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『東雲侑子は短編小説をあいしている』森橋 ビンゴ 

東雲侑子は短編小説をあいしている (ファミ通文庫)東雲侑子は短編小説をあいしている (ファミ通文庫)
(2011/09/30)
森橋ビンゴ

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何事にも無気力、無関心な毎日を過ごす高校生・三並英太。
楽そうだからという理由だけで図書委員になった彼は、ともに委員をつとめる東雲侑子の熱のない静けさに、自分と似たものを感じていた。
しかし偶然彼女の秘密を知ってしまった英太は、その秘密のため彼女と思いがけず距離を縮めることとなり、自分がかつて失ったはずの感情に胸をしめつけられていく……。
もどかしくて少し苦くてピュアな高校生ふたりの青春ラブストーリー。


ネットで存在を知って手にとってみた、ファミ通文庫の作品。
ファミ通文庫は『文学少女』シリーズの野村美月さんの作品しか読んだことがない私、表紙イラストもやや少年向けライトノベルなイメージで、少しどきどきしつつ。
実際に読み始めると、最初の場面がふたりして図書委員をしているところで、図書委員のお話が好きな私はすっと馴染めました。

そして最後まで読んでみたら、ちょっとこれ、私好みのすごくいいお話でした!
お話は、高校生の男女ふたりが出逢って少しずつお互いの距離を縮めていく、ごくごくまっとうな青春ラブストーリー。
ややあっさりめの学園ものロマンス少女漫画を小説にしたものを読んでいるような気分になりました。
主人公・三並くんの気持ちの描写がとてもきめ細やかでていねいで、途中で置いていかれることなく安心して、少しずつ育っていくロマンスにときめくことができました。
イラストも、ぎりぎり私の好みでかわいらしくて良かったです。東雲さんの髪型がかわいいです…♪
(少年向けライトノベルは私、お話が面白そうと思っても、イラストが苦手で読めない…というパターンがけっこうあるのです。まあ少女小説でもそうなんですけどね。)

小説書きがお話のメイン要素になっていたのも、『文学少女』シリーズっぽくて雰囲気もちょっと似ていて、ファミ通文庫ビギナーの私には馴染みやすくて良かったかも。

なにより三並君と東雲さん、ふたりともとても私好みのヒーローとヒロインで。これは読んでいて、恋の進展を応援せずにはいられません!(笑)
三並君は無気力で冷めてる一見いかにも今どきの子…なのだけど、実際に人と接している部分を読んでいると、いつもごく当たり前に相手に心配りをしているし、自分にちょっと不愉快なことがあっても、けしてそれを簡単に他人のせいにはしない。なんだかんだですごく器が大きいと思います。
ヒロインの東雲さんも、かなり世間ずれしているけれど、実のところ三並君に負けず劣らず他人の気持ちを思いやれるいい子で(分かりにくいし慣れていないから失敗も多いのですが)、普段の無表情がふっと崩れるときどきは、もう最高に可愛らしい。読んでいて三並君と一緒にどきどきしました(笑)。
ふたりとも、距離を縮めていきつつも、相手のことをいつも気づかいすぎるほど気づかうから、いまひとつ一歩踏み込めなくて。微妙にすれ違ってしまって。
もどかしいー、でも、そんなふたりが愛しくてとても好きなのです。

お兄さんの彼女・有美さんに片想いして失恋してそれをずっとひきずっていた三並君が、東雲さんと心の距離を縮めていくにつれ、過去から少しずつ解き放たれていって、新しい恋に気づいていく…という流れが、読んでいてとても自然で良いものでした。
194頁ですとんと自分の気持ちを理解した三並君のシーンが好きです。挿絵込みで。
けれども東雲さんとの関係は彼氏彼女のものではなく、そして東雲さんが惹かれているのは自分ではなく兄なのではないか…等々悩む三並君。ここの辺りも読んでいて気持ちがよく伝わってきてもだえました。
頑張れ、恋する少年!(笑)
デートの場面も、相手に振り回される三並君の気持ちの揺れ動きが本当にていねいに書かれていて、美味しいです…。

東雲さんの本当の気持ちは伝わってきそうではっきりとかたちとしては伝わってこなくて、三並君がかなり不憫になってきたのですが(一度は関係を解消しちゃいますし…)、そんな彼女の気持ちが、彼女の小説として思いがけずに彼にも読み解けたとき、読んでいる私もぱっと嬉しくなってしまいました。
ラスト辺りの一連はほのぼの微笑ましい~(笑)。東雲さんかわいすぎです。

そう、東雲さんが小説家である…という作品設定が、はじめの内に思っていたよりもお話にずっと効果的に使われていて、楽しかったです。
途中途中で挿入されている『ロミエマリガナの開かれた世界』、はじめの内は固有名詞が馴染みにくいな…とあっさり読み飛ばしていたのですが、最後の方になってもう一度読み返してみると…ああ、これもなんだかとても素敵。
東雲さんの短編小説への自説も、なるほどねえ…とうなずいたり。
確かに普通の高校生である三並君が引け目を感じるのも分かるなあというしっかり感。
作家、という古風でちょっとつかみどころのないイメージが東雲さんのキャラクターにもまたよく合っていて、お話の雰囲気としても私の好みで良かったなあ。

三並君のお兄さん・景介とその恋人(というかもう夫婦も同然みたいな…)の有美さんも、どちらもけっこう個性的なキャラクターで、味があって良かったです(笑)。
どちらも実際に一緒に暮らすとなるとかなり苦労しそう…。特に有美さんの空気読まなさ加減は、読み込むごとに突き抜けていて感心してしまいました。いいひとなんですけど、ね。
このふたりが主役の物語も、ちょっと興味がある…かもしれません。一体何がどうなって恋人になれたのか。
でも景介さんは、読書仲間としてお付き合いする分にはとてもいいひとでしょうねえ。彼の部屋、たばこのことをのぞけば夢のような部屋です…うらやましい。

あと、司書の椎名さんが、まだ裏に何かありそうでなにげに気になります…(笑)。

今のところ続編も一冊出ているとのことで、読むのが今から楽しみです!


昨日それぞれの記事に拍手下さった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: 日常のお話

タグ: 森橋ビンゴ 

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