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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『下鴨アンティーク 白鳥と紫式部』白川 紺子 




京都は下鴨、鹿乃が亡き祖母から引き継いだ蔵の不思議な着物も、残り少なに。
最後の「桜の園」と名付けられた着物は、書置きを残して失踪した野々宮家の女性の持ち物であったという。
「神隠し」に遭ったという彼女の真相、そして鹿乃と慧、良鷹がそれぞれ未来に受け継ぐものとは——。

『下鴨アンティーク』待望の新刊でした。
クライマックスではあるけれど最終巻ではないということで、どういうことだろう?とどきどきしながら読みはじめてみる。

淡いパステルカラーの可愛らしく美しいイラスト入り表紙を開いて読みはじめてみると、暗くて寒い十二月の夜から、ひな祭りのはなやいだ雰囲気の京都へと、私の心は一気にトリップ。
やはりどの頁をとってみてもひとつひとつの言葉まで愛おしくて、読み終えるのが勿体なくちまちま少しずつ読んでいってました。

タイトルも「紫式部」に帰ってきた通り、今までのシリーズの内容もいくつか繋がり、美しくまとまった読後感。
アンティーク着物や自然描写や各種小物づかい、古典文学との絡め方も相変わらずとても素敵でロマンティック。
そして作品の雰囲気や登場人物の言葉遣いが何とも言えずに懐かしくて慕わしくて、読んでいて胸がいっぱいになってしまいます。
ロマンス要素も私好みぴったりで最高です。きゅんきゅんです。

今回は特に鹿乃ちゃんと慧さんがさりげなく甘々すぎて、読んでいてほおが緩みときめきがとまりませんでした……!
実際にラブラブな場面がたくさんあったかというとそうでもないんですが、日常の延長線上のさりげない場面のひとつひとつが、あまい。手をつないだり今までと同じことをやっていても、意味がまるで違うという、ふたり独特の距離感が、心ときめきます。
鹿乃ちゃんといられればそれだけでうれしい、鹿乃ちゃんのごはんを食べられるならなんでもうれしい、とか慧ちゃんのストレートな物言いによろめく(笑)。
最愛の鹿乃ちゃんを取られてしまって拗ねている良鷹が色々な意味で気の毒でしたが。
それでも前巻のなげやりな感じは大分なくなっていて(さすが真帆さんはよく見ている)、やっぱり鹿乃と良鷹は野々宮家の仲良し兄妹で、そういうのを改めてしみじみ実感できたのが、良かったです。
(それでも内心複雑で面白くない良鷹と慧の攻防はなかなか笑えました。ごはん当番とか。かと思えば鹿乃ちゃんに冷たくされて本気でショックを受けている良鷹お兄ちゃんがもう本当に……鹿乃ちゃん可愛いですもんね!)


ではではネタばれ込みで感想を少々。

『雛の鈴』
上にも少し書いた通り、序盤の鹿乃と友人二人のひな祭り女子会の場面が、三人それぞれの着物姿の描写も華やかで美しくて、一気にのめりこんでしまいました……!
笑顔の梨々子ちゃんと奈緒ちゃんにたじろいでいる慧ちゃんがちょっとおかしい。(私も未だにりりちゃんの「あほちゃうん」は強烈に心の中に残っていたりする……)
引千切とははじめてきくお菓子でした。ひなまつりらしい響きでおいしそう。
千賀子さんの事情を辿っていくお話は確かになかなか辛くぐさりときましたが、刺繍のおひなさまの優しい表情、手鞠の鈴のほんのりした音色、お母さんの愛情、色々なものがじんわり灯ってゆくラストで、芙二子さんと鹿乃と慧と良鷹がそれぞれの役目を持って千賀子さんの傷ついた心を解きほぐしていったような感じで、良かったです。
お妃だったのに離縁されたという淡島神の伝説もなんかひどいな……そして淡島神に縋ってきた女性たちの境遇にも思いをはせてしまう。
良鷹作のローストビーフがまたおいしそうです~!!

『桜の園』
野々宮の女たちの受け継いできたもの、受け継がれていくもの、ラストの桜の着物と鹿乃の場面が、とても印象的でした。
桜の花の不思議の描写が美しくていつまでもひたっていたいくらい。
時の流れの大きなスパンに途方もない心地になりました。
確かにこの巻において、鹿乃ちゃんは「巫女姫」なのだなあ、と、いたるところで感じましたっけ。
そして良鷹は民俗学研究とか色々な側面からの鹿乃のサポート役というか、対になる存在。
ふたり兄妹の血のつながりを、確かに感じたのでした。
英子さん、駆け落ちで家を出たというイメージの割には悲壮感がなく生き生きと賢い女性だったのだなあというのが伝わってきて、清々しい笑顔が目に浮かぶよう。
三人で車で吉野に出かけるというのもなんというか象徴的な感じがしました。(鹿乃まで神隠しにあったら困る、と本気で思っているっぽい慧さんに微笑ましさを覚えると同時に彼の不安も分かるというか。あ、そしてもう義弟になるのは確定なんですね。ですよね、プロポーズも済んでますしね)
鹿乃と良鷹合作のオムライスの場面も好きでした。
そういえば、私波津彬子さんのまんが『異国の花守』が昔からすごく好きなのですが、桜の花の受け継がれてゆくイメージは、ちょっとあのまんがのイメージに重なるところがあって、また素敵でした。(金沢が舞台の現代もの少しファンタジー少女漫画です)

