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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『純真を歌え、トラヴィアータ』古宮 九時 




音大に入ったもののトラウマによって歌声を失い、声楽の道から脱落してしまった、19歳の椿。
もう一度の大学生活のはじまり、彼女はオペラの自主公演を行う「東都大オペラサークル」のデモ演奏の音色にこころひかれ、指揮者の黒田と言葉を交わす。
同級生と共にサークルに入った椿は、ピアノ伴奏者として必死に頑張る傍ら、サークルのメンバーたちとの交友関係を、ぎこちないながらもゆっくり深めていく——。


古宮九時さん(藤村由紀さん)のメディアワークス文庫の新作。
ずっと志してきた歌を喪い挫折した歌姫・椿ちゃんは、ひょんな出会いから大学生のアマチュアオペラサークルに入ることに。
彼女が出会った孤高の指揮者・黒田さんと、サークルの個性豊かで人の良いメンバー達。
周りの皆に支えられ、椿ちゃんが音楽ともう一度向き合うまでの道のりをたどる、ものがたり。

ストーリー自体はシンプルながら、迷い苦しんだ末に椿が見出した音楽への愛情が胸を打つ、美しく深みのある、とても素敵な物語でした。
背景に光さす表紙イラストとタイトルがイメージぴったり。
彼女が挫折を乗り越えるまでの描写が、まさに真摯。支えてくれる周りの人々の温かさが読んでいてじんわりと伝わってくるのが、良いです。
椿ちゃんと黒田さんの努力を当たり前に惜しまない生真面目でストイックな部分が、作者さんの物語らしい。とても好きでいとおしくて泣きたくなる。
あとサークルの中の、びしっとしていると同時に音楽を軽やかに愛し楽しんでいる雰囲気が、読んでいて心地よい。

腰が低くて真面目で常に丁寧口調で体育会系力持ちの椿ちゃん、自然に共感でき応援して読んでゆける、私好みのヒロインでした。
派手さはないけど側にいるとほっと和むようないいこなんだろうな。『ラ・ボエーム』のお針子ミミの歌が、まさにイメージにぴったり。
アジの干物とか筋トレ三昧とか何か微妙にずれてて本人はまったく気づいていないあたりも愛おしい。
そんな彼女のずれを鷹揚に受け入れておもしろがっているサークルの雰囲気がいいな。

ヒーロー役の黒田さんも、厳しくも面倒見よく格好良く、うーん、好きだなあ!
優秀な指揮者で格好良く女の子に人気があるのかというとそういうタイプではなく、むしろサークル内では面倒見のいいお母さん的な立場というのが、ちょっとおもしろい。
音楽を愛し挫折して再生したふたり、ある意味最大の理解者で、黒田さんが椿ちゃんに向ける、変に甘くも厳しくもない真摯な気遣いと行動の数々が、とても尊かったです。
序盤の少女時代の椿ちゃんと関わりを持った少年のエピソードから、運命のふたり……みたいな雰囲気を漂わせつつ進行していく物語で、再会して(椿ちゃんは気づいていませんが)仲良くなっていっても特に甘さはなく、このままいくのかなー?と思って読んでいくと、ラストでふんわり微糖。
わあ、これはたまらない!
黒田さんの方では「初恋の君」として(たぶん)淡く意識しているものの、椿ちゃんがフラグを速攻でへし折っているのがちょっと気の毒でした。(まあ椿ちゃんは他のことでいっぱいいっぱいで、恋愛モードまで進める余裕は今はまだちょっとなさそう)
目下、黒田さんの最大のライバルは、かなみちゃんでしょうか。
花束を渡しに来たかなみちゃんと受け取った黒田さんの会話の実際のところが気になる。火花ばちばちだったんだろうな(笑)。
かなみちゃんの勝気な強さ、誇り高さが、傷さえ味方として燦然と輝く才能が、椿ちゃんにとってときには辛いのでは……と心配して読んでいましたが、かなみちゃんもいいこですね。椿ちゃん大好きですよね。
まあ確かに黒田さんはとても面倒見が良く優しいけれど、椿ちゃんへの面倒見の良さは明らかに別格なんだろうなと思いますよ。彼女が気づいていないだけで。(そうでなければ彼は今までももっと女の子にもてているのではないでしょうか)

サークルの同級生清河君や先輩の理恵さん、浜崎さん達、みんないいひとで良かったです。
清河君の万能さと何でもやってみて楽しもうとする姿勢とさりげない気遣いが、読んでいて心にしみました。
黒田さんとは別の意味で、椿ちゃんには得難い友人だなあ。彼女と清河君が出会えてよかったな。
サークルそして人生の先輩的な理恵さんと浜崎さん、それぞれ頼もしくていいひとで好きでした!!
おそらくふたりは椿ちゃんと黒田さんのことをあたたかい目で見守っているんだろうな……。

