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『アンの想い出の日々 下巻 赤毛のアン・シリーズ11 』ルーシー・モード・モンゴメリ 

アンの想い出の日々(下): 赤毛のアン・シリーズ11 (新潮文庫)アンの想い出の日々(下): 赤毛のアン・シリーズ11 (新潮文庫)
(2012/10/29)
ルーシー・モード モンゴメリ

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上巻に引き続いての『アン・シリーズ』最終巻となる一冊。
ある日古い教会で行われた結婚式。結婚行進曲が演奏される中、花嫁、花婿、ふたりの両親、友人たち……それぞれの想いが交錯する。
そして『アンの娘リラ』にてブライス家に大きな影を落とした大戦、息子の戦死。
アンに似て詩の創作を愛した青年の死を、残された家族はどう見つめるのか……。
上巻と同じく、詩、アンの周りの人々が主役の短編、ブライス家の語らいが交互につむがれる、感動の完全版。


中学生の頃からファンだった『アン・シリーズ』、今になってのまさかの(笑)シリーズ最終巻。下巻もこうして、ついに読み終わりました。
下巻の内容は、上巻からの「第一部」の続き、それとウォルターが戦死したあとのエピソードになる「第二部」、大きくふたつに分かれていました。
詩と短編とブライス家の語らいと、お話の構成要素は同じでしたが、やはり第二部は……読んでいて至るところで悲しくなりました。
うう、私ウォルター大好きだったんですよ……そしてユナも大好きだったんですよ……(涙)。

それでもけして、悲しいばかりのお話ではなくて。
素朴で豊かなユーモア、長所も欠点も持ち合わせた登場人物達へのあたたかな愛情……えー、なんと言いあらわせばいいのか分からないのですが、(少々ビターなものが混じりつつも)この読み心地の良さは、本当に、『アン・シリーズ』のものだなと、最終巻を読んでいても、しみじみと思いました。
この分厚い本、先の展開知りたさに読み進めていって、その一方で、だんだんページ数が減っていくのが、もったいなかったです。もっともっと、この世界に、ひたっていたかった。

悲しみはなくならない、やっぱりそれでも春はまた、巡ってくるのですね。
あと、アンとギルバートは、いつまで経ってもやっぱり最高の夫婦だと思いました!!
なかなか悲しみから立ち直れないアンを、常に心から案じて支えるギルバートの懐深い愛情が、読んでいてなんとも優しく素敵でした。
ブライス家の語らい、リラやフェイスやユナ、気立てのいい娘さん達も会話に加わってきて、これも嬉しかったです。

そして、この記事以前にもブログ等々で既に何度も書いてきていると思うのですが、私はメレディス牧師一家の次女・おとなしくて悲しげな目をしたユナが、昔から大のお気に入りで。シリーズの中でアンの次か、もしかすると同じくらいに好きで思い入れのあるキャラクターかもしれません。
だから彼女の秘めた恋が、あんなかたちで無残に摘み取られてしまったことが、もう本当に、やりきれなくて。切なくて。ロマンスを好むようになった大学生のときに再読してから特に、そう思うようになりました。
今回の本でも、彼女はやっぱりというかひかえめで目立たなくてほとんど登場シーンはありませんでしたが、それでも何気なく書かれていた「あること」に、私は読んで、いくらか救われたような気持ちになりました。
ああ、それが本当なら、ユナにとって、とても良かった。

ええと、それでは短編をひとつひとつ、簡単に感想を語っていこうと思います。
読んでから間をあけて書いているので、抜けてるところもたくさんありそうですが(笑)。
一応ネタばれありということで。

『仲直り』
タイトルとは裏腹に、この本の中では特にビターなお話。
女二人の情(なんというのがいいのかな)が、リアルでした。

『パットはどこへ行く?』
これは懐かしの児童文学っぽいお話でした。
寄る辺ない少年の境遇が哀れで気持ちがひしひし伝わってきて、泣けてきました。
とうとうバスで家出した彼がやってきた『いにしへ農場』とそこの住人達は、皆好きでした。
この結末を迎えることができて、本当に良かったな、パット。バーニーとバーバラ・アンにもにっこり。愛する者を得て腹をくくったラストのバーニーの台詞が格好いいです。
いにしへ農場、『アン・シリーズ』の中に出てくる農場や建物の名前は素敵なものが多くていいですねえ。

