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『伯爵と妖精 白い丘に赤い月満ちて』谷 瑞恵 

伯爵と妖精 白い丘に赤い月満ちて (伯爵と妖精シリーズ)伯爵と妖精 白い丘に赤い月満ちて (伯爵と妖精シリーズ)
(2013/03/30)
谷 瑞恵

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伯爵と妖精』シリーズ、第32作目、最終巻。
自分が生まれれば母親は命を落とし、父とも対決しなければならないという宿命を知ってしまい、リディア達の前から姿を消したアルヴィン。
アルヴィンの行方を案じながらも戦いに向けて準備を進めるエドガーとリディア、しかし敵はさらに卑劣な罠を用いてきて……。
青騎士伯爵家のメンバー、伯爵家と親しい妖精たち、敵対する勢力、さまざまな立場の思惑が絡み合う中で、ついに最後の戦いがはじまる……!!


伯爵と妖精』シリーズ、とうとうこの時がやってきてしまいました。完結巻です。
シリーズのはじまりからではないのですが何年も前からリアルタイムでずっと新刊を追ってきた私、それだけで、言葉で表せない想いがこみ上げてきます。
読んでいる途中では、うーん長いないつまで続くのかな……と思っていたことも正直あったけれど(夫婦の辛い展開が続いていた時期)、今にしてみれば、終わるときには、あっという間だったな。
今のところは、完結巻の内容にただただ胸がいっぱいで、寂しいとかそういう感情は、まだわいてこない段階です。

そんな完結巻、実際に読んでみて。
まさに最後の締めにふさわしい、大変に素晴らしいお話でした!!
これまでの大小の伏線が吸い込まれるようにひとつひとつ回収されていき、ラストのあの赤い月のシーンに導かれていく様は、読んでいて、圧倒されました。鳥肌が立ちました。
この巻一冊にこれだけのエピソードがきっちりまとめられているって、すごいなと思います(笑)。
こんなにも美しい物語だったのだなあ。今更ながらにしみじみ実感しました。

リディアとエドガーのふたりも、アルヴィンも、もう本当に良かったです!!のひとこと。
にぎやかな表紙や帯で、信じてた、信じていたのですが、最終巻だというのに展開は予想外に辛い方向にどんどん転がっていくので、読んでいてもう気が気ではなかったんです。
月並な表現ですが、ふたりの夫婦愛、アルヴィンとの親子愛に、改めて、感動です。
ふたりの周りの皆の活躍も素晴らしかった。

それでは追記以下に、いつもの通りにネタばれあり語り感想を、書き綴っていくことにします。
途中の巻の細かな伏線とか抜けてる部分も正直多々あるので、間違ったこと書いていたらごめんなさい……。


まずは表紙、伯爵家の主要メンバー全員大集合!みたいな感じで、にぎやかで幸せ感いっぱいで、とても良いものでした。
エドガーもリディアも、成長が伺える表情と雰囲気をまとっています。特にリディアの表情が、これまでで一番アウローラさんに似ているように思えて、感慨深いです。やっぱり母親になったからかしら。
あと個人的に一番嬉しかったのは、ケリー!私のお気に入りキャラのケリーが最後の最後で表紙に登場してくれて、本当に嬉しいです。高星麻子さん、ナイス!
頬杖をついてニコを見ている姿がかわいらしくって。表情もかわいい~♪

ええと、どこから語っていけばいいですかね……。

アルヴィンパートは、読んでいてずっと、辛かったです。
そもそもまだ生まれてもいないのに、こんなに残酷な運命をつきつけられて、選択を迫られる。無条件に愛してくれるはずの両親をも欺かなければいけない。ああ……辛い。テランや邪悪なフェアリードクターには、読んでいて真剣に憎しみを覚えました(笑)。
生真面目なリディアの性格を受け継いでるようですしね彼は。それは悩むでしょう。(で、それを指摘するのがレイヴンというところが、なんだかいいなあ。)
コーヒーハウスでのリディアとの束の間の幸せな母子のやりとりが、挿絵込みでお気に入りでした。
ユリシスの姿なのに、無垢で可愛らしい表情や仕草はもはやアルヴィンにしか見えません(笑)。

