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『英国マザーグース物語 裏切りの貴公子』久賀 理世 

英国マザーグース物語 裏切りの貴公子 (英国マザーグース物語シリーズ)英国マザーグース物語 裏切りの貴公子 (英国マザーグース物語シリーズ)
(2013/02/01)
久賀 理世

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『英国マザーグース物語』シリーズ第四作目。
ガイ・フォークス・デイが間近に迫った11月のロンドンでは、伝説の黒妖犬(ヘルハウンド)の噂でもちきり。セシルとジュリアンも、大いに関心を持って過ごしていた。
ふたりお祭りに取材に出かけたり、そんな日々の中で、隻眼の美青年・クリストファーと再会したセシル。彼の思わせぶりな言葉に、戦慄を覚える。
ジュリアンの兄を知っているらしい美しい歌姫との出会いもあり、どんどん深まっていくジュリアンへの自分の気持ちに、おののくセシル。
そしてセシルとジュリアンの関係それ自体にも、思いもよらないところから、変化が訪れる――。


『英国マザーグース物語』、「急展開」の四作目。
発売日にさっそく購入して読みました。

……本編ラストまで読み終えて、しばし、呆然。
読み終えた当日は、前の記事やツイッターにて、叫ぶより、どうしようもありませんでした(笑)。何も考えられなかったです。
この三日間、色々読み返したりしていて、ようやく少し落ち着いてきたところです。ずっとこのシリーズの世界に浸ってましたよ。
その間、ツイッターや読書メーターの場で皆さまがことごとく叫んでいらして、気持ちを共有できて、いくらか慰められました(笑)。愛されているシリーズですねえ。
コバルト文庫の「急展開」って容赦ないなあ。と『恋のドレスと追憶の糸』をリアルタイムで読み終えたときを思い出したり(笑)。

うーん、「裏切りの貴公子」、まさかまさか、そういう意味だったとはなあ。
作者さんに、完璧に裏切られました。いい意味で。
この作品、私がこれまで思っていたより、ずっとすごいっ!以前から去年のベスト本に選んだくらいに大好きだったけれど、さらに好感度がアップしました。(ほのぼのメインの雰囲気も大好きなのは変わりないですけどね。)


はい、以下は、ネタばれありの感想です。
今までのすべてがひっくり返された感のある展開に、本当はシリーズを最初から再読してから語りたかったのですが、今日をのがすと感想書けなさそうだしはやくネタばれ気にせずの語りをしたいしで、とりあえず、現時点での思いを、ぶちまけてみます。順番めちゃくちゃで読みにくいです、整理できなくて……。
そして今回のネタばれは、未読の方は本当、うっかり読まないようにしたほうがいいと思います。くれぐれもお気をつけて。


すみません、もう一度、叫ばしてください……。
ええええー!!ジュリアン、そんな、嘘でしょうー???今からでもいいから、嘘だと言ってほしい……。
「婚約者の正体を知るまで、あと」の決まり文句が、まさかこんなかたちでストップしてしまうとは。ううう。


はいはい、落ち着いて。
今回のお話は、今までと構成がだいぶ違ってましたね。
一番長い第一話に、一話からつながる急展開の第二話に、ラストは本編より前の時点での番外編。私は番外編の方は本誌で一応読書済でした。
そして今回のマザーグースの唄と謎解きは、あんまりほんわかしてなかったなあ。ラストの番外編が、一番今までのシリーズらしいお話だったかな。
謎解き自体は優しくなかったけれど、セシルとジュリアンのふたりの仲がそれはもう甘酸っぱくてきゅんとして、ふたりの信頼関係が心地よくて、全然問題なしに、心ときめいて読んでいけました……ラスト直前まで。
ダニエル兄さまとエリザベス嬢との会話でかすかな違和感が生じて、それからセシルとジュリアンの仲良しだけど何か刹那的な雰囲気もあるふたりの場面を挟んで、ラストのどんでん返し……この構成が、お見事でした。ため息。

