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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『Babel』その他お話 no-seen flower 

相変わらずオンライン小説にどっぷりな私の読了記録です。

Babel』 (no-seen flowerさま)
この前に感想を書いた『Unnamed Memory』(感想→こちら)と同じ世界の数百年後のお話。
こちらはいわゆる異世界トリップものの長編ファンタジーでした。
タイトルからなんとなくイメージする、ことばにまつわる物語。
『UM』とは、独立した全然別の物語でしたが、そこかしこに共通する設定や子孫やあれこれも出てきたりして、読んでいて二重に楽しめました。

以下の感想は、明らかにネタバレかなーという部分はすべて反転させました。

文系大学一年生の水瀬雫さんが、妙な穴に引きずり込まれて異世界の砂漠に放り出され、途方にくれてたどり着いたある町でひとりの魔法士の青年に出会い、帰る方法を求めて共に旅に出る……、物語はそんな風にはじまります。
真面目で芯が強い文系女子の雫さんと、研究者肌の魔法士エリクの、独特の淡々としたテンポの会話と、ふたりの間ににじみ出るお互いへの気遣いのあたたかみが、読んでいてとても好きでした。
特に言葉について知的探求心旺盛なエリクは、旅をしながら雫に日本語、英語、ドイツ語まで手ほどきを受けています。
対する雫の方も、大学一年生にしてはとてもとても教養が深くて、彼女の方もエリクほど極端でないにしろ、勉強が好きで勉強家なんだろうな、と思わせられました。私なんて学生の頃、四年かかっても雫の境地に至れてなかった気がする……。
雫の世界(つまり日本)のあれこれに対しての、エリクの斜め上の理解と突っ込み、そこに脱力しつつざっくりかえす雫の解説が、どれも妙に面白くって。
鮪なんて知らないくせに、鮪の字を気にいって何度も練習するエリクの姿は笑えました。

ティナーシャとオスカー達みたいに、本人たちがとんでもない力の持ち主ですべてをぶっ飛ばしていった(笑)姿に比べると、雫とエリクの旅の道行は、まだだいぶと落ち着いていましたが、それでも十分波乱万丈で、幾多の困難が待ち受けていました。
自分にできる以上のことを頑張って頑張ってそれが何でもないことのように微笑む雫の姿がいとおしい。
そんな雫を、保護者のような、パートナーのような距離感で、淡々とでもしっかりサポートし続けるエリクの姿が、読んでいて胸があたたかくなりました。

雫に懐いた使い魔のメアちゃん、可愛い。出会いの話もちょっと切なくて好きでした。
例のファルサスの王様とその妹、ファルサス関係でエリクの過去も少し。
ファルサスというので重なりを期待していたら、予想外に冷たくて(まあ理由を考えれば無理はない……)、でも最終的には、やっぱりいいひとたちだな、と思いました。後に和解しても、どうしようもない困った王様でしたけれど!(笑)
そのあとまた理不尽な理由から連れてこられたキスクの王宮、最初は壮絶な環境に息をのみましたが、それでもひたむきに自分を信じる幼い少女をまもり頑張り、自分の信を貫き通す雫の姿に、暴君としてふるまっていた王妹オルティアはじめ周囲が少しずつ変化していくさまが、とてもよかったです。雫とオルティア、全然違う同い年のふたりは、全然分かり合えなかった始まりから少しずつ関係を変えていき、どちらも成長していきます。
Act3を読み終えてみれば、ファルサスの兄妹より、キスクのオルティア姫と従者のニケコンビの方が好きになっている私がいて、自分でもびっくりでした。(ファルサス兄妹ももちろん好きですが!)

お話の衝撃的どんでん返しが、この作品の場合は言語の相違に関することで(またネタばれなので詳しくは書けず……)、言語学系ネタに弱い私にはたまらない展開でした。ぞくぞくします!
『UM』ともかかわってくる世界の仕組みに、正面から抗って、人間としての誇りを守るために覚悟した雫。王様との会話に涙して、エリクの必死さにまた涙して……間に合って、良かった!!
(少なくとも本編の時点では)、ロマンス要素ほぼ抜きで、大事な選択をする雫。よいラストでした。本編のラスト自体は『UM』よりも好きだなあ。
何が好きって、図書館の本をあそこまで大切に持ち歩き続け、最後にはきちんと返却した雫の国宝級の律義さが、もうとっても好き!


その後の短編集も、どれもかゆいところに行き届く良いお話ばかりでした。
『幸福の色』なんともこのふたりらしい誤解からはじまる結末!それでいいのか!と若干思いつつ、ふたりがとっても幸せそうで、本当に良かったです。
あと裏に救いようのない不憫なひとがいた……(苦笑)。

里帰りのお話もよかったです。姉妹仲もまたあったかくて愛おしかった。
あと、雫が作中で作るおやつの数々が、どれもさりげなく美味しそうで、読んでいて自分も食べたくてしかたなくなりました。
フレンチトースト(パンプティング?)ににんじんケーキにどら焼きに蜂蜜レモン(デウゴ)……、あとチョコレートはやっぱり偉大ですね。
雫のお手製菓子を食べながらくつろぐふたりの場面は和みました。

あと、『UM』と『Babel』複合の企画もの番外編が、ものすごく充実していて、読んでも読んでも終わらない!(まだ読んでます)すごく楽しいです!!
皆キャラがしっかり立っているから、パラレルものも楽しくてしかたないです。
雫の帰省話の裏サイドのティナーシャ日本珍道中の話が特に好きです(笑)。雫たち日本人の視点でティナーシャの容姿を見つめなおせたことで、彼女の美貌が具体的に頭の中でイメージすることができるようになりました。ティナーシャ大好きな私には美味しすぎます。
帰ったあとにクマのパンケーキを食べつつ妻と会話するオスカー……。だめだ、笑いが止まらない。ギャップが可愛すぎます(笑)。
逸脱者の夫婦の元気そうな姿も拝めてよかったです。王と王妃であったときより自由にのびのびしているようでもあり。
どれほど時を重ねてもラブラブなふたりににっこり。こけしの媚薬の話のオチが……ごちそうさまです。
いつまでも損なわれないティナーシャの無邪気な可愛さと深い愛情が好きです。まるでこの世界での母親のように雫の相談に乗るティナーシャさんもよかった。
ティナーシャの両親のエピソードや、ファルサス王夫妻であったころのエピソードや、色々読みました。色々よかったです。


あと『将軍と黒猫』『Unnamed memory』のサイドストーリー、『Icy prayer』も流れ上読んじゃいました。
ずぶずぶとこの世界の沼にはまっています。幸せです。

ティナーシャと雫は、どちらもとても私好みのヒロインで、どちらがより好きかは、そのときの気分次第だな、と感じました。
図書館からはじまる異世界の旅もいいものです。図書館本の返却の行方はいかに。(え、あまり関係ない?)
……さあ、また続き読んでこようかな。(ループ)


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: Memoriae シリーズ

タグ: no-seenflower 

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