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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『RDG レッドデータガール』シリーズ 荻原 規子   

RDG レッドデータガール  はじめてのお使い (カドカワ銀のさじシリーズ)RDG レッドデータガール はじめてのお使い (カドカワ銀のさじシリーズ)
(2008/07/04)
荻原 規子

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鈴原泉水子は、紀伊山地の奥にある玉倉山で生まれ育った少女。中学三年まで地元をほとんど出ることなく、静かで平穏な暮らしを営んできた。
しかし幼馴染みの少年・深行との再会、東京の高校への進学と、周囲に半ば仕組まれたかたちで、全く別の環境で生きて行かなければならなくなる。
引っ込み思案でこれといって取り柄もなく自分に自信を持てない泉水子、しかし彼女には、周囲が慎重に見守り隠してきた途方もない「秘密」を持っていた。
泉水子と深行は、はじめは反発し合い、ほんの少し、また少し距離を縮めていきつつ、特殊な環境下で学園生活を営み、運命に立ち向かっていく――。


荻原規子さんの現代が舞台の和風ファンタジー学園ものシリーズ『RDG』シリーズ、ようやく全六巻、読了。
「ようやく」というのは、数年前、二巻目まで読んだ段階で、ずーーっと積み本になっていたシリーズだったので(汗)。
まあ色々あったんですけれど、一番の理由は、荻原規子さん作品に思い入れがありすぎて、かえっていい加減な気持ちでは読めないと思いこみ、大事大事に取っておきすぎた……うん、そんな感じです。
でも、いざ再スタートしてみると、半ば思っていたとおり、今度はノンストップで、全六巻、一気に読了してしまいました。
ああ、面白かった!!
単行本六巻分、続き続きをどんどん読んでいけて、荻原規子さんのすみずみまで完成されたファンタジー世界にずっと浸り続けていられるなんて、贅沢!幸せすぎました。

六巻分の感想、本当ならひとつの記事で思いを語れる訳もないのですが、今の私にはいくつも書いている余裕がないので(書きはじめたらその都度長くなっていくに決まってる……!)、無理やりダイジェスト版でいってみます(笑)。
また後々読み返して内容を反芻して、はじめて出てくる感想も、あるでしょうしね。

ヒロインの泉水子ちゃん。『勾玉三部作』や『西の善き魔女』のヒロインたちと少し趣が違って、引っ込み思案で怖がりで地味な女の子。特にスポーツが苦手で仕方がないというのに、やっぱりとても共感を覚えます(笑)。
そしてヒーロー、泉水子のパートナーの深行くんは、特に最初のうちは泉水子にとことんきつくって、そして三巻目以降を読んでいってもなかなかきつい態度を崩さず打ち解けないので、読んでいて正直ちょっと辛くもありました。
でもだからこそ、ふたりの距離が縮んだ!そんなひとつひとつの場面に、たまらなくきゅんきゅんしました。

ふたり、特に泉水子ははじめのうちはかなり幼くて読んでいてもどかしくて、危うさにはらはらし通しでしたが、少しずつ成長していく過程が、良かったです。
『勾玉三部作』を読んでいた十代の頃と違って、主役二人にいくらか距離をおいて、青い部分とか客観的に読むようになったな、とこれは私が年取ったというだけの話ですが。

突然ですが、以下、私がときめいた、大好き!泉水子と深行のそんな名シーン、ベスト3(笑)。

ベスト1 『学園の一番長い日』で、別次元に飛んだ(?)泉水子を深行が追いかけてくる場面

RDG5  レッドデータガール  学園の一番長い日 (カドカワ銀のさじシリーズ)RDG5 レッドデータガール 学園の一番長い日 (カドカワ銀のさじシリーズ)
(2011/10/28)
荻原 規子