アマチュアオペラのあれこれやオペラの作品解説なども分かりやすく程良く書かれていて、ほとんど知識のない私にとってはありがたく、気軽に楽しく読めました。
そうか、たいてい人が死ぬのか……。
全員の音を拾いすくい上げていくというか、黒田さんの指揮者としてのありようが、何度読んでもあたたかくて好きだなあ。
大学生のサークルのほのぼの仲良さげな雰囲気も楽しかったです。
合宿いいですね。ジャンルばらばらのごちそうがおいしそう。
清河君が持ってきたピザがしょいこんでいた悲劇が、ストーリーとは全く関係ないながらに地味に余韻に残りました。
オペラのお話って、こうして小説でちらりと読んでいるだけだと悲劇的な恋愛とかすれ違いとかシリアスっぽいのですが、大学生のサークルメンバー独特の若いゆるさ、明るさで、重たさを必要以上に感じずさくっと読めるのが、いいなと思いました。

私自身は、大学生時代に一時期音楽系のサークルに入っていたものの色々あってそのサークル自体を挫折した人間で、色々重ね合わせながら読んでいました。
音楽に愛されなくても、愛してるって、ああ、シンプルでとてもいい言葉だな。
そうそう、学生の音楽サークルって、本当になにげにレベルが高くてびっくりするのです。

椿ちゃんはこれからサークル内で歌姫として活躍していきそうだし、ほんのりとした恋の行方も気になるし、続きもあればぜひぜひ読んでみたいな。

(余談:「ミミ」というと、どうしても、Unnamed Memory 内の無邪気な美少女ミミちゃんのことを、思い浮かべてしまう!
かわいらしい名前の響き、可憐で純情なイメージが、オペラの登場人物のミミ、ひいては椿ちゃんのイメージにも重なる気がして、読んでいてほんわり嬉しかったです
!)

カテゴリ: 日常のお話

タグ: 古宮九時 

『ちどり亭にようこそ~今朝もどこかでサンドイッチを~』十三 湊 




総一郎との結婚に伴い「ちどり亭」を畳まなければならなくなった花柚だが、アルバイトの彗太が店を継ぎたいと申し出たことによって、猶予期間として二年間店を続けられることに。
しかしそのためには期間限定の店のオーナーを見つけなければならない。
店を継ぐ心構えで、改めて修行をはじめた彗太だが、上手くいかないことも多くて——。


『ちどり亭にようこそ』シリーズ第三弾。
京都の仕出しお弁当屋さんが舞台の日常のものがたり。
シリーズ前二作がとても好みですっかりファンになってしまっていたので、三巻目が出るとのこと、たいへん楽しみにしていました!

ていねいに作られる家庭料理の延長線上にあるおいしそうなお弁当、京都の伝統あるお家の人々の風雅な暮らしぶり、人が好いキャラクター達の掛け合い、すべてが調和して読み心地の良い世界を構築していて、ああ、やっぱりいいなあ。
ふくふくとした幸福感に読んでいていっぱいにつつまれました。
無邪気で可愛らしくお料理熱心な現代京都のお嬢様花柚さんと、バイトの今風大学生彗太君のふたりが何といってもやっぱり好きです!

前回の自分の感想を読み返していて、そういえば私、花柚さんに影響されて花柄の割烹着を買ったんでしたっけ、思い出しました(笑)。割烹着便利であれから大活躍しています。

『今朝もどこかでサンドイッチを』のサブタイトルの意味が、じんわり胸に来るラストでした。
いつかは来るかなー?と思っていた展開でしたけどね。どっきりしました。
あと今回はなんといっても美津彦さん大活躍の回でもありました。だいぶ彼を見直したかも。

まずは彗太君のきんぴらに物申した梶原さんのエピソード。
お客さんからの厳しい指摘に落ち込みスランプに陥っている彗太君を励ます花柚さんのやり方が、花柚さんらしい柔らかで信頼のこもっているもので、読んでいて心に響きました。
栗やさつまいものぽくぽく系はお肉料理によく合うって分かる!
彗太君の頑張る姿を見ていたらほうれん草を食べたくなってきたので、次の日のお弁当のおかずにほうれん草を入れました。今の季節のほうれん草は甘くて肉厚で美味しい。
そして花柚さんのところで働くようになってから人の悪口を言わなくなったという下りが好きです。

海老フライと新キャラ大学生・康介君のエピソード。
配膳司、またひとつ新しい職業名を知りました。改めて京都は奥深い。
康介君の勘違いはとんでもなかったですが、でも言われてみれば、お弁当を作る相手って限定されているよなあ。とも。
野乃香ちゃんと康介くんの仲が悪いんだか良いんだかの勢いのいいやりとりが面白かった!!
わいわい集まっていると学生さん達みんな楽しそうで青春でいいなあ~(にこにこ)。
父親を尊敬し愛する息子の姿が印象的でした。
海老フライおいしそうですねえ~しば漬けを使ったピンクのタルタルソースにもなにげに心惹かれました。

野菜嫌いのお父さんのエピソード。
ふわふわもちもちのつくねの秘密はそういうことだったのか!花柚さんが明かした亡きお母様の手間暇と愛情に心打たれました。(そしてすかさずの奥様へのフォローがさすが。)
花柚さんの「実は栄養のことって、「よくわからない」っていうのが正確なところなの」当たりの台詞が、心に残りました。
私も昔身体の不調のため必死にご飯の内容を制限していたころより、あまり囚われず好きなものを食べることにしたと同時に毎日の行動パターンを変えてからの方が、体調が良くなったことがあるからな……。
それはともかくこのお話の、野菜嫌いの人のために花柚さんが工夫をこらしたお弁当が魅力的です。
ウインナーを蒸し炒めして、ほうれん草ペーストをを卵に混ぜて巻いて焼いて、三色玉子焼きにするの、今回一番心惹かれました。これいつか作ってみよう!
ごぼうブラウニーも気になるなあ。
あと永谷氏のお母さまがなかなか予想外の方向に強烈でした。苦労されてますね……。
永谷氏の「禁句」を必死になって守り通す花柚さんが格好いい(笑)。

