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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『星をつなぐ手 桜風堂ものがたり』村山 早紀 




桜野町の小さな書店「桜風堂」を任され、かつて務めた銀河堂書店のメンバーを含む人々と『四月の魚』をヒットに導いた青年・月原一整。
変わらず誠実に書店の仕事に打ち込むも、人気作品の配本がない等、小さい書店ならではの苦労にも直面する。
そんなある日、銀河堂書店のオーナーに店長とともに呼び出された一整は、思いがけない提案を受け——。


『桜風堂ものがたり』の続編にあたる一冊。
一整さんはじめ銀河堂書店の人々、桜野町の人々、その周りの人々。
新しい物語の中で、彼らにまた再会できるのが、とてもとても嬉しくて。楽しみにしていました。

酷暑としか言いようがない一週間の、電車通勤のお供に、夜のひと時のお供に、少しずつ少しずつ、大切に読んでいました。
暑さと眠気で頭がぼーっと溶けそうな間にも読んでいたので、なんか伏線とか抜け落ちていたかもとかちょっと不安ですが。
それでも美しくて優しくて心地の良い文章は、すうっと私の心にしみわたっていくようで。
少しずつ少しずつ、癒しの成分を摂取していっている感じでした。
そして一整達の仕事に打ち込む真摯な姿勢は、読んでいるとごく自然に、私もお仕事頑張らないとな。と辛くならずに思うことができる。
おかげで一週間、暑さに心荒むことなく、おだやかな心持ちで過ごせたと思います。
大感謝です。

物語の中だからこそ、優しくて心根の美しい真面目にこつこつ頑張る人達は、報われて愛されて幸せになってほしいものです。
まさに一整や苑絵さんや渚砂さん達のような。
一巻目に引き続き、たくさんの人々のたゆみのない努力を下敷きに生み出された、優しい奇跡の物語でした。
美しくて上品でていねいな文体で紡がれる、大人のためのおとぎばなし。
作品世界に安心してひたりきることができました。

書店や本というものにたいして、様々な立場から関わる人々が新しく何人か登場してきて、みんな魅力的な人達で、それぞれの人生の物語を新たに読むことができたのも、良かったです。
そして書店や出版業界に関する現在の様子を、垣間見ることができるのも、良かった。
やはり厳しいものなのだなあと、私自身の仕事にも重なる業界なのもあり、骨身にしみて実感せずにはいられない。
それでも人の誠実でたゆみない手に支えられて、ひとつ生み出された、明るくて幸福なひとつの書店の物語が、ここにありました。
明るく優しい未来を信じられるのって、幸せですよね。

一整たち若者世代をある意味上回るくらい、人生を重ねてきた大人達の物語がどれも格好良かったな~!と思いました。

『序章 白百合の花』
なるるさんの定宿の旅館のエピソード、とても好きで印象に残りました。
なるるさんというひとりの女性の生き方が好き。
がっつり心つかまれたのは、ちょうど私自身が旅行の計画を立てていてホテルをネットで色々探していたタイミングで、心情的に重なったからかもしれない(笑)。
私も人生の心の糧になるような読書をしてゆきたいなあ。

『夏の終わりの朝に』~『遠いお伽話』
『紺碧の疾風』というシリーズがすごくおもしろそうなのですが!!読んでみたいです!!食べものがおいしそうな作品は絶対楽しい。
久しぶりに柳田店長に会えて良かった。一整さんが星野百貨店に、銀河堂書店に、あたたかく出迎えてもらえていて、私の心も温かくなりました。
オーナーに会いに行くのにちょっとびびっている店長がなんかおかしかったり。ふふふ。
実際のオーナーは渋い魅力がある貫禄もあるすごいひとで、でも優しいひとで。オーナーの過去の物語もずしりと印象深いものでした。ここで星野家の人々が出てくるのか!
オーナーの提案は正直私には知識がなく良いものかどうか判断がつかなかったのですが、でも最後まで読むと色々結果につながっていて、良かったんだろうな。銀河堂書店良い書店ですものね~。
そして高岡源先生も、桜風堂に颯爽と助けの手をさしのべに現れる姿は、まさに冒険活劇の世界から抜け出してきたヒーローみたいでした!格好いい!

『ケンタウロスとお茶を』
優しくて繊細で感受性の強い漫画家のたまご・くるみさんのエピソード。
読んでいて心が痛くなりました。こういうことって起こり得るよなあ。つらい。
『ケンタウロスとお茶を』私はそのままのかたちの作品がとても素敵だと思うし、読んでみたいな。

『人魚姫』
苑絵さんと渚砂さんの親友ふたりの物語。
やはり「そのえさん」という名前の響きからとても素敵で読んでいてふるえる。(響きが好きといえば、『ポワソン・ダブリル』の響きも読むたびに美しくて浸ってしまう)
苑絵さん自身心根の美しい可愛らしいお姫様みたいなひとで、なんというか、とても好きです。彼女の絵の描写も相変わらずとても魅力的。
そして渚砂さんのお父さまへの複雑な葛藤と彼女自身の秘め恋の物語も、ひどく印象的で、切なかった。
母と自身を守るため、大好きな親友を守るため、強く格好良く生きることしかできなかった彼女の姿が、なんだか痛々しい。
大きな救いになっているのが、やはり、蓬野先生の存在です。
渚砂さんの辛い時に優しく大人の態度で寄り添ってくれる彼の頼もしさよ!!本当に王子様みたい。
苑絵さんも渚砂さんもそれぞれ子ども時代に辛い経験をしたひとで、でもふたりの辛さは比べられるものではないしそういうのがあってもふたりは無二の親友で揺るがないし、そういうのが、今の年齢の私的にはよくわかるなと思ったし、良いなと思いました。

