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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『いとみち』越谷 オサム 

いとみちいとみち
(2011/08)
越谷 オサム

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ドジっ子で泣き虫で、祖母ゆずりのばりばりの津軽弁話者の女子高生・相馬いとは、人見知り克服のために、青森のメイドカフェのアルバイトをはじめる。
はじめはおどおど失敗ばかりでひたすら縮こまっていたいとだったけれど、カフェの従業員たちやお客さんと次第に打ち解けて、仕事にも少しずつ慣れてくるにしたがって(「おかえりなさいませ、ご主人さま」の訛りはなかなか抜けないけれど)、学校や私生活の方でも彼女は少しずつ、また少しずつ、成長してたくましくなっていく。


越谷オサムさんが書かれる、青森のメイドカフェが舞台の、一風変わった青春小説。
越谷オサムさん、先月あたりからぽつぽつ読み始め、面白くてだんだんはまってきました(笑)。
この本は三冊目。
ぐいぐい勢いのある、濃密なでも爽やかなストーリーが、読んでいてなんとも楽しいです。駄目駄目で情けないところもあれどもちゃんと自分の足で立ち上がって真っすぐ生きてる登場人物たちも、共感を持てて好き。読みやすいのもいいな。

中でもこの本、主人公の女の子が津軽弁をしゃべる、青森が舞台…、というのに個人的にひかれ、読むのが楽しみでした。
いえ、ネットをはじめてから、東北の方と何人かお知り合いになれて、親しくお話させてもらっているうちに、そちらの方の地域や言葉に、以前よりずっと興味を持つようになってきたのですよ。
東海の三重に住む私にとっては、正直青森は遠く未知の世界で。読み始めても地域の関係とか地名とか知らないものばっかりで、特に最初の内はとまどってしまいましたが、雰囲気で読んで行きました(笑)。結局あまり理解してません、お住まいの方すみません(苦笑)。

方言は、読んでいる内にくせになってきました(笑)。楽しいなー。
いとちゃんのおばあちゃんのハツエさんの会話シーンとか、本当に文字通り、全然読みとれない!衝撃を受けました…。
いとちゃんがいつ「おがえりなさいませ、ごスずん様」からステップアップして標準語の台詞をしゃべることができるのか、読んでいて思わず熱く応援してしまいました。(正直、内心はこのままでもいとちゃんらしくて十分かわいいんだけどなー、とは思っていたんですけどね。真剣ないとちゃんには悪いんですが。笑)

一方、「メイドカフェ」という設定には、私的にあまり興味がなくそこまで心惹かれなかったんですが(笑)、読んでいる内に、すごくいいなあこのお店、としみじみかみしめてしまいました。
最初の方はおっかないひと、適当で軽いひとという印象しかなかった幸子さんや智美さん、いかにもあやしげでうさんくさいおじさまなオーナー、気弱で優しげな店長……、いとちゃんの仕事仲間の大人たち、深く背景を知るごとに、愛しくてならなくなってきました。
それぞれ駄目なところを文句を言いながらも受け入れておぎない合い助け合いつつ、家族のような絆で結ばれているこのひとたちが、とても好きです!
私はおっかないけど実はあったかい人な幸子さん、ちょっと頼りないところもありつつしっかり皆をまとめ上げている店長さんが、特にお気に入りでした。智美さんも不思議に憎めないんですよね…。オーナーも、私も実際につきあうとしたら腰が引けてしまいそうな人だけど(笑)、実は見かけ以上にいいひとっぽかった。
常連客の人たちも、話が進むごとにちらりと書き込まれたりしてきて、山本さんなど応援したくなるお人でした。

そしてええ、この作品を読んでいると、ものすごく楽しそうですよね、「津軽メイド珈琲店」(笑)。
メイドさんたちも、メイド服もかわいらしいし、食べ物もおいしそうですしね!(←重要ポイント)
幸子さんお手製のアップルパイ、一度でいいから食べてみたいです。本当に美味しそう。
メイドさんたちがケチャップで絵を描くオムライスも、食べてみたくなってきました。