そしてサンドイッチのお話。
花柚さんがしゅっと美しくこしらえるフルーツサンドの描写がとても素敵……!!ご飯の時間に食べるフルーツサンドが罪の味というのは、分かります。
思いがけないところから思いがけない人が登場してきたな、と。
結局のところ公篤さんも麻里依さんもいいひとでお似合いのふたりで、たまごサンドを通して花柚さんが麻里依さんの人となりを悟って認める、という流れが、良かったです。
北山の植物園、たまたま私自身が先日出かけたばかりで雰囲気を具体的に思い浮かべられたのが、良かった。
花柚さんの周りに美津彦さんや総一郎さん、そして彗太君たちがいて、良かったな。と思いました。
琵琶を奏でる花柚さんの姿が印象的でもありました。
公篤さんの抱える屈折もなんか分からないではないなと思いました。総一郎さんと花柚さんがいま幸せだからまあそれ以上思わずにすんでいるといいますか。
公篤さんの彗太君への贈り物もずっしりくる。
大切な人に、美味しいものを食べて、幸せであってほしい。
そんな願いを込めて日々お弁当をこしらえる花柚さんの仕事ってとっても素敵だし、そこまでいかずとも日々お弁当を作る幸せを改めて肯定された気がして、しみじみ幸福感にひたれるラストでした。

最後は美津彦さん視点の番外編。
彗太君視点以外から物語を眺めるのははじめてなので新鮮でした。
ぐうたらニート気質だけど研究者としては(多分)優秀で、気遣いもできるしなんだかんだ人が好く世話焼きな美津彦さん、だいぶ見直しました(笑)。
莢子さんと美津彦さんのさばさばした腐れ縁的な関係がなかなか良いです。
莢子さんのお母さんも悪い人では全然なく娘想いのいいひとなんだろうけれど、かみ合わなさがちょっと切ない。
花柚さんは料理に関しては本当に頼りになるなー!!
あと松園さんもやっぱり素敵なおじさまだな、とか。
花柚さんのお見合い連敗の一因はそこだったのか!とか。
分かりづらく花柚さんと総一郎さんの仲を後押ししている美津彦さん、とか。
おばあさまへの想いとか。

十三夜に十五夜に、和洋のお月見に集う人々の場面も、印象的でした。
子どもを親が思う心、受け継がれてゆくもの、しあわせでありますように、すこやかでありますように、そんな愛情と祈りの情が心に印象的に残るお話の数々だったように思います。

花柚さんと総一郎さんのふたりは結婚間近で相変わらずラブラブみたいでなによりですし、彗太君と菜月ちゃんも、上手くいってほしいな~。(口絵イラストの笑顔のふたりと見守る花柚さんが素敵)
続きもぜひ読みたいです。ぜひとも!!


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 日常のお話

タグ: 十三湊 

『左京区七夕通東入ル』『左京区恋月橋渡ル』瀧羽 麻子 






京都の文学部四回生の花ちゃんが、七夕の夜に理学部数学科のたっくんこと龍彦君と巡り合いそこからはじまるロマンスあり友情あり京都の学生さんたちの日常青春もの『左京区七夕通東入ル』。
その続編で、龍彦君の寮の友人山根君が雨の下鴨神社で巡り合った「姫」にはじめての恋をする『左京区恋月橋渡ル』。
(おそらく)舞台は京都大学、年季の入った男子寮に暮らす理系男子学生三人組シリーズ(?)。
どちらの作品も数年前に既読だったのですが、年末に読んだ安藤君のお話『左京区桃栗坂上ル』があんまり素敵で良かったので、懐かしさに駆られて、この前作二作品も再読しました。

いやあ、やっぱり瀧羽麻子さんのお話いいなあ~。
ふんわり柔らかでみずみずしいタッチで描かれる大学生たちの日常、恋、友情、研究、京都という街や文化や風習、すべてがすんなりまとまっていて。
とびきりキュートで素敵なお話です。
やはり主人公が違うとお話の雰囲気もがらりと変わるなあと新鮮な気持ちになる一方、時間軸や出来事や主役たちを取り巻く登場人物達は意外と重なりが多くて、読んでいると色々答え合わせしているみたいで、とても面白かったです。
あと出てくる京都の街の名所や年中行事、カフェや古着屋さんやレストランや、ひとつひとつがとっても魅力的!
お店の名前は明記されていないのですが、なんとなくここがモデルなのかな~と思えるカフェもいくつかあったりして、京都のガイドブック片手に徹底的に読み比べて、シリーズ三作も同時に広げて、めっちゃ散らかった状態で幸せな読書にひたっていました(笑)。

