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『王子様の抱き枕 不吉を誘うマドレーヌ』 睦月 けい 

王子様の抱き枕    不吉を誘うマドレーヌ (角川ビーンズ文庫)王子様の抱き枕 不吉を誘うマドレーヌ (角川ビーンズ文庫)
(2013/12/28)
睦月 けい

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料理&お菓子作りが好きな女子高生・茉莉(まつり)がうたた寝から目覚めると、そこは見知らぬ世界、しかも隣には見知らぬ美青年が熟睡していた。
寝ていたのはなんと本物の「王子様」で、突然現れた不審者として側近たちから激しく疑われ、監視をうける羽目になった茉莉。
そんな茉莉に、重度の不眠症に悩んでいたという王子・レーガンは、茉莉がいれば眠ることができる、帰るまでは「抱き枕」として側にいるように、と言ってきて――。


ビーンズ文庫の初読み作家さんのお話。
この作者さんの別シリーズものもずっと気になりつつ……、そんな折に出た今回の新刊、お菓子作りが好きというヒロインの設定やサブタイトルの「マドレーヌ」に、お菓子大好きな私はあっさりつられ、こちらから読んでみることにしました。

『王子様の抱き枕』なんていかにも少女小説らしい甘いタイトルだし、ストーリーも正統派異世界トリップものファンタジー。ここまでまっすぐな異世界トリップものなんて久しぶりに読んだなあ……。
……なんて言いつつ、実際に読み進めていくと、タイトルみたいな甘いロマンティックな雰囲気は、ほとんどゼロに等しく(苦笑)。
いえ、確かに茉莉は「王子様の抱き枕」の役割を担わされていて、タイトルはとても正しいんですけれど、甘さを感じる要素と言ったらそれくらい……レーガン王子は読みこむごとにとてもいいひとでしたが、本当に純粋に「抱き枕」でしかなく。
王子にとって何より大切なのは安眠で、それをもたらしてくれる彼女を、彼女自身もとっても大切にしてくれるんですけれど……少女小説としては、うーん、何か方向性が違う?(笑)

さらに甘くなかったのが、お話の前半部分の、王子の側近のひとたちの、茉莉への態度。
突如厳重な守りの中に理解できない登場の仕方をした茉莉のこと、皆がもうがちがちに疑ってて、しかもえぐい方法で茉莉のことを監視したり試したり嫌がらせしたり、うわあ……。
でもまあ茉莉本人も納得している通り、王子の身の安全のために不審者を警戒するという役割的には、コンさんもトイも、間違ってはないわけですよ。
それでも、自分でも納得できちゃってるだけ余計に、内心煮えくり返りつつも黙って屈辱に耐えている茉莉の姿は、読んでいて痛々しかった。
元の世界に帰りたい、ただそれだけなのに、自分の望みすら裏を疑われ全く通じないなんて、そんなのあんまりです。

そんなヘビーな状況下でも、引き離されてしまった大好きな家族のことばかりを案じ、なんとか手段をもとめて異世界トリップのきっかけになったのかもしれないマドレーヌ作りに情熱を注ぐことを決意する茉莉は、がんばりやで一本筋が通っていて、いつでも食い意地を忘れていなくて(笑)、とても私好みのヒロイン。自然に応援できました。

そしてそんなヘビーさがあったからこそ、料理人のブリジットさんやホイットさん達が初登場時に見せてくれた、混じりけない気遣いやあったかさ、そういうのがよけいに、じわじわっと心に染み入りました。とても嬉しかった。
コンさんやトイをばしばしばしっと叱りつけて、茉莉の居場所をささっと整えてくれたブリジットさん、本当に頼もしく格好いい女性でした。

ブリジットさんたち料理人の仕事場に受け入れてもらい、異世界の食材を使用してのマドレーヌ再現に、協力してもらいつつ全力を注ぐことを決意して……それからの茉莉の異世界ライフは、だんぜん、読んでいて楽しくなってきました。
異世界のごはんがなかなか詳細に書かれていて、茉莉に負けないくらい食い意地がはってる私的には、興味津々。トッピングを工夫して食べるカシェとか、普通にとても美味しそうで楽しそう。お茶漬け食べたい。
こちらの世界では甘いものはむしろ庶民の味で、宮殿にいるせいで甘いものに飢えてる茉莉の姿にも、読んでいてとても共感を覚えました……私でも絶対に、甘いもの欠乏症になりますね(断言)。
マドレーヌの材料など工夫を重ねて作り続ける姿も、読んでいてわくわくしました。
チーズ味のマドレーヌとかもわりと美味しそうだよね……そして何気に惹かれたのが、できあがったお菓子の時を止めていつまでも食べられるように保存できるという魔術。冷蔵庫なしで常に作りたての美味しさをキープできるなんて、ええっ、めっちゃ便利!(笑)