『Let it be』『神様の手』
桜風堂に、新たな頼もしい仲間がふたり。
毬乃さんとくるみちゃんの姉妹仲にじんわりきたり。
くるみちゃんが、苑絵さんの絵をはげみに、新たな一歩を踏み出せた一場面が、とても好きです。
すずめ書店さんの魅力もすごく伝わってきました。
藤森先生の存在も素敵。

『星をつなぐ手』
最後はとってもにぎやかな、まさかの(笑)三人合同サイン会。
規模がどんどん大きくなっていって、読んでいて正直ちょっとドキドキしていたのですが、頼もしい助っ人が色々なところから大勢来てくれて、みんな一整がこれまで誠実に仕事をしてきた中でできたつながりで、しみじみ浸ってしますよねえ。
桜野町って改めて素敵なところだな。私も観光に行ってみたい。
星祭りの鞠姫様の伝説も、ロマンティックで厳しさもはらんでいて、心に残りました。『天空のミラクル』や『はるかな空の東』に出てくるお姫様達を心の中で重ね合わせてしまいます。
そして一整と苑絵さんのふたりも良い雰囲気で、ふふふっと微笑みたくなりました。
実際にどうこうなるには、奥手同士なふたり、まだ時間がかかりそうですけれど。
そしてやっぱりここで気持ちを打ち明けないのが渚砂さんだよな、となんか納得してしまった。彼女の隣に蓬野先生がいて、重ね重ね、良かった。彼女こそ、幸せになってほしいのです。

ここで『桜風堂ものがたり』完結とは、正直ちょっと寂しい。
特に渚砂さんと蓬野先生がくっつくまでは見届けたかったな~!!とか思ってしまいますが(笑)、いつかどこか別の物語の中ででも、その後の彼らに出会えると、嬉しいな。

そして胡蝶堂さんや星のカケスさんの書評ブログに憧れの気持ちを抱かずにいられないです。
私のブログは書評なんてとても言えない適当な行き当たりばったりのブログで更新もとぎれとぎれですが、それでも本を愛し祝福をできればという気持ちはあってその場を消すことだけはしたくなくて、これからもせめて続けられるだけは続けてゆきたいと、読んでいて改めて思いを新たにしました。
Twitterや読書メーターで短い感想を書くのとても便利で楽なのですが、私はやっぱり、この形のブログがとても好きで、人さまのブログを読むのもとても好きで、ひとつでも火を消したくないし、続けてゆきたいので。
なんてちょっと脱線してしまいましたが。

蒸し暑い夜にげみさんの表紙イラストの夜空と雪の結晶のひんやりした美しさが染み入りますねえ~。ふう。
そして帯にあるように、優しい人が幸せであるように、祈りたい。
ほんとうに。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 村山早紀さん

タグ: 村山早紀 

『コンビニたそがれ堂 小鳥の手紙』村山 早紀 




『コンビニたそがれ堂』シリーズ第七弾。
大事な探し物がある人がたどりつけるという風早の街の伝説のコンビニたそがれ堂。
幼い日に不思議な手紙のやりとりをした女性、ねここが出会った困り顔の優しい少年、そして星野百貨店ゆかりの少し前の時代の少年たち。
春の街を舞台とした二話と、『百貨の魔法』番外編の計三話収録。


村山早紀さんの『コンビニたそがれ堂』シリーズの、待っていましたの新刊でした。
続きを一日でも早く読みたいと待ちわびるというよりは、ふと新作の便りを目にして、あの世界の物語がまた読めるのね、嬉しい、とぽっと幸せな気分が胸にゆっくりひろがるような。

早い春の今の季節にぴったりな、花の香りがするやわらかくて優しい物語、三編でした。
シリーズの中では気持ちボリュームは薄めでしょうか、さらさらと優しくきれいな文章でつづられていて、どのタイミングでもとても読みやすく上質の幸せ感が得られます。
またシリーズの中では気持ちダークさが控えめで明るく幸せなイメージがおもてに出てきて、いいですね、春ですねえ。
個人的にはシリーズ一巻目にイメージが近かったかなと思いました。

『雪柳の咲く頃に』
淳君のお人好しさ優しさが際立っていて、読んでいてきゅっと胸が痛いくらい。
あのタイタニックのお話のたとえをした少女の気持ちも分かります。ただその無邪気なたとえ話に自分自身縛られてしまった淳君が、ちょっとかわいそうでしたけれど。失恋の下りもせつない……。
こんな優しいいいこになぜこんなにかわいそうなことばかり降りかかるのか、とやるせない気分になってきたところで、ねここ登場。
淳君に対しては頼れるお姉さん的なポジションのねここ、格好良かったです!
そして鮭のおにぎりおいしそうです。コンビニたそがれ堂の配達販売ってまた胸をくすぐる設定ですね。
そのあとの壺の魔人とねここのやりとり、ねここ、強い!!さすがです。お腹壊さなかったかな。
雪柳の花も、花の名前も、美しいですよねえ。よいものです。
たばこ屋のおじいさんの愛情にもほろり。