そうですよね。言われてみれば、この物語の視点は限定されていましたよね。ダニエル兄さまとの秘密会議の場面でも、言われてみればかすかな違和感がありました。でも今まで全然気にしていなかった……。
ジュリアンの正体自体も、そんな事実があったなんて、知らないよ!(泣)秘密といっても、お兄さん関係の秘密かなーくらいにしか思ってなかったですものね……。
なにより『裏切りの貴公子』、クリストファーのことだと思い込んでいました。だってこんなに怪しげなんですもん。すっかり目隠しされていました。いや、彼は彼で怪しさ満点でしたけれども。

あとがきに書かれていたこれまでの巻の該当箇所をとりあえず読み返してみたのですが、確かに、ジュリアンの二重の意味での後ろめたさやあきらめめいた気持ちが、ああ……。
中でも三巻目の188頁辺りの、ジュリアンが見ていた幸福な夢の辺りが、読み返しているとなんとも言えない心地になりました。
多分ですけど、何の含みなく偽りの婚約者として出会って、シンプルに正体を明かして、やがて皆に祝福されて結婚して……私も直前まで疑わずに信じ込んでいたそんな未来を、まさにジュリアンは夢見ていたんじゃないかなあ。

いえ、落ち着いて読んでいくと、ジュリアンのセシルへの想いは、それでもどう考えても本物だし。強くなってきているし。彼女のことをいい加減に思っていたら、色々こんな真摯な思いをにおわせる態度や行動や発言なんて、面倒だからしないでしょうし。
こんな立場の人間なのに、今までこんな態度でセシルに接してきていた辺りが、むしろ彼の本気の惚れ混み具合をうかがわせる……なんて、深読みでしょうか。
なんだかそんな風に考えて読んでいると、またたまらなく心ときめいてくるのです……騙して相手に近づいて、身近に接して、そのうちにうっかり本気で惚れ込んで自分の立場との板挟みになって苦悩する(多分)とか、悔しいほどに私好みのツボです。
なんにせよ、ジュリアン視点がこれまで全くなかったおかげで、すべてが不確かで私自身で想像するしかないのが、もどかしくてたまらないです。
「とりつくろうのに精一杯」って、なにをとりつくろうのに?

「セシル本人には意味が届かないモールス信号」も、今読み返すとまた少し違う味わいが。切ない。
というか、こういう設定だからこそジュリアンはスムーズにモールス信号を使える人間だったのかな。

そう、今読んでいると、ジュリアンの経歴はどこまでが真実でどこまでが嘘なのか、色々気になって仕方ないです。
ダニエル兄様の旧友だったのは本当だし、ブラッドウッド侯爵家の跡継ぎというのも本物なんですよね、きっと。
お兄さんの失踪あたりのエピソードも多分、本物っぽい。もしかするとお兄さんは敵対勢力の組織で働いていて、兄弟で対立する立場なのかしら。お兄さんは自分の家の役目が嫌で逃げ出していったのかな?……スパイもの?とか全然読まないので的はずれな推測しているかもしれませんが。
レナードも、ただの従僕ではないんですよね、きっと。
『新聞広告には罠がある』にての、下宿でのジュリアンとレナードの会話もちょっと気になりました。ジュリアンのお父さんもそっち関係の人なのかしら。

ジュリアンのことばっかり書いていますが(笑)、今回は、女の子としてどんどんジュリアンへの想いを育てていきいっぱいいっぱいになっているセシルが、読んでいてたまらなく愛おしくって、切なくて、そこもものすごくよかったです!
恋だと認めてしまえば少しは楽になれるのに、自分は婚約者のいる身だから……と、気持ちにストップをかけざるを得ないセシルの辛さが、読んでいてかわいそうでなりませんでした。
ちょっとこの点では、ジュリアンに憤りを覚えますよね確かに。セシルの正体、知っていたよ、という場面でも、自分の都合のいいように、たくみにすべてを語ってないしな、このひとは。
セシルの相手を信頼しきった台詞や態度、それに対するジュリアンの後ろめたい感情が、再読していると、複雑な気分です……。

