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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『鎌倉香房メモリーズ 5』阿部 暁子 




花月香房にようやく戻ってきた雪弥。
彼との距離に戸惑う香乃だが、そんなふたりと花月香房には、香りにまつわる謎が今日もぽつりぽつりと持ち込まれる。
祖母の古い友人が持ち込んだ香木、行方不明になった仏像、源氏香で書かれた暗号。
雪弥と共に、親しい人に関わる謎を紐解いてゆく香乃が、やがて見出すものは——。

『鎌倉香房メモリーズ』シリーズ第五弾にして完結巻。
表紙の桜と、満開の笑顔で手をつないでいるふたりのイラストが、美しくて幸せいっぱいで、ただ眺めているだけで心が満たされます。
実際に読みはじめても、最初から最後まで、とにかくすべてが愛おしくて。
満ち足りた気持ちで読み終えることができました。
香乃ちゃんと雪弥さん、良かった。本当に良かったです。

前巻で辛い別離のときを乗り越えた香乃ちゃんと雪弥さんのふたりは、何があってももうお互いの手を放すことはけしてないだろうなと、ある意味安心して読み進めることができました。
相変わらずのスローペースさにもう!ともどかしくなりつつも、ふたりらしかったです。
ほんのときたま、想いが目に見えるかたちであらわれるときめきポイントが挿入されていて。
あまりの奥ゆかしさとかわいらしさにどぎまぎしたり、ちょっとおかしくて笑ってしまったり。やっぱりそのすべてが幸せで。
ふたりを見守る三春さんや友人達の姿にもまたあたたかく優しい気持ちになれました。

ひとはどうしても強く正しくばかりは生きられなくて、弱い心に逃げたり迷い間違えて後悔してばっかりだけれど、そういう部分もすべて否定せずに優しくくるみこんでくれるこの物語の持つ空気が、やっぱり本当に大好きで愛おしいなあと思いました。
おどおど内気でやっぱりちょっと世間からずれてる香乃ちゃんが内に持つ懐深さや優しさにもう私は感動を覚えずにいられない……!!

お香についての小ネタ、鎌倉の街の描写、今回は仏像や茶道のことや、色々なうんちくもさらりと楽しく読めて満足。


さて、ここからはネタばれありの感想語りです。


『花守の送り歌』
三春さんと桜子さんの女学校時代からの因縁のバトルに笑いました。たじたじになっている若者ふたりがおかしい。
そうは言うものの話を聞いてみるとお互いちゃんと認め合いはしているようで。桜子さんのとことん素直じゃないところが愛おしいなあと思いました。ふふふ。過去エピソードの三春さんがいかにも三春さんです。
桜子さんの秘め恋は薄々感じ取れるものではありましたが。切ない。歌が切ない。
あと花野さんと桜子さんのふたりのエピソードも、迷い苦しむ花野さんが道を見出していく過程がいかにもこのシリーズらしくて、とても良かったなあと思いました。
あと香木ができるまでの過程のエピソードが印象的で。傷ついてこそ人に愛される香りを生み出すとは。いいな。
ラストの雪弥さんの「お手をどうぞ」がさらりと格好良くてときめきました……!香乃ちゃん可愛すぎですよね。めろめろですよね!

『蓮のつぼみが開くとき』
もうもう、香乃ちゃんとチヨちゃんのふたりの友情が可愛すぎて最高でした……!!
雪弥さんにぽそぽそ嫌味を言い続けるチヨちゃんと何も言い返せない雪弥さんのふたりの図が新鮮(笑)。
チヨちゃん本当に香乃ちゃんのこと大好きね。でも香乃ちゃんと出会い友情を結ぶまでのことを知ると納得もしました。お互いがお互いに出会えて本当に良かったな~。としみじみしました。
女子会でアイスクリームの交換して「香乃ちゃん……」「チヨちゃん……」とお決まりの手に手を取り合い永遠の友情を誓い合うふたりの姿を思い浮かべるだけで可愛くてじたばたしてしまいます。
あとチヨちゃんのお兄さん、ずっと密かに気になっていました。なんというか自由なおひとで、でも読むごとに実は思慮深くて家族思いのいいひとだなあ、とじわじわ好感が。
ひいおじいちゃんのエピソードも胸がぎゅうっと痛みましたが、良かった。チヨちゃんと理久さんたち一家の家族愛も、香乃ちゃんの葛藤とそれを解きほぐす雪弥さんも、すべて。
伊助さんのお茶目なところがとても素敵だなときゅんとしました。ひいおばあちゃんと結ばれるまでのエピソードも良い。

