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『海馬亭通信 2』村山 早紀 

(P[む]1-6)海馬亭通信2 (ポプラ文庫ピュアフル)(P[む]1-6)海馬亭通信2 (ポプラ文庫ピュアフル)
(2012/03/06)
村山 早紀

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『海馬亭通信』の続編、村山先生の初期作品の完結編です。
いったん山に帰ったものの、海馬亭で過ごした日々が恋しくて、再び「家出」してきたやまんばの娘・由布。彼女は前回と同じく、少し訳ありな風早の街のひとたちとの触れあいの日々を、姉へ手紙として書きつづる。
そしてその十七年後、とある事情から冬休みを風早の街で過ごすことになった少年・景が出会う、幻想のような不思議な出来事の数々。
古い洋館「海馬亭」を舞台に、過去と現在のふたつの物語が優しく響き合い、奇跡のとびらが開かれる……。


中学生のころも図書館で読んでいた、やまんば娘・由布ちゃんの物語。今年のはじめにまさかの書き下ろしつきの新しい文庫版が出て、嬉しく読ませていただきました。(前巻の感想→こちら
そしてさらに続編が出るとのことで、物語が完結するとのことで、知ったときには二重に嬉しかったですよ!発売をわくわく待っていました。

実際に手に取って読みはじめて見ると、前半部分は昔と同じスタイルの由布ちゃんのお手紙の続編三通、後半部分は前回の書き下ろし・景くんが主人公の『眠れる街のオルゴール』の後編、といった構成になっていました。
由布ちゃんのお手紙、あとがきまで読んではじめて気づいたのですが、村山先生が昔書かれたお話だったのですね。言われてみれば確かに……と思うところもありましたが、読んでいた時は分からなかったです(笑)。
今になって、大好きな由布ちゃんの物語を世に出してくださり、読ませてくださったことに、感謝です。

由布ちゃんの今回のお手紙は、海馬亭のメンバー以外の風早の街のひとたちもメインで出てきたり。日常に不思議が自然に混ざり合った、それぞれ心に切なく美しく響くお話で、そう、私が大好きな『カフェかもめ亭』の続きのお話を、由布ちゃん視点で読んでいるような気分になりました。色々な意味で懐かしいの。

三つのお手紙と後編の物語、それぞれ感想に書いてみます。

『夜のアコーディオン』
異国の潮の香りがどこか懐かしく慕わしいお話でした。
そうか、伊達さんのかわりに新しいピアノ弾きのひとは雇わなくっちゃですよねやっぱり(笑)。
リチャードさん、由布ちゃんとの出会いから、謎めいているところが格好良くって、素敵でした。
由布ちゃんのこと、海馬亭のひとたちは大歓迎で再び受け入れてくれて、分かってはいたけれどやっぱりほっとしました。
そして、百合絵さんの昔の悲しい物語。淡い恋の思い出。
海の白い霧のなかのアコーディオンの音色、イメージが私の中にも鮮やかに浮かび上がって、悲しくてもとってもきれいで優しい場面で、目頭があつくなりました。
グリーンスリーヴスもオーラリーも好きな曲でイメージぴったりで嬉しかったな。
『銀河鉄道の夜』の途中乗車してきた女の子たちのお話をなんとなく思い浮かべてしまったり。

ラストのリチャードさん、まさかの正体でした!でもお茶目な方で一層すてき(笑)。
やまんばの娘の由布ちゃんへ向けたひとことが、胸に残りました。
そして、千鶴ちゃんと猫と桜の精霊の夜のシーンに、これまた目がうるみました。

『柳骨董店』
『カフェかもめ亭』でも出てきた柳さん、まさかの再登場!(笑)嬉しくなりました。
由耶さまとゆきの昔の物語、これまた心温もる良いお話でした。辛い境遇でも淡々と受け入れていて、でも常に凛としたイメージの娘さん・ゆきが好きです。
由耶さまも素敵だあ。由布ちゃんほど素直に交流を持てないんだけれど、不器用にもゆきを大切に思っている姿がいとしい。口調も格好良いです(笑)。
風早の街の過去の物語、想像以上に色々しっくり馴染んでいて、良かったです。もともと時代ものファンタジー好きな私なので(笑)、もっと色々読んでみたいな。