そうは言っても、相変わらずセシルのことを宝物のようにそっと大切に扱って、何があっても守りぬくジュリアンの姿もまた、格好良くってときめいたんですけどね!怪我をしたセシルに思わず激しい感情を見せつけて、セシルが青ざめた途端にあわてて態度をもとに戻す場面とか、もう本当にセシルを甘やかしているなあ~。にこにこ。
手をつないだり、挨拶のくちづけをしたり、さりげないスキンシップの増加にも、セシルと一緒にいちいちときめきました。ジュリアンの想いも前よりはっきりと見え隠れしてくるから、よけいに。
あと、オルフェウスとエウリディケの神話の例えは、直後の急展開を予感させる感じで、読み返しているとああ、切ないな。
同時に、愛しあっているのに永遠に引き裂かれた悲劇の夫婦に自分達を例えるジュリアンの気持ちを想像すると、また胸がきゅうっとしたのでした。

ガイ・フォークス・デイでのふたりのデート(笑)やアクロイド社での日常のあれこれ、和みパートで楽しかったです。ポールさんが格好いいこと言ってます。
お約束で、再びミートパイを食べたくなってしかたなくなってきました。そしてパーキンというお菓子もなんとも魅力的です。屋台で保温して売られているケーキかあ、パウンドケーキよりもパンケーキみたいなイメージ、いや、日本の感覚的にはたい焼きみたいなものかな?

アッシュフォード一家の兄弟の出番は今回は少なめで、ちょっと寂しかった。
ダニエル兄さままでこんなふうに騙されてるとは思わなかったですよね。はああ。ラスト、兄さまが一度にここまで明かしてしまわなくてもよかったんじゃ……と思わないでもなかったのですが(セシルの気持ちを思うと、ね)、でもダニエル兄さまの憤りもわかるからな。家族愛の人ですからね。
あと、何気に、エリザベス嬢とのちょっと甘目の雰囲気にも、ときめいてふふふとなりました。
このカップルもお似合いじゃないでしょうかねー。幼なじみで年の差&身分差カップル(笑)。
あ、ガイ・フォークス・デイで、今夜は弟達とわびしく花火をするのだ……とこぼしていたダニエル兄さまも、かわいかったです(笑)。その後皆でパーキンを美味しくいただいていたのでしょうか。
とりあえず、セシルを苦しませた分だけ、セシルを愛するアッシュフォード家の男三人が、ジュリアンを袋叩きにしてくれることを期待……。(ひどい。でもジュリアンはそれくらいは甘んじて受けるべきだとどうしても思ってしまいます。)

あとは、クリストファー関連のことも結局何も解決していないので、こちらもとても気がかりです。
オペラでの場面とか、ぎりぎりで本当に危うかったし。
ジュリアンが令嬢としてのセシルに接触してきている彼のことを把握していないままこんな事態になってしまったので、怖いですよね。
(あ、ところでパーキンの話に戻るんですが、ジュリアンがリーズ出身の友人が教えてくれたと言っている場面、「クリストファー・リーズ」という名前に結びつけてしまうのは、深読みしすぎ?まさか、ふたりはお知り合い?確かにクリストファーの方は、ジュリアンのことをいくらか知っているようにも読めましたが。)

あ、そうそう、レスター氏がジュリアンのことを結局どこまで把握しているのかも、気になる……。

そして、番外編の方も。
セシルのごっこ遊びのジュリアンの罪状が、本編読了後に読むと怖いほど洒落になっていなくって、わ、笑えない……。セシルはこういうカンはいいですよね。
やっぱりマザーグースのほのぼの謎解き話も、好きだなあ。

あきさんの挿絵も今回も最高でした。物語の面白さと同時に、今度はどんな挿絵が待ち受けているのか……そこも楽しみつつ読んでいけるところが、すばらしいです。
ノーブルで本心がちょっとつかめない雰囲気を持った貴公子を描かせると、あきさんは最高ですよねえ。
第一話の扉絵の手をつなぐふたりが、今回一番のお気に入りイラストだったかな。ふたりの距離感が、ジュリアンのセシルへの目線が、たまらない!

