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『神様のカルテ』夏川 草介  

神様のカルテ (小学館文庫)神様のカルテ (小学館文庫)
(2011/06/07)
夏川 草介

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栗原一止は信州の病院で働く二十九歳の内科医。愛読する夏目漱石の作品の影響で話し方は古風、病院の中でも少々の変わり者として通っている。
常に医師不足の過酷な労働の日々を過ごす一止に、母校の信濃大学医局から誘いの声がかかる。自らの医者としての働きかたに悩む一止だが……。


今年、2013年の私の初読みは、この『神様のカルテ』にしてみました。
周りにこの作品のファンの方が何人かいらしたり『かつくら』のインタビュー記事を読んだりで、少し前から気になっていたのと、あと私、昔家族でよく旅行に行っていた信州に再び行きたくなって、舞台の作品を読むことで、少しでも信州の空気を感じられたらと思って(笑)。

文庫版の解説で上橋菜穂子さんが書かれていた通り、とても「心地良い物語」だなあ、私も本当にそう思いました。
古風で端正な文章が紡ぎだす、美しい大自然と、懸命に素朴に生きる人の温もり。
心にほっと灯火がともる。物語の余韻が、お正月の私の心にすっと染み入りました。

主人公の一止(イチさん)の話し方が古風でとても風変わりで、これが読んでいき馴染むごとに、好ましかったです。
お医者さんの日常のシリアスな出来事も、この独特の口調ととぼけたユーモア混じりで書かれると、そこまで重たくならずにくすりと笑みも浮かべつつ読んでいけて、いいなあと思いました。
いつまでも読んでいたいと思わせる、不思議な魅力がありました。

そんな感じで語られる、地方病院のお医者さんの日常奮闘記。
地方のお医者さんの仕事がとても大変なものであるとは一応知っていたつもりだったのですが……、いやはや。
ひとまず、私の身の回りの病院勤務のお医者さまたちに、改めて頭を下げたい思いで読んでいました。
あの先生とか、いったい何曜日に休んでいるんだ?と、私も常々疑問なんですよね。実際の話。
なんて、少し話がそれてしまいましたが。

そんな途方も無い仕事でも、たくさんぐるぐる悩みつつも、自身のやりがいを見出して結構楽しげに日々限界まで頑張って働いている一止の姿、読んでいてとても好感を持てました。
周りのお医者さん仲間や看護師さんたちも、個性派揃いででもいいひとたちばかりで、一止との掛け合いのような会話が面白かったです。大狸先生に古狐先生って、最後まであだ名(?)で貫き通して語る、一止のユーモアがなんとも良い感じです(笑)。信頼しあっての仕事の連携プレーも格好いい。
砂山先生の恋がちょっとかわいらしくってね、ストーリーのうるおいでした。
患者さんたちとの交流も、読んでいて心に染みました。
なんといっても、安曇さんです。年をとって入院するとして、こんな老婦人になれたらいいと思いました。
文明堂のカステラと北アルプスと、一止に残してくれた優しく心のこもった言葉の数々が、きらきら輝いていました。
彼女とのお別れの場面、私自身の肉親との別れのときを読んでいて重ねあわせてしまって、頁を開いたままで、思わず涙しました……。

そして忘れてはいけない、読んでいてとても素敵だったのが、一止と新妻・榛名さん(ハルさん)のふたりの、愛情あふれる夫婦のあり方でした。
仕事場で疲れ果ててぼろぼろになって帰ってきた一止を、明るく優しい笑顔でいっぱいの愛情で包み込むハルさんの、なんて可愛らしく素敵なこと。
「ムースだったかタルトだったか……」「モンブランのことですか?」「そう、それだ」のふたりの会話に、なんだかもう、泣き笑い、というか。
最愛の奥さんがそばにいてくれるだけで、世界の色が一気に明るく楽しげなものになる、そんな旦那さんの姿に、読んでいる私までぽかぽか幸せな気分になれました。癒されました。
一止の悲しみを言葉にせずとも汲み取って、彼の悲しみを溶かすハルさん。ううん、理想の夫婦だなあ。
第二話で語られた夫婦の出逢いのエピソード、もっとくわしく読んでみたいな。
小柄で華奢で可憐な少女のような、そういう姿も私好みでした(笑)。榛名さんという名前の響きもお気に入りです。

一止たちが住む「御嶽荘」、そこの住人の「男爵」に「学士殿」達との交流も、味わい深くて好きでした。
初登場時の酒盛りだけでも雰囲気が心地よくていいなあと思ったのですが、さらに読んでいって、学士殿の秘密を知って、そして男爵の贈り物の情景をいっぱいに思い浮かべて……、ああ、なんだかとても素敵。
学士殿の雰囲気が好きでした。男爵のハルさんの呼び方「榛名姫」も好き。
「桔梗の間」に「桜の間」に、呼び名がまたいちいち文学風で私好みだなあ。

信州の空気を感じたい……という当初の私の希望通り、彼の地に私がいだいている清涼な空気のイメージも、読んでいて味わえて、とても満足しました。アルプスの美しい山々が恋しい。
第二話の最初の方の木曽路の描写、私が昔家族旅行でよく行っていた場所そのもので、懐かしくて胸があたたかくなりました。
そしてイチさんたちが飲んでいたお酒、私の親も旅行先で飲んでいたなあ(笑)。

独特の言い回しで学者肌の年若い旦那さんと若奥さんの日常、なんだかどこかで読んだことがあるような……、考えて、そうだ、森博嗣さんの『工学部・水柿助教授』シリーズの、水柿くんと須磨子さんだ(笑)。
また雰囲気が違う作品ですけれど、可愛らしい若奥さんと、奥さんに弱い旦那さんが、いいですよね~。

続きもぜひ読みたいなあ、どうしようかなー……、と思っていた、まさにぴったりのタイミングで、書店で第二巻の文庫本が新刊コーナーに平積みされているのを発見。文字通り、小躍りして喜びました(笑)。
今現在進行形で読んでいます。プロローグの夫婦のおでかけに、癒されまくっております(笑)。


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: 日常のお話

タグ: 夏川草介 

この記事に対するコメント

こんばんは。
この作品、私も好きです♪
映画もなかなか良かったです~。

あと関係ないですが『和菓子のアン』読みました!
面白かったです~続編がまだないのが残念(泣)

URL | 明都 #-
2013/01/09 23:56 * 編集 *

Re: タイトルなし

>明都さん
コメントありがとうございます。

どうも、こんにちは♪
明都さんもお好きなんですね。素敵なお話でしたよねえ。
映画、私も気になっていたところでした。また借りてこようかなあ。

『和菓子のアン』も読まれたのですね。これも和菓子が美味しそうでいいお話ですよね(笑)。
続編、いつか出ないかなあと、ちょっと期待しています♪アンちゃんと立花さんのその後がきになる……。

URL | fallclover #SvKcs0as
2013/01/13 09:50 * 編集 *

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