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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『本好きの下剋上』第一部~第二部 香月 美夜 




本がとにかく大好きで大好きな女子大生が、大学図書館への就職目前に死んでしまって、異世界に転生。
そこでは彼女は下町で暮らしている病弱な幼女で、周囲には本なんて一冊もない。
しかし彼女はそんな状況からなんとか本を作りだそうと、材料集めから一からはじめて試行錯誤を重ねて紙を作り文字を覚え……周囲を巻き込み突っ走っていくおはなし。


とても人気作なWeb小説発の超大作ファンタジー小説。
実は一巻目を何年も前に買ってずっと積み本にしていたのですが、一巻目を読み切ったら、うん、面白くって。
二巻目を読んだら、また一層、面白くって。
三巻目を読んだら、さらに幾重にも、面白さが増してきて。泣いて。
……第一部完結した時点から途中でやめられなくなってきて、一冊一冊がかなりのぶ厚みのあるシリーズを、現時点で第二部まで計七冊ですか、ほぼ一気読みしてしまいました。
先週ブログ書いていなかったのは、このシリーズの続きをひたすら読んでいたからです。
しかし第二部まで読み終えて、そろそろネタばれ含みの感想メモをちょっと書き残しておきたくなってきたので、ようやくブログまでやってきた次第です。

なんだろう、やっぱりヒロインのマインの、本に対する情熱がすごすぎて。
周囲に未知の技術を振りまき大騒動を巻き起こしていく姿にひやひやしつつも、突っ走っていくその姿が、読んでいて何とも痛快で面白いです。
ほんっとうになんにもないところ、どころか周囲は誰も本自体を知らないところから、材料を探し道具を作って一から本を手作りしていく、その過程のひとつひとつの描写がていねいで難しすぎずすっと読みやすいのが、とても良いですね。
私も本好き図書館好き人間なので、ひとつひとつのステップに共感できるし、とってもワクワクして楽しいです。

マインはとにかく本狂いですが、このお話の面白さは本以外、衣食住の描写もまた、非常に充実していて読み応えがあるところにもあると思います。
異世界で実践、日本の家庭科!
魔法まじりの異世界の材料で試行錯誤して、下町のつましい暮らしの中から前世の知識を活用して生み出していくマインの創作物、これまたしだいに家族の手を離れて周囲に大騒動を巻き起こしつつ広まっていくのが、たのしい~!!
私はやっぱり美味しいものを食べるのも作るのも好きで興味があるので、食に関する部分が特に楽しいです。
蒸したお芋にバターやカトル・カール、天然酵母のパンやピザ、マイン流スープ、フルーツ洋酒漬けとクリームのクレープ、全部おいしそうだけれど、今まででいちばん気になるのはやはり、一巻目で登場した冬の不思議植物・パルゥのしぼりかすで工夫して作ったおやつ・パルゥケーキでした。
おからのケーキ?いもくりかぼちゃのほくほく甘い感じ?少しチーズケーキっぽさもある??……けして再現できないお菓子だけになんとも魅力的です。
マインのお姉ちゃんのトゥーリやお母さんがお裁縫のプロなのもあり、洋服やお洒落の描写も結構力が入っていて楽しい。女三人が楽し気にお洒落に工夫し手仕事をしている姿ってなんかいいですね。お父さんが持ちあげられて木を加工して娘に喜んでもらってデレデレしているのも微笑ましい。
住宅事情や下町、商人、神殿、貴族、それぞれの風俗やものの考え方等もきっちり書き分けられているのも面白いです。確かに衛生事情は現代日本から転生してきている身には辛いというのはよくわかる。
貴族が関わってくるにつれて語られてくる神話もギリシア神話や日本の神話っぽい部分もあり、面白いな。