そしてエドガーとリディアのふたりも辛かった。このふたりは、今回は常に一緒でしっかりとした愛情で結びついていたから、まだ危うげなく読めてよかったんですけどね。
もう本当、リディアはどれだけ苦しまなくてはいけないのか……。テランや邪悪なフェアリードクター……(以下同じ)そしてリディアの死を受け入れがたいエドガーの苦しみも辛い。
それでもエドガーは、どれだけ辛く理不尽な目にあわされても、もはやどうあっても、プリンスにはならない、なれないんだなあ。
愛する人を守るために、前を向いて戦うだけ、目に見えてしっかりして頼もしくなった彼に、シリーズを通して彼の姿をずっと追ってきた私は、彼の成長にしみじみ嬉しい気持ちになりました。(昔はずっとぐらぐらしてましたからね……。)
また葛藤をひとつふっきった後に、リディアと再会した104頁からの場面が、幸せいっぱいでとても好きです。
攻めに転じて手段を厭わず戦うエドガー、彼らしくてとてもよいです。
その後のいいところでのおあずけには笑ってしまいました。せっかくリディアも甘い雰囲気になってくれていたのにね!かわいそうに(笑)。

そして今回のお話で、主役二人と同じくらい印象に残ったのは、アーミンでした。
最初の方の、セルキーのばあやとの会話があたたかくて優しくて、思わず涙ぐみました。ずっと孤独に戦っていた感のあったアーミンを、こんなふうに案じてくれているひと(妖精)がいたなんて、嬉しいことです。
ケルピーと共にファイアアゲートを取りに行って、もう助からないとなったときのアーミンとケルピー……、切なくて、胸がはりさけそうでした。
アーミンの想いと立場は、イメージ的に、『人魚姫』みたいだなとちょっと思いました。アンデルセンの童話の方の。
挿絵のアーミンの、泣き笑いのような表情がとてもよいのです。ケルピーの「おまえは、伯爵家のために働いた勇敢なセルキーだった」云々の台詞も、とてもよかった。
「口づけのようだと彼女は思った」(190頁)……色香の匂わせ方が素晴らしくて、切なさ倍増(涙)。

そんなアーミンに銀のナイフを渡すレイヴンの姉への愛情も良かったです!
(そういえばアーミンがレイヴンが頼もしくなってきたと弟を褒めている場面もよかったなあ。)
彼は本当に、巻が進むごとに少しずつ、着実に成長してきましたよね!
ダネルさんみたいな複雑な立場の人間にも、自分で考えていい言葉をかけられるようになったレイヴン、良かったです。
あと最後の決着のピンチの場面で、自分が大鴉だから、運命はまだ伯爵家に味方している、と発言する場面が、格好良くってくーっとうなりました(笑)。

レイヴンとケリーが愛情を注ぐニコ、今回一番衝撃的だったのはある意味ニコだったかも……。
一時は本当に危ない状態だったし、そしてまさか全く新しい姿になるとは。
窮地に追い込まれるのも当然といえば当然、彼は今回とても活躍していたなあと思いました。かつてはアウローラ、今はリディアの相棒として、過去の知恵を語ったり仲間の間を取り持ったり、頼もしくて一層好きになれました。
子猫との出会いの場面はとても微笑ましかったのですが……、こんなことになるなんてね。
「おれは猫じゃない!」と散々主張してきた気取り屋妖精の彼が、子猫の死を悼んで「ごめんな、おまえの毛皮、大事にするから」と心のなかで謝って感謝している姿、上手く言えないんですがとても好きでした。
それにしても、レイヴンのポケットにニコ、可愛らしくて微笑ましいわ(笑)。泣き笑いのように思いました。
完全に別作品ですが、荻原規子さんの『空色勾玉』の鳥彦をちょっと思い浮かべてしまいました。

カールトン教授とパトリックさん、フランシス、ダネルさん……、今まで色々なことがあった人たちが、共に伯爵家の最後の戦いを見守っている姿、印象的でした。
リディアがアルヴィンと浮気したと勘違いしたカールトン教授、エドガーのショックとずれたショックを受けていて、深刻な場面だったけれどあれは少しおかしくて和みました(笑)。無理もない誤解なんですけどね。
ロタとポールももちろん活躍していたけれど、今回は恋人っぽいやりとりはほぼ皆無だったな……短編集で読めるのかな。
最後まで音楽を奏でてふたりを助け続けていたダネルさんも、良かったです。ダネルさんの立ち位置は、最後まで、独特だったな。
あとはそうそう、最終巻になって、ビリー(←本名じゃなかった気がするけど)がこんなに活躍してくれるとは思わなかったなあ(笑)。
リディアへの好意に焼き餅をやいて、こんなときなのに嫌がらせするエドガーが、笑えました。
あとロンドン塔の人のよい観光ガイド(?)ヨーマン氏もなかなかいい仕事をしていました。