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このふたりの再会の場面が、とにかく好き過ぎます……!!
荻原作品のこの手の主役二人の再会の場面って、本当に好きだな!部分的にすでに何度も読み返しちゃいました。
トトロが愛読書だったという深行くん、イメージが違いすぎて、ギャップが可愛らしいです。お父さんの膝の上で見ていたというのがまた。
おれが必要だと言えよ、とようやくはっきり口にした深行くんが、とてもきりっと格好良かったです。
今までの経緯を思い返すに、相当な覚悟で口にしている、わかるから。
泉水子ちゃんの衣装も雰囲気たっぷりでいいですね。

ついでに表紙イラスト、この巻のものが一番好きです。
お下げ髪が嫌いということではまったくないのですが!(笑)

ベスト2 『星降る夜に願うこと』のラストのふたりの場面

まさにココアのような甘さに、読んでいてほこほこして、幸せ気分でした♪
ふたりとも間違いなくしっかり恋をしていて、お互いへの想いが行動で伝わってきて……うん、良いものです。
泉水子のプレゼントの手袋、『ユリイカ』の荻原さんインタビューで語られていた裏エピソードに、とってもきゅんきゅん!!ちょっと某少女小説の恋人同士を彷彿とするエピソードではありませんか。(←どなたか分かってくださると嬉しい……笑。)

ベスト3 『学園の一番長い日』のホラーハウスにてのちょっとした仲たがい

明らかにやきもちを焼いている深行くんと、そこにある甘い感情に全然気づいていない泉水子ちゃんが、可愛すぎますね!

それにしても疑問なのが、このふたり、いったいいつの時点で、恋心を自覚したのか(笑)。
私の読解力が足りないだけかとも思いましたが、読書メーターでも皆さまけっこう同じように書かれているので。
想像の余地にゆだねられているのが、荻原作品らしくもあり、と言えるのかな。
再読したらもっと分かるのかなあ。
4巻目の最初の泉水子の日記、深行くんのことですっかり埋まっていて、想いを自覚したかまだあと少しか、ぎりぎりのところ、という気はしました。

お姫様役をやったり人前で思いがけず舞を見せたり、泉水子の輝きがどんどん周囲に放たれていく様を、深行が内心どう思っていたのか、気になるところです。
できれば深行視点からももっと読みたかったなー。

あと好きだったのは、泉水子とルームメイトの真響さんの友情とか。
ふたりとも異なる大きなものを抱えてて、周囲の思惑が微妙にぶつかり緊張をはらみつつも、ふたりの友情は不思議とあやうげなく揺るがなくって、読んでいてすごくいいなと思いました。
真響さん初登場時の「ぼたん色のセーター」、色味が鮮やかで響きがきれいで好きでした。イメージぴったり。
真夏くんののびのびとした雰囲気もとてもいいです。三巻目でかいま見えた、三兄弟の思いがけずに重く危うい背景も、ひっくるめて魅力になっていて、素敵だな。
ごく普通の女の子の友人として泉水子の恋を応援する真響さんが大好き!

高柳一条氏は、5巻目の変身が、すべてを凌駕してしまいました!以上。

ええと、お話は、私が思っていた以上に、「学園もの」だったなあと思いました。
少々(?)特殊な学園だったけれど、皆基本的には歳相応の普通の高校生で、仲良く青春している姿はいいものでした。
学園祭、規模がすごいなー。なんでもありだなー。と読んでいて感心しつつ、楽しげな雰囲気が伝わってきて、良かったです。泉水子たちが裏でとんでもないことを繰り広げていた割には学園祭は大きな破綻もなく、すごいな、とそこも感心。
和風ファンタジー部分は、『勾玉三部作』と同じものを何度も感じて、読んでいて嬉しくなりました。カラスとか(笑)。真夏くんの馬もそうですね。
現代学園ものと時代がかったファンタジー部分が違和感なく調和しているのが素敵だなとしみじみ思いました。