『ばらいろ怪談』
タイトルがロマンティックで好きです~。
コックさんに、まさかそんな秘密があったとは……昔も今も全然気づきませんでした(笑)。
星野くんと本の話題で意気投合している由布ちゃんが可愛らしかったです。
ラスト、由布ちゃんはもしかして、そういうことなの??うふふ(笑)。
リチャードさんと純子さんと由布ちゃん、という人外三人の取り合わせも、なんだか好きなのです。
皆本当、怖いんじゃなくて、お茶目で心優しくて、ちょっぴりかわいらしいのです。
チョコミントアイス、実は私少々苦手なんですが、読み終えると食べたくなってきちゃいました。

三通のお手紙を読んで、由布ちゃん本人がいつか、真剣な恋を知ったときの物語、ちょっと読んでみたかったなと思いました。

『眠れる街のオルゴール』(後編)
景くんも千鶴先生も安曇さんも柳さんも、出てくるのはみんなみんな、本当に優しくていいひとたちだなあ、と。
優しさのあまり、ときに現代の人の世に生きづらくて、疲れてしまうこともあって。未熟な子どもなら、なおさら。
その優しい人たちが、頑張って勇気を出して、仲間と手を取り合い支え合いつつ、風早の街を救い、大切なひとの心を救う……そんな素敵な現代のおとぎばなしで、ラストまで読むと、ああやっぱり村山先生のお話、優しい気持ちで胸がいっぱいになりました。

あのいわくつきのオルゴールは、『はるかな空の東』の魔術でほろびた街のひとたち、邪神信仰のひとたちのことを、なんとなく思い返してしまいました。
前巻から、景君、主人公として本当に色々頑張ったと思います!安曇さんとふたり協力して頑張る姿も良かった。ふたりとも良い子だよ本当……。
安曇さんも純子さんもそうなんですが、幽霊でも読んでいて悲しい怖い気持ちにならないところが、不思議だなあと思います。書かれ方が軽いわけではけしてないのですが。村山先生マジック(笑)。
おばあちゃんのエピソードがとても好きです。私自身の祖母との思い出も重ねあわせてしまいます。
千鶴先生というか千鶴ちゃんは、自分を強く見せようとがんばってるけれど、実のところ繊細で弱いところもあるんだな…と手紙の方のお話のときから思ったりしました。
うーん、今の大人になった私はよけいに、そんな千鶴先生に共感できるというか。
由布ちゃんと千鶴ちゃんのラストが、一番好きでした。昔から読者としては、やっぱりね(笑)。
あと、最後の決め技を使う由布ちゃんがなんといっても格好良すぎました……さすがです。

年月が流れても、由布ちゃんが由布ちゃんでいてくれて、それがとても安心できることでした。


昔と今、物語の中ももちろんなのですが、私自身中学生のころ読んでいたお話と今になって初めて読むお話が、今の私の心の中で色々と重なりあって、複雑な余韻を残してくれて、ああ、素敵な読書のひとときだったなあ、と思いました。
そうそう、夜のイメージが強い本だったなと、今回思いました。
風早の街の夜は、どのお話の場面でも、闇にあたたかな光がきらきらかがやいていて、お洒落でどこか懐かしいです。
人が寝静まっている時刻、仲間と一緒のひみつの冒険、ちょっとわくわく感があるよね(笑)。

最後になりましたが、表紙のイラスト、今回も素敵です~。
だいだい色と青色の取り合わせがお洒落!そしてあったかくて優しいです。猫のポーズがかわいい。


一昨日と昨日にそれぞれの記事に拍手下さった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: 村山早紀さん

タグ: 村山早紀 

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