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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『残月―みをつくし料理帖』高田 郁 

残月 (ハルキ文庫 た 19-10)残月 (ハルキ文庫 た 19-10)
(2013/06/15)
高田 郁

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『みをつくし』シリーズ第八段。
吉原の大火、「つる家」の助っ人料理人でもあった又次の死。
辛く悲しい思い出が残る日々、澪は又次を偲んで、とある料理をこしらえる。
一方、芳と若旦那・左兵衛との再会は、かなうのか。あさひ大夫のその後の消息はいかに。
料理の道に生きる澪と、彼女のまわりの「つる家」の人たちに、転機がおとずれる――。それぞれの決意とは。


『みをつくし料理帖』、前巻の辛いラストから、長い日々でした。待望の新刊です。
まあ、前巻、そのまた前の巻、澪にとってしんどい展開続きだったので、今回は一体どうなることやら……不安感も、読みはじめるまでは正直あったんですけどね。
いったん読みはじめると、馴染みの「つる家」のあたたかな人たちの語らいが、お互いへの思いやりや、おいしそうなお料理や、すべてが愛おしくて。かみしめるように、読み進めていきました。

このシリーズは、特に自分自身がしんどいときに読むと、本当に染みるなあと思いました。
幾多の困難に阻まれ、それでもひたむきに料理人の道の研鑽を重ねて歩み続ける澪の凛とした姿には、読んでるこちらが、はげまされます。
こんなに頑張る澪だからこそ、周囲の皆も、自然と手を差し伸べてくれるんですよね。皆の関係がやっぱり大好き!
あと今回思ったのは、文の言葉のリズムが、優しいの。
とん、とん、とん、台所でお母さんが包丁をたたいている音を聞いているような、ほっと落ち着く感じ。
あいかわらず、澪とお芳さんの関西ことばも私自身が普段使っていることばに近くて、すっと馴染んでとても良いです。

さて内容は、前巻の辛い展開から、ようやく光が差してきたような。
心が痛くなるお話はひかえめで、特に最後のお話のラストは、穏やかに幸せな心地で、胸がいっぱいになりました。
今回は同じ涙でも、嬉し涙が込み上げてきました……本当に良かったです。ぐすぐす。
そしてやっぱり料理はとても美味しそうで魅力的です。
特に前半部分が今の季節と重なっていて、どれもこれも食べたくなって困ってしまいますね……(笑)。

それでは各話ごとに感想を語ってみようかと。
一応ネタばれご注意くださいませ。


『残月――かのひとの面影膳』
この一話、つる家の皆が又さんの死をじっくり悼んでくれていて、皆の思いが静かな愛情にあふれていて、読んでいて胸が一杯になりました。うん、私もこのお話を読んで、自然に前に視線を戻すことができました。
高野豆腐の含め煮、私は幼い頃から大好物なので、江戸の皆に不評な様子に、微妙にショックを受けました(苦笑)。
噛むごとに、おだしがじゅわっとあふれでてくるのが、たまらなく美味しいんだけれどなあ。今ならオクラやいんげんやかぼちゃとの炊き合わせで。
とはいえ今回の澪の「謎」の料理も美味しそうでした。
噛み締めるごとにでてくる味わいって好きです。
そう、又さんも、そんなおひとでした。
りうさんの台詞がとても素敵。
そうそう、小松原様のその後のことも、ちらりと。
ああ、もうこの人の人生が澪と直接交わることはないのだろうなあ。切なくてたまらないけれど、意外と読み心地はおだやかでした。

『彼岸まで――慰め海苔巻き』
佐兵衛さんとお芳さんの再会、ようやくここにきて、実現。
苦いものも含みつつ、親子としての絆をひとまず取り戻したお芳さんと佐兵衛さん、ああ、良かったな。
しのぶさんも素敵なおひとです。
ただ天満一兆庵の再建を澪に背負わせるつもりはない……との言葉、澪にとっては、結構酷なんじゃないかな、それはちょっとひっかかりました。
優しいお味の干瓢巻き、食べたくなりました。