『幸運な無駄足』
この巻の短編の中ではこれが一番好きだなと思います。
よくもわるくもマイペースなリンカーンと物静かで控えめなジャネット、これ以上ないベストカップルで、きゅんときました。
ふたりの過去の出会いの場面と再会の場面がどちらも素敵。ジャネットみたいな女性が幸せにしているところを読むのが大好きです。

『割れ鍋と煤けたやかん』
結局のところ一枚も二枚も上手だったのは、クラーク老婦人だったという。
なんだかこれも、波津彬子さんの『うるわしの英国』シリーズに似た感じのお話があったような(笑)。
クリッシーとクラックおばさんとクラーク老婦人、三人の名前がそっくりでややこしくって、読んでいて結構たいへんでした(笑)。
いい娘なんだろうけど少々考えなしなお嬢様クリッシー、彼女を可愛がるあまりに強く言えずにひとりはらはら心配し続けるクラックおばさんが、読んでいてお気の毒でした。
でも私も、庭造りが上手な男性は好感高いです!

『弟に気をつけて!』
この短編から第二部。
うーん、また何に首を突っ込んでいるのやら、アン……。…みたいに、最後まで読んで思いました(苦笑)。
アルマもティモシーも良い感じに人間くさくて、読んでいくごとに好きでした。裏で何かが仕組まれているんだろうな、とは思いつつ、アルマのお料理が美味しそうでした!

『花嫁がやってきた』
とある結婚式にて、参列者達のそれぞれの胸の内が次々に語られてゆくスタイル。
最初のうちは、打算つきのあまり幸せではない結婚だったのかな……と思っていたのですが、最後まで読んでみると、全然そんなことなかった。むしろすれ違いの末に結ばれた純愛カップルで、良い感じに裏切られて読後感も良かったです。
このお話だけではないのですが、当たり前のように作中に自動車が出てくるようになって、本当、時代は進んでいるんだなあと実感します(笑)。
そしてナンやダイアナのロマンスや結婚のお話も、やっぱりできれば読みたかったな(笑)。

『あるつまらない女の一生』
正直はじめはものすごく陰気な話だな……と思っていたのですが、読み終えて、深い印象が心のなかに残りました。
たしかにアーシュラは、「生きた」んですね。表には一生立たずとも、精一杯。
アーシュラの周りの人たちこそが全員つまらない人間に思えてきますねえ。

『奇跡の出会い』
世代交代がこんなところまで……思わずため息がもれた、そんなお話でした(苦笑)。

そして、詩とブライス家の語らいパート。
第二部になると、ウォルター作という設定の詩も、アン作の詩に混じって登場してきました。ウォルターの詩に途中からアンが手を加えて完成させたという詩も。
フェイスやリラがいつの間にか結婚していたり、アンの孫が生まれていたり、ああ、時代が進んでいる……。
「私は冬が好きだったわ……、でも、春の希望が失われた今、冬をどうすごせばいいのかしら。」と悲しむアンに、「僕と一緒の人生でも、それほどまでに辛いものかい、アン?」と返す454頁のギルバート。きゅんときて、うるっときました。
405頁からの、ギルバートがジェムに、アンを手に入れるまでお父さんがどれほど苦労したのか、思い出話をしている場面もほのぼのしていて好き。「まったくね、アンが話しかけてもくれなかった何年かがあったのだよ。」……うふふ。ほんとにね!

ウォルターは本当に、美しい想像の世界を愛していたのだな、色々な詩を読んでいて思いました。
ちょっと風変わりなものもあって、確かにスーザンが詩を書くな!と心配していた気持ちも、分からないではないなあとも思いました。(もっとも第二部ではスーザンはウォルターを叱ったことをとても後悔しているのですが……。)
あとジェムとフェイスが、ウォルターは生涯に一度、女性にキスした、それはユナだった……と言葉を交している部分があって。私はここを読んで、良かったね、ユナ、上手く言えないのですが、本当にぎゅっとそう思いました。
この事実のフォローがあれば、だいぶ救われるような気がする。
まあロマンス大好きな私の勝手な思いにすぎませんが……。
多分ユナは、これからも事あるごとにブライス家の語らいに加わって、アンと想いを通じ合わせてお互い心を慰めていくのだろうな、私はそんな風に想像しました。

