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『浪漫邸へようこそ』 深山 くのえ 

浪漫邸へようこそ (ルルル文庫)浪漫邸へようこそ (ルルル文庫)
(2014/08/26)
深山 くのえ

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深山くのえさんの新作。
時は大正時代。
とある事情から、由緒はあるが貧乏な生家、子爵家を背負うことになった、十六歳の紗子。
偶然危ないところを助けてくれた、帝大生の青年・伊織との出会いをきっかけに、子爵邸で秘密の下宿屋をはじめることに。
早速集まってきたのは、医学を学ぶ帝大生に、画家に本屋、作家に写真屋……なんとも個性的な人たちで。
きょうだいや使用人に支えられつつ、紗子のにぎやかな新生活がはじまる――。


深山さんの小説に、あきさんの挿絵という、どちらも私好みの取り合わせの新刊、発売前からとても楽しみにしていました!
ふんわり可憐な桜色の表紙に豪華な登場人物紹介の頁に、本文を読み始める前からすでにうっとり満足してました(笑)。

実際にお話を読み始めてみても、表紙イメージそのままのふんわり可愛らしく奥ゆかしい少女小説で、とっても私好みでした!!癒されました。
安定の深山くのえさん少女小説(笑)。
真面目でしっかりもののお姉さま、おうちのことをひとり背負って健気に頑張る紗子さんが、私好みのヒロインそのもので、良いものです。さすが深山さん。お嬢様のわりにしっかり家庭的で料理上手なのもポイントです。
お相手役の、帝大生の伊織さんも、穏やかで優しくて頼りがいのある、とても好みのヒーローでした。
毎日お互いをささやかに気遣い合い、お互いの立場を尊重し、日常の言葉をかわす、恋人未満で初々しいふたりの姿に、ほっこりしました。
型破りなお嬢様ではなく世間体も気にするおしとやかな紗子さんが、助けてくれた伊織さんともう会えなくなってしまうのが寂しいからと、とっさに引き止めてしまうあの場面が、きゅんとしてお気に入り。あきさんの挿絵もいい!
(そしてその流れで下宿屋いいですね!とぽんと賛成してしまえる弟くんがナイス!)
夜に、ふたり打ち明け話をしている場面も好きでした。
伊織さんのいとこだったり、紗子さんの友人だったり、美しい異性をお互いに会わせるのは、ちょっと嫌だなあ……とお互いもやもやしている姿までおそろいで、もうお似合いでよいですねえ、としか言えないです(笑)。

脇役キャラもみんなよかったです。
まずは菖蒲小路家のメンバー。
女中のしのさんと娘のりんのエピソードが特にお気に入りで。紗子の姉のようなしのとの関係が良かったです。こういうヒロインに忠実な侍女的なキャラクターが私は大好きです。
紗子の弟の尚彦も、妹の鞠子ちゃんも、まっすぐ素直に育っていてかわいいなあ。
何気にひっそりときめいたのが、尚彦とりんの関係でした。ほんのりお互い想いあっているようで。
無邪気で幼い少年ながらにりんを大切に思っているのがうかがえる尚彦の台詞がとても良かったですよ!

下宿屋さんにやってきたひとたちも、それぞれ個性的ですが皆いいひとで、菖蒲小路家のひとたちと一緒ににぎやかにわいわい暮らしている様が、また良かったです。
私は時雄さんと猫のタビの二人組(?)がなんか好きです。実巳さんの本が捨てられない病にはとても共感を覚えます(笑)。
伊織さんの従兄の光也さんも、前評判とはちょっと違った印象のひとで、なんだか違った方向に好感を持ててよかったです~。

紗子さんが学校の友人関係で巻き込まれたちょっとしたトラブルは、まあなんだかなあ……な落ちでした。無事に解決してよかったです。困った時にそれぞれの得意分野で助け合う下宿人達が良かった。
華族のご令嬢の結婚事情や写真事情が興味深かったり。
それにしても紗子さんのおばあ様っていったい……。
梨影さんも、素敵なご友人だなあ。

最後の番外編は、伊織さん視点の短いお話。
伊織さん視点でながめる紗子さんが、まるで咲きほころぶ春の花のようで、照れたり微笑んだり紗子さんの何気ない一挙一動にいたるまでかわいくて仕方なくて、ものすごくときめきました!
やっぱり伊織さんの方は、想いを自覚していたのね。本編の鈴子さん視点でみる伊織さんは、基本的にはつねにおだやかで頼れるひとで紳士的な態度を崩さなかったので、よけいに微笑ましく可愛らしかったです。
紗子さんの笑顔とあいさつひとつでその日の嫌なことも全部どうでもよくなってしまうなんて、よくわかります(笑)。
西洋菓子作りのやりとりが本当に微笑ましい。プティング美味しそうです。
ただやっぱりこのふたりは、身分差カップルではあるんだよな……。そこのところはきちんと分かっていて一歩引いている伊織さんに、少し切なさを覚えつつ、読み終えたのでした。

あとこのお話、前もって分かってはいたけれど(笑)、あきさんの挿絵が本当に素晴らしいです!
あきさんの挿絵でお着物姿って、そういえばとても珍しいのかも。美しくて可愛らしくて眺めているだけで幸せ気分。
表紙の春の花のような透明感ある色彩もとてもよいし、登場人物紹介の頁も、最近よくある別のところの挿絵の切り貼りではなくここのために描かれた絵で構成されていて、贅沢だなあ。ささやかにとても満足です。
お話中の挿絵もたくさんあってどれもすてき。ベランダでふたり語り合っている絵と、紗子さんと梨影さんの内緒話の挿絵が、特にお気に入りです。

お金に困ったお嬢様が、下宿屋をはじめて何人もの男性と一つ下の屋根に住む、なんてよく考えてみればありがちな設定なのかもしれませんが、なんだかこのお話の場合は、読んでいてあざとさを全然感じなくって、ひたすらかわいいのです。
深山さんの文章とあきさんの挿絵がお互い相性ぴったりで、優しさと可愛らしさとかですべてをうまくくるみこめているのだろうというのもあり。
紗子さんと伊織さんの真面目で奥ゆかしい性格と年の差、物おじしないフレンドリーな性格の尚彦君、しのさんと紗子さんとの関係、そういうのがすべて上手く作用しあっているんじゃないかな、というのもあり。
細かな設定を、きちんと考え込まれた上で書かれているんじゃないかな、と私は思いました。
うーん、うまく表現できないんですけれど、とにかく私はこのお話、すべてがとても好きでした!ということで。(だいぶはしょりました)

本当にどのキャラクターも好もしくて、今回の一冊分では皆さま若干読み足りないので、ぜひとも続編をくださいませ!
一番にはもちろん主役カップルのロマンスを進めてほしいですし、下宿人たちもせっかくキャラがしっかりたっているので、それぞれもっと活躍を見せてほしいなと思います。
『舞姫恋風伝』や『桜嵐恋絵巻』みたいに、脇役キャラをあまねくカバーした短編集まで読めれば、言うことないんですけれど(笑)。


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ルルル文庫

タグ: 深山くのえ 

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