敵さん達は、思っていたよりあっさりと退場していったかな、とは、正直思いました。
いいんですけどね。今までの仕打ちを思えば一刻も早く退場してもらいたかったから!!というか、今までがしぶとすぎたんですよね。
チェンバレン主教は思ったより最後まで悪あがきしていたなと思いました。
あと、あの女占い師って、結局どうなったんだろ?正体はなんだったのかな……?とちらりと思いつつ。

ロンドン塔の魔力がお話のキーになっていて、ロンドンがお話の舞台で、そう考えると『ロンドン橋に星は灯る』と一番雰囲気の近いお話だったなあと感じました。
リディアがムーンストーンの弓をひいていた姿と、今回のエドガーの赤い弓の姿が、イメージとしてきれいに重なりました。
今回のお話のタイトル、ああ、そういうことだったのか!
最後まで読んでから色々思い返してみると、青騎士伯爵家やマッキール家の古の伝説の武器やあれこれの話が、ここへきてぴたっとはまって実現して、敵を倒すことができたんだなあ。うーん、静かに深く感じ入った場面でした。
英国の伝説、いにしえの雰囲気が謎めいていてとびきり魅力的で、そういうところも楽しめました。

細かいところを語りだすときりがなさそうなので、アクアマリンのことを、今回はひとつ。
個人的にリディアのアクアマリンのことはずっと気になっていたので、最終巻になってようやく重用なアイテムとして登場してくれて、嬉しかったです。
オークニー諸島というと、アウローラさんの(育ての)母親がオークニー諸島から嫁いできたと『学者と妖精』で語られていたことと重なるのね。こんなささいなエピソードが重要な伏線だったとは。

すべてが終わっての、エピローグ。
もう思い出せない姉の銀のナイフをはさんでの、レイヴンとケリーの会話が、優しくて微笑ましくて、大好きです。
ケリーの生い立ちってそういえばほとんど語られたことがなかったなあ。彼女も苦労してきたんだな……。
こんなに優しげなレイヴンの姿をみていると、ケリーとこのまま良い感じになっていったらいいのになあ。と、期待してしまいます(笑)。

そしてシルヴァンフォードの爵位のことも、私が思っていた以上に上手い具合にいくみたいで、ふたりにとって、よかったよかった。
家系図の捏造計画をあっけらかんと語るエドガーとそれを呆れて聞いているしかないリディア、ふたりの姿がいかにもふたりらしくて、平穏な日々が戻ってきたんだなあと、そんなところでも改めて実感できて良かったです。
273頁と279頁のエドガーとリディアの挿絵、どちらもラブラブで幸せそうで美しくて、感動的です。
最後の最後で素晴らしいイラストを拝めて、私まで幸せです!
高星麻子さんの挿絵はここ最近、今までより繊細に美しくなってきて、ようやく馴染んできたと思っていたところにシリーズ完結……無念(苦笑)。

Cobalt本誌の方も、昨日、買ってきました。このシリーズの関連部分をとりあえず、読みました。

Cobalt (コバルト) 2013年 05月号 [雑誌]Cobalt (コバルト) 2013年 05月号 [雑誌]
(2013/04/01)
不明

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短編も良かったし、何より別冊の最後の高星麻子さんの頁にあった、満面の笑顔を浮かべたリディアとエドガーのふたりの姿がとてもとても素敵で、添えられたコメントも相まって、涙ぐんでしまいました。
本当に、リディアもエドガーも、今までお疲れ様です!
今度こそ、子どもと一緒に、お幸せに!!

今回も長い感想語りにおつきあいくださったあなたさま、ありがとうございました!(笑)
皆さまと『伯爵と妖精』シリーズの感想をわかちあうことができて、拍手もたくさん、コメントもときどきいただけて、私はとても幸せ者でした。
近いうちにまた、このシリーズの感想が書ける時がやってくるのを、祈って。


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カテゴリ: 『伯爵と妖精』シリーズ

タグ: 谷瑞恵  伯爵と妖精 

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