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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『真夜中のパン屋さん 午前2時の転校生』大沼 紀子 

真夜中のパン屋さん 午前2時の転校生 (ポプラ文庫 日本文学)真夜中のパン屋さん 午前2時の転校生 (ポプラ文庫 日本文学)
(2012/12/05)
大沼紀子

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『真夜中のパン屋さん』シリーズ第3作目。
真夜中にだけオープンする一風変わったパン屋さん「ブランジェリークレバヤシ」。
今回のお客様は、希実に学校でつきまとってきた、変わり者でどこか胡散臭い転校生・美作孝太郎。
笑顔の裏に複雑な事情をかかえた彼が企む「計画」によって、希実をはじめとするパン屋の面々は、またもや事件に巻き込まれてゆく――。


『真夜中のパン屋さん』シリーズの新刊が出ました。
最近色々なところで話題になってきましたねえ、このシリーズ。テレビドラマ化も決定なんですね。

今回のお話の新しいメインのお客様は、希実ちゃんの学校の転校生、美作孝太郎くん。
笑顔と腹話術、最初から相当胡散臭い子で、正直最初のうちは彼があまり好きになれずにお話にいまいち入っていけなかったのですが……、パン屋の常連さんとの思いがけない繋がりが見えてきて、次第にはまりこんで、結局途中からは夢中になって読みきってしまいました。
やっぱり今回も、予想以上にシリアスな事件と結びついていて、ずーん……。
でも後味は、けして悪くなかったです。
これまでひとでなしというイメージしかなかった彼の思いがけない一面を垣間見れて、胡散臭さの裏の裏に隠されていた純粋な思いに心を打たれて、まだまだ人間、捨てたもんじゃないなあ、希実ちゃんと一緒にそんなことを思ったりしたのでした。

希実ちゃんは、最初の方に比べると、まただいぶ角が取れてきて、普通の子っぽくなってきたなあと思いました。
そしてやっぱり本当にいいこです。素直で底抜けのお人好しで、身近に困っている人がいたら、なんだかんだで全力を尽くして助けずにはいられない。たとえ自分に見返りがなにもなくても。
帰る家があって、心配してくれる人がいて、そんな「当たり前」の幸せを、ひとつひとつさりげなく噛み締める希実ちゃんの姿が、読んでいて好きでした。

そして暮林さんと弘基さん、希実ちゃんの常に身近にいて気にかけていて、近づいてくる男子に警戒心を向けたりピンチのときにはダッシュで助けに来てくれたり、なんというかもうすっかり「家族」の姿そのもので、読んでいて、静かにじんわりほっこりしました。
心配性で過保護なお兄さんがふたりいる感じで(笑)。クレさんは「お父さん」の方が近いかな?
希実ちゃんが、確かな家を手に入れることができて、本当に良かったなと改めて思いました。

パン屋の常連の皆のアイドル・こだまとその母親の織絵さん、こだまと孝太郎の父親の美作氏。孝太郎くんつながりで、確か1巻目で騒動を起こしていた彼らに再びスポットがあたったエピソードが、今回たくさん読めました。
美作氏、血も涙もないお医者様だな……と思い込んで読んでいたのですが、いつの間にかブランジェリーの常連客になり、息子の作ったパンをひとりだけで味わい……少しずつ、人間味が見えてきて、なんだかとても良かったです。
きっと多分優しい人でもあるのでしょう。血も涙もないように見えるのは、ある意味、どうしようもない不器用さ、ストイックさのあらわれなんだな。うん、確かにこだまの父親です。
そして織絵さんは、何気にただものじゃないひとだなと思いました(笑)。五股は全然オッケーなんですね。そうなんですね……。