『白鳥と紫式部』
締めは良鷹と鹿乃視点が交互にくるスタイルのお話。
良鷹の心持ちの方にも、思いがけない出会いもあり一区切りがついたようで、しっかり物語がまとまったというか、ほっとしました。良かったです。
鹿乃のことだけでなく、両親の死から未だ立ち直れていなかった良鷹の心の傷は、相当だったと思うので。
これまでの良鷹&真帆メインのお話っぽく人間のどうしようもない醜さや翳がおもてにでてくるシリアスなお話だったと同時に、救いもあって、良かった。
利光さんとていさんの過去の恋物語は、切なくてやりきれなかったなあ。『源氏物語』の『藤壺』とは、そういうことか。
幸ちゃんの境遇もやりきれなかったです。
でもお父さんに似て、賢くて確かな目を持っている子だな。
鹿乃ちゃんに懐く幸ちゃんが愛らしかったです。確かに鹿乃ちゃんと幸ちゃん似ている。
良鷹、嫁さんより先に子供をもらうとは、なんというか良鷹らしいというか。まさか白露の言葉がこういうかたちでかえってくるとは思いませんでした(笑)。
良鷹のハンバーグサンドイッチもなんだかとってもおいしそうでした。良鷹が作る洋食は独特のノーブルな?センスがとても彼らしいと思う。
慧さんも鹿乃ちゃんとお料理ちゃんと一緒に作れたみたいだし、良かったです。
あとお菓子の家再び、にもほのぼの。

良鷹と真帆さん、相変わらず甘さは全然なかったのですが、真帆さん以上に良鷹を理解し寄り添えるひとは今後まず現れないと思うので、なんとかくっついてもらえると、私は嬉しいんだけれどな。どうなるんでしょう。
真理子さんも頼もしい女性でした。

白川先生のあとがき、巻末のその後の短いお話、三周年フェアのスペシャルコンテンツ、みんな読みました。みんなよかった。
とりわけ糺の森にて薔薇と春野さんが印象的でした。
確かに亘さんと春野さんはイメージが似ている。

やはりコバルト文庫の少しお姉さん的少女小説として、このシリーズは傑作だと今回も読んでいてしみじみ感じました。
春には番外編が出るとのこと、終わってしまうのは正直寂しくて悲しくて仕方ないのですが、楽しみです~♪♪


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 白川紺子 

『契約結婚はじめました。椿屋敷の偽夫婦 2』白川 紺子 




「椿屋敷」と呼ばれる一軒家に住む柊一と香澄は仲の良い若夫婦。しかしふたりの内実は、訳ありの偽装夫婦。
ある日、柊一の母・美幸が椿屋敷を訪ねてくる。
香澄は、美幸が自分たちの夫婦の「秘密」に気づいているのではと感ずる——。


白川紺子さんのオレンジ文庫のシリーズもの第二弾。
相変わらず「椿屋敷」という「家」が語り手であるところがユニーク。
ふんわりおだやかで品があって、ちょっと古風で懐かしいような雰囲気が、読んでいてたまらない魅力です。
洗練された文章は、読んでいて凛々しく美しい。
柊一さんと香澄さんの訳あり年の差若夫婦のじれじれも美味しいですし、ご近所の個性的な人達との交流話も楽しい。
そしてなにより若妻香澄さんが次から次へとこしらえる家庭料理やお菓子がどれも手が込んでいておいしそうで、読んでいておなかがすいてきてしまいます。

ちょうど秋の終わりの寒くてものさびしいひとときに読むと、ほんのり心温まる感じで、ちょうどよい。
今はおだやかに暮らしている柊一さんと香澄さんが、苦労してきた過去でそれぞれ心の内に抱えるほんの少しの翳が、隠し味。
ひねくれた思いを抱かずすんなり素直に温かさに浸れます。

椿屋敷で椿愛好家の柊一さんなだけあって、植物の描写はほぼ椿なのも、潔さがあって素敵です。
(その潔さは、椿の花そのもののイメージに通ずるような。)
椿という素材ひとつで、豊かにお話がふくらんでいく様が、いい。
ひとつひとつの品種の名前がまた美しく物語をはらんでいて素敵なのです。

『花の子』
章タイトルと物語の組み合わせが最高に好きです……。父と娘、亡き母親の愛情にぐっときました。
はじめはつんつんしていた桃子ちゃんが、香澄さんに次第に心を開いて懐いていく様が良かった。
最初の飲物の選択から、ホットケーキと朝ごはんのパンのお話、香澄さんの心遣いが秀逸です。
朝ごはんのホットケーキってたまに食べると本当に幸せなんですよねえ。
ちょっと難しいお年頃の桃子ちゃんだけどお父さんのこと本当に好きで案じていて、でもすれ違ってしまっていて、そこをそっと解きほぐした柊一さんと香澄さんの手腕がお見事でした。
晶紀さんのさりげない牽制に敏感に気づく桃子ちゃんはさすが女の子です。
最後の方の、さびしいときとか、かなしいことがあったときには、ご飯のことを考えるんです。あたりの香澄さんと柊一さんの会話がほのぼのこのふたりらしくてとても良いです。
ねぎとじゃこの卵焼きが食べたくて作ってしまった。ねぎの卵焼きって初めて作りましたが美味しかった。

