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『英国マザーグース物語 花咲けるきみと永久の歌』久賀 理世 

英国マザーグース物語 花咲けるきみと永久の歌 (英国マザーグース物語シリーズ) (コバルト文庫 く 10-9)英国マザーグース物語 花咲けるきみと永久の歌 (英国マザーグース物語シリーズ) (コバルト文庫 く 10-9)
(2013/06/29)
久賀 理世

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『英国マザーグース物語』シリーズ第六作目にして完結編。
クリストファーの巧妙なたくらみに巻き込まれ連れ去られたセシル。捨て身で彼女の元に向かったジュリアンと、あとからかけつけたジュリアンの従者の機転により、ひとまず無事に救出され、女王の暗殺も未遂に終わった。
だがクリストファーは、ジュリアンに「ロンドンで最後のゲームをする」と宣言し、再び姿を消してしまう。
ロンドンに帰り、クリストファーのゲームにいどむために、再びパートナーとしてアクロイド社で働きはじめたセシルとジュリアン。
やがてロンドンの街で、ある特徴が刻まれた遺体が発見されて……!?


『英国マザーグース物語』、先月に続いての新刊。そして完結編。
とにかく、とにかく!前巻のラストの引きがひどいものだったので(笑)、もう本当に待ちわびていました。
いやラストだけではなく、前巻のお話全体が、非常に面白く心をぎゅっとつかまれるもので、この一ヶ月の間、ずっとこのシリーズの世界にひたっていたといっても、過言ではなかったです、私。
感想を書いてからも何度も読み返しましたし、他の方の感想を読ませていただいて共感したり、自分では思いつかなかった解釈にそうかー!と感心したり。
どう転がっていくのか分からない先を待ちわびる気持ちを、他のみなさまとリアルタイムで共有できて、ジェットコースター的な展開も、ある意味すごく楽しかったです(笑)。幸せでした。

で、今回の完結編を昨日書店で実際に手にとって、読みまして。
……ああ、すごくいいものを読みました。私。
今日にいたるまで、心地よい満足感で、胸がいっぱいです。
前巻からの最大の心配事がひとまず解決してほっとした後も、ラスト直前までシリアスな事件ではらはらどきどきの連続、ひと息に読み切ってしまいました。
あと、ロマンス成分も、増量していて!主役ふたりのやりとりに、今まででいちばんときめきました。本当に楽しかったです!少女小説たるものこうでなければ!(笑)
私がこのシリーズの楽しみどころとしていた要素、ほとんどすべて詰め込まれていた最終巻だったと思います。
はああ、もう本当に良かったです。
ラストまで読んで、サブタイトル、ああ、そういうことね。余韻まで素晴らしかったです。

ではでは追記以下は、いつもの通りにネタばれありの感想語りです~。
約三回くらい読み返して書いていますが、まだ正直読み足りない(笑)。でも感想は書いちゃいました。


表紙、ネット上で発売日前に公開されたときから、幸せ感にめろめろになっていました(笑)。
手を取り合って目と目を見交わすセシルとジュリアンの表情が、とっても良いです!お互いへの信頼が確かに伝わってきます。
何よりセシルを見つめるジュリアンの瞳が本当に優しくて、愛情がにじみ出ていて。お気に入りです。
今回のお話ではセシルは再び新聞記者見習いで、男装姿がメインだったので、表紙で可愛らしいドレス姿もじっくり拝めて、良かったと思います!
キャラクターの瞳や髪の色、服装、背景のお花や小道具や、すべてのバランスが考慮された色味も、あきさん、相変わらず素晴らしいとしか言いようがありません。

この表紙とサブタイトルで、発売日前もいくらか気持ちが慰められていましたね(笑)。


で、まずはとにかくこれしかありません、前回のラストの回収でした(笑)。
そうか、レナードさんかー!彼は前巻に引き続きとてもよい仕事をしてくれています。ジュリアンの気持ちの方のアフターケアまで。素晴らしいです。
あとクリストファーの病気のことは、前巻の『みりおんぐらむ』様の感想(→こちら)ではじめてそういう読み方もあったのか!と気づいたのですが、その通りな展開でした。
彼の「時間がない」は、そういう意味も含んでいたのか。そっか……。
だからこそというか、ジュリアンに再びゲームを持ちかけてきたクリストファーは、凄みがあって、とても恐ろしかった。後始末まで常に完璧なのも恐ろしいです。
ジュリアンに賭けさせたものが、セシルの命というのも、今回の話で、最後まで重要なポイントとして引っ張られていきましたねー。
ここまで読んだらもう、クリストファーがセシルにどんな気持ちを抱いているかは、私でも疑いようがなくて。
そして後になればなるほどつのっていくジュリアンの焦燥感に、読んでいて私も本当にどきどき胸が苦しくなりました。