話が前後しますがこのお話、ドジで弱虫で引っ込み思案な高校生だったいとちゃんの、成長物語なんですよね。
もちろんいいこなのですが完全ないいこちゃんでもなく、家族にそっけない態度を取ってしまったり、うじうじと容姿とか小さなこと(ひとから見れば、ですが)で悩んでいたり、そういうところが等身大の高校生っぽくて、共感を持てました。
孫に冷たい態度を取られてちょっと寂しそうなハツエさんに、心痛みつつそれでもなかなか完全に優しく接することができないいとちゃん、この辺りは私も祖母が生きていたころ似たようなことやってた覚えがあるので、身につまされる思いでした…。

そんないとちゃんも、メイドカフェのアルバイトを通して少しずつ成長していき、友人もでき、家族のこともそれまで知らなかったことを知り、衝突も乗り越えて、そういうあれこれが、読んでいてまた良かったです。青春ですねえ。
いとちゃんのお父さんと今は亡きお母さんのロマンス、なかなか素敵…と思って読んでいたら、ハツエさん視点からの思い出語りで絵笑ってしまいました。本当、ストーカーだよお父さん…(笑)。
いとちゃんとお母さんのつながりが、読んでいる内にいくつも明らかになっていって、しんみりあたたかい気分になりました。

あと、いとちゃんにできた本当の友だちも、良かったです。
特に早苗ちゃん、良い子だなあ。いとちゃんの家へ助けに来てくれたシーンで余計に好きになりました。
この子は色々と大人で、ある意味いとちゃんより良い子じゃないかな(笑)。
三内丸山遺跡での勾玉のシーンとか、くすぐったくて微笑ましくって好きでした。

順調な日々に突然やってきた、お店の危機。
いとちゃんの家族との衝突とも時期があわさって、どうなることか…はらはらして読んでいましたが、絶望的な状況でもあきらめずに力を合わせる皆の姿が、良かったです。店長格好良いです…!
そしてぎりぎりの状況の中で、まさかの救世主が!(笑)、いや、本当に痛快でした。
店員さんたちに常連客さんたちも皆巻き込んでのお店リニューアル、そしていとちゃんの三味線コンサート。
いとちゃん、はじめのうちはかなりはらはらしましたが(汗)、ここでも救世主が(笑)。ああ、ハツエさんナイスです。
やっぱりいとちゃんは高校生でまだまだ未熟で、それを家族の大人がちゃーんと補ってくれる、そういう空気が、良いものだなと思いました。

そしていとちゃんとハツエさんの津軽三味線、一度きいてみたいな。文字を読んでいるだけでもすごさが伝わってきますもの…。
「いとみち」のタイトルの意味も、読んでいてきちんと出てきて、納得でした。

そして、本文を読んだ後にこの表紙をみかえすと、これは素敵です。
いとちゃんもメイドさんたちも皆特徴が良く出てる。幸子さん本当にお若いです…(笑)。


読んでいて本当に楽しくなってくる、素朴なぬくもりがうれしい青春小説でした。
青森に一度、ぜひ行ってみたくなりました。
そしてしつこいですが、幸子さんのアップルパイをぜひ一度食べてみたいです♪

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カテゴリ: 日常のお話

タグ: 越谷オサム 

この記事に対するコメント

さわやかでなかなか良い青春小説でした。
安心して読める作家さんですね。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。

URL | 藍色 #-
2013/07/30 15:09 * 編集 *

Re: タイトルなし

>藍色さん
コメント&トラックバック、ありがとうございます。

『いとみち』本当に、さわやかで読んでいて気持ちのいい青春小説でしたよね。
トラックバック、返させていただきました。
よろしくお願いいたします。

URL | fallclover #-
2013/08/04 07:53 * 編集 *

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粋な提案 | 2013/07/30 14:49