『黄金を君に捧ぐ』
そんな卵好きの私には一層嬉しかった(笑)第二話。
黄金色の大きくてふわふわの玉子焼きを作る幸せ感に、力強く同意します。
奥さんの好みをちょっとずれて解釈してしまった旦那さんと今になって旦那さんの気持ちを知った奥さん、これまたほんのり優しいときめきエピソードでした。
そういえば黄色い椿ってみたことがないなあ。気づきませんでした。
香澄さんが作ったゴールデンケーキというのが気になる。シャルロットもおいしそう。
卵を落とした味噌汁も、味噌漬けのお肉も、さりげなく皆美味しそうなのですよ~。
最後で珍しく柊一さんが香澄さんに料理を教えている(笑)カルメ焼きのエピソードも微笑ましかった。

『星はいざなう』
文代さんと裕美さん、母と娘のふたりでずっと暮らしてきて性格も何もかも承知しているけれど、語らず知らないところもまだあって、なんというかこの関係が私はとても好きでした。
裕美さんが大人になり自立したひとりの女性になったからこそ、対等な関係というか。
文代さんの旦那さん語りに素直に愛を感じられたのは、だからこそかな、と思いました。
それはそうと、柊一さんと過去に関係がいっときあった裕美さん。
まさか香澄さんが契約結婚だとは思っていない裕美さんが、悪気なく香澄さんの弱い部分をちくちくしてしまっている場面が、ちょっと辛かった。そんなに気にすることないよー素直に言葉通り受け取ってればいいんだよーと、読んでいる私は思うのですが、香澄さんには伝わらないですよねえ。
揚げたてさくさくの海老フライの美味しさが伝わってきました。
柊一さんの食の好みを熟知していて、それがいかにとくべつなことかあまり分かっていない香澄さん、香澄さんに自分の好みを自然にリクエストして自然に甘えている柊一さん、なんというか読んでいて甘い……お互い無自覚だからこそよけいに甘い気が。
あと再びの晶紀さん登場。
柊一さんの「渡しません」発言、大人の男二人の開戦発言。
こんなこと言ってる割にいまだに自分の気持ちをはっきり自覚していない柊一さん、大丈夫だろうか……。
晶紀さんと笙子おばさんはふたりとも相当手強いひとだと思うので、ぼんやりしていると、香澄さんそのうち本当にかっさらわれていってしまいそうで、本当に柊一さんしっかりしてほしい。
アルバムの見せ合いっこもほのぼの。香澄さんそういえば一年前はまだ高校生だったんだよな……現代もので十九歳の若奥さんってときどき思わぬギャップにはっとします。

手強いひとといえば、美幸お母さまも。
香澄さん相手にどう出られるのかはらはらしていましたが、実際は、柊一さん自身以上に柊一さんが大切なものをちゃんと理解されていて、この方面には疎い息子を叱咤激励していて、ちょっとほっとしました。
天ぷらや五目寿司に変な意味がなくて良かった(笑)。

『すみれ荘にて—真夏の太陽—』
語り手が「家」だと、予想外の部分で、明らかになってなかった事実がときどき出てくるので、あなどれない。
檀君本当に若いな……育ちがいいな……微笑ましい。廣田君のコミュニケーションスキルというか世渡りスキルの高さと対照的でした。
絢さんと柳田さんとの過去のエピソードも本編とはまた違うテイストのお話で、これも良かったです。

香澄さんはなんというか、相手の心をごく自然に開き打ち解けさせるのが本当に上手いな、と今回思いました。
桃子ちゃんも裕美さんもあと美幸お母さんも、本来なら香澄さんにちょっと警戒心を抱き打ち解けられないような微妙な立場の女の人でも、こう、ふわっと。
言葉にするのが何だか難しいですが、得難い女性だと思います。
こういう性格の律儀な女の子だから、よけいに、遠慮が先立って柊一さんとの契約にしばられてしまっているのですけれど。もどかしいな~。

柊一さんもまた過去にトラウマがあるひとだから(だからこそお母さんにこれだけ心配されているのだろう)、女心に疎いのもまあ分からないではないのですが、真剣に晶紀さん笙子さんが今後脅威になってくるでしょうし、しっかりしてほしいな!
みんなに微笑ましく見守られている今の状態も良いけれど、もっと進んでもいいんですよー!なんて、外野だからこそ言えることですかね。

ああ、それにしても、スコッチエッグもやっぱりおいしそうだな……。

シリーズ三巻目も、あと『下鴨アンティーク』の来月の新刊も、とっても楽しみです。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 白川紺子 

『これは経費で落ちません!~経理部の森若さん~ 3』青木 祐子 




天天コーポレーションの経理課一筋28歳の森若さん。
仕事とプライベートはきっちり分けたい彼女だが、ここ最近はややペースを乱されがち。
そんな沙名子さんの日常は今日も賑やか。
仕事熱心だけど周りから浮いている契約社員、逃げ癖ありの困った社員、社内のトラブルにはからずも首を突っ込む羽目になる沙名子さんだが——。


『これは経費で落ちません!』シリーズ第三弾。
作中ではクリスマスも近づき黒タイツの森若さんでした。

いやーこのお話ますます面白いですね!!!
とにかくもう沙名子さんが最高です。
今回も不本意ながら冷静沈着に社内のトラブル処理に大活躍で、キレッキレで、仕事もできるし、本当に格好いいです。
私から見ると何歳も年下なのに、きらきら尊敬と憧れのまなざしを送ってしまいます(笑)。
通勤の電車の中で読んでいるとほんとうにたのしく元気になれる。

相変わらず社内のトラブル(未満なものもあり)は、すっぱり綺麗に解決するでもなくもやもやっとしたものも残るのですが、そこがかえってリアルで共感して読める。
もやもやしているのに読んでいてすっごくスカッとして気持ちいいんですよね~!
このあたりの塩梅が絶妙です。
やはり登場人物のキャラクターと心理描写がものすごくお上手だからでしょうか。さすが青木先生。
沙名子さんの内心の突っ込みが毎回面白く共感大でうんうんうなずきまくってます。
二巻三巻と重ねるごとに、キャラクターがしっくり馴染んで、きてますます面白くなってきたように思います!!