そんな感じで一難さってまた一難……でしたが、セシルの身の安全は、ひとまず守られました。
良かったですーもう本当に良かったよー。後づけっぽくなくて、自然と納得できる流れでしたし。まああとになって思ったことなのですが。
そして、セシルとジュリアンがお互いの気持ちを確かめ合い、仲直りできた場面も、本当に良かったです!
ふたりのやりとり、気持ちのゆれ動き、しだいに重なっていく様がひとつひとつとてもていねいに描かれていて、読んでいていとおしさでいっぱいになりました。
「あなたのことが好きなのに――」とはらはら涙を流すセシルとそれをうろたえて見つめるジュリアンの箇所が特に心に残りました。

「こんなはずじゃなかったのに」
ため息とともに吐露する。
「きみと出逢ってから、なんだかずっと、ぼくはおかしいんだ」
「わたしのせい、ですか?」
「そう、きみのせいだよ」
泣き笑いのように、ジュリアンが言う。
「なにもかも、きみのせいだ」
なじるような、甘えるような声音に、セシルの胸がしめつけられる。 (46頁)

――あと、ここの場面の会話が……すごく好きです!読んでいて何とも言えずに優しく甘い気持ちになりました。
ジュリアンのため息のようにぽつりぽつりとこぼれる愛の告白と、ジュリアンの気持ちをすべてまっすぐ受け止め包み込み言葉をかえすセシルの強さと優しさが、とても良かった。
セシルは本当に心根の美しい娘さんで、穏やかならぬ世界で生きてきたジュリアンやクリストファーが彼女を愛したのも、すごくよく分かるのです。
ま、偽装パートナー生活をふたりこうして笑って振り返れる日がくるなんて、もう本当によかったです。

ハンプティ・ダンプティ、雛鳥の前に、ゆでたまごを想像してしまった私は、ポール並に食い意地がはっているのかもしれない……。

そして再びアクロイド社ではじまる、見習い記者と絵師としてのパートナー生活。
レスター氏との会話と身の上話も良かったですねー。

「やはり仕事始めのお茶は、セシルの淹れたものでないと。
きみもこの一ヶ月というもの、さぞかし味気ない思いをしていたんじゃないかい?」
レスターの視線を受けて、ジュリアンは深くうなずく。
「ええ、それはもう。アクロイド社を去って以来、毎朝、起きる気がしなくて困りました」  (60頁)

――真顔で言ってるジュリアンにときめいてどうしようかと思いました。それはもう確かに、結婚するしかないですよね(笑)。
職場恋愛という響きにきまじめに嬉しそうなジュリアンも……ときめきます。
というか、私も朝のふたりのティータイム、レスター氏の気遣いだったとは、知りませんでした。

こうしてセシルとジュリアンのパートナーが復活して、くすぐったくも微笑ましいやりとりをまた存分に読むことができて、私はとっても満足です!
本人たちも言っていた通り、一度は失われてしまったものだからこそ、いっそういとおしいです。
さらに今はふたり、しっかり両想いでひそかに将来も誓い合った仲になっていて……それを踏まえたところどころの甘さに、読んでいてもうどうしようかと思うほどきゅんきゅんでした。美味しすぎます。
特にジュリアン、楽しんでいますねえ。前巻の切ない展開を思うと、浮かれるのもわかりますよ、ほんと。自分の人でなしっぷりもネタにできるようになったなんて、ふふふ、本当に良かったなあ。
かと思えば、セシルの純粋すぎる信頼と愛情表現に不意打ちされていたり……駆け引きがまったくできないというのも、困ったものですね!(笑)
女装ジュリアンに想像の挑戦をするセシルとか、お医者さんごっこの昔話とか、いちいち微笑ましくて可愛いよー。
ときどき悪ふざけがすぎて、セシルにクッションを投げつけられたり(笑)、なんて可愛いカップルなんでしょう!(←もう何も言えない)

