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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『花咲家の人々』村山 早紀 

花咲家の人々 (徳間文庫)花咲家の人々 (徳間文庫)
(2012/12/07)
村山早紀

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舞台は風早の街、戦前から続く老舗のお花屋さん「千草苑」。
経営者の一族の花咲家の人間は、先祖代々、植物と会話することができる魔法のような力を持っている。
花屋に併設されたカフェで働く美人の長姉・茉莉亜。
能力の存在は認めているけれど現実主義な次姉・りら子。
姉ふたりと違って魔法は使えないけれど、読書好きで心優しい末弟・桂。
早くに優しかった母親を亡くした花咲家の三姉弟は、それぞれの悩みをかかえつつも、父親や祖父をはじめとする周囲の愛情、優しさに包まれて、日々のびやかに成長してゆく。


村山早紀先生の新作。植物と会話し、心を通わせて魔法のような力が使える、お花屋さんの花咲一家の人々の物語。
村山先生のお話が好きで、そしてきれいな花や植物が好きな私、発売を心待ちにしていました。
先生のツイッターを読ませていただいているとねー。事前の作品紹介、興味をそそられる内容ばかりで、よけいに楽しみだったんですよねー(笑)。

表紙にまず、一目惚れしてしまいました。
カスヤナガトさんのイラスト、美しいです。ピンク色と白色の花、色味が優しくてとってもきれい。
背筋をまっすぐのばしてくちびるにかすかに笑みをたたえて座る娘さん(茉莉亜さん)も、とても魅力的で。エプロン姿が似合っている~。
文字の飾りの薔薇の花も可愛らしいです。

頁を開いて、実際に読み始めて。
お話の中に流れる空気が、優しくてあたたかくて祝福に満ちていて、読んでいて至るところでほろりときました。
村山先生の作品らしく、悲しいことも辛いことも描かれているのだけれど、優しさでていねいにくるみこまれていて、読んでいて全然嫌な気持ちにならない。安心して身をゆだねて癒されました。
花咲家の人々も周りの人たちも、皆本当にいいひとたちだなあ。あったかいなあ……。
言葉のひとつひとつの美しさも素晴らしいです。登場人物たちの名前もおしゃれで物語によく合っていて素敵。

人間のことが大好きで、優しく手を差し伸べたい、身を焦がしても助けたい、と願う花や植物の想いも、メルヘンでとても素敵でした。手折られても人を恨まず喜んで身をささげる花の姿勢が健気で、……身近に咲く花が、より美しくかけがえのないものに思える。
私は花咲家の人々のように植物と会話したりとかはもちろんできないですが、花や草木を見たり触れたりすると、確かになにか「いいもの」を直接受け取れる、そんな気分になれるって、あります。
みずみずしい緑のはっぱや色とりどりのお花に元気をもらったり、ささくれだった気持ちをなだめてもらったり。
そんな感じで、特殊な能力といっても私にとっては日常の延長線にあるような身近なものに感じられて、そういうのが、読んでいてとても良かったです。

花咲家の三姉弟が一応の主人公なのかな。
それぞれ年が離れているし性格も全然違うけれど、皆いいこで素直に好きになれました。
私、こういうほのぼのアットホームな家族ものがとても好きなのです。
お話のいちばん最初、朝食の場で、弟に苦手なほうれん草を食べさせて栄養をつけさせようと苦心している姉の場面から、ああ私、この一家好きだ……とすとんと思いました。
私は次女のしっかりもの理系女子高生・りら子ちゃんがいちばん好きでした。友人の野乃実ちゃんとの仲がとても好き。
彼女が一話目の最後で鈴懸の木の力を借りて子どもに風船を返してあげる場面が、お気に入りでした。人助けに照れちゃって、急ぎ足で立ち去ってしまうりら子ちゃんの姿がとてもいとおしい。

古めかしさと今風のおしゃれな感じが違和感なく同居している千草苑、花咲一家の雰囲気も、読んでいてとても素敵だなと思いました。
カフェ千草、が特に気に入りました。
個人的な話ですが、私が大昔に考えていたこのブログの原型的な「はなのみ亭」の設定と名前が少しかぶっていて(ここにちょっと書いたことがありましたね)、なんだか魔法みたいな偶然だなーと思いつつ嬉しく読んでいました。私の心のなかに今も住まわせている千草さんを、茉莉亜さんに重ねて、読ませていただいたりして。