以下、とりとめのない再読感想メモを。(ネタバレあまり考えてないのでご注意を。でも三作品完全に独立したお話なので、多分どこから読んでも楽しめるし、知っているからこその楽しみもある、と私は勝手に思ってます。
どのお話もそれぞれの主役以外のストーリー、特にロマンスに関しては、肝心なところはふわっとぼかされているし)

まずは花ちゃん一人称の『七夕通東入ル』。
序盤の七夕とブルーベリー、花柄のワンピースのイメージが、とっても鮮やか。
いちばんふんわりフェミニンな可愛らしいお話。
お洒落で好奇心旺盛で多趣味で落ち着きがあまりない花ちゃんですが、真面目な勉強家だし(そりゃそうだ)男気があるしっかり者で、恋に落ちてしまった彼女の目から眺める世界のみずみずしく美しく魅力的なこと!
彼女の目から見るヤマネくんとアンドウくんはかなり奇天烈ですね。最初のうちは特に。
それでもちゃんと友情を育んでいてそれがちゃんと伝わってくるのが良い。安藤君のタコ焼きはやはりおいしそうです。
数学馬鹿で淡々としていて恋愛ごとには程遠い人生を送ってきたであろうたっくんが、花ちゃんのことをきちんと大切に想っているのが、物語が進むごとにじわりじわりと伝わってくるのが、なんとも心ときめきます。きゅんきゅんです。
ふたりで自転車を取り戻しに行く場面にブルーベリーのタルト、東京への旅行案を練っている場面がお気に入りかなあ。
たっくんさりげなく大胆発言しますよね……。というか龍彦君の引っ越し先は、そこだったのか!わすれてた!究極の人生の選択だった!(笑)
『活字倶楽部』の瀧羽先生のインタビューにもちらりと書いてあったように、花ちゃんは確かに、龍彦君をこちらがわの世界につなぎとめる、大切な存在なんだなあ、と。
あとアリサちゃんが花ちゃんの友人であったというのも忘れてました。そして恋のキューピッドでした。
花ちゃんのバイト先の古着屋さん・ソレイユとオーナーの陽子さんも何とも言えずに魅力的。おしゃれ。
剛くんは不憫でした。もっとももし彼らが実際にいたら私は剛くんタイプの男子には気後れしてしまって絶対に話しかけられないな……。
この三人卒業旅行(?)で高知に行っていたんだな。そういえば『桃栗坂上ル』にもさらーっと書いてありました。

次は山根君視点の『恋月橋渡ル』。
花火を手に深夜の鴨川をひとり駆けまわる姿は想像すると相当異様ですが(笑)、研究一筋奥手な男子学生山根君の、純情な初恋の物語。
花ちゃんのアドバイスを熟読し事前に頑張りすぎてから回ったりちょっと格好悪いこといっぱいしていたとしても、彼の一途さ一生懸命さ真心がひしひしと伝わってきて、なにより相手の「姫」こと美月さんも楽しんでいるのが伝わってきて、読んでいていいな~幸せ感にひたれました。
なんとなく端々から想像できる切ない終わり方でしたが、最後の最後の贈り物が、心憎いですね。
あと山根君視点なだけあって、理系学生さん達の日常、寮生活のリアルな暮らしぶり、安藤君をメインに寮生たちとの交流、そういうのが三作の中でいちばんメインに出てきていて、これも楽しかったです。
寺田君の腰の低さや異様なくらいのていねいな言葉遣いはそういうお家で育ったからこそだったのか、と納得したり。そして彼の進路の悩みも等身大で分かる。
川本君も初登場。鰐のモモちゃんも話のタネにちらっと出てきましたね。
あと安藤君の食い意地のはりっぷりがもう端々から伝わってくるのも、やっぱり食い意地のはった人間である私には共感できることが多々あって、これも楽しい!
もっとも璃子ちゃん視点からの安藤君の方が圧倒的に断然格好いいな。そりゃ当然か(笑)。
まあ確かに、特に果菜ちゃんみたいな女の子にとっては、安藤君みたいなお兄ちゃんはさえないオタクと評されてしまうのも、まあそういうものかな~と思いはしました。
のんびりやでどっしりした安藤君が、まさか半年後くらいに鰐と格闘することになろうとは、色々想像しつつ楽しいです。
そしてあの大文字焼きと七輪パーティーの日こそが、菅沼さんたちの馴れ初めの日だったんだろうか。読み返して気づいた。

読み返してみて、三作とも三人ともが、自転車(スクーター)の二人乗りをする場面があって、なんだか三シーンとも爽快で弾む気持ちが伝わってきて印象的で好きだな。
時間が進むごとに龍彦君と花ちゃんがしっくり馴染んだカップルになっていく様も良いですねえ。
『桃栗坂』のラストで、皆のその後が集大成のようにまとめられていたのが、読み返してみて改めて良かったです。
特に花ちゃんと龍彦君の未来がとてもふたりらしいなあと思い、良かった。

