Admin   *   New entry   *   Up load   *   All archives

ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『海馬亭通信』村山 早紀 

海馬亭通信 (ポプラ文庫ピュアフル)海馬亭通信 (ポプラ文庫ピュアフル)
(2012/01/04)
村山早紀

商品詳細を見る



由布は、人間の父親とやまんばの母親との間に生まれた十五歳の少女。行方知れずになった父親をさがすため、山を下りて人間の街へやってきた。
ところが由布が思っていたより捜索には手間がかかりそうで、途方にくれていた彼女は、自称ワルの少女・千鶴を助けたことをきっかけに、彼女の祖母が営む下宿「海馬亭」にやっかいになることに。
古い洋館「海馬亭」の住人達は、それぞれちょっぴり変わったところもあるけれども心優しいいいひとばかりで、由布は自然と皆の輪に馴染んでいく……。


去年色々読んで楽しませてもらっていた村山早紀さんの作品、今年も新年さっそく、新刊を入手して読みました。
今回の新刊は、以前出版されていた『やまんば娘、街へゆく』を文庫化されたもの、ということで。

表紙イラスト、想像以上に素敵でびっくりしてしまいました。
片山若子さんのイラスト好きですー。ふんわりと優しくて、あたたかみがあって、今どきのお洒落な雰囲気もそれとなくただよっていて。由布ちゃん(ですよね?)かわいいなあ…(笑)。

多分中学生のころに『やまんば娘、街へゆく』を図書館で借りて読んでいた私、書き下ろしのお話以外は、一応再読でした。
再読とは言っても、最後に読んだのは少なくとも十二、三年は前のことで……内容も正直ぼんやりとしか覚えていなくって、ほとんど新しいお話を読むつもりで、頁を開きました。

……そうして読み始めてみると、覚えていないようで、実際には色々なことをけっこう覚えていました。ちょっとびっくり。
物語自体も古い洋館とか山の神様とかノスタルジックな雰囲気で、加えてこの話をはじめて読んでいた中学生時代の私のことも色々思い出してしまったりして、二重の意味でとても懐かしい気分にひたれるお話でした(笑)。
十代前半のころに読んでいたお話を、二十代になっても自然に面白く読むことができるって、なんだかちょっと不思議で、嬉しい感じです。

このお話を中学生の私が手にとったときの気持ちをうっすら覚えているのですが、タイトルに「やまんば娘」とついていて、怪談系のお話が大の苦手だった私、「妖怪が人をおそう怖いお話なの?」とちょっとびくついていたんですよね(笑)。
でも実際に読んでみたら、全然怖くなかったです。それどころかわくわくどきどき、ほどよく少女趣味のかわいいアイテムも散りばめられていて、子ども心にほんわか楽しいお話でした。
弱い人間たちを山奥からそっと見守ってくれていて、ときに力を分け与えてくれる、心優しい山の女神さま。今読んでいて私が抱いた個人的イメージとしては、そんな感じでした。

あ、これはちょっと忘れていたのですが、手紙形式だったんですね、このお話。
手紙が出てくるお話が大好きな私なので(『あしながおじさん』とか)、読んでいて嬉しくなりました!
手紙の一番はじめのあたり、由布ちゃんがお父さんの品を色々書きつづっている部分が、私はいつ読んでも好きです。親子の愛情を静かに感じて、ほっこりします。
お姉さんの方から由布ちゃんにあてた手紙の内容も、ちょっと気になるなあ。

読んでいて一番印象深く昔の記憶に残っていたなーと思ったのは、千鶴ちゃんが家出をした夜にお銀さんが作っていた、シュークリームでした。
昔も今も本当に食いしん坊の私ですね…(苦笑)。

真夜中のレストランで、みんなでシュークリームを食べました。ふくらみそこなってクッキーのようになったシュークリームでした。
でも、コック長のおじいさんが上にふわっと生クリームをかけてくれると……あら不思議。美味しいお菓子になったのでした。 (62頁)

