洋風)

タグ: 秋月アスカ 

『青薔薇伯爵と男装の執事~出逢いは最悪、しかして結末は~』和泉 統子 




名門・ローズベリー家に性別を偽り執事として仕えるアン。
新当主としてアンが見出したアッシュは優秀で、貧乏生活を彼に強いるのは心苦しいけれども鼻が高いアン。
一方、アッシュは女王と謁見してそうそう、「青い薔薇」について何かあれば報告するようにとの命令を受け——。

初読み作家さんの新作小説。たぶん少女小説のくくり。
初読み作家さんでいきなりこのお値段の本を買うのはちょっと勇気がいるなあ……とずっとためらっていたのですが、雲屋ゆきおさんの美しい表紙と私好みっぽいタイトル&あらすじとネット上の皆さまの評判がやはりどうしても気になり気持ちを押えられず、ついに思い切って購入。

まずは雲屋さんのカラー表紙の主役ふたりが本当に麗しくてながめているだけでときめきます。眼福です。
「春のお日様みたいな」やわらかく優しい雰囲気で青い薔薇を手にするアンと、「月の化身」冷たい美貌でばーんとえらっそうにかまえているアッシュが並び立っている様は、それはもうお互いの美貌がお互いを引き立て合っていて。
お似合いですよ。お似合い!
表紙カバー後ろにも伯爵家の使用人たちがそろっていてこれも嬉しい。
そして本を開くとさらに!麗しきカラー口絵が、2頁も!
紺色の見返しも白薔薇の花のふちどりも帯のコピーもすべて品があって美しくて、本文を読む前からすでに「この本買ってよかったなあ……」とうっとり浸ってました。

お話も、ラブコメちっくで面白かったです!
善良で天然な美少女(男装してるけど)アンと、口は悪いけれどなんだかんだ人の良い美貌の新当主アッシュ。
ふたりの会話のあまりのかみ合わなさと、アッシュの口調の独特の語尾のばしがあり、正直はじめのうちは若干読みづらかったのですが、ふたりのお互いへの執着心や自覚なしの想いなどがだんだんみえてきて、どうしましょう、可愛すぎるこのふたり!
特にアッシュ視点からのアンへの子どもっぽい執着が、何よりもアン自身が青伯爵家の財産であると言い切ってしまえる本心が、ふだんの冷静で隙を見せない当主然とした彼からそこだけがらっとイメージ外れていて、ときめいて仕方なかったです。
「ご主人様」を善意のフィルターで敬愛しまくっているアンも、ふとした折にアッシュの態度が気になり人知れず落ち込んだり複雑な思いをしたり、自覚手前の恋心と言う感じがして可愛いったらないです。

天然さとお人好しさが突き抜けているアンは、読んでいていらっとするすれすれな感じもしましたが、たぶんアッシュがあえて刺々しく厭味ったらしい態度を取り続けているので、彼女の善良さがおおげさにみえてしまうだけ、なのでしょう。きっと。
貴族のご令嬢たちに大人気なのも隠れた(?)ハイスペックさも鈍感さもご主人様命なところも、読み終えたころにはすべてひっくるめて大好きなヒロインになっていました。
名前が三つ、あれ四つ?あって器用に役割で使い分けているのも面白いですね。周りの人は周りの人で受け入れてるし。
大きくてきらきらした瞳で微笑むアンが可愛すぎてめろめろです。

アッシュも、作者さん自身が書いていらして耐えられなくなるヒーロー……感じ悪かったですが、でも確かにこんな貧乏暮らし借金まみれの伯爵家に突然連れてこられたって、そりゃ嬉しくないですよね。
それでも彼には彼独自の伯爵家の当主としておさまるべく事情があるようで。
存在感ある美貌と頭の切れの良さ。
なんだかんだ言いつつ伯爵家の使用人それぞれの良さをちゃんと認めていてそれぞれへの接し方に心を砕いている、年若くして素敵なご主人様です。
サイモン弁護士をこてんぱんに打ちのめして借金問題を解消してさらに彼をこきつかう手腕がお見事すぎでした。すかっとしました。

伯爵家の使用人たちや親戚関係のひとたちや、皆個性的で有能でキャラが立ってて面白かったです。
(それにしても親類縁者の家系図がややこしすぎて半分も理解できてない……でも飛ばし読みしても面白いからいいや)
サイモンと結婚したオリーブ、思っていたよりしたたかなお嬢様だったようで好感を持ちました!
白公爵夫人格好いい。
メイドの双子姉妹もかわいいっ!シドニーとベンも出番はさほどなかったけれど頼れるひとたちみたいですね。
メイドちゃん視点の番外編も、アッシュとアンの主従コンビの人の良さが前面に出ていて、心がほっこり&きゅんきゅんしました。

女王陛下が探し求めているという「青い薔薇」、前青伯爵と白公爵夫人と女王陛下の過去の因縁?、アッシュの謎めいた「一族」の事情、一向に見えてこないアンの本当の生い立ち、そもそもどうしてアンは男装執事の道を歩むことになったのか、アンとアッシュは過去に何らかの関わりがあったのか……、色々謎だらけで、お話の最後の「縁談」もどうなっちゃうのー!!と言う感じで、続きが激しく気になります。
続き、読めますよね?

多少クセはあるもののとにかくキャラの生きが良くてアッシュとアンの主従カップルが可愛らしい、楽しいお話でした。
イラストも本当にきれいだし!読めて良かったです。


ここ一週間くらいの間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(西洋風)

タグ: 和泉統子