一気に三作を読むと、モデルになっている大学周辺の地理をガイドブックでこれでもかと読みこむので、一層にわか京都知識が深まりました(笑)。
やっぱり女の子らしいカフェと言えば花ちゃんが強いな~。涼真君がセレクトしたカフェと花ちゃんお気に入りのカフェは多分同じなのかな。花ちゃんと涼真君は話が合いそう。そして花ちゃんは璃子ちゃんを妹みたいにとても可愛がってそうだな。
研究や学問に対して皆それぞれ内面で考えて悩んでるんだな~と改めて思ったり。安藤君の方向転換は重みがあったな。
三作読んでどれも好きだけれどいちばんはやはり『左京区桃栗坂上ル』かなあ。幼馴染もの年の差ものが私好みストライクなのと、主人公達が美味しいもの大好きでたくさん食べるキャラなのが、いいんだな。改めて思いました。
私も食後にケーキもちゃんと食べよなと言ってくれるひとのおよめさんになりたい。(←言ってみただけです)
それにしても最初に読んだときは断然花ちゃんの歳と立場に近かったのが、今ではいちばん立場が近いのが川本君と璃子ちゃんの研究室の秘書の羽鳥さんになっていたというのが、改めて時の流れを感じてしみじみしました。これは前も書いたかな。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 日常のお話

タグ: 瀧羽麻子 

『左京区桃栗坂上ル』瀧羽 麻子 




父親の仕事の都合で引っ越しばかりだった璃子は、四歳の時、引っ越し先の奈良で、八百屋の娘の果菜と出会う。
仲良くなった璃子と果菜。ふたりのお気に入りの遊びはおままごとで、ときどき付き合ってくれたのが、三歳年上の果菜の兄だった。
璃子が引っ越しで奈良を離れた十年の後も、ご縁はとぎれずつながっていた。果菜、そして京都の大学に進学していた「お兄ちゃん」とふたたび人生が交わる——。


今年最後の読書感想更新は、京都もので締めることにしました。
今年はほんとうにたくさんの京都ものの物語を読んできたなあ。としみじみ振り返って思います。

そんなわけで、瀧羽麻子さんの京都理系男子学生組シリーズ(?)第三弾は、奈良の八百屋の息子・農学部の安藤君のお話でした。
前二作を読んだのがもう数年前で正直色々うろ覚えなのですが、安藤君はそれでもなんとなく覚えてた。
山根君に龍彦君、花ちゃん、寺田君、川本君、読んでいるうちになんとなく思い出してきた。
懐かしい面々に再会した気分。みんな元気そうにその後の人生を歩んでいて良かった!

なんて言いつつも、基本完全独立した物語で、前二作品未読でも全然問題なく読めます。

璃子ちゃんと親友のお兄ちゃん・安藤君が、のんびり二人のペースで絆を育みハッピーエンドにつながるお話の流れがていねいで優しくて、読んでいて心地よくそしてきゅんきゅんでした。
いまどき珍しいくらいの正統派幼馴染ロマンスでした。
瀧羽麻子さんのやわらかくて女性的な筆致で紡がれる、璃子ちゃんと安藤君の幼いころの馴れ初め(?)から、同じ京都の大学で先輩後輩として過ごす研究漬けの日常。ふたりの周りの愛情深く個性的な家族や友人たち。
すべての要素が愛おしくて、読み返すごとにふくふくと幸せ感でいっぱいに。

大人しくて思慮深くて生き物が好きな璃子ちゃんと、子どものころから泰然としてマイペースで研究者肌(おたくというか)な安藤君。
最初は璃子ちゃんが語り手の物語でしたが、次第に安藤君の語りの方がメインになってゆくつくりも、なんだか良かった。
似た者同士で誰から見てもお似合いなふたりが、何年もじれったい関係をつづけてゆくさまの、もどかしくも愛おしいこと!!
璃子ちゃんはあれ、果菜ちゃんとの電話の場面の時点でおそらく自覚していたと思うのですが(あの場面まさに少女漫画チックでとても可愛い)、安藤君の方も、そうとは自覚していなくても、ずっと璃子ちゃんは、とくべつな女の子だったんだと思います。
じわじわ重ねてきた想いが。

なんといっても、鰐に襲われた(と勘違いした)璃子ちゃんを、とっさに守るために飛び出した安藤君、その後の鍋パーティーで友人たちに指摘されてようやく自分の気持ちに気づく安藤君、あの場面が彼ららしくって、とても好きです。
直前まで恋のお話と言うより鰐のモモちゃんをかばい続けていた璃子ちゃんが可愛くてちょっとおかしみがある。

あと幼き日のおままごとで、璃子ちゃんと安藤君がお母さんお父さん役をやっていたのも、カラスに襲われた璃子ちゃんを安藤君が追っ払ってそのあとの璃子ちゃんの台詞も、修学旅行で果菜ちゃんと再会できず涙にくれた璃子ちゃんに安藤君が気づいたのも、幼き日の何もかもが、降り積もってふたりの幸福な思い出に集約されてゆくのも、良いですねえ。ときめきますよねえ。
お互いを呼ぶのが「お兄ちゃん」「璃子ちゃん」で幼き日からずっと変わらないのも、らしい。
璃子ちゃんが大学生になり、安藤君の弱音も受け止め次第に関係がきもち対等になってゆく流れも、いい。