泉水子のご両親や、雪政さんサイド(というか、世代?)も、魅力的でした。
紫子さんが、わかりにくくも泉水子をちゃんと母親として愛して大事にしているのが分かる場面が、好きでした。ほっとしました。
雪政さんのきらきら胡散臭い、けれどいざというときちゃんと頼りになるところ、読んでいくごとに不思議とやみつきでした(笑)。深行の父への複雑な感情は、笑ってばかりもいられないなと思いましたが。確かにこんな父親嬉しくないよな……。
私もご両親と雪政さん、あと香織さんのお話、気になります。
(でも私は、どちらかというと、真響さんと真夏くんが、いつかお互い以上に大切に想えるひとを見つけるまでの物語の方を、読みたいかなー。)

姫神のこととか、結局決着がつかなかったな、あのひととあのひとの恋の行方はどうなったのかな、読み足りない部分はいくつも残っているものの、泉水子というひとりの少女の物語としては、きれいにまとまっていて、良かったんじゃないかな、とひとまず私は思いました。
『西の善き魔女』みたいに、外伝集とかいつかまた出るといいな。

アニメは今のところ見ていないのですが、岸田メルさんのスニーカー文庫版のイラストをぱらぱらめくって、泉水子ちゃんが清楚な美少女でびっくりし、ほうっとため息……(笑)。お下げ髪のお嬢さんはよいものです。


また読み返したり色々なもので鑑賞したり、じっくりこの作品と付き合っていけると嬉しい、そんな魅力的なシリーズでした。
ラストまで読み終えることができて、本当に良かったです。


ここ何日かにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 荻原規子さん

タグ: 荻原規子 

『〈勾玉〉の世界 荻原規子読本』荻原 規子 

〈勾玉〉の世界 荻原規子読本〈勾玉〉の世界 荻原規子読本
(2010/12/01)
荻原 規子

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『空色勾玉』のスピンオフ収録の、荻原規子先生の著作関連が色々まとめられた一冊。

『空色勾玉』をはじめて読んだ中学3年生のころから待ち焦がれていたと言っても過言ではない、三部作のスピンオフが読める!ということで、発売前から、そわそわ落ちつかずに待っておりました。
書店でようやく入手することができたときには、かなり舞い上がって、やや挙動不審に…(笑)。
(あ、記事にするのは遅くなってしまいましたが、発売日当日に、しっかりと入手していたのですよ!)

装丁の色づかいが、落ちついた品のある緑色で、なかなか素敵です。
ただ、個人的には、『勾玉三部作』の書籍には人物のイラストをつけたくない派なんですけどね…(他の場所で色々な方のイラストを鑑賞させていただくのは大好きなのですが。)
でもよくよくながめてみると、表情から衣の細部まで、ていねいに美しいイラストです。

内容は、中沢新一さんとの対談、単行本未収録の『上田ひろみシリーズ』とでも言うべき短編3本、上橋菜穂子さんとの対談、エッセイ「空色勾玉ができるまで」、全著作リスト、最後に書き下ろし『潮もかなひぬ』。

なんといっても書き下ろしを読まねば!ということで、まずは、一番最後の『潮もかなひぬ』から。
わあ、私のお気に入りのキャラクター・奈津女と柾視点のお話ですね!…この時点ですでにとても嬉しかったです。

狭也と稚羽矢のふたりを、第三者視点から読んでみるのは、なかなか新鮮な気分でした。
ふたり手を触れあわせながら、鹿を見守っている様子が、微笑ましすぎる…
ささやかなことですが、私的には、狭也が髪を美しくととのえているらしい描写があったのが、特に良かったです。こういうのって、狭也の視点からお話が語られていると、分からないからなあ。奈津女がお世話したんだよね、きっと(笑)。

奈津女と柾の新婚夫婦のエピソード自体も、とても素敵でした。高貴な人に仕える人同士が結婚するとすれば、こういう新婚生活になるのか。なるほどね、みたいな感じでした。闇の中の逢瀬も雰囲気がありますね。
まあ、ふたりのこの先の行く末を知る身としては、読み終えた後でどうしても、切なくやり切れないものが残るのですが…(泣)。
でも、この短編本体は、けして悲しみばかりにいろどられたお話ではありませんでした。
うん、読めてよかったです。