私生活でもきっちり完璧なペースを築いている森若さんですが、太陽のことでペースを乱されがちで、そのことにイライラしつつも受け入れている彼女が、一方でものすごく可愛らしい。
沙名子さん本当に太陽のこと好きで恋しているんですねえ。いいですねえ~ふふふ。
太陽も、相変わらずお調子者で軽いノリですが、すごく一途で健気だし、沙名子さんの独特なペースをそのまま受け入れて尊重しているし、だんだん私の中で好感度が上がってきました。
「太陽さん」「沙名子さん」名前でさん付けで呼び合っているふたりがふたりらしくて好きです。

あと沙名子さんの後輩真夕ちゃんも沙名子さんと別のレベルで共感できて沙名子さんを理解して尊敬している感じも好感度大きい。
やはり経理部員のお互いの信頼関係が好きだな~。トラブルがあった際のみんなの一致団結っぷりが良かったです。

順番に簡単に感想を書いてゆくと、まずは派遣社員の千晶さん。
これもまたデリケートな問題ですね……。千晶さんと自分を比べて落ち込んでいる真夕ちゃんのことをフォローしている沙名子さんの場面が好きでした。いやでも難しいな。
次に馬垣さん。この人はちょっと嫌だなー!!
やばいことがあったら逃げたくなるという心理はたしかにすごくわかるけれど、こうして物語として客観的に読むと、駄目さが俄然あらわになって、自分自身は本当に気をつけよう……と改めて思えました(笑)。
自分にミスが多いことを自覚していてこつこつフォローと努力を惜しまない真夕ちゃんの姿が好きです。
そして山崎さんが思っていたより曲者でした。
太陽視点の休日のトラブル話、沙名子さんの名探偵っぷりがすごすぎる。沙名子さんならそういうこともあるだろうと思えてしまう辺りが沙名子さんのすごいところだな(笑)。さんまの塩焼き→さんまの煮物になる下りが好き。でもやっぱり塩焼きが美味しいんですよねえ。
最後の由香利さんのお話は、落としどころが思っていたより深刻じゃなくてほっとしました。吹っ切れたようで良かったです。
婚活パーティーの場面は、ちょっと『恋のドレスと舞踏会の青』の舞踏会の場面を思い浮かべてしまいました。
バーンズ姉妹はあれからちゃんと幸せな生活を送っているかなあ。
沙名子さんと由香利さん双方に趣味仲間ができたみたいで沙名子さんの気持ちも分からないでもないけれど微笑ましい。


「——ありがと」
戻ってきた太陽へ向かって、沙名子は言った。
「何が?」
わたしを好きになってくれて。
「この間のマグカップ」     (84頁)

沙名子さん可愛い……!!(じたばた)


エピローグの真夕ちゃん視点も、沙名子さん視点とはまた別な風に社内の人間関係をのぞきみることができて、面白くて好きです。
千晶さんの態度が人によって違うのはやっぱり若干もやっとするな。馬垣さんも。
経理部の新人さん、ラストに登場しただけでもうかなり強烈なので、これからどうなっていくのか非常に気になります。
あと太陽が他でもない沙名子さんの恋人(ですよね)と、真夕ちゃんはいつ気づくのかな~。

あ、あと勇太郎さんはやっぱりか……!と由香利さんのお話の最後の方を読んでいて思いました。
そして沙名子さんのスルーが完璧すぎて、沙名子さんらしく、いや経理部女子らしくて、ずっこけました。
勇さんと沙名子さんならそれはもう沙名子さんも自分のペースを乱されることもなくお互い分かりあえて完璧なパートナー関係を作れそうではありますが、沙名子さんが好きなのが太陽である以上はしょうがない。というかやっぱり沙名子さんの恋人としては太陽ぐらいのゆるくて明るいタイプの方が良い気もしますし。
でも勇太郎さん今後、沙名子さん以外の女性を見つけることなんてできないんじゃなかろうか……と今から心配だ。デリケートなひとですし。
とかなんとか色々思ってしまい、個人的にはこの巻でいちばん盛り上がったのって何気にこの場面だったりしたのでした。
もしかしたら勇太郎さん単純にクリスマスの有給休暇の話題だったという可能性もあるけれど。
なんで私がここでこんなに盛り上がるのかって、(成立すれば)年の差カップルだからっていうのもあるかもしれないな。(つまりものすごく好み)

読んでいて笑って元気になれるお話でした。大満足♪
そして『舞踏会の青』を思い浮かべてしまったこともあり、『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』を久しぶりに読み返したい気分です。
青木先生の描かれるお仕事ができる女子が私は大好きなのですよねえ。と今回改めて思いました。
クリスやパメラといい『ベリーカルテット』のシャノンといい。


