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『恋のドレスと追憶の糸 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』青木 祐子 

恋のドレスと追憶の糸 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)恋のドレスと追憶の糸 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)
(2009/07/31)
青木 祐子

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ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』シリーズ、再読16冊目、本編的には14巻目。
『薔薇色』でシャーロックやパメラとおだやかな日々を送るクリスの前に、行方知れずだったユベールが現れる。
トレヴィシク家の元使用人にして過去のクリスとも面識があるユベール。トレヴィシク伯爵の娘・イヴリンと恋仲である彼に、クリスはイヴリンが会いたがっていることを伝えるが、すべてが終わったら迎えに行く…との言葉を残し、去っていく。
一方、シャーロックの依頼をうけて闇のドレスのことを探っていた弁護士ケネスも、トレヴィシク家やクライン家、『薔薇色』の過去、クリスの過去の深いところまで近づきつつあった。
恋のドレスと闇のドレス、複雑にからみあう過去と現在の愛憎劇に翻弄される恋人たちの運命は、果たしてどうなるか……!?

ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』シリーズ、本編完結前に再読していた最後の巻になります。
(『聖者は薔薇にささやいて』は番外編なのでいったん読み飛ばしてしまいました……ちょっと待っていてねパメラちゃん。笑)

この再読記事は、ここ以降の巻のネタばれをどうしても書き混ぜずにはいられなかったので、一応追記の方に収録することにしますね。
シリーズの先の方までのネタばれ大丈夫、というお方は、どうぞクリックして読んでやってください~。


この巻は、ええと、読み終えてまずはひとこと。
何度読み返しても、これしか出てこないです。

シャーロックさまの、ばか!……。

ばか、ばか、ばか……(エコー)……ほんとうだよもうアントニー(笑)。

いえ本当、直前までの甘い雰囲気が信じられないようなラスト一章の急降下展開に、リアルタイムで読んでいた当時はもう、大ショックでした……。クリスの悲しみと涙に、私の心臓もぎゅーっと痛くなりました。
あきさんのこのあとがきのワンクッションがなければ、正直、実生活でもひきずっていたんじゃないかと思います(汗)。
そしてユベールとイヴリンさまの株が一気に下がり、その後クリスとシャーロックの仲が落ちつくまで、このふたりを冷静に見守ることもずっとできなくなっちゃったりしました(苦笑)。

そんなこんなで、初読時はとにかく冷静に読むと言うことがまったくできなかった巻だったのですが、今になって再読していると、これまた全然違う風に読むことができて、へええと感心してしまいました。本当によくできているなあこのお話。読み込むごとに実感するのです。

クリスは結局のところ、いつも通りに闇のドレスに近づきつつあったイヴリンさまを救おうと頑張っているだけだし、シャーロックだって、誰に何を聞かされても、最後の一瞬までずっと、恋人であるクリスをひたすら信じて信じ抜いているんだけどな……あああ。
クリスの揺るぎない仕立屋としての信念と、シャーロックのタイミングの悪さが、ぶつかっちゃったのね(泣)。
こんなに想い合っている一方で、お互いがお互いを信じ切れていなかった、秘密を持っていたのが、まずかった。本当にまずかった。

まあ結局のところ、闇のドレスサイドの人間が、ことをややこしくしたんですよね。クリスが昔作ったドレスによけいな意味を含ませて、悪用して、若い恋人たちをさんざん悩ませて。
というか、トレヴィシク伯爵は結局自殺したんじゃなくって、ギルレイ達が自殺に見せかけて殺したんでしたよね?(『月の降る城』より)それを何知らぬ顔でクリスに罪をかぶせて、シャーロックをあおって……うう、本気で怒りを覚えますよ。

……なんだか再読記事のくせに書いていてだんだん冷静じゃなくなってきましたが(苦笑)。
ええと、最初の方、『薔薇色』でアイスクリームを作っている辺りは、おだやかーで本当にしあわせでした。
アイスクリームを作るのに失敗してあんなに不機嫌になってたのに、クリスとふたりきりになってなだめてもらってデートの約束をとりつけて、結局機嫌を直しているシャーロックが笑えるの…そしてかわいいです。

そしてシャーロックなりに、クリスのためによかれと思って色々行動をはじめるわけですが。
……うん。本当にお貴族様ですよね、この時点のシャーリーは……。読んでいて苦笑いです。
『薔薇色』への出資が、過去のリンダの『薔薇色』とおんなじことになってしまうということぐらいは、気付いてほしかったな!
そしてパメラがはじめて「あたしはおりる」と、クリスと離れる可能性を考えた場面も、さりげなくショックでした。
ま、クリスとパメラの仲は、そのあとのレモンのクッキーをいただきつつの会話で、あきれるほど無欲なクリスにパメラが毒気を抜かれるかたちで、結局揺るがず終わったので、ほっとしましたが(笑)。