皆のお気に召さないような、陰気な詩もあったりして。(そしてギルバートは妻の落ち込みようを心配する。)
またの春のおとずれを予感させる詩が、やっぱり好きでした。

そして物語の締めくくり、ウォルターの詩。
こんな詩を、同じウォルターが書いていたとは……ずーん。衝撃的でした。
そのあとのアンとジェムの会話に、ああ、そう言われてみれば、そうだったかもな、うん。ため息。


モンゴメリの晩年はけして幸せなものではなかったこと、そういえば、解説等読んでいて、思い出しました。そういうの、荻原規子さんのエッセイで知ったんでしたっけ。
でも私は、『アン・シリーズ』を実際に読むごとに、そういうことは、つい忘れてしまいます。
だって、どの巻のお話も、私は普通に大好きなんですもの。読んでいて心が満たされて楽しいのですもの。
『アン・シリーズ』はこれからもずっと、私の心の宝物の少女小説であり続けると思います。
最終巻、読むことができて良かったです。


ここ一週間の間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪
全然更新していないのに毎日拍手いただけて、私は毎日ありがたく元気をもらっておりました。
そしてコメントもくださった方、本当にありがとうございます!返信いたしますので、もう少々お待ち下さい~!

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カテゴリ: 『アン・シリーズ』

タグ: モンゴメリー 

この記事に対するコメント

 初めまして。
 今、村岡花子さんの評伝を読んでいまして、それを同時に、アンシリーズなどを読み返しております。もうすぐ、「アンの想い出の日々」も読む予定でいます。こちらでの紹介記事を読ませて頂き、猶更わくわくして読みたい気分にさせられています!
 アンを初めて読んだのは中学一年でした。教科書でアンとリンド夫人のエピソードを読み、その独特な文体や匂い立つような素敵な描写に惹かれました。それから、アンシリーズだけでなく、エミリー、ストーリィ―ガールなどのシリーズも読んできました。
 まあ、ロマンティックな物語に堪能していた時代は十代の半ばまで。今は、周囲の個性的な小母様方に心惹かれます。読みながらくすくす笑っている事もあります。特にミス・コーネリアが好き。既にアンと結婚してたギルバートがからかったり、構う所も面白いです。
 モンゴメリの不幸な晩年の事ご存じなのですね。
 「炉辺荘のアン」の最後の章でアンがギルバートと冷戦状態でイライラしている姿や、クリスティン・スチュワート(「アンの愛情」に出てきますね)に嫉妬したりと、違った一面を見せるのに、驚いた事がありますが、モンゴメリの辛い生活の一端が現れたのでしょうか。
 長々、詰まらない事を書いてしまいました。
 もういい年をして「アン」でもないだろうと余り人には言えない部分もあって、言いたくてうずうずしておりました。
 また、お邪魔させて頂けたら幸いです。

URL | まるさん #X91rLkcY
2013/12/06 14:13 * 編集 *

Re: タイトルなし

> まるさん
コメントありがとうございます。

こちらこそ、どうも、はじめまして!
私なんかのブログに、こんなにていねいなコメントをいただきまして、とても嬉しいです。感激です。本当に、ありがとうございます!
私も赤毛のアンシリーズをはじめて読んだのは、中学生の頃でした。
私も最近は、十代の頃はスルーしていた(笑)、アンの周囲の個性的なおばさまたちに、とても心惹かれます。
ミス・コーネリア、私も大好きです!ギルバートが彼女をからかっている場面は愉快ですよね。私も好きです。
あと私はメレディス家のユナがミス・コーネリアにあることをお願いにいく場面が、昔からお気に入りです。
モンゴメリの晩年のことは、はじめて読んだときは、けっこうショックでした……。
確かに『炉辺荘のアン』のラスト辺りのアンの刺々しい一面は、読んだ時にはびっくりしました。
『アンの想い出の日々』も、ブラックなものを含んだお話が多いように思いましたが……、それでもやっぱりアンシリーズのお話で、私はとても好きでした。
モンゴメリの他の著作も、読んでみたいと思いつつ、なかなか機会がなく(笑)。

まるさんにいただいたコメントで、私もアンシリーズ、また再読したくなってきました!
まるさんとこのシリーズのお話ができて、とても嬉しいです。
また気が向かれましたら、ぜひぜひ遊びにいらしてくださいませ♪いつでも大歓迎です。

URL | fallclover #SvKcs0as
2013/12/10 22:40 * 編集 *

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