そしてそして、このお話でなんといってもいいのが、マインとその家族の家族愛!!そしてマインの近所の同い年の少年・ルッツとの息ぴったりの相棒関係!!!
第三巻でマインを守るため、貴族相手に身体を張ったお父さんとお母さんの愛情と覚悟の強さに、胸をがつーんと打たれて泣けてきてしまった。
最初は突然できた新しい家族を受け入れられなかったマインが、徐々に両親と姉をかけがえのない大切な存在としていく様が、自然な感じで描かれていて。本狂いではあるものの家族への愛情はまったく別で大切な順位を間違えないマインの姿が、いい。
家族の他に、大工の末息子ながら旅商人に憧れを持っていたルッツは、マインの最大の理解者であり、本作りの相棒であり、すべてを分かち合えるお互いが最大の味方。よくここまでマインの突飛な行動に辛抱強く付き合えるなルッツ……特に最初は感心するしかありませんでした。あれか、多分最初の内はパルウケーキでの餌付けですね(笑)。
びっくりするほど虚弱なマインの完璧なペースメーカーをしているところもすごい!自分の商人への夢を諦めずに、マインに助けられてついに実行に移して現在進行形で頑張っている姿もとてもいいです。彼の成長っぷりを見守るのは、ときに滅茶苦茶なマインのストーリーの中で癒しといいますか、とても微笑ましく良いものです。

商魂たくましい若手商人ベンノさん、片腕マルクさん、コリンナさんとオットーさん夫婦、ギルド長の孫娘フリーダ、色々魅力的な脇キャラがいっぱいいっぱいいまして、みんな好きだ~!!!特にマインに振り回され続けながら彼女の保護のため裏で幾重にも手を回してきていたベンノさんには恐れ入るしかありません。でも彼も苦労しながらもなかなか楽しそうなのですよね。ふふふ。

読んでいて、もし本がなかったら、家族を失ってしまったら、ときどき自分自身になぞらえて考えずにはいられない。
あまりに緻密に異世界での生活のありようが描かれているので。ね。初期のマインのちょっと周囲を考えてないところも、私自身実際こうなったらマインみたいになるような気がするし、責められないよなあ。
むしろ寝込んでばかりの家族の役立たずポジションから、ちょっとずつ前向きになり工夫を凝らして家族に認められ着実にこの世界で生きることをはじめたマインの姿は、とても尊い。

では追記以下に、ちょっとだけネタばれ含みの語りをさせてくださいませ。
第二部 神殿の巫女見習いの四巻目までで。


ここ二週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪


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カテゴリ: ファンタジー(西洋風)

タグ: 香月美夜 

『青薔薇伯爵と男装の執事 番外篇~完璧な大団円、しかしてその後の百花繚乱は~』和泉 統子 




『青薔薇伯爵と男装の執事』シリーズ番外編集。
青伯爵家が貧乏であった頃の「聖ブリードの日」のひとこま、アンとアッシュの結婚が決まった際の使用人たち視点のお話、そしてアンとアッシュの初夜周辺のロマンスなど収録。

『青薔薇伯爵と男装の執事』の待望の番外編集!
私このシリーズ本当に好きで好きで、番外編が収録されると聞き雑誌の小説Wings を初購入して過去の号も取り寄せてしまったほど好きでして。
今回完結後の番外編集が単行本のかたちで出ることになって、書きおろしのお話もたっぷり読めて、幸せいっぱいです。
毎度ながら雲屋ゆきおさんの表紙のカラーイラストが麗しくて素敵すぎて、まさに眼福。
幸せそうに寄り添うアッシュとアンのふたりを眺めているだけで私も幸せ~!
そしてそして表紙裏側には、サイモンとオリーブ様がいらっしゃるではありませんか!仲睦まじい姿にこちらも心の中できゃーきゃー叫んでしまいました(笑)。黄色のドレスが似合うオリーブ様が素敵。
カラー口絵のシドニーが焼き上げたクッキーを囲んでいる使用人組のイラストも微笑ましくて大好きです。
薔薇のイラストと紺色の見返しで上品に作られている本が相変わらず素敵です。文庫に比べるとお値段ははるのですが、このシリーズに関してはやはりそれだけの価値がある!と私は思っています。

なにかとネタばれ要素が多いお話だと思いますので(笑)、以下の感想は追記の方に入れることにいたしますね。
とにかく好きだ~!という気持ちを勢いのままつづっただけでまとまりがなく非常に読みづらいのでご了承ください(笑)。


その前に昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ファンタジー(西洋風)

タグ: 和泉統子 

『青薔薇伯爵と男装の執事~発見された姫君、しかして結末は~』和泉 統子 




とある事情で青伯爵家当主におさまったアッシュ。しかし彼が伯爵家で過ごせる期間に終わりが近づいていた。
アッシュの事情を知らないアンは、今日も笑顔で男装執事業にいそしんでいて、彼女の存在はかけがえのないもので。
アッシュとアンの抱えるそれぞれの秘密、女王陛下が探し求める「青い薔薇」、すべての秘密が明らかになるとき、夢は叶う——。

『青薔薇伯爵と男装の執事』の新刊、完結巻でした。
前巻がとても私好みな素敵なお話だったので、続きを心待ちにしていました。嬉しいな!

