Admin   *   New entry   *   Up load   *   All archives

ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『お菓子の本の旅』小手鞠 るい 

お菓子の本の旅お菓子の本の旅
(2012/04/21)
小手鞠 るい

商品詳細を見る



アメリカにホームステイにやってきて、ホストファミリーに打ち解けられずに辛い思いをしていた中学生の遥。
日本からの荷物に入っていたのは、『お菓子の本』というタイトルの、作者も出版社も書かれていない、手書きのお菓子のレシピ集だった。
本のままに遥は粉をふるい卵を泡立て「涙エッセンス入りフルーツケーキ」をひとりでこしらえる――。
かたや「パンとお菓子のなかむらや」の主人だった祖父を亡くし、猫のプリンもいなくなり、母と寂しい夜をすごしていた淳。
手違いで持ってきてしまった『お菓子の本』を頼りに作り上げた「ひつじ雲のスコーン」で、母と再出発の朝を迎える――。
『お菓子の本』をめぐる、ふたりの少年少女の少し不思議な甘くて幸せな物語。

図書館の児童書コーナーで見かけてずっと気になっていた本でした。思い立って借りてきました。
『お菓子の本の旅』タイトルも素敵ですし、表紙のイラストが、装丁が、本当の本当に、かわいらしくて素敵!
スワンのシュークリームに羽根つきのビスケット、花の砂糖衣をかぶったドーナツにカップケーキに猫ちゃん、愛くるしいメルヘンな世界にきゅっと心がつかまれます。

お話は、前半は、中学生の女の子の遥、後半は、同じく中学生の男の子の淳がそれぞれ主役の物語。
全体を通じての主人公は、手書き文字とイラストつきの、作者も出版社もわからない、『お菓子の本』。
児童書なので文章量もひかえめでさらさらっと読めました。

美味しいお菓子は人を幸せにしてくれるんだなあと、ささやかなエピソードのひとつひとつで実感して、読んでいる私もほっこり幸せ気分でした。
遥が「涙エッセンス入りフルーツケーキ」を、淳が「にこにこ入りひつじ雲スコーン」を、お菓子の本のレシピにしたがって、ひとり台所で作り上げていく場面が、お気に入りでした。
遥のケーキはホストファミリーの姉弟たちの懐かしい肉親の記憶を呼び覚まし、淳のスコーンは、祖父の死でへこんでいた母が「ブレッドアンドスイーツなかむら」として店をよみがえらせるまでの、原動力になりました。
なんというか、手探りでお菓子作りにチャレンジするふたりの姿が、本当に楽しそうで幸せそうで、読んでいる私もお菓子作りをしたくなりました。

この『お菓子の本』、遥のアメリカ菓子に淳のお菓子めぐりの世界の旅で覚えた菓子に、書き足され続けて、めぐりめぐってふたりの元へと戻ってきます。
お菓子のレシピ名とか文章とか本当にメルヘンで楽しい感じがして、なんだろう、私が高校生の頃図書館で借りてきた小林カツ代さんやマドモアゼルいくこさんの、白黒のイラスト付きのお菓子のレシピ集と同じ香りがして、個人的にとても懐かしい感じがしました。「女王陛下のキャロットケーキ」とか、名前だけで作りたくてたまらなくなった、あの本たち。

遥がお菓子作りをするときに、亡き祖母と一緒に作っているような気分になるところも、私自身の昔の祖母の思い出と重なり合っていて、良かったです。私も祖母が卵を力強く辛抱強く手で泡立てる姿が大好きでした。
淳が祖父のアフタヌーンティーの思い出をよすがにスコーンを作っている気分になるところも好き。イギリスに行ったことも全くないのに想像でアフタヌーンティーセットを手作りして孫息子の誕生祝にするおじいちゃん、ハイカラでとてもいいなあ。

そして淳の母がリニューアルした「ブレッドアンドスイーツなかむら」のお菓子やパンの、また美味しそうなこと!
食べると幸せになれる奇跡みたいに美味しいタルトやケーキやサンドイッチ、本の中できらきら輝いているかのようで。
私もブレッドアンドスイーツなかむらでお買い物したいです。きっと迷って迷っていつまでたっても決められない、楽しい時間が過ごせそうです(笑)。

お店に客としてやってきた遥を淳はひっそりと見初め、遥もまた、淳に淡い思いを抱き、けれどもいったんふたりの世界は分かたれます。「ラブレター」を残して。
最後の最後、すっかり大人になったあとでの再会が、とても良かったです。
『お菓子の本』の世界は、さらに広がっていくことになりました。

読んでいるとお菓子作りをしたくてたまらなくなる、甘く幸せ気分に浸れる、たいへん素敵なお話でした。
もうずっとデコレーションいらない焼き菓子しか作っていない私ですが、生クリームと果物でこてこてとデコレーションするショートケーキもやっぱりいいなあ!
ひとまず私は、明日のお弁当に、たまごサンドイッチを作ることにします(笑)。
そのためにもそろそろ寝なければ……。

関連記事

カテゴリ: 日常のお話

タグ: 小手鞠るい 

この記事に対するコメント

コメントの投稿
Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://hananomi691.blog10.fc2.com/tb.php/1379-c09b2e24
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)