『小さなあなたに祝福を』
なんだか懐かしいなあ……!響己さんお元気そうで安心しました。エカテリーナも。
そしてひな人形の贈り主の正体に、ほっこり。
響己さんの奥さんのナナさんのお人柄が格好良くて惚れ惚れしてしまいました(笑)。
しらすピザにプリンが食べたくなってきました。

『ふたり、手をつないで』
最終話、高橋さんだー!やっぱり高橋さんが出てきてくれると嬉しいです。
結局最終巻まで「(自称)親友」の(自称)が取れないところが、不憫すぎる高橋さん……。プレゼントのことをうっかり当人にばらしてしまい、青ざめて催眠術をかけている高橋さんと、素直に必死に忘れようとしている香乃ちゃんの場面が可愛くておかしくて笑える……。
シノヤさんとクレアのエピソードと源氏香の暗号がとても上手く絡められていて、ロマンティックできゅんきゅんしました。
お寺めぐりでちょっと格好つけたり気遣ったりするシノヤさんが一大学生としてとても等身大で、恋に落ちた姿がとても可愛く映りました。でも彼の葛藤も分かるんですよね。
その暗号が次から次へと人の手を渡り、それを解き明かしたひとが、そうつながるのか!
なんというか、このシリーズのこれまでのいくつものひとのつながりを順にたどっていっているようで、最終話らしくていいなと思いました。鎌倉市民の味方・みずきさんが最後まで格好良すぎます(笑)。
各務さんは、実際に登場してきて香乃たちと言葉を交わす姿を見ていると、なんというか。普通のいい人だな。と。
過去にああいう経験をした彼だからこそ、シノヤさんにああいう風に背中を押すことができたのだろうし。
複雑な思いはあるのでしょうが、けして彼を嫌ってはいない雪弥さん、そんな雪弥さんをシンプルに肯定する香乃ちゃん。なんだか、良かったな。思っていたより優しい人間関係に、ほっとしました。
和馬さんの気持ちも分かるしね。素直じゃないなーこのひとも……。
香乃ちゃんの、最後の最後の自己肯定の場面も、ここまでたどり着けたのが、良かったなと。
最後の香乃ちゃんと雪弥さんのやりとりも最高でしたね!
それは確かに香乃ちゃんみたいな奥手の女子高生には、はっきり言わないと伝わらないよ~。
(そして殿岡君みたいな存在もいることを、雪弥さんはもう少し危機感を持っていた方がいい……。)
でもこれからこのふたりはずっと、けして手を離さずに、共に未来を歩んでいくんだろうな。
何の疑いもなく、信じて安心して頁を閉じられるのが、私もとても幸せだな。と思いました。
雪弥さんのことだから、今からとっても堅実な未来計画を、頭の中で組み立てていそうです。

綺麗にまとまって完結していますが、これで終わりとはなんだかちょっと寂しくもあるのが正直なところだったりします。
なんといっても心残りはチヨちゃん。チヨちゃんがお婿さんを迎えるまでのエピソードは、ぜひ読んでみたい。
高橋さんが若干いい雰囲気なのかしら。二話目の冒頭、そもそも理久さん、高橋さんのこと偵察に来ていたんですよね。(多分)
うーん、スピンオフ集一巻くらい出ませんかね……。和馬さんとみずきさんの過去エピソードなんかも(怖いもの見たさで)ちょっと読んでみたい。

桜のほころび始める季節にふさわしい、幸せで元気を取り戻せる読書のひと時を過ごせました。
素敵なシリーズに出会えた奇跡に、あらためて、感謝。


ここ二週間くらい?それぞれの記事に拍手くださった皆さま方、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 阿部暁子