下働きの控えめな娘さんマルヴィナや、ブリジットさんの寡黙な息子、あと人のいいお兄ちゃんみたいなホイットさん、いつの間にか茉莉のまわりにも、いいひとたちが増えてきて、嬉しくなってきました。
そんな調理室のメンバーたちと連動して、レーガン王子様とも、少しずつ距離が縮まっていき。

そんな中でも、時折挟まれる不吉な夢、暗い影……、そして、茉莉の頑張りの先には。
うーん、正直そんな風になる予感はなんとなくしていましたが……辛いですね。
茉莉の頑張る姿を見せられてたコンさんとトイの態度がだいぶ改まったので、救いにはなったのですが。少し前から甘いもの好きであることをだんだん隠しきれなくなってきていたトイ、ようやく可愛げがでてきました(笑)。
ふたりとも、悪い人じゃないんだよね。

そして最後の方に登場してきた、例の妙な名前の国の、妙な王子様。なんなの、これまでのコンさんたちが霞んでしまうくらいに、あぶない感じがするんですけれど!
どうもこの話、現時点で表に出ているもの以上に複雑で重苦しいものがかくされているようで。茉莉、レーガン王子達の運命や、いかに。
あらためて考えてみれば、サブタイトルも「不吉を誘うマドレーヌ」で、微妙に重かったしな……。
続きがとても気になります。

(そしてこの先、ロマンスに発展することは、果たしてあるのか!
王子様も素敵なんですが、個人的には寡黙なアルジャンさんも、なかなかいいんじゃないかと。笑)

積み本になっている『首の姫』シリーズも、俄然興味が出てきました。
オススメもしていただいたので、今年はこちらも読みはじめていきたいなと思っています!


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪
新年さっそくコメントもくださった方、本当にありがとうございます!返信しばしお待ちください~。

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カテゴリ: ビーンズ文庫

タグ: 睦月けい 

この記事に対するコメント

初めまして。
最近 恋抱を読みました。

心を動かされたポイントが、同じで嬉しくなり、コメント致しました。

主人公と王子様、同衾までしている上、抱き合って寝てまでいるのに何故なにも起きないんだと、主人公の辛い日中に心を痛めながら、終始笑いがおさまりませんでした。

また、私も作者さん初作品で、首~を全巻揃えているのに、不発だったときのことを考え、あまり手にとれないでいます^^;
本作は一巻にしては、すごく登場人物が多かった気がしますが、話がとっちらかっていないというか、キャラがちゃんと役割を果たしているので、かなりスッキリスマートに纏まってるなという印象だったので、
首姫シリーズ?も、かなり期待度があがりました。

URL | 春圭 #-
2014/03/28 06:58 * 編集 *

Re: タイトルなし

>春圭さん
コメントありがとうございます。

こんにちは。こちらこそ、初めまして♪
こんなブログの感想を見つけて読んでくださって、そして素敵なコメントまでいただけて、とっても嬉しいです。どうもありがとうございます!

そうですよね。主人公と王子様の関係、当人同士は深刻な状況で大真面目なんですが、読んでいるこちら的にはやっぱり不自然で笑いを誘うんですよね…思い返しただけで笑えてきました(笑)。

そして『首の姫~』ですが、実は私、ブログにきちんと書いていませんが、あれから少しずつ読み始めて、今四巻目あたりです。
やはり主役カップル(?)は、通常運転あんまり甘くはないんですが、時折にじみでる主従関係以上の何かが、こらえなれないほど甘いときがあって、なんというか、ギャップがたまらないです(笑)。うまく表現できないんですが……。
こちらのお話も、異世界つながりの伏線がほんの少しだけあって、今のところお話の筋にはまったく関係なさそうですが、ちょっとおもしろいです。

春圭さんも、私と読書の感性がかぶっているとしたら(笑)、読み始められてみてはいかがでしょう?
そしていつかまた、感想のお話などしませんか?(早)

URL | fallclover #SvKcs0as
2014/04/05 19:52 * 編集 *

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