単行本未収録の、上田ひろみメインの短編「リズム・テンポ・そしてメロディ」「あのひと」「スイング」も、読んでみました。
吹奏楽部の中学生の女子視点で語られる、なかなか素敵な青春ストーリーでした。読む前に予想していたよりも、楽しんで読むことができました。
読んでいる私本人が、中学生時代に吹奏楽部員だったので、色々と共感できるものがあったかな。中学3年の秋の演奏会と受験のあれこれとか(笑)。
最初の短編は特に、『これは王国のかぎ』を彷彿させるようなエピソードもあり。(もっとも、図書館で借りて読んだきりなので、内容を詳細にはもう思い出せないのですが。)

ちょうど最近読んだ中学生の部活動青春ストーリーだったからかもしれませんが、加納朋子さんの『少年少女飛行倶楽部』と、なんとなく共通する雰囲気を感じました。
中学生ならではのういういしいロマンスと友情。きれいな部分もみっともない部分もあるけれど、私にとっては、すべてひっくるめてかわいい(笑)。

ふたつの対談も、読んでみました。
荻原先生のエッセイ『ファンタジーのDNA』に出てくる話題と、共通しているものが多かったように思います。
上橋菜穂子先生と荻原先生、似ている部分も異なる部分もあり。
そういえば、私が上橋先生の本で一番最初に読んだのは、古代の神様と人間のお話『月の森に、カミよ眠れ』でした。
『勾玉三部作』と似たようなお話かなと思って読んでいたら、ラストが全然違って、ショックを受けた記憶があります(苦笑)。

荻原先生の著作リストは、それぞれの解説がとっても詳しかった。
これは多分、私みたいな荻原先生の大ファンが、作品内容を思い返すために読むのが一番良いんじゃないかな。シリーズものの解説とか、詳しいのは良いけれど、微妙にネタばれのような気がします(笑)。

全体を通して、一番良かったのは、やっぱりスピンオフ『潮もかなひぬ』でした。
できれば今後もまた、別の書き下ろしを読む機会があると良いなあ。


そうそう、この本を入手したのと前後して、『勾玉三部作』関連で、思いがけずに嬉しいことがありました♪

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カテゴリ: 荻原規子さん

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タグ: 荻原規子 

『薄紅天女』文庫化 

『勾玉三部作』第3作目である『薄紅天女』上・下巻が、この8月に文庫化されました。
三部作のラスト、最後の明玉(あかるたま)をめぐる物語。(第1作目:『空色勾玉』/第2作目:『白鳥異伝』

薄紅天女 上 (徳間文庫)薄紅天女 上 (徳間文庫)
(2010/08/06)
荻原 規子

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薄紅天女 下 (徳間文庫)薄紅天女 下 (徳間文庫)
(2010/08/06)
荻原 規子

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闇に薄紅の淡い光がにじんでいるような表紙、きれいですねえ。
『勾玉三部作』の文庫版の表紙はどれも、私のイメージを全然損なわないスタイルだったので、正直言ってほっとしました。

上・下との分かれ目が、「第一部・阿高」「第二部・苑上」ときれいにぱっきりと分かれていて、おおっすごい…!と感心しました。

この『薄紅天女』を一回目に読んだときは、これは一応、はっきりと思いだせます。
やっぱり中学3年生の受験直前のころの、お正月。1月1日。
一応受験生だった私が、正月も塾で勉強しなければいけないのか…と母におうかがいを立てたところ(正月特訓というものがあったのですよ)、「正月くらいは勉強せんでええ」とのお言葉をもらって。
それならばと思い立ち、父の実家(同市内)に遊びに行く際に、クリスマスプレゼントとして三作セットで買ってもらってあった内、未読だった『薄紅天女』を携えていって、一日、勉強を忘れて本の世界にひたっていたのでした。