ここ一週間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 青木祐子 

『下鴨アンティーク 暁の恋』白川 紺子 




慧に想いを告げてから関係がぎくしゃくしてしまっている鹿乃。
そんななか、知人に紹介されたのは、蔵の着物に関わりを持つ青年。
彼の大伯母の椿の振袖を蔵から出してきた鹿乃だったが、描かれた椿がすべて落花してしまい——。

『下鴨アンティーク』の新刊を心の支えに最近は生きてきました。
うーん、やっぱりめっちゃ好きやね!何度も読み返しては、ずっと世界に浸りきっていました。
お着物や花や古典文学やひとつひとつのモチーフのロマンティックさやしっとり優雅で美しく流れるような文章、はんなりやわらかく響く方言、京都のたたずまい、そして少しずつ表に出てきた鹿乃と慧のロマンス。すべてがいとおしくてたまらないです。
物語のモチーフを一つのイラストに美しく収め描かれている表紙イラストもやはり秀逸。


ではでは、以下はネタばれもありの感想になります。


前巻がとても気になるところで終わっていた今回。
読み終えて、鹿乃ちゃん、良かった。もう本当に良かった。ほっとしました。
あのラストからまあこうなってしまいますよね、と薄々思ってはいた展開で、鹿乃ちゃん辛すぎるし慧の気持ちも分かるしで、読んでいて痛々しくて見ていられなかったのですが、いやあ、良かったです。
鹿乃と慧の恋の行方が今回のお話のメインで、あと今回際立っていたのは、普段ぐうたらな良鷹お兄ちゃんの活躍っぷり。
良鷹がどれほど鹿乃を大切にしていて彼女の幸せを願っているのかひしひしと伝わってきました。
あと鹿乃のお友達の梨々子ちゃんと奈緒ちゃん、慧のお父さん田村教授、恋敵であるはずの春野さんまで、みんなが鹿乃と慧の関係が上手くいくよう後押ししている感じがして、こんなにたくさんのひとたちがふたりを見守っているというところにも、頼もしく心があたたかくなりました。

不思議な着物をめぐる三つのお話が、すべて、鹿乃と慧の現在の難しい状況とどこか重なるものになっていて。
喜びも苦しみも内包し実ったロマンスを解き明かしていくごとに、ふたりの心や関係も少しずつ変化してゆき……というお話の構成も、素敵でした。
あと今回ますます、鹿乃ちゃんは周囲の手を借りつつもあくまで自分自身で着物のことに取り組み解決していて、確かに鹿乃ちゃんが蔵の管理人、巫女姫だというのも、納得というか、しっくり馴染んできているように思いました。
皆が鹿乃ちゃんに不思議と心を開き胸の内を打ち明けるのも、彼女の資質なんでしょうね。

『椿心中』
慧の返事にやわらかく微笑んだ鹿乃の場面が辛くてやりきれなかった。
そして「だって、生きてるやん」「慧ちゃんは生きてるし、死んでないんやから泣くことやないと思う」(58頁)の鹿乃の台詞が、胸にずしりとくる。鹿乃のために泣いてくれる友人二人の姿に私も泣けました。
満寿さんのたまごいろにかがやく海老ピラフもやっぱりとてもおいしそう。
「あたたかい料理というのは、どうしてこう、ひと噛みごとに胸の内側に染みこんでくるのだろう。」(57頁)
心中のお話は穏やかならず、古代神話の悲恋物語とも重なって、重たくて辛かった。
でもだからこそ、椿を祝福のものと変えたのが素晴らしく、稜一さんと紗枝さんのふたりが前向きな気持ちになれたようなのも嬉しく、そんなふたりに瀧子さんがこれからは力になってくれるだろうということが、心強い。
掛け算の愛、いいですね。鹿乃ちゃんらしい。
良鷹と鹿乃がドーナッツを食べている場面も好きでした。ドーナツとココアがおいしそうでよろめきました。
慧がなぞらえた『椿姫』の一節も胸を打ちました。
最愛の妹を慧に取られたと十年前からずっと拗ねていたらしい良鷹お兄ちゃんが気の毒で可愛かった(笑)。

『月を隠して懐に』
おさるさんがかわいい。
笛の先生と年下の奥様の恋のエピソードを辿り、自身の恋とも重ね合わせて、という鹿乃ちゃんの姿が印象的でした。
慧が母親の実家へ出かけ不在というのもあり、良鷹が本当に大活躍でいったいどうしたんでしょう(失礼)。
確かに、両親と祖父母を喪い一番つらさを抱えているのは、良鷹なんだろうな、と思いました。
鹿乃の髪をゆったり着物をきせかけたりする良鷹さんのかいがいしさといったらもう。
鹿乃さえいてくれればそれでいい、というのがね。泣けますよね。
真帆さんレシピのマヨネーズ入り玉子サンドがやっぱりおいしそうです。あの良鷹が気にいってまた食べたいというのだから相当ですよね。
そして慧が鹿乃の想いを受け入れられなかった原因のひとつは、両親の姿を見てきていたからこそだったのか。
田村先生と慧の旅館にて会話の場面も好きでした。
鹿乃のお守りを心のよすがにしている慧の姿にもぐっとくる。