表紙およびカラー口絵の雲屋ゆきおさんの単行本サイズのカラーイラストがそれはもう麗しくて、眼福ものです。
この表紙はなんかまあ、思い切りお話のネタバレなんじゃ……とか思わないでもなかったですが、まあ少女小説ですしね。それはそれ。ドレス姿のアンの妖精のような可憐な美しさにめろめろですので、やっぱりこのイラスト嬉しい。
青と白を基調とした上品な装丁も加え、前巻に引き続き、本編を読む前からもうすでに満足。うっとり幸せいっぱいです。

そんな本編も、すっごく面白かった!いったん波に乗ったらもうノンストップで最後まで読み切ってしまいました。
この一冊に、各方面の陰謀劇やアッシュとアン達の出生の秘密、心ときめくロマンスや貴族のおうちの複雑な家族のドラマ、友情や主従愛(老若含め)ぎゅぎゅっと詰まっていて、読み応えばっちり。
ラストはまさに!な大団円で、幸せ感いっぱい。
少女小説万歳!!!と、読み終えて思わず叫びたくなりました。いやー、良かったです。

アッシュとアンのちぐはぐな美貌主従コンビがそれはもう愛おしくて、お互いにじみ出る想いに心ときめき、それぞれが抱える秘密ゆえのすれ違いに胸がきゅっとして。
相変わらずあえて感じわるーくふるまい続けるアッシュですが(その理由、アッシュの生い立ちが辛かった……。)、その人柄の良さは屋敷の使用人たちにはもう隠しきれてなくて。
ローズベリー家のメンバー達もしっくり馴染んでひとつの家族になっていて、読んでいてとても微笑ましかった。
そしてアンの素性には何かあると思ってはいましたが、まさかこういうつながりだったとは!!思ってもみなかった。
重い事情を胸にひめつつ、お日様の明るい笑顔で使用人の仕事を心からたのしげにこなし、皆に愛されていたアンの姿を思うと、胸にじんとくるものがありました。
善意のかたまりの楽天家で苦労性でとびきり優秀で、絶世の美少女・アンがますます私好みのヒロインで、うわーアッシュもアンもふたりとも大好きだー!!(叫ぶ)
そして青い薔薇の秘密、タイトルの「発見された姫君」の正体も、二重のトラップでした。(私には。)

登場人物の人間関係やお家の関係が非常にややこしく複雑で、完璧に追うのはもう放棄して読んでいたのですが、巻末にネタバレあり人物相関図もきちんとありましたので、最終的にはきちんと理解できて良かったです。
なぜ巻末に……と思ったけれども、確かに思いきりネタバレなので本編終了後じゃないとだめですよね……。
イギリスを思わせる架空の異世界の対立し合う一族、国家の設定も、とても複雑でしたが魅力的でした。世界観が魅力的に描かれている少女小説は燃えますね!

……と、ここまで感想を書いてきてやっぱりどうしてもネタバレありで語りたい!と気持ちを押えられなくなってきたので、以降中途半端に追記にたたみますね。
適当に順不同にひたすら好き語りを繰り返しているだけですので、あしからず!


