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『嘘つきなレディ 〜五月祭の求婚〜』白川 紺子 

嘘つきなレディ 〜五月祭の求婚〜 (コバルト文庫 し 17-1)嘘つきなレディ 〜五月祭の求婚〜 (コバルト文庫 し 17-1)
(2012/12/28)
白川 紺子

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19世紀、ヴィクトリア朝のイギリス。
ハートレイ伯爵家令嬢メアリは、「赤ん坊のころ、乳母にさらわれて貧しい下町で育った少女」。
ある牧師によって見つけ出されて伯爵家に戻ってきて数年たった今でも、その生い立ちゆえに社交界では有名人で、上流階級の社交になかなか馴染めず苦労する日々。
そんな彼女には、「2つ」大きな秘密があった。
彼女の秘密をふとしたことで知った美貌の青年伯爵ジョシュアが、ある日、メアリに奇妙な頼みごとを持ちかけてきて……?


コバルト文庫の新人作家さんの作品です。
ヴィクトリア朝が舞台の少女小説ときたら、それはもう、注目せずにはいられません(笑)。
友風子さんの表紙カラーイラストも、うっとりため息が出てくるほど美しくて。
加えて作者さんの白川紺子さんは、ほんの少し私とも縁があったお方で、ツイッターでもフォロワーさんに私と相性ぴったりだとオススメもいただいていて、もう色々合わさって、読むしかないでしょう!!みたいな感じで。

はい、まずは友風子さんの表紙イラストに、書店で対面して、一目惚れでした。
過去の『活字倶楽部』のイラストレーター特集でお見かけして以来、ひそかに注目の方だったのです、友風子さん。まさか私が愛するコバルト文庫少女小説のイラストを描いてくださるとは!(笑)嬉しくなっちゃいました。
主役二人は文句なしにきれいです、可愛いです!水彩画風の淡い色味も本当に素敵。
加えて背景のお花が、よくよく見てみると私の愛する百合の花で、これも個人的に嬉しくなってしまいました。

頁を開いて実際に読んでいって。
お話や言葉づかいや細々したドレスや小物の描写など、雰囲気がていねいで柔らかくて優しくて、すべてがとても私好みでよかったです!
文章もすらすらとても読みやすくて、すっと馴染んで物語の世界に入っていけました。
ロマンスも、文庫一冊分にちょうどいいボリュームで、可愛らしくて微笑ましかったです。

雰囲気としては、『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』や『英国マザーグース物語』より、どちらかというと、やっぱり昔から大好きなもとなおこさんの英国もの漫画の方に近かったかな?私は読んでいてそう思いました。

主人公のメアリは、元花売り娘。今は伯爵家に引き取られて、両親の愛情に包まれて、何不自由ない暮らしをしている女の子。
そして彼女はあるふたつのことで、周囲に「嘘つき」をしている身。それにいつも罪悪感を持っていて、いつもおどおどしていて余計に周囲に馴染めない。
罪悪感でいっぱいなのにどうしても嘘をつき続けずにはいられないメアリの姿は、読んでいて少しもやもやするのですが、でもメアリの立場にたってみれば、これは無理ないと思います。よほどの聖人君子でもなければ、自分の立場に甘んじちゃうでしょう。

そんなメアリに近づいてきたのは、秘密のもう一方を知られてしまった、美貌の青年伯爵ジョシュア。
メアリが自分は悪い子だ……と罪悪感いっぱいな女の子なので、一見素行不良で態度もふてぶてしいジョシュアは、かえって構えずに付き合えていいお相手なのかもなあ、とか思いつつ最初の方読んでいました。
身近で不穏な動きがある中で、お互い秘密を抱えるメアリとジョシュアが、だんだん距離を近づけてゆく過程が、良かったです。
不器用で素直すぎて、感情すべてが顔に出てしまうメアリと、そんな彼女に苦笑しつつもその気取らなさを好ましく思うジョシュアのかけあいが微笑ましくて、きゅんときました。
下町でふたり、いちごのパイを買う場面がお気に入り。口ほどにもなく賭けに弱いジョシュアが(笑)。

