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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『千年の時をこえて』シリーズ 沢村 凜 

千年の時をこえて (エンタティーン倶楽部)千年の時をこえて (エンタティーン倶楽部)
(2007/11)
沢村 凜、竹岡 美穂 他

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小学5年生の吉野静枝は、偶然やってきたヨロズバ神社で、不思議な少年と出会う。
彼の名前は眞駒(マコマ)。千年も前、平安時代の世界からきて帰れなくなったのだと言う。
彼の姿を見たり言葉を交わしたりできるのはなぜか静枝だけで、放っておけないと思った静枝は、マコマに会いに神社に通うようになる。
歌をまつる家の子どもだというマコマは『万葉集』の歌に詳しくて、静枝たちが持ち込む様々な事件を、歌をつかって謎ときしてくれるように――。


沢村凛さんの児童書シリーズ、全三巻。
読書メーターでちらっと目にして興味をひかれて手に取ってみました。
『万葉集』の歌に、平安時代からタイムスリップ(というかなんというか)してきた男の子と現代に普通に生きる女の子のかわいいお話(淡い恋もあり)、そして竹岡美穂さんの挿絵。
…素材的に、色々私好みで美味しすぎます(笑)。
児童書なだけあって、一冊一冊あっさりとすいすい読めてしまう本で、三冊読んでも時間はそんなにかからなかったです。

『万葉集』のそれぞれの歌に込められた人の気持ちを手がかりに、現代のちょっとした事件や謎を解く…ミステリーな要素がメインのお話でしょうか、一応。
マコマが話してくれる歌の解説はとても分かりやすくすっと心に馴染んで、万葉の昔に生きた人と現代の人、言葉は変わってしまっても心そのものはそんなに変わっていないんだなあ…とぼんやり自然に実感できて、なかなか良いものでした。
子ども向けだからか、謎ときも分かりやすいものが多くて、ミステリーを読んでいても謎ときがさっぱりできない私にはかえってやさしくて良かったです(笑)。
ちょっとそれはどうなんだろうという事件もないことはなかったですが(笑)。

そして歌のなぞときと同時に、マコマと静枝のふたりが、読んでいてかわいくってたまりませんでした!
特に二巻目からは、読んでいてとてもきゅんきゅんしました。甘酸っぱい…。小学生の恋というのもなかなか楽しいものですね。
とはいえ普通のカップルではないふたり、切ない想いもかかえつつの恋なのですが…。


シリーズ三冊ずつ、順番に簡単に感想を語ってみようかと思います。

『千年の時をこえて』
序盤あたりの静枝の心のささくれ感は、読んでいてああそういえば私も小学生のころこんな風に思ってた…みたいに、自然と共感できるものでした。
全然関係なさそうな言葉も五・七・五と考えると案外当てはまってしまうものなんだなあ…と。考えてみるとちょっと面白い。
一冊目の謎ときは、何気ない日常の延長線上のものが多くて。謎とき自体はこの巻のものが一番好きだな。
みっちゃんと月の舟、星の林のエピソードがすごくよかったです。ロマンティックでひ孫娘へのあたたかな想いにほろっとしました。
七夕の歌は、歌そのものがすごく素敵だなあ。
この一冊だけでも、お別れは切なかったけれど、とてもきれいなラストでした。
優しくて良い子だけど完璧に良い子ちゃんという訳でもない静枝の心の揺れ動きがなかなかリアルでした…。

『千年の時を忘れて』

千年の時を忘れて (エンタティーン倶楽部)千年の時を忘れて (エンタティーン倶楽部)
(2008/12)
沢村 凜

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一度は帰っていったはずのマコマ、ヨロズバ神社に戻ってきました。
しかも今度は、静枝の親友の美和や健太、神主さんにも、マコマの姿が見えて話もできて。
嬉しいはずなのに素直に喜べない静枝は、微妙にマコマとすれ違っていってしまって……。

ああ、マコマと静枝のふたりが本当にかわいいー!(笑)
お互いに気持を誤解してすれ違ってしまっていた後、仲直りをする過程や仲直りしてからが、何とも言えずにかわいらしい。ラブラブじゃないですか(笑)。
「ほとほと死にき 君かと思いて」って、私もなんだか好き。
涼しい顔でさらっと大胆な口説き文句を言うマコマ、静枝と一緒にどきどきでした。確かに現代日本にこんなことを自然に言える男の子はそうはいないかな…。って知りませんけどね。
静枝が知らないのをいいことに、名前を教え合ったことでもう自分たちは両想いになったんだということにしてしまったマコマの照れを思うと…うふふ、微笑ましいなあ。
『万葉集』の最初のこの歌は個人的に前から好きなので、よけいにうふふとなりました(笑)。
それでも両想いになって幸せでも、ふたりは手を取り合うことすらできなくて。