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カテゴリ: ファンタジー(西洋風)

タグ: 和泉統子 

『左遷も悪くない 5』霧島 まるは 




左遷された軍人ウリセスと、彼が赴任先で娶った妻レーア。
レーアがついに子どもを身ごもり、ウリセスの妹ジャンナ、レーアの家族に優秀な部下も交え、ウリセスの毎日は穏やかににぎやかにすぎていく。
しかしレーアが出産間近のタイミングで、左遷の原因となった軍上層部との軋轢がからむ問題に決着をつけるため、ウリセスは家を離れざるを得なくなる。
左遷先で築いた幸せを守るために、ウリセスは戦う。

霧島まるはさんの『左遷も悪くない』シリーズ、五巻目にして完結巻。
やわらかな光につつまれ微笑むレーアと子ども、家族を見下ろすウリセスの表紙イラストから、しみじみ感慨深いものがありました。

敵地に旅立ったウリセスと臨月のレーア。
離れ離れのふたりが同じ時期に、お互いの存在を支えに心強い味方にもかこまれ、それぞれ命をかけて戦っている姿に、読んでいて胸があつくなりました。とても良かった。
まるはさんのお話は、読んでいるとあかるいお日様と大地の土の香りがして、私も日のあたるところで日常をがんばって生きていかないといけないなあ。とまっすぐに励まされている感じがするのが大好きです。
今回このお話を読んでいて、特に私は励まされて、日々を乗り切れたので、感謝の気持ちをこめて。つたなくとも感想記事を書きにやってきました。

ウリセスとエルメーテの上司と部下コンビが、お互いの長所と短所を把握しつくしてもう完全に息ぴったりでぎりぎりのピンチをきりぬけ戦っていて、読んでいてすかっととても気持ち良かったです。
泥臭くはいつくばってふんばりウリセスに尽くすエルメーテ、いつの間にこんなにウリセス大好きになってたんだろう……(笑)。彼の知略戦も相変わらずさえわたってて格好いいな。そしてウリセスの軍人としての優秀さも読んでいてずーんと響くほど見せつけられました。
ウリセスの悪友三人組が、また独特のドスのきいた存在感。皆いい味出してて好きでした。ウリセスのお兄さんも。
ウリセスのため東奔西走して助けてくれたガストーネさんの言葉にしない想いが垣間見えるやりとりにはっとしつつ。ここでもそっと言葉にしないままがよいのでしょう。
エルメーテとお兄さんの顔合わせ、エルメーテ無事に帰れてよかった……(笑)。

レーアの方では、心強い家族や親しい人々が常にそばにいて見守り助けてくれていて、にぎやかな感じ。
夫のウリセスの不在は埋められなくても、寂しさをあまり感じないにぎやかな環境がよかったです。
何よりジャンナ、成長したなあ!料理の手際の見事さに舌を巻きました。
色鮮やかではっきりした味付けが想像できるメニューの数々、ちゃんとジャンナ自身を表す料理になっていることが、読んでいるだけで分かります。揚げ物の戦いにももうひるまず勝利してるし。フリッターおいしそう。
粗忽者だけど明るく元気いっぱいのフィオレ嬢の存在も良いな。
レーアのお産の場面。こちらも命懸けだったのだと、戦いのあとのレーアの姿に思いました。

ウリセスの出発直前にウリセスのあとをそそそ、とついて回るレーアも可愛らしかったし、ついにウリセスが役目を終えて帰ってきた後の、夫婦のやりとりの場面も、心がじんわりときました。ウリセスが一巻目のとんちんかんな感じとはもうすっかり変わっていて文句のつけようがない奥さん大事な旦那さんで、彼の姿に嬉しさが。
レーアの手紙をようやく読むことができたウリセスの心情の場面も、良かったな。

本編最終話の皆勢揃いのイラスト通り、にぎやかであたたかな人の輪にかこまれたウリセスとレーア夫妻、ああよかったねえ、としみじみ幸福感にひたれるラストでした。
ピエラさんとトビア兄さんの夫婦がやはりお気に入りな私。
フィオレさんも頑張りが認められたようで何よりです。

これであとはエルメーテがジャンナにプロポーズして、ふたりくっついてめでたしめでたし……。
じゃ、なかった!
や、やられた!!ジャンナは思っていた以上に強かでたたかう娘でした。さすがアロ家の娘だったのでした。
呆然自失状態のエルメーテの姿が見られるとは……。いやはや。
確かにここからさくっと立ち直ってのエルメーテとジャンナの駆け引きは、あんなにあっさりお見合い結婚で結ばれたウリセスには、理解できないだろうな~。
愛のかたちは色々ですね。(知ったように言う)

