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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『芙蓉千里』須賀 しのぶ 





時は明治大正、ところは満州。
「大陸一の売れっ子女郎になる」と自ら人買いに売り込んで哈爾賓に渡った少女・フミ。
この地でフミは、共に売られてきた少女タエと、妓楼・酔芙蓉の下働きとして働きはじめる。
いくつもの出会いと別れ、事件を経て、フミは天性の愛嬌と舞の才能を買われ、芸妓の道を歩むことに——。


去年『流血女神伝』シリーズにはまりにはまった須賀しのぶさんの描かれた歴史もの長編小説シリーズ。
この作品も、何年も前からずっと読みたくて気になっていたお話でした。
年末のベストブック記事で『流血女神伝』の感想に再び触れたのと、お正月の区切りの良さとで、積み本から一冊手に取って読みはじめてみました。

序盤入り込むまでに少々時間を有したのですが(慣れない漢字地名表記に手こずりまして……。)、徐々にエンジンがかかってきて、特にフミとタエがそれぞれの「夢の交換」をした姿に、惚れ込んでしまって。それからは一気読み。
頁数もお話の内容もかなりのボリュームがあり読み応えばつぐんで、読み終えた後は濃密な世界観にどっぷり。くらくらしました。

以下少しネタバレ感想ですので一応ご注意を。


なにかとしんどいばかりの境遇で、時に心の澱に囚われても、誇りを持って生き抜こうとする女性たちの姿が、とにかくまぶしく格好いい。のひとこと。まさに泥の中にいくつも花開く、清楚な大輪の花のようです。
すさまじいエネルギーが物語の中に内包されているというか、読んでいるとその熱気に充てられ私の心も熱く燃えているような。

まずはやはり主人公のフミ。
生まれ落ちた時から逆境続きだったフミが、本当の本当に自分自身の力で身をたてて大陸に渡り、舞の才能を、血のにじむような努力で磨き上げて運をつかみ取り、華やかな世界で花を咲かせていく姿が、なんて格好いいんだろう。
しなやかで強く誇り高い魂、清濁併せのむ彼女の努力の姿がすごい。
そしてフミの親友、可憐で芯のある美少女タエとの友情が、私は好きすぎる。
女郎になりたくないと泣きべそをかいていたタエが、フミとお互い感化されあってといいますか、どんどん化けてゆき、美貌と賢さを鳴り響かせ男をころころ手の内で転がすお職になっていく様が、ぞくぞくしました。
まさに小桜、紫桜。
年月を経てそれぞれの立場から「酔芙蓉」を背負って盛り立てていく親友二人、お互いの旦那のこととかたわいないことで肩を寄せ合い笑いあう二人の姿がもう、とてもとても好きだー!!!(ダブルヒロインもの大好き人間です。)
ときに互いに嫉妬したりマイナス面も含んでの友情がかえってリアルです。女の友情ってそれでこそという感じが。
文庫版の表紙イラストのふたりの表情がとてもイメージ通りです。
タエの歌で角兵衛獅子の舞をするフミ、というふたりが、やっぱりいちばん好き。

フミの前に現れるふたりの男性。豪華!
幼い日のフミを救い、ずっと彼女の心の支えになっていた初恋のひと、山村さん。
山村さんの荒削りな頼もしさ、優しさはたしかによろめきます……危険な香りが特に再会時にはぷんぷん漂ってきますが、そこも魅力の一部なんですよね。彼女と甘いひと時を過ごし、同時に計算し芙蓉を利用しようとしているところとか、なんか彼女がこんなに夢中になっているのなら仕方ないのかとか思ってしまう!あのロシア料理屋さんの雰囲気はとても素敵でした。
一方、芸妓芙蓉の前に現れたのは、華族の次男坊・黒谷さん。
育ちの良いお坊ちゃんという感じでちょっとヘタレなところはあれども、ある日の彼の過去の打ち明け話に、ぞくりときました。
私はどっちかというと黒谷さん好きです。個人的にフミと最終的に一緒になってほしいなと思いますが、たとえそれが叶わなかったとしても、彼には幸せになってほしい。
黒谷さんの不器用ででも誠実な想いが、報われるといいな。どういうかたちになるのか分からないけど。
黒谷さんに自分を惚れさせてみせると啖呵をきったフミが、格好良かったなあ。ふふふ。
この巻の最後、山村さんか黒谷さんか、どちらの道を選ぶか悩みに悩みぬくフミの姿には、はらはらどきどき。
彼女が積み重ねてきたものを経てこその選択が、良かったです。やっぱりどちらの道をとっても後悔するものですよね。
私も何だかこの場面のフミの台詞に心励まされました。