『薄紅天女』は、前作『空色勾玉』『白鳥異伝』とは違って、主人公の少年が闇の一族、少女が輝の一族。
それに、タイトルの優しげな乙女のイメージに反して、お話の前半は、徹底的に、蝦夷の血をひく武蔵の若者・阿高メインで語られていくので、それも、最初から最後まで女の子視点のお話だった前作2作品とは違うところ。
元気の良い男の子4人組がわいわい騒ぎながら進んでいくので、重い宿命の展開にはなるのだけれど、どこか明るいというか、自由な雰囲気が漂っているかな。

神話と神々の世界は遠いものとなり、主人公たちの恋愛面もややあっさり目で、三作の中ではどこか地味っぽい感じがしなくもない『薄紅天女』。けれども、この本はなぜか、後々になって読み返すごとに、昔は分からなかった面白みが分かってくるというか、上手く言えないのですが、そんな感じのお話でした。

「なにがあっても、すべてが終わったら武蔵に帰りたい」と、ふるさとや家族をいつも慕わしく思っている阿高(あたか)と、自分よりも大切にされている弟に優しい感情を持てなくて悩み、やがてそれを乗り越えた苑上(そのえ)のふたりが、自分にとって、三作の登場人物たちのなかで一番、身近に共感できる子たちだったからなのかもしれません。

特に、苑上が良いですね。高貴すぎる内親王として微妙な立場に生まれ、自分よりも人に必要とされる弟がねたましくてどうしても優しく接してあげられなかった苑上が、次第に、この子は私の大切な弟なんだ、私こそが守ってあげられるんだ…と自分の葛藤を克服し、成長していく過程が、すごく好きです。
私自身長女なので、余計に共感できたと思います。

皇(すめらぎ)の真実に衝撃を受けてもついには受け入れて、災厄と聞かされていた明玉の主の本心を案じ、彼の救いを願った苑上は、特別な力は持っていないけれど、本当に、心根の真っすぐな、やさしくて強い女の子です。大好き。

今回読み返してみて、苑上のイメージは、なんとなく、小さな水辺にひっそりと花開く、きよらかなスイレンの花になりました。何回も似たような場所が出てきましたしね。
私は長い間ずっと気に留めていなかったけれど、「神泉苑」が由来なのかな…?

『白鳥異伝』でちらりと書きましたが、男の子の格好になった苑上が「鈴鹿丸」の名を名乗ったのも、三重県民の私にとっては美味しいところです(笑)。
彼女は、結局のところ、生涯「鈴」と呼ばれていたのかしら。

後、なんといっても、「いっしょに武蔵へ行かないかと言わなかった」云々のシーンは、非常にときめきます。女の子の夢です。あんなに女の子に興味がなかった阿高が…と思うと、嬉しくもしみじみおかしい(笑)。
昔、荻原さんのファンサイト様でちらりと読んだことがありますが、三部作のなかで、正式な(?)「妻問い」シーンが書かれているのは、『薄紅天女』だけ(笑)。

笑ってしまったといえば、賀美野(かみの)が伊勢に、姉の身代わりに女装して出かけるシーンがありますが、この子、別に強制されたわけではなく、自分から、女装の準備をととのえていたんですね。すっかり忘れてて、再読していて思わず吹き出してしまいました…
賀美野って、おとなしそうでいて、実はかなりの大物なのかも。これは、実際の歴史が証明していますかね。

この文庫版の下巻の巻末には、荻原さんと、佐藤多佳子さんとの対談形式の文章が、結構たくさん載っていました。
10年前の私なら、こんなこと書かれていても多分ぴんとこなかっただろうけれど、今になって読めば、「ああ、そういうことだったのか…」と納得すること数々です。
遠子を「遠子ちゃん」なんて呼ばれると、『白鳥異伝』の遠子ではなく、『文学少女』シリーズの遠子先輩みたいに思えて仕方がない(笑)。私のなかでは、遠子は、どちらかといえば「橘の遠子姫」なんですよね、多分。

