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『英国マザーグース物語 聖夜に捧ぐ鎮魂歌』久賀 理世 

英国マザーグース物語 聖夜に捧ぐ鎮魂歌 (英国マザーグース物語シリーズ)英国マザーグース物語 聖夜に捧ぐ鎮魂歌 (英国マザーグース物語シリーズ)
(2013/06/01)
久賀 理世

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『英国マザーグース物語』シリーズ第五作目。
パートナーとしてずっと一緒に働いてきたジュリアンの真の正体、アッシュフォード一家に近づいた目的を、一度に聞かされたセシル。彼の何を信じたらいいのか分からなくなったセシルには、彼の必死の告白も届かない。
そんな状況下でも、セシル達に度々接触してきたクリストファー・リーズの動きと思惑は、明らかになればなるほど不穏さが増していく。
ジュリアンが去った新聞社でひとり記者の仕事を続けていたセシルとその兄弟たちの元に、ある日、王家の招待状が舞い込む。
クリスマス、クリストファーとの関連を予測しつつもノーフォークに出かけるセシルたち。ジュリアンと引き離されたセシルの身に、新たな危機が迫る――。


ジュリアンのまさかの正体に、思わず叫ばずにいられなかった四作目のラストから、ひたすら待ちわびていた、『英国マザーグース物語』の最新刊。
『聖夜に捧ぐ鎮魂歌』、なんだか切ないタイトルだなあと気になりつつ。
ちょうどコバルト文庫のブログの試し読み部分から物語がはじまっていて、最初からいきなり緊迫モード。どきどき頁をめくって読み進めました。

私、実は発売日の昨日は眠たくて頭がぼーっとしていて、読むのはまた後での方がいいんじゃないか、と思わないでもなかったのですが、それでもどうしても、どうしても!先が気になって、結局読んじゃいました。
ツイッターのTLのフォロワーさんのつぶやきで、なんとなく覚悟はしていたんですが、今回も、なんてところで終わるんですか!ええええー!……やっぱり叫んでしまった、そんなラストでした。
シリーズの最初3巻あたりのほんわかモードは一体どこへいったのか……。終始シリアスな巻でした。
(いえ今回も、シリアスな中にも和みシーンはきちんとあって、楽しめたんですけどね!)

とにかく、セシルも、ジュリアンも、せつなくて!(涙)
前巻までに比べ、ロマンス度がぐんとアップしていて(特にジュリアン側!)、読んでいて非常にときめきました。良かったですー!!


それでは追記以下で、ネタばれありの感想を語っていきたいと思います。


改めて今回の表紙、はじめなんだか既視感があったのですが、四巻目の『裏切りの貴公子』の表紙イラストと、対になっているのかな?
『裏切りの貴公子』の方ではジュリアンがセシルのそばでしっかり手をとっていたのが、この巻ではふたり完全に離れちゃってて。ふたりの距離感に、たまらなく切ないものを感じました。セシルの空をつかむ両手がさびしい。
ふたり深刻な表情をしているのはあまり違わないのに、こんな風に離れているだけで、不安感が一気増しです……。クリストファーの不敵な表情も一層不気味!
……なんて、本編を一度最後まで読み終えてから、改めて表紙をじっくり眺めて、思ったことを書いてみました。

まずはじめに思ったのは、今回の本には各章の扉絵がないんですね……このシリーズの扉絵ありの構成が好きだったので、ちょっと寂しい。
まあ、お話の構成自体ががらっと変わっちゃいましたもんね。


で、実際の内容にうつるのですが。
もうとにかく、ジュリアンです。
ジュリアンのセシルへの想いが、物語のそこかしこから溢れ出してきていて、読んでいて非常にときめいて仕方がなかったです。
前半部分『怒涛の言い訳編』、ジュリアンからの視点がこれまで全く語られることがなかった分、積もり積もっていたのでしょうか。彼のストレートで情熱的な想いがぐいぐいせまってきて、びっくりしてしまう程でした。
年下の(年の差八歳くらいでしたっけ?)女の子に、ここまで惚れ込んでいるジュリアンの姿に、なんというか……こちらがめろめろです。
セシルへの愛の言葉は直球だし、拒否されても彼女を守り通す姿は完璧で宝物をあつかうよう、立場との板挟みに苦しんで、自分の恋心を持て余していたり、激しく嫉妬したり。
特に、イラストつきで、まさかここでいきなりくちづけするとは思わなかったですよね。私も普通に考えても、まだあどけなさの残る奥手のセシルには、ちょっと早いんじゃと思ってしまいましたもの。でも盛り上がりますよねー!どきどきしました。