そしてくまさんことベリーエフ氏は貴重な和み系キャラでした。
あと小琳のくれた不器用さ優しさも好きでした!

フミの姉女郎たちの生きざまも色々壮絶。
美しく儚げで優しい蘭花ねえさん。彼女に憧れるフミには微笑ましくなり、そして彼女が隠していた覚悟には寒気がしました。どうしてこんな生き方しかできなかったんだろう。
粋で辛辣な物言いはするけれどフミとタエのふたりをちゃんと見守って励ましてくれていたお千代ねえさん、私も最高に格好いい方だと思いました。最後まで。泣きました。
お千代さんとおマサさんの人生を光と影とに違えてしまったものが、なんだか本当にやるせなくて胸がつまりました。
女郎として稼ぐ娘の人生に寄生して生きる両親のエピソード、えぐいな……。
ウメさんも女将さんもフミにとことんきびしかったみんなみんな、最後まで読んでいくと愛着がわいてくるというものでした。
あんなでもたしかに女将さんはみんなの「かあさん」だったんだなあ。と。

国と国との関係、政治的な駆け引き、知識不足の私が語ってもあれなので触れませんが、かっちりしていて読み応えありました。
おナツさんの人生のエピソードがまた印象的でした。
山村さんはどういう立場でどういう役割を担っているんだろう……。
京劇の彼らは、またフミと出会うことがあるのでしょうか。

はじめは慣れなかった独特の固有名詞の読みも、慣れてくるごとに響きも魅力に思えてくる不思議。
女郎たちの花の名前の響きが独特の艶っぽさを醸し出していてそれぞれの気性にしっくり馴染んでいるようで、良かった。
大きな河の流れの描写にも圧倒されました。

タエ主人公の『桜の夢を見ている』。
タエが魅せる美しく艶めいた夢にうっとりし、そしてドミトリーさんの不器用な純愛、恋人たちを襲った時代の試練、そして桜の花の結末に読んでいて涙があふれました。美しいお話でした。とても良かった。
タエ視点からの本編終了後のフミと黒谷さんたちのひとこまが読めたのも良かったです。
ただ、この流れだと、タエはこれで物語の表舞台からは離れるのかな。ちょっとそれは寂しいな……。

続きはこれから読みます。
またがつんと読み応えあるお話だと思うので、今からはらはらどきどきしています(笑)。
フミの恋は一体どうなっていくんでしょう!

カテゴリ: 歴史もの

タグ: 須賀しのぶ 

『斜陽の国のルスダン』並木 陽 




13世紀グルジア。
天真爛漫だった王女ルスダンは、最愛の兄の死によって女王に即位。
東方から次々と襲い来るモンゴルとホラズムの脅威。廷臣たちの思惑。
そしてルーム・セルジュークから人質としてやってきた王子・ディミトリとの絶ちがたい絆。
「先見の明あるヨーロッパの防衛者」とも「美しく淫蕩な愚昧の女王」とも呼ばれた、一人の女性の素顔を描く。

こちらは同人誌の物語になります。
Twitterで偶然見かけて心惹かれ、ちょっと調べてみたら、アマゾンで購入できる!ということで、ぽちりと。

ヨーロッパで最初にモンゴルと戦った、グルジアの女王様・ルスダンの人生の物語。
ジャンルとしては世界史もの少女小説。
ふつうの文庫本よりはちょっと薄いご本です。
表紙のイラストが細部まで描きこみが素晴らしく美しいです。昔の装飾みたい。

