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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『八百万の神に問う3 - 秋』『4 - 冬』多崎 礼 

八百万の神に問う3 - 秋 (C・NOVELSファンタジア)八百万の神に問う3 - 秋 (C・NOVELSファンタジア)
(2013/12/19)
多崎 礼

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『八百万の神に問う』シリーズ第3弾。
天路の国にある「真の楽土」の地に、じわりじわりと手を伸ばそうとする隣国・出散渡。
争うすべを持たぬ楽土になすすべはないかと思われたが、そこで動き始めたひとりが、伝説の天才音導師・イーオン。
そんな中、イーオンの師匠・ゴノ里のミサキと、防人のトウロウが、真の楽土の鳥居道をくぐってナナノ里を訪れる——。

『八百万の神に問う』三巻目は秋の巻。
ゴノ里の料理上手な防人・トウロウさんの物語でした。
生気あふれる夏から、静かに陰り始めた秋の世界へ。
空気から熱がぬけて涼しく心地よい秋の風、日がかげっていくもの寂しさ。緑色から燃えるような紅葉へ。
はっきりと書かれていないところでも、物語のそこかしこから「秋」の空気を感じることができました。

先の二巻とはまた趣を異にして、切なくてほろ苦い、大人の物語でした。
そんな明るいお話じゃないはずなのに、面白いんですよね!読んでいて幸せなんですよね!無中になって読み進めてしまいました。不思議。
私は多崎さんが描かれる男性が好きなんだなと、今回改めて実感しました。
一番のお気に入りは『夢の上』シリーズのアーディンですが(笑)。
このシリーズの中では、今回のトウロウさんが、一番好きかなあ。(次点はミサキさんかな)

トウロウさんの過去話、舞台はがらりと変わってディセント国の軍隊。
修羅の世界の中で、お互いを想い合う姿が、とても尊いものにうつりました。
最初は打算でも、次第にお互いを何より大切に想い合うようになって。
なのに立場や価値観からすれ違っていき悲劇を迎えていく過程が、辛かった。

結局彼は、楽土の人たちと敵対するしかないの?……後半あたりは読んでいてはらはら心臓に悪かったですが、ラストの穏やかな独白に、ほっとしました。まさか彼が彼だったとは。
ミサキ音導師の音討議も見事で、彼の最後も立派でした、悲しいけれど。

「もちろんですとも!」
力強く頷き、ミサキはにっこり微笑んだ。
「自分の命を絶ってしまうくらいなら、記憶なんてなくていいんです。
苦悩のあまり自分を滅ぼしてしまうくらいなら、何も考えず、のほほんと生きればいいんです。
命というものはね、この世に存在しているだけで素晴らしいものなんです。
だから、逃げていいんです。
辛くて辛くて、息をするのさえ辛くて、生きていることが苦しくて仕方がないのなら、逃げてしまっていいんです」(217頁)

ライアンとファルケの絆も分かちがたいものでしたが、トウロウとイーオンのふたりも、ちょっとどうなっているんだろう……?みたいな感じで、次、最終巻へ!

むかごごはんと脂ののった鮭のご膳が美味しそうでおなかが減ってきました。


八百万の神に問う4 - 冬 (C・NOVELSファンタジア)八百万の神に問う4 - 冬 (C・NOVELSファンタジア)
(2014/04/24)
多崎 礼

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というわけで、最終巻は、冬の巻。
イーオンとかつての兄弟子、そして現在の弟子の少年がメインのお話だったかな。
シン少年、初登場時からは考えられないほど、大活躍してくれてます。面倒見がよく心優しく賢い子です。口が悪いのは、これはお師匠さんのせいでしょう。しょうがない(笑)。

三巻目でもちらりと語られた、イーオンとリオン、ザイオンの三人の過去が、ようやくつまびらかに。
確かにイーオンがずっと引きずるのも無理はない、なんとも複雑に苦いエピソードでした。
イーオンにもこんな無邪気で若かりし頃があったとは……それが衝撃的です(苦笑)。

もうありとあらゆるところで限界でふらふらで見ているだけで辛いイーオンが、親しい人たちの助けや支えを得て、ぎりぎり音討議の勝負にいどみつづける後半が。はらはらどきどきでした。
シンもおサヨもガガさんも、皆同志だなあと感じられるのが、良かった。
なんといいますか、一言では表せない壮大な話になってきましたが、「ありがとう」「ありがとう」の繰り返しが、心に印象的でした。
ヤコウもいいひとなんです。やっぱり。

小エピソードだと、序盤で美味しいご飯を作っているシンと、イーオンとシンの松茸ご飯をめぐる音討議(?)がなかなか面白かったり。確かに松茸ご飯は心で食べるものかもしれないな。あと鯉の煮つけもおいしそうだな……。
知らせを携えイーオンを訪ねてきたトウロウさん、トウロウさんとイーオンの微妙な距離感に、おおっとなったり。トウロウ、性格変わったな……。シンの登場タイミングが絶妙でした。
やっぱりお料理命のトウロウさんに戻ってくれてよかったなーとほっとしました。水炊きもとっても美味しそう!
あと、おサヨの衝撃の告白も(笑)。主役の座を降りてからも、彼女はどんどん強くたくましくなってきていて、嬉しいです。

「ある意味、最強だな?」
「はい」
臆することなく、サヨはにっこりと笑う。
「どんな武器にも負けません。愛は最強です」 (212頁)

おサヨは本当、「愛」で戦う道を選んだんだな、とか思ったり。
続くふたりとのずれた会話もおかしかったです。

トウロウには、ミズハさんのことも忘れてほしくないなー、とか思ったり。
というか、ミズハさんに、どうか(本当に格好いい)出番を!

ディセント国のムメイさんのことや、正直まだ読み足りないなという部分もないことはなかったのですが、ああでも、本当によい物語を読みました。
現実にうちのめされ、心が折れかけた人たちに、この本を読んでいる間だけは休んでほしい。力づけたい。
多崎さんのあとがきを読んでいて、思わず目がうるみました。
私も本当に、春のおサヨさんのお話を読み始めて、無中になって、現実の辛さをそのときだけは忘れられたから。
あったかくて優しい人々、美しい自然界のあれこれの描写、美味しい食べ物、みんな素敵でした。元気をもらえました。

この感想も、最後は二巻まとめてにしちゃいましたが、書けて良かった。


ここ二日の間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ファンタジー(和風)

タグ: 多崎礼 

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