『みくじは吉――麗し鼈甲珠』
「みくじは吉」「吉」とにかくこの言葉を支えにして、不幸な展開にならないよう、祈りつつ読んでいました(笑)。
鼈甲珠を食しての、清右衛門さんの評価が、こんなに嬉しく心強いものだとは。普段が普段なだけにですねー(笑)。
あまり食したことがないタイプのお料理で、気になります。
美緒さんとの再会も好きな場面でした。
「あのひとの心根の美しさは、私の見かけの美しさにも敵わない」美緒さんのその言葉が美しいです。
お幸せに。

『寒中の麦――心ゆるす葛湯』
澪より先に、お芳さんの恋が成就することになるとは、正直予想外でした。
でも本当に良かったです。柳吾さん初登場時にはまさかこんな展開になるとは思わなかったですが、とてもお似合いだと思います。
大切な場面に、澪を娘として立ち会わせた柳吾さんも、良かったです。
こんなに暑い時期ですが、あったかくて美味しい葛湯が恋しくなりました。
坂村堂さんと柳吾さんの間もわだかまりが解消したようで、ほっとしました。
天上昆布もとても美味しそうです。昆布のミルフィーユみたいなもの?
どうでもいいですが、坂村堂の奥さまとは、私、お友だちになれる気がします(笑)。

ふきちゃんの料理人としての成長は嬉しい、でも澪がいつかこの「つる家」を離れる日がくるなんて、想像するだけでとても切なく寂しいです。
だって皆大好きなんですもの!

芳さんに春が来たなら、澪にもいつか……期待してしまいます。
今度こそ彼女には、幸せにつながる恋をしてほしいな。
源斉先生とか、ダメでしょうか……(←実は最初の方から源斉先生派の私です)

巻末の特別収録『秋麗の客』は、朝日新聞に載っていたのを切り抜いてとっておいて、読んでました。
干しぶどうをみりんで味付けするなんて、新鮮!

次巻がいつになるやら分からないですが、今から待ち遠しくてなりません。
その前に、積み本状態になっている作者さんの別作品も、読みたいです。


ここ何日かの間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪
コメントもくださった方、ありがとうございます!こんな記事ですが、お待たせいたしました(笑)。


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カテゴリ: 歴史もの

タグ: 高田郁 

この記事に対するコメント

早速読ませていただきましたなぎです、こんばんは。
fallcloverさんの感想は読んでいて心がとても和むので、大好きなのです。

あれだけの辛いことのあとだったので、今回見えてきた光には救われましたね。本当に良かった・・・!!
fallcloverさんは源斉先生派なんですね。
実は私は源斉先生苦手でして・・・。 奥ゆかしいと言えばいいけれど、好きならもっと分かりやすく行け!って思ってしまうんですよね(笑)
でも確かに澪にも新しい恋の訪れはあって欲しいものだし、それが源斉先生とのものなら穏やかないい恋になるのかも知れませんね。
しみじみ染みる優しい感想、ありがとうございました。

URL | なぎ #-
2013/06/24 21:12 * 編集 *

Re: タイトルなし

>なぎさん
コメントありがとうございます。

何度もお話していただいていたのに返事が遅くなってごめんなさい……!
すごく、語りたくって、うずうずしていたんですけれど!(笑)
なぎさんのブログの方も、楽しみに読ませていただいているのです。
本への愛がひしひし伝わってくる感じが、とても好きです。

さて『みをつくし料理帖』の新刊。
おっしゃるとおり、ようやく光が見えてくる展開で、ほっとしました……!
こんなに自分に厳しく日々努力している澪だもの、いずれそれが実を結ぶはず。
そして実はそうなんですよ、私は源斉先生派なのです(笑)。
でも確かに、なぎさんがおっしゃっていることも分かります(笑)。はっきりしないんですよね!
『心星ひとつ』で傘を忘れていかれたあの場面が、源斉先生が切なくて、読み返すたび胸が痛みます。
澪の恋の行方……どうなるんでしょうねえ。

これからもこんな感じで自己流に感想書いていく予定なので、また気が向かれた時にでもいつでもお越しください~♪
ときに返信が遅れるかもしれませんが、少々?お待ちいただければ……。

URL | fallclover #SvKcs0as
2013/06/27 22:45 * 編集 *

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