孝太郎くんは、人のいい希実ちゃんを二重三重にもだまくらかしていたのは正直許しがたかったですが(笑)、色々読んでいくと、彼が抱える鬱屈が、痛々しかった。最後で父親と和解できて本当に良かったです。
あと、安倍氏がまた強烈に印象的なキャラクターでしたねえ(笑)。いいひと?わるいひと?孝太郎くん以上に読んでいて翻弄され続けて……、最後の最後の種明かしの場面では、びっくりするくらい格好良くって、ね。ショータイムって、こういうことだったとは!
影の世界を知っている、正義の魔法使い、というか。
序盤で語られた「魔法使い」のエピソードは、彼のものだったのね。
学生時代の事件のことも、真相を読んでいくと、切ないものがありました。私も今より社会が分かっていなかった頃、彼みたいに理想を考えてたときもありました。人間って難しい。
サトちゃんのことも、まさかそんな事情だったなんて!思いがけないシリアスさとほっこりさでした。

斑目氏やソフィアさんの出番は少なめで、ちょっと残念だったかな……。でも班目氏は相変わらずの有能っぷりでしたが。そして希実ちゃんの返事がなかったと拗ねる姿がかわいい。
多賀田氏も、出番は少なかったけれど、美味しいところをもっていったよな(笑)。格好良かったです。希実ちゃんには相変わらずナチュラルに優しいし!

今回も特筆すべきは、次々に出てくる美味しそうなパンの数々。
特に心惹かれたのは、フルーツサンドとタマゴサンド。ちょっとした意図をこめて弘基が試作をかさねるフルーツサンドがどれもとても美味しそうなのです。フルーツサンドって案外食べる機会ないんですよねえ。それこそ美味しいパン屋に行かなければ味わえないというか。
タマゴサンドは、こだまのピクニックも微笑ましくてよかったけれど、なんといっても、美作氏と安倍氏の、高校時代の回想エピソードですよ。
タマゴサンドを買い占めしてドヤ顔……美作氏の意外すぎる過去の姿に、思わず吹き出してしまいました。なんだかこのふたり、すごく可愛いんですけど!なんだかんだで今に至るまで関係を持続させているふたり、いいなあ~と思ってしまいました。
そして確かに私も、研究者が食事の間も惜しんでつまむ食べ物は、サンドイッチ、というイメージがあります。
大学生だったころ、先生や院生さん達はいつもお弁当ではなくサンドイッチを買っていたような、そんな思い込み的な記憶があります。
あと、斑目氏が帰ってきた時の新作メロンパンに、初めの方の女子高生がふたりわけっこしていたセロリとブルーチーズのサンドイッチ、豚肉のパテのサンドイッチ……。うーんどれもこれも美味しそうです。工夫を重ねられた食材の組み合わせの描写が本当にリアルで、食感や味わいが具体的に想像できちゃうんですよね!
こんな美味しいサンドイッチを毎日お昼に食している希実ちゃん、パン好き人間には本当にうらやましいです。
あ、一番最初のピクニックの準備のサンドイッチ尽くしも美味しそうでした!

こだまが作った角のない角食パンに、「パンは作った人を表す……」云々の弘基の言葉も、好きでした。

それにしても気になるのは、希実ちゃんの過去。
どうも彼女の過去は今見えている以上にシリアスなようで、うーん、気になるな……。
それにしても安倍氏に啖呵を切る弘基さんが、熱血で格好良くて、希実ちゃんのことを本当に家族そのものとして想っていて、ほろっときました。本当にお兄ちゃんだ……。すてき。
うーん、美和子さんとのつながり、どういうことなんだろう?ちょっと考えてみたものの全く分からず。

そんな希実ちゃんの過去が多分次巻でいくらか明らかになりそうで、今後がちょっと心配だけど楽しみです。
そして今度はどんな美味しそうなパンが登場してくるのかしら(笑)。

ちなみに、この本を読んでからサンドイッチを食べたくてどうにも辛抱できなくなった今日の私のお昼ごはんは、タマゴサラダサンドイッチと南瓜としめじの塩麹カレー風味サンドイッチでした。(パンは市販のコッペパン。)
クロワッサンをいちから作るよりは、ずっと楽に食べられて、良かったです(笑)。


ここ何日かにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: 日常のお話

タグ: 大沼紀子 

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