あと璃子ちゃんと果菜ちゃんの、全然違う性格の女の子同士の友情もいいです。私幼馴染ロマンスも好物ですが幼馴染女の子の親友二人も大好物です(笑)。
元気いっぱいであけっぴろげで頼もしい八百屋の看板娘で、お兄ちゃんにはつねに容赦ない果菜ちゃんもまたとびきりかわいらしい女の子です。
璃子ちゃんに恋愛話をことあるごとに勧めているわりに、自分の兄との関係には全く思い至ってなかったあたりも、微笑ましくちょっとおかしかった。
果菜ちゃん、まさか彼とつきあうことになるとは……びっくりしました(笑)。

あと理系学生たちのキャンパスライフものんびり愉快に書かれていて、読んでいてこれまた楽しかったです。
今回のメインは農学部。植物系と動物系とか、微妙な教授同士の争いとか、なんか、わかる(笑)。
前作二作を読んでいた頃は主人公の学生さん達に立場を重ねていたものですが、今の私は、猪俣教授の秘書の羽鳥さんの立場が断然近く、共感を覚えました。なんかこういうところでも時の流れを感じてしみじみしてしまう……。
璃子ちゃんと安藤君の研究室の教授同士が仲が悪くってって、確かにちょっとロミオとジュリエットっぽく、ちょっとロマンティック。
まさかラスト近くにああいう流れになるとは思っていませんでしたが。

璃子の親友になった涼真君とか、性別とか関係なく友情を育んでいるキャンパスライフも、自然な感じで良かったです。
社会人になった花ちゃんと安藤君の会話場面もよかった。花ちゃん大人になったな……。
龍彦君が相変わらずだけど花ちゃんのことをきちんと想っているのが端々で垣間見れてきゅんとしたり。
女の子同士の友情も良かったけれど、寮の男の子同士の友情も、やっぱりとても好きでした!!
後日談の山根君にはこれまた度肝を抜かれました。幸せそうで何よりでした。

璃子ちゃんと安藤君ですが、ふたりともけっこうご飯をよく食べるしケーキもしっかり食べるし、そういう描写も好きでした。
ふたりで出かけていたカフェが素敵でちょっと行ってみたい。
八百屋の息子なだけあり野菜を愛する安藤君の料理も美味しそうなんですよね~。鶏の水炊きに心惹かれる。

あ、あと璃子ちゃんに甘くて心配性なお父さんも印象的でした。娘が結局実家に戻らないことになってひそかにうちひしがれていたんだろうな……。

年末にじわじわ穏やかな幸福感に浸れる良い物語でした。
前作二作も読み返したくなってきました!!


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 日常のお話

タグ: 瀧羽麻子 

『ちどり亭にようこそ~京都の小さなお弁当屋さん~』十三 湊 




京都は姉小路通沿いにこじんまりと建つ、仕出し弁当屋「ちどり亭」。
店主の花柚(はなゆ)は若く美しい女性だが、なぜか毎週お見合いをしている。
いつも残念な結果に終わるのを「お見合いがライフワークなの」と答える、お茶目な人でもある。
そんな彼女が食べる人のため心をこめて丁寧に作るお弁当は、人を笑顔に幸せにするもので——。

京都を舞台に、小さな仕出しお弁当屋「ちどり亭」をめぐる人々が織りなす日常の物語。
店主は花柚さんといって、由緒ある旧家の年若いお嬢様、無邪気なかわいらしいひとで、お料理への情熱は人一倍。
物語の語り手は、ちどり亭の学生アルバイト・彗太君。お店の前で行き倒れていたのを拾われたのがきっかけで花柚さんに料理を習いはじめアルバイトとして雇われ、ふたりでお店を回している。今風の学生さんのノリながら人が好く素直で勉強熱心、ちょっと不憫体質(苦笑)。
このふたりのキャラがまずとてもいい。

作品設定やあらすじのイメージそのままおっとりはんなり優しい物語で、食生活をメインに人の生活の営みも丁寧に書かれていて、読んでいてとても心地がよくて、じんわりと癒されました。
ていねいに作られるお弁当も美味しそうで、一品一品きっちり手間と心がこもっていてそれでいてあくまで家庭料理の延長線という感じで背伸びした感じもなく、なにより花柚さんと彗太くんが料理を作っている姿がいきいきと楽しそうで、これまた癒される。読んでいて元気をもらえます。

なんというか、つまり、とってもとってもお気に入りの作品でした!!!
ヒロインの花柚さん、「花柚」さんと書いて「はなゆ」さんと呼ぶ名前からして、可愛すぎる~!まさに現代京都のお嬢様、お見合いマスターと自分で言ってたり自分のお弁当を毎朝私って天才!と自画自賛していたり、それだけに料理への情熱は並々ならぬものがあったり、割烹着にお着物姿も口調も、すべてが可愛らしくて、すっかりファンになってしまいました。
花柚さんの影響で、ちょうど作業用エプロンを買おうとしていてうっかり割烹着を買ってしまったのは私です。使いでよくて気にいっています。
彗太君とのかけあいもテンポよく楽しいしふたりで協力し合って店を回している姿もいい。