番外編のエルメーテの日記、かなりのボリュームがあって嬉しい。
エルメーテ、頑張った!そしてこれからも頑張って!と心の中でエールをおくりつつ、頁を閉じたのでした。

まるはさんのネットプリントサービスで読ませていただいた後日談も、微笑ましく幸福感が伝わってきて、ほっこり。
ジャンナの叔母さんスキルが高くてさすがです。

Web版の方の、書籍版と少し流れが異なるというストーリー、実はまだ読んでいないので、書籍版の余韻にひたっているうちに、こちらの方も読み切っちゃおうかしら。

カテゴリ: ファンタジー(西洋風)

タグ: 霧島まるは 

『道果ての向こうの光 奇跡を紡ぐ物語』秋月 アスカ 




馬車にひかれて死んだはずの町娘ユーナは、とある事情から聖女シェリアスティーナの身体に入り、一年の期限付きで王宮暮らしをすることに。
残虐なふるまいをしていたシェリアスティーナに向けられる周囲の態度は冷たかったけれど、ユーナのひたむきな頑張りは徐々に受け入れられ、あたたかな時間も過ごせるように。そして聖女の第一騎士アシュートに淡い恋心を抱くもひっそり封印するユーナ。
そして時が来て、ユーナはシェリアスティーナの身体から消えてしまう。
悲嘆にくれるアシュートだが、戻ってきたシェリアスティーナは、今度は自分がユーナを救うのだとアシュートに告げる——。
身代わり聖女と堅物騎士の王宮ファンタジーシリーズ、完結。


「やっと、君に会えた。」
帯のアシュートの台詞が、このシリーズの完結巻を何年も待ち続けた私自身の心のうちにも重なって、胸がいっぱいになりました。
ユーナもアシュートも、おかえりなさい!!!と声をかけてあげたい気持ち。


そんな訳で、『道果ての向こうの光』シリーズ、待望のシリーズ四巻目の完結巻。
もう半ば読むのをあきらめていたので、本当の本当に嬉しいです。
なかなか世知辛い世の中ですが、待ち続けていれば、こうして報われることだって、あるんだなあ。
まさにこの巻自体が「奇跡の物語」と思えてきます。

この巻を読むにあたって、ちょうどいい機会だから……と、実は未読だったWeb版の『道果ての向こうの光』も、先日ラストまで読んだところでした。
(→Libera 様)
しみじみと感動しました。
残酷で理不尽な運命を押し付けられたユーナが、それでもひたむきに前を向いて頑張り続けて、育ててきたあたたかなものが、周りの人たちの心にはいつしかしっかり息づいていて、今度は彼女を救うために、想いがひとつひとつ力になってゆく。という奇跡。
やはり私はこの物語が大好きだと改めて思いました。
Web版と書籍版、少しずつ違う部分もあったので、書籍版のラストはどうなるのか……どきどきでした。
今までWeb版未読だったのも、書籍版とは展開が違う、というのが、受け入れられるかどうか、不安だったというのが大きかったので。

実際読んでみると、物語の流れは大きくはそれでもほぼ同じ。読んでとても幸せな気分になったラストも同じで、ものすごくほっとしました。
この四巻目は、言ってみれば、ユーナ視点で最後まで進んだWeb版ではさらりと流れて語られなかった物語の裏側。
アシュート、そしてシェリアスティーナ側からの、ユーナをもう一度取り戻すまでの、ひたむきな頑張りの軌跡の物語、だったでしょうか。

がちがちに立場に縛られた堅物人間のアシュートが、愛する娘を取り戻すために、いったんすべてを投げ打って、見知らぬ田舎の町で勝手が違いとまどいつつもシンプルに頑張る姿は、胸を打つものがありました。
ユーナのご両親に親戚たち、彼女の血縁なだけあって人が良くあたたかな情を持つ、愛するものを守るためにはためらいなく身をはれる人たちで、読んでいて和みました。
こんなご両親に愛情を注がれ大切に育てられて、あのユーナだったんだなあ。と納得するものがありました。