『小鳥の手紙』
結婚を控えて幸せな若い女性が主人公の優しい春の物語。ささやかな幸せで満たされているこういうお話もいいものです。
幼い日の千花さんの不思議な手紙のやりとり。ラストまで読んでほわりと心温まりました。
千花さんと婚約者さんの馴れ初めエピソードもなんだか好き。手紙のやりとり、空に羽ばたく小鳥のつばさ、千に散る花々、なんというかひとつひとつのイメージの重なり合いが素敵です。新天地の蛙の島と不思議な手紙のやりとり、おとぎ話なイメージがまとまっているのもよい。千花さんは蛙好きの王子様に見初められたお姫様みたい、とか少女小説の読みすぎかな(笑)。
ところで千花さんがアップルパイとコロッケパンを買いに行ったパン屋さんは、例の三日月パン屋さんなのかしら。
違うとしても同じ町の人々に愛される同業者として、お店同士馴染みではあるんだろうな、きっと。と勝手に想像してみる。

『百貨の魔法の子どもたち』
星野百貨店のデパ地下のパティシエさんが主役……素敵な設定!(きらり)
冒頭からシュトーレンの美味しそうであたたかな描写にやられてしまいました。
そして瑛太少年と想少年のかつての物語へ。
あの思い出エピソードはそうか、ここにつながっていたのか!!
ふたりの少年の、塾の先生へのひたむきな思い、優しさと勇気と友情がぎゅっとつまった、一夜の冒険譚。
奇跡の猫とコンビニたそがれ堂のコラボ。なんというか、豪華ですね!!ふふふ。
大人たちも伝説や奇跡を心のどこかですまわせている風早の街が、やっぱり素敵だなあ。
シュークリームやレモンパイやマドレーヌや、今となってはどこか懐かしいお菓子がどれも美味しそうで心惹かれました。
シュークリームというと未だに『やまんば娘、街へいく』に出てきた、膨らみ損ねたシュークリームにクリームをふわっと、の描写を、思い出さずにはいられないです。あれを読んでいたのがまさに中学生の私でした。

あとがきを読んでいて、村山先生、それほどに大変な時期を過ごされていたとは……。
そんな中で、こんなに優しくて温かな物語をこの世に作り上げてくださって、ひたすらに感謝を申し上げることしかできないです。
これからもずっと応援させていただきます。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 村山早紀さん

タグ: 村山早紀 

『百貨の魔法』村山 早紀 




風早の街の老舗百貨店・星野百貨店。
時代の波に抗しきれず閉店の噂もささやかれる中で、従業員たちは今日も店頭に立ち続ける。
願いをかなえてくれる「白い猫」と人々の夢がきらめく美しい物語。

村山早紀さんの新作『百貨の魔法』
『桜風堂ものがたり』の姉妹作、今回は銀河堂書店が入っている星野百貨店がメインのものがたりということで、読めるのを楽しみにしてきました。
読んでから感想を書くまでにちょっと間があいてしまい、細かいところを色々忘れかけてしまているのですが、それでもひとかけらでも感想を残しておきたくて。

実際に本を手に取り装丁の美しさにため息が漏れました。
瑠璃色というのか青色の表紙カバーも素敵ですし、カバーを外して百貨店の包装紙風のイラストがちりばめられている本体もまた素敵。
しかし実際にこの表紙の真価をみたのは、ラストまで物語を読み終えてから。
作中に出てきた一つ一つのモチーフが合わさりこの一枚の絵でひとつの世界が完成されていて、その素晴らしさに感服するほかありません。
可愛らしくて品があってお洒落で、まさに私のイメージするあこがれの百貨店。
ネイルか香水のびんを振りかけてキラキラした夜空をいっぱいに満たしたみたいな。

実際に読んでみても、今回も期待を全く裏切られない、とてもとても素敵な物語でした。
夜空の星のきらめきが、星に照らされた海の飛沫が、読んでいると心の中に静かにさらさらと広がってゆくような。
美しくて優しい読み心地でした。
あまりに心地よくて読み終えるのがもったいなくなるくらい。あえて何日かかけて、少しずつゆっくり読んでいました。
星野百貨店というだけあって、イメージは夜が似合う。
別に暗いという訳ではなくさんさんとした明るいお日様に照らされた百貨店もしっくり馴染むのですが、やはりちょっと静かで落ち着いた夜のイメージなんですよねえ。夢と現の境目といいますか。

百貨店で働く人達が順番に語り手を担う、連作短編集。
『桜風堂ものがたり』は主人公が男性の一整さんでしたが、比べてこちらの『百貨の魔法』は、女性の語り手が多く、よりフェミニンといいますか。ふんわり可愛らしくお洒落なイメージ。