夢のあいは 苦しかりけり。おどろきて、かき探れども、手にも触れねば。

切ないな……でも神主さんのアドバイスとか色々に力づけられて、精いっぱい前向きに恋する静枝の姿が良いものでした。

『千年の時の彼方に』

千年の時の彼方に (エンタティーン倶楽部)千年の時の彼方に (エンタティーン倶楽部)
(2009/11/25)
沢村 凜

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表紙がとても美しいです。さすが竹岡美穂さん…!
はじめ桜だと思っていたのですが、これは梅、なのでしょうか、ね。

「ネジケビト」の歌とユーモアのお話は、ああ、なるほどねえ…と。一歩間違えばお説教な話題でも、神主さんのお話として本当に自然にすっと心に入ってくるように書かれているので、とても素直に受け入れられます。
日本語がどんどん変わっていく…というのもそんな感じ。言われてみればああ確かにって思えました。
あとこの巻では、静枝と夏実のふたり姉妹の名前の由来が明らかになるところが好きでした。
それにしても、カバー裏にも書かれている「どの歌も、はじめて聞くのはマコマの口からがいいの。」…なんて静枝の言葉がかわいくってもう(笑)。

マコマの正体も分かり、やがて永遠の別れのときが。
マコマの呪いとか素性とかラスト付近のあれこれは、正直言うとかけ足気味でもの足りなさが…できればこの辺の部分だけでふくらませてシリーズもう一冊として読みたかったなあ、という気が。お父さんと『万葉集』のつながりも。
でもマコマが別れのときに静枝におくった歌が、とても素敵で良かったです。

わが形見、見つつしぬばせ あらたまの年の緒長く、われもしぬばむ

ほー……、切ないけれど、時をこえてしっかりと交わされた想いがなんとも美しいです。(でも切ない……涙。)
「マコマはわたしの初恋の人。だからずっと、忘れない。」
――帯の言葉がすべてをあらわしているかなあ。

うん。静枝もマコマも、それぞれお互いからもらったたくさんのものを胸に生きていって、将来すごくステキな大人になることでしょう。
そして一生、不思議な初恋のこと、忘れないのでしょう。

私的には、平安時代へ戻ったマコマのその後を、番外編とかでもいいからちょっとのぞいてみたかったな。

ところで、美和と健太は結局どうなったんだろう…?
あと立花くんも、三巻目に再び出てきたということは、意外と脈ありなんでしょうか?(笑)


うーん、できれば私自身が本来の読者対象であろう小学校高学年~中学生あたりのころに出会って読みたかったなあ、そんなシリーズでした(笑)。
今ほど活字に慣れていなかったあのころなら、まさにぴったりだったと思うのですが。
でもあっさりながらにかわいいロマンスも楽しめたし、『万葉集』の素敵な歌の数々や、あと日常の何気ない言葉のひとつひとつを大切にいとしむ心を自然に教えてくれる、良いシリーズでした。

最後になりましたが、竹岡美穂さんの挿絵もふんだんに楽しめて、それも良かったです!
竹岡さんは、知的で優しげで端正な少年を描かれるのが本当にお上手だと思います…かわいらしい女の子ももちろん(笑)。

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カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 沢村凛 

この記事に対するコメント

『千年の時を越えて』を始めに知ったときから、ずっと気になっていたのですが、なかなか買う決心が付かずにいました。
最近また気になって、どんな内容なのかちょっと知りたいな、と思って調べていたら、このブログに出会いました。
とても内容がわかりやすく書いてあって、面白そうだな、と思いました。
これを読んで、千年の時シリーズを買いたいと思えました。
ありがとうございます。

URL | シャガ #-
2013/07/18 23:47 * 編集 *

Re: タイトルなし

>シャガさん
コメントありがとうございます。

『千年の時を超えて』の感想を読んでいただけたようで、そしてシャガさんのお役に少しでもたつことができたようで、とても嬉しいです。こちらこそ、どうもありがとうございます!!
万葉集の素敵な歌と、静枝とマコマの淡い恋が、ずっとお気に入りなシリーズです。
シャガさんも、実際に読んでみて、気に入ってくださると、嬉しいなあと思います(笑)。

URL | fallclover #SvKcs0as
2013/07/20 22:43 * 編集 *

この前、「千年の時を越えて」を注文しました。
届くのが楽しみです。
届いたら、すぐに読みます!!

URL | シャガ #-
2013/07/22 23:55 * 編集 *

Re: タイトルなし

> シャガさん
再びコメントありがとうございます。

『千年の時をこえて』さっそく注文されたのですね!
シャガさんのお気に召す話だとよいのですが(笑)。
またお時間があるときに、お話できるといいですね♪

URL | fallclover #SvKcs0as
2013/07/25 22:44 * 編集 *

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