ラジオのスタジオになっていたり、ツイッターや最新のツールがぽんぽん出てきたり、こういうのも村山先生のお話らしくていいなあ!
ラジオといえば、『コンビニたそがれ堂』で出てきた桜子さん、この話の中でしっかり再登場していて、前よりキャリアを積んで活躍しているようで、前から読者の私はとてもにっこりしてしまいました。
あのコスモス畑も、たぶん、つながっているんですよね。

各話ごとに感想を分けて書いてみようかな。
『黄昏時に花束を』
読み終えて、章タイトルがなんともいえずに素敵だなあ。と思いました。
茉莉亜さんの黒さというか、強かさが好きでした(笑)。確かにこれは、同性の妹にしか共有できないかも(笑)。
そしてラジオ番組で彼女が語った過去が意外で、読んでいてええええっとなりました。優しく美人で天使のような茉莉亜さん、お母さまとの過去の思い出がそんなにほろ苦いものだったなんて……。でも過去の彼女の複雑な思いもとても共感できたのですが。
有城先生の猫のエピソードもすごく好き。
唄子さんと木太郎さんサイドの昔語混じりのエピソードも心に印象的でした。桜の花の奇跡は、なんとなく『赤毛のアン』を読んでいて思い浮かべていました。あれ、桜の花って出てきてたっけ……。
唄子さんの喪失感がリアルで切なくてたまらなくって、木太郎さんの昔の秘めた想いと重なりあった優しさが心に染み入って。

『夏の怪盗』
ちょっとわくわくするような、切ないような、夏によく合っていたお話でした。
美世子さんと三角屋のおじいさんの交流が実現して良かったです。
りら子ちゃんと野乃実ちゃんの友情がやっぱりいい!

『草のたてがみ』
一家の末っ子、桂君の友情&冒険の物語。これもすっごく好きでした。
自分の弱さを自覚していて、そして努力して強く振る舞うんだ。はじめは嫌ないじめっこかと思っていた秋生君が、実は苦労性のいい子で……ぐっときました。
自信無さげにうつむき加減で生きてきた桂君が、お世話になったお兄さんの危機に、奇跡の力をはじめて使って救うことができた場面、とても勇気ある姿で格好良かったです。
クラスメイト四人組の友情もしっかり芽生えたようで、うふふ、よかったよかった。今時の子どもも(←おばさん視点)可愛いですよねえ。

『十年目のクリスマスローズ』
聖夜に花咲一家に訪れた、美しい奇跡。
薔薇の花が本当に魅力的で美しかったです。
正直言うと最初は「そんなに上手い具合に奇跡がおこっていいの?」と思ってしまったのでした、が、この奇跡を一家にもたらしたのは誰か、この奇跡が実現するまでにどれほどの歳月がかかったのかが、読んでいく内に明らかになると……。
うん。これはとてもいいね。すごくいいです。(うまく言葉に出来ない……。)
茉莉亜さんの再会の場面が、いちばん印象的でした。茉莉亜さんもまさに、弱さを努力して努力して、強くあろうと現在の姿になったんだなあと感じました。
草太郎さんの過去の回想~再会も、微笑ましくて切なくて優しくて、たまらない気持ちになりました。
あと、有城さんが茉莉亜さんにプレゼントしたシュトーレンと人魚の絵、ほんのりロマンスの予感を感じてきゅんときました。とてもお似合いだと思います。このふたり。

食べ物が美味しそうな話でも、ありました。
最初の場面で茉莉亜さんがこしらえたミント風味のフランス風肉団子とか、美味しそうで。超高級品・カルピスバターをわざわざ取り寄せるりら子ちゃんの弟への愛情も、いいですね!(私もかつてネット通販サイトでカルピスバターの存在を知った人間です。)
りらちゃんのカフェオレ、だったり、野乃実ちゃんとふたりで飲むココアだったり、印象的でした。
ラストのクリスマスのご馳走も、美味しそうです。
そして有城先生のシュトーレン、ですねえ。この場面本当にいいなあ。私も今年はシュトーレンを作りたくなってきました。


クリスマスももうすぐそこ。一足先に、村山先生に聖夜の祝福をプレゼントしていただいたような、そんな満ち足りた気分になりつつ頁を閉じました。
続きも読むことができるようで、これは楽しみです~。
読み終えて、街の植物園に行きたくなりました。あそこの公園の薔薇園にも行きたいな。
お花が好きな方には本当におすすめです♪

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カテゴリ: 村山早紀さん

タグ: 村山早紀 

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