「食べものをみんな人任せにしていてはいけない」
「栄養も大切だけど、それよりも大事なのは、自分で自分の生活をオーガナイズすることよ」
この花柚さんのシンプルな教えが、読んでいるとじわじわと効いてきます。
読んでいると、心がすっと整う感じがして、自分自身のお弁当生活のはげみにもなるし、とてもとても良かった。
日々のお弁当作りがなんだか毎日楽しみになってきて、結果(自分比)美味しいお弁当をお昼に食べられるし、いいことづくめ(笑)。

花柚さんと彗太君、それぞれのロマンスのエピソードもちゃーんとあるのも、私好みで心憎い。
彗太君の片想いのお相手菜月ちゃん、彼女もまた程良く今どきの大学生で読んでいくごとにとってもいいこで、菜月ちゃんの失恋は分かってはいたけれど切なかった。(このあたりでお弁当ストーカーしていた彗太君がなにげにすごかった……。でも確かにお弁当にこんな工夫を常にできちゃう彼女は、手強すぎる、かも。)
菜月ちゃんに彗太君が作るオムライスがね、食べる人への真心がこもっていて、とてもいい。卵に酢を入れるのか、覚えておこう。
その後花柚さんに共にお弟子としてお料理を習う関係になったふたりのすがたには良い感じでほのぼのしました。彗太君いいこだな……不憫だけど……。

一方の花柚さんのロマンスのお相手は、破談になったかつての婚約者。
どんなに口では何気なく装い否定していても、相手が店に来ると、ふわふわ舞い上がっているのを隠せていない花柚さんが、可愛くってもう!
やっぱり名家のあととり総一郎さんのえらっそうだけれど実は真面目でていねいなお人柄、はっきり口にはしないけれど実はこの人もまた花柚さんひとすじでベタ惚れなんじゃないの?と疑惑がだんだん確信に変わっていくところとか、最高にときめくんですけれど!(笑)

ちどり亭のパラサイト(現代の貴族?)美津彦さんも、ぐうたらだけど気遣いもできるなんだかんだいいひとだし、花柚さんのお料理の師匠もぴっと背筋が伸びた格好のいい人だったし、脇役キャラもそれぞれ魅力的で、ひとつひとつのエピソードもていねいでよく練られていてどれも印象深かったし、春の素材をメインに用いたお弁当もそれぞれとってもおいしそう!
私も花柚さんのお弟子さんになりたい……せめて彼女の「お弁当練習帖」ノートをのぞいてみたい。
だしまき卵を上手に作れるようになるの、憧れます。


あまりに良かったので、二巻目もさっそく読みました。
宝物のように、大切に大切に、少しずつ読んでゆきました。



今度は夏の物語。
「人間は、何かを生産せんならん。料理でも、日記でも」とか「きれいなものは食べても太らない」とか、読んでいくとちゃんと理由があってやはり名言。どんな食べ物でもバランスよくが大事って当たり前のように思えるけれど大事だな。
彗太君と菜月ちゃんたちの後輩・小川野乃香ちゃん、彗太君の前ではじめて素を出した彼女はなかなか強烈でした……。
彗太君と花柚さんの協力で、いい方向に向かっていって、良かったな。
彼女の登場で、彗太君と菜月ちゃんも上手い具合にまとまって、何より。野乃香ちゃんがちょっと不憫だけど。茗荷の甘酢漬けの色は確かにとても綺麗ですよねえ。
黒岩さんとメイちゃんの親子もいいキャラしていました。
それにしても彗太君はアルバイトさんとしてお弟子として花柚さんに鍛えられて、成長したなあ。としみじみしました。

かと思えば、花柚さん達カップルに途中から暗雲がたちこめはらはらしましたが、お店のことかー。これは確かに難しい。
花柚さんと彗太君がふたりで店を回している姿がやっぱり好きだったもので、最終的にふたりがああいう選択をしてくれて、心から良かったなあと思いました。
やっぱりえらっそうでしかめつらしいものの、実はやっぱり花柚さんにべた惚れな総一郎さんにいつでもときめいて仕方がないです。
桃を贈り続ける総一郎さんに文句を言いつついただく花柚さん、はたから見ていてもどかしい。
だいぶ浮世離れしている大人カップルですが、彼らなりにしっかりラブラブしている姿にきゅんきゅんです。意図せずふたりの場面を邪魔してしまう彗太君が不憫だ……。
胡麻すり胡麻豆腐作りに、持ちよりおにぎりお弁当、あと彗太君の冷やし中華にマヨネーズも何気に印象的でした。
私も名古屋に来て友人が当たり前に冷やし中華にマヨネーズをかけていたのがカルチャーショックだったな……。

みんなみんな笑顔で幸せになれる二冊でした。
お弁当作りしている、もしくはお弁当作りこれからしてみようかな、とか言う人には特におすすめ。
これで完結しているのかしら。続きがもしあるならぜひ読んでみたいのですが。

カテゴリ: 日常のお話

タグ: 十三湊 

『東京すみっこごはん 雷親父とオムライス』成田 名璃子 




年齢も職業も異なる人々が集い手作り料理を食べる共同台所「すみっこごはん」。
夢をあきらめかけた専門学校生、妻を亡くしたがんこな老人、勉強ひとすじの小学生。今日も誰かが誰かとご飯を作り、みんな一緒に食べてゆく。
そんなすみっこごはんが、街の再開発の対象地区に含まれているとのうわさが。
すみっこごはん解散の危機に、常連の皆は動揺する——。