『暁の恋』
梨々子ちゃんと奈緒ちゃん、良鷹お兄ちゃんが煮えきらない慧ちゃんをそれぞれたきつけにくる場面が好きだー(笑)。
春野さんも、最後までやっぱりよくわからないお人だったけれど、こうなってみるとなんだか気の毒だなあ。
最初は特に本気でもなく鹿乃にちょっかいを出していたけれど、そのうち本気で鹿乃に惹かれたということだったんだろうか。
カイロをふたつ持っていたところが、なんか、春野さん好きだなと思いました。
慧ちゃんの飾り気のないまっすぐな告白と、慧への気持ちは絶対に譲れないと腹をくくった鹿乃のふたり、本当に良かったです。ううう。
美根子さんと和泉式部と梅の帯のエピソードも良かったな。和泉式部の伝説って面白いですね。はるみさんも素敵な女性だなと思いました。
草餅と牡蠣フライが食べたくなってくる(笑)。ツナと白菜の玉子とじどんぶりも想像するとおいしそう!
最後のふたりデートの場面が可愛らしくて幸せすぎました。花尽くしの着物を着て初めてのデート記念に押し花を作ろうかという鹿乃ちゃんが可愛すぎて、それは慧ちゃんもめろめろでしょうと納得でした(笑)。
それにしてもさすがにここでプロポーズが来るとは思わず、早!
でもここで結婚の言葉が出てくるのもなんだかこのシリーズらしいし、生真面目で古風な慧ちゃんらしいし、なによりこれまで同居していて一緒に台所に立ち料理を作っていた鹿乃ちゃんと慧ちゃんはもう恋人を通り越して若夫婦的な空気をまとっていたし、うん、良いんじゃないでしょうか。
鹿乃ちゃんが幸せならば。
「おまえは地面に落ちてるものを拾うのが好きなんだな」
「地面が近いから、目に入るんや。慧ちゃんは地面が遠いから気づかへんのやろ」
なんて241頁のなんでもないやりとりもお気に入りです。

『羊は二度駆ける』
良鷹と真帆さんのお話。良鷹メインのお話はやはり気持ちブラックというか救われないお話が多いかな。白露が格好良かった。
ううん、鹿乃ちゃんが慧とつきあいだして喪失感に囚われている良鷹がなんか報われなくて気の毒だな……。
良鷹のシスコンっぷりが改めてひしひし伝わってきますね。確かに高校二年生でつきあっている彼女に「妹の方が大事」とためらいもなく言ってしまうような人は間違いなく重度のシスコンですよね。
良鷹も真帆さんも、自分たちの関係について、恋愛ではないと迷いもせず否定しているけれど、私は良鷹さんと真帆さんのふたりの組み合わせがとても好きなので、ふたりで幸せになれるといいのになあ、とどうしても思ってしまう。
でもまあ、そもそも良鷹には友人が慧くらいしかいないということだったので、そう思えば今回の真帆さんのラストの台詞は大進歩なのかもしれない(笑)。
さばさばしていて賢くて弁の立つ真帆さんは、良鷹の影のある部分を上手く吹き飛ばして場面を明るくしてくれてる気がして、そういう意味でも相性がよいと思うのですが。
良鷹のビーフシチューが最後に最大の美味しそうな場面でした。

とても幸せな読書のひとときでした。ごちそうさまでした!
きれいにお話がまとまっていて、これで完結とか……ではないですよね。そうですよね?
続きもとても楽しみにしています。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: オレンジ文庫

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『契約結婚はじめました~椿屋敷の偽夫婦~』白川 紺子 




寿町四丁目にある通称「椿屋敷」に住む柊一は、若いのに隠居暮らしをしているようだと「若隠居」と呼ばれている。
そんな彼のもとに嫁いできたのは、十九歳の香澄。
新婚で仲睦まじいふたりの間には、しかし秘密が。
ふたりは利害の一致から結婚をした、いわゆる「偽装夫婦」なのである——。

白川紺子さんのオレンジ文庫の新作。
最近白川紺子さんの新刊がハイペースで刊行されている気がして、こんなに贅沢していて良いのでしょうか……(笑)。
ブログに感想を書くには至っていないのですが、コバルト文庫の方の作品もほぼすべて読んでいます。好きです!

今回のこのお話も、とてもとても素敵な一冊でした。読んでいてほこほこと幸せになれる物語。
『下鴨アンティーク』とも通ずるものがある、コバルト文庫よりも上品な少しお姉さん向け少女小説、といった風情。
白川さんが書かれる少女小説と一般文芸の境目のような、ロマンティックさのさじ加減が、私の中で絶妙にぴたりとはまるのです。読んでいてたまらないですよ~きゅんきゅんです。
契約結婚、年の差カップル、伝統のあるおうちの家族の愛の物語、私好みの要素が満載なのも素晴らしい。
椿屋敷というだけあり、椿の花の薀蓄話が各話ごとにふんだんに語られているのも、安定の白川紺子さんタッチでロマンティックで素敵でした。
あと若妻の香澄さんが作るご飯やお菓子の類が全部おいしそうです!(重要)

読みはじめてみると、物語の語り手が「椿屋敷」という「家」だった!という、なかなか衝撃的な出だし(笑)。
今までほぼ読んだことがない設定で、新鮮味があって良かったです。
椿屋敷にとって、柊一は先祖代々見守っている、頭が切れる穏やかでちょっと感情が読めない青年で、香澄さんはそんな彼に嫁いできたばかりの気立てがよく優しい奥さんで、まるで親戚や家族のようなあたたかでちょっととぼけたような感じが読んでいて心地よかった。
表紙の淡いタッチの椿の花々とたたずむ若夫婦の雰囲気がほのぼのあたたかくノスタルジックで、そういうイメージにぴったり。

