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『黒猫の遊歩あるいは美学講義』森 晶麿 

黒猫の遊歩あるいは美学講義黒猫の遊歩あるいは美学講義
(2011/10/21)
森 晶麿

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でたらめな地図に隠された意味、しゃべる壁に隔てられた青年、川に振りかけられた香水、楽器なしで奏でられる音楽……日常にひそむ幻想、謎。
美学・芸術学を専門とする若き大学教授の青年・通称「黒猫」と、彼の「付き人」に任命された同い年の大学院生は、美学とエドガー・アラン・ポオの講義を通して、それらの謎を解き明かしていく――。


『ある休日のティータイム』様の感想に惹かれて、手にとってみたシリーズ。
日常の謎を、主に美学講義で解き明かしていく、ミステリー小説と言えばいいのでしょうか。

単行本の方も文庫版も、丹地陽子さんの表紙イラストが秀逸。黒猫氏が優雅で格好良すぎます。
赤いワンピース姿の付き人と月の取り合わせもいい!

ええと、この作品、予想外にものすごく好みでした!
すでに出ているシリーズ三巻一気読みして、さらに文庫版で読み返したり、気がつけばすっかり黒猫ワールドに浸っている私がいました(笑)。

なんといっても、黒猫とヒロインで語り手である付き人の、今のところ恋愛未満、だけれど明らかに友情以外の何かを含んだ親密な関係が、読んでいて素敵すぎます。きゅんきゅんです!
黒猫氏が偏屈と言うほど読んでいて偏屈に思えないのは、やはり付き人限定で優しく接しているからなんだろうか……とか色々想像の余地があるのがいいです(笑)。だってこの人、他の女の人にはけっこう容赦ないんですよね……。
地味な研究者タイプ(?)の付き人の推理や研究や彼女の気持ちを、なんのかんの言いつついつも側で優しく見守っている雰囲気が、いいなあー。

美学の講義にからめての各話の構成も、好きでした。(ただし私、ポオは全然読んでいないんですけどね……。)
まあ理解しづらいところはさらっと流しつつも、彼の美学講義は、個人的にはけっこうすんなり馴染めました。いつものごとくミステリーをミステリーとして読んでいないからかもしれませんけど(笑)。
連作短編形式で、時に人死や重い事件が起こっても、どのお話も読後感は不思議にほんのり明るいところが良かったです。もっと突き放された冷たい話をイメージしていたので……。黒猫と付き人の、相手への思いやりや信頼関係が、いいんだな。
独特の優雅で静かな作品世界、言葉の美しさも私好みでした。あえて語られていない名(たとえば黒猫と付き人の本名とか)の存在がまた想像をかきたてられて素敵です。

各話ごとに感想を語ってみる。
『月まで』
付き人が黒猫に見せた、一見でたらめな地図に隠された意味とは。
私はこの本の中ではこのお話が一番お気に入りでした。
竹取物語と月とゆふきさんと秘め恋と、パーツが少しずつ重なり合わさっていく様がお見事でした。
地図に隠された相手の情熱も、静かによく伝わってきます。私の中のイメージはフランス語の洒落た地図。
文庫の解説にも書かれていた通り、第一話の時点でここの話を持ってこられるのは、読んでいて新鮮な感じでした。

『壁と模倣』
一話目と違って少々ひねていて重たいお話。過去エピソードですね。
ミナモさんのキャラが独特で印象的でした。
「やれやれ、僕を巻き込むなよ」「ごめん、でももう話しちゃった」「いや、君のことじゃなくて……」辺りの74頁の会話が好き!
黒猫氏と付き人がどんなふうにして仲良くなっていったのか、気になりますねえ。

『水のレトリック』
黒猫氏の知り合い、調香師のいろはさんのたたずまいが美しくて素敵でした。彼女の恋のエピソードも美しい。
『雨月物語』って確かに雨の匂いのイメージがあります。
付き人の過去がこんなに密接に関わってくるとは。
付き人語り手で進んでいくので見えにくいけれど、彼女自身もとても魅力的な女の子なんだろうな。