何より心地よかったのは、星野百貨店の店員さんたちの職場や自分の仕事、お客様への姿勢。
内に百貨店の将来など不安を持ってはいても、仕事にはつねに真摯で誠実で、誇りを持って自らの役割をまっとうしていて、星野百貨店を愛していて、なによりお客様の満足、笑顔を大切にしていて。
読んでいるこちらも深い充足感を得られました。
皆の姿を読んでいると、ああ、私も自分のお仕事頑張らないとな、と、ごく自然と励まされました。

「魔法の白い猫」が作中何度もモチーフとして登場してきて、噂の新人コンシェルジュさんの謎めいた正体とは?というのも相まって、ファンタジーちっくな読み心地もまた、村山早紀先生のお話ならでは。
私自身もちょっと信じちゃいました(笑)。
でもこれも、まさに大人のためのおとぎ話、夢の物語。
皆の現実的で誠実な途方もない努力と想いの積み重ねが作り上げた、それがあってこそ導かれた奇跡なのだもの。夢を見てもいいじゃないですか。
ものがたりの世界の中なのだから。
と、『桜風堂ものがたり』を読んでいた時も確か似た感じに思っていたな。

ほろ苦い夢、叶えられなかった夢、色々な夢の記憶がありましたが、格好悪くなんか全然なく、これまでの人生を誠実に生きてきた人たちの夢はみんな美しく星みたいにまたたいている。
白い猫との絡め方が絶妙なんですよね。
あと思ったのは、百貨店の物語であると同時に、従業員たちそれぞれの家族の物語でもあったな、と。

『空を泳ぐ鯨』
いさなさん、というお名前の響きがまず素敵です。
エレベーターガールという職務にぴったり、星野百貨店へようこそ、館内は~~みたいな、まずはご案内の一話、そんなイメージでした。
結子さんといさなさんの邂逅の場面がお気に入り。村山先生が描かれる結子さんみたいな女性キャラクターが私はとても好きです。
サクラとテディベアのエピソードもほろ苦さも含みつつ柔らかで優しいお話で素敵。

『シンデレラの階段』
テナントの靴屋の咲子さんの物語。百貨店とテナントだとまた立場がちょっと違っていて、でも咲子さんたちも星野百貨店の一員であり百貨店を愛していて、やっぱり、いいな。
シンデレラ・ウィングの可愛らしくキラキラしたイメージがとても好き。杏さんの最後のメッセージに涙。
今靴屋さんとして誇りを持って働いている咲子さんも、やっぱり格好いいし輝いています。

『夏の木馬』
宝飾品フロアというと私はほとんど近寄ったことがなく遠くからそっと憧れのまなざしを注ぐのみなのですが、健吾さんのお母様への想いと相まって、なんとも美しく切なく、それでいてあたたかな愛情に満ちた、素敵なエピソードでした。
人として親として弱くてダメなところもあったけれど、美しくて息子を彼女なりに愛していたお母様、とても印象深く心に刺さりました。
屋上で食べたソフトクリームで寒くなる、という下りがリアルで私もぞわっときました。

『精霊の鏡』
一花さん、というお名前の響きがまた素敵でそれだけで好きになったのに、実際に読んでみても可愛らしく奥ゆかしい女性で仕事への姿勢も凛としていて、やっぱり私好みだったのでした。
そんな彼女の絵への複雑な思いと、偶然が導いた出会い、なにより淡い恋のはじまり。このお話私とても好きです~!!
雨にふられた花火大会、浴衣、なんだかこのちょっと残念だけど一緒に楽しんじゃえ、という仲間意識は、百貨店の従業員側だからこそかな、と思いました。Torinekoさんの好青年っぷりもいい。
併せて美容部のお化粧の魔法も込みで。いちばんロマンティックではなやかなエピソードだったかな。
みほさん側の語りも印象深かった。

『百貨の魔法』
最後に明かされていく結子さんサイドの物語。
途中でなんとなくうっすら感じるものもありましたが、そういうことだったのね。という。
お父さんもお母さんもひとりの人間で、上手くいかないことはあって、どうしようもなかったんだろうな。
おじいさんもまり子さんも、もちろん結子さんも、読みこむごとに皆、愛おしかったです。
うむむ、あんまりうまくまとめられないので、このくらいで。

私の場合ですが、「星野百貨店」は、地元のターミナル駅にある百貨店と、名駅にある「星野書店」の二つのお店が重なり合ったイメージなのです。
どちらのお店も十年以上ずっとお付き合いさせてもらっているお店で、特に地元の百貨店のそんなに大きくはなく新しくもないけどいつもぴかぴか磨かれて店員さん達のサービスも素敵なあのお店と星野百貨店のイメージはけっこう重なり合っていて、読んでから百貨店にあるお気に入りのカフェでひとりまったりお茶しつつ、浸っていました。

