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『シュガーアップル・フェアリーテイル 銀砂糖師と水の王様』三川 みり 

シュガーアップル・フェアリーテイル    銀砂糖師と水の王様 (角川ビーンズ文庫)シュガーアップル・フェアリーテイル 銀砂糖師と水の王様 (角川ビーンズ文庫)
(2012/09/29)
三川 みり

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『シュガーアップル・フェアリーテイル』シリーズ第10作目、『砂糖林檎編』のスタート。
寿命が訪れ消えかけているミスリルを救うため、アンはシャルと共に、瀕死の状態からよみがえったというシャルの兄弟石ラファルと、同じく兄弟石で行動を共にしているというエリルを探すことを決意する。
一時的に銀砂糖妖精の仕事から離れたいとアンはヒューに願い出るが、許されない。銀砂糖師としての責任を問われてアンは王家勲章を返上することに……。


『シュガーアップル・フェアリーテイル』シリーズも、だいぶ続いてきましたねえ。
どこまで長いお話になるのか最初のうちはいまいち分からなかったものですが、順調に新刊を読むことができて、嬉しいシリーズです。
表紙、青の花の色味がとても美しくてうっとりため息です。
アンの表情にもはっとしました。彼女もいつの間にか、大人びてきれいになってきたなあ。
前の記事に書いた『英国マザーグース物語』と合わせて、今月はあきさん表紙の少女小説を二冊も読むことができて、幸せです!目の保養です(笑)。

実際に頁を開いて読み始めて。
……ええと、なんだかとにかくすべてが、ラストで吹っ飛びました。
読み終えて、しばらくぼうっとして作品の世界から抜け出せなくなってしまいました。
このシリーズって、次巻への引きが容赦無い巻がこれまでも多かったと思うのですが、その中でも今回が、間違いなくいちばんひどいと思います(笑)。

ひとまず落ち着いて、最初から。ネタばれありの感想を。


どんな困難にもくじけずにひたすら前をむいて頑張り続けるアンと、お話全体を流れるすっと清涼な空気、今回も変わらず素敵でした。

ミスリルを救うため銀砂糖妖精の仕事をいったん抜けるアン、それを認めないヒュー。
読む前は私、このアンとヒューの銀砂糖師の王家勲章をめぐるバトル、プラス周りの銀砂糖職人たちのあれこれが今回のお話のメインだと思っていたのですが、実際にはそうでもなかったですね。その問題に関してはけっこうあっさり解決されました(笑)。
(でも解決にいたるまでのキャットとヒューのあれこれも良かったです。口は悪いけれど底抜けなお人好しの職人キャット、シリーズを読めば読むほど好きになっていきます。)
むしろ今回は、アンの周りの人間の世界をいったん離れて、シャルの兄弟妖精・ラファルとエリル寄りの物語でした。
彼らが身にまとう空気の、なんて恐ろしく冷え冷えとして痛いこと。それでいて拠り所のない寂しさ、哀しみも切にこもっていて、そういうのが読んでいてとても印象的でした。

そんな感じで、ラファルは本気で怖かったし、アン&シャル視点で読んでいると、やりきれない。
アンにもシャルにも本気で憎しみを抱いているのがびしびし伝わってくるので、最後まで至るところでひやりとしつつ読んでいました。
一方のエリルは、思っていたよりも、ただただ無邪気で純粋無垢で。存在自体は恐ろしいけれど、生まれたての子どもですね。
ラファルを盲目的に母親のように慕う様は、相手がラファルでも、やわらかな雰囲気。
彼がアンとシャル、ミスリル達と接して、ラファルとは違うやりとりをして、得たものを素直に糧にして、次第に成長してゆくさまが、読んでいてとても素敵でした。
ラファルも、てんとう虫とか、おだやかな場面もあったんですけどね……。あそこも胸を締め付けられました。

で、アンとシャルのふたりも、シャルがようやく想いを伝えて何かと積極的になって、これはいよいよ甘い雰囲気になるか……という際で、ラファルたちとの危険と隣り合わせの旅になって、進展は停滞気味。
うーん、なかなかゆったり甘々なお話にはなりませんねえ(笑)。いやそれ以上にミスリルが大事ですけど!
ルルが夜に訪ねてきたシーンが好きでした。笑っちゃいました。もしかしてルル、察した上で言ってるの?(笑)
個人的には、「恋人」というより、「思い人」という表現のほうが、アンとシャルのふたりにはしっくりくるんですよね、なんでかな。
ここにきてもためらうアン、読者的にはもどかしくて仕方がありませんが、でも相手を大切に思うがゆえのためらいで……難しいな、と思いました。
リズのかつてのお城関連のエピソードも切ないです。

緊張感漂うお話の中で、それでもミスリルが、今回も癒し役でした。
タイトル「水の王樣」って、そういう意味なのね!
妖精王ミスリルに和みました。まあはじまりはいかにもミスリルなたわいない勘違いでしたが、でも本当に、こんな王様だったらいいと思う。きっと一番大切なものを、ミスリルはちゃんと持ってる。
アンが作った王冠の砂糖菓子、イラスト込みで素敵でした。大きいのはいいことだ、うんうん。
そしてラスト直前、アンの心をずっと縛っていたためらいを、とてもシンプルな言葉でようやく解きほぐしてあげたミスリルに、ほろっと泣きそうになりました。この場面本当にいいです。ミスリル大好き。
だからこそ、アンのがんばりがミスリルの運命に勝ったのは、とっても嬉しく、胸があつくなったのです。ですが……。

ラストのアンとシャルの場面、本当に上手く書かれていたと思います。
切なすぎる……それでもようやく想いが通じ合った幸福も、確かにとてもよく伝わってくるのです。夢見心地に幸せなのです。
それにしても毎回こんなにシンプルに、大事な人のため、砂糖菓子のため、妖精の幸せのため、ひたすら頑張って頑張り続けてきたアンに、この仕打ち。正直、やり切れないです。
確かにラファルの歪んだ憎しみも分かるんですけれど、けれど、こんなに他の誰よりも妖精のために尽くしてきたアンに……、ねえ。

少し落ち着いて冷静に考えてみると(だっていくらなんでも新章スタートでいきなりそれは、少女小説的に考えてありえないでしょうし……)、エリルの能力が今後キーになってくるのかな、やっぱり。
でも、どうつながるのかが、不安です。代償を払うとしたら、それはいったい何なのか。
他の方の感想を読ませていただいて、私も確かに、悪い予想が。助かるとしても、アン的にそれってどうなんでしょう……。

この辺りの展開、読んでいて荻原規子さんの『空色勾玉』をちょっと思い浮かべました。

うん、色々考えますが、とにかくアンとシャルの幸福な未来はいつか絶対に実現すると信じて、黙って新刊を待とうと思います。


あ、そういえば、『プレミアム・ビーンズ』の『シュガーアップル』シリーズの短編も、先日読みました。
ベンジャミンのまさかの黒さにおののきました……(笑)。でも確かにごはんは美味しそう。


ここ何日かの間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ビーンズ文庫

タグ: 三川みり 

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