書店限定ペーパーのラフイラスト&番外編も、良かったです。ジュリアンのキラキラ感がうさん臭くて笑いました。
確かにこんな告白は、私も嬉しくない……。セシルの引用したマザーグースの唄が秀逸で胸がすっとしました。本編読了後に読んだので、ジュリアンがセシルにやり込められている(?)姿に、少しくすりと笑えて、慰められました。

とにかく今は、あとがきの「怒涛の言い訳編」や「もっともっと彼らを応援したくなる」という作者さんの言葉を信じて、続きを待ちわびていたいと思います。
ジュリアン、信じてるから!いやもう本当に信じてるから……!(涙)
そしてできればセシルにも、恋する乙女の強さを見せてもらいたいところです。彼女の友人たちの活躍も見たい。

コバルト文庫で続きがこんなに気になるシリーズが出てきてくれて、本当に嬉しいです。
同じヴィクトリア朝が舞台でもそれぞれ違った風に楽しめる作品がいくつかあって、共通点を発見したり色々比べて読めるのも、面白くていいですよね。


長くて未整理の感想語りに最後まで付き合ってくださったあなたさま、どうもありがとうございました(笑)。

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カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 久賀理世 

この記事に対するコメント

ゆりさん、こんばんは。
ジュリアンの正体、本当にびっくりでしたよね。知った時思わず、頭の中に某有名イギリス映画シリーズのテーマ曲が鳴り響きましたよ…(笑)
そしてジュリアンの背景に対する妄想がどんどん広がっていって…。私の妄想(笑)では、やはりお兄さん絡みかなーと。
お兄さんがクリストファーの組織と関係があって(つまり敵側で)それを調べるためにそうなったのかな、敵はイングランドに反逆しようとするアイルランド系かな、と思いました。
ジュリアンの板挟みゆえの苦悩…私も大好きな設定です!そうだったら美味しいなあ(笑)
あと、レスター編集長は全て気付いているような気がするんですけど、どうでしょう?「きみのような人間がどう変わっていくのか」という意味深なセリフでそう感じました。
この最新刊に衝撃を受けて、長々と語ってしまい失礼しました(汗)
いつもブログ楽しみにしてます♪

URL | shake(シャケ) #-
2013/02/04 21:11 * 編集 *

Re: タイトルなし

>shakeさん
コメントありがとうございます。

どうも、こんばんは~♪ブログの方にも話しかけてくださって、嬉しいです、ありがとうございます!!

彼の正体は、本当にびっくりでしたよね……。未だ衝撃から完全に立ち直っておりません(笑)。
そして彼の背景の妄想、私も同じです、どんどん膨らんでいってしまいます(笑)。
私の中でも、お兄さん絡み説が有力です。
お兄さんのことを調べるのを目的に、そういう世界に飛び込んだ……←仮説その一。もしくはもともとお家がそういう役割で、お兄さんがその役目から逃げ出したから、ジュリアンがその役目を担わざるを得なくなった?とかなんとか。(根拠も何もないので適当に読み流してくださいね…)

ジュリアンの板挟み、本当に、美味しい設定ですよね!いつも飄々と余裕たっぷりで周囲を煙にまいていた彼が、年下の少女への真剣な恋に苦悩するなんて……ときめきます。
レスター氏は本当に、どうなんでしょうね?(笑)あの台詞は確かに私も気になっています。

いえいえそんなお気になさらずに。むしろ私の返信の方が無駄に長文になってますから……(笑)。
ブログの方も読んでいただけているようで、いつも本当にありがとうございます♪(ぺこり)

URL | fallclover #SvKcs0as
2013/02/06 21:49 * 編集 *

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