私が読む以前のことは分かりませんが、私が中学生のころからずっと、『勾玉三部作』は、書店の奥の方の児童書コーナーにひっそりと陳列されているのが常で(大型書店でもなければそもそも本自体がなかった)、「なんでこんな素晴らしい物語が…」と、いつもいつも悔しい思いをしていました。
『ハリーポッター』ブームで、ファンタジーが注目されるようになっても、良質な和風ファンタジーである『勾玉三部作』は、なぜか、いまいち注目度が低かった。(少なくとも当時の私の行動範囲内の書店では。)
…そんな時代を経てきたので、今現在のように、書店の文庫の新刊スペースに、『勾玉三部作』がずらりと平積みされている光景を見ていると、本当に、しみじみと、嬉しくなってくるのですよ。

多感な年頃に出会い、私の読書好き人生を決定づけてくれた、永遠の名作『勾玉三部作』の文庫化。
荻原規子先生、私のこんなつたないブログ上ではありますが、ささやかに、お祝いさせてください。


昨日「『横柄巫女と宰相陛下 聖なる檻』鮎川はぎの」の記事に拍手下さった方、どうもありがとうございました♪
コメントもくださって、ありがとうございました!
返信コメントは、別カテゴリへ移動させました。

カテゴリ: 荻原規子さん

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『白鳥異伝』文庫化 

『勾玉三部作』シリーズ第二作目・『白鳥異伝』上・下巻が、『空色勾玉』に続いて文庫化されました。

白鳥異伝 上 (徳間文庫)白鳥異伝 上 (徳間文庫)
(2010/07/02)
荻原規子

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白鳥異伝 下 (徳間文庫)白鳥異伝 下 (徳間文庫)
(2010/07/02)
荻原規子

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表紙の緑と白の組み合わせは、徳間書店版の表紙のイメージと重ね合わされている感じがしました。

『勾玉三部作』シリーズで、どれが一番好きか…と問われれば、非常に悩みますが、どうしてもと言われれば、私はこの作品を選ぶと思います。
文章量そのものも多く、中身もこれ以上ないほどに充実していて。特にラブストーリーとしては、三作品中では一番なのではないでしょうか。

同様に、『勾玉三部作』の登場人物のなかで、誰が一番好きか…と問われれば、私は、「遠子(とおこ)と小倶那(おぐな)です」と答えると思います。(こちらも、本当は選べないほどに皆大好きなのですが…)
このふたりはもう、どんな理由があろうとも、切り離して考えるのは間違っている気がする。

『空色勾玉』を経て『白鳥異伝』をはじめて読んだのは、やっぱり中学三年生のころ。
もう覚えていないのですが、多分、受験前の冬休みに一回目に読んだんじゃないかと思います。

記憶に残っているのは、冬休みに家で勉強をしていたとき、『白鳥異伝』を一区切りずつ読み返すのを、勉強の合間の休憩というかご褒美にしていたこと。
そんな読み方をしていたのでよけいに、私の読書体験のなかで印象付けられたのかもしれません。
お気に入りの箇所などは、今でも、改行とか頁の位置まで何となく覚えています。

遠子は、息をつめて小倶那の顔を見守った。
不幸も罪も、わかりすぎるほどわかってはいるが、小倶那の今の一瞬の表情にかないはしなかった。
それ以上の何が望めるだろう。きずなをどうしてうち消せるだろう。
遠い昔にした約束を、今小倶那は果たしたのだ。遠子をたずねて会いに来た。(下巻321・322頁)

このふたりの再会のシーンが、私は一番心に残っています。
それと、やっぱりラストの一連のシーンですね…本当に、話の流れが素晴らしい。遠子と小倶那の互いへの想いが貴い。

後、消えてしまった「三野の明玉」の意味が、何度読み返しても私には分からなくて、うんうんうなっていました(笑)。
多分、『薄紅天女』とつなげて考えればよいのでしょうね。