……ここの部分、私大好きでしたよー。読んでいて、魔法みたいで、本当に美味しそうで。ああ懐かしい。この生クリームのシュークリームを再現してみたいと憧れたなあ…(笑)。
それに当時の私の家の近所のスーパーでは、「生クリーム」って容易に手に入る品じゃなかったので、よけいに皆がうらやましかったのです(笑)。

ええと、なんだか私の思い出話ばかりになってきていますが(汗)、海馬亭の住人達の中で、私が一番好きで共感できるなあと思ったのは、玲子さん、それに純子さんでした。(後者は正式な住人と言うと違うのかもですが…。)
昔の私は確か千鶴ちゃんと由布ちゃんに感情移入して読んでいた気がするので、やっぱり、読む視点が変わってきたなあ、とか思いました。
あのころはいまいち理解しきれなかった玲子さんの仕事の事情が、今ならぐっと理解できる。
純子さんも、今読むとなんだかすごく好きなんです。童話を書きたい、という一途な想いが、ひたすらにきらきら輝いていて、きれいだなあと思うのです。湿っぽさがまったくないのも良いなあ。
どちらにも、お銀さんにも思うことですが、彼女たちみたいなしたたかな大人の女性の優しさには、読んでいて憧れてしまいます。

「海馬亭」のひとたちは皆、村山早紀さんの他のお話の登場人物とだいたい同じ雰囲気をまとっていて、それぞれ抱えるものはありつつ自然に笑っていて、ちょっと変わった人でもあたたかく受け止めてくれるふところ深い良い人ばかりで、読んでいてほっこりしました。
由布ちゃんがたどり着いたのがこの「海馬亭」で、本当に良かったなあ。といいますか。
別の意味でも、ね。
運命でしょうかやっぱり(笑)。

やまんば、というよりは、「海馬亭」での生活の中では心優しくもごく普通の女の子っぽい由布ちゃんでしたが、ラスト近くで桜の精に力を注いで街を救ったあのシーンは、やっぱりすごく格好良かったです。
桜の樹が力を分け与えられてみるみるよみがえっていく情景がとても美しくて、ほおっとため息。

伊達さんは、昔の私は、私自身の父親の姿にも重ね合わせて読んでいたのかもしれない、と、読んでいてすごく思いました。
私の父はこんなにお洒落で優しい人じゃないですけど(笑)、おとうさん大好き!という混じりっけない気持ちを、読んでいて私自身思い出してはっとなったりしました。

うーん、今になって改めてここまで読んでくると、父さんと、姉さんと母さんが再会するお話も、読んでみたくなっちゃいます(笑)。

書き下ろしのお話『眠れる街のオルゴール』(前編)。
うーん、今どきの子どもだって、しんどいものをいっぱい抱えて生きているんだよなあ…とか、読んでいて感じました。
とっくに子どもではなくなってしまった私がこんな風に感じても、上から目線でえらそうになっちゃうのかもしれませんが(汗)。
このお話は、「ねこまたさま」と豆太が言葉をかわしている場面が、とにかく一番印象に残りました。
切なくて、それでも大切なひとを守ろうとりんと背筋をはる姿が格好良くていとしくて、じーんとしました…。
後編ではどんな風にお話が転がっていくのかなあ。どきどき。


嬉しいことに、近いうちに『海馬亭通信』第二巻も出るみたいで。
十代のころ読んでいたお話が今になって完結するなんて、思いがけなくってちょっとわくわくします。楽しみです!(笑)

村山早紀さんのお話、私が一番好きな『はるかな空の東』も、いつか文庫化されたらいいのになあ…。と風に願う日々です。
あの作品は、挿絵そのまま希望です。笑。)


この三日間、それぞれの記事に拍手下さった方々、どうもありがとうございました♪

関連記事

カテゴリ: 村山早紀さん

タグ: 村山早紀 

この記事に対するコメント

コメントの投稿
Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://hananomi691.blog10.fc2.com/tb.php/1016-5b32f968
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)