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『シンデレラ伯爵家の靴箱館 恋する乙女は雨を待つ』仲村 つばき 

シンデレラ伯爵家の靴箱館 恋する乙女は雨を待つ (ビーズログ文庫)シンデレラ伯爵家の靴箱館 恋する乙女は雨を待つ (ビーズログ文庫)
(2014/05/15)
仲村つばき

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ベテラン靴職人を祖父に、有名女優を母に持つ、内気な少女エデルは駆け出しの靴職人。祖父と母が相次いで亡くなり、天涯孤独の身の上になってしまう。
エデルの母の遺品の「赤い靴」は、ひとりでに動くというなんとも奇妙な靴。
赤い靴を持て余したエデルは、いわくつきの靴を蒐集しているという噂のディセント伯爵家の次期当主・アランを訪ねて助言を請うことにするのだが、ことはそう単純に解決しなくて——。

初読み作家さんのビーズログ少女小説。
あきさんの挿絵につられて、あとあらすじもなかなか好みだったので、本屋さんでお買い上げ、読了です~。

『シンデレラ』や『赤い靴』や、おとぎ話的要素が魔術と一緒にほどよく溶け込んでいるファンタジー世界観が、なかなか良かったです。単純な夢見がちストーリーだけでなく、ちょっぴりスパイスもあったりして。
お話としては、職人さんヒロインが頑張って成長していく少女小説、と言ったところ。
最近は、職人さんがヒロインの少女小説が、多いのかな?というか、あきさん挿絵の少女小説に、職人さんものが多いということかな。
おおっと驚く派手な展開はなかったものの、ひとつの王道パターンの少女小説として、安心して楽しむことができて、良かったです。
おとぎ話風味だから、世界がこじんまりとまとまっていると、かえってそれっぽい雰囲気がひきたっていて、良かったと思います。
あきさんの挿絵がまたお話の雰囲気に合っていてよいです。
エデルの髪形やドレスが可愛いです。

ヒロインのエデルは、他人とのコミュニケーションが苦手で自分に自信がなくて、常におろおろしがちな女の子。
なけなしの勇気をふりしぼってディセント伯爵家のアランを訪ねてきて必死にバトルをして(笑)、祖父仕込みの腕を認められ、ガラスドームの職人さんとして(半強制的に)迎え入れられて。
やっぱりコミュニケーションが苦手で失敗しつつも、周りのアドバイスに支えられて、ふんばって頑張っていく姿が、好感持てて良かったです。
なんだか、こういうおどおどした子、現実にもいるよね。(というか、昔からの私そのまんまだよね。笑)そんな雰囲気があって、彼女が立ち直るまで、皆でゆっくり見守っていたい、みたいな。
そう、失敗してもいいの。失敗をかくさずに、学んで次に生かせばいいの。
それが難しいんですけどね……。

そんな彼女を基本あたたかく迎え入れ見守るアラン以下男性陣も、なかなか良かったです。
あきさんの挿絵にかかれば、セスもジジもディックも、それぞれたいへんに格好良くいい男です。ジジの大人の渋い色気がたまらない(笑)。
ガラスドームのオーナー・伯爵家の跡取りアラン氏も、初登場時はえらっそうで高圧的で、あんまりいい印象なかったんですが、基本生真面目で誠実な好青年です。貴族としてプライドは高くても、自分の配下の意見も素直に聞いて取り入れる姿勢がいい。
基本何にでもそつなく有能なのに、恋愛面に関してはまるで見当違いにずれまくってるのが、おかしくてかわいい。
妹さんに完全にいいように遊ばれている姿は、ちょっとかわいそうにすら思えます……。
はじめはまだ恋とまでいっていなかったアランの気持ちを、そっち方向にひょいっといかせてしまったのは、完全にルディアさん(の貸し出した本)の手腕に思えます(笑)。アラン、なんでまたそんなに素直に信じ込むんだ(笑)。
ま、アランのこの疎さと、エデルのコミュニケーション能力の低さが合わされば、そりゃあ、進展なんてあったものではないです(笑)。
靴を贈るデートとか、良かったですけどね。
この巻の時点では、恋愛未満のふたりが、まるで家族のように心を近づけていく様が、ほのぼのと良かったです。
あきさんの挿絵がまたいいところに入っているのです。ロマンティック~。
うん、アランもね、はたからあたたかく見守っていてあげたいと思わせる、そんなヒーローです。

シンデレラ伝説の裏話や、取り込まれてしまった少女の意思など関係なく踊り続ける恐ろしい魔術がかかった赤い靴、けっこう怖い。
取り込まれてしまったお得意様のご令嬢カーレンの気持ちをひとつひとつなぞって、彼女を救ったエデル、サポートするアラン。この場面ははらはらどきどきでした。
カーレンが助かって、婚約者のことでも前向きになって、エデルともほんのり気持ちが通じ合えて、ほっとしました。
雨を待つおまじないも可愛いんです。

今のところの敵さんの正体、途中からなんとなくあやしげな雰囲気があったのですが、やっぱり彼だったのか。
普段は普通に気遣い屋の職人さんでいいひとなので、いまいち真意がつかみきれないです。
エデルの出生の本当のところも気になります。
敵さんサイドの設定は、思っていたより複雑に作りこまれていて、これからどういう展開になっていくのか、エデルはどんな風にかかわっていくのか、どきどき。

娘を実はとてもいつくしんでいたと思われる美貌の女優の母親のエピソードもあったり、ほんわりいいラストでした。
ところでアラン、いつまでその本に頼っているんだ!

靴職人のお話なので、靴の描写が細やかで、なかなか面白かったです。
ヒールの高い靴をはけば自然と背筋が伸びて目線も上向きになるって、そういう効果もあるんだなー。

貴婦人が身に着けるものの職人さんで、作り手によってはよくない力が宿って、ヒロインがご令嬢を救って……あたりはちょっと『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』シリーズみたいで、男性の職人さん仲間に囲まれ仕事している様子は、『シュガーアップル』シリーズみたいでもある。
でもこのお話はこのお話で、キャラもストーリーもしっかりして上手くまとまってるので、単体できちんと楽しめました。

これは、二巻目以降次第で、とても素敵なシリーズになるんじゃないかという気がします。
エデルの成長と、魔術師たちの謎と、当分じれったそうなロマンスが、楽しみです。

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カテゴリ: ビーズログ文庫

タグ: 仲村つばき 

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