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『楽園の蓮 はじまりを歌う少女』喜多 みどり 

楽園の蓮  はじまりを歌う少女 (カドカワ銀のさじシリーズ)楽園の蓮 はじまりを歌う少女 (カドカワ銀のさじシリーズ)
(2011/10/28)
喜多 みどり

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天野蓮はごく普通の女子中学生。
信じていた親友に裏切られてショックで教室を飛び出した彼女は、ひん死の小鳥を助けたことをきっかけに、異世界に強制的に連れて行かれてしまう。
愛犬ハチローに異世界の神・パンの魂が乗り移ったり、信じがたいことが次々と起こる中、パンと対立する悪い神を倒さないと、元の世界に帰れないと告げられる蓮。
ハチローの体を借りて言葉を話すパン、途中で助けた少年・フェイロンと共に、「シンショの娘」蓮の旅ははじまることに……。


喜多みどりさんが書かれる、中華風異世界トリップものファンタジー。
喜多みどりさん、少女小説作家さんとしてお名前は知っていたのですが、作品を読んだのは多分これがはじめてです。
表紙のイラストがきらびやかで美しく、中身のお話への興味をひかれて手に取ってみました。

はい。これはとても良質の物語を読ませてもらったなあと思いました。
読後感がすごく良くて、頁を閉じると思わずほろっとしました。ああ、いいおはなしよんだ…みたいな。
途中まではまあよくある筋のお話かなあと思い、正直あまり気を入れて読んでなかったのですが…、ふっとハチロー視点の語りが出てきて、飼い主大好きなハチローが妙につぼにはまって(笑)、ぐっと引き込まれて。
最後の方では大分お話に愛着がわいてきて、読み終えるのがもったいないくらいでした。

児童書みたいな感じで文章もすらすらと読みやすくて良かったです。
異世界ファンタジーなので色々馴染みのない語が出てくるのですが、主人公の蓮もはじめのうちは難しい用語は分かっていなくて、「シンショ」とか「ドウテン」とか耳慣れない言葉をまずはカタカナとして聞き、後から電子辞書で漢字を調べて意味をなんとなく理解する、みたいなステップを踏んでいるので、読んでいるこちらも分かりやすくて良かったです。というか、中華ファンタジー的な漢字の勉強になりました(笑)。


以下、最後の方にネタばれが混じっているかもしれないのでご注意を。

ヒロインの蓮は、真面目で勇気があって優しくて、本当に良い子な女子中学生。
確かに良い子すぎる…と言えなくもないですが、こんな子が物語の中にこれほど生き生きと存在して活躍してくれていると、読んでいる私の方も、救われた気分になるのです。読んでいてすごく心があたたかくなりました。
まだまだ中学生で未熟者で、分け隔てないお人よしさが仇となって失敗もするのですが、それでもへこたれずに最後までその美質を持ち続けていられる彼女の姿はとてもまぶしくて、周りの人々が蓮に感化されて次第に変わっていく姿にも、納得なのでした。

なんといっても、蓮の愛犬・ハチローが良いですね、ハチロー(笑)。
彼の語りがお話の区切り区切りに挿入されていて、これが良いアクセントで飽きませんでした。
飼い主の蓮にひたすら純粋であたたかな愛情を注いで絶対的な味方でいてくれるハチローの語りは、味方が少ない世界で孤独にがんばる蓮に感情移入して読んでいる私としては、本当に嬉しいものでした。
ああ、蓮とハチローのコンビが好きです。すごく好きー。
そして飼い主と犬はやっぱり似るといいますか(笑)。

ハチローの体を借りうけた神様・パンは、最初の内は、善の存在ではあるんだろうけど無機質で冷たい感じだな…と思っていたのですが、蓮と(ハチローと)行動を共にしている内に、だんだん愛着がわいてきたと言いますか。かわいい面も見えてきたと言いますか(笑)。
蓮に「パンは優しい」みたいな意味のことを言われて無言で照れているパンが、ちょっと可愛かった!
終始丁寧な丁寧な言葉遣いも、慣れる毎に親しみが出てきました(笑)。
彼女たちとの関わりを経て、最後にあの選択を自然に受け入れたパン、切なくて、けれどもそれを選んだ彼の心の変化がとても愛おしくて嬉しくて、なんともいえない泣き笑いのような心地になりました。

フェイロン、最初からなんだか胡散臭いなーと思い、蓮たちを裏切ったときにはああやっぱり…とがっかりしたキャラだったのですが、彼もまた彼なりに必死にあがいているんですよね。
お話の後半の「フェイロンの戦い」の章でようやく自分自身との戦いに決着をつけることができて、その過程は人間としてとても嬉しいもので、これまた泣き笑いになりました。
それを乗り越えてからのフェイロンは、ややひねくれてはいるもののなかなか格好良くて頼りがいのある、素敵なキャラになってくれました(笑)。
ワンシャンとフェイロンの親子の仲も修復できたようで、良かったなあ。
ワンシャンさまも独特の魅力があるおじさまで好きでしたよ(笑)。

ユアンも良い子で好きでした。蓮と仲良くなっていく過程が微笑ましくて良かったです。
確かにユアンは蓮とは別れたくないよね。そうだよね。寂しいね…。
後、愛理も。
彼女が蓮を裏切った事件の真相が明らかになってみると…ああ、そういうことだったのね。なるほど。
物語が壮大な方向へ進んで行ったので、ここで読むとちょっとたわいない理由だったなあ…と感じないでもなかったのですが、でも蓮と愛理が取り戻した友情が微笑ましくて、愛理も可愛らしさの中にクンにも惑わされない凛々しさを秘めた格好良い女の子だったので、まあこれはこれで(笑)。

愛理のロマンス話が出てきて、あれ、蓮自身のロマンスはないのかあ…とやや物足りなく思っていたら、最後の方にちょっぴりありました(笑)。
そうか、彼ですか。
ほとんどそれらしき描写はなかったけれど、フェイロンがたったひとりの普通の少女としての蓮に心を救われて立ちなおっていった過程は、読んでいてとても好きだったし、なんだかんだありつつ心の距離を縮めていったふたりは微笑ましかったりしたし、そう言われてみれば素直にうなずいてしまうカップルではあるかな(笑)。
別れ際のフェイロンの言葉がシンプルだけれども本当に格好良くて、ふたりの再会がいつか叶うと良いなあ、いやきっと叶うよ、と、信じたい気持で胸がいっぱいになりました。

このラストできれいにまとまっていて満足なのですが、上にも書いたフェイロンと蓮のラストのやりとりを読んでいると、やっぱりこの続きも読んでみたいです(笑)。
もしかするとシリーズ化するの……かな?よく分からないのですが。


真っすぐのびやかな感じが読んでいて心地よい、素敵な異世界トリップ冒険ものファンタジーでした。

アジア風な世界観とか読み心地とか色々、菅野雪虫さんの『天山の巫女ソニン』シリーズに少し通じるものがあったような。


昨日それぞれの記事に拍手下さった方々、どうもありがとうございました♪
コメントもありがとうございました!返信少々お待ち下さいませ。

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カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 喜多みどり 

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