前巻では私、セシル達をだまくらかしていたジュリアンにかなり憤りを覚えていたはずなんですが、今回読んでいて、いつの間にか、気にならなくなっちゃった。
それくらい、真剣に恋して苦悩するジュリアンは、好もしいヒーローでした。(表現が変かもしれませんが)
最初のセシルへの説明から、自分の不実を一切言い訳せずにひとつひとつていねいに語る姿勢が、良かったですよね。ダニエル兄さまへの態度も誠実でした。
というか、ジュリアンの立場も、つらいものだなと思いました。彼だって特殊な生まれや仕事を選べた訳でもなく……。ジュリアンは、この仕事をするには、優しすぎる人間なのかもなー、とかちらりと思ったり。
雨の中のはじめてのジュリアン視点の語りも、セシルに惹かれていく彼の心の動きがていねいに描かれていて、きゅんきゅんして、そして切なくて、良かったです。彼女のときおりみせる不安感を愛しく感じたというのが、特にいいなと感じました。

なのに、セシルの立場からは、ジュリアンの愛の言葉や態度をどうしても信じられないんですね。
主な原因が例のセシルの拭い去れない強い劣等感で、ああ、そこかー!と、読んでいてもどかしくてならなかったです。
セシルも損な思考回路しているなあ。でもこのお年ごろの女の子の気持ちは繊細で複雑だから……。
ジュリアンの真摯な心が、言葉をつくすほどにセシルにはどうしても届かないのが、読んでいて切なくてもうたまらなかったです。

「そんなの、ひどい」
「もちろん、ひどいことをする自覚はあるよ」
「そうじゃなくて、あなたにとって」

38頁あたりのふたりの会話がもう。セシルも、ジュリアンを嫌いになった訳ではなくて、彼の辛い立場を理解して、思いやってるんだ。改めて、セシルは賢くていいこだなと思いました。
そこでセシルの優しさにわずかに期待を込めてすがろうとするジュリアンの姿も切ない……。

今回はそんな感じで、セシルとジュリアンのパートナーのかけあいが全然読めなかったのが寂しかったですが、ジュリアンの助けなしでもひとりで頑張ってるセシル、つらそうで胸が痛みましたが、応援したくなりました。
ジュリアンのフォローありの状態ではちょっと見えづらかったセシルの聡明な部分が表に出てきてて、こういう展開もまあありだったかな、とか思ったり。
アビゲイル姉さんに会いに行く場面も良かったです。イラスト、私が勝手に想像していたのとは違う方向性の美人さんでしたが(ちょっと『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』のパメラ系?)、素敵な方でした。
婚約者の方とのエピソードが切ない。それでも自然に微笑むことができる彼女の姿が美しい。
彼女が歌った曲の歌詞も、ロマンティックで切なくて素敵。確かにセシルとジュリアンにもぴったりだなと思いました。

今回はまた、アッシュフォードの四兄弟のほのぼの場面がけっこうたくさんあって、シリアスな展開の中で癒されました。
改めて、ジェフリー兄さまが本当にいいキャラしてます。ダニエル兄さま頑張れ(笑)。幸あれ!
サミュエル君にも癒されました。この状況下で、ジュリアンを素直に慕っている彼の存在は救いですね。
アンサンブルの場面も楽しそうでした。
そしてモールス信号、まさか解読役がジェフリー兄さまだとは……。
ジェフリーがいると、シリアスな場面でも突拍子な言動でいつのまにか気にならなくなったりするので、いいなと思いました。
ダニエル兄さまの生真面目な愛情も、やっぱり本当に好きです。

エリザベスとセシルの幼馴染みの友情にもぐぐっときたし、思いがけないところから登場した(言葉の通り。笑)アメリア嬢のセシルへの心遣いもステキでした。
エリザの友情と読書への情熱とのバランスに、共感を覚える少女小説愛好家です(笑)。
セシルにおめかしさせたアメリア嬢がナイスでした。セシルとアメリア嬢の関係がなんだか面白くていいんですよね。ふふふ。実は情にあついひとなんだって、ちゃんと分かりますし。
そしてアメリアの方にも、まさかの恋の予感が。え、え、本当に彼でいいんでしょうか?笑顔に一目惚れ?
アメリアの社交の手管とかが一切通用しなさそうな相手で、苦労しそうだな……。

一方のクリストファーは、まあ読めば読むほど恐ろしいお人で。
彼のたくらみのすべてがゲームだなんて、ぞっとします。
セシルが彼の手にどんどん絡め取られていく姿に、はらはらし通しでした。アッシュフォードの兄弟たちもジュリアンも、セシルを必死に守ろうとしているんだけど、クリストファーはさらに上を行ってるんだよな……。
それでもクリストファー、ヴィルヘルムにちょっかいをかけられたセシルを、やんわり助けようとしていたんですよね。
もしかして、セシルのこと、本当の本当に、愛しているのかな。この人。
ラストの企みまで読むと、やっぱりすごく歪んでいるけど。

前後しますが、クリスマスにノーフォークまで招かれていってからの後半部分は、予想をまたさらに上回って、緊張感あふれるストーリー。
特にラスト近くはひりひり痛いくらいでした。まさかこんなシリーズだったとは……(繰り返し)。
実在の王家の人たちが物語にここまで絡んでくるのは、ヴィクロテとか伯爵と妖精とかの方ではなかったことなので、新鮮に読めました。
サンドリンガム・ハウスの描写も興味深く読みました。クリスマスのプレゼントとか。
アレクサンドラさまはやはり優しくて素敵な方なのですが、他の人は、なんだかなあ……。あまり深い事情まで掘り下げて読んでいないからかもしれませんが。

