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『美雪晴れ―みをつくし料理帖』高田 郁 

美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)
(2014/02/15)
高田 郁

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『みをつくし料理帖』シリーズ第九弾。
「一柳」の主・柳吾から求婚された芳。しかし芳は、なかなか承諾の返事を出来ずにいた。彼女の胸にあるのは、一人息子の佐兵衛のことのようで――。
一方で澪も、幼馴染みのあさひ太夫こと野江の身請けについて、また料理人としての自らの行く末について、思い悩む日々。
柳吾が新たに遣わした料理人もやがて馴染み、「つる家」の面々にも少しずつの変化が。


『みをつくし料理帖』シリーズ、待望の新作。
『美雪晴れ』、心が明るくなるうつくしいタイトルで、今回は辛い展開をあまり心配しなくていいかなあ……と、おだやかな気持ちで新刊を待てた気がします(笑)。
登場人物紹介の頁に、あの方のお名前がなくて、ああ……ちょっと切なくなりました。

ちょうど今の私自身が、上手くできないことばかりで人様にも迷惑をかけ自信なくしてくよくよ悩み落ちこんでいて、はじめのうちは、こんな落ち込んだ気持ちじゃせっかくの新刊を楽しむこともできないよ……とか思っていたんですが、少しずつ読み進めていく内に、澪やつる家のまわりの人達に、励まされ、心慰められ、まごころこもった台詞の数々に思わず涙ぐみました。
周りに料理のことで安定した高評価を得るようになっても、けしておごることなく、地道に工夫を重ね、心願をまっとうしようと身を捧げ尽くす澪の姿が、凛としていて美しくて、読んでいる私はとても励まされ、心の拠り所になりました。
この道をいく以上は、いい気にならずに、足りないものは努力を忘れずに、謙虚に誠実にいかなければ。
やわらかい関西の女ことばでの語りかけと人情のあたたかみとがプラスされて、ふう、とても良かったです。
やはりこのシリーズは、自分自身が辛く先が見えない時に読むと、いっそう心に染みるお話です。


自らを守るために苦しみから逃げることは間違いではない。
だが、逃げて苦しみが深まったのならば、決して逃げるべきではない (229頁)

――柳吾さんのこの台詞が心にダイレクトに響きました。


ええと、上にもちらりと書いた通り、周りの評価に簡単にゆるがずに店の方針をつらぬくようになった澪やつる家の面々の姿に、とても成長を感じて、読んでいてとても安心できました。
これまでみたいにときに揺らいで手痛い失敗をしていた経験もあったからこそ、今の姿が、読んでいて嬉しいですねえ。
新しい人もやってくることになり、正直不安もあったんですが、お臼さんも政吉さんも、味があってとてもいいひと!あっという間に場に馴染んで大好きになりました。
お芳さんのおめでたい話には素直に心あたたかくなり、澪の途方もない心願が少しずつ実際にかたちをおびてきた様にほうっとため息がこぼれ、とある辛い出来事のなかにも、ひとの思いがけない強さに嬉しくなり。
料理も手間暇かかっていてとても美味しそうです。

『神帰り月 味わい焼き蒲鉾』
蒲鉾が、江戸のひとにとってこんなに高級品だったとは!びっくりでした(笑)。蒲鉾作りの難しさにもびっくり。
お臼さんが、とっても素敵なひとで、一話目の時点ですっかりファンになってしまいました。
りうさんと種市さんのやりとりもコミカルで味があってやっぱりいいな!りうさんのお元気さに救われました。
お園さんも素敵な方ですね。

『美雪晴れ 立春大吉もち』
シワのよった黒豆……文化の違いだなあ!(笑)
れんこんのおもちもですが、鯖寿司も鰯尽くしも、ほんっとうに美味しそうでした。鯖寿司、お寿司の中でもかなり好きな部類。
澪とふきちゃんの、師匠とお弟子さん、姉妹のようなやりとりがとても好きで、もうすぐ離れてしまうんだなあ……と思うと、寂しいな。
お弟子さんの成長が目覚ましいのは、嬉しいです。

『華燭 宝尽くし』
お芳さんの幸せな晴れ姿に、皆のあったかい祝う心に、私の心も明るくなりました。お幸せに!
佐兵衛さんに注目の話でもありました。
鶴を作ったり、澪と佐兵衛さんのふたりの場面が、なんというか、好きでした。そういえばかつてお芳さんはゆくゆくは澪と佐兵衛さんを……とか考えてらしたんだよね、とか思いつつ読むと、色々感じるものがあります。
そして柳吾さんが佐兵衛さんのことをそこまで見てくださっていたとは。さすがとしか言いようがありません。
柳吾さんと坂村堂さんのやりとりもすっかり安心して読めるようになって嬉しい。
坂村堂さんの奥さんと娘さんも登場あると良かったなー。

『ひと筋の道 昔ながら』
最初は正直、途方もなさすぎてどうなんだろう……と思うばかりだった澪の心願が、現実のかたちとして、見えてきて。どきどきしつつ読んでいました。このシリーズ、すごいです。
吉原のあれこれ、感覚的に私には今ひとつぴんとこないんですが、澪の料理が少しずつ認められていくさまは、読んでいて小気味良かったです。
そして今度は美緒さんの身にふりかかった災厄。ああ、……つらい気持ちになりました。
それでも、これまで自分を守り愛してくれたひとたちのために、今度は私がしっかりしなくちゃ、と、澪の友情も支えにしてきりっと前を向いていた美緒さんの姿が、読んでいて本当、嬉しかったです。
澪と野江の友情も好きだけど、澪と美緒さんの友情も、シリーズ読んでいくごとに大好きです。

そして美緒の身体を考えた料理、源斉先生とのやりとりのラストの場面が、またとても良かった。
澪の心星を、源斉先生がとっくの昔に見出していた……という下りに、胸がいっぱいになりました。


登場人物紹介で漏れてしまっていた方も、特別収録のお話でお姿おがめて、良かったです。(私は新聞の方ですでに読んでいたんですけれどね……何度読んでもいい話です。)
そして、ついに次回が、最終巻ということで。
待ち遠しくも、寂しくもあり。
「雲外蒼天」のラスト、澪とまわりのひとびとの幸せを、祈っています。
私も、頑張らないと。


ここ一週間の間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: 歴史もの

タグ: 高田郁 

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