今回再読してみて(ひろい読みのつもりがほとんど完全に再読してしまいました。)…どうでも良い感じのことですけれど、「遠子って実は、かなりの美人だったんだろうなー」と思いました(笑)。
最初遠子をうさんくさい目で見ていた武彦も、遠子を邪魔者と見なすあのおっかない百襲姫でさえ、遠子の容姿を褒めているし。
恋が彼女を変えたのですね。(そういうお話が大好きな私です。)
明姫とはまた別の感じで、まっすぐに澄み渡るような美しさだったんだろうな。「顕」(しろ)の勾玉の輝きのイメージ。

以下、ローカルな話題。
皇子の反乱の場面で「寿々香」(すずか)、「乃穂野」(のぼの)と、三重県の地でもお話が展開されていたのも、私には嬉しかったです。
「鈴鹿峠」を親の車で通るたび、窓の外を必死に眺めて何かを感じ取ろうとしていましたね。
(鈴鹿は、三作目の『薄紅天女』でよりゆかりの深い地名として登場してくるかな。)
「のぼの」(能煩野)というのは、本来の(?)ヤマトタケルが没したとされる土地です。私にとっては隣の市(鈴鹿市)のさらに隣の市・亀山市にあります。
ちなみに、私が今住んでいるところのすぐ近所にも、ヤマトタケルゆかりの場所があります。
それまで正直なところ、何も面白みのない不便な田舎としか思っていなかった私の住んでいる場所が、『勾玉三部作』をきっかけに、古代ロマンあふれる素敵な場所…みたいに、認識が変わってしまいました。

何だか『勾玉三部作』について語ると、どうしても、自分の長々とした思い出話になってしまいます…(汗)。しかもこれでも削ったのですよ。
来月の『薄紅天女』も、今から楽しみです!


昨日「トロピカルな生八つ橋」の記事に拍手下さった方、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 荻原規子さん

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『空色勾玉』文庫化 

空色勾玉 (徳間文庫)空色勾玉 (徳間文庫)
(2010/06/04)
荻原 規子

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荻原規子さんの『勾玉三部作』シリーズ第一作目、『空色勾玉』が、ついに文庫化されましたですよ。
何というか、感無量…

表紙、どうなることかどきどきしていましたが、私の個人的なイメージには大変あっている感じだったので、良かったです。
水面の流れる模様?が、美しいです。光と闇が混じり合わさっている感じで。

ハードカバーで読んできたので、文庫として手に取ったのははじめてなのですが、予想以上に分厚くて、びっくり。
『空色勾玉』が、一番短いお話のはずなのに…
後の二作は、上・下と、わかれるみたいですけどね。

お気に入りの部分を中心に拾い読みのように読書してみましたが、自分でもびっくりするほど、台詞や場面などを、はっきりと覚えていました。
私の場合は、松虫草の花畑が二回出てくるシーンが、一番鮮やかに美しく、こころの中にしまってありました。
「松虫草」がどんなお花なのか知りたくって、本で調べて自分で落書きしたっけ…

『活字倶楽部』のインタビューで清家未森さんが書かれていたように、「本の中に入ってこの世界を見てみたい」と、思わずにはいられません。

この本のあとがきで、作者の荻原さんが書かれていたことは、当時の私には、かなり衝撃的な感じでした。

「読みたいお話がなければ、自分で書けばいいのだ」
…そう思われたことが、お話を書くようになったきっかけだとか。

中学三年生のときに、こんな荻原さんの本に出会ったのが、高校に入って、「文芸部」なんて部活動に入部するに至った、きっかけの大部分であったと思います。
現実には、「自分が読みたいお話なんて、そう思い通りに書けるもんじゃない」と、早々に思い知りましたけれどね(苦笑)。
あの頃は私もまだ、今よりは向こう見ずな若さを持っていた、15歳の小娘でした。