そんな中で、さきほどもちらりと話題にしましたがヴィルヘルムにちょっかいをかけられたセシル、彼女をぴったりのタイミングで助けに来て、「彼女の婚約者です」と将来の一国の君主相手ににらみをきかせて言い切ったジュリアンが、格好良すぎて!!この巻の中でいちばん盛り上がったかもしれない!(笑)
この場面のジュリアンの頼もしさだけで、すべてが許せる気がしました(笑)。
あとからの回想で、セシル本人に言ったほど冷静に考えていたわけではなく、婚約者だと噂が広まって既成事実になってしまえばいいのに……と考えるジュリアンにも、またときめきました。
確かにこの際だからそうなればいいのになと、私も思いました。

(そういえばジュリアン、サンドリンガム・ハウスについたばかりの204頁あたりでセシルに、仕事ならつきまとって守ることも許される?みたいなことを真剣に語っていて、すごい、堂々とストーカー宣言してるよこの人……とかつい思ってしまって、なんだかごめんなさい。笑)

緊迫した夜に、レナードさんからのクリスマスプレゼントで、ジュリアンのスケッチを目にして、自分と彼の気持ちをついに悟ったセシル。
(そう、レナードさん!本当にいいひとだなーと、今回何度も思いました。ジュリアンの恋の味方が身近に一人でもいるのは心強いです。)
個人的には、この辺りをもう少し頁をさいてていねいに心理描写をしてほしかったな、と思うのですが、ジュリアンの、セシルの、お互いへの一途な愛情がにじみだしてきて、ああ、いい場面だなあと思いました。
ふたりが一巻目で心を通わせるきっかけになったジュリアンの絵が、ここで再びふたりの愛情を結びつける役目を果たすことにもなった、という小道具の使い方が、ステキです。
これまでの巻のふたりの優しい思い出を、セシルを愛するジュリアンの視点で読者の私も自然にたどることができて、読んでいて胸がいっぱいになりました。

そして!そこからまた一気に物語はシリアスモードに。
ついに企みの総仕上げ段階に入ったクリストファーが本気で怖くて、彼の執着から逃れようとしても逃れられないセシルにはらはらして、そしてセシルの命の危機に、すべてを忘れてかけつけようとするジュリアンが、またひたすら格好良くって。
本気を出したジュリアンにぞくぞくしました……愛する人を救い出すためかけつけるヒーロー、というシチュエーションは、やっぱり盛り上がります。
セシルとクリストファーとジュリアンのやりとり、そして、セシルが最終的に取った選択、とは。とは……(涙)。
これまで見たこともないジュリアンの必死の表情が、すごく印象的で、目に焼き付きました。
最後の子守唄の歌詞が、余韻に残りました。
そんな、ええええー!!

冷静に考えれば何か分かるのかもしれませんが、今の私には、これからどうするのか、さっぱりわからないです。
某シリーズとは違って、この作品はファンタジーじゃないよ……?
まあ少女小説ですし、ほんわかが持ち味だったこのシリーズのことですし、新刊予告の次巻のサブタイトルも考えて、ハッピーエンドだと信じてる、信じているのですが!

この展開の回収はさっぱり分からないのですが、セシルとジュリアンのふたりの未来については、完全に私の想像ですが、ぼんやりと。
セシルとジュリアン、有能な女性記者と挿絵師として、小さな新聞社を設立したらいいのにな。
ジュリアンはまあ次男ですし、この巻のローレンスさんやヴィクターさんの様子を読んでいる限りジュリアンに対して血も涙もない肉親ではないっぽく見受けられますし、ジュリアンが強く望めば、結婚や職業の選択の自由は、認めてくれるんじゃないかなと期待してみる……。(特にヴィクターさんは、あのジュリアンのスケッチ集を見ているんですし、弟の想い人について、何か感じることがあったんじゃないかな。ね。)
それにダニエル兄さま含めて皆、この巻のラストのジュリアンのセシルを救うための必死の姿、見ていたんでしょうし。なんとか考えを改めてくれないかなー。
それで、ジェフリー兄さまの開発とか、スクープしたりするんですよね!
あとダニエル兄さまとエリザベスも、セシルは違う世界で生きていく親友、とアレクサンドラさまに語っていたけれど、ダニエル兄さま、本気を出してほしいなと思います!(笑)


7月が、今から本気で待ち遠しいです。
ちょうど私の誕生日近くにあたるので、プレゼント気分で。
このプレゼントはハッピーなものだと、繰り返しになりますが、信じていますから!!


長くて未整理の感想に長々とお付き合いいただいたあなたさまに、心よりの感謝を。
色々書き散らしていたらやっぱりもう一度読み返したくなってきたので、また読んできてもいいでしょうか(笑)。

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カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 久賀理世 

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