そして戻ってきたシェリアスティーナの方も。
Web版では触れられた程度だったバルコニーでの長い告白、宣言。
ユーナにとってみれば気にせずにはいられないし辛くやるせない気持ちにもなるでしょうけれど、でも確かに、この道がいちばん彼女には良いんだろうなあ。と納得のゆくものでした。
シェリアスティーナとユーナの過去の友情、あの馬車の事故との因果関係、シェリアスティーナとユーナをつないだ存在のことも、すっきりと語られて、そういうことだったのね。と。
シェリアスティーナの本来の能力をユーナが彼女に思い出させて、今度はシェリアスティーナの方がその力を用いてユーナを救う、という流れが、とても好きだなあと思いました。
塔に走ったユーナが受け取ったティスカラの花の場面が、美しかった。
ユーナとシェリアスティーナの友情は、単純ではない運命も引き寄せてしまったのだけれど、でも、とても尊い。

元の町娘に戻ったユーナへの、アシュートのシンプルでひたむきな求婚の場面も、生真面目なふたりらしくてとても良かったです。
アシュート、いつの間にか吹っ切れてわりと熱い男になったな……(笑)。ジークも安心しているでしょう。
ただ彼の想いを受け入れるだけにとどまらず、実家の薬屋の仕事と関連する仕事を王宮でも頑張りだしたユーナが、とても彼女らしくて、それもいいなと思いました。
ナシャとミズレーさんとのなごやかなおしゃべりの時間も、イーニアスやネイサン、ジーク、ライナス、ロノ、それぞれとの仲も、それぞれのかたちで途切れていなくて、嬉しいな。
イーニアスがやっぱり報われなくて不憫なんですけどねえ……。彼にもいいひとがみつかるといいな。

Web版の方の感想も、この際なので。
ナシャの上司のカーリンさんが、なかなか好きなキャラでした。(書籍版にも登場してましたっけ……記憶違いならごめんなさい!)
カーリン自身の過去のしがらみから、ユーナと一度すれ違ってお互い辛い思いをして、そこから関係を修復した流れが、私、とても好きでした。
年若いナシャをたしなめつつカーリン、ナシャ、シェリアの三人で仲良くお話している図が好きでした。
あと、ユーナが演奏するクラヴィディア。ユーナとアシュートのふたりにとってはとても大事な一場面になっていて、この使われ方も、心憎いものがありました。

今回この本をこうして世に送り出してくださった作者さま以下すべての皆さまに、感謝です。
できればレガロシリーズ自体も復活してくださるととても嬉しいのですが……。

秋月アスカさん、小説家になろうさんの方の連載作品『異世界出戻り奮闘記』の方も、たいへん楽しみに読ませていただいてます。
そろそろ物語は終盤に近付いている感じで、ハルカとノエルの生真面目頑固者カップルの行方から、目が離せません!




『道果ての向こうの光』もなろうさん転載されて、読みやすくなりました。
(そしてこの感想を書いていたタイミングで番外編が!
ナシャと一緒の一日侍女体験、楽しそうでした。生真面目同士の初々しいカップル、いいなあ~。ごちそうさまでした。
ジークもミズレーさんも元気そうで楽しそうで何よりです。)

カテゴリ: ファンタジー(西洋風)

タグ: 秋月アスカ 

『青薔薇伯爵と男装の執事~出逢いは最悪、しかして結末は~』和泉 統子 




名門・ローズベリー家に性別を偽り執事として仕えるアン。
新当主としてアンが見出したアッシュは優秀で、貧乏生活を彼に強いるのは心苦しいけれども鼻が高いアン。
一方、アッシュは女王と謁見してそうそう、「青い薔薇」について何かあれば報告するようにとの命令を受け——。

初読み作家さんの新作小説。たぶん少女小説のくくり。
初読み作家さんでいきなりこのお値段の本を買うのはちょっと勇気がいるなあ……とずっとためらっていたのですが、雲屋ゆきおさんの美しい表紙と私好みっぽいタイトル&あらすじとネット上の皆さまの評判がやはりどうしても気になり気持ちを押えられず、ついに思い切って購入。

まずは雲屋さんのカラー表紙の主役ふたりが本当に麗しくてながめているだけでときめきます。眼福です。
「春のお日様みたいな」やわらかく優しい雰囲気で青い薔薇を手にするアンと、「月の化身」冷たい美貌でばーんとえらっそうにかまえているアッシュが並び立っている様は、それはもうお互いの美貌がお互いを引き立て合っていて。
お似合いですよ。お似合い!
表紙カバー後ろにも伯爵家の使用人たちがそろっていてこれも嬉しい。
そして本を開くとさらに!麗しきカラー口絵が、2頁も!
紺色の見返しも白薔薇の花のふちどりも帯のコピーもすべて品があって美しくて、本文を読む前からすでに「この本買ってよかったなあ……」とうっとり浸ってました。

