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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『RED・緋』はな 

オンライン小説の感想が続きます。
今週はじめくらいからずっと読んでいた、小説家になろうさんの、はなさんの作品。

RED・緋

時は戦国時代、瀬戸内海の海賊島・羽衣島が舞台。
十八歳で島の人々をたばねる頭になった千早は、島に流れ着いた娘と出会う。
記憶と声を失っていた娘は、ひなと名付けられ、島で慣れない生活をはじめる。
次第に距離を縮めていく千早とひな、しかしふたりにはそれぞれの重い事情があって……。

はなさんのお話は、以前『Be mine』を読んで、とても気に入っていました。
最近になって現代ものの短編いくつかを読み、そしてこちらの時代物長編に手をつけたら、とても面白くて、途中でやめられなくなってしまいました(笑)。
オンライン小説で日本史ものを読むのってとても久しぶりです。

戦国時代、情け容赦ない世の中で、千早とひなを取り巻く羽衣島の人々の、なんてあたたかく優しいこと。
不器用な初恋の、みずみずしく清らかなこと。お互いを想いあう姿の美しいこと。ふたりが守りたい世界を守る、決意の尊いこと。
陽だまりのようで、とても読み心地の良い小説でした。

主役カップルが本当に良かった。
体を悪くした父親の後をついで、若くして頭代理になった千早は、頭としての責任・島を守ることを第一に、をかたくなに守る、まっすぐな青年です。でも根はやんちゃ坊主。色々な意味で若造で、女心を解せず、でも感情がわかりやすくて憎めない。
島に記憶と声をなくして流れ着いたひなは、自分が島のお荷物であることに心を痛め、そしてその美しい心根と努力で、居場所を少しずつ築き上げていきます。彼女の謙虚さと純粋な優しさに、胸がきゅっとします。
お互い少しずつ心惹かれていくも、海賊島の頭と余所者の訳あり娘では、すぐに結ばれるには、色々と、難しくて。
ひなの方には特に、記憶を封じずにはいられなかった、暗い過去が見え隠れしていて。
お互い恋愛に関してはまるで初心者で、たやすく恋に落ちるのに無意識にストップをかけていて、ふたりの仲はなかなか進展しません……じれじれ。
彼女の頑張りを尊いものだと次第に認めるようになり、声を出せないひなの気持ちを、表情や身振り手振りでなんとか読み取ろうと頑張る千早、このふたりの姿が、とても良かった。

お気に入りの場面は、ひながある出来事から声を取り戻したときの、実に素直に明るく喜ぶ千早の姿。
「イカダ浜」の謎がようやく解けて、照れまくってる二人がもう本当に可愛くって!
島への愛情とひなへの恋心をふたつともに自分の中にようやく受け入れることができた千早が、ひなの悲惨な過去と得体のしれない力を、なんでもないことみたいにさらっと受け入れる姿も、とてもよかった。
開き直った千早はけっこう意地悪で手が早いです。いや、めちゃくちゃに優しいんですけれど。
不知火の連中が因縁をふっかけて襲ってきたときの、ひなの決意があまりに尊くてせつなくなり、皆に支えられ愛する娘を取り返しに行く千早の姿が、また格好良くって。
ああ、うまく収まってくれて、本当に良かった。ラストのふたりの迷わぬ信頼感が、素晴らしかったです。

脇役陣がまたよかったです。皆泣けてくるほどいいひとたちです。
手の付けられないおしゃべり娘で裏表のないあけっぴろげな性格が気持ちのいい十野とか、息子達の恋をにこにこ(にやにや?)見守っている食えないおやじさまとか、顔は怖いけれど実直で優しい三左とか、ひなのお母さんのような八重さんとか、人好きのする美形で影のある優秀な情報屋・七夜とか。
コハクも好きでした。ラストの後の番外編の片恋にはきゅうっとせつなくなりました。
十野と千早の幼馴染同士遠慮のない口喧嘩が微笑ましかった(笑)。
みんながみんな、若い千早を頭として認めていて、ひなちゃん大大好きで、うん、いいものでした。

タイトルから、ひなの異端の能力がもっと前面に出てくるものかと思えば、そこまでではなかったかな。
おどろおどろしいものはそんなになくって、作者さんらしい、柔らかくて優しい雰囲気の方が勝っていたと思います。

最後の「ちどり」の章の、タイトルから色々とこみあげてくるものがあって、心がじんわりあたたかくなりました。
ひなは俺のことを嫌いになんかならないの、と軽口をたたく千早に、にこにこ完全同意するひな、黙ってしまう千早、ふたりプラスひとりのやりとりが、くすりと微笑ましくて幸せそうで何よりです。

はなさんの作品は、今のところ『一匹狼と森の熊』、『最終列車』も読みました。
どっちもすごく好きです。現代日本の日常ものラブロマンス、優しくてあたたかくて心がほろっときました。
『一匹狼と森の熊』は、特に、川原泉さん漫画が好きな方に、おススメかもです。


記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: オンライン小説

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