ほとんどタイミングで購入したのですが、このお話、素晴らしく私好みでした!!
お国も時代もほとんど未知のジャンルでしたが、全然問題なく面白く読みました。
薔薇の妖精さんのような天真爛漫な美少女と、人質としてやってきた異国の美貌の王子様、密かにお互い想いあうふたり、一幅の絵のような光景にすでに心惹きつけられました。
歴史もの少女小説、最高です!!!
短いお話で、力強く歴史の流れを記録するための文章。みたいな印象を受けました。
さらりと流れてゆくキャラや出来事も多いのですが、それが一層想像をかきたれられるといいますか。

幸せで光り輝いていた時代から、外敵の容赦ない侵攻にさらされて、徐々に傾いていくグルジアの国の姿に、何とも言えない心地になりました。
ルスダンもディミトリも、グルジアの忠臣たちも、それぞれ精いっぱい頑張っているのに、どうしても上手く報われなくて、いつしかふたりの絆まで少しずつすれ違っていってしまっているのが、辛い。
誰が悪いというものでもなく、時代の容赦ない流れがグルジアという国をのみこんでゆくのが、ただただ切ない。
滅びへと傾いていく悲しい物語の中でも、だからこそというか、きらきら美しいエピソードが随所に散りばめられているのが、良かったですねえ。
ルスダンは優秀な女王というよりは、困難に途方に暮れ、悩み苦しみ決断を下し、激しくひとを愛し、厳しい時代に必死に生き抜いたひとりの生身の女性として、読むことができました。

読んでいて何より素敵だったのは、やはり、ルスダンとディミトリの夫婦のお互いへの愛と分かち難き絆でした。最後まで。
幼い日のお互い結ばれるのをあきらめていたころの無邪気な幸せな時代も良かったし、ルスダンの女王即位後味方の少ない中で支え合いつつ孤独に頑張る二人も良かったし、決裂してなおルスダンのためのディミトリの献身にも泣けましたし、もうとにかくすべてがいとおしかったです。

お祭りに抜け出してダンスを踊るルスダンとディミトリの場面がとても好きでした。松虫草の少女も。
プロローグのルスダンの選択の理由が分かったところで、また涙。
ラストも寂しいものでしたが、ふたりトビリシに帰ってきたんだなあ、とすとんと思える幸せで美しい場面でした。

脇役キャラの中では、ジャラルッディーンと腹心の書記官ナサウィーがお気に入りでした。
ディミトリが身を寄せたのがジャラルッディーンの下だったのは、確かに幸福だったのだなあと、彼が最後に贈った言葉でしみじみしました。

やはり世界史はあまり分かっていないんですが、モンゴルの台頭や十字軍といった細切れの世界史知識が、このグルジアという国の立場から見るとこういう風にうつるのか、とかいちいち新鮮な思いをして読んでいました。
イスラム教とキリスト教のお話も自然な流れで読めました。
あと作中存在感ばりばりだったルスダンの母女王・タマラの時代の物語が気になります!


ああ、なんだかとても良いものを読みました。満足。
出会いに感謝です。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪


カテゴリ: 歴史もの

タグ: 並木陽 

『紅霞後宮物語』雪村 花菜 




三十三歳の女軍人・関小玉は、かつての相棒にして今は皇帝となった男に頼まれ、なぜか後宮入り。そして一年後、なぜか皇后になってしまう。
いきなり夫婦になってしまった文林との関係に戸惑い、皇后としての地位に自らの価値をいまいち見いだせない小玉だが、持ち前の前向きさとおおらかさで、型破りな後宮暮らしをはじめる——。


富士見L文庫の新人さんのお話。中華風後宮もの。
かつくらで興味を持ちネットで色々評判を読んでいても面白そうで、ここのところずっと読んでみたかったのです。

少女小説風に華やかながら、線が鋭く甘さがさほどない表紙イラストが、このお話の雰囲気をとても良くあらわしてる。
特に女性よりむしろ男性に好かれるという皇帝の色気ある美貌が……(笑)。

小玉のざっくばらんな語り口がなかなか読みやすいなとぱらぱらめくり、しだいに面白くなってきて一気に読んでしまいました。
若干文章のあらは感じましたが、ほとんど気にならないほどにストーリーとキャラに勢いがあり引っ張っていかれました。
なんといっても小玉という女性が、とても魅力的なキャラクターなのです。
ざっくりとおおらかで快活で情にあつく、破天荒に行動しているようで実は賢く色々わきまえている。軍人としては天才。
年齢にふさわしい落ち着きも兼ね備えた小玉、格好良すぎる!