一方、クリストファーの最後のゲーム、一巻分いっぱいにわたって繰り広げれたこまどりの歌の連続殺人事件パートは、とてもシリアスで緊迫感漂うものでした。
思い返せばこのシリーズの謎解きは、けっこうこんな感じで重たいものも多かったですよねえ。ほのぼの感に目隠しされていましたが(笑)。
(というか、今回も主役二人の甘さと微笑ましさで大分中和されていましたけどね!)
相変わらず謎解きはほーっと感心して読んでいるだけの私でしたが、種明かしされていくと、ひとつひとつは私でもじっくり考えればもしかしたら分かったのかも……みたいな惜しい感も味わえて(いややっぱり自力では解けなかったでしょうけど、それはおいといて)、この身近な感じがやっぱり好きだなと思いました。
アルファベットを音に変換するのかー、そういえば中学生で吹奏楽部員だった頃、先生が突然楽譜のアルファベット読み方の勉強をはじめて、当時全然分からず混乱しましたっけ、懐かしい(笑)。
あと全然関係ないんでしょうが、荻原規子さんの『白鳥異伝』で遠子が語った「鳥のお葬式」の昔話を、ちょっと思い出してしまいました。
事件関連では、グラント氏が、わりと嫌いじゃなかったです。
弱みを握られ追い詰められていても、それでも奥さんを愛して奥さんの笑顔と生活を守るために自分の命を投げ出す姿は、善人とは言えずとも、いいなと思いました。あんな結果になってしまって切ないです。
アクロイド社の同僚たちもよかったです。ポールが本当に良い味出しててなぐさめられました(笑)。美味しいミートパイは正義ですね。

そしてまさかあそこで、リアムとヴィクターのお兄さんコンビが登場するとは!完全に意表をつかれました。
ヴィクターさんは凄みがありつつも、ジュリアンのことをちゃんと愛している素敵なお兄さんで、良かったです。
あきさんの挿絵のヴィクターさんが予想外に渋くて……素敵でした♪
一方リアムさんは最後まで読んで、切なくてやりきれなかったです。
最後の最後で最愛の妹を救うことができて、それで本望だったかなあ。アビゲイルさんの方の気持ちも思うとまた切ないです。彼女には亡くなってしまった人の分もなんとか幸せになってほしい。

お兄さんといえば忘れてはいけない(笑)、ダニエルも、今回も良かったです!
やっぱりダニエルは、前回のジュリアンの姿を見て、今回のふたりの姿をまた見て、考えを変えてくれたんだなあ。ああ、良かった。ダニエルとジュリアンの友情が復活したらしいのも良かったです。
あの三人の挿絵、三人とも表情の細やかさがとても良かったです。
「用なし」……なんてまじめに傷ついてる姿はやっぱりおかしくてセシル大好きお兄ちゃんで、それでこそダニエルです!さりげなく追い打ちをかけているジュリアン、確信犯?(笑)
長男として覚悟を決めて家を守るというダニエル、ものすごーく格好良かったんですが……。ここぞという例の場面で、セシルとジュリアンを救ったジェフリーとサミュエルとガブリエルの派手派手な活躍で、また影が薄くなっている……。
本当に、気の毒さが健在で、安心しましたよ(笑)。
エリザになぐさめてもらってきてください(笑)。
それにしてもダニエルの格好いいところを横からかっさらった感のあるガブリエル、さすが怪盗なだけあります。いつのまにかジェフリーやサミーと仲良しになってるし、あ、ますますダニエル兄さまの立場が……。

そしてクライマックス、国会議事堂の時計塔にて。
ヘンリー氏実質的初登場、このタイミングできましたかー!
シリアスな場面のはずなのに、妙に緊張感がなくとぼけた空気をまとっていて、気が抜けてしまいました(笑)。
実際、頼れるパパでした。クリストファーのたくらみも、上からかるーくたしなめて、黙り込ませる……さすがです。ヘンリー氏にかかればクリストファーなんてまだまだつめの甘い若造にすぎないんだな。
そのあとのクリストファーとセシルの場面で、これからは、冬の時代だと語るリーズに、「それでも、春の花はかならず咲くんです」ときっぱり言い切るセシル、ここも好きな場面でした。
さらにそのあと、セシルの身に本当に危機が迫った途端、眼の色を変えて我が身を投げ出してまで彼女を救ったクリストファー……。
今にして思えば、例の列車の場面でも、本当にいざとなったら、彼はセシルの命、奪わなかった、奪えなかったのかもしれないな、とかちょっと。
これまで彼のゲームに巻き込まれて命を落としていった人たちや苦しめられた人たちのことを思うと許しがたいのですが(特にリアムさんだなあ)、それでもやっぱり彼のこと、完全に憎みきることはできません。
少なくともセシルへの気持ちだけは、純粋で本物だったと、私にもわかりすぎるほどにわかったから。
せつないです。