お話も、ラブコメちっくで面白かったです!
善良で天然な美少女(男装してるけど)アンと、口は悪いけれどなんだかんだ人の良い美貌の新当主アッシュ。
ふたりの会話のあまりのかみ合わなさと、アッシュの口調の独特の語尾のばしがあり、正直はじめのうちは若干読みづらかったのですが、ふたりのお互いへの執着心や自覚なしの想いなどがだんだんみえてきて、どうしましょう、可愛すぎるこのふたり!
特にアッシュ視点からのアンへの子どもっぽい執着が、何よりもアン自身が青伯爵家の財産であると言い切ってしまえる本心が、ふだんの冷静で隙を見せない当主然とした彼からそこだけがらっとイメージ外れていて、ときめいて仕方なかったです。
「ご主人様」を善意のフィルターで敬愛しまくっているアンも、ふとした折にアッシュの態度が気になり人知れず落ち込んだり複雑な思いをしたり、自覚手前の恋心と言う感じがして可愛いったらないです。

天然さとお人好しさが突き抜けているアンは、読んでいていらっとするすれすれな感じもしましたが、たぶんアッシュがあえて刺々しく厭味ったらしい態度を取り続けているので、彼女の善良さがおおげさにみえてしまうだけ、なのでしょう。きっと。
貴族のご令嬢たちに大人気なのも隠れた(?)ハイスペックさも鈍感さもご主人様命なところも、読み終えたころにはすべてひっくるめて大好きなヒロインになっていました。
名前が三つ、あれ四つ?あって器用に役割で使い分けているのも面白いですね。周りの人は周りの人で受け入れてるし。
大きくてきらきらした瞳で微笑むアンが可愛すぎてめろめろです。

アッシュも、作者さん自身が書いていらして耐えられなくなるヒーロー……感じ悪かったですが、でも確かにこんな貧乏暮らし借金まみれの伯爵家に突然連れてこられたって、そりゃ嬉しくないですよね。
それでも彼には彼独自の伯爵家の当主としておさまるべく事情があるようで。
存在感ある美貌と頭の切れの良さ。
なんだかんだ言いつつ伯爵家の使用人それぞれの良さをちゃんと認めていてそれぞれへの接し方に心を砕いている、年若くして素敵なご主人様です。
サイモン弁護士をこてんぱんに打ちのめして借金問題を解消してさらに彼をこきつかう手腕がお見事すぎでした。すかっとしました。

伯爵家の使用人たちや親戚関係のひとたちや、皆個性的で有能でキャラが立ってて面白かったです。
(それにしても親類縁者の家系図がややこしすぎて半分も理解できてない……でも飛ばし読みしても面白いからいいや)
サイモンと結婚したオリーブ、思っていたよりしたたかなお嬢様だったようで好感を持ちました!
白公爵夫人格好いい。
メイドの双子姉妹もかわいいっ!シドニーとベンも出番はさほどなかったけれど頼れるひとたちみたいですね。
メイドちゃん視点の番外編も、アッシュとアンの主従コンビの人の良さが前面に出ていて、心がほっこり&きゅんきゅんしました。

女王陛下が探し求めているという「青い薔薇」、前青伯爵と白公爵夫人と女王陛下の過去の因縁?、アッシュの謎めいた「一族」の事情、一向に見えてこないアンの本当の生い立ち、そもそもどうしてアンは男装執事の道を歩むことになったのか、アンとアッシュは過去に何らかの関わりがあったのか……、色々謎だらけで、お話の最後の「縁談」もどうなっちゃうのー!!と言う感じで、続きが激しく気になります。
続き、読めますよね?

多少クセはあるもののとにかくキャラの生きが良くてアッシュとアンの主従カップルが可愛らしい、楽しいお話でした。
イラストも本当にきれいだし!読めて良かったです。


ここ一週間くらいの間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ファンタジー(西洋風)

タグ: 和泉統子