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『ルリユール』村山 早紀 

ルリユール (一般書)ルリユール (一般書)
(2013/10/11)
村山 早紀

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「黒猫工房では、あなたの大切な本を、修復いたします――」
祖母の住む街を訪ねてきた中学生の瑠璃は、母の地図に導かれて不思議な洋館に辿り着く。
そこに住んでいたのは、赤く長い髪を持つ外国の女のひと、どんなぼろぼろの本でも元通りに修復できる魔法の手を持つルリユール職人・クラウディア。
瑠璃はクラウディアの工房で、傷んだ本の修復やそこにまつわるひとびとの思いに、触れることに――。


村山早紀さんの新作は、「ルリユール」の世界に足を踏み入れることになった少女が主人公の物語。
「ルリユール」、恥ずかしながら私もほとんど知識がないのですが、造本、製本、装幀や本の修復といった仕事をさす言葉だそうです。
この本の中からの抜粋ですが、昔のヨーロッパで、糸で仮綴じされただけの本や折りたたまれただけの未綴じ本にオーダーメイドで表紙をつけたり、古くなった本を新しく想定し直したり。美しい本を次々に生み出していく職人たちが、今もヨーロッパでは存在しているのだそうです。

Twitterで村山先生が事前にお話されていたあらすじやキャラクター設定や情報がとても魅力的で、読むことができる日が本当に待ち遠しかったです。

事前にうかがっていたお話の通り、いえ想像以上に、素敵な装幀の本でした。
表紙カバーの新刊なのに歳月を経ていい感じに古びたような色味と、カバーをめくった裏の本体の赤い色の取り合わせが、とってもお洒落!黒猫さんたちもかわいいです。
表紙の帯の瑠璃とクラウディアさん、黒猫工房の作業台の細々とした修理道具や本たちの絵も、ていねいに描かれていて素晴らしいです。お花の色もきれい。
そして『はるかな空の東』の表紙カバーにちょっと雰囲気が似ていると思うのは、私だけでしょうか(笑)。あの大好きなお話も自然と重ねあわせてイメージできるのが、とても良いな。

いつもの村山先生の風早ワールド、優しくてあたたかくて悲しみや切なさもそっと包み込まれたていねいな物語、堪能しました。読んでいてときに涙して、癒やされました。
ヒロインの瑠璃ちゃんは健気でがんばりやさんのかわいい女の子で、読んでいて自然に応援できました。
ルリユール職人の素質があるだけでなく、お料理上手で歌も上手だなんて、うらやましい!(笑)
お師匠様のクラウディアさんもまたとびきり魅力的な方で、良かったです。
うーん、私は昔から、村山先生が描かれるおねえさんキャラが好きすぎます……!溌剌としてお茶目で大人の分別をきちんと持ち合わせながらもときどき無鉄砲で、ヒロインの女の子が憧れちゃうのがよく分かります。
瑠璃ちゃんとクラウディアさんの関係に、『はるかな空の東』のナルとサーヤの関係を、ちょっと重ねあわせてしまいました。
ふたりでレモンバターのパスタを美味しくいただいている場面が好きです。

『はるかな空の東』を特に重ねあわせてしまったのは、やはり瑠璃ちゃんとおばさんのはるかさんが、歌をうたう女の人だったから、というのも大きかったのでしょう。
はるかさんのエピソードが、まさに現代のさすらいの孤高の歌姫のようで、せつなくも魅力的でした。
瑠璃ちゃん視点で追憶するはるかさんのイメージが透き通っていて猫のようにしなやかで気まぐれで、上手く言えないんですけれどとびきり素敵なんです!冬の遊園地にトレンチコートに、夢みたいにきらきら美しい箇所で大好きです。

瑠璃ちゃんの家族、おばあちゃんにお姉さんのあかねさんに、皆素敵な人でした。
絶妙の焼き加減のフレンチトーストに手作りカッテージチーズにはちみつをふわり、本当に最高の朝ごはんだよ。仲のいい姉妹で一緒に食べるなら、なおさら。
おばあちゃんの沖縄料理も美味しそうです。
瑠璃ちゃんが体験した不思議を、それぞれの受け入れ方で受け入れてる家族の懐深さがよかった。
明るくて元気いっぱいのおばあちゃんが亡くなってしまった娘に向ける想いも、しんみり切なくて。

さて、ルリユール工房をめぐる各話。
『宝島』のおじさんと甥っ子の関係がいいなあ~としみじみしたり、『星に続く道』の少年たちの何十年越しの友情もとてもいいお話でした。
今回のお話の中でいちばんのお気に入りは、『黄昏のアルバム』かなあ。
老婦人の正体が不思議ですこし怖い感じもしたのですが、からくりが明かされてみると……、ああ、そういうことだったのかあ。
智史くんの一家を襲ったエピソードから完成したアルバムを彼がながめるエピソードまで、読んでいて涙涙でした。
タブレットの画面にさっと星のようなきらめきが散っていくなんて素敵な表現。妖精の羽かあ、最新機器にはとんと疎い私ですが、読んでいるとこういうのも魅力的に思えてきます。
ちょうどハヤミさんとナルが日本で夢中になっていたゲームが魅力的に思えたように(笑)。
智史くんと瑠璃ちゃんがちょっといい雰囲気っぽくて、ほんのりときめきました。

ぼろぼろの本を修理したり美しい装幀の本を生み出したり、そういう描写を私は今回いちばん楽しみにしていたりしたのですが、期待通り、良かったです。
学生時代から縁あって図書館の世界に足を突っ込んできた私、うんうんうなずいたり新しくお勉強になったりしつつ読んでました。
「世界中の司書たちのあいだで共有され蓄積されてきた、修理の知恵と技術があるのだ」(70頁)の部分を読んで、こんな私でも、なにかとても誇らしい気分になったりして。
ああ、私ももっと真面目に頑張ろう……。
そして火蜥蜴の魔法の糊ってすごく便利ですね!村山先生のツイートをちらりとお見かけしてどんなお話になるのかなあと思っていたのですが、いやあ、素敵でした。

このお話って、もしかしてまだ続きが読めるのかしら。
ルリユールの作業や本をめぐる人間模様、できればもっとたくさん読みたいです。
個人的にはやっぱり、瑠璃ちゃんの母親の司書さんのお仕事が、もっとお話に関わってきてくれると嬉しいな。
というか、風早の町の図書館(きっとあるに違いない)も、やっぱりいつかお話で読んでみたいです(笑)。
そこにはたとえば竜宮ホテルの響呼さんの小説とかも大切に並べられ保存されているのでしょう。
(『竜宮ホテル』の二巻目も、早く読みたいですー!と書きたかったばかりに、話をつなげてみました。)


秋の夜長の読書にふさわしい、心あたたまる素敵な読書のひとときでした。


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カテゴリ: 村山早紀さん

タグ: 村山早紀 

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