また一冊、心から大好きな物語にめぐりあえました。


十一月に入ってからそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 村山早紀さん

タグ: 村山早紀 

『はるかな空の東』村山 早紀 




幼い日の記憶がない少女ナルが最近夢に見るのは、月が三つ浮かぶ世界で城に幽閉された長い髪の少女。
私とよく似た顔で微笑むあなたはだれ?予言に導かれて、魔術師や吟遊詩人が生きる異世界へやってきたナルを待っていたのは、伝え語りに隠された真実と、未来に託されたはるかな願い。
生まれ落ちた時から重い宿命をになうことになった少女の、歌と魔法に彩られた冒険と成長の物語がはじまる——。


※昔からとても思い入れがある作品ゆえ、以下の私の感想は自分自身の昔語りも込みです。
あと過去に感想記事(こちら)とか美味しい物語の記事(こちら)とかも書いているので、一応リンクを。


中学生時代に図書館で借りて読んだのが出会いで、それから何度も図書館で借りては読み、今でも私にとってとてもとても大切な物語。
あれから大人になって村山早紀先生のお話をたくさん読むことができる幸運にめぐまれて、それでもやっぱり今でも村山先生の作品の中で一番好きなのは、ゆるぎなく、この『はるかな空の東』です。
「日本の作家さんが描かれる長編ファンタジー小説ってこんなに面白いんだ!」と、当時の私にカルチャーショックと喜びを与えてくれた物語。
ほんの少し前に、ハードカバー版が今でもネットで注文できるのにようやく気づいて、今私の手元にはこちらもちゃんと存在しています。

村山先生の過去の作品がいくつも新装版として出てゆくたびに、「ああ、はるかな空の東もいつか文庫化されたら良いのに。そしてもっともっとたくさんのひとに、この作品の面白さを伝えて共に分かちあいたいのに」と、ずうっと思ってきました。
とうとう実現しました。うれしい。未だに夢を見ているようです。
そして後日談も収録されると聞いて。そわそわ気になって仕方がなかった。

ハードカバー版は村山先生ご本人のそれはそれは美しい挿絵がふんだんにページに織り込まれていて挿絵も物語を構成する重要アイテムなのですが、文庫本のこの表紙イラストもまた、ハードカバー版の雰囲気も漂わせて絵本の一場面のような完成された美しさがあって、とても素敵です。
個人的に特に気にいっているのはイラストの縁取りの部分。

紋章の歌姫、さだめを持って生まれた双子姫、お城に仕える魔術師たち、美しく平和な花の都、貴種流離譚、神話や伝説が息づく世界、悲しい過去を持ち長い時を生きてきた魔術師、もうとにかく今の私の好みポイントの原型はすべてこのお話に備わってるんじゃないかしら、という(笑)。
魔術よりも音楽の方が力がある世界観がなかでも素敵です。中学生のころ吹奏楽部員だった私は、だからこそよけいにこの物語に共感を覚えたのだと思う。
美しくて強さと弱さを併せ持つ水晶姫サーヤ・クリスタライアは私の心の中に強烈な憧れのイメージを残し、今でも、私の中で一番高貴な宝石といえば、紫水晶ですから。
(ただしロマンス色はほぼ皆無。当時の私にとってはロマンスよりも女の子の友情ものの方が切実に求めるもので、この物語はそこがまたとても良かった)

何度も繰り返し読んでいる故に、本編はまるで、ナルやハヤミさんたちと同年齢の少女であった過去の自分自身の心を旅していくような感覚で、読み進めていきました。
プロローグのハヤミさんの回想の「おひさまの昇るほうから」の場面で、すでに涙腺が決壊しました。死ぬのは辛くて苦しいし、大切な人にはいつも笑顔で幸せでいてほしい、そんなシンプルな心情が胸にぐいぐいせまってくる。
あと最初の伝説の抜粋がいくつか書かれているところの「ある若者の日記」、敏い王に導いてもらえるそれだけのことで、本当に人は幸福になれるのか?神によって人は救われるのか?こんなことを考えるのは、私ひとりだろうか?という下りが、昔は読み飛ばしていたのだけれど、今の私にはすごく響きました。

ナルにトオヤ、ハヤミさんにサーヤさん、ユリアにミオさん、沙由里ちゃん、魅力的な女の子(女の人)キャラが、何人も出てきて活躍しているのが、何よりも魅力的!!
ハヤミさんやミオさんが高校生の年代なんてびっくりですよね。未だにハヤミさんたちは年上の頼れるお姉さんキャラというイメージでしか読めない。
でもでもハヤミさんもサーヤさんも、勇敢で正義感あふれる凛々しく戦うお嬢さんで、かなり無謀ですね(笑)。これは周りの人ははらはら気が休まらないだろうなあ。青ざめた大沢さんにたしなめられているハヤミさんの図に苦笑い。でもそうですよね、ハヤミさん、まだまだ大沢さんに「ハヤミちゃん」と呼ばれるのがごく自然な歳の女の子だったんですものね。

ナルと沙由里、ユリア、それぞれの友情がやはりとても好きでした。
「前世で私がつらくて悲しかったときに、あなたが助けてくれたから」の台詞のリレー。
昔の私は完全にナルに同調して読んでいたので沙由里やユリアの屈託ない明るさ人懐こさにひかれたけれど、今読んでいると、相手のことを心より思い自分の危険も顧みず助け素敵な台詞をつむぐナルという女の子も、友達思いの最高に素敵な女の子だと思いました。千年の歌姫とか王女様とかそんなの抜きで、ひとりのふつうの女の子として。
あとハヤミさんとミオさんの友情も好きです。無鉄砲に突っ走る格好いいハヤミさんとおっとりストッパーをかけるふんわり女の人らしいミオさんの相性がいい。