『東京すみっこごはん』シリーズ第二弾。
一巻目のお話がとても好きだったので、続編が出てくれて嬉しいです。
あざやかな黄緑色に食材に作品のキャラクターたちに、可愛らしくていかにもおいしそうな、眺めているだけでちょっと元気がでそうな表紙がやはり良い。

現代日本で生きる人々が内に抱える辛さや寂しさが、ふくふくとおいしそうな家庭料理で、そっとほぐされていく様がいいなあと思いました。
田上さんや金子さん、柿本さん、丸山さん、楓ちゃんに純也くん、奈央さん、前作のレギュラーメンバーも引き続きすみっこごはんでご飯を作り食べていて、なんだかほっと安心できる風景でした。
柿本さんの渋柿対応もよきスパイス。
素人が、レシピの通りにひとつひとつの手順を踏んで、みんなの協力も得つつ、ていねいに作っていくお料理。
すみっこごはんに集う人々の優しさも相まって、読んでいると、疲れた体と心にしみいるよう。癒されました。
(なんだかこの辺『甘々と稲妻』というまんがに通ずるものがあるような)
あとごはんの描写が、ほんとうに!おいしそうで!
唐揚げも筑前煮もハンバーグもミートローフもおいしそうでしたが、今回の私的ベストは、なんといってもオムライスでした。

『本物の唐揚げみたいに』
沙也さんの何をやっても上手くいかない辛い立場が読んでいてひりひりとせまってきてこちらも息苦しくなりました。
金子さんの料理人として、年上としての沙也さんへのアドバイスが、素敵だったな、と思いました。
現実にはやっぱりたしかな未来は見いだせないままでも、それでも友情が再び結びついたのは、良かった。
揚げたてジューシー唐揚げはなにかの魔法がかかっているみたいですね!
沙也さんと金子さんがちょっといい雰囲気かなとか思ったけれど、そこまでには至らないのか。惜しい。(?)

『失われた筑前煮を求めて』
章タイトルがはまっていてお気に入り。
私も筑前煮、大好きなんですよねえ。そして私も絶対に母の味と同じに作れない……。
癖がある頑固なご老人有村さん。すみっこごはんに行って、はじめはまあ案の定あれこれぶつかっても、意外にみんな有村さんのこと嫌っていなくて、すっと馴染んでいっている感じなのが、良かった。なんだかんだいいひとなんですよね。
おじいちゃんっこの楓ちゃんと有村さんのペアがいい。
亡き奥さん・初恵さんのことを、本当の本当に大切に愛していたんだろうなというのが端々から伝わってくるのも、良かった。
「ちょちょいのちょい、ですのよ」という初恵さんの台詞が今にも聞こえてきそうな。
隠し味の種明かしとその理由にまた胸の奥がつんとしました。

『雷親父とオムライス』
『失われた筑前煮を求めて』と連続したお話。
勉強漬け、危険を排除した安心な食品漬け、でがんじがらめなんだけれど当人はそれをあたりまえと思っている秀樹くん。読んでいてなんだかな……と思いつつ。本人はとても素直で賢いよいこで、すみっこごはんのみんなとの交流も楽しそうで、良かった。
特に有村さんと秀樹くんの関係がいいですねえ。有村さんの悪い笑顔……。
純也君も交えての「おでかけ」がとても楽しそうで、その後のお別れが、悲しくて切なくて仕方がなかったです。
楓ちゃんと純也君の気持ちも辛い。
秀樹君が有村さんと一緒に作る「オムライス」の場面がすっごく美味しそうで楽しそうで、私もオムライス食べたい!
お肉に小麦粉をまぶすとか、レンジでバターライスを作るとか、さりげない一工夫が光ってる。これくらいなら次に自分でも試せそう。
最後にたまごをえいやっとひっくり返した田上さんが最高に格好良かったです!!

『ミートローフへの招待状』
前作からのレギュラーメンバーのひとり・主婦の田上さんが主役のエピソードで締めくくり。
再開発の件ですみっこごはんにもスパイが?疑惑の中、旦那さんと二人でミステリー仕立てで調査をしていく田上さん、頼もしくて輝いてました。ここの夫婦も仲良さげで憧れてしまいます。
田上さんがすみっこごはんの常連になっていった理由もさりげなく書かれていて。
田上さんが作る家庭料理はふくふくあたたかくてたっぷりしていて本当に美味しそうですよ。
スパイの正体は、なんとなくこのひとかなあ……と思っていた通りでした。
でも確かに、常連さん一人一人がそれなりに怪しい要素を備えていて、ちょっと焦っちゃいましたよ(笑)。
有村さんの息子さんに確かに父の血を感じる部分があって、楽しい気分になったり。
ミートローフも手毬寿司も手間暇かけて作った豪華な家庭料理でしめくくり。最後には明るい話題も出て、優しい気持ちでページを閉じることができました。


ここ最近の食べ物系小説のなかでも、かなりお気に入りの作品です。おすすめ。
暑さや忙しさにへとへとになった心がこの作品でだいぶ癒されまるくなりました。


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 日常のお話

タグ: 成田名璃子