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『ロスト・グレイの静かな夜明け』野村 行央 

ロスト・グレイの静かな夜明け (コバルト文庫 の 4-1)ロスト・グレイの静かな夜明け (コバルト文庫 の 4-1)
(2012/08/01)
野村 行央

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不慮の事故に巻き込まれて亡くなった十五歳の少女・アズサは、見知らぬ場所で目を覚ました。
そこは、心残りを抱えて亡くなった者がたどりつく「霧の壁」の向こうの世界だという。
知る人もいない世界で、再び「生きる」ことになったアズサ。
心優しい人に出会う一方、そこは武器商人が権力をにぎる町で、アズサは騒動に巻き込まれることに――。


コバルト文庫の新刊、新人さんの作品です。
竹岡美穂さんの美しく雰囲気ある表紙につられたのと、コバルト文庫の夏のキャンペーンのポイントを貯めたかったのとで(笑)、お買い上げすることに。
竹岡美穂さんのコバルト文庫挿絵って、考えてみればとても久しぶりな。

不思議な設定の世界の中で、最初から最後まで、淡々と静かに、ゆるやかに紡がれてゆく物語でした。
一応主人公のアズサの一人称なのですが、アズサはどちらかというと物語の語り手、傍観者的な立ち位置というか。
物語の中で、アズサはひとつの事件に巻き込まれるのだけれど、緊迫した場面でも、彼女の語りはやはりとても静か。

真面目で優等生でなんというか個性も薄い感じのアズサでしたが、いつでも凛とゆるがないたたずまいが、すごくいいなあと思いました。頑固者といえばいいのか(笑)。
プロローグ、アズサを育ててきたご両親のエピソードを読んでいると、彼女がこんなにまっさらないいこに成長したのも、そうですね、納得できるのです。
タイニーキッチンでピアノを弾くアズサ、もそんなに描写ないけれどいいなあ。正体不明のピアニストという設定が個人的に好きです。しかも美少女だし(←竹岡さんのイラストから勝手に判断。笑)

彼女が出会った「霧の壁」の向こう側の世界の人たち。
私は特に、エイムとディアと子どもたちがアズサを受け入れてわいわいやっている場面が、楽しくて心和んでお気に入りでした。
優しくて茶目っ気ある少女のような老婦人のディアさんが大好き。もと跳ねっ返り娘でやはり優しい先生(見習い?)、エイムも好きです。
優しすぎるほど優しい人たちだけど、物語の世界ですもの、癒されて良かったです。
とても変わり者なサムシィも、生き方が格好いいと思いました。タイニーキッチンの料理がとても美味しそう。本当に食べるのが好きなんだなあ(笑)。
彼女の正体は、まあ何かあるんだろうな……とは思っていたので、なるほどね。そういうこと。
男性陣、カーゴとスタイフ、マニージさん達のあれこれ……性格も立場も違う男たちのすれ違いって難しい。カーゴもスタイフも、不器用な生き方をしているなあ。
事件に巻き込まれながら彼らの事情を少しずつ聞いていくアズサでしたが、私は特にスタイフさんの身の上話が、印象に残りました。

アズサの「心残り」私は一読しただけでは正直いまいちぴんとこなかったのですが、彼女のご両親が大好きで大切に使っていた言葉を、自分自身の力で、かたちにしたかったのかな。とか。

竹岡美穂さんの各章扉絵ごとのイラストが、世界観に雰囲気ぴったり調和していて、期待通りに素晴らしかったです。
特に第二章のサムシィとアズサの厨房にての絵がお気に入り。
できればディアさんとエイムの挿絵もほしかったですね……(笑)。

死後の世界、と単純に言うには奇妙な独特の世界設定、個々のキャラクターの背景など、語られていない、よくわかってない部分もたくさん残されたままで、色々物足りないといえば物足りない、けれどラストも淡々としつつ「静かな夜明け」そのものの雰囲気できれいだったし、私は悪くないなと思いました。
今のコバルト文庫らしさはほとんどなかったけれど、それが逆にいいなと思いました。こういう変わり種のお話が読めると、なんというか、安心します。ずっとコバルト読者だった身としては。
静かにつむがれる文章と竹岡美穂さんの美しい挿絵と装丁と、すべて込みで、素敵な一冊でした。
そうそう、あとがきも、ちょっと変わったスタイルでした。まるで、本編から連続して語られているような(笑)。


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 野村行央 

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