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『おこぼれ姫と円卓の騎士 皇帝の誕生』石田 リンネ 

おこぼれ姫と円卓の騎士 皇帝の誕生 (ビーズログ文庫)おこぼれ姫と円卓の騎士 皇帝の誕生 (ビーズログ文庫)
(2013/09/14)
石田リンネ

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『おこぼれ姫と円卓の騎士』シリーズ第7作目。
騎士王の生まれ変わりであるという己の秘密を知る誰かの存在により、滞在していたキルフ帝国の後継者争いに巻き込まれる形になったレティーツィア。
そんな中、アナスタシア姫の弟王子でずっと行方不明だったアルトールが、急に姿をあらわした。
周囲に不審な印象をあたえる王子、そして彼はなんと「神殺しの魔法陣」を使ってレティを拘束してしまう。
レティの騎士・デュークとアストリッドは、協力して主を助け出そうと早速行動にうつす。そしてレティの友人となったアナスタシア王女もまた、自らの意思で少しずつ動きはじめる。


『おこぼれ姫』シリーズ、新刊待っていました!
(目にするたび思いますが、やっぱり『おこぼれ姫』というシリーズ名の響きが可愛らしくて和んで好きだなあ。笑。)
鎖に繋がれた表紙のレティのイラストやあらすじがやや不穏で、どきどきしつつ読みはじめました。


以下、ネタばれ注意でお願いします~。


その通り、お話の本体では、レティが今までになくピンチな状態でした。
レティ自身が自由に動けなかった分、彼女の騎士のデュークとアストリッドがいつもにまして大活躍で、たいそう格好良く素敵でした。
特にデュークの文武両道、策士っぷりに惚れ惚れしました。さすがレティが第一の騎士として見込んで強引に引き入れただけのことはありますね!(1巻目の過去が振り返れば遠い……笑。)
裏稼業的な局面で俄然役立つアストリッドももちろん頼りがいありました。デュークの常識的な突っ込みが地味に面白かった。
この先輩後輩コンビの協力関係が今回いいな~と改めて思いました。
レティの指示なしで彼女の考えそのままに行動できてるのが本当にすごい!とてもいい主従たちです。

そして今回のメイン脇役、アナスタシア姫。
前巻の時点では薄幸の心優しいお姫さまだったアナスタシア姫、まあ言ってしまえばそれだけだった(ごめんね!)彼女が百八十度方向転換して、レティとほぼ同じ人生の選択をすることになるとは、前巻の時点では予想できてなかったです(ヴィクトル王子といい夫婦になってくれればいいなあと思ってました)。それだけにギャップが鮮やかでした!
特に腹をくくってから、ぐっと強くなり、精いっぱい威厳をまとわせはじめた彼女の姿が、読んでいて本当にまぶしく清冽にかがやいていて気持ち良いものでした。
レティとの出会いと友情が、彼女をここまで変えたんだなあ。
皇帝になる直前でのレティとのやりとりの場面がまた本当に素敵だったのです。内なる心根の優しさでは共通している女王さまふたりの友情は、ずっとずっと変わらないと、私も信じています。
戴冠式の場面、レティの花がとてもよく雰囲気あっていて、素敵でした。

今回の悪役のメイン(?)……ユージェス。
彼の口と態度の悪さに私もレティと一緒にいらいらしましたが(笑)、思っていたよりツメが甘くて、思っていたよりあっさり退場していった感。……いや、レティとデュークたちとワレリーが奮闘したからこそなんですけれど、もちろん。ユージェスの完璧な根回しを見事にかいくぐったワレリーの実直な忠誠心が良かったです。
その後で「反抗期」の真相を知って、色々納得いたしました(笑)。
今回の王の間の主役的な、フォルカー王とレティのやりとりも、兄と妹のような身内の情めいたものが感じられて、いいものでした。親ばか、人間ばか、騎士王ばか、のやりとりがとくに好きでした(笑)。
あと一箇所しか出番がなかったカールハインツ王のイラストがまた、知的な格好良さをたたえていて不意打ちにときめいたり……(笑)。
自分を取り戻したアルトール王子が語ったことの真相は、なんともやりきれないなと思いました。
本当のアルトール王子の優しさ、姉への愛情が、静かに切ない余韻を残してくれました。

デュークとアストリッド以外のレティの騎士たちは今回はほぼ出番なしでしたが、ノーザルツ公とレティのなかなか際どいやりとりに、思わず笑みが。素直じゃないなあ、もう!
最初から最後まで、よき脇役として何気にけっこう活躍していたヴィクトル王子も素敵でしたよ。お姫さまを助ける王子さまの演出が格好良かったです。さすが王子さま。
ヴィクトル王子とアナスタシア姫の間に、何かこう、気持ちはほんの少しでも芽生えていたのかしら。ほんのり余韻があったようななかったような。
アナスタシア姫も、こういう事態になったからには、シリルさんというひとと、幸せな夫婦になってほしいなあと切に願います。
王の結婚って本当にままならないものなんだなと、アナスタシア姫のとっさの選択を読んでてうーんとうなったり。

そんな流れをくんでの、レティとデュークのラストあたりのやりとり。
これがもう、今回のそれまでのお話以上に、私の中でわーっと盛り上がりました。すごーく良かったです!!
思いがけない偶然で、デュークの自分への想いを知ってしまい、それまであえて考えないようにしてきたデュークのこと、考えずにいられなくなったレティ。
この一連のやりとりの、さりげない甘さが、もう、たまらない!たいへん美味しゅうございました。

――わたくし、ずっと貴方のことを考えている。  (253頁)

いつものポーカーフェイスの裏で、自分の気持ちにとまどい揺れおののいているレティが本当に女の子で可愛らしくて……!!(おふとんぱしぱし)
アナスタシア姫とデュークのやりとりも読みつつ、現時点では、まあ、想いがゆっくり育ちやがてお互い通じ合うまで、優しく見守っていてあげたい感じのふたりだなと、私は思います。
レティは怪物になってしまうまでの狂気の愛情はお気に召さないみたいですが、堅物なデュークのストイックな愛情も、ある意味それ以上に稀有なもののような。なんだか上手く表現できないんですけれど!
アナスタシア姫との劇の感想のこのやりとりが、今後何かの意味をおびてくるのか、気になります。


次巻では、舞台はソルヴェールに戻るのかしら。
ソルヴェールのにぎやかで面倒くさい兄弟たちがそろそろ恋しくなってきたので、次巻での活躍、期待しています。
ロマンスの進展ももちろん期待しています。
今の時点でのこの関係の美味しさ、いっそ現状維持でずっと眺めていてもいいくらいかもしれませんが(笑)。それではレティが末永く幸せになれないですものね。


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カテゴリ: ビーズログ文庫

タグ: 石田リンネ 

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