若干惜しむらくは、やっぱり大好きだった村山先生の挿絵の数々が文庫版では収録されていないこと……仕方がないことなのですが。
でも各場面ごとの挿絵はなんだか私だいたいもうイメージがまぶたに焼き付いてしまっていて、黒髪なびかせ微笑みながら弦楽器を奏でるサーヤ、大ピンチのなか颯爽と登場したハヤミさん、ラストの手に取を取り合う双子姉妹のイラストなどは、もう読んでいるだけで脳内で勝手にイメージ補完が(笑)。あの場面のナルの衣装は本当に可愛らしかった!(と、手元のハードカバー版を読み返しつつ確認)

絶望的な場面で、それでもナルたちが絶望的な戦いに打ち勝てたのは、奇跡が起こったのはなぜだったのかなと(あの最初の若者の日記も思い返しつつ)ぼんやり考えて。
それは伝説の力というよりは、たとえば人が人を強く思う心、愛する心、傷ついても失敗しても立ち上がり前回よりよりよくしたいと努力し続けること、そういうのものの積み重ねがどんどん重なって行き、すなわち奇跡を呼び寄せたと、そういうことじゃないのかな。とか上手く言えないのですがそんなことを今回読み返していて思いました。
私にとってもっとも印象的だった「奇跡」は、あのクライマックスの戦いの場面のハヤミさんの「ばかやろう」と、彼女の愛情にこたえたトオヤのふたり。
あと声を失ったナルにサーヤがフルートの存在を指し示し、紋章を譲り渡す場面もすごく良いです。好きすぎる。

と、ここまでが本編の感想で。
書きおろし部分のミオ視点の後日談エピソード『朝』。
……あまりにその内容が衝撃的すぎて、思わず三度読みしました。本編がいったんすべて吹っ飛ぶくらいに!
ええええええー!!!(言語化できない)
こ、これは、本編も初読の方が読まれてどう感じられるのか、私には全く分からないや。私はこの物語への思い入れがあまりに強すぎるので、なんというか客観的に状況を判断できないよ……(笑)。
何か語ろうとすると救いようのないネタバレな感じなので、以下は追記にたたむことにします。
思い入れがありすぎて長々しいです。ご注意を!


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『コンビニたそがれ堂 祝福の庭』村山 早紀 




『コンビニたそがれ堂』シリーズ第6弾。
本当に欲しいものがあるひとだけがたどり着けるという、風早の街の不思議なコンビニ、たそがれ堂。
街角の洋品店で働くつむぎが手にした品と聖夜の思い出『ガラスの靴』、老いた少女漫画家と彼女の屋敷を訪ねてきた少女の交流『神様のいない家』、サンタクロースに手紙を書いたかつての少年たちの物語『祝福の庭』の三編収録。


ゆったりペースで息の長いお付き合いができてうれしい『コンビニたそがれ堂』シリーズ。
今回のたそがれ堂は、収録作品すべてがクリスマスの物語。
今の季節に読むのにぴったりです!!

『祝福の庭』サブタイトルにふさわしく、クリスマスの夜の金色のきらめきがまばゆく美しい表紙です。ながめていてあたたかく幸せな気持ちになれる。
三郎さん格好いいしねここはちょっとつんとすました感じなのが可愛いのですよ。
どちらも人ではないミステリアスでちょっと怖いような雰囲気もありつつ、人の世のクリスマスのあたたかなきらめきの中にしっくり調和したたずんでいるのが、三郎さんとねここらしくていいな。
ねここのお着物とエプロンドレスが可愛らしくてときめきます。

大人になり現実を知っても、「クリスマス」っていいなあとしみじみ素直に思える、三編ともそんなお話でした。
物語の中の、現実と夢の塩梅が、なんというか絶妙で。
大人のための美しいファンタジー仕立てになっていました。

私の家でも、サンタさんの正体は最初からばれていたんですが、大好きなお父さんがサンタクロースだから!と私は幼心に全然不満はなかったし、むしろ嬉しかったな。
好きなプレゼントの希望は聞いてもらえるし、家族で一緒におもちゃ屋さんやデパートに出かけるというイベントがまた嬉しかったし。
あとがきまで読みそんなことをつらつら思い返しつつ。

『ガラスの靴』
洋品店アザレアという店名もいいし、つむぎさんというヒロインの名前とそこに込められた由来がとても好きでした。
つむぎがミヨコちゃんに贈ったシンデレラのワンピースと夢のひと時の場面が、優しくて可愛らしくて最高に良かったです。
凍えそうに寒そうな場面ですが読んでいて心がぽかぽかあたたかくなりました。身を寄せ合う女の子二人のささやかな秘密の香りが魔法のひとしずくみたいで。
シンデレラに魔法をかける精霊の役の方に憧れ、ラストも心から幸せそうに働いているつむぎの姿が、読んでいてとても幸せで格好良かったです。
ミヨコちゃんではなく、つむぎの方がヒロインというのが、きりりときいていますね。
ふたりの再会の場面も幸せで読んでいて涙がにじみました。
たそがれ堂のおでんのおいしそうな描写に改めて惹かれてしまいました。寒い季節のおでんは最高……。
あと、「心根のきれいなお嬢さん」って最高の褒め言葉だと思いました。