そんな見守りモードで語られる、柊一さんと香澄さんの偽装夫婦ならではの(?)安定した仲睦まじい生活と距離感、そこからお互い少しずつ気持ちに色がついてゆく様が、読んでいてもう甘酸っぱくてたまらなかったです!
くるくるよく働き柊一さんに尽くす新妻・香澄さんが可愛すぎて、ずっと読み続けて見守っていたい。穏やかで優しくて周囲の人たちにも慕われている柊一さんもいい旦那さんだ。
そんなふたりそれぞれに、偽装結婚に至った複雑な事情の影が、見え隠れしつつなのも、気になりつつ。
こんなに頭が切れるのに女心と自分自身の気持ちには疎い柊一さんが、途中ものすごくじれったくなりつつも!(笑)、おさまりのよいラストで良かったです。

『水曜日の魔女』
茉優ちゃんいじましくていいこだな……。姉妹の関係って、大人になっても、確かにこういうことあるよねっと読んでいて思いました。離れていた方が上手くいくことがあるというのも分かる。
ママレード入りマフィンや鶏の南蛮漬けがおいしそう。「疲れた時にはお酢を使ったものを」と香澄さんの心遣いにきゅんとしました。

『月の光』
在りし日の恋人たちの思い出を高校生のふたりと柊一たち夫婦で紐解いてゆく……という流れが少し切なさ苦さも混じりつつロマンティック。奈穂ちゃんの複雑な想いや後悔がぐっと胸に迫りました。由紀也君もいいこだな。
香澄さんが頑張ったタルトタタンが美味しそうで私も食べたくなってきました。


栗きんとんとモンブランくらい違います、とわかるようなわからないような喩えをする。
「どっちが栗きんとんでどっちがモンブラン?」
「わたしは栗きんとんの方が好きですね」
そういう話ではないような。
「ふうん、僕も栗きんとんが好きだな」

121頁のこの会話がなんだかとってもときめきます……!!


『花いくさ』
香澄さんの婚約者襲来!自体は意外とあっさり解決(?)しましたが、「花いくさ」親友ふたりの結婚騒動は、なかなかシビア。
「仲がよかろうとよくなかろうと、離れられない間柄」というのは、なんか、なんとなく、分かる。
椿がカギになっていた幼い日の想いが明らかになる場面が、表面的な騒動の奥から深く美しい色がじわじわとにじみ出てきたかのような、ぐっとくるものがありました。みんなそれぞれ辛くて苦しくて切ない。
歩美さんが香澄さん達のお鍋に救われた場面も印象的で、分かるわかる。彼女も吹っ切れたようで本当に良かった。
あと絢さんがいろいろ格好良すぎました。エッグノッグもおいしそうだなあ。

『追憶の椿』
笙子さんの急襲、若夫婦に暗雲が。
笙子さんはかなり強烈なおばさんでしたが、彼女はどことなく『赤毛のアンシリーズ』のマリラを思わせるものがあって、なんだか、読んでいて不思議な親しみが。いつも無条件で優しかったマシュウは違い、厳しく現実的で頑固だけれど人一倍情が深く、不器用ながらにアンに愛情を注ぎ続けたマリラ。香澄の複雑な気持ちも分かるし色々ありましたが、最終的にはあのかたちで落ち着いて、良かったな。
柊一さんの女心の分からなさはちょっと致命的でした(苦笑)。香澄さんも強く出られないからもどかしいこと!
檀くんと柊一さんの間の複雑な想いも、そういうことか……。ううん、こちらもどちらの気持ちも分かるし、やるせない。そんな確執があってなお現在お互い仲良くしているこのふたりがいいなあ。
電話でのやり取りから香澄さんがいなくなって寂しい柊一さんの姿から、色々もどかしい。
あとラスト、笙子さんと晶紀さんが主に柊一さんにちくちく嫌味めいたことを口にしている場面に笑っちゃいましたし、端々に香澄さんへの愛を感じて、きゅんとしました。
晶紀さん、婚約者であった香澄さんがこういうことになってあっさり引き下がりそのままか……と思いきや、実は長期戦の心づもりだったのか?あ、侮れない……。
まあこの煮えきらない柊一さんをたきつけるには、これくらいずけずけ言ってもらえるくらいでちょうどよかったんじゃないかしら、と思いました(笑)。
檀君の千鳥屋のどらやきのお土産にもほっこり。

『すみれ荘にて』
番外編。
うわああ、檀君頑張れ……!!
彼も想いが報われてほしいな。

もっとこの若夫婦を見守っていたいですし、周囲の人たちのことも気になりますし、柊一さん自身の仕事の話も具体的に読んでみたいですし(なんだか今回ほとんど具体的に語られていないような)、できれば続きが読みたいです。読めると嬉しいなあ。
ひとまず来月は『下鴨アンティーク』の新刊が読めるとのこと、今からたいへん待ち遠しいです。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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『これは経費で落ちません!~経理部の森若さん~ 2』青木 祐子 




天天コーポレーション本社経理部の森若沙名子さん、多くの領収書を処理する彼女には、社内の色々な人間関係が見えてくる。
必要以上のことは期待せず、されず、精神的にも経済的にも「イーブン」でいることを大切にする沙名子は、他人の面倒ごとには関わりたくないのだけれど、ときには巻き込まれることも。
有能な経理女子の目線から見るお仕事小説第二弾。


