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『朧月夜の怪 薬師・守屋人情帖』青木 祐子 

朧月夜の怪    薬師・守屋人情帖 (富士見新時代小説文庫)朧月夜の怪 薬師・守屋人情帖 (富士見新時代小説文庫)
(2013/12/11)
青木 祐子

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江戸の渋谷町に居をかまえて一年になる薬師の青年・守屋真。
馴染みの患者や薬屋、医者のため、ひとり細々と暮らしをたてていた。
そんなある夜道、守屋は着流し姿で背に刀傷のある男を助け、その流れで思いもよらない事件に巻き込まれることに――。


大好きな大好きな少女小説『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』シリーズの作家さん・青木祐子先生の、江戸時代が舞台の時代小説。
青木先生が江戸の時代小説を描かれるとは正直思っていなかったので、びっくりしました!
私自身、時代小説は馴染みのないジャンルで、しかも男性主人公というところにもちょっとハードルがあったのですが、やっぱり青木先生のお話ということで、手にとって読んでみました。

連作短編形式のお話で、文章はていねいにすらすら読みやすく、さすが青木先生の文章。
しっとり落ち着いたたたずまいのお話でした。派手さはないけれど、奥の方にひかえめな上品さが。
タイトルに「怪」とありますがホラーではなく、ホラー苦手な私でも大丈夫でした。

正直なところ、主人公は女性であるほうが私の好みなのですが、守屋さんも、なかなかいい主人公だったと思いました!実際に読み進めていくごとに味が出てきました。
常に淡々と斜に構えているようで、元来の人の好さも隠しきれていない、なかなかひとことでは言い表せない複雑なキャラクターで。
完全に善人と言い切るにはためらってしまうのだけど、常に弱い人の味方であり、守るためには自分の持てる力全てを捧げる。そのためなら、危ない橋でもためらわない。
訳ありの患者たちに、冷静に距離を置いているようで、結局誰よりも親身に世話を焼いてしまう。性分なんですね。

人懐っこくちゃっかりもので気のいい祥太や、その他何人もの人たちが、これだけ守屋を慕っている様子を見ている限り、きっと本当にいいひとなんだと思うのです。守屋さん。
なんて、主人公なのに、ある意味登場人物の誰より謎な存在なのが、青木先生のキャラクターらしいといえばらしい(笑)。
表紙イラストのオレンジ色の温かみのある雰囲気に、守屋さんを慕って何かと手助けしてくれる人たちの輪が相まって、読んでいてほんのり心地が良かったな。
猫のおぼろもかわいかった。

実際に守屋さんが巻き込まれる事件は、他の皆さまが感想等で書かれている通り、「いいお話」とすっきりまとまってはないですね……。何か、もやもやが残ります。
この時代を生きる人たちの、身分や財産や性別や、さまざまなしがらみから抜け切れずに、その中であがいている姿が、淡々とした描写の中にも、リアルに感じられました。
それでも守屋さんに助けられ、それでも愛を捨てずに生きる人達の姿が、まあ、人間まだまだ捨てたもんじゃないかなーと。
うー、上手く書けなくてもどかしい(笑)。

『朧月夜の怪』
まだ手探りで守屋さんと祥太のふたりのやりとりを読んでいました。信頼されていますね。
複雑な人間関係や立場の関係で、あとに残ったのは誰?
ままならなくて切ない想いのお話でした。

『七十五日の瓦版』
いきいき元気いっぱいの娘さん、綾ちゃんが好もしくて、元気よく事件に首を突っ込んでいく様にひやひやしつつ、応援したくなりました。
音也さんと岩太郎さんもなかなか良かった。
瓦版売りの生業がのぞけて興味深かったです。

『料理茶屋の女』
四作の中で、このお話がいちばん好きだったかな。
おときさんの分かりにくい愛情に、読んでいてほろりときました。
複雑な女心にも適切な対応ができる守屋さんが心憎いです。
煮豆も地味に美味しそうです。

『毒を摘む』
守屋さんの家に小さな兄妹がやってきて居着いて、シビアな事件に巻き込まれるお話。
弥吉くんがなかなか危なっかしくも頑張ってました。彼に、かよがいてくれて、よかったです。
おさいさんの語りに、もう届かない純粋な愛に、切なくなりました。
深く澄んだ目をした賢い少女かよの生い立ちや、今後の人生がとても気になる、少女小説大好き人間の私です(笑)。

守屋さんは立場的にもまだ謎ばっかりの人で、周囲の人達にも面白そうなお話が隠れてそうで、続きが出たら、ぜひ読みたいです。
個人的には、女の子や女の人の活躍を、もっと読みたいかな!かよちゃん!(←すっかりお気に入りキャラ)
守屋さん自身のところにお嫁さんがくるのは、まだ当分先かなあ……でもそういうお話も読みたいです(笑)。

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カテゴリ: 歴史もの

タグ: 青木祐子 

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