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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『ちどり亭にようこそ~京都の小さなお弁当屋さん~』十三 湊 




京都は姉小路通沿いにこじんまりと建つ、仕出し弁当屋「ちどり亭」。
店主の花柚(はなゆ)は若く美しい女性だが、なぜか毎週お見合いをしている。
いつも残念な結果に終わるのを「お見合いがライフワークなの」と答える、お茶目な人でもある。
そんな彼女が食べる人のため心をこめて丁寧に作るお弁当は、人を笑顔に幸せにするもので——。

京都を舞台に、小さな仕出しお弁当屋「ちどり亭」をめぐる人々が織りなす日常の物語。
店主は花柚さんといって、由緒ある旧家の年若いお嬢様、無邪気なかわいらしいひとで、お料理への情熱は人一倍。
物語の語り手は、ちどり亭の学生アルバイト・彗太君。お店の前で行き倒れていたのを拾われたのがきっかけで花柚さんに料理を習いはじめアルバイトとして雇われ、ふたりでお店を回している。今風の学生さんのノリながら人が好く素直で勉強熱心、ちょっと不憫体質(苦笑)。
このふたりのキャラがまずとてもいい。

作品設定やあらすじのイメージそのままおっとりはんなり優しい物語で、食生活をメインに人の生活の営みも丁寧に書かれていて、読んでいてとても心地がよくて、じんわりと癒されました。
ていねいに作られるお弁当も美味しそうで、一品一品きっちり手間と心がこもっていてそれでいてあくまで家庭料理の延長線という感じで背伸びした感じもなく、なにより花柚さんと彗太くんが料理を作っている姿がいきいきと楽しそうで、これまた癒される。読んでいて元気をもらえます。

なんというか、つまり、とってもとってもお気に入りの作品でした!!!
ヒロインの花柚さん、「花柚」さんと書いて「はなゆ」さんと呼ぶ名前からして、可愛すぎる~!まさに現代京都のお嬢様、お見合いマスターと自分で言ってたり自分のお弁当を毎朝私って天才!と自画自賛していたり、それだけに料理への情熱は並々ならぬものがあったり、割烹着にお着物姿も口調も、すべてが可愛らしくて、すっかりファンになってしまいました。
花柚さんの影響で、ちょうど作業用エプロンを買おうとしていてうっかり割烹着を買ってしまったのは私です。使いでよくて気にいっています。
彗太君とのかけあいもテンポよく楽しいしふたりで協力し合って店を回している姿もいい。

「食べものをみんな人任せにしていてはいけない」
「栄養も大切だけど、それよりも大事なのは、自分で自分の生活をオーガナイズすることよ」
この花柚さんのシンプルな教えが、読んでいるとじわじわと効いてきます。
読んでいると、心がすっと整う感じがして、自分自身のお弁当生活のはげみにもなるし、とてもとても良かった。
日々のお弁当作りがなんだか毎日楽しみになってきて、結果(自分比)美味しいお弁当をお昼に食べられるし、いいことづくめ(笑)。

花柚さんと彗太君、それぞれのロマンスのエピソードもちゃーんとあるのも、私好みで心憎い。
彗太君の片想いのお相手菜月ちゃん、彼女もまた程良く今どきの大学生で読んでいくごとにとってもいいこで、菜月ちゃんの失恋は分かってはいたけれど切なかった。(このあたりでお弁当ストーカーしていた彗太君がなにげにすごかった……。でも確かにお弁当にこんな工夫を常にできちゃう彼女は、手強すぎる、かも。)
菜月ちゃんに彗太君が作るオムライスがね、食べる人への真心がこもっていて、とてもいい。卵に酢を入れるのか、覚えておこう。
その後花柚さんに共にお弟子としてお料理を習う関係になったふたりのすがたには良い感じでほのぼのしました。彗太君いいこだな……不憫だけど……。

一方の花柚さんのロマンスのお相手は、破談になったかつての婚約者。
どんなに口では何気なく装い否定していても、相手が店に来ると、ふわふわ舞い上がっているのを隠せていない花柚さんが、可愛くってもう!
やっぱり名家のあととり総一郎さんのえらっそうだけれど実は真面目でていねいなお人柄、はっきり口にはしないけれど実はこの人もまた花柚さんひとすじでベタ惚れなんじゃないの?と疑惑がだんだん確信に変わっていくところとか、最高にときめくんですけれど!(笑)

ちどり亭のパラサイト(現代の貴族?)美津彦さんも、ぐうたらだけど気遣いもできるなんだかんだいいひとだし、花柚さんのお料理の師匠もぴっと背筋が伸びた格好のいい人だったし、脇役キャラもそれぞれ魅力的で、ひとつひとつのエピソードもていねいでよく練られていてどれも印象深かったし、春の素材をメインに用いたお弁当もそれぞれとってもおいしそう!
私も花柚さんのお弟子さんになりたい……せめて彼女の「お弁当練習帖」ノートをのぞいてみたい。
だしまき卵を上手に作れるようになるの、憧れます。


あまりに良かったので、二巻目もさっそく読みました。
宝物のように、大切に大切に、少しずつ読んでゆきました。



今度は夏の物語。
「人間は、何かを生産せんならん。料理でも、日記でも」とか「きれいなものは食べても太らない」とか、読んでいくとちゃんと理由があってやはり名言。どんな食べ物でもバランスよくが大事って当たり前のように思えるけれど大事だな。
彗太君と菜月ちゃんたちの後輩・小川野乃香ちゃん、彗太君の前ではじめて素を出した彼女はなかなか強烈でした……。
彗太君と花柚さんの協力で、いい方向に向かっていって、良かったな。
彼女の登場で、彗太君と菜月ちゃんも上手い具合にまとまって、何より。野乃香ちゃんがちょっと不憫だけど。茗荷の甘酢漬けの色は確かにとても綺麗ですよねえ。
黒岩さんとメイちゃんの親子もいいキャラしていました。
それにしても彗太君はアルバイトさんとしてお弟子として花柚さんに鍛えられて、成長したなあ。としみじみしました。

かと思えば、花柚さん達カップルに途中から暗雲がたちこめはらはらしましたが、お店のことかー。これは確かに難しい。
花柚さんと彗太君がふたりで店を回している姿がやっぱり好きだったもので、最終的にふたりがああいう選択をしてくれて、心から良かったなあと思いました。
やっぱりえらっそうでしかめつらしいものの、実はやっぱり花柚さんにべた惚れな総一郎さんにいつでもときめいて仕方がないです。
桃を贈り続ける総一郎さんに文句を言いつついただく花柚さん、はたから見ていてもどかしい。
だいぶ浮世離れしている大人カップルですが、彼らなりにしっかりラブラブしている姿にきゅんきゅんです。意図せずふたりの場面を邪魔してしまう彗太君が不憫だ……。
胡麻すり胡麻豆腐作りに、持ちよりおにぎりお弁当、あと彗太君の冷やし中華にマヨネーズも何気に印象的でした。
私も名古屋に来て友人が当たり前に冷やし中華にマヨネーズをかけていたのがカルチャーショックだったな……。

みんなみんな笑顔で幸せになれる二冊でした。
お弁当作りしている、もしくはお弁当作りこれからしてみようかな、とか言う人には特におすすめ。
これで完結しているのかしら。続きがもしあるならぜひ読んでみたいのですが。

カテゴリ: 日常のお話

タグ: 十三湊