彼女のなんちゃって(?)後宮ライフは、後宮らしい陰湿な嫌がらせもさしてダメージにならない、というかそもそも嫌がらせとして認識もされない、あっけらかんとコミカルな感じで、読んでてとても痛快で楽しい。
女らしさが全くないかと言えばそんなこともなく、皇帝の三男を心をこめ世話し育て上げている様がこれまた素敵。赤子にも好かれるよいひとなんですよねえ。
年若いお嬢さんたちがぱたぱた小玉のファンになっていくのも納得の展開なのでした。
高飛車でやり手の皇女様とのエピソードが小玉らしすぎる。あの抱擁の場面がしんみり良かった。確かにこれは皇后にならなければ得られなかった再会ですね。親戚になってるしね(笑)。そして贈り物選びの心の行き届きようが素晴らしくて彼女の実力を痛感したのでした。
寵愛の謎を探りにきた李才人もあっさり陥落。彼女は確かにいい味方になってくれそうです。

けれども彼女はけして好きで後宮に来たわけではなく。文林の事情があるのだろうと後宮にい続けてはいるけれど、肝心の彼の説明は、歯切れが悪く。
文林という皇帝が、なんだかものすごくよくわからない人なんですよねえ!(話の筋には直接関係なさそうですが、彼が皇帝に即位した経緯もそもそもよくわからない。)
小玉への情だけは分かりやすく透けてみえるので、そこは可愛げあります。文林視点での語りを読んでいると、このままでは彼がちょっと不憫だな~。なんかだいたいは文林の方が良くないんじゃないかという気もするのですが……。
我が子や後宮の他の妃たちへの執着の薄さと、小玉への想いの温度差が、ここまで極端なひとも、珍しいんじゃないですかね。
小玉は小玉で、彼の想いに気づいていないわけではなく、ただ彼女自身今は気持ちを持っていないというし。
大人のこじらせた関係は難しいな!
小玉はそれでもそうなったらほだされるんじゃないですかね、という清喜の意見を、信じたいのですが、どうなんでしょう。
まあ、「皇帝」であるのだから。確かに、これは、重い。
そのあたりの悩みを、梅花の助言を経て、自分なりに答えをだして後宮で勤め上げていく決意をする小玉のくだりが、良かったです。割り切りすぎだよ小玉。彼女らしいけれど!
最後までまるで甘い展開にはなりませんでしたが、こういう大人のしがらみありのあれこれも、ふとしたところでときめいたり、面白かったです。
三十代過ぎの女性として人生を色々思い悩む小玉の姿は、年の近い私には特になかなか共感を得られるものでした。基本前向きな小玉、そこまで深刻には悩まないので湿っぽくはなりませんでしたしね。

小玉の弟分?で宦官になってしまった清喜に、小玉と文林の腹心の女官・梅花のふたりが、小玉と文林のことをそれぞれの立場でよく理解していて、たいへん良い仕事をしてくれていました。
その他脇役キャラも癖がつよい人が多くて面白い。馬屋のご老人が好きでした。
どこであっても覚悟を持ち凛と生きるひとは格好良いなと思いました。

私が今まで読んできた中華風小説の中では(本格的なものはほとんど読んでないけど)、一番、かの『後宮小説』に近い感じのお話だったなあと、読み終えて思いました。
このお話、どうやら続編も出るらしいと聞いたので、楽しみです。
文林、報われるといいんだけどな。


カテゴリ: 歴史もの

タグ: 雪村花菜 

『夢も定かに』澤田 瞳子 




聖武天皇の治世。
故郷の阿波国から采女として仕えるために上京してきた十八歳の若子。
同室になったのは、しっかり者で賢い笠女、愛らしい容姿で数々の男性と浮き名を流す春世。
器量は十人並みで不器用、みずからに自信もない若子も、宮中で様々な出来事にもまれるうち、次第にたくましさを身に着けてゆく——。