『神様のいない庭』
一見シリアスなタイトルに思えましたが、三作の中でいちばん明るくコミカルなタッチのお話だったかな。薔薇の小物遣いが素敵。
マイペースで素直で家族思いの少女こずえちゃんの、ひと夏の冒険仕立て。
大好きな『秘密の花園』のようなワクワク感も味わえてとても良かったです。風早の街のお屋敷ってどうしてこんなに夢があるんでしょう。あの秘密の近道も子ども心に最高にときめきますね!
さくら先生はなるほど、ツンデレっぷりがとても可愛らしいお方でした(笑)。読んでいくごとに優しいお方なのです。
さくら先生の過去の回想に胸が締め付けられましたが、ラストのケーキの場面がとてもとても幸せで良かったです。
こずえちゃんの名前の由来が分かる場面もお気に入り。
『ひまわり冒険者』シリーズ、私も読んでみたいです。
ねここのお稲荷さんと熱いお茶もおいしそう~!

『祝福の庭』
幼馴染の駆け出し芸人コンビの秀一と圭介の、クリスマスの奇跡の物語。
三作の中でこれが一番純粋にクリスマスなお話だったなと思いました。
性格も境遇も違うけれどずっと親友でコンビを組んでいるふたりの、優しく純粋で他人のためにためらいなく身をはれるところがなにより共通していてまさに親友で、男の人の友情っていいなー!!と読んでいて思わずにっこり笑顔になれました。
ふたりそれぞれの親とのエピソードが心に残りました。

ねここがたそがれ堂の店員さんとしてもしっくり馴染んできていて、シリーズ二作目『奇跡の招待状』の『ねここや、ねここ』の悲しくてきれいなねここのお話を思い返しては、またほろりとしつつ、読了。
人の子の営みをずっと微笑んで見守っていてくれていて、ありがとう。みたいな。

そしてあとがきを読んでいて、私自身、中学生の頃に読んだ『はるかな空の東』のナルやサーヤやハヤミさんやユリアたち、『やまんば娘』の由布ちゃんや千鶴ちゃんやお銀さんたちが今でも心の中に生きているので、そういう意味でもとても嬉しい気持ちになれました。


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 村山早紀さん

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『桜風堂ものがたり』村山 早紀 




月原一整は、銀河堂書店の文庫担当の青年。他者と関わるのを避ける傾向にあるが、かくれた名作を探し出す目がありまた誠実な仕事ぶりで、同僚たちには信頼されていた。
しかしある日、書店内で起こった万引き事件により、一整は書店を辞めざるを得なくなる。
そんな一整は、ネット上でかねてより親しくしていた、桜風堂書店の老店主を訪ねるために、桜野町に旅に出る。
彼を待ち受けていたのは、思いがけない出会いと運命で——。


村山早紀さんの新作は、書店員さんが主役の、長編書きおろしの一冊。
大人の男の人が主人公のお話って、村山先生のお話にはちょっと珍しいかもしれない。と読んでいて思いました。

あらすじと、げみさんの柔らかくて優しくて美しい表紙イラストに惹かれて手に取って。
少しめくってみたら、主要登場人物の一人の娘さんのお名前が、「苑絵(そのえ)」さん、というのが、目に留まり。
他の作家さんのお話で恐縮ですが、荻原規子さんの古代日本ファンタジー小説『薄紅天女』のヒロイン・「苑上(そのえ)」が好きで大好きな私は、もうこの名前の響きに心の中でぴんときて、これは今すぐ読むしかない!と。
小さなころから私、リアルでも物語の中でも、人の名前というのがすごく好きで、お気に入りの名前の響きをいつまでも心の中に転がしてうっとりたのしんでいるところがあるので、こういうきっかけで何かのお話を読みはじめる、というのが、実はときどきあります。
苑上という人物も好きだし、彼女の名前の響きも好き。どちらが先か主かは分からないし、どっちでもいい。

話を戻しまして。
村山先生のいつものスタイルとは少し違い、ファンタジー要素はほとんどないのですが。
読み終えてみると、この物語もまさしく、村山早紀さんの書かれた「奇跡」の物語であったなあ。と思いました。
表紙のイメージの通りに、やわらかくてあたたかな桜の花散る本棚の海に、しばしまどろんでいるような。
現実には大変なことはもちろんいっぱいあるのだけれど、それでも本を愛し、未来を信じて働く人々の姿は、読んでいて美しく、心が洗われるかのようでした。
『四月の魚』が、世の勢いに乗り何重にも奇跡の物語となっていく過程は、美しいファンタジー。なのだけど、浮世離れしているわけじゃないのよ。
裏には途方もない人々の努力、苦労の積み重ねがあり、人々の作品への愛と祝福があり、そういうすべてのものに裏打ちされた、奇跡。
現実の世界にだって、こんな物語がもしかしたら、あるのかもしれないですよ。いや、きっとありますよ。
読み終えて、そう信じたくなる。