あれから色々読書を重ねてきましたが、この本のラストの、稚羽矢の台詞ほどに破壊力のある「天然」発言には、未だに出会っていないような気がします。
もっとも、昔の無知な私には、そもそも「祝言」(←ネタばれ)という言葉の意味がよく分かっていなかったので、その天然さ加減を、完全には味わえなかったものですが。
それでも、素晴らしいラストであったことには、間違いありませんでした。

帯についている応募券を集めると、サイン入り図書カードが抽選で当たるそうで…私では絶対当たらないけれど、集めてみようかな。


昨日「『恋のドレスと月の降る城~ヴィクトリアン・ローズ・テーラー~』青木祐子」、「「キスよりは遠く、触れるには近すぎて~ヴィクトリアン・ローズ・テーラー~」青木祐子」の記事にそれぞれ拍手下さった方、どうもありがとうございました♪
『月の降る城』の感想などは、手違いで、一旦書きあげたものをほとんど消去してしまい、泣きたくなってきてもうやめようかとも思ったのですが(汗)、もういちど頑張って書き直したものだったりしたので、反応していただけて、余計に嬉しかったです。

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『RDG2 レッドデータガール はじめてのお化粧』荻原 規子 

RDG2  レッドデータガール  はじめてのお化粧 (カドカワ銀のさじシリーズ)RDG2 レッドデータガール はじめてのお化粧 (カドカワ銀のさじシリーズ)
(2009/05/29)
荻原 規子

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荻原規子さんの、新シリーズ第2作目です。

熊野のお山の神社でずっと暮らしていた泉水子(いずみこ)は、自分の謎めいた生まれ、力に向き合うために、東京の鳳城学園という私立学校に入学することになります。
そこで、山伏の息子、深行(みゆき)と再会し、新たな出会いもあり、高校生活を始めることに。

深行は泉水子に、相変わらずな態度ですね…もう少し優しくしてあげてもいいのに。
けれども、やっぱり2人の距離は、確実に進展しているのかな。

泉水子とお友達になった、真響(まゆら)は、凛々しくてとても魅力的な女の子。何も分からない泉水子に、本当に親身になってくれています。
転校先にこんなに良いお友達がいて、本当に良かったです。私も小学校のとき、こんなお友達がいたら、転校先で孤立しなかったかなあ…(責任転嫁ですね。)

真響も、その弟の真夏、もう1人の真澄の三つ子もまた、長野の古の力を持つ一族でした。
この兄弟の結びつきは、尋常ではないな…
けれど、忍者が修験道の流れをくむ存在だとは知りませんでした。三重県では伊賀忍者が有名ですよね。

山伏、陰陽師、式神…と、日本の不思議な力が頻出する一方で、生徒会、インターネットなど、現代の学校の日常生活もリアルに描かれていて、面白かったです。

ラスト辺りはどきどきでした。
泉水子にほどこされた、「はじめてのお化粧」は、どんな意味を持っていたのでしょう。
泉水子がお化粧をしたのにも関わらず、生徒会長達の前で舞えなかったのは、なぜなのでしょう。

…彼女の中では、彼女自身が考えているよりもずっと、深行が大きな存在になっているのかな。
そして逆もしかり。だってあそこで深行は、きちんと彼女を助けにきたもの。

これから先は、日本の伝統芸能の一つ、「舞」というものが、重要なポイントになってきそうです。
荻原さんの既刊『風神秘抄』の糸世ちゃんを思い出させますね。私、この本は入院しているときに読んだから、いまいち記憶に残っていないのですよね…でも彼女のたぐいまれな舞の描写は、印象に残っています。

あ、最後にカラスが登場してきて、思いがけなくもやっぱり荻原ワールドで、笑ってしまいました。
今では都会の邪魔者扱いですが、カラスって古代では神様のお使いだったみたいですしね。
深行とタッグを組んで(?)泉水子を守っていってほしいです。

続きが楽しみです。(でも出るのは一年後くらいかも…)


第一作目『RDG レッドデータガール はじめてのお使い』の感想は、こちら

カテゴリ: 荻原規子さん

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