聖武天皇の時代に宮中に仕えた田舎出身の采女三人娘がヒロイン。
ネット上で存在を知り設定に惹かれて手に取ってみました。

日本古代史&女の子の友情ものが大好きな私にはとても美味しい物語でした。
若子と笠女と春世、出身地も性格も特技も全然違う同室三人娘が、足並みが常にそろっているわけでもないのだけれど、協力し合い、陰謀うずまく後宮で生き抜いてゆく姿が、良かった。
深山くのえさんの少女小説シリーズ『かぎろひさやか』の世界だなあ。
宮中でお仕事をしていたごく普通の女の子たちがヒロインのお話ってあまりないので新鮮ですよね。とても楽しかったです!
後ろ盾もごくささやかな下級女官の身の上で、それゆえしがらみもなくある意味気楽なんですよね。彼女たち。
ロマンスは、『かぎろひさやか』よりは大人風味。でもロマンスはけしてメインではないのが良かった。女たちの絆の方がずっとずっと強い。
思っていたより読み心地はライト。天皇に仕える身分でも素は十代の娘たちの行動に、ときどき、ああ、若いなあ……と感じ入ったり(笑)。

はじめはすべてにおいて頼りなくいじけていた若子でしたが(まあ、妹の代わりに出仕した……という彼女の事情を考えれば無理ないな……)、色々な事件や陰謀に巻き込まれ、笠女や春世に助けられつつ、次第に後宮での自分の場所を、それなりに築き上げていく様が、良かった。
同室の娘その一。笠女。出身地が私の住まいと近くてとても親近感を覚えました(笑)。学問好きなのに女だからと正統に評価してもらえず必死に肩ひじ張っていた彼女も、ある心あるひととの出会いにより、道が開けることに。
同室の娘その二。春世。十七歳の少女にして藤原四家の麻呂の愛人で一児の母。すごいな!彼女の独特の優雅でけだるげな口調やしぐさが采女たちの中でもだいぶ異質な雰囲気で、男君たちとの関係についてもさばけていて、なんだか私は彼女が妙に好きでした。離れて暮らす息子の浜足くんに会いに行く話は浜足くん利発な少年だったけれど、ちょっと、切なかった。
この三人が、なんかすべてがばらばらなんですけど、嫌味な上司や同僚とのいさかいや仲間たちの危機に対し、協力し合う姿勢がしだいにしっくり馴染んできて、良いんですよね。

歴史上の有名人物もお話にしっかりからんできてそちらも楽しめました。
お妃様や皇女様達の権力争いはやはりしんどそう……鶯事件の井上内親王が不憫で凛としたものをもっていて好きでした。彼女のこの先の人生をなんとなく知っている身には複雑だなあ……。
麻呂の愛人である春世の姿を普段見ている若子が、ああいう選択をするとは、意外でした。流されただけと言えばそうなのかもですが。
房前氏、確かに冷徹な権力者でありながらものごとの道理をきちんと持っていて、格好良かったです。淡い好意も分かります。

ラスト、のっぴきらならない危機に追い込まれてしまった同僚を、若子が女の絆を優先させきっぱりと守り抜く場面は、良かった。
春世も、最後に安らげる人を見いだせて、あの結末になってしまったのは切ないけれど、春世にはそれを同情するのは似合わない。かなあ。

読了後にネットで検索してみると、若子、笠女、春世、それぞれのその後の人生がほのかに辿れるのも、心憎い演出でした。
年月が経っても、特に若子と笠女あたりはときどき会っては親交を深めていたんじゃないかな。そしてときどきは、春世もお忍びで上京してきてお互いの近況話で盛り上がっていたんじゃないかな。想像してみる。