読む前に思っていたより文章量があり中身もかっちり作りこまれていて、ゆっくりときどき休みつつ、それでも最後まで一気読みしました。

本屋さん業界の諸事情、バックヤードのお話が、部外者の私にはひとつひとつ新鮮で、お仕事小説としてまずとても楽しかったです。
今の世の中は本当に厳しいのだな。と改めて思いました。万引き事件のエピソードも書店側の不利益とか丁寧に書かれていて、それでも犯人の少年の事情も辛いし追い詰められていく一整も本当に辛いし……。読んでいて胸を抉られました。
そんな世の中でも、本を愛し書店を愛し毎日たくましく働く銀河堂書店の店員さんひとりひとりが、読んでいてステキに格好良くって、関わり合いをもつ作家さんや出版社の営業さんや星野百貨店の人々や、すべてのひとびとが、格好いい。
こんな風に己の仕事に誇りを持ち日々働く人に、私もなりたい。
一整を追い詰めた「闇」の部分を持つネット、SNSが、物語の終盤では、書店員たちの横のネットワークとなり素晴らしい奇跡を起こす伝達手段となり広がっていき収束していくのが、ああ、上手く言えないんですが、良かったなあ。

主人公・一整青年の人となり、たたずまいが美しかったです。
辛い過去から心を閉ざしている一方で、書店員としての真摯な働きぶり、他者との関わりを避けているわけではなく誠実なところが、本への愛を静かに感じさせるところが、すごくステキで、確かに私まで惚れ込んでしまいました。
『竜宮ホテル』の響呼さんの男性版キャラというか。そんなイメージでした。

ヒロインの一、苑絵さん。
私が名前で惚れた人。「内気で夢見がちな美しい娘」なんて設定まで私好み(笑)。
育ちのいい繊細で優しい苑絵さん、一整さんを王子様と重ねて憧れて恋している苑絵さんが、読んでいてもう本当に可愛らしくて、わあ、幸せですねえ!野薔薇を持った王子様の絵本のエピソードが美しい。
だからこそ一整のあの事件はこたえますよね。
彼の力になりたい一心で、彼女にとって本当に大きな一歩を踏み出した苑絵さんが、また良かったです。
彼女の絵は、私の中ではゴーギャンの『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』のイメージでした。
(私自身が一番つらかった時代にテレビ番組で観てなにか心の救いになった作品というのがあり。)
一整さん、なんだか脈ありな感じでしたし、内向的で感性豊かなふたりお似合いだと思いますし、応援してしまいます。ふふふ。

ヒロインの二、渚砂さん。
苑絵さんの親友の若きカリスマ、明るく元気で有能な書店員のお嬢さん。
彼女が恋した相手は……。そ、そうきますか。
苑絵さんとは事情が違うとはいえ、なんだか渚砂さんがちょっとかわいそうで報われないな……と残念に思っていたら、ラスト近くで小さなフラグが立ったようで、これならまあ、大丈夫かな。
先生も、一整さんとはまた別の過去のトラウマを抱えたひとで、知的で優しく内面は繊細な大人で、このひともやっぱり好きだ。お似合いだと思いました。
渚砂さん自身にも過去の傷があるようで、それでも強く凛々しい渚砂さんが、やっぱり大好き。幸せになってほしいです。

柳田店長も塚本副店長も頼れるダンディーな書店員さんで格好いい~!

都会の銀河堂書店とはまた趣が全然違う桜風堂書店も、店主の心がいたるところに込められた、素敵な書店だなあと思いました。
一整が桜風堂書店にごく自然に馴染み書店をよみがえらせていく過程が、読んでいてとても心地よかった。わくわくしました。
店主さん、すごく心配だったのですが、持ち直したようで、本当に良かったです。
透君もいいこです。塩麹漬けの鶏もも肉は美味しいですよね。
透君と一整の人生がこうして交わって、どちらの面からも本当に良かったなあとしみじみしました。
猫のアリスとオウムの船長も、欠かすことのできない物語の大切な登場人物。

『四月の魚』を私も読んでみたいな。
リカコさんつながりがラストで判明する流れにうなってしまいました。

あと、一整が桜野町を目指して春の旅に出る場面が、静かなんだけれど浮き立つようにわくわくして、道中の風景が美しくて、お気に入りな部分でした。
自然界の描写がとても美しい物語でもありました。すべて書き尽くせないのだけれど。

私は文才もないし絵も描けないし、胡蝶亭さんや星のカケスさんみたいな素敵な書評はとても書けないけれど、それでも私なりの「恋文」が書けたらいいな、とか思いつつ、やっぱりいつものとりとめのない感想文になってしまいましたが。
本を愛するひとに、おすすめな一冊でした。
実際の本屋さんに出かけて本棚をじっくりじっくり見つめてみたい。
魅力的なキャラクターがたくさん出てきて全員が自身の能力をすべては見せきってくれていない気がするので、続編ぜひ読みたいです。個人的にはロマンスをちょっと進めてほしい(笑)。


ここ何日かにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 村山早紀さん

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