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『折れた竜骨』米澤 穂信 

折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)
(2010/11/27)
米澤 穂信

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舞台は魔法が存在する12世紀末、ロンドンから船で3日ほどのところに浮かぶソロン諸島。
ソロンの領主の娘・アミーナ・エイルウィンは、遠方から旅をしてきた騎士ファルク・フィッツジョンとその従者ニコラ・パゴと出会う。
ファルクは、ソロン領主ローレントに、その身が忌まわしき暗殺騎士に狙われていると伝えに来たのだったが……。
アミーナの依頼を受けて、ファルクとニコラは、魔術の力を借りつつ、推理によって領主を倒した犯人を突き止めようと奔走する。


中世イギリス・ソロン諸島を舞台に書かれた、ファンタジー&ミステリー。
中世イギリスって馴染みないけどどんなだろうと興味をひかれたのと、ネット上の皆さまの高評価につられて、読んでみることに。
語り手が領主の年若き娘・アミーナお嬢樣というところが、女の子が活躍するお話大好きな私的に重要なポイントでした。
未知の世界のお話でも、思っていたよりするっと入り込むことができて、そのまま最後まで楽しく読むことができました(笑)。

普段本格ミステリーはあんまり読まない(というかミステリーをミステリーとして読めない……)私ですが、読んでみるとそう問題なく面白かったです。
事件が起こって主役三人組が謎解きに地味に調査を重ねて奔走する、という話の筋がシンプルで分かりやすかったからかな。
ファンタジー的な部分と、中世イギリスの風俗的な部分も私には新鮮で、楽しんで読み進めていました。あと主役三人組の協力しつつの掛け合いがとても良くて。
なにより作品に漂うこの淡々とした独特の雰囲気が好きだなあ。影の要素はありつつも、でも意外と親しみが持てて馴染みやすい。文章もさくさくと読みやすいです。
そしてラストの謎解きは、大掛かりで鮮やかでお見事で、感心してしまいました!
ニコラのビスケットが妙に印象的で、シリアスなお話にとぼけた味を添えてくれてて、いいなあ(笑)。

上にもちらっと書いた通り、ヒロインで語り手のアミーナお嬢様と、騎士ファルク、その従者ニコラがそれぞれ好感をもてるいいキャラクターで、三人が協力し合い困難な謎解きに奔走する樣に、どきどきしながら真剣に応援してしまいました。
若くして領主の娘としての自覚をしっかり持っている聡明なお嬢様、アミーナがなんといっても素敵!領主の女性としての立場に縛られつつも凛としたものを感じましたし、特に後半の戦いに赴く彼女の姿がとても格好良かったです。未知のものにもくもりない眼差しを向ける姿も気持ちいいです。
海の向こうの世界への憧れも、なんだか共感できるのです。
メインの謎解き役の騎士様・ファルクもありとあらゆる場面で格好良かったです!ニコラが途中で語った過去話で彼の人物に深みが加わって、そして、最後がまた格好良くて……ほろっとしました。
ファルクとニコラの師弟関係も読んでいてとても好きでした。弟子に愛情込めて厳しく接して教え育ててる感じが、いいです!(笑)
そのニコラも、過去話のシーンからはより親しみを持って読んでいけました。
普段は年不相応に落ち着いてて有能な感じだけど、オート麦のビスケットを師匠にかくれて食べてたり、自分のスープには入ってなかったニシンこだわってたり、歳相応の顔がぽろっとでてくる場面がかわいい(笑)。

なんとも怪しげで個性派揃いの傭兵達や、領主家の他のメンバー達、呪われたデーン人……脇役陣も皆色々味があって良かったです。
私はなんとなく家人のあのひとがあやしいとぼんやり思っていたのですが……全然はずれてました(笑)。
傭兵達の中では、ウェールズ人の兄弟達が好みだったかな。あとコンラートも他の胡散臭いメンバー達も戦いの場面では皆とても格好よくて!
侍女のヤスミナ関連のエピソードはもう少し読んでみたかったです、個人的に。
アダムは……うーん…(苦笑)。彼がもっとしっかりしていたら、アミーナの人生もまた違ったものになっていたんじゃないかな、考えてしまいます。

中世イギリスの風俗あれこれ、描写がふんだんにあった訳ではなかったのですが、興味深かったです。
最初の市場の場面が活気があって好きだったなあ。ヴェネツィアの商人のシナモンたっぷりの砂糖菓子、アミーナの立場で食べるのだとしたら、異国の味がたっぷりして、夢のように美味しそうです。
林檎のパイも美味しそうだな。
吟遊詩人が英雄の冒険の歌を披露する場面も雰囲気が伝わってきて面白かったです。

ラスト、事件が切なくほろ苦い解決を迎えて(特に最後の最後のデーン人とソロンの過去の因縁が…なんとも)、ふたりともこれから困難な人生を歩んでいく予感を感じるのですが……、それでも今このときふたりが交わした約束の場面がとても良くて、読後感は不思議と爽やかで心地よかったです。
聡明なお姫様と幼く勇敢な騎士の誓い、きゅんとして心温まりました(笑)。若さの衝動に身を委ねるのとは逆の人生の選択だけど、このふたりらしくて格好よくてロマンティックなんだ、でもやっぱりちょっと切ないけど……。

中世の魔法とミステリーの冒険、夏の読書にはぴったりで、充実した時間を過ごせて良かったです。
おすすめして下さった皆さま、ありがとうございました~。
食いしん坊な私は、オート麦のビスケットを食べたくなりました!

読んだあとにたどり着いた特集頁。こちら
地図がとても参考になりました。イエルサレム、トリポリって本当に遠くだったんだなあ。
ソロンも、実在の場所じゃなかったですね(笑)。


ここ何日かにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 米澤穂信 

この記事に対するコメント

とっても面白かったです。
この作家の作品をかたっぱしから読んでましたが、
3回も繰り返して読んだのは、これだけです。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。

URL | 藍色 #-
2013/11/08 16:29 * 編集 *

Re: タイトルなし

>藍色さん
コメント&トラックバック、ありがとうございます。

この作品、とても面白かったですよね~!!
私はこの作者さんのお話のすべてを読んだことがあるわけではないのですが、その中でもかなりお気に入りな一冊です。
遅くなりましたが、こちらからもトラックバック、送らせていただきますね。

URL | fallclover #SvKcs0as
2013/11/17 19:10 * 編集 *

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粋な提案 | 2013/11/08 16:04