歴史もの少女小説好きさんには、特に楽しめるお話ではないでしょうか。おすすめです。


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 歴史もの

タグ: 澤田瞳子 

『カーリー 3.孵化する恋と帝国の終焉』高殿 円 

カーリー <3.孵化する恋と帝国の終焉> (講談社文庫)カーリー <3.孵化する恋と帝国の終焉> (講談社文庫)
(2014/10/15)
高殿 円

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インドの王国のひとつ、パンダリーコットにあるオルガ女学院で、十四歳からの時を過ごしたイギリス人の少女・シャーロット。
彼女の得たものは、人種も性質も様々な同級生たちとの友情、何よりも大切な親友・オニキスの瞳を持つ美少女・カーリーとの絆——。
しかし第二次世界大戦の影響でオルガ女学院は閉鎖され、インドを離れたシャーロットは四年の後大学に進学する。
相変わらず英国からインドへの想いを募らせ、カーリーとの再会を願う彼女は、パーティーの席でインドのカプールタラの美貌の王子・ル・パオンに驚くべき提案を持ちかけられる。
インドに入国するためには、彼の婚約者となればいい、というもので——。

『カーリー』シリーズ待望の新作、第三弾。
私がこのシリーズを読みはじめたのは講談社文庫の新装版が出たあたりで、ファンになってからまだ日が浅いのですが、にわかファンなりにとても楽しみにしていました。

第三弾がシャーロットの大学生時代からはじまるということは、今年のかつくら春号ですでに読んで知っていたので、ふむふむと。
シャーロットがすっかり秀才の女子大生に成長していて、びっくり!頼もしいです!賢いヒロイン好きなので嬉しい。
それでもインド、カーリーへの情熱、カーリーのためならどんな大胆な行動も勢いでとってしまえるところは、昔のシャーロットのイメージそのまんまで、呆れるやら安心するやら(笑)。

読み応えのある歴史ものでありながら安定の少女小説ストーリー、堪能できました。すごく面白かったです!
歴史や国の制度やかけひきや、飛ばし読みしてしまった部分も多々ありましたが……。このあたりの世界史まったくわかってないな私……。


以降の感想は一応ネタバレありでお願いします。

シャーロットに驚きの提案をしかけたル・パオン。
価値観の違いにときどき唖然としつつも、シャーロットのことを常に面白がっている風情なのはおいといても、カーリーとはまた別な感じで魅力的な王子様でした。まさに孔雀。
彼もまた母親のことで屈折したものを抱えていそう。
シャーロットのおめかし攻めは、大変そう……と同情しつつも、豪華な衣装や装身具やあれこれの描写が豪華で美しくて素晴らしくて、これぞ少女小説!
インドの民族衣装がどんどん出てくる少女小説なんて読んだことがないので、よけい楽しかったです。

シャーロットがみるみるうちにカプールタラの王子様の婚約者に仕立て上げられ王宮に乗り込んでいくの、あっさり上手い具合にいきすぎてて何かの罠なんじゃ……とか若干不安に思いつつも、物語は止まってくれず、続きを読まずにいられません。
女同士の品定めも知略で乗り切ったシャーロット、すごいな!
ミシャー姫との友情は心和みました。ミルクのあれなんて、一読目ではもちろん全然わかりませんでした。

シャーロットと彼女のパパとのつかの間の会話が、なんかお気に入りの場面でした。私が思っていたより父親と娘としての情が感じられて。
シャーロットの家族といえば、ちらりと出てきたフェビアンも、子ども時代思っていたほど根性悪の男の子でもなかったのかなー。ヘレンにも何か事情はありそう。

そして、なかなか出てこないカーリーにシャーロット同様じれじれしていたら……そこから出てくるのか!やられました!ある意味昔と同じ手を使っていたのに、全然気づかなかったよ。
再会の場面は本当にわずかな時間でしたが、たいへん濃密な逢瀬で(変な意味ではなく)とても心ときめきました。
冷静沈着ですべてをわきまえている王子様なのに、シャーロットのことに関してだけはまるで子どもで、焼きもちもやいたり執着したり、昔と変わってなくて、たまらなく懐かしく嬉しい気持ちになりました。
……書いていて思ったけれど、逆にシャーロットも、まさにカーリーのことに関しては、そうなんだよな。