『秘すれば花』
失踪した若き女研究者のお話。
少しひんやりとしたお話でした。
後味があんまり良くないようでいて、読後感はやっぱりほんのり優しいです。

『頭蓋骨の中で』
これまた奇妙なお話です。
付き人お気に入りの詩が確かにインパクト大だなあ(笑)。

『月と王様』
『追う王』の古の悲しい愛のお話と、老いた研究者の秘め恋が、冷たい空気の中で、読んでいてきれいに重なり合わさって、素敵でした。
楽器、まさかそんなオチだったとは……。
最後辺りの黒猫と付き人の会話がいいですねえ。
「僕の好きな眺めがここにある」なんて、ねえ、どういう意味なんでしょう!

黒猫と付き人の微妙な関係だけでなく、各話ごとの登場人物たちのエピソードもたいてい恋愛ががっつりからんでいるので、ラブロマンスとして読むのも、いいのかも。糖分のさじかげんが好みです。

あと、いちごパフェが食べたくなります(笑)。
自分と一緒にパフェを注文してくれない付き人に内心ちょっと不満な黒猫氏が可愛らしい(笑)。

二巻目も三巻目もすでに読んじゃったので、また後日に感想書きたいと思います。

文庫版はこちら。

黒猫の遊歩あるいは美学講義 (ハヤカワ文庫JA)黒猫の遊歩あるいは美学講義 (ハヤカワ文庫JA)
(2013/09/05)
森 晶麿

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個人的には、『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』シリーズのあの雰囲気が好きな方に、ちょっとオススメしたいシリーズです。


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 森晶麿 

この記事に対するコメント

こんにちは。
ご紹介くださりありがとうございます!

私も、書店で見かけた時、何となく手にとって何となく読んでみたのですが、「予想外にものすごく好み」でした! 2巻3巻と読み進めていくうちに、どんどんはまってしまったという。。こういう出会いって嬉しくなります。

黒猫と付き人を中心に糖分のさじ加減が絶妙ですよね。黒猫らしいアプローチに身悶えしています…!(fallcloverさんの2巻の感想読んで、あの場面この場面を思い出してはニヤニヤゴロゴロしちゃいましたw)

なんと…fallcloverさん3巻まで読まれていてびっくりしました!(笑) 個人的に3巻はお気に入りなので、感想楽しみにしていますね♪

『黒猫の接吻~』でおっしゃっていましたけど、
>日本語が美しい作品がやっぱり私は大好きです。
に、うんうんと何度も頷いてしまいました。
残念ながら私は美学理論をきちんと理解しているか定かではありませんが(苦笑)、読んでいて心地よく感じられるのは日本語が美しいからなのだと思っています。

URL | 香穂 #kWRBhSF2
2013/10/20 11:58 * 編集 *

Re: タイトルなし

>香穂さん
コメントありがとうございます。

いえいえこちらこそ、素敵な作品をご紹介くださって、どうもありがとうございました!
私は香穂さんの『黒猫の遊歩あるいは美学講義』のご感想がきっかけで、図書館でまとめ借りして読んでみたら、とってもはまってしまいまして……一巻目は結局文庫で購入しました(笑)。
香穂さんのご感想の箇条書きの部分が特に、本当によくわかる!!とうなずきつつにまにましつつ読んでおりました。
本当に、こういう予想外の出会いって嬉しいですよね~♪

はい、私も、美学講義の部分を理解できているかと言われると怪しいですが(笑)、まあ、雰囲気で……。
日本語のさりげない品のある美しさが好きです。

三巻目、はい、読みました。すごくよかったですよね!!特に花の色がぱあっと鮮やかに印象的でした。
多分読み返してから感想書きだすと思うので、もしよろしければしばしお待ちください……。

URL | fallclover #SvKcs0as
2013/10/22 20:56 * 編集 *

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