『これは経費で落ちません!』の続編が出ました~!
最近の青木先生の作品の中ではいちばんのお気に入りだったので、とても嬉しいです。

実際に読んでみても、二巻目も期待を裏切らない面白さ。
いやあもう、森若さんがとにかく格好良いです。惚れ惚れ。
いかなるときでも冷静沈着有能、自分のポリシーを崩さない森若さんが今回も健在。彼女の仕事ぶりや冷静な人間観察、内心での突っ込みなどなど、読んでいて小気味よい。たのしい!
別に正しさや正義を振りかざしているわけではなく自分にとっての「イーブン」を保ちたいという彼女のスタイルが読んでいてリアルに共感できる。
なんだかんだいって沙名子さん、結局お人好しですし。だからこそ内心色々悩んでいるわけで。

マニキュアや香水をたしなんでいたりお洒落には気を使っていたり、女性らしい部分もしっかり持っていて時と場所を踏まえてちゃんと楽しんでいるのも、優秀さの一部という感じでますます惚れ込んでしまいます。
好きなものは好きだとはっきり自分を持っていて躊躇いなく楽しめる姿勢が憧れなんだな~。
自分の食事のサイクルも基本的にきっちり管理していてちょっとやそっとでは崩したくない森若さんのスタイルもいい。私もここまで徹底できたら理想だな(笑)。
でも私が何よりわかるわかる!と思ったのは、お弁当のおかずにブロッコリーと人参のグラッセを作ろうとして、考えすぎて、結局ほうれん草とコーンの和え物を作ってしまった、という下り(笑)。そのメニューの具体的なチョイスが分かりすぎてもう。

彼女の優秀さには程遠い私ではあるけれど、職場のあれこれ、わかるわかる~と何度も頷き笑ってしまいました。
女性の集団の訳の分からなさ。ほんとうに。
ちょうど電車の中で読んでいた時、遠からずなことでへこんでいたので、森若さんが陥った事態にものすごく共感してちょっと笑って心がだいぶ軽く楽になりました。感謝です。
結局きれいに白黒ついて解決したわけではなく、それでもいつの間にか改善されている、なんとなくもやっとしたものが残るこの加減が絶妙にリアルで、わかるわかる!(笑)

織子さんや山崎さんの件は、ああ~そういう人もいるんだな、みたいな感じで読みました。
山崎さんてっきり美月さんに気があるのかと思っていたら全然違った。というか太陽にちょっと意地悪かなとも思っていたけれどやっぱり違ってた。
織子さんはその後沙名子さんを微妙な立場から救おうともしてくれたわけで、悪い人じゃなく。というかそんな完全な悪人はこのお話には出てこないですね。皆癖があるし欠点もあるし時に気の迷いも起こしたり色々あるけれど、結局のところは普通のいいひと。そこは安心して読めるかな。

いちばん読み応えがあったのが経理部の同僚・勇太郎さんと友人のお話。
しかしいちばん重たい話でもありました。これだけはうやむやではすまされない。
辛いな……うーん。
というか勇太郎さんと沙名子さんの同類同士の信頼関係、お互いの仕事のやり方やひととなりはもう知り尽くしているみたいな感じが、なんというかすごい。格好良すぎ。

そんな沙名子さんと勇太郎さん含め、今回特に、経理部の四人の信頼関係が好きだったな~と実感したのが、再び真夕ちゃん視点のエピローグ。
沙名子さんにちょっかいを出している(と思われている)太陽に、三人ともが牽制っぽい態度を取っているのが、読んでいて笑えました。
三人とも沙名子さんのことが大好きで心配なんですよね。愛を感じます。愛(笑)。
「勇太郎が社内で認めている女性は沙名子だけである」という真夕ちゃんの見解も、うなずいてしまう。たぶん沙名子さん以外のひとにとっては勇さんはすごくとっつきづらい怖いひとなんだろうな……。
今回も沙名子さんの後輩真夕ちゃんはお気に入りキャラでした。彼女の仕事への姿勢もまた素敵だと思う。私もせめてこうはありたい……。

太陽も、一巻目の時点では正直どうかなーと思ってましたが(何様)、沙名子さんのことが本当に大好きで健気にアプローチをかけていて本当の彼女をちゃんと理解して大事にしたいという気持ちは伝わってきて、好感度がわりと上がりました(笑)。
こんなきっちりかっちりした沙名子さんだからこそ、太陽みたいな明るくあまりものごとを悩まないひとは、お似合いなのかもな、という気がしてきました。
あまり空気は読めないけれど沙名子さんの心を要所要所でふわりと軽くしていく太陽に、沙名子さんが自分のペースを乱されいらっとしつつも、だんだんほだされていっている感じなのが、可愛らしい。
ま、沙名子さんに完全に釣り合うためには、太陽にはもっと頑張ってほしいなーと思うのが、まだまだ正直なところですが。(なんて上から目線……それだけ沙名子さんが好きなのです、お許しを。笑)
勇さんと沙名子さんではどれだけ同僚として相性がよくても恋愛には発展しないでしょうけれど(たぶん)、あのふたりに負けないくらいの、また違う信頼関係を築けるようにがんばってほしいな、と、ついつい思っちゃいます。

読んでいてくすりと笑って元気になれる、素敵なお仕事小説でした。
三巻目も出ると嬉しいな!

(沙名子さん愛用の香水に、グリーン・ノートのポプリをついつい連想してしまい、『あなたに眠る花の香』を再読していたり。)

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