アントニーのタイミングが良すぎるのに、笑ってしまったり。朝市でピーマンを買ったパメラと口論した後で屋敷に帰ってきたら、赤ピーマンの料理作ってるとかさ。
ビアードが「あの子なら大丈夫」と太鼓判を押していたのは、『秘密の鏡』や『舞踏会の青』でさりげなく結構会話していたパメラのことだと思い込んでのことだったのね、とか。

そして中盤からは、ユベール視点のトレヴィシク家、クライン家、クリスとリンダ母娘にまつわる長い過去語りがはじまります。
ユベールは、あれでけっこう純粋に恋する男だし、なんだかんだでクリスにも優しいし、悪い男じゃないなあ…と見直してしまいました。闇のドレスサイドで働いていたのも、すべてはイヴリンのため、トレヴィシク家のためでしたし。
ま、あのラストの退場の仕方ですべて台無しなんですけれど!あそこでひとり取り残されるクリスが、本当にかわいそうすぎ。
そしてイヴリンさまがどうしてユベールみたいな男のためにあそこまで必死になりふり構わず行動していたのか、私も正直不思議だったのですが……再読して、少しは理解できたかな。赤ちゃんのため、というのもあったのね。
第三者のユベールにも分かるような、母を慕う子の気持ちが、恋におぼれるリンダには理解できていなかった、という描写が、胸に痛かったり。

ラスト直前まではそれでも、今までのシリーズの中でも一番ラブラブだったと思うのです。
ドロシアさまとの会話の中で、クリスとの結婚についてはじめて考え出したのであろうシャーロックの場面は、読みごたえがありました。貴族にしてはおおらかな考えの持ち主とは言え、これは彼一人の問題じゃすまされない。彼の覚悟って相当のものだと思いますよ本当。彼のクリスへの真摯な想いが泣けてくるほど貴いです。
終盤のデートもラブラブで美味しかったです。おめかししたクリスの挿絵がほしかったです!(いや、あるんですが、シャーロックにかくされて肝心のクリスのおめかしが見えないじゃありませんか……笑)
そして風に吹かれた訳でもない釦に、何度読んでも大笑い。全然分かっていないクリスがかわいすぎです♪

その後はもう、書いてきたとおりの急降下展開で……あのラストへすべてがぐいぐいひっぱられていく展開は、何度読み返しても息苦しくなってきます。
今読んでいると、シャーロックもクリスも、それぞれがんばってたところもよくなかったところも冷静に分かるんですが……まあ、やっぱり、シャーロックがまずかったよね(苦笑)。アントニーが正しいです。

クリスは傷ついて、闇に近づいてしまうのか……と思いきや、そこは徹底してはねつける彼女、やっぱり強いなあと思いました。
そしてなにより帰ってきたクリスを力いっぱい抱きとめて泣かせてあげたパメラが本当にもう素敵過ぎます。

この巻のあきさんの挿絵、どの場面のものも、シリーズ全体から考えてもかなり完成度が高い気がするのですが、私だけでしょうか?
とくにクリスの瞳が、どの挿絵もすごくいいと思うのです。透明感があって、感情をなみなみたたえていて。
特に最後の悲しみのシーンが……(涙)。


お気に入りの名台詞、名場面のセレクト。

彼は、いったん決めたことは守ろうとする性格なのだ。
言葉を大切にする人なのだ。言葉というものを、自分に対する誓いとして使う人。だから、彼は安易な言葉を吐かない。 (61頁)

――クリス視点から見るシャーロックの言葉の使い方が、すごく好きなのです。


その少女の瞳は、寒い湖のようだった。
晴れたときには輝くような光を放つけれど、ふだんは霧に隠れている。
さびしい、緑色の湖面のようだった。 (72頁)

――ユベールの回想のはじまりのこの部分の描写、お気に入りなんです。
近所の川の近くを冬の昼間に通りすがるたびに、この文章を思い出して、ちょっとながめてクリスのことを思い浮かべてしまいます。


「ピクニック、すばらしいですね。今だったら、どこがいちばん美しいですか?」
シャーロックは会話に参加した。女性たちは目を輝かせて、シャーロックを見つめてくる。
シャーロックは優雅に足を組み、すきのない笑顔を浮かべる。
内心はもちろん、いちばんすばらしい場所に、クリスを連れていってやろう、と考えている。きっと、よろこぶだろう。 (179頁)

――うわあ、シャーロック、女性の敵ですよね!!(苦笑)
クリスたったひとりだけにどこまでも誠実なシャーロックがとても好きです。


本当、たとえ仲違いしてもどんな展開になっても、シャーロックはひたすらクリスただひとりに一途で、他の女の人なんてまるで見えていなくって。
どんな残念なことをやらかしても(笑)、まっすぐでまったく損なわれない愛情が、ひたすら格好良くて美しいのです。
冒頭のあの文章は、最後の最後で恋人を守りきれなかったシャーロックの、悲鳴みたいな本音の叫びなのかなあ、とか。

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カテゴリ: 『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』シリーズ

タグ: ヴィクトリアン・ローズ・テーラー  青木祐子 

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