そのあとミシャー姫が語ってくれたりほかの人が語ってくれたりで、カーリーの背景の大部分が、ようやくつまびらかに。
「カーリー」という名前の由来や彼の特殊な育てられ方に、底知れないものを感じました。
ミシャー姫とシャーロットの友情が壊れなくてよかったです。

友情といえば、かつての友人たちとの再会の場も用意されていて、女同士仲良しさんたちの姿が大好きだった私はとても嬉しかったです。
とはいえ全員そろうのはかなわなかったというのが、時代や色々制約を実感させてくれて、せつないものがありましたが。
ミチルはシャーロットとはまた全然別な方向で素敵な女性に成長しているなあ。ミチルの生い立ちエピソードも読めました。行動派だなミチル!
あと、ベリンダがここまでパティのためによくしてくださるとは。素敵な女性だったんですねえ。
ヘンリエッタもミチルもパティも、皆優秀な分よけいに、複雑でむずかしい立場にいるようで、うーん、上手くいかなくて歯がゆい気持ちになりました。
再会後の事件で、シャーロットの立場もこれからどうなっていくか……といったところですが。
(いや、そもそもル・パオンとは、当初の計画通りすんなり離婚できるものなの?ほんとうに?)
ハリーの思惑も気がかり。

シャーロットのパパの告白からの真実は、ああ、やっぱりそういうことだったんだなー、と。
カーリーの態度から、そういう意味での禁忌をまるで感じなかったので、まあ、うん。
でも今の二人の立場だと、本当に、いっそ姉弟であったほうが、しあわせなのかしら。せつない。こんなにお互いがお互いしか見えていないのに。

ただひたすらカーリーのためだけにこれからも戦っていく決意をしたシャーロットの想いが、どうか、今のカーリーにも、きちんと届きますよう。
そして本当にハッピーエンドになりますよう!今一番気がかりなパティはじめ、みんな一緒に!

講談社文庫のサイトや小冊子やでイラストも楽しめるんですが、成長した登場人物たちの姿がもうみんな麗しくて素敵すぎます。必見です。
シャーロットの知的で楚々としたなみなみロングヘア姿もよいし、なによりカーリーの格好良さといったらもう言葉になりません。
やっぱり私はル・パオンよりもカーリーを押しますよ。うん(笑)。
ミチルのエキゾチックな美貌にもどきどき。
そしてカーリーは新聞でシャーロットの婚約記事を読んでおだやかではいられなかったんだな、やっぱり。

早く続きを読みたいです。どきどきどき。


ここ何日かにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: 歴史もの

タグ: 高殿円 

『天の梯 みをつくし料理帖』高田 郁 

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(2014/08/09)
高田 郁

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「食は人の天なり」——源斉の言葉に触れ、料理人として自らの道を見出した澪。
その一方で、吉原のあさひ太夫こと野江の身請けについて、懊悩する日々が続いていた。
つる家を離れて、鼈甲珠の商いをはじめた澪。悲願がかなう日を信じて——。
「雲外蒼天」を仰ぎ見る、堂々のシリーズ完結巻。

『みをつくし料理帖』シリーズ、ついに完結巻が出ました!
前巻の告知から、待ち遠しいけどさびしい、でもやっぱり早く読みたい……複雑な思いで待っていました。

先週末の大雨の中書店に出かけて入手してきたはいいものの、読みはじめるのがもったいなくて。結局、週はじめの電車の中で、読みはじめました。
ひとつひとつのエピソード、皆の人情に楽しそうな掛け合い、美味しそうなお料理が、疲れた心に染み入って、励まされるような、元気をもらっているような。
最終話まで進むと、もう途中で読み進めるのをやめられなくなって、最後までひと息に読んでしまいました。
ああ、なんて素敵なラスト。
なかなか上手く言葉にあらわせないけれど、本当の本当に良かったです。
表紙のごとくに清々しい「雲外蒼天」が、心の中にいっぱいに広がりました。

いつもの通りに各話ごとに感想を。
ネタばれ注意のため、今回は追記にたたむことにしますね。

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カテゴリ: 歴史もの

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