時計塔にセシルのもとへ必死にかけつけるジュリアンも、本当に格好良かったです。
何といえばいいのかな、こんな危機的な状況でも、ロマンティックで絵になる、素敵な場面でした。
セシルと最後まで一緒にいたいがためのジュリアンの「嘘」、ひそやかに、ときめきました。
こういう場面でも、飄々と笑みも含んでセシルと会話していてこそ、ジュリアンだなあ。
というか、ジュリアンの無念も分かります(笑)。彼はきっと、あどけない年下のセシルを思いやって気持ちをずっと押さえてきて、辛抱強く待つつもりだったんでしょうから……。ああ、年の差ものはやっぱり美味しいです。(なぜここで語り出すんだ私!笑)
そしてその後現れた天使……ああ、まさかジェフリー兄さまの突拍子の無い行動で、命拾いをする展開になるとは。笑えないけど笑えてきます。

すべてが終わったあとで……ローレンス氏が不憫でちょっとおかしかったです。嫡男にも先輩にも脅されているとは。
ヘンリーは学生時代、まさにジェフリーみたいなやんちゃな親分で、ローレンスは彼に逆らえない手下だったんでしょうか……想像するとおかしいです。ふふふ。
まあ、父親同士もなんだかんだで仲が良いようで、しかもローレンス氏自身もセシルを気に入っているようで、上手くいきそうで良かった良かった。

ラスト、ジュリアンの浮かれようが半端ないですね……本当に嬉しそう。
そして一巻目の第一話ではじめて出てきたマザーグースの恋の歌と、あきさんの最後の挿絵の取り合わせが、もう絶品でした。素晴らしい!なんの文句もつけようがないラストです。
ばらとすみれ、本当にジュリアン自身が描いた絵みたいに見えますよ!
セシルの仕草や表情も繊細で美しく、彼女を優しく包み込む腕(かな?ジュリアンの?)も、あきさん本当にいい仕事しています。
幸せな余韻でいっぱいになって、頁を閉じました。
『花咲けるきみと永遠の歌』、このラストシーンのことだったんですねえ。
花は、まさにばらとすみれですし、永遠というのは、結婚の誓いの歌という意味も込められているからなのか。
うん、とても素敵です。にっこり。


あとがき、コバルト本誌の中編が今から楽しみ過ぎますー!!
ダニエルとエリザベス、あとジェフリーとアメリア嬢のふたりも、今回のお話では全然読めなかったので、雑誌の方では読めるものだと期待しています。少なくともこの二カップル分、期待していてもいいよね?ね!
さらに雑誌掲載のみとは言わず、短編集まで出して欲しいのですが!
その場合は、ヘンリーとメアリーさんの馴れ初めとか、ヘンリーとローレンスの過去話とかもちょっと読んでみたいです。ソフィやヴィクターの話も読んでみたい。
もちろんセシルとジュリアンのその後も!
というか、ふたりで新聞社を設立……という将来の夢だけは、私の前回の感想での予想があたって、ちょっと嬉しいです。
アメリアの指導で立派な淑女になるのはもちろん、セシルには、職業婦人として社交界の外をメインに生きるのが、似合っている気がします。
考えているとどんどん夢が膨らんできて楽しいですねえ(笑)。


このシリーズは、初期のほんわかモードもとても好きでしたが、途中の衝撃的展開にひっくり返り、ずいぶんと、心臓に悪い思いもしました(笑)。
が、巻を追うごとにどんどん面白くなっていき、どんどん好きという思いが増していった、とっても素敵な少女小説シリーズだったと思います。
あきさんの挿絵もやはり最高でした。
今すべてを振り返って、一巻目の感想でちらりと書いたように、やっぱりこのお話は私にとって、『あしながおじさん』だったんじゃないかな。とか。当初の予想よりずっとスケールが大きかったですけれど。
おじさま視点(ジュリアンのことね)からも年下の娘に惹かれていく過程をたどることができて、予想よりずっと、楽しませてもらえましたよ(笑)。
ヴィクトリア朝の風俗や歴史や王家のひとたちについてもいろいろ知ることができて、楽しかったです。
ワッセイルで乾杯!も良かったです。

久賀理世さん、あきさん、素敵な物語をどうもありがとうございました!!


そして、この感想に最後までつきあってくださったあなたさまも、ありがとうございます、でした♪
大好きなお話の感想をのびのび好き放題に語ることができて、私はとっても楽しかったです。

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カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 久賀理世 

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