やがてジョシュアの秘密を知って、彼を救って自分の気持ちに気づいたメアリ。
やっぱり自分は「嘘つき」だから、と涙を押し殺して身をひく決意をする彼女の姿が健気で痛々しくて、彼女は結局のところ、とびきり善良な女の子なのでした……。
そしてそんなメアリに、やはり自分の想いを自覚したジョシュアがかけた言葉が、ストレートで格好良くって、とても良かった。
そうなのよ、ジョシュアに飾り気のない愛を与えて救ったのは、間違いなくこちらの「メアリ」なんだから、ジョシュアにとってはこれが真実。
うーん、ある意味少女小説の王道なんですけれど、王道パターンはやっぱりいいなあ~。きゅんきゅんします。
自分の気持ちを認めてからのジョシュアは、本当に格好いい正統派ヒーローです!素敵な台詞をたくさん言ってくれてます。

そしてそれは、メアリとジュリアさんの関係も、きっと同じ事で。
たとえ嘘でも、メアリを引き取って愛情を注ぐことで、ジュリアさんも確かに、救われているのだから。
愛情は本物なのだから。
この母娘、最初のうちはジュリアさんのあふれるばかりの愛情がかえってメアリを追い詰めてるよなあ……と正直心配だったのですが、読んでいくと、ジュリアさんの方の必死の嘘?も分かってきて、まあ最後には上手いこと収まったようで、良かったです。言葉にしなくても、こういう母娘のかたちも、ありですよね。

ジョシュアの方の秘密や「黒つぐみ」、ジョシュアのご両親のあれこれも、謎めいた感じでなかなか面白かったです。
そこまで突っ込んで描かれていたわけではなく最後まで読んでも色々謎が残っているのですが、私にはこれくらいがかえってちょうどよかったです。ロマンスのほどよいスパイスみたいな感じで。
あ、でもミス・ロジーナがけっこう好きだったので、彼女のことはもう少し読みたかったかも。
オリヴァー氏は、父親としては正直どうなんだ……みたいなキャラでしたが、最後の最後の告白には切なくなりました。

ジョシュアの友人のデイヴィッド氏も、いいですね!趣味は変わっているけど基本友人想いの素敵なひとです。メアリをジョシュアのところに導いていくところとか、親身にジョシュアの身を案じているところとか、さらっととても好印象。
友人といえばヴァイオラ嬢も、読めば読むほど実は頼りないメアリを不甲斐なく思い心配している……みたいに伝わってきて、素直じゃないけどいいこだなあ、と微笑ましかったです。

ラストのジョシュアとヴァイオラ嬢のやりとりが何気にお気に入りでした。
本当に、メアリは、ジョシュアにつけ込まれたんだな(笑)。
まあとにかく、文句なしに素敵なハッピーエンドで、何よりです。
メアリの行儀作法のまだまだ足りないところは、この分だとヴァイオラが文句を言いつつも最後まで世話を焼いて指導してくれるんでしょうし。

ふんだんに入っていた友風子さんの挿絵、児童書風味で優しく繊細なタッチでどれも素敵でした。メアリの髪やドレスのふわふわ感が好き。

書店限定の特典ペーパーのラフイラストと番外編、とても素敵だったので、もしこれから入手される方、可能なら対象店舗へ行ってみることをオススメします。ふたりがラブラブで幸せです(笑)。
コバルトのサイトの番外編も、やっぱりラブラブでかわいいなあ。

ジョシュアのラヴィントン一家にまつわる特殊能力の設定が面白かったので、もし可能なら、主役を今回のジョシュアとは別の一族の人間にして、また他のお話を読んでみたいな、とか思いました。


一話完結の少女小説としてはとても満足の一冊でした。素敵なご本をどうもありがとうございます♪
次回の作品も、楽しみにしています!!


一昨日と昨日にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪
コメントも、どうもありがとうございます!年明けになってしまいますが返信しますので